説明

グリッドにおける障害時の風力タービンの運転方法

本発明は風力タービンを運転するための方法に関する。通常モードにおける第1の運転状況では、この風力タービンは第1の電力を、接続された電気グリッドに供給するが、この第1の電力は風速に比例したものである。風力タービンは、障害時には電気グリッドに接続されたままであり、第1の電力よりも小さな第2の電力を、接続された電気グリッドに供給するよう制御される。いったん障害が収束すると、短い継続時間の、第1の電力よりも著しく大きな第3の電力が、第1の運転状況下で、接続された電気グリッドに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッドネットワークの障害時に、風力タービンを運転するための方法および付随する風力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンすなわち風力発電設備が接続される電力ネットワークは、常に一定の様態で稼働するわけではなく、障害が発生することがあるので、風力発電設備を制御するための方法(これはネットワーク支援特性を備える)が、いくつか開発されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、風力発電設備の運転に関するネットワーク支援方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、請求項1で言及された風力発電設備の運転方法および請求項7で言及された風力発電設備によって達成される。
【0005】
それゆえ、風力発電設備の運転方法が提供される。通常運転モードにおける第1の運転状況下では、風力発電設備は、接続された電力ネットワークに第1の電力を供給する。この第1の電力は風速に対応する。風力発電設備は、障害時、接続された電力ネットワークにつながったままであり、かつ第1の電力よりも小さな第2の電力を、接続された電力ネットワークに供給するよう制御される。障害の収束時であってかつ第1の運転状況下において、第3の電力が、接続された電力ネットワークに対して短時間だけ供給されるが、この第3の電力は第1の電力よりも著しく大きなものである。
【0006】
このようにして、障害の収束すなわち排除後、風力発電設備がネットワーク支援関係に介入すると共に、短時間だけ、接続された電力ネットワークに、増大されたレベルの電力を供給するよう、風力発電設備を制御できる。
【0007】
本発明のある形態によれば、風力発電設備は中間貯蔵手段を備えると共に、第3の電力の増大させられた値は、この中間貯蔵手段を制御することによって得られる。したがって障害の収束後の短時間だけ、この風力発電設備は、所定の運転状況下での通常の運転モードにて得られる電力よりも大きな、より高レベルの電力を提供する。
【0008】
本発明はまた、接続された電力ネットワークに電力を供給するための風力発電設備に関する。本風力発電設備は、風力発電設備を制御するための制御ユニットを有する。通常の運転モードでの第1の運転状況下では、第1の電力が電力ネットワークに供給されるが、これは風速に比例する。障害が発生したとき第2の電力が供給されるが、これは第1の電力よりも小さなものである。障害の収束後あるいは収束時、第1の運転状況下で、第1の電力よりも著しく大きな第3の電力が供給される。
【0009】
したがって、第2の、そして第3の電力は風速に対応しないが、第1の電力は風速に対応(比例)する。
【0010】
本発明のさらなる形態は従属請求項の主題である。
【0011】
本発明は、ネットワークの障害排除後に、風力発電設備の供給電力が、これによってネットワーク支援関係に介入するために短時間だけ増大させられるという概念に基づく。この短時間の電力の増大供給は、たとえば、DC電圧中間回路すなわちチョッパを適当に制御することによって実行される。通常の運転モードにおいて、対応する運転状況下では、風力発電設備はネットワークに第1の電力を供給する。ネットワークに障害が発生したとき、供給電力は低減され、そして障害が排除された後、増大させられた電力が短時間だけ供給される。この状況では、短時間だけ増大させられた電力レベルは、所定の運転状況下で提供される電力よりも著しく大きなものである。すなわち、障害排除後、上記運転状況下での通常の運転モードにおけるよりも著しく大きな電力が短時間だけ供給される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、例証としての実施形態および添付図面を用い、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0013】
「組込み式発電の集積」という用語は、以下では、エネルギーシステムの一部に一体化されたエネルギーユニットのキャパシタンスを意味し、これはシステムの他の部分によって供給されるエネルギーを上回る。
【0014】
図1に、いくつかの発電機Gを備えたエネルギー発生(発電)ネットワークの概略構造を示す。
【0015】
組込み式発電ユニットの「ライドスルー」とは、本明細書では、発電ユニットがネットワークにつながったままであり、しかもそれが、ネットワークに障害が発生している間、ネットワークに短絡電力を供給することを意味する。有効電力および無効電力は、障害が排除された後、直ちにネットワークに供給される。
【0016】
伝送アクセスコード(これはネットワーク運営者によって、ますます確立されたものとなっている)に関する「ライドスルー」要求の理由は、以下のようなものである。
【0017】
図2は、エネルギー発生ネットワークの概略構造、ネットワークの障害による電圧の落ち込みを説明するためのグラフを示している。
【0018】
図3は、エネルギー発生システムの概略構造および障害の排除前と排除後の電圧波形を示している。この例では、上側の曲線は、発電機Gがネットワークに配置されている状況を示し、一方、下側の曲線は発電機を欠いた状況を示す。
【0019】
この点に関して、図2は電圧の落ち込みを伴う三つの異なる電圧曲線を示している。電圧曲線S3は、その時の風力発電設備のそのままの状況を示す。電圧曲線S2は、ライドスルー機能を備えた風力発電設備の場合を示し、そして電圧曲線S1は、同期発電機を備えたガスタービンを示す。
【0020】
電圧の落ち込み領域は、発電ユニットが切り離されることによって引き起こされる不足電圧を回避するために制限されるようになっている(連鎖的有効電力不足の回避)。エラー場所がシステムの一部でなくなるならば、ビルドアップ安定性は維持あるいは改善されるべきである(同期電力は図2の電圧Vsynの自乗に依存する)。所定の障害電流レベルが規定されるべきである(保護基準の保全および可能ならば保護リレーのセッティング)。障害排除後の発電機ユニットによる付加的な無効電力要求は回避されるべきである(著しいモーター負荷の場合のカスケーディング無効電力要求による電圧の落ち込みおよび設備の過負荷のリスク)。障害排除後の安定性余力は改善されるべきである(電力の同期化は図3に示すように電圧Vsynの自乗に依存する)。
【0021】
エネルギー供給ネットワークの運営者は、通常および障害状態の間、大電力システムを安定に保たねばならない。この点に関して、このコンテクストでは、システムモデルはさまざまな目的のために適用される。それゆえ適切なモデルの存在は、ネットワーク運営者にとって、特に、組込み式発電の大規模集積を伴う場合に極めて重要である。
【0022】
この点で、システムに対する障害の後、電気機械的過渡ビルドアップ状態を特定するために動的システム解析が利用される。これは主に、過渡安定性解析の分野で用いられる。対応するシステムモデルの展開に関する特徴は次のようなものである。
障害後の約100ms(電磁的過渡現象は消滅し、システムの電磁的部分は、極めて遅い電磁的モードを除いて事実上平衡状態にある)ないし数分(電気機械的過渡現象は消滅し、システムの電気機械的部分はやはり平衡状態にある)の時間領域における、時間に依存する電流/電圧/電力/力率/トルク/ローター角の計算。熱的過渡現象は、一般に、このシステムモデルによってカバーされない。
規定の時間領域の間の障害インピーダンスを含む対称システム状況の仮定。
電力ネットワークの設備のための、あるいはより大型の回転式装置(同期式あるいは誘導式装置)の場合の平衡モデルの適用およびオーダー低減動的モデルの適用。
【0023】
したがって、これによってシステムの電気的部分に関して以下のことがもたらされる。
・大型装置(こうした装置に関しては数理および微分方程式のモデルが存在する)を除く電気設備のための数学的(位相)モデル
・時間依存平方根値を備えた位相(RMS値)、位相角、および時には時間依存システム周波数。全ての位相に関する平方根値および位相角は単一でなくてもよいが、全ての位相に関して必ずしも一定周波数は仮定されない。
・システムの電気的部分に関する対称モデル。これは単一位相で表せる(ポジティブシーケンス表示)
・関連する時間範囲内でシステム動作を制御する設備(たとえば電圧および電流制御器)用の動的モデルの適用
・駆動装置用の動的モデルの適用(たとえば機械的慣性、トルク生成)
【0024】
上に列挙した特性を満たすモデルは「RMS‐動的」モデルあるいは「中間」モデルと呼ばれる。そうしたタイプのモデルは、システムの動的モデルをモニターする関連特性のほとんどを維持することによって大規模なエネルギーシステムの表現を可能とする。したがって、ネットワーク運営者が使用するシステム解析ソフトウエアは、しばしば、このアプローチに基づく。
【0025】
これは、システムモデルが同一でなければならないという一般的に認められた要求である。したがって、エネルギーシステムのさまざまなコンポーネントの全てのモデルは、同一の一般的なタイプであるべきである。
【0026】
熱発電ユニット、伝送装置、保護システム、ネットワーク制御機器、その他用のRMS‐動的モデルは、一般に既に利用可能であり、しかも相応に実施されている。ゆえに、風力発電設備のために要求されるモデルは、上述したようなRMS‐動的タイプのモデルであるべきである。
【0027】
以下で述べるのは、風力発電設備のモデルに関する具体的要求である。
【0028】
現在のところ、独国において高電圧ネットワークに特定の組込み型発電ユニットを接続することに関する一般的な規定は、「Verband Deutscher Netzbetreiber VDN(独国ネットワーク運営者協会)」によって作成される。この規定は、UCTE(独国エネルギー供給法令に基づくユニットに関する伝送および分配)のもと、ネットワークコードの技術的細目の基準となる。
【0029】
さらに、独国ネットワーク運営者は、さまざまなシステム解析目的のために、風力発電設備モデルに関する要求を具体的に述べている。以下の要求は、動的障害研究のために、これまで具体的に述べられてきたものである。
【0030】
タービンモデルは、端子電圧および電流に関する位相ベクトルによって、ポジティブシーケンスRMS‐動的ネットワークモデルに結合される。
【0031】
それは、0.1・・・0.8puの残存端子電圧を伴う対称的三相障害に関して、0.1ないし3秒の障害排除時間に関して、そして(過渡現象が消滅した後の)概ね100msないし障害後の概ね5秒(過渡安定性に関する臨界領域)の時間領域に関して適用される。多数のタービンに関して使用可能であり、したがって限定された拡張(精度に関して許容できる限り)に適用できるモデル。初期運転ポイント(生成されるエネルギー)を規定するための選択。ユーザー定義コンポーネントに関する制限された可能性を伴う、既存のシステム解析ソフトウエアにおけるモデルの遂行に係る可能な様式。
【0032】
本発明による風力発電設備の基本設計および機能について以下で説明する。
【0033】
図4に、本発明による風力発電設備の基本構造を示す。この点に関し、特に、二つの電力モジュールを備えた風力発電設備が図示されている。
【0034】
この風力発電設備は3枚のピッチ制御ローターブレードを備える。このローターは、モーターの公称速度に達するまで最適ピッチ角度で作動させられる(始動状況を除く)。もし、速度が、風速増大のためにあるいはネットワークにおける損失(障害ライドスルー)のために公称速度を超えた場合、ピッチ制御ユニットが速度を制限し、そして安全な状況下で風力発電設備を稼働させる。
【0035】
ローターは、六相同期発電機を直接、トランスミッションを介さずに動かす。ローターは電気的に励磁される。励磁システムはDC電圧バスに対して、風力発電設備の始動段階を除いて接続される。この励磁制御器は風力発電設備の制御システムの一部である。発電機は可変電圧をDC電圧バスに供給する。
【0036】
DC電圧‐AC電圧中間回路は電力モジュールを有する。モジュールの数は風力発電設備の構造に依存する。各モジュールのDC電圧中間回路は、さまざまな目的のためのチョッパ、バランスコンデンサ、IGBTインバータおよびフィルターアセンブリを具備してなる。
【0037】
(単一の)変圧器もまた、フィルター構造の一部である。
【0038】
ネットワークの観点からは、通常の状況下あるいは徐々に変化する状況下において、電力モジュールは、(電流の基本周波数に関して)制御された対称的な電流源のように機能する。電流の平方根(RMS)およびその位相角は、対称関係で制御されかつ保持される。
【0039】
インバータは風力発電設備のさまざまなパラメーターによって制御される。インバータの制御器が風力発電設備の制御器全体の実質的な一部であるので、この制御器が孤立する可能性は著しく制限される。これが、モデルの、所与の不可避的拡大の理由である。
【0040】
たとえば、インバータ、チョッパなどの電子式電力機器には高速制御が不可欠である。これは、図4に示すような、さまざまな分散型制御器Cによって達成される。RMS時間領域においては、制御器の大部分は平衡状態に置かれていると考えることができる。
【0041】
電圧および電力制御およびいくつかの他の制御タスクは、RMS時間領域において風力発電設備の動的状況に関係がある。これらの制御器は、モデルを作る際に系統立てて考慮しなければならない。図4に示すMPUおよび特定の制御器インターフェースは、この制御レベルのための設備を説明している。
【0042】
外部インターフェースとの標準的コミュニケーション、および設定値、たとえば電力制限Pmaxおよび位相角などの補正は、SCADAユニットによって実現される。このシステムは、高速ネットワーク制御目的のための使用には供されない。高速制御標準器は、特定の制御器インターフェースを使用する。
【0043】
以下、システム障害を調和させる間の基本的な働きについて説明する。
【0044】
本発明による風力発電設備の開発およびそのライドスルー特性の試験のための試験システムは、以下の主要な特徴によって説明される。根本的な設計コンセプトの開発および試験のためのオリジナル電子システム、制御ストラテジーおよびアルゴリズム、ソフトウエアおよび電子機器の品目と共に、サイズが低減された発電機/整流器/DC電圧中間回路/インバータ/フィルターシステムが提供される。フレキシブルなネットワークによって、さまざまな種類のシステム構成および障害を可能にする。過度に騒々しいPCCによって、測定機器および制御コンポーネントにとって過酷な状況が生じる。
【0045】
短絡電力および周波数に関する微弱なPPCは、システム制御にとって困難な作動状況を引き起こす(アルゴリズムおよびソフトウエアと同様に概念)。
【0046】
図5に、ライドスルー試験のための試験システムの構成を示す。以下の障害は、指示された位置において発生させられた。
【0047】
インピーダンスゼロの対称的3相障害Fは、持続時間が770msのものである。
【0048】
およそ−8°の位相ジャンプによって排除が実現される。短絡電力率は、およそ30から15へと低減させられた。
【0049】
インバータにおける電流I、および端子電圧V(アースへの電線)は、矢印で示された位置で測定される。この試験の結果を図6ないし図9に示す。サンプリング速度は3kHzで選ばれた。この例では、プレフィルター(アンチエイリアシング)を使用していない。
【0050】
図6においては、電流Iおよび電圧Vは、サンプリングに関連付けて示されている。この例では、障害は、概ね1500サンプリングと3500サンプリングとの間で生じている。障害が発生している間、電圧の落ち込みが生じる。
【0051】
図7は有効電力Pおよび無効電力Pを示す。この例では、有効電力Pは上側曲線で表され、一方、下側曲線は無効電力を表している。ここで、概ね1800サンプリングの後、約4000サンプリングまで障害が生じている。障害発生中、有効電力は低下し、さらに具体的に言うと、約0.6から0.2pu以下まで低下している。障害排除後、すなわち、およそ4000サンプリングにおいて、有効電力が短時間増大している。この有効電力のピークは1.2puに達している。無効電力Pもまた障害排除後に増大しており、その後、再び、実質的にゼロまで低下している。
【0052】
図8には、図6に示したものの一部を示す。これに関して、障害発生後に電流が減少し、その後、再び増大することが分かる。だが、電圧波形Vに関しては状況が異なる。なぜなら電圧波形は著しく変動するからである。
【0053】
図9には、障害排除後の、図6に示したものの一部を示す。この図から、電流は振動するが、電圧は初めあるレベルに留まり、続いて約3660サンプリング後に、やはり振動を始めることが分かる。
【0054】
(先に言及しかつ図4に示すような)本来のサイズの電力モジュールが、試験装置で適切に試験された。実施された試験では、対称的システム障害中およびその後、全てのパワー電子コンポーネントの負荷の分析がまず行われた。
【0055】
対応する試験結果を図10ないし図13に示す。
【0056】
図10に時間と端子電圧との関係を示す。ここで、障害は約3.4秒に生じ、そして約6.8秒まで継続している。上述した電圧の落ち込みは、この障害の間に生じる。
【0057】
図11に、障害発生中の、時間と電流との関係を示す。図10に示すように電圧の落ち込みが生じるが、電流はこの障害の間、増大している。
【0058】
図12に、障害発生中の、有効電力と時間との関係を示す。3.4秒から6.8秒までの障害の間、有効電力はゼロまで低下している。障害排除後に有効電力のピークが存在する。
【0059】
図13に障害排除時における図12の一部を示す。この図から電力のピークを明確に認識できる。電力ピークは1.2puを超えている。その後、有効電力は0.7ないし0.8puの値まで再び降下する。
【0060】
図5に示す試験システムは、過渡現象のために、そしてまた動的システム分析のために一般に採用される、システム分析アプローチに従って構築された。
【0061】
試験システムのモデルは、エアギャップのハーモニックフラックス接続を備えた六相発電機(FEMベースのパラメーター表示)、ステータ整流器およびコントローラを含むローター励磁デバイス、全てのパワーエレクトロニクス部品(チョッパー)およびコントローラを含むDC電圧中間回路、コントローラを含むインバータ、関連MPU関数、フィルター、ベクトル群および接地を伴う変圧器、アースを含む電線を有する(フルマトリックス表示)。
【0062】
このシステムモデルは、時間領域における非線形完全状態ハイブリッドモデル(連続/離散ハイブリッドモデル)である。連続部分は、さまざまな時間スケールに固有値を有し、しかも数値積分法によって分析しなければならない。
【0063】
図5に示すライドスルー試験に適用されるライドスルーシナリオは、上記モデルを用いて分析された。だが、障害継続時間は、時間を浪費する数値積分処理を短縮することによって100msに制限された。アクティブ試験システムとは対照的に、等価システム発電機は、ネットワークのノイズを描写するために、確率的に妨害されなかった。
【0064】
図14および図15に選択された分析結果を示す。この分析結果は、図6ないし図9の測定値と比較することができる。この比較の解釈に関して、短縮された障害継続時間およびネットワークのノイズもまた考慮しなければならない。
【0065】
図15に障害が発生した時の有効電力を示す。この図からも、障害の間の、すなわち0.05秒から0.15秒の間の、有効電力の明確な落ち込みを認識できる。0.15秒において障害が排除された後、この例でもまた、有効電力が短時間だけ増大させられて供給されており、この点に関して、供給された有効電力は1.2puに到達し得る。
【0066】
上で既に説明したように、ネットワーク運営者はしばしば、RMS‐動的アプローチに基づく動的システム分析用のソフトウエアパッケージを使用する。このタイプは、過渡現象モデルに比べて動的状態が著しく少なく、オーダー低減によって発展させることが可能である。
【0067】
この分野における全ての関連する構成上の様態を考慮しかつ上記基準を満たすRMS‐動的モデルは、こうして、試験システムのために開発された。
【0068】
図16および図17には、測定されたシナリオと同じライドスルーシナリオに関する、対応する分析結果を表す。この結果は、図6および図7に示す測定結果ならびに図14および図15に示す過渡現象の分析に由来する結果と比較可能である。
【0069】
図17には図16に示す電流および電圧波形から計算された有効電力を表す。この例では、やはり、障害排除後に、短時間だけ増大させられる有効電力供給を直接認識することができる。
【0070】
本発明による風力発電設備は、こうしてライドスルーオプションを提供し、標準化された電力軸上の約1.0ないし1.2puの短絡電力を与え、そして障害排除後は、直ちに有効電力および無効電力を発生させる。有効電力の発生は、中断を伴わずに、全時間にわたってネットワークにつながったままであることによって達成される。
【0071】
動的システム分析目的のために、ポジティブシーケンスRMSアプローチおよび伝達関数表示に基づくモデルが提供される。このモデルによってカバーされない状況(過渡的現象および位相不平衡障害)については、個別モデルが必要となる。
【0072】
上で説明した、短時間に著しく増大する発電機電力は、実質的に、発電機および中間回路によって供給される。この作用はシステム固有の挙動を示さないが、中間回路の適切な制御によって実行されなければならない。
【0073】
発電機がたとえば公称出力の0.6倍を発生している通常の運転状況では、同期機は、直流電流で励磁されるポールローターと共に稼働し、それはステータに回転磁界を発生させ、これが今度はステータ巻き線に電圧を誘起する。この例では、ポールローターは、その変位角によってステータにおいて回転する磁界を導く。たとえば電圧の落ち込みによってネットワークに障害が生じたとき、ネットワークへの電力供給は低下し、これはまた中間回路電圧の増大につながる。中間回路に設けられているのは、いわゆるチョッパであり、これは、ローターのオーバースピードを抑えるために、負荷抵抗体として余剰出力を消散させる。すなわちそれを消費する。しかしながら、中間回路電圧のこの増大はまた、発電機に影響を及ぼす。チョッパからなる制御装置がまた中間回路電圧のレベルを決定するので、それはやはり発電機の端子電圧にある影響を及ぼし、それゆえ本発明による風力発電設備における、この電圧は、通常運転におけるそれよりも、いくらか高いものである。
【0074】
発電機に関して、これは僅かに高いローター速度をもたらし、この速度は、ローターブレード、ハブおよびポールローターを具備してなる機械システムに反映される。しかし同時に、ローター変位角はまた、ある程度小さくなる。これによって、ある程度発電機モーメントが減少するので、ある程度高い速度が得られる。
【0075】
ネットワークが通常の運転状況に復帰するとき、最初の瞬間に、より大きなレベルの電力が、より高い中間回路電圧によって、インバータを経てネットワークに流れ込む。この結果、中間回路電圧が降下するので、発電機の端子電圧も変化し、ローター変位角が再び増大し、発電機モーメントは増大し、そして機械システムの回転速度は再び僅かに低下する。約100〜200ミリ秒の比較的短い時間、発電機は、僅かに増大した速度によって、機械システムが相応程度に減速されるまで、より大きな電力を供給する。このエネルギーは、ネットワークに供給可能な付加的電力を生成する。
【0076】
短時間だけ増大させられた電力供給は、こうして、チョッパの特定の目標制御によって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】いくつかの発電ユニットを備えたエネルギーネットワークを示す図である。
【図2】障害による図1に示すシステムにおける電圧の落ち込みを示す図である。
【図3】図1に示すシステムにおける障害排除後の電圧波形を示す図である。
【図4】本発明による風力発電設備の基本構造を示す図である。
【図5】試験システムの基本構造を示す図である。
【図6】図5に示す試験システムに関する測定結果を示す図である。
【図7】図5に示す試験システムに関する測定結果を示す図である。
【図8】図5に示す試験システムに関する測定結果を示す図である。
【図9】図5に示す試験システムに関する測定結果を示す図である。
【図10】図4に示すシステムに関する、さらなる試験結果を示す図である。
【図11】図4に示すシステムに関する、さらなる試験結果を示す図である。
【図12】図4に示すシステムに関する、さらなる試験結果を示す図である。
【図13】図4に示すシステムに関する、さらなる試験結果を示す図である。
【図14】図1に示すシステムの分析結果を示す図である。
【図15】図1に示すシステムの分析結果を示す図である。
【図16】さらなる分析結果を示す図である。
【図17】さらなる分析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
C 分散型制御器
G 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備を運転するための方法であって、通常運転モードにおける第1の運転状況下では前記風力発電設備は、接続された電力ネットワークに第1の電力を供給し、これは風速に対応するものである方法において、
前記風力発電設備は、障害が発生したとき、前記接続された電力ネットワークにつながったままであると共に前記第1の電力よりも小さな第2の電力を前記接続された電力ネットワークに供給し、かつ前記第1の運転状況下で、前記障害の収束時、短時間だけ、前記第1の電力よりも著しく大きな第3の電力を、接続された電力ネットワークに供給するよう、前記風力発電設備を制御するステップを具備することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第3の電力は短絡電力に相当することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記風力発電設備は中間貯蔵手段を備えると共に、高められた前記第3の電力は前記中間貯蔵手段の制御によって得られることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記風力発電設備は前記中間貯蔵手段としてDC電圧中間回路を備えると共に、高められた前記第3の電力は前記DC電圧中間回路の制御によって得られることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DC電圧中間回路はチョッパを備えると共に、高められた前記第3の電力は前記DC電圧中間回路における前記チョッパの制御によって得られることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記風力発電設備の発電機の回転が前記中間貯蔵手段として利用されると共に、高められた前記第3の電力は前記回転の制御によって得られることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
接続された電力ネットワークに電力を供給するための、特に、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の方法を実施するための風力発電設備であって、この風力発電設備を制御するための制御ユニットを具備してなり、
前記制御ユニットは、
通常の運転モードにおける第1の運転状況下では、風速に対応する第1の電力が前記接続されたネットワークに供給され、
障害が発生したとき、風力発電設備は、前記接続された電力ネットワークにつながったままであると共に前記第1の電力よりも小さな第2の電力を前記接続された電力ネットワークに供給し、かつ前記第1の運転状況下で、前記障害の収束時、短時間だけ、前記第1の電力よりも著しく大きな第3の電力を、接続された電力ネットワークに供給するよう、風力発電設備を制御することを特徴とする風力発電設備。
【請求項8】
前記風力発電設備は中間貯蔵手段を具備すると共に、前記制御ユニットは、前記中間貯蔵手段の制御によって、高められた前記第3の電力を得るよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の風力発電設備。
【請求項9】
前記中間貯蔵手段としてDC電圧中間回路を具備してなり、
前記制御ユニットは、前記DC電圧中間回路の制御によって、高められた前記第3の電力を得るよう構成されていることを特徴とする請求項8に記載の風力発電設備。
【請求項10】
前記DC電圧中間回路はチョッパを具備してなると共に、高められた前記第3の電力は、前記DC電圧中間回路における前記チョッパの制御によって得られることを特徴とする請求項9に記載の風力発電設備。
【請求項11】
風力発電設備の発電機の回転が前記中間貯蔵手段として使用されると共に、高められた前記第3の電力は前記回転の制御によって得られることを特徴とする請求項8に記載の風力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−506400(P2007−506400A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527338(P2006−527338)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010616
【国際公開番号】WO2005/031941
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】