説明

グリッド生成方法

【課題】 コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析する技術において、精度の高い解析結果が得られるグリッドを容易に生成できる方法を提供する。
【解決手段】 コンピュータ上で、部品の各頂点をそれぞれ通過する基本グリッド線を生成する。基本グリッド線の間隔が、ユーザにより指定された最小グリッド間隔よりも狭いときは、対応する基本グリッド線が自動的に削除される。ユーザにより指定されるグリッド本数に応じて、1または複数の補助グリッド線が基本グリッド線間に自動的に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成する装置、方法、およびプログラムに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析(または、シミュレーション)する技術が開発されてきている。たとえば、対象物の周辺の3次元流体解析、熱解析、電磁場解析などが行われている。
【0003】
この種の解析においては、しばしば、図17に示すようなグリッド(または、メッシュ)が使用される。2次元モデルにおいては長方形グリッドが使用され、3次元モデルにおいては直方体(キューボイド)グリッドが使用される。なお、3次元モデルの解析は、X−Y平面、Y−Z平面、Z−X平面への投影を利用することができる。
【0004】
グリッドは、コンピュータ上で定義される対象物(以下、部品)の配置を考慮して生成される。そして、グリッドにより得られる各セルにそれぞれパラメータを与え、解析すべきモデルに対応する方程式を解くことで、その部品の形状に係わる物理量が解析される。ここで、この解析の計算精度を高めるためには、各セルを定義するグリッド線が部品形状の特徴点(例えば、頂点)を通過するように生成されていることが望ましい。
【0005】
上記解析のために使用するグリッドは、例えば、以下のようにして生成される。すなわち、まず、部品の形状を特定する複数のポリゴンデータを生成し、図18(a)に示すように、各ポリゴンの頂点を通過するグリッド線を生成する。このようにして生成されるグリッド線を「基本グリッド線」と呼ぶことにする。続いて、必要に応じて、図18(b)に示すように、基本グリッド線間に新たなグリッド線を生成する。このようにして基本グリッド線間に挿入されるグリッド線を「補助グリッド」と呼ぶことにする。なお、基本グリッド線は、各ポリゴンの頂点座標を検出することにより自動的に生成されるが、補助グリッド線は、ユーザがキーボードまたはマウス等を用いて手動で設定する。
【0006】
特許文献1には、3次元形状モデルの解析のためのメッシュを生成する装置において、その生成を効率的に行う技術が記載されている。
【特許文献1】特開平11−259684号公報(図1、明細書の段落0021〜0027)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記解析において、グリッド線(基本グリッド線および補助グリッド線を含む)が等間隔に並んでおり、且つ、各セルのアスペクト比が良好であれば、計算精度が向上する。ここで、「セルのアスペクト比」とは、そのセルのX方向の長さ、Y方向の長さ、Z方向の長さの比(2次元モデルでは、そのセルのX方向の長さとY方向の長さの比)を意味し、それらが互いに近似しているほど計算精度が高くなる。
【0008】
ところで、基本グリッド線は、上述したように、自動的に生成することができる。しかし、基本グリッド線を自動的に生成する場合、部品の形状によっては、それらの間隔が狭くなりすぎてしまうことがある。この場合、アスペクト比の悪いセルが生成されることになり、計算精度が低下してしまう。なお、最も狭い基本グリッド間隔を基準として補助グリッド線を生成すれば、アスペクト比を改善することができる。しかし、この場合、部品の形状によっては、膨大な数の補助グリッド線を生成する必要があり、それに伴って計算量も増大してしまう。
【0009】
また、補助グリッド線は、上述したように、ユーザが手動で設定する必要がある。このとき、ユーザは、キーボードまたはマウス等を用いて各補助グリッド線を1本ずつ設定する必要がある。すなわち、この作業は、手間のかかる面倒なものである。
【0010】
本発明の目的は、コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析する技術において、精度の高い解析結果が得られるグリッドを容易に生成できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のグリッド生成方法は、コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成する方法であって、上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成し、グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する。
【0012】
この方法によれば、基本グリッド要素が生成された後、補助グリッド要素を個々に設定することなくグリッド要素数情報を入力するだけで、ユーザが要求する本数の補助グリッド要素が生成されて基本グリッド要素間に配置される。なお、グリッド要素とは、2次元モデルにおけるグリッド線、および3次元モデルにおけるグリッド面を含む概念である。
【0013】
上記グリッド生成方法において、基本グリッド要素の最小間隔を指示する最小間隔情報に従って、上記基本グリッド要素を削除または追加するようにしてもよい。この方法によれば、グリッド間隔が所定値(すなわち、最小間隔情報が指定する間隔)よりも小さくなることはない。よって、グリッドのアスペクト比の悪化を回避できる。よって、解析精度が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析する技術において、精度の高い解析結果が得られるグリッドを容易に生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明を実施するためのシステム環境を示す図である。コンピュータ1は、CPU、メモリを備え、予め記述されているプログラムを実行することによりそのプログラムに対応する機能を提供する。なお、コンピュータ1は、可搬型記録媒体にアクセスするための可搬型記録媒体ドライバ、通信I/Fを備えていてもよい。キーボード2およびマウス3は、コンピュータ1の入力装置である。すなわち、ユーザは、キーボード2およびマウス3を利用してコンピュータ1にデータ、指示、コマンド等を入力する。表示装置4は、コンピュータ1の出力装置であり、コンピュータ1により生成される情報を表示する。
【0016】
上記構成のシステムにおいて、本発明に係る方法は、コンピュータ1において定義される1または複数の物体(以下、部品)の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成する。
【0017】
図2(a)は、コンピュータ上で定義される部品の例である。ここでは、説明を簡単にするために、極めて単純な三角錐形状の部品を採り上げる。部品の形状(および、配置)は、コンピュータ上では、複数の特徴点の座標により定義される。特徴点としては、この実施例では、部品を構成するポリゴンの頂点が使用される。図2(a)に示す例では、三角錐の4個の頂点P1〜P4の座標により部品の形状が定義されている。
【0018】
図2(b)は、部品の形状を定義する部品定義テーブルの実施例である。この例では、4個の頂点について、それぞれ、座標データおよび属性データが登録されている。なお、属性データは、複数の部品を含む解析モデルにおいて、各頂点が属する部品を識別する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態のグリッド生成方法の概略を説明する図である。実施形態のグリッド生成方法は、部品の形状が予め定義されていることを前提とする。ここでは、図3(a)に示す部品の形状が定義されているものとする。
【0020】
まず、図3(b)に示すように、基本グリッド線が生成される。基本グリッド線は、部品の頂点を通過するグリッド線である。続いて、ユーザは、基本グリッド間隔(互いに隣接する基本グリッド線どうしの間の間隔)の最小間隔を指定する。これにより、指定された条件を満たさない基本グリッド線が検出され、削除される。さらに、ユーザは、基本グリッド線間に挿入すべき補助グリッド線の本数(または、基本グリッド線および補助グリッド線の総本数)を指定する。これにより、図3(c)に示すように、指定された本数の補助グリッド線が生成されて基本グリッド線間に挿入される。このとき、補助グリッド線は、基本グリッド線および補助グリッド線から構成されるグリッドの密度が可能な限り均質になすように配置される。なお、基本グリッド線間に補助グリッド線を挿入する際、基本グリッド線の位置は動かさない。
【0021】
2次元モデルにおいては、X方向およびY方向についてそれぞれ上記手順を実行することで、長方形グリッドが生成される。また、3次元モデルにおいては、X方向、Y方向、Z方向についてそれぞれ上記手順を実行することで、直方体グリッドが生成される。尚、解析を実行する際には、基本グリッド線と補助グリッド線との区別はない。
【0022】
図4は、実施形態のグリッド生成方法の概略を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローチャートの処理は、2次元モデルにおいてはX方向、Y方向について個々に実行され、3次元モデルにおいてはX方向、Y方向、Z方向について個々に実行される。
【0023】
ステップS1では、各頂点の座標を検出することにより、基本グリッド線を生成する。ステップS2では、基本グリッド線の最小間隔を指示する最小間隔情報を取得する。最小間隔情報は、ユーザにより入力される。ただし、ユーザからの入力が無かったときは、予め用意されているデフォルト値を取得する。そして、ステップS3において、取得した最小間隔情報に基づいて基本グリッド線を削除する。すなわち、互いに隣接する2本の基本グリッド線間の間隔が最小間隔情報により指示された最小間隔よりも小さかったときは、それらのうちの1本を削除する。また、最小間隔情報に応じて基本グリッド線を追加することもできる。ただし、すべての頂点に対して既に基本グリッド線が生成されているときは、基本グリッド線をそれ以上追加することはできない。
【0024】
ステップS4では、生成すべき補助グリッド線の本数(又は、全グリッド線の本数)を指示するグリッド本数情報を取得する。グリッド本数情報は、ユーザにより入力される。ただし、ユーザからの入力が無かったときは、予め用意されているデフォルト値を取得する。そして、ステップS5において、補助グリッド線を生成(または、追加/削除)し、対応する基本グリッド線間に挿入する。
【0025】
なお、グリッドは、2次元モデルにおいては「グリッド線」により構成されるのに対して、3次元モデルでは「グリッド面」により構成される。しかし、この明細書では、説明を簡単にするために、グリッド線およびグリッド面を含む概念の総称を「グリッド線」と呼ぶことにする。
【0026】
図5は、基本グリッド線の生成/削除/追加について説明する図である。ここでは、説明を簡単にするために、図5(a)に示す2次元モデルが定義されているものとする。
まず、図5(b)に示すように、各頂点を通過する基本グリッド線が生成される。この例では、頂点P2を通過する基本グリッド線B1、頂点P1を通過する基本グリッド線B2、頂点P3を通過する基本グリッド線B3、頂点P4を通過する基本グリッド線B4が生成される。
【0027】
続いて、コンピュータ1に接続されている表示装置4に、図6に示すダイアログ画面が表示される。図6において、スライダ11は、ユーザに最小グリッド間隔を入力させるための入力デバイスである。すなわち、ユーザは、マウス3を用いてスライダ11のタップ12をドラッグすることにより、所望の最小グリッド間隔値を指定することができる。ここで、スライダ11は、ゼロから予め決められた所定値までの任意の値を指定することができる。そして、スライダ11により指定された値は、領域13に表示される。なお、最小グリッド間隔値の指定は、X方向およびY方向について個々に行うことができる。また、ユーザは、キーボード2を用いて所望の最小グリッド間隔値を領域13に入力することもできる。
【0028】
最小グリッド間隔値が指定されると、図5(b)において、互いに隣接する基本グリッド線間の間隔D1、D2、D3と指定された最小間隔値とがそれぞれ比較される。この場合、間隔D1、D2、D3がいずれも指定された最小グリッド間隔値よりも大きければ、基本グリッド線が削除されることはない。しかし、例えば、間隔D2が指定された最小グリッド間隔値よりも小さければ、図5(c)に示すように、一方の基本グリッド線(この例では、基本グリッド線B3)が削除される。
【0029】
なお、上述のようにして基本グリッド線が削除された後、ユーザが基本グリッド最小グリッド間隔値を変更し、その最小グリッド間隔値が間隔D2よりも小さくなったときは、基本グリッド線B3が追加されて図5(b)に示す状態に戻る。
【0030】
このように、実施形態のグリッド生成方法においては、基本グリッド線が生成された後に、ユーザが指定する最小グリッド間隔値に基づいて基本グリッド線が自動的に削除または追加される。したがって、グリッドが必要以上に細かくなることが回避され、グリッドにより形成されるセルのアスペクト比の悪化を回避できる。この結果、このグリッドを利用して実施される解析の精度が向上する。また、スライダを操作するだけで最小グリッド間隔値を指定できるので、ユーザの操作性は良好である。
【0031】
図7は、補助グリッド線の生成/追加/削除について説明する図である。ここでは、図5〜図6を参照しながら説明した手順により、図7(a)に示す状態が得られているものとする。すなわち、基本グリッド線B1、B2、B4が生成されているものとする。
【0032】
まず、コンピュータ1に接続されている表示装置4に、図8に示すダイアログ画面が表示される。図8において、スライダ21は、ユーザにグリッド線本数を入力させるための入力デバイスである。すなわち、ユーザは、マウス3を用いてスライダ21のタップ22をドラッグすることにより、所望のグリッド線本数を指定することができる。ここで、ユーザが指定する「グリッド線本数」は、補助グリッド線の本数であってもよいし、基本グリッド線および補助グリッド線の合計本数であってもよい。そして、最小グリッド線本数(nx_min、ny_min)は、前者の場合は「ゼロ」であり、後者の場合は「基本グリッド線の本数」である。
【0033】
スライダ21は、最小グリッド線本数から予め決められた所定値までの任意の値を指定できる。そして、スライダ21により指定された値は、領域23に表示される。なお、グリッド線本数の指定は、X方向およびY方向について個々に行うことができる。また、ユーザは、キーボード2を用いて所望のグリッド線本数を領域23に入力することも可能である。
【0034】
補助グリッド線は、グリッド間隔の最も広い領域に挿入される。また、複数の補助グリッド線が生成される場合は、各補助グリッド線は、グリッド間隔の広い領域から順番に挿入される。ここでは、3本の補助グリッド線が挿入されるケースについて説明する。
【0035】
図7(a)において、グリッド間隔D1よりもグリッド間隔D2の方が広い。したがって、この場合、1本目の補助グリッド線A1は、図7(b)に示すように、基本グリッド線B2、B4の中間位置に配置される。この結果、基本グリッド線B2と補助グリッド線A1との間隔、及び基本グリッド線B3と補助グリッド線A1との間隔は、いずれもd2(=D2/2)である。
【0036】
つづいて、図7(b)においては、グリッド間隔d2よりもグリッド間隔D1の方が広い。よって、この場合、2本目の補助グリッド線A2は、図7(c)に示すように、基本グリッド線B1、B2の中間位置に配置される。このとき、間隔d1は、間隔D1の2分の1である。
【0037】
さらに、図7(c)において、グリッド間隔d1よりもグリッド間隔d2の方が広い。この場合、3本目の補助グリッド線A3は、図7(d)に示すように、基本グリッド線B2、B4間に配置される。このとき、基本グリッド線B2、B4間には、すでに補助グリッド線A1が挿入されている。したがって、この場合、補助グリッド線A1、A3は、基本グリッド線B2、B4間の領域を3等分するように配置される。
【0038】
このように、実施形態のグリッド生成方法においては、グリッド線の本数を指定するだけで、概ね均等な間隔でグリッド線を配置することができる。すなわち、ユーザにとって煩雑な作業を行うことなく、全範囲に渡って概ね均質なグリッドが生成される。
【0039】
次に、実施形態のグリッド生成方法について詳細に説明する。
図9は、基本グリッドを生成する処理のフローチャートである。なお、この処理は、図4のステップS1に相当する。
【0040】
ステップS11では、部品を順番に指定するための変数Cを初期化する。ステップS12では、指定された部品について、部品定義テーブルから各頂点の座標データを取得し、リストに登録する。ステップS13では、変数Cをインクリメントすることにより次の部品を指定する。ステップS14では、ステップS12の処理を実行すべき部品が残っているか否かをチェックする。部品が残っていればステップS12に戻り、すべての部品についてステップS12の処理が終了していれば、ステップS15に進む。
【0041】
ステップS15では、X座標、Y座標、Z座標のそれぞれについて、座標データを小さい順に並べ替えてグリッドテーブルに登録する。そして、そのグリッドテーブルに従って基本グリッド線を生成する。これにより、各頂点を通過する基本グリッドが生成される。
【0042】
図10(a)は、グリッドテーブルの実施例である。なお、グリッドテーブルは、例えば、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれについて作成されるものである、基本的に、同じデータ構造である。
【0043】
図10(a)において、「頂点番号N」は各頂点を識別する。ここで、「頂点番号N」は、座標順に従って付与される。「座標」は、各頂点の座標である。「属性」は、各頂点が属する部品を識別する。この例では、頂点番号N=1、2、4が付されている各頂点が部品C1に属しており、頂点番号N=3が付されている頂点が部品C2に属している。「グリッド線の有無」は、頂点を通過する基本グリッドが存在するか否かを表す。この例では、頂点番号N=1、2、3が付されている各頂点は、それぞれ基本グリッド線を有している。「グリッド本数」は、隣接する基本グリッド線との間に存在する補助グリッド線の本数を表す。この例では、第1番目の基本グリッド線と第2番目の基本グリッドとの間には補助グリッド線が存在しておらず、第2番目の基本グリッド線と第3番目の基本グリッドとの間には2本の補助グリッド線が存在している。なお、「グリッド線の有無」および「グリッド本数」の更新については、後で説明する。
【0044】
実施形態のグリッド生成方法では、複数の部品が存在する場合には、ユーザが各部品に対して優先度を設定することができる。各部品の優先度は、図10(b)に示す優先度テーブルに登録される。
【0045】
図11は、基本グリッド線を削除/追加する処理のフローチャートである。なお、この処理は、図4のステップS2、S3に相当する。また、この処理は、ユーザが図6に示すスライダ11を操作したときに実行される。さらに、変数Nは、図10(a)を参照しながら説明した頂点番号である。
【0046】
ステップS21では、スライダ11を利用して入力されたユーザの指示を取得する。すなわち、タップ12の位置を検出する。ステップS22では、タップ12の位置に基づいて最小グリッド間隔を算出する。ステップS23では、すべての基本グリッド線をOFF状態に設定する。すなわち、図10(a)に示すグリッドテーブルにおいて、すべての頂点について「グリッド線の有無」にOFFを設定する。
【0047】
ステップS24では、グリッドテーブルにおいて、「変数N=1」のためのレコードの「グリッド線の有無」にONを設定する。これにより、第1番目の基本グリッド線が生成される。
【0048】
ステップS25では、グリッドテーブルからN番目およびN+1番目の頂点の座標を取得する。ステップS26では、まず、N番目の頂点の座標とN+1番目の頂点の座標との差分(すなわち、間隔)を算出する。そして、この間隔とステップS22で算出した最小グリッド間隔とを比較する。この結果、N番目の頂点とN+1番目の頂点との間隔が最小グリッド間隔よりも小さければ、「N」を固定したまま「N+1」をインクリメントしてステップS25に戻る。これにより、N番目の頂点とN+2番目の頂点との間隔と最小グリッド間隔とが比較されることになる。以降、最小グリッド間隔よりも大きな間隔が得られる頂点が見つかるまでステップS25およびS26が実行される。
【0049】
ステップS27では、グリッドテーブルにおいて、ステップS25〜S26により検出された頂点について「グリッド線の有無」にONを設定する。これによりステップS26の条件を満たす頂点を通過する基本グリッド線が生成される。ステップS28では、すべての頂点についてステップS25〜S27が実行されたか否かをチェックする。そして、未処理の頂点が残っていれば、変数NをインクリメントしてステップS25に戻る。
【0050】
このように、実施形態のグリッド生成方法によれば、基本グリッド線の間隔がユーザにより指定された最小グリッド間隔よりも小さくなることを回避するように、基本グリッド線が生成される。すなわち、ユーザがスライダ11を操作して最小グリッド間隔を小さくすれば、必要に応じて上記条件を満たすように基本グリッド線が削除される。また、ユーザがスライダ11を操作して最小グリッド間隔を大きくすれば、必要に応じて上記条件を満たす範囲内で基本グリッド線が追加される。なお、基本グリッド線の表示装置4への描画は、スライダ11の操作に応じてリアルタイムで行われることが望ましい。
【0051】
図12は、部品の優先度を考慮して基本グリッド線を削除/追加する処理のフローチャートである。ここでは、図10(b)に示す優先度テーブルが予め作成されているものとする。また、ステップS21〜S23の処理は、図11を参照しながら説明した通りである。
【0052】
ステップS31では、優先度テーブルを参照し、各頂点に関するデータを優先度に従って並べ替えたリストを作成する。ステップS32では、優先度の最も高い部品の各頂点について図11に示すフローチャートの処理を実行し、1本以上の基本グリッド線を生成する。
【0053】
ステップS33では、優先度に応じて次の部品を選択する。なお、以下では、ステップS33で選択された部品に属する各頂点は、変数Mにより表されるものとする。ステップS34では、M番目の頂点の座標を取得する。ステップS35では、グリッドテーブルを参照し、M番目の頂点に隣接する頂点(正側頂点および負側頂点)の座標を取得する。なお、ここでは、グリッド線がONに設定されている頂点の中から、M番目の頂点に隣接する頂点が抽出される。
【0054】
ステップS36では、M番目の頂点とそれに隣接する頂点との間隔が最小グリッド間隔と比較される。そして、M番目の頂点とその正側に隣接する頂点との間隔およびM番目の頂点とその負側に隣接する頂点との間隔がいずれも最小グリッド間隔よりも大きければ、ステップS37において、M番目の頂点のグリッドをONに設定する。これにより、M番目の頂点を通過するグリッドが生成される。なお、ステップS38は、選択された部品に属するすべての頂点についてステップS34〜S37を実行するために設けられている。また、ステップS39は、すべての部品につてステップS34〜S37を実行するために設けられている。
【0055】
このように、このフローチャートの処理によれば、基本グリッド線を削除する必要が生じた場合、優先度の低い部品の頂点を通過する基本グリッド線が削除されることになる。したがって、優先度の高い部品に係わる解析精度が低下することはない。なお、基本グリッド線の表示装置4への描画は、スライダ21の操作に応じてリアルタイムで行われることが望ましい。
【0056】
図13は、補助グリッド線の本数を増加させる処理のフローチャートである。なお、この処理は、図4のステップS4、S5に相当する。また、この処理は、ユーザが図8に示すスライダ21を操作したときに実行される。
【0057】
ステップS41では、スライダ21を利用して入力されたユーザの指示を取得する。即ち、タップ22の位置の変化を検出する。ステップS42では、タップ22の移動方向および移動距離に基づいて、追加または削除すべき補助グリッド線の本数(増加本数ΔM)を算出する。なお、ここでは、補助グリッド線を追加するために、図8においてスライダ21のタップ22がユーザにより右方向に移動させられたものとする。ステップS43では、追加すべき補助グリッド線をカウントするための変数Mを初期化する。
【0058】
ステップS44〜S48は、グリッド間隔が最も大きい領域を検出する処理である。すなわち、ステップS44では、頂点を識別する変数N、隣接する頂点までの間隔が最大である頂点を識別する変数Nmax、変数Nmaxに対応する間隔値を表す変数Dmaxを初期化する。ステップS45では、N番目の頂点を通過する基本グリッド線(以下、基本グリッド線N)とその隣の基本グリッド線(以下、基本グリッド線N+1)との間のグリッド間隔d(N)を算出する。なお、計算式は、「d(N)=D(N)/{n(N)+1}」である。ここで、D(N)は、基本グリッド線Nと基本グリッド線N+1との間の間隔を表す。また、n(N)は、基本グリッド線Nと基本グリッド線N+1との間に先に設けられている補助グリッド線の本数を表す。ステップS46では、新たに算出したグリッド間隔d(N)が先に算出されているグリッド間隔の最大値Dmaxと比較される。そして、新たに算出したグリッド間隔d(N)の方が大きければ、最大値Dmaxが更新される。
【0059】
ステップS49では、グリッド間隔が最も大きい領域のグリッド本数をインクリメントする。すなわち、N番目の頂点とN+1番目の頂点との間の領域におけるグリッド間隔が最も大きかったときは、図10(a)に示すグリッドテーブルにおいて、N番目の頂点のレコードのグリッド本数に「1」を加算する。ステップS50は、ΔM本の補助グリッド線が追加されるまでステップS44〜S49の処理を繰り返すために設けられている。
【0060】
このように、実施形態のグリッド生成方法によれば、グリッド線の本数を増加する旨の指示が与えられると、グリッド間隔が最も大きい領域が検出され、その領域に新たな補助グリッド線が自動的に追加される。よって、ユーザの負担を軽くしながら、全体として略均一なグリッドが得られる。
【0061】
図14は、補助グリッド線の本数を減少させる処理のフローチャートである。なお、補助グリッド線の本数を減少させる処理の流れは、補助グリッド線の本数を増加させる処理と同じである。ただし、補助グリッド線の本数を減少させる処理においては、グリッド間隔が最も小さい領域が検出され、その領域から既存の補助グリッド線が自動的に削除される。
【0062】
図15は、基本グリッド線の間隔が変更された後にグリッドを描画する処理のフローチャートである。なお、この処理は、1本以上の補助グリッド線が生成されて基本グリッド線間に挿入されている状態において、ユーザが図6に示すスライダ11を操作したときに実行される。また、以下の説明では、グリッド線の総数(削除された基本グリッド線を除く)が「M_all」本であるものとする。
【0063】
ステップS51では、スライダ11の操作に応じて基本グリッド線を削除または追加するとともに、グリッド線の総数M_allを算出する。なお、基本グリッド線を削除または追加する処理については、図11または図12を参照して説明した通りである。
【0064】
ステップS52では、基本グリッド線間に挿入される補助グリッド線本数を表す変数nをすべて初期化する。ステップS53〜S58の処理は、基本的に、図11のステップS44〜S49と同じである。すなわち、グリッド間隔の最も広い領域を検出し、その領域に挿入すべき補助グリッド線の本数n(i)をインクリメントする。そして、ステップS59を利用して、グリッド線をカウントするための変数Mが総数M_allに達するまでステップS53〜S58の処理が繰り返し実行される。
【0065】
なお、上述した機能または手順は、コンピュータを用いて上述のフローチャートに示した処理を記述したプログラムを実行することによって実現される。そして、本発明に係るプログラムは、例えば、図16に示す方法で提供される。
(1)コンピュータ1にインストールされて提供される。この場合、プログラムは、例えば、コンピュータ1の出荷前にそのコンピュータのメモリにプレインストールされる。
(2)可搬型記録媒体101に格納されて提供される。この場合、可搬型記録媒体101に格納されるプログラムは、基本的に、記録媒体ドライバを介して記憶装置にインストールされる。なお、可搬型記録媒体101は、例えば、半導体デバイス(PCカード等)、磁気的作用により情報が入出力される媒体(フレキシブルディスク、磁気テープ等)、光学的作用により情報が入出力される媒体(光ディスク等)等が該当する。
(3)ネットワーク上に設けられているプログラムサーバ102から提供される。この場合、コンピュータ1は、プログラムサーバ102からダウンロードすることにより対応するプログラムを取得する。あるいは、コンピュータ1は、プログラムサーバ102に格納されているプログラムをダウンロードすることなく利用するようにしてもよい。
【0066】
(付記1)コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するプログラムであって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成する手順、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する手順、
をコンピュータに行わせるグリッド生成プログラム。
【0067】
(付記2)基本グリッド要素の最小間隔を指示する最小間隔情報に従って、上記基本グリッド要素を削除または追加する手順をさらにコンピュータに行わせる
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0068】
(付記3)上記最小間隔情報は、コンピュータの表示装置に表示されるスライダを用いてユーザにより入力される
ことを特徴とする付記2に記載のグリッド生成プログラム。
【0069】
(付記4)上記最小間隔情報の変化に応じて基本グリッド要素がリアルタイムに削除または追加される
ことを特徴とする付記2に記載のグリッド生成プログラム。
【0070】
(付記5)上記物体が投影されたX−Y平面、Y−Z平面、Z−X平面のそれぞれにおいて基本グリッド要素の生成、削除、追加が行われる
ことを特徴とする付記2に記載のグリッド生成プログラム。
【0071】
(付記6)複数の物体に対してそれぞれ付与されている優先度に応じて基本グリッド要素を削除または追加する手順をさらにコンピュータに行わせる
ことを特徴とする付記2に記載のグリッド生成プログラム。
【0072】
(付記7)上記グリッド要素数情報は、コンピュータの表示装置に表示されるスライダを用いてユーザにより入力される
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0073】
(付記8)上記グリッド要素数情報の変化に応じて補助グリッド要素がリアルタイムに削除または追加される
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0074】
(付記9)上記物体が投影されたX−Y平面、Y−Z平面、Z−X平面のそれぞれにおいて補助グリッド要素の生成、削除、追加が行われる
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0075】
(付記10)上記グリッド要素数情報の変化に伴って補助グリッド要素を追加する際は、その補助グリッド要素はグリッド間隔が最も広い領域に挿入される
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0076】
(付記11)第1の基本グリッド要素と第2の基本グリッドとの間に新たな補助グリッド要素が挿入される際には、上記第1の基本グリッド要素と上記第2の基本グリッド要素との間の領域が1または複数の補助グリッド要素により均等に分割されるようにその1または複数の補助グリッド要素が配置される
ことを特徴とする付記10に記載のグリッド生成プログラム。
【0077】
(付記12)上記グリッド要素数情報の変化に伴って補助グリッド要素を削除する際は、その補助グリッド要素はグリッド間隔が最も狭い領域から削除される
ことを特徴とする付記1に記載のグリッド生成プログラム。
【0078】
(付記13)複数の補助グリッドが存在する第1の基本グリッド要素と第2の基本グリッドとの間から補助グリッド要素が削除される際には、上記第1の基本グリッド要素と上記第2の基本グリッド要素との間の領域がそこに残される補助グリッド要素により均等に分割されるようにその残される補助グリッド要素が配置される
ことを特徴とする付記12に記載のグリッド生成プログラム。
【0079】
(付記14)コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するグリッド生成方法であって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成し、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する
グリッド生成方法。
【0080】
(付記15)基本グリッド要素の最小間隔を指示する最小間隔情報に従って、上記基本グリッド要素を削除または追加する
ことを特徴とする付記14に記載のグリッド生成方法。
【0081】
(付記16)コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するグリッド生成装置であって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成する基本グリッド生成手段と、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する補助グリッド生成手段
を有するグリッド生成装置。
【0082】
(付記17)基本グリッド要素の最小間隔を指示する最小間隔情報に従って、上記基本グリッド要素を削除または追加する追加/削除手段、をさらに有する
ことを特徴とする付記16に記載のグリッド生成装置。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明を実施するためのシステム環境を示す図である。
【図2】本発明の背景を説明する図である。
【図3】実施形態のグリッド生成方法の概略を説明する図である。
【図4】実施形態のグリッド生成方法の概略を示すフローチャートである。
【図5】基本グリッド線の生成/削除/追加について説明する図である。
【図6】基本グリッド間隔を設定するためのダイアログ画面の実施例である。
【図7】補助グリッド線の生成/追加/削除について説明する図である。
【図8】グリッド線本数を設定するためのダイアログ画面の実施例である。
【図9】基本グリッドを生成する処理のフローチャートである。
【図10】(a)はグリッドテーブルの実施例、(b)は優先度テーブルの実施例である。
【図11】基本グリッド線を削除/追加する処理のフローチャートである。
【図12】部品の優先度を考慮して基本グリッド線を削除/追加する処理のフローチャートである。
【図13】補助グリッド線の本数を増加させる処理のフローチャートである。
【図14】補助グリッド線の本数を減少させる処理のフローチャートである。
【図15】基本グリッド線の間隔が変更された後にグリッドを描画する処理のフローチャートである。
【図16】本発明に係るプログラムの提供方法を説明する図である。
【図17】グリッドについて説明する図である。
【図18】従来技術においてグリッド線を生成する手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0084】
1 コンピュータ
2 キーボード
3 マウス
4 表示装置
11、21 スライダ
12、22 タップ
101 可搬型記録媒体
102 プログラムサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するプログラムであって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成する手順、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する手順、
をコンピュータに行わせるグリッド生成プログラム。
【請求項2】
基本グリッド要素の最小間隔を指示する最小間隔情報に従って、上記基本グリッド要素を削除または追加する手順をさらにコンピュータに行わせる
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項3】
上記最小間隔情報は、コンピュータの表示装置に表示されるスライダを用いてユーザにより入力される
ことを特徴とする請求項2に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項4】
複数の物体に対してそれぞれ付与されている優先度に応じて基本グリッド要素を削除または追加する手順をさらにコンピュータに行わせる
ことを特徴とする請求項2に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項5】
上記グリッド要素数情報は、コンピュータの表示装置に表示されるスライダを用いてユーザにより入力される
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項6】
上記グリッド要素数情報の変化に伴って補助グリッド要素を追加する際は、その補助グリッド要素はグリッド間隔が最も広い領域に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項7】
上記グリッド要素数情報の変化に伴って補助グリッド要素を削除する際は、その補助グリッド要素はグリッド間隔が最も狭い領域から削除される
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッド生成プログラム。
【請求項8】
コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するグリッド生成方法であって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成し、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する
グリッド生成方法。
【請求項9】
コンピュータを用いて物体の形状に係わる物理量を解析するために使用するグリッドを生成するグリッド生成装置であって、
上記物体の形状を特定する複数の特徴点をそれぞれ通過する複数の基本グリッド要素を生成する基本グリッド生成手段と、
グリッド要素数情報が指示する本数の補助グリッド要素を生成して上記基本グリッド要素間に配置する補助グリッド生成手段
を有するグリッド生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−4687(P2007−4687A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186748(P2005−186748)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】