説明

グリップ

【課題】グリップ本体の母指球面の上部に親指の腹を沿わせて案内することができるとともに、スイッチへの手の侵入に抵抗を与えて、スイッチの誤操作を防止できるようにする。
【解決手段】手のひらと長指で把持するグリップ本体5と、このグリップ本体5の頂部Aに配置されていて親指で操作可能なスイッチ6とを備え、前記グリップ本体5に、母指球と当接する母指球面Bと、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面Cと、長指と当接する長指面Dと、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面Eとを有する。前記グリップ本体5の母指球面Bの上部に、スイッチ6を操作する際に親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部Baを形成し、この親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間の内の少なくとも一方に、スイッチ6への手の侵入に抵抗を与える隆起部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械の手操作用具の把持操作部を構成するグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の手操作用具の把持操作部を構成するグリップの従来技術においては、特許文献1に開示されているように、手のひらと長指で把持するグリップ本体と、このグリップ本体の頂部に配置されていて親指で操作可能なスイッチと、グリップ本体の前面上部に配置されていて人さし指又は中指で操作される押しボタンとを備えており、前記グリップ本体に、母指球と当接する母指球面と、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面と、長指と当接する長指面と、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面とを有している。
【0003】
そして、前記グリップ本体の母指球面は、上下方向に長い平坦な円弧面になっており、スイッチは周囲の平坦面から大きく突出して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008ー293899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術は、グリップ本体の母指球面が平坦な円弧面であるので、グリップを握ってスイッチを操作するときの親指の位置が不安定であり、また、グリップを握ったときに、親指が不用意にスイッチへ侵入(スイッチ操作範囲への越境)したり、グリップ本体の頂部に手のひらが被さってスイッチ側へ侵入したりして、スイッチの誤操作を生じることがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたグリップを提供することを目的とする。
本発明は、グリップ本体の母指球面の上部に親指の腹を沿わせて案内することができるとともに、スイッチへの手の侵入に抵抗を与えて、スイッチの誤操作を防止できるようにしたグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、手操作用具2の把持操作部3を構成していて、手のひらと長指で把持するグリップ本体5と、このグリップ本体5の頂部Aに配置されていて親指で操作可能なスイッチ6とを備え、前記グリップ本体5に、母指球と当接する母指球面Bと、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面Cと、長指と当接する長指面Dと、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面Eとを有するグリップであって、
前記グリップ本体5の母指球面Bの上部に、前記スイッチ6を操作する際に親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部Baを形成し、この親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間の内の少なくとも一方に、前記スイッチ6への手の侵入に抵抗を与える隆起部を形成していることを特徴とする。
【0008】
第2に、前記スイッチ6をシーソ式スイッチで形成し、前記親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間にそれぞれ前記スイッチ6への手の侵入に抵抗を与える第1隆起部Bb及び第2隆起部Bcを形成し、この第1隆起部Bbの第1稜線L1と第2隆起部Bcの第2稜線L2との間隔を下部から前記スイッチ6に近づくに従って広く形成していることを特徴とする。
【0009】
第3に、前記開放面E側の第1稜線L1を略直線形状に形成し、前記手掌面C側の第2稜線L2を下部から上部にいくに従って左右外側へ移行しかつ外側へ突出した円弧線形状に形成していることを特徴とする。
第4に、前記第1稜線L1と第2稜線L2との上部間隔を前記スイッチ6の操作体6aの左右幅6wより広く形成していることを特徴とする。
【0010】
第5に、前記グリップ本体5の頂部Aにはスイッチ6を取り囲む平坦面Aaを形成しており、前記スイッチ6はスイッチケース6bの表面が手前よりも前方が前記平坦面Aaから大きく突出する前上向き傾斜配置であることを特徴とする。
第6に、前記グリップ本体5の頂部Aは前記平坦面Aaの周囲を略球面Abに形成しており、この略球面Abの球内に前記スイッチ6のスイッチケース6bの表面を配置していることを特徴とする。
【0011】
第7に、前記グリップ本体5を下部から上部にいくに従って左右幅を次第に広く形成し、前記手掌面Cの手のひら中部当接域Caを小指球当接域Cbより膨出させ、前記グリップ本体5の左右方向中心線Sから手のひら中部当接域Caまでの距離R1を前記中心線Sから開放面Eまでの距離R2より大きくしていることを特徴とする。
第8に、前記グリップ本体5の長指面Dは上部が下部よりも前側に膨出しており、上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン7を備えており、前記上部の押しボタン周囲に押しボタン7の押し面7aと略同高さの防塁部Daを形成していることを特徴とする。
【0012】
第9に、前記防塁部Daを下側が開放したアーチ形状に形成し、この防塁部Daの下部と長指面Dの下部とを凹状円弧面Dbで連続させていることを特徴とする。
[作用]
前記特徴を有するグリップは次のような作用を奏する。
グリップ1は手操作用具2の把持操作部3を構成していて、例えば、右手で把持して操作する。グリップ本体5は、母指球面Bと手掌面Cと長指面Dと開放面Eとを有し、頭球胴円形状であり、スイッチ操作をする場合は、通常、下部の胴円形状部分を親指、手のひら及び長指を丸くしながら握る。
【0013】
この握り状態は、母指球面Bに母指球を当接し、手掌面Cに手のひらの中部及び小指球を当接し、長指面Dに長指を当接し、開放面Eに親指、母指球及び長指の先端を回す状態となり、母指球及び長指の薬指、小指で実質的にグリップ本体5の把持をし、親指及び人差し指もしくは中指は、グリップ本体5の把持から離れてスイッチの操作ができるように、自由移動が可能な状態になる。
【0014】
前記グリップ本体5の母指球面Bの上部には浅溝状の親指案内部Baが上下方向に長く形成されており、親指を開放面Eから移動してこの親指案内部Baに腹を沿わせることによりスイッチ6を安定的に操作することができる。この親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間の内の少なくとも一方には隆起部が形成されていて、前記スイッチ6への親指、手のひら等の手の侵入に抵抗を与える。
【0015】
前記親指案内部Baと開放面Eとの間の第1隆起部Bbは、親指が開放面Eから親指案内部Ba及びスイッチ6へ不本意に移動して侵入するのに抵抗を与え、スイッチ6を操作可能になることを認識させ、親指案内部Baと手掌面Cとの間の第2隆起部Bcは、手のひらの上部又は人さし指の付け根等がスイッチ6に被さるのに抵抗を与え、スイッチ6を操作してしまう可能があることを認識させる。
【0016】
また、前記第1隆起部Bbは、親指が親指案内部Baから安易に離脱するのにも抵抗を与えることができ、第2隆起部Bcは、手のひらの上部を親指がスイッチ6を適正に操作できるような適正位置に配置させることを促進する。
前記第1隆起部Bbの第1稜線L1と第2隆起部Bcの第2稜線L2との間隔を下部から前記スイッチ6に近づくに従って広く形成されていて、第1稜線L1と第2稜線L2との上部間隔を前記スイッチ6の操作体6aの左右幅6wよりも広く形成しているので、シーソ式のスイッチ6の操作体6aを左右両側で押動するのが正確にできる。
【0017】
親指を親指案内部Baに配置してシーソ式のスイッチ6を操作するとき、スイッチケース6bの表面は、手前よりも前方がグリップ本体5の頂部Aの平坦面Aaから大きく突出する前上向き傾斜配置であることにより、親指を大きく曲げることなく、親指案内部Baの上方延長位置で円滑に押動操作できる。
手のひらの上部又は人さし指の付け根等がスイッチ6に被さるようにグリップ1を把持した場合は、スイッチ6のスイッチケース6bの表面がグリップ本体5の頂部Aの平坦面Aaの周囲を形づくる略球面Abの球内に位置していることにより、手のひらの上部又は人さし指の付け根等でスイッチ6を不本意に操作されるのが防止される。
【0018】
グリップ1を母指球及び長指の薬指、小指で把持したとき、手掌面Cの手のひら中部当接域Caが小指球当接域Cbより膨出し、かつ中心線Sからの距離R1が開放面Eまでの距離R2より大きくなっているので、把持する手のひらの位置、薬指及び小指の位置等が正確に決まりかつ安定配置ができ、これによって、親指、人さし指もしくは中指で行うスイッチ操作が正確にできるようになる。
【0019】
前記グリップ1を把持した手の人さし指もしくは中指は、長指面Dに設けられた押しボタン7をスイッチ操作する。この押しボタン7の周囲には、押し面7aと略同高さの防塁部Daが形成されていて、無意識には押動操作がし難い環境にしており、防塁部Daを越えて指先で押動操作させることを認識させるようにしている。
この防塁部Daは下側が開放したアーチ形状であり、その下部と長指面Dの下部とを凹状円弧面Dbで連続させていて、凹状円弧面Dbに薬指又は中指を宛がうだけで、人さし指又は中指を押しボタン7操作に最適な位置に配置できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、グリップ本体の母指球面の上部に親指の腹を沿わせて案内することができるとともに、スイッチへの手の侵入に抵抗を与えて、スイッチの誤操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】左側面図である。
【図3】右側面図である。
【図4】背面図である。
【図5】平面図である。
【図6】底面図である。
【図7】左上からの斜視図である。
【図8】右下からの斜視図である。
【図9】上半分の断面図である。
【図10】バックホー操縦部の手操作用具に適用した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図10において、産業機械としてバックホーの操縦部を例示しており、運転席11の右前方にドーザ装置のブレードを動作させる手操作用具2(操作レバー)に、把持操作部3を構成するグリップ1を設けている。
前記手操作用具2は、レバー杆2aの上端にグリップ1を取り付けていて、前後方向に揺動操作することにより、ドーザ装置のブレードを昇降動作させ、頂部のスイッチを親指で押動操作することにより、ブレードをアングル動作(ブレードの左右側部を前後動作)させ、背面(バックホーから見れば正面)の押しボタンを人さし指で押動操作することにより、バックホーの走行速度を高低に切り替える変速動作をさせる。
【0023】
図10において、運転席11の左右に作業部操作装置12、13が配置され、フロア14の前部に走行操縦装置15等が配置されている。
図1〜9において、グリップ1は、手のひらと長指(人さし指、中指、薬指及び小指を含む)で把持するグリップ本体5と、このグリップ本体5の頂部Aに配置されていて親指(母指)で操作可能なシーソ式スイッチ6と、グリップ本体5の前面上部に配置されていて人さし指又は中指で操作される押しボタン7とを備えている。
【0024】
前記グリップ1は右勝手用を示しており、グリップ本体5は合成樹脂で形成され、下部と右上部とが一体成形された基本部5aと左上部を形成する割部5bとを有し、中心線Sで基本部5aに割部5bを合体してネジ止めするとともに、それらで前記スイッチ6及び押しボタン7を挟持して装着している。
グリップ本体5は概ね、頂部Aを有する頭部5cが球形で、胴部5dが頭部5cより直径の小さい円形の頭球胴円形状であって、胴部5dを手のひら及び中指で握った状態で、親指及び人さし指を頭部5cに回せる形状となっており、頂部Aのスイッチ6は親指の指先が到達できる位置にある。
【0025】
このグリップ本体5を把持する適正位置は、操作する人の手の大きさにもよるが、一般的に、親指の第1関節から先端側の腹がスイッチ6に載置される位置であり、胴部5dに手のひらを宛がって、親指と長指とを丸めて回す状態となり、手のひらの上部及び人さし指の付け根は頭部5cにかかる状態になる位置である。
グリップ本体5は適正位置で把持するときに最も握り易く、手の各部位がしっくりと馴染むようなフィット感を受ける人間工学に基づいた形状であるが、手操作用具2でドーザ装置のブレードの昇降のみを頻繁に行うときは、レバー比を大きくして操作力を軽減するために、グリップ本体5の頭部5cに手を被せたり、又は頭部5cを把持して操作することがある。
【0026】
グリップ本体5には、母指球と当接する正面(操作する人から見える面)側の母指球面Bと、手のひらの中部及び小指球と当接する右側面側の手掌面Cと、長指と当接する背面(操作する人から見えない面、走行方向で前面)側の長指面Dと、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な左側面側の開放面Eとを有する。
グリップ本体5の母指球面Bは、下部が母指球と当接し、上部はスイッチ6を操作する際の親指と当接する。頭部5cの内、母指球面Bの上部に対応する部分だけは球形でなく切り欠かれていて、母指球面Bは下部から上部へ水平断面で円弧凸状から円弧凹状に変化している。
【0027】
母指球面Bの上部は円弧凹状になっていることにより、親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部Baが形成されている。この親指案内部Baは、浅溝の底がシーソ式スイッチ6の操作体6aの枢支部表面と略面一になるように連続している。
母指球面Bの上部が円弧凹状の浅溝であることにより、親指の第1関節及び第2関節がより広範囲で接触でき、しかも親指の腹が長手方向に凹凸を感じることなくスイッチ6の操作体6aまで至ることができる。
【0028】
前記母指球面Bの上部には、親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間に、前記スイッチ6への手の侵入(スイッチ操作範囲への越境)に抵抗を与える隆起部を形成している。
この隆起部は、親指案内部Baと開放面Eとの間の第1隆起部Bbと、親指案内部Baと手掌面Cとの間の第2隆起部Bcとを有する。
【0029】
前記第1隆起部Bbは、母指球面Bで下側から上側へ次第に高く隆起し、スイッチ6の下側近傍で最も高くなっており、若干上左右方向外向きに傾斜した第1稜線L1を有する。この第1隆起部Bbは、親指を開放面Eに配置している状態から親指案内部Baへ移行するときに抵抗を与えて、意識的に行うときの乗り越え移行感覚を認識させ、無意識に行うときの侵入感覚を認識させて侵入防止を図ることができるようにしている。
【0030】
前記第2隆起部Bcは、母指球面Bで下側から上側へ次第に高く隆起し、スイッチ6の下側近傍で最も高くなっており、第1隆起部Bbよりも大きく上外向きに傾斜した第2稜線L2を有する。この第2隆起部Bcは、特に、手でグリップ本体5の頂部Aを覆うような握り方をした場合に、母指球の上部又は母指球と人さし指との間がスイッチ6に覆い被さることがあり、それらの部位がスイッチ6に被さっていることを認識させるとともに、スイッチ6を押動するのに抵抗感を与えて注意を喚起させるようにしている。
【0031】
前記第1隆起部Bbの第1稜線L1と第2隆起部Bcの第2稜線L2との間隔は、下部からスイッチ6に近づくに従って広く形成されており、第2稜線L2の下部は親指案内部Baに急激に近づくように弯曲されていて、親指と中指又は人さし指との間でフィットするように形成されている。
開放面E側の第1稜線L1を略直線形状に形成し、手掌面C側の第2稜線L2を下部から上部にいくに従って左右外側へ移行しかつ外側へ突出した円弧線形状に形成し、第1稜線L1と第2稜線L2との上部間隔を前記スイッチ6の操作体6aの左右幅6wより広く形成している。
【0032】
これによって、親指案内部Baは下側よりも上側で左右幅が広くなり、スイッチ6の操作体6aがシーソ式の幅広のものであっても、親指を左右に移動して、操作体6aの左右位置での押動を十分確実に行なわせることが可能になり、また、第2稜線L2下部での親指と中指又は人さし指との間でフィット感を良好にできる。
グリップ本体5の頂部Aに形成した平坦面Aaはスイッチ6を取り囲んでいて、操作体6aの確実な操作を可能にしており、スイッチケース6bの表面(上面)が手前よりも前方が平坦面Aaから大きく突出する前上向き傾斜配置であることにより、親指案内部Baに配置された親指が操作体6aの表面まで円滑に延伸させることができる。
【0033】
前記グリップ本体5の頂部Aは前記平坦面Aaの周囲を略球面Abに形成されており、この略球面Abの球(図2、3に示す仮想の球)内に前記スイッチ6のスイッチケース6bの表面が配置されている。
グリップ1はスイッチ6の操作よりも前後揺動操作が多いときは、人は頂部Aを把持して、手掌をスイッチ6に対向させることがあり、そのような状態でも、頂部Aが略球面Abに形成されていると、手掌が凹球状になることも手伝って、スイッチ6が手掌によって誤操作されるのが防止される。
【0034】
グリップ本体5は下部から上部にいくに従って左右幅が次第に広く形成されており、手掌面Cの手のひら中部当接域Caが小指球当接域Cbから大きく膨出されていて、グリップ本体5の左右方向中心線Sから手のひら中部当接域Caまでの距離R1は、中心線Sから開放面Eまでの距離R2よりも大きく設定されている。
従って、グリップ本体5は左右非対称であり、手掌面C側上部が左右外側に大きく膨出した形状であり、人手を適正位置に案内しながら握り易い形状となっている。
【0035】
前記グリップ本体5の長指面Dは、上部が下部よりも前側に膨出されており、上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン7が備えられている。この上部の押しボタン周囲には押しボタン7の押し面7aと略同高さの防塁部Daが形成されている。
前記防塁部Daは下側が開放したアーチ形状(U字形状、山形形状等を含む。)であり、人さし指又は中指を押しボタン7に載せただけでは押動操作がやり難くなるようにしており、人さし指又は中指の先端で意識的に押動操作をする必要性を感じさせるようになっている。
【0036】
前記長指面Dは、防塁部Daの下部と長指面Dの下部とを凹状円弧面Dbで連続させており、この凹状円弧面Dbは、押しボタン7を人さし指で操作するときには中指の当接面となり、押しボタン7を中指で操作するときには薬指の当接面となり、グリップ本体5を握る手を適正位置にするように案内する。
防塁部Daは押しボタン7の全周囲に形成することもできるが、下側が開放されたアーチ形状である方が、操作するときの人さし指又は中指をより押しボタン7に近づけることができ、グリップ本体5に対する手の位置がより適正でかつ把持し易くなる。
【0037】
前記防塁部Daの上側及び左右の裾野は長指面Dの上部と緩やかな凹状円弧面で繋がっており、押しボタン7を操作する人さし指又は中指を防塁部Daの上面へ円滑に移動できるようにしている。
特に、防塁部Daの上側は頂部Aの略球面Abと滑らかな曲面で繋がっており、押しボタン操作をしないときの人さし指を置いても、また、その人さし指に把持力を加えても、指が痛くなったりしないようにフィットする形状に形成されている。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜9に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、グリップ1はバックホーのドーザの操作レバーだけでなく、トラクタその他の建設機械、土木機械の操作レバーに適用してもよく、左右反対勝手の形状にして左手用に形成してもよい。
【0039】
また、グリップ1は押しボタン7及び防塁部Daを備えないもの、スイッチ6を押しボタンのものにすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 グリップ
5 グリップ本体
6 スイッチ
6a 操作体
6b スイッチケース
7 押しボタン
7a 押し面
A 頂部
Aa 平坦面
Ab 球面
B 母指球面
Ba 親指案内部
Bb 第1隆起部
Bc 第2隆起部
C 手掌面
Ca 手のひら中部当接域
Cb 小指球当接域
E 開放面
L1 第1稜線
L2 第2稜線
S 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手操作用具(2)の把持操作部(3)を構成していて、手のひらと長指で把持するグリップ本体(5)と、このグリップ本体(5)の頂部(A)に配置されていて親指で操作可能なスイッチ(6)とを備え、前記グリップ本体(5)に、母指球と当接する母指球面(B)と、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面(C)と、長指と当接する長指面(D)と、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面(E)とを有するグリップであって、
前記グリップ本体(5)の母指球面(B)の上部に、前記スイッチ(6)を操作する際に親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部(Ba)を形成し、この親指案内部(Ba)と開放面(E)との間及び親指案内部(Ba)と手掌面(C)との間の内の少なくとも一方に、前記スイッチ(6)への手の侵入に抵抗を与える隆起部を形成していることを特徴とするグリップ。
【請求項2】
前記スイッチ(6)をシーソ式スイッチで形成し、前記親指案内部(Ba)と開放面(E)との間及び親指案内部(Ba)と手掌面(C)との間にそれぞれ前記スイッチ(6)への手の侵入に抵抗を与える第1隆起部(Bb)及び第2隆起部(Bc)を形成し、この第1隆起部(Bb)の第1稜線(L1)と第2隆起部(Bc)の第2稜線(L2)との間隔を下部から前記スイッチ(6)に近づくに従って広く形成していることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記開放面(E)側の第1稜線(L1)を略直線形状に形成し、前記手掌面(C)側の第2稜線(L2)を下部から上部にいくに従って左右外側へ移行しかつ外側へ突出した円弧線形状に形成していることを特徴とする請求項2に記載のグリップ。
【請求項4】
前記第1稜線(L1)と第2稜線(L2)との上部間隔を前記スイッチ(6)の操作体(6a)の左右幅(6w)より広く形成していることを特徴とする請求項2又は3に記載のグリップ。
【請求項5】
前記グリップ本体(5)の頂部(A)にはスイッチ(6)を取り囲む平坦面(Aa)を形成しており、前記スイッチ(6)はスイッチケース(6b)の表面が手前よりも前方が前記平坦面(Aa)から大きく突出する前上向き傾斜配置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリップ。
【請求項6】
前記グリップ本体(5)の頂部(A)は前記平坦面(Aa)の周囲を略球面(Ab)に形成しており、この略球面(Ab)の球内に前記スイッチ(6)のスイッチケース(6b)の表面を配置していることを特徴とする請求項5に記載のグリップ。
【請求項7】
前記グリップ本体(5)を下部から上部にいくに従って左右幅を次第に広く形成し、前記手掌面(C)の手のひら中部当接域(Ca)を小指球当接域(Cb)より膨出させ、前記グリップ本体(5)の左右方向中心線(S)から手のひら中部当接域(Ca)までの距離(R1)を前記中心線(S)から開放面(E)までの距離(R2)より大きくしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグリップ。
【請求項8】
前記グリップ本体(5)の長指面(D)は上部が下部よりも前側に膨出しており、上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン(7)を備えており、前記上部の押しボタン周囲に押しボタン(7)の押し面(7a)と略同高さの防塁部(Da)を形成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリップ。
【請求項9】
前記防塁部(Da)を下側が開放したアーチ形状に形成し、この防塁部(Da)の下部と長指面(D)の下部とを凹状円弧面(Db)で連続させていることを特徴とする請求項8に記載のグリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−53789(P2011−53789A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200151(P2009−200151)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】