説明

グリルを備えた加熱調理器

【課題】グリル庫内の温度を検出する温度検出手段が万が一の不具合により、取り付け状態が異常であったり劣化等によってグリル庫内の正確な温度を検出することができない異常な状態にあるのを検知することができるグリルを備えた加熱調理器を提供する。
【解決手段】グリル庫と、グリル庫内に設けられる加熱手段と、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段での検出温度を基にして加熱手段での加熱量の調節及び加熱の停止を行う制御部と、を有するグリルを備えた加熱調理器である。制御部は、加熱手段での加熱の開始後の所定期間における温度検出手段での検出温度の上昇値が所定の閾値以下の場合に温度検出手段が異常であるとみなす温度検出手段異常判定を行い、温度検出手段異常判定にて異常と判定した時に加熱を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルを備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリルを備えた加熱調理器が知られている。前記加熱調理器は、グリル庫内に焼き網を配置し、グリル庫内に設けたガスバーナによって焼き網上に載置した魚等の被加熱物を加熱してなるグリル調理を行うことができるようになっている。そして近年、手動で加熱量の調節を行いながらグリル調理を行うだけではなく、自動でグリル調理を行うものが普及してきている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この加熱調理器は、グリル庫と、グリル庫内に設けられる加熱手段と、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段での検出温度を基にして加熱手段での加熱量の調節及び加熱の停止を行う制御部と、を備え、前記制御部は、加熱開始からのグリル庫内の温度上昇値により適正な加熱時間を決定している。
【特許文献1】特許4028748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の加熱調理器にあっては、グリル庫内での温度検出手段の取り付け位置が所定の位置からずれたり取り付けの向きが所定の向きからずれたり、あるいは、温度検出手段が損傷したりといった万が一の不具合により異常な状態にある場合、グリル庫内の正確な温度を検出することができないため、所望のグリル調理が行えないものであった。
【0005】
またこの場合、温度検出手段は、グリル庫内の温度上昇に追従することができず、実際のグリル庫内の温度上昇値よりも低い温度上昇値を検出する傾向にあることが分かった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段が万が一の不具合により異常であっても、前記異常を検知することができるグリルを備えた加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、グリル庫と、グリル庫内に設けられる加熱手段と、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段での検出温度を基にして加熱手段での加熱量の調節及び加熱の停止を行う制御部と、を有するグリルを備えた加熱調理器であって、制御部は、加熱手段での加熱の開始後の所定期間における温度検出手段での検出温度の上昇値が所定の閾値以下の場合に温度検出手段が異常であるとみなす温度検出手段異常判定を行い、温度検出手段異常判定にて異常と判定した時に加熱を停止することを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段が万が一の不具合により異常な状態にあっても、前記異常を検知することができて、加熱手段による加熱を停止して調理ミスを無くすことが可能となる。また、グリル扉を閉め忘れた場合でも、温度検出手段異常判定によって異常を検知するため、ガスの無駄な消費を防止することが可能となる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記所定期間を複数の期間に分割して、該分割した期間毎に検出温度の上昇値を求めると共に所定の閾値を設定して該上昇値と所定の閾値との大小関係を判定し、前記判定の結果に基づいて温度検出手段異常判定を行うことを特徴とするものである。
【0010】
分割した期間毎に判定した複数回の結果に基づいて温度検出手段異常判定を行うことができて、温度検出手段異常判定の信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記分割した期間毎に設定する所定の閾値を、後の期間ほど大きく設定することを特徴とするものである。
【0012】
加熱開始から時間が経過してグリル庫内の温度が高くなっている程、グリル扉が一時的に開いて閉じた際の温度上昇が大きくなるため、万が一の不具合により温度検出手段が異常であっても後の期間ほど温度上昇が大きくなって所定の閾値以上となり、温度検出手段異常判定にて正常と誤判定され易くなる。そこで後の期間ほど所定の閾値を大きく設定して、前記誤判定を防止するものである。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記所定期間を、加熱手段での加熱の開始後6分以内に収めることを特徴とするものである。
【0014】
万が一の不具合により温度検出手段が異常である場合、加熱手段が過剰な加熱を行っても加熱が停止されず、めざし等の燃え易い食材は加熱の停止が加熱開始後6分以降では発火したりする惧れがあるため、所定期間を燃え易い食材が発火する惧れのない加熱の開始後6分以内に収めて加熱を停止するものである。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、温度検出手段異常判定において、所定期間中に温度検出手段での検出温度が所定温度以上を検出した時に温度検出手段が正常であると判定することを特徴とするものである。
【0016】
温度検出手段が異常である場合には検出しないような温度を所定温度とすることで、温度検出手段が正常であるのに異常であると誤判定されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、温度検出手段が万が一の不具合により異常な状態にある場合に、温度検出手段異常判定によって前記異常を検知して、加熱手段による加熱を停止して調理ミスやガスの無駄な消費を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施形態のグリルを備えた加熱調理器は、図1及び図5に示すように、こんろ本体10に、加熱手段としてガスバーナからなるグリルバーナ(上バーナ21及び下バーナ22)を備えたグリル2と、加熱手段としてガスバーナからなるこんろバーナを備えたガスこんろ部3と、を備えた、ビルトインタイプのグリル付きガスこんろ1である。
【0020】
グリル付きガスこんろ1の主体を構成するこんろ本体10の内部の左右方向の中央部に、グリル2が配設してあり、こんろ本体10の前面の左右方向の中央部にグリル2のグリル扉25が配置してある。
【0021】
こんろ本体10の上面にはガスこんろ部3が複数配設してあり、添付図面に示す実施形態ではこんろ本体10の上面に3つのガスこんろ部3が配設してあり、3つのガスこんろ部3は上面の手前側の左側、右側、及び上面の後側の左右方向の中央部にそれぞれ配設してあり、また、こんろ本体10の上面のガスこんろ部3が配設されていない部分はトッププレート11により覆われている。ここで、左右に配設したガスこんろ部3は一方がなべ底の温度を検知して燃焼制御を行うようにしたサーミスタからなる温度センサ3dを有する標準火力の温度センサ付きガスこんろ部3aとなっており、左右に配設したガスこんろ部3の他方が高火力ガスこんろ部3bとなっている。添付図面に示す実施形態では左側に温度センサ付きガスこんろ部3aを配設し、右側に高火力ガスこんろ部3bを配設した例が示してある。また、後方上面の後側の左右方向の中央部に配設したガスこんろ部3は小火力ガスこんろ部3cとなっている。各ガスこんろ部3には、鍋等を受け止め支持するための五徳31が配設してある。また、各ガスこんろ部3には、図示しないがこんろバーナに点火する点火装置としての点火プラグと、こんろバーナの着火を検出する着火検出装置としての熱電対が設けられ、グリル2にも同様に、グリルバーナに点火する点火装置としての点火プラグと、グリルバーナの着火を検出する着火検出装置としての熱電対が設けられる。点火プラグは、後述する加熱状態調節部7における点火操作によってマイクロコンピュータからなる制御部4(図2参照)により点火動作が行われ、熱電対において検出された着火(点火)情報は制御部4に認識されて、制御部4により点火プラグでの点火処理を終了する。
【0022】
各こんろバーナ及びグリルバーナには、図2に示すように、都市ガス等のガス燃料を供給する燃料供給路51からそれぞれ分岐する分岐供給路53が接続してある。燃料供給路51には電磁弁52が設けてあると共に、各分岐供給路53には、ガス燃料の供給量の調節を行うためステッピングモータにより駆動されて弁体の開度位置の微調整が可能な流量制御弁54と、前記弁体の開度位置を検出する位置センサ(図示せず)が設けてある。電磁弁52及び流量制御弁54は、制御部4により制御が行われ、位置センサにおける検出情報は制御部4によって認識・処理される。また、流量制御弁54は、対応するこんろバーナ又はグリルバーナが使用されない時には、流量を零にして遮断状態となるように切り換えられる。
【0023】
グリル2は、前面が開口されかつ後面部が閉塞された略箱状の加熱室を形成するグリル庫を備え、グリル庫内の下部にグリル受皿24を設けると共に、グリル受皿24上に、被加熱物を載置させる載置部としての焼き網23を載置して、その被加熱物をグリルバーナにて加熱するように構成されている。グリル庫の後方側には、グリルバーナの燃焼排ガスを機外に排気させる排気通路29が上方側に延びる状態で連設され、その排気通路29にてグリルバーナの燃焼排ガスを排気口26(図1参照)に導くように構成されている。グリル2については後で詳述する。
【0024】
こんろ本体10の前面の上部(添付図面に示す実施形態では左側の上部及び右側の上部)にはそれぞれ上記複数のガスこんろ部3の点火、消火、火力調節の操作を行うための加熱状態調節部7が設けてあると共に、前面の上部の右端に、制御部4をはじめ電磁弁52や流量制御弁54、入力部や加熱状態調節部7等の電気機器への通電の入切を行う自動復帰型で押し釦式の電源スイッチ12が設けてある。図1に示す実施形態では前面の左側に温度センサ付きガスこんろ部3aの点火、消火、火力調節の操作を行うための加熱状態調節部7aを配設し、前面の右側に高火力ガスこんろ部3bの点火、消火、火力調節の操作を行うための加熱状態調節部7bと、小火力ガスこんろ部3cの点火、消火、火力調節の操作を行うための加熱状態調節部7cとを配設してある。
【0025】
上記各加熱状態調節部7は添付図面においては前後方向に移動自在な押釦により構成してあり、ガスこんろ部3の使用に当たっては、押釦よりなる加熱状態調節部7を押し操作して点火操作をすることで、後退していた加熱状態調節部7が前方に突出して器具栓がONとなり、流出するガス燃料にスパーク放電がなされてガスこんろ部3に点火される。この押釦よりなる加熱状態調節部7が前方に突出した状態で加熱状態調節部7を指で摘んで回動操作すると、前記回動角度がロータリーエンコーダにより検出されて制御部4に認識され、前記回動角度に応じた開度位置となるようにステッピングモータにより流量制御弁54の弁体が駆動されてガス流量が制御されて、ガスこんろ部3の火力調整ができるようになっている。一方、消火にあたっては、前方に突出している加熱状態調節部7を後方に押し操作することで器具栓がOFFとなってガスこんろ部3が消火される。
【0026】
こんろ本体10の前面の下部には操作パネルが収納自在に設けてある。添付図面に示す実施形態ではこんろ本体10の前面の左右の下部にそれぞれ操作パネルが収納自在に設けてある。
【0027】
こんろ本体10の前面の左右の下部にそれぞれ収納自在に設けた操作パネルのうち、一方の操作パネルにはグリル2に関する操作を行うためのグリル用調理設定入力部が設けてあってこの操作パネルがグリル側操作パネル9となり、他方の操作パネルには温度センサ付きガスこんろ部3aによる調理設定の入力を行うためのガスこんろ部用調理設定入力部が設けてあってこの操作パネルがこんろ部側操作パネル8となっている。
【0028】
図3にはグリル用調理設定入力部一例を示しており、図4にはガスこんろ部用調理設定入力部一例を示している。
【0029】
グリル2による調理設定の入力を行うためのグリル用調理設定入力部は図3に示すように、グリル2の点火・消火操作をするための点火・消火スイッチ91、グリル2による調理時間(焼成時間)を設定するためのタイマスイッチ92、上火、下火の火力を切換るための火力切替スイッチ93、焼成するメニューを選んで該当する焼成物に対応した焼成制御を選択するためのメニュースイッチ94、焼き加減を調整するための焼き加減スイッチ95、上記タイマスイッチ92、火力切替スイッチ93、メニュースイッチ94、焼き加減スイッチ95等を操作して設定した各入力を取り消すための取消しスイッチ96等を備えている。
【0030】
一方、温度センサ付きガスこんろ部3aによる調理設定の入力を行うためのガスこんろ部用調理設定入力部は図4に示すように、温度センサ付きガスこんろ部3aによる調理時間を設定するためのタイマスイッチ81、揚げ物、炊飯、湯沸し等の自動調理のメニューを設定するためのメニュースイッチ82、タイマスイッチ81やメニュースイッチ82を操作して設定した各入力を取り消すための取消しスイッチ83等を備えている。図4の実施形態ではメニュースイッチ82として揚げ物スイッチ82a、炊飯スイッチ82b、湯沸しスイッチ82cが設けてある。そして、揚げ物スイッチ82aを押すことで揚げものを自動調理で行う揚げ物モードとすることができ、揚げ物スイッチ82aを何回押すかで200℃、180℃、160℃といった複数種類の揚げ物の調理の中から目的とする温度の揚げ物調理が設定できるようにしてある。また、炊飯スイッチ82bを押すことで炊飯を自動調理で行う炊飯モードとすることができ、炊飯スイッチ82bを何回押すかでご飯、おかゆといった複数種類の炊飯の調理の中から目的とする炊飯の調理が設定できるようにしてある。また、湯沸しスイッチ82cを押すことで湯沸しを自動調理で行う湯沸しモードとすることができ、湯沸しスイッチ82cを何回押すかで自動消火、5分保温といった湯沸し後にすぐ消火するか、あるいは一定時間保温するかといった湯沸しを選択して設定できるようにしてある。これらのガスこんろ部用調理設定入力部において温度センサ付きガスこんろ部3aにおける調理設定の入力が行われると、制御部4によりあらかじめ設定された制御内容に基づいて温度センサ付きガスこんろ部3aにおける火力調整、調理時間等が制御されるものであり、この場合、なべ底温度を温度センサ付きガスこんろ部3aに設けた温度センサにより検出して、該温度センサ3dで検出したなべ底温度を制御部4に入力してフィードバック制御により火力調整を行うようになっている。
【0031】
ここで、温度センサ付きガスこんろ部3aで自動調理の設定を行う場合は、上記のように押釦よりなる加熱状態調節部7を指で押して加熱状態調節部7を前方に突出させる点火操作を行った後、操作パネルに設けたガスこんろ部用調理設定入力部で目的とする調理設定の入力を行うことで、温度センサ付きガスこんろ部3aによって目的とする調理がなされるように制御部4により火力調整、調理時間等が制御されて自動調理が行われるものである。
【0032】
このように、ガスこんろ部3の使用に当たっては、手動により加熱を行う場合には、こんろ本体10の前面に露出している加熱状態調節部7を直接指で操作して制御部4に指令を与えて点火、火力調整、消火を行うと共に、自動調理を行う場合には、加熱状態調節部7の回動操作位置によらずに制御部4によりガス流量及び火力が調整されるものである。
【0033】
また、自動調理の終了や、タイマ機能や、安全装置により異常が検知されることで、自動消火される場合があり、この場合には点火・消火操作部は器具栓をONとする状態であっても安全弁により燃料ガスが遮断されて消火される。
【0034】
なお、本実施例では各ガスこんろ部3の分岐供給路53にステッピングモータにより駆動される流量制御弁54を設け、加熱状態調節部7を操作することで制御部4を介して電動により火力調整を行っているが、手動により直接弁体を操作する手動式ガス流量調節弁を設けてもよい。この場合、前記手動式ガス流量調節弁と直列にガス流量を制限するための電磁弁52を設けることで自動調理が可能となるが、自動調理を行う場合には使用者が手動で前記手動式ガス流量調節弁を最大ガス流量位置に調節することで、より確実な自動調理が行われるものである。本実施例では、ステッピングモータにより駆動される流量制御弁54のみが設けてあり、自動調理を行う際には前記流量制御弁54を最小から最大の範囲内で任意のガス流量に制御するため、使用者が加熱状態調節部7を操作して手動で加熱を行う際の最大ガス流量に合わせるといった操作が不要である。
【0035】
次に、グリル2を使用する場合につき説明する。グリル用調理設定入力部を有する操作パネルを備えた可動部材の前面上部を押してグリル用調理設定入力部を有する操作パネルをこんろ本体10の前面から前方に突出して図1に示すように上方に露出させ、上方を向いているグリル用調理設定入力部のメニュースイッチ94や焼き加減スイッチ95やタイマスイッチ92を指で押すことで調理メニューや焼き加減や調理時間等のグリル調理の設定入力を行い、次に、点火・消火スイッチ91を指で押して点火入力操作を行ってグリル2に点火するものである。これによって目的とするグリル調理がなされるように制御部4により火力調整、調理時間等が制御されて自動調理が行われるものである。上記調理設定の入力が終わると、当該可動部材の前面上部を押して操作パネルが外部に露出しないように収納するものであり、これによりグリル2による調理中に操作パネルが汚れるのを防止できる。なお、上記グリル2における自動調理中に自動調理を中止したい場合には点火・消火スイッチ91を指で押すことで消火して自動調理を中止できる。
【0036】
メニュースイッチ94により切り替えられるメニューとしては、「姿焼」「切身」「干物」があり、焼き加減スイッチ95についても同様に「弱め」「標準」「強め」の3段階に調節できるようになっている。そして、調理するときの具体的なメニュー表(図示せず)が別途用意されており、使用者はこのメニュー表を調理内容の目安として、メニュースイッチ94及び焼き加減スイッチ95を操作して設定する。
【0037】
グリル2は、図5に示すように、被加熱物を加熱するための略箱状をしたグリル庫内に加熱手段としてのグリルバーナを設けて主体が構成され、グリル庫の後面を開口して上下方向に沿う排気用開口28が形成されている。グリルバーナは、グリル庫の上面に上バーナ21を設けると共に、グリル庫の左右の側壁に沿ってグリル受皿24よりも上方で且つグリル受皿24に載置された焼き網23の網部よりも下方の位置に下バーナ22を設けて構成してある。そして、このグリル庫の後部に、グリルバーナの燃焼により被加熱物を加熱したときに発生する煙やグリルバーナから発生する燃焼ガス等を含む調理排気を排気口26から排気させるための排気筒27が接続されており、この排気筒27内が排気通路29となっている。排気通路29は、グリル庫の後端部の排気用開口28からトッププレート11の排気口26に至るように後方へ行く程上方に位置する傾斜を有しており、調理排気は温度上昇による自然ドラフトによって排気通路29内を通って排気口26より外部に排出される。
【0038】
またグリル2には、グリル庫内の温度を検出するための温度検出手段が備えられている。温度検出手段としては、排気通路29内の長手方向の中間部の底面に設置される上温度センサTHと、排気通路29の底面の下端部近傍に設置される下温度センサTHの二つが設けてある。上温度センサTHが設けられる位置は、上バーナ21及び下バーナ22の夫々の燃焼排気ガスが流動する箇所であり、被加熱物の熱負荷の大きさに応じて温度上昇値が異なる箇所である。また、この下温度センサTHが設けられる位置は、主に下バーナ22の燃焼排気ガスが流動する箇所であり、焼き網23に載置される被加熱物の載置量の違いによって温度上昇勾配が異なる箇所である。制御部4は、上温度センサTH及び下温度センサTHで検出した温度に基づいて、グリル調理における加熱手段の加熱量及び加熱の停止といった制御を行うものである。
【0039】
そして本発明では、制御部4は、温度検出手段による検出温度に基づいて、温度検出手段が異常か否か(すなわち正常か)を判定する温度検出手段異常判定を行うものである。ここで、温度検出手段が異常であるとは、温度センサTH、THの取り付け位置や取り付けの向きといった取り付け状態が所定の状態ではないか、あるいは、温度センサTH、THが劣化や損傷により性能を発揮できない状態にある、といった万が一の不具合により、グリル庫内の温度を温度検出手段にて正確に検出できないことをいう。
【0040】
温度検出手段異常判定は、加熱手段での加熱の開始後の所定期間における温度検出手段での検出温度の上昇値(以下、温度上昇値という)が所定の閾値以下の場合に、温度検出手段が異常であるとみなし、温度上昇値が所定の閾値より大きい場合は、温度検出手段が正常であるとみなすことを基本とする。つまり、温度検出手段が異常な場合には、温度検出手段はグリル庫内の温度上昇に追従することができず、実際のグリル庫内の温度上昇値よりも低い温度上昇値を検出するため、所定の閾値以下の場合に異常であるとみなすものである。
【0041】
本実施形態では、温度検出手段異常判定は、所定期間における温度検出手段での検出温度の上昇値を求める温度上昇値演算処理と、求めた温度上昇値に基づいて温度検出手段が異常か否かを判定する異常判定処理と、からなり、上温度センサTHと下温度センサTHのそれぞれの検出温度について温度検出手段異常判定を行う。
【0042】
温度上昇値演算処理は、グリルバーナによる加熱の開始後、所定期間における温度上昇値を求めるもので、本実施形態では、所定期間を期間1〜期間5の五つの期間に分割し、各分割した期間それぞれにおいて温度上昇値を求めるものである。なお、所定期間を分割する場合は五つに分割する場合に限らず、他の個数の期間に分割してもよい。各期間は、グリルバーナによる加熱の開始時点を原点とすると、期間1が開始後30秒経過時点から開始後90秒経過時点までの60秒間、期間2が開始後90秒経過時点から開始後150秒経過時点までの60秒間、期間3が開始後150秒経過時点から開始後210秒経過時点までの60秒間、期間4が開始後210秒経過時点から開始後270秒経過時点までの60秒間、期間5が開始後270秒経過時点から開始後330秒経過時点までの60秒間となる。そして、温度上昇値演算処理では各期間の温度上昇値、すなわち、期間1における温度上昇値ΔTは90秒経過時点での検出温度から30秒経過時点での検出温度を引き算して求め、以下同様に期間2における温度上昇値ΔT、期間3における温度上昇値ΔT、期間4における温度上昇値ΔT、期間5における温度上昇値ΔTを求める。
【0043】
異常判定処理では、各期間の所定の閾値との大小を比較する個別処理と、個別処理での判定結果を基に判定を行う全体処理の二つの処理からなる。
【0044】
個別処理では、各期間の温度上昇値ΔT〜ΔTについて、所定の閾値と比較する。所定の閾値は、各期間毎に予め設定されるもので、更に本実施形態では、基本閾値と、前記基本閾値よりも高い上閾値とからなる。
【0045】
上温度センサTHについて、期間nにおける基本閾値Th(n)は、本実施形態では下記の式(1)により求める。
【0046】
Th(n)=α÷〔β×(TU0+γ)〕+δ×(t+η)÷1000・・式(1)
式(1)中のα、β、γ、δ、ηはグリルに応じた定数で、本実施形態ではα=1000、β=143、γ=10、δ=21、η=−2としており、TU0は、加熱開始時の上温度センサTHでの検出温度である。また式(1)中のtは、各期間nの終了時を加熱開始時から測った秒数であり、期間1ではt=90、期間2ではt=150、期間3ではt=210、期間4ではt=270、期間5ではt=330である。
【0047】
式(1)より、各期間nの基本閾値Th(n)は、Th(1)≒2.0、Th(2)≒3.3、Th(3)≒4.6、Th(4)≒5.8、Th(5)≒7.1となる。
【0048】
また、期間nの上閾値Th’(n)は、式(2)より求める。
【0049】
Th’(n)=Th(n)+3 ・・・式(2)
式(2)と上記基本閾値Th(n)より、Th’(1)≒5.0、Th’(2)≒6.3、Th’(3)≒7.6、Th(4)’≒8.8、Th(5)’≒10.1となる。
【0050】
そして、各期間nの温度上昇値ΔTと、基本閾値Th(n)と上閾値Th’(n)との大小関係を判定する。ΔT≧Th’(n)の場合にはG(良)の判定、Th’(n)>ΔT>Th(n)の場合にはP(可)の判定、Th(n)≧ΔTの場合にはNG(不可)の判定とする。
【0051】
次に全体処理を行う。全体処理では、期間1〜5における個別処理のうち、連続して三回NG判定がなされた場合には、全体でNGと判定し、温度検出手段が異常であると判定する。連続して三回NG判定がなされなかった場合には、次に、期間1〜5における個別処理で、少なくとも一回G判定がなされたか否かを判定し、一回もG判定がなされなかった場合には、全体としてNGと判定し、温度検出手段が異常であると判定する。温度検出手段が異常であると判定すると、制御部4は、グリルバーナへのガスの供給を停止し、消火させる。
【0052】
そして、期間1〜5における個別処理で少なくとも一回G判定がなされた場合には、温度検出手段が正常であると判定して、温度検出手段異常判定を終了し、グリルバーナへのガスの供給は継続される。
【0053】
次に、下温度センサTHについて説明する。期間nにおける基本閾値Th(n)は、式(1)と同様の下記式(3)により求める。
【0054】
Th (n)=α÷〔β×(TD0+γ)〕+δ×(t+η)÷1000・・式(3)
式(3)中のα、β、γ、δ、ηはグリルに応じた定数であり、本実施形態ではα=1000、β=143、γ=10、δ=21、η=−2としており、TD0は、加熱開始時の下温度センサTHでの検出温度である。また式(3)中のtは、式(1)の場合と同様に各期間nの終了時を加熱開始時から測った秒数である。
【0055】
式(3)より、各期間nの基本閾値Th(n)は、Th(n)と同様に、Th(1)≒2.0、Th(2)≒3.3、Th(3)≒4.6、Th(4)≒5.8、Th(5)≒7.1となる。
【0056】
また、期間nの上閾値Th’(n)は、式(2)と同様の式(4)より求める。
【0057】
Th’(n)=Th(n)+3 ・・・式(4)
式(4)と上記基本閾値Th(n)より、Th’(n)はTh’(n)と同様に、Th’(1)≒5.0、Th’(2)≒6.3、Th’(3)≒7.6、Th(4)’≒8.8、Th(5)’≒10.1となる。
【0058】
以降の個別処理及び全体処理は、上温度センサTHの場合と同様に行う。
【0059】
上述したように本実施形態では、上温度センサTHと下温度センサTHの閾値に同じ値を用いている。すなわち、上温度センサTHと下温度センサTHの設置位置が近く、温度上昇値の差が小さいため、閾値に同じ値を用いているが、上温度センサTHと下温度センサTHの設置位置が離れる場合には、α、β、γ、δ、ηと、α、β、γ、δ、ηに異なる値を用いて、閾値が異なってくる。
【0060】
本発明においては、温度検出手段異常判定を行うことで、温度検出手段が万が一の不具合により異常な状態にあっても、前記異常を検知して、加熱手段による加熱を停止して調理ミスを無くすことが可能となる。
【0061】
また、グリル扉25を閉め忘れた場合、グリル庫内の温度上昇値が小さくなるため、温度検出手段異常判定によって前記異常が検知されて、ガスの無駄な消費を防止することが可能となる。
【0062】
また、所定期間を複数の期間に分割し、該分割した期間毎に行った複数回の判定結果(すなわち個別処理の判定結果)に基づいて、温度検出手段が異常か否かを判定することで、判定の信頼性を向上させることができる。更に本実施形態のように、所定の閾値として基本閾値と下閾値とを用い、各分割した期間毎に、温度上昇値と、基本閾値及び下閾値との大小関係を判定し、温度上昇値が下閾値よりも低いNG判定が三回連続で出るか、あるいは五回の判定のうち温度上昇値が一回も基本閾値よりも高いG判定が出ない場合に異常と判定するため、一回の判定のみで異常か否かを判定する場合と比較して信頼性が高いものである。
【0063】
また本実施形態では、各分割した期間毎に設定する所定の閾値を、後の期間ほど大きく設定し、温度検出手段が異常である場合に正常であると誤判定されるのを防止している。更に説明をすると、各分割した期間における温度上昇値が所定の閾値以上であれば、温度検出手段は正常であると判定される。また、加熱手段による加熱の開始後、使用者により予熱が実行され、魚などの被加熱物をグリル庫内に収納するためグリル扉25が開かれることによりグリル庫内の温度が降下した場合、グリル扉25を閉じた後のグリル庫内の温度上昇値は、加熱開始から時間が経過してグリル庫内の温度が高い程、大きくなるものである。このため、温度検出手段が異常であっても、グリル扉25が一時的に開いた後に閉じた際、大きな温度上昇値が検出されて所定の閾値以上となってしまい、温度検出手段は正常であると誤判定されてしまう。これを防止するために、後の期間程所定の閾値を大きくして、温度検出手段が正常であると誤判定されるのを防止することができるものである。
【0064】
また、所定期間を、加熱手段での加熱の開始後6分以内に収めるのが好ましく、本実施形態では5分30秒以内に収めている。これは、万が一の不具合により温度検出手段が異常な場合、めざし等の燃え易い食材は加熱が6分以上継続すると発火する惧れがあるため、所定期間を加熱手段での加熱の開始後6分以内に収め、温度検出手段が異常な場合には加熱開始後6分以内で加熱を停止することを可能としている。
【0065】
また、所定期間中に温度検出手段での検出温度が、温度検出手段が異常である場合には検出しないような所定温度(例えば100℃)以上を検出した時に、温度検出手段が正常であると判定するのが好ましく、誤って温度検出手段が異常であると判定されるのを抑えることができる。
【0066】
なお、本実施形態ではグリルを備えた加熱調理器を、上述したようなビルトインタイプのグリル付きガスこんろ1として説明したが、本発明はテーブルこんろにも適用可能である。また、加熱手段として本実施形態のようなガスバーナを備えずに電気ヒータ等を備えた電気グリルにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態のグリルを備えた加熱調理器の外観斜視図である。
【図2】同上の燃料供給路を説明する説明図である。
【図3】同上のグリル側操作パネルの正面図である。
【図4】同上のガスこんろ部側操作パネルの正面図である。
【図5】同上のグリルの縦断側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 グリル付きガスこんろ
2 グリル
3 ガスこんろ部
4 制御部
6 被加熱物
7 加熱状態調節部
8 こんろ部側操作パネル
9 グリル側操作パネル
TH1 温度センサ(温度検出手段)
TH2 温度センサ(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫と、グリル庫内に設けられる加熱手段と、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段での検出温度を基にして加熱手段での加熱量の調節及び加熱の停止を行う制御部と、を有するグリルを備えた加熱調理器であって、制御部は、加熱手段での加熱の開始後の所定期間における温度検出手段での検出温度の上昇値が所定の閾値以下の場合に温度検出手段が異常であるとみなす温度検出手段異常判定を行い、温度検出手段異常判定にて異常と判定した時に加熱を停止することを特徴とするグリルを備えた加熱調理器。
【請求項2】
前記所定期間を複数の期間に分割して、該分割した期間毎に検出温度の上昇値を求めると共に所定の閾値を設定して該上昇値と所定の閾値との大小関係を判定し、前記判定の結果に基づいて温度検出手段異常判定を行うことを特徴とする請求項1記載のグリルを備えた加熱調理器。
【請求項3】
前記分割した期間毎に設定する所定の閾値を、後の期間ほど大きく設定することを特徴とする請求項2記載のグリルを備えた加熱調理器。
【請求項4】
前記所定期間を、加熱手段での加熱の開始後6分以内に収めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のグリルを備えた加熱調理器。
【請求項5】
温度検出手段異常判定において、所定期間中に温度検出手段での検出温度が所定温度以上を検出した時に温度検出手段が正常であると判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のグリルを備えた加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−29534(P2010−29534A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196592(P2008−196592)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】