グルコース監視又は調節のための医用デバイス
本医用デバイスは、液体を輸送するように適応される圧発生手段と、流動抵抗を測定するように適応されるセンサーと、埋設可能部材とを含む。前記埋設可能部材は該埋設可能部材を取り囲む溶液中に見られる分析対象の濃度の変化に応じてその孔度を可逆的に変える分析対象反応性多孔質膜を含む。分析対象は特にグルコースであってもよい。本医用デバイスは、薬剤投与のために使用してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象監視及び薬剤送達に、特に、グルコースの監視、及び糖尿病患者の治療に好適な医用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者の治療のために意図される種々のデバイスがこれまで記載されている:個々に異なるグルコースセンサー(例えば、電気化学的、粘度測定、又は光学センサーなど)、個々に異なる薬剤送達デバイス(例えば、インスリンポンプ及びインスリンペンなど)、及び、いわゆる閉鎖ループシステム、即ち、グルコースセンサーと薬剤送達を統合するシステムである。後者は、すい臓機能を理想的に模倣する、即ち、血中グルコースレベルを制御することが可能な薬剤が、血中グルコース濃度に応じて放出される。
【0003】
グルコース監視ユニットを、薬剤輸液ユニットと組み合わせた医用システムが、US 2006/0224141(特許文献1)に記載される。この医用システムでは、分析対象監視ユニットは、医用輸液ユニットとは別物とされる。分析対象センサーは、分析対象濃度の変化に従う電気抵抗の変化を定量するのに電極の使用に依存する。
US 5569186A(特許文献2)は、別の閉鎖ループシステムで、医用システムの部品が患者の体内に完全に埋設されるシステムを開示する。
【0004】
もう一つの閉鎖ループシステムが、WO 03047426A1(特許文献3)に記載される。このシステムでは、少なくとも部分的に埋設されるグルコースセンサーは注入ペンと通じ合うが、一方、ユーザーは、このグルコースセンサーによって測定されるグルコース濃度に基づいて注入される用量を調節することが可能である。
【0005】
薬剤輸液を制御するための前述の閉鎖ループシステムは、電子インターフェイスを介して接続される、少なくとも二つの個別ユニットから成る。
【0006】
WO 89/01794(特許文献4)は、一体化薬剤送達システムのための埋設可能グルコースセンサーを開示する。このセンサーは、加圧され、カテーテルを通じて流れる輸液対象を含む。このカテーテルの一セクションは、微小孔から成る多孔質膜を含み、この膜において、輸液対象中に存在するグルコースの濃度は、数分から1時間の反応時間において平衡に達する。次に、この平衡化輸液対象は、コンカナバリンA及びデキストラン分子を含む基質から成る化学バルブを通って流れる。化学バルブ中の基質は、輸液対象中に存在するグルコース濃度に応じてその孔度を変え、従って、患者の体内に流入する輸液対象の量を調節する。
【0007】
WO 89/01794(特許文献4)に開示されるシステムが、単に、周辺媒体におけるグルコース濃度を監視するためにのみ用いられる場合は、カテーテルは、更に別のグルコースセンサー、例えば、酵素電極、燃料電池、又はアフィニティセンサーなどを含むが、一方、化学バルブは存在しない。更に提案されているのは、孤立型センサーであって、その場合、輸液対象が化学バルブ基質を通過する前後で、その圧が定量され、一方、化学バルブ基質を横切る圧降下は、平衡輸液対象中のグルコース濃度に逆比例する。
【0008】
糖尿病患者において血中グルコース濃度を制御するには、結果を速やかに取得し、それによって薬剤の送達を調整することが重要である。これが、グルコースセンサー内部の成分の反応時間が、薬剤送達プログラムの成功を決める最重要ファクターである理由である。もしも、WO 89/01794(特許文献4)に記載されるように、平衡領域が、最大1時間の反応時間を持ち、化学バルブ中に含まれる基質が更にそれに加わる反応時間を有するのであれば、薬剤投与は、患者の体内にはもはや存在しない血中グルコース値に合わせて調整されることになり、従って、患者の血中グルコース濃度の調節は最善のものとはならない。
【0009】
更に、孔(ポア)サイズを決める基質が流動状態にある場合、即ち、輸液対象とともに到着する新規成分(例えば、デキストラン分子)が、輸液対象とともに洗い流されて患者の体内に入る成分を置換する場合、治療に与らない成分が、患者の体内に入る可能性がある(コンカナバリンAは有毒化合物である)。この基質は、時間とともに特徴を変えることが予想される。なぜなら、新規成分による置換は、均一分布的には行われないと考えられるからである(新規成分を持つ輸液対象が最初に到着する基質の入り口において凝集塊が生じると考えられる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2006/0224141
【特許文献2】US 5569186A
【特許文献3】WO 03047426A1
【特許文献4】WO 89/01794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者における分析対象レベルの測定のための、急速で、正確な医用デバイスを提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、分析対象レベルの、繊細で、タイムリーな調節を可能とする医用デバイスを提供することである。
【0013】
本発明の、特別の一つの目的は、患者における血中グルコースレベルの測定のための、急速で、正確な医用デバイスであって、血中グルコースレベルの繊細で、タイムリーな調節を可能とするデバイスを提供することである。
【0014】
本発明の、特別のもう一つの目的は、患者における血中グルコースレベルの調節のための医用デバイスであって、血中グルコースレベルの、急速、正確で、かつ、タイムリーな調節を実現するデバイスを提供することである。
【0015】
コンパクト、軽量で、かつ、製造が経済的な、分析対象測定及び/又は調節のための医用デバイスを提供することができるならば、それは有利であると考えられる。
【0016】
便利で、装着が容易な、分析対象測定及び/又は調節のための医用デバイスを提供することができるならば、それは有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、請求項1による分析対象濃度測定のための医用デバイスを提供し、請求項12に従って分析対象濃度を測定し、分析対象レベルを調節する方法を提供することによって達成された。
【0018】
本明細書に開示されるものは、液体を輸送するように適応される圧発生手段を含む医用デバイスである。この医用デバイスは更に、流動抵抗を測定するように適応されるセンサー、及び、多孔質膜を含む埋設可能部材を含む。前記多孔質膜は、埋設可能部材を取り囲む媒体に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を可逆的に変える。特に分析対象はグルコースである。
【0019】
本発明の一実施態様による液体は、患者における分析対象レベル(例えば、血中グルコースレベル)に影響を及ぼすことが可能な薬剤を含み、そのため、この医用デバイスは、薬剤投与のために使用することも可能である。
【0020】
更に開示されるものは、分析対象濃度を測定する方法であって:埋設可能部材であって、該埋設可能部材を取り囲む溶液中に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える多孔質膜を有する埋設可能部材を含む医用デバイスを準備すること;前記多孔質膜に向けて不連続用量の液体を注入すること;前記多孔質膜を通過する前記液体の流れに対する抵抗と相関する値を測定すること;及び、多孔質膜を通る流動抵抗と相関する測定数値に基づいて分析対象濃度を計算すること、を含む方法である。
【0021】
分析対象がグルコースである場合、ある実施態様によれば、前記方法は更に、患者の血中グルコースレベルに対し影響を及ぼすことが可能な一つ以上の薬剤を、測定されたグルコース濃度に応じて送達する工程を含んでもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施態様によれば、圧発生手段は、ポンプ及び貯留槽を含む。ポンプは、正確に指定量の液体を、貯留槽から埋設可能部材に向けて輸送する。このようなポンプは、従来技術分野において周知である。本発明の精神の範囲内に留まりながら、種々のタイプのポンプ、例えば、ピストンポンプ、又はペリスタルチックポンプなどを使用することが可能である。特に好ましい一つのポンプが、EP 1527793A1に記載される。なお、この特許文書を、参照により本明細書の中に組み入れる。このようなポンプは、サイズが小さいばかりでなく、少量の液体を正確に輸送することが可能である。貯留槽は、屈曲性壁を備えた扁平変形が可能な貯留槽であってもよく、或いは、可動プラグを備えたガラス製の標準アンプルなどの固定形状を持つ貯留槽であってもよい。
【0023】
発明のある実施態様によれば、ポンプは、貯留槽から流体を抽出し、この流体を埋設可能部材に向けて輸送する。本発明の別の好ましい実施態様によれば、貯留槽は加圧され、そのため、液体はポンプに向けて強制的に押し出される。これは、種々の方法で、例えば、ガラスアンプル貯留槽においてプラグを前方に押しこむことによって、又は、屈曲性貯留槽の側壁に力を加えることによって、又は、加圧ガスで満たされた第2貯留槽(この加圧ガスは、液体で満たされた貯留槽に対して圧をかける)を用いることによって実現することが可能である。
【0024】
貯留槽の液体を加圧下に置く場合、ポンプの代わりにバルブを使用することが可能である。正確な量の液体を輸送するために開閉するバルブは、従来技術に記載されており、この分野の当業者によく知られている。
【0025】
液体は、多孔質膜に向けて不連続(即ち、連続で無い)用量として輸送される。不連続用量の輸送の間に、多孔質膜におけるグルコース濃度は、周辺溶液中に存在するグルコース濃度に対し、拡散によって調整される。該多孔質膜中のグルコース濃度が、周辺溶液中のグルコース濃度に合致すると、液体が該多孔質膜を通じて強制的に流通させられるときに測定される流動抵抗は、周辺溶液中に存在するグルコース濃度の測定値として使用可能となる。
【0026】
ある好ましい実施態様では、流動抵抗を測定するように適応されるセンサーは、チャンバを区画する屈曲性膜を含み、この膜は、圧発生手段によって指定容量の液体がチャンバ内に注入されると、それによって弾性的に変位される。緩和の際、屈曲性膜は、埋設可能部材中に含まれる多孔質膜に向かって液体を輸送する圧を発生する。屈曲性膜は緩和して、膜の孔度(この孔度自体が周辺組織におけるグルコース濃度に依存する)に依存する速度で元の位置に戻る。弾性膜の緩和(又は、振幅減衰)速度は、流動抵抗の尺度として使用することが可能である。ある好ましい実施態様では、膜変位は、例えば、コンデンサによって測定してもよい。別法として、膜変位は、レーザー又はホールセンサーなどの他の手段によって測定することも可能である。
【0027】
ある好ましい実施態様では、埋設可能部材中の多孔質膜は、分析対象濃度に従ってその孔度を可逆的に変えるヒドロゲルを含む。分析対象がグルコースである場合、ヒドロゲルが、グルコース反応性ヒドロゲルを含むと有利である。グルコース反応性ヒドロゲルは、レクチン(特に、コンカナバリンA)、フェニルボロン酸系ヒドロゲル、及びその他の、グルコース、又はグルコースオキシダーゼに対するアフィニティ受容体、又は、その他の、グルコースに可逆的に結合することが可能な分子を用いることによって製造することが可能である。他の分析対象の場合は、当業者に公知であって、その分析対象に対して特異的な、適切なアフィニティ受容体、例えば、結合タンパク又は抗体(例えば、Miyata et al.1999:A reversibly antigen−responsive hydrogel(「抗原に対し可逆的反応性を持つヒドロゲル」). Nature Vol.399,pp.766−769を参照)、又はその他を使用することが可能である。
【0028】
ヒドロゲルは、スロットを含む管状部材の中に保持されてもよい。膜は、堅固なものであればいずれの材料、例えば、金属、プラスチック、又はセラミック材料で製造されてもよい埋設可能部材の管状構造によって支持されると有利である。この埋設可能部材は、ほんの部分的に(これは、当該技術分野では最小浸襲度とも言われるが)患者の体内に埋設されてもよい。
【0029】
本発明人らは、他の応用に関連して記載されるヒドロゲルが、本発明において、分析対象がグルコースである特定の場合において使用するのに好適な使用形態を持つことを見出した。Tangらは、いくつかの機械的形状に注型成形される、機械的、化学的に安定なグルコース反応性ヒドロゲル膜の合成法を報告している。グルコース濃度の変化に対する反応は、両方向、即ち、ゲル相及びゾル相の間の移行において可逆的であることが実証された。更に、長期に亘って、ヒドロゲルのコンカナバリンAの漏洩は無視できる程度のものであることが示された。異なる分子量を持つ二つのデキストラン分子を用いると、ゲル構造に対しより強力な制御が可能となり、そのため、特性変化は、ヒドロゲルの内部孔度の変化に限局させることが可能となる(Tang et al.2003:A reversible hydrogel membrane and delivery of macromolecules(「可逆的ヒドロゲル膜及び巨大分子輸送」). Biotechnology and Bioengineerig, Vol.82,No.1,April 5,2003)。
【0030】
コンカナバリンAをヒドロゲル中に固定し、それによって、コンカナバリンAが患者の体内へ入れないようにすると有利である。なぜなら、コンカナバリンAは、ヒトに対し有毒作用を及ぼすことが報告されているからである。コンカナバリンAを固定する方法は既に報告されている:Miyataらは、コンカナバリンAと、グルコシルオキシエチルメタクリレート(GEMA)とのコポリマーヒドロゲルの合成において、その合成物から、コンカナバリンAは漏洩せず、従って、多孔質膜孔度の可逆的変化を実現することが可能であることを報告している(Miyata et al.2004:Glucose−responsive hydrogels prepared by copolymerization of a monomer with Con A(「あるモノマーとCon Aとのコポリマー形成によって調製されるグルコース反応性ヒドロゲル」).Journal Biomaterial Science Polymer Edition,Vol.15,No.9,pp.1085−1098,2004)。Kim及びParkは、グルコース含有ポリマーに対する、コンカナバリンAの不動的固定を報告した(Kim J.J.and Park K.2001:Immobilization of Concanavalin A to glucose−containing polymers(「グルコース含有ポリマーに対するコンカナバリンAの固定」).Macromolecular Symposium,No.172,pp95−102,2001)。
【0031】
しかしながら、本発明の範囲内において、この多孔質膜は、一般に、グルコース濃度測定において、糖尿病管理のためのグルコースセンサー、及びインスリン送達システムにおいて公知の、様々なグルコース反応性ヒドロゲルから製造されてもよい(例えば、T.Miyata,T.Uragami,K.Nakamae Adv.Drug Deliver.Rev.2002,54,79;Y.Qiu,K.Park Adv.Drug.Deliver.Rev.2001,53,321;S.Chaterji,I.K.Kwon,K.park Prog.Polym.Sci.2007,32,1083;N.A.Peppas J.Drug Del.Sci.Tech.2004,14,247−256を参照)。ヒドロゲルは、大量の水を吸収して膨張する、架橋結合されるポリマー基質である。これらの材料は、その構造的一体性を維持するために物理的、化学的に架橋結合されてもよい。ヒドロゲルは、熱力学的に活性な官能基の存在下に、外部環境の条件に対して感受性を持つことが可能である。これらのゲルの膨張活動は、pH、温度、イオン強度、又は溶媒組成に依存してもよい。これらの特性は、グルコース感受性ポリマーシステムなどの、刺激反応性、又は「インテリジェント」ヒドロゲルを設計するために従来使用されている。(例えば、G.Albin,T.A.Horbett,B.D.Ratner,J.Controlled Release,1985,2,153.;K.Ishihara,M.Kobayashi,I.Shinohara PolymerJ.1984,16,625を参照されたい)。
【0032】
グルコースオキシダーゼ負荷ヒドロゲル:
グルコース反応性ヒドロゲルを設計するために、pH感受性ヒドロゲルと、グルコースオキシダーゼ(GOD)の組み合わせが従来調べられている。グルコースは、GODによって酵素的にグルコン酸に変換され、これは環境のpHを下げる。この酵素は組み合わされて種々のタイプのpH感受性ヒドロゲルを創出する。ポリ(N,N'−ジエチルアミノエチルメタクリレート)などのポリカチオンを含むヒドロゲルでは、pHの低下は、N,N'−ジエチルアミノエチル側鎖のイオン化によるヒドロゲル膜の膨張をもたらす。膜が膨張すると、分子は、扁平状態に比べより容易に拡散する。ヒドロゲルが、ポリ(メタクリル酸)などのポリアニオンを含む場合、高いpH値では、ポリマー鎖における電荷同士の静電気的反発によって孔(ポア)は閉鎖される。pHの低下後、ポアは、メタクリル酸側鎖のプロトン化によって鎖が潰れるために、開放する。(Y.Ito,M.Casolaro,K.Kono,I.Yukio J.Controlled Release 1989,10,195)。
【0033】
レクチン負荷ヒドロゲル:
グルコース反応性ヒドロゲルを設計するための別方法は、グルコース含有ポリマーを、コンカナバリンA(Con A)などの炭水化物結合性タンパク(レクチン)と組み合わせることである。Con Aのグルコース受容体と、グルコース含有ポリマーの間の、生体特異的アフィニティ結合から、遊離グルコース濃度に反応して可逆的ゾル−ゲル移行を実行することが可能なゲル形成が実現される。各種の、天然の、グルコース含有ポリマー、例えば、ポリスクロース、デキストラン、及びグリコーゲンが使用されてきた(例えば、M.J.Taylor,S.Tanna,J.Pharm.Pharmacol.1994,46,1051;M.J.Taylor,S.Tanna,P.M.Taylor,G.Adams,J.Drug Target.1995,3,209;S.Tanna,M.J.Taylor,J.Pharm.Pharmacol.1997,49,76;S.Tanna,M.J.Taylor,Pharm Pharmacol.Commun.1998,4,117;S.Tanna,M.J.Taylor,Proc.Int.Symp.Contr.Rel.Bioact.Mater.1998,25,737B.;S.Tanna,M.J.Taylor,G.Adams,J.Pharm.Pharmacol.1999,51,1093を参照されたい)。更に、明確にその特性が定められるサッカリド残基、例えば、ポリ(2−グリコシロエチルメタクリレート)(PGEMA)を持つ、いくつかの合成ポリマーも調べられている(K.Nakamae,T.Miyata,A.Jikihara,A.S.Hoffman J.Biomater.Sci.polym.Ed.1994,6,79)。
【0034】
フェニルボロン酸成分を持つヒドロゲル:
タンパク質を取り込んだグルコース反応性ヒドロゲルの製造及び取り扱いは、生物学的成分の不安定性のために困難である。この課題を克服するために、フェニルボロン酸成分を含む合成ヒドロゲルが調べられてきた。フェニルボロン酸及びその誘導体は、水溶液において、ポリオール化合物、例えばグルコースと複合体を形成する。実際、これらのルイス酸は、可逆的に、サッカリドのシス−1,2−又は1,3−ジオールに共有的に結合して、5員又は6員の環を形成する(C.J.Ward,P.Patel,T.D.James,Org.Lett.2002,4,477)。フェニルボロン酸とポリオール化合物の間の複合体は、より強力な複合体を形成することが可能な、競合的ポリオール化合物の存在下に解離させることが可能である。このアイデアに従って、フェニルボロン酸の、グルコース及びポリ(ビニールアルコール)に対する競合的結合を利用して、グルコース感受性システムが構築された(例えば、A.Kikuchi,K.Suzuki,O.Okabayashi,H.Hoshino,K.Kataoka,Y.Sakurai,T.Okano Anal.Chem.1996,68,823−828;K.Kataoka,H.Miyazaki Macromolecules 1994,27,1061−1062を参照)。この場合、遊離グルコースの存在は、ヒドロゲルの膨張をもたらした。有望な結果にも拘らず、前述のこのシステムは、グルコース濃度のインビボ監視には二つの理由で使用することができない:
1)生理的条件:フェニルボロン酸とポリオールとの可逆的結合は、生理的条件(温度、イオン強度、及びpH値)では実現されなかった。
2)選択性:フェニルボロン酸の結合は選択的ではない。実際、フェニルボロン酸は、シス−1,2−又は1,3−ジオールを持つものであればどのようなサッカリドとも(例えば、グルコース、フルクトース、及びガラクトース、及び乳酸塩)複合体を形成することが可能である。健康な個人では、グルコースは普通4−8mMの範囲で存在し、一方、グルコースに次いでもっとも豊富な糖類であるフルクトース及びガラクトースは、mMol以下のレベルで生理液中に存在する(R.Badugu,J.R.Lakowicz,C.D.Geddes,Analyst 2004,129,516)。フェニルボロン酸は、グルコースに対してよりも、フルクトースに対してはるかに大きいアフィニティを持つ(J.P.Lorand,J.O.Edwards,J.Am.Chem.Soc.1959,24,769)、これは、グルコース測定の精度に影響を及ぼす可能性のある特徴である。フェニルボロン酸成分を持つヒドロゲルについては、そのゲルの選択性を改善し、生理的条件におけるより優れた可逆性を確保するために、いくつかの処方が提案されている。もっとも有望な処方の内の一つが、2006年にPritchardによって提出されている(G.J.Worsley,G.A.Toumiaire,K.E.S.Medlock,F.K.Sartain,H.E.Harmer,M.Thatcher,A.M.Horgan,J.Pritchard Clinical Chem.2007,53,1820−1826)。三次アミンモノマー(N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−アクリルアミド)を、3−アクリルアミドフェニルボロン酸とコポリマー形成させると、グルコースに対して特異的アフィニティを持つグルコース反応性ヒドロゲルが得られた。この場合、グルコース濃度の増加は、ゲルの収縮を誘発する。この観察される収縮に対する、もっとも可能性のある説明は、有利な立体化学的構成を持つ二つの隣接ボロン酸受容体の、グルコースによる架橋結合によってビス−ボロン酸グルコース複合体が得られるというものである。ヒト血漿中のグルコースに対する測定能力を明らかに示すホログラフィーグルコースセンサーを設計するために、このグルコース反応性ヒドロゲルのフィルムに、AgBrの光感受性結晶を負荷した(例えば、S.Tanna,T.S.Sahota,J.Clark,M.J.Taylor J.Drug Target.2002,10 411.;S.Tanna,T.Sahota,J.Clark,M.J.Taylor,J.Pharm.Pharmacol.2002,54,1461を参照)。
【0035】
ある好ましい方法では、定量されたグルコース濃度は、更に別の測定値で較正されるが、この更に別の測定は、グルコース反応性多孔質膜が該液体によって濯がれた後に行われ、そのため、その別の測定は、該液体中に存在するグルコース濃度を決定する。
【0036】
これは、本発明の融通性及び単純性を増す、本発明の重要な利点である:グルコース濃度の測定値をそれに対して比べることが可能な参照数値を決めるために、一連の、不連続容量の液体が注入される。いくつかのユニットが輸送された後、多孔質膜の孔度は、医用デバイス中に含まれる液体のグルコース濃度によって決められる値に達するが、これは既知の値であり、参照値として使用することが可能である。グルコース測定を較正するには、単純に、前述の一連の測定値の最初の測定値(これは、埋設可能部材を取り巻く溶液のグルコース濃度を測定する)を、最終測定値(これは、医用デバイスの貯留槽中に存在する液体の、既知のグルコース濃度を測定する)と比較するだけでよい。従って、グルコース測定値は、測定を歪める可能性のある影響、例えば、温度、湿度、電子部品の安定性、ヒドロゲルの経時劣化などの材料特性などの変化に対して調整することが可能となる。この自動較正は、本医用デバイスをきわめて単純に、融通性の高いものにする。なぜなら、単純に、液体輸送プログラムを前述のように操作することによって参照値と比較することが可能となるからである。
【0037】
まったくユニットを輸送しないと、多孔質膜の孔度は、膜を取り囲むグルコース濃度によって決定される値に達する。その後に輸送される最初のユニットは、周辺溶液のグルコース濃度によって決められる孔度を持つ多孔質膜を通じて強制的に流され、このようにして、前述の組み込み較正を持つ新規測定サイクルが開始される。
【0038】
本医用デバイスが薬剤投与のために使用される場合、薬剤投与用に別チャンネルが用意されると有利である。なぜなら多孔質膜を通じる流通容量は制限されるからである。これは、埋設可能部材の中に設けられる第2の腔、又は第2埋設部材、又はもっとも好ましくは埋設可能部材の中に含まれるバルブによって実現されてもよい。バルブを設ける利点は、ただ一つの埋設可能部材と同時に、ただ一つの圧発生手段しか必要としないことである。血中グルコースレベルを測定するには、圧発生手段は、バルブの開放圧未満の圧を印加し、そのため、バルブは閉鎖したままで、液体は、多孔質膜を通じてのみ埋設部材を離脱することが可能である。薬剤投与が必要な場合は、圧発生手段は、バルブの開放圧よりも高く圧を上昇させ、そのため、液体中に含まれる、ある一定量の薬剤が投与される。このようにして、多孔質膜の(孔)ポアを通じて基礎率のインスリンを投与し、バルブを通じてインスリンのボーラス投与を実行することが可能となる。
【0039】
本発明のある実施態様によれば、本医用デバイスに使用される液体は、生理学的水溶液であり、これは、安価で、安全であり、長期間保存することが可能である。本医用デバイスが、薬剤投与のためではなく、グルコースの連続監視のために使用される場合、このような溶液が使用される。
【0040】
本発明の別の実施態様によれば、医用デバイスに使用される液体は、患者の血中グルコースレベルに対し調節機能を持つ薬剤物質、例えば、インスリン又はグルカゴンを含む。この場合、医用デバイスは、グルコース監視のためばかりでなく、液体の中に含まれる医用化合物の投与にとっても好適である。一つ以上の貯留槽、及び一つ以上のポンプを用い、一つ以上の薬剤物質を使用し、複数の薬剤物質を独立に投与することを可能としてもよい。
【0041】
薬剤の投与のために、一つ以上の埋設可能部材を設けてもよいし、或いは、一つの埋設部材の中に複数のチャンネルを設けてもよい。このような変異態様では、一つの埋設可能部材は薬剤投与のために使用され、バルブを備えてもよく、一方、第2の埋設可能部材は、血中グルコースの監視のために前述のヒドロゲルを含んでもよい。更に、ヒドロゲルを含む埋設可能部材は、薬剤の基礎率を送達するために使用されてもよく、一方、バルブを含む埋設可能部材は、薬剤のボーラス投与率を送達するために使用されてもよい。
【0042】
本発明によれば、医用デバイスは、閉鎖ループシステムにおいて使用されてもよい、即ち、生理的パラメータの監視は、前記生理的パラメータを調節する、薬剤送達部に直接連結されてもよい。しかしながら、本発明による医用デバイスは、半閉鎖ループシステムにおいて使用されてもよい。この場合、生理的パラメータの測定は、ディスプレイ又はその他の交信手段によって表示され、そのため、患者はある任意の瞬間に必要とされる薬剤送達に関して情報又は勧告を受信することが可能となる。従って、半閉鎖ループシステムは、監視と薬剤送達を直接連結はしないが、患者に対し、監視ユニットからの情報を受信する一方で、双方向対話、指令、又は薬剤投与の制御の実行を可能とする。
【0043】
本医用デバイスは、遠隔のユーザーデバイスとの交信を可能としてもよい。この交信能力は、ケーブルか、又は無線通信手段によって実現可能とされる。ユーザーの遠隔デバイスは、腕時計又は携帯電話などの、別のデバイスの一体化部分であってもよいし、或いは、別個のデバイスを構成してもよい。その機能は、医用デバイスによって決定されるデータに関連して患者に報知及び警告することである。
【0044】
それに加えて、更に外部警告システムがあってもよい。これは、医用デバイスと、又は、ユーザーの遠隔デバイスと直接交信状態に置かれていてもよい。この外部警告システムは、例えば、インターネット系サービスを通じて、患者の状態について医師又は病院に報知するのに好適である。
【0045】
本医用デバイスは、埋設可能部材、グルコース感受性デバイス、及び液剤貯留槽を含むディスポーザブル(廃棄可能)ユニット、及び、グラフ表示ユーザーインターフェイス、信号処理回路、及びポンプ電源及び制御手段を含む再使用可能ユニットを含むと有利であると考えられる。
【0046】
本発明の更に別の目的及び有利局面は、特許請求項、及び、図面と関連させて、本発明の実施態様に関する、下記の詳細な説明を読むことによって明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】図1aは、ポンプ、感受性手段、及び埋設可能部材を含む、本発明の実施態様の断面図を提示する。
【図1b】図1bは、圧発生手段、感受性手段、及び埋設可能部材を含む、本発明の実施態様による医用デバイスの断面図を提示する。
【図1c】図1cは、図1bの医用デバイスにおいて、該デバイスの分離可能でディスポーザブルなユニット及び再使用可能ユニットを示す、該デバイスの分解斜視図を提示する。
【図2a】図2aは、本発明の実施態様による、バルブ無しの埋設部材の断面図を提示する。
【図2b】図2bは、図2aの、バルブ無し埋設可能部材の三次元図を提示する。
【図2c】図2cは、図2aの、バルブ無し埋設可能部材の、部分的に断面を持つ三次元図を提示する。
【図3a】図3aは、バルブが閉鎖される、本発明の実施態様によるバルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図3b】図3bは、バルブが開放する、図3aのバルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図3c】図3cは、図3aのバルブ付き埋設可能部材の三次元図を提示する。
【図3d】図3dは、図3aの、バルブ付き埋設可能部材の、部分的に断面を持つ三次元図を提示する。
【図3e】図3eは、本発明の別の実施態様による、バルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図4】本発明の実施態様に従って流動抵抗を測定するように適応されるセンサーの断面図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面、特に、図1aから図1cを参照すると、本発明による医用デバイス1の実施態様は、圧発生手段2、流動抵抗を測定するように適応されるセンサー3、及び埋設可能部材4を含む。
【0049】
圧発生手段2は、液体をセンサー3に向けて輸送し、センサーでは、埋設可能部材4の中の膜の孔度に依存する流動抵抗が測定される。センサー3は、流動抵抗を測定する外に、埋設可能部材4に向けて液体を移送する。
【0050】
本医用デバイス1は、該医用デバイス1の下面5における接着性ベースによって患者の皮膚に付着されるのが好ましい。医用デバイス1と患者の間の接続は、該接続が数日間持続するが、いつでも皮膚から外すことが可能とされるように構成されてもよい。
【0051】
本発明による医用デバイス1の設計は弾力的である。ある好ましい実施態様では、医用デバイス1は、患者の衣服下における装着が意図されるので、使用の便利を確保するために平坦である。
【0052】
固定壁を持つ貯留槽20を備える圧発生手段2の好ましい実施態様が示される。貯留槽20は、インスリン送達デバイスにおいてしばしば標準として使用されるガラスアンプルであってもよい。貯留槽20は、該貯留槽の出口に向けて強制的に押しこまれるプラグを含む。これは、例えば、該プラグに対して圧力を及ぼすバネ21によって実現される。
【0053】
それとは別に、プラグは、貯留槽からセンサーに向かう液体流を直接制御するモーターによって駆動されてもよく、こうすると、貯留槽とセンサーの間に別のポンプを入れる必要がなくなる。
【0054】
液体は更に、ポンプ22(22a、22b)によってセンサーに向けて移送される。ポンプは、液体を、正確な、断続ユニットとして輸送する。それとは別に、ポンプ22の代わりに、バルブ(図示せず)を用いてもよい。
【0055】
別の実施態様によれば、貯留槽20は、加圧下に置かれない(図示せず)。この場合、ポンプ22は、プラグが貯留槽の出口に向けて移動するように、貯留槽から液体を吸引する。
【0056】
それとは別に、貯留槽20は、屈曲性材料(図示せず)から製造されてもよい。プラスチック材料から製造されてもよい、貯留槽の屈曲性壁によって、貯留槽から、強力な吸引を印加することなく液体を汲みだすことが可能となる。例えば、欧州特許出願EP 1527793A1に記載されるものと同じ小ピストンポンプを用いてもよい。屈曲性貯留槽は、医用デバイスにもっとも適合するように、様々の形状において提供することが可能である点で有利である。医用デバイスのサイズは、装着したときもっとも快適となるように最小化されることが好ましいので、このことは重要である。
【0057】
図1cを参照すると、医用デバイスは、ディスポーザブル(廃棄可能)ユニット36及び再使用可能ユニット38を含むと有利である場合がある。このディスポーザブルユニットは、埋設可能部材4、流動抵抗センサー3の一部3a、液剤貯留槽20、及び、ポンプ22の一部22aを含む。再使用可能ユニット38は(必要に応じて)、ユーザーインプット及びディスプレイインターフェイス(図示せず)、信号処理回路、電源、例えば、コンデンサ電極などのセンサー電子回路を含む、流動抵抗センサー3の補足部分3b、及び、例えば、電磁石などのポンプ駆動手段を含む、ポンプ22の補足部分22bを含む。このディスポーザブル及び再使用可能ユニットは分離可能であり、そのため、ディスポーザブルユニットは、使用後、再使用可能ユニットから取り外して、新規ディスポーザブルユニットと交換することが可能である。このようにして、高価な制御及びユーザーインターフェイス成分は、再使用可能ユニットに搭載され、複数回の使用のために保存されるので、本液剤回路における、そのまま廃棄されるべき(ディスポーザブル)成分(埋設可能部材及び液剤貯留槽)の使用の安全性を脅かすことなく、無駄を抑え、コストを節約することが可能となる。
【0058】
それに対するグルコース濃度測定値の比較を可能とする参照値を定めるために、一連の、不連続用量液体を、例えば、50ナノリットルを3秒間隔で注入する、即ち、屈曲性膜がその緩和状態に達するや否や、新規不連続容量の液体を輸送する。このようにして、測定の間に長い休止を置くこと無く、一連の流動抵抗測定が速やかに実行される。いくつかの汲みこみ工程、例えば、5工程が行われた後、多孔質膜の孔度は、医用デバイス中に含まれる液体のグルコース濃度によって決められる数値、即ち、既知の数値であり、参照値として使用することが可能な値に達する。第1工程は、埋設可能部材を取り囲む溶液中のグルコース濃度を測定するのに使用され、第2工程は、注射針腔中の平衡液体の、例えば、80%を置換し(この実施例では、ポンプ容量は、針中の活性容量に等しい)、第3工程後は、針の反応領域には、平衡液体の僅か約3%しか残っていない。従って、多孔質膜を通じて汲みこまれる、少数のユニット、例えば、5工程は、多孔質膜を洗い濯ぎ、較正のための参照値を取得するのに十分である。
【0059】
グルコース測定値を較正するには、前述の一連の測定値の内の第1測定値(埋設可能部材を取り巻く溶液のグルコース濃度を測定する)を、最終測定値(医用デバイス中に存在する液体のグルコース濃度を測定する)と比較するだけでよい。
【0060】
一呼吸の後、例えば、60秒間の休止の後、多孔質膜の孔度は、再び膜を取り囲むグルコース濃度によって決定される値に達する。約60秒後、多孔質膜のポアサイズが10nmから100nmであるならば、針の反応部分の液体も、周辺溶液中に存在するものとほぼ同じグルコース濃度に達する。従って、前述の、一体化較正を備える新規測定サイクルを始めてもよい。
【0061】
通常、新規測定サイクルは、5分から10分置きよりも高頻度は必要とされない。従って、細胞間液と、血中グルコースの間には、文献に通常受容される典型的生理的遅延時間として8−17分があるが、それに徴するならば、前述の遅延時間は、連続グルコース監視のための、本発明の応用を不当に制限することはない。
【0062】
図2aから図2cを参照すると、埋設可能部材4の実施態様が示される。この埋設可能部材は、注射針の形状を持ち、二つのセクション:非反応部分6及び反応部分7に分けられる。非反応部分の壁は閉鎖され、患者の装着快適性を強調するために、プラスチックなどの屈曲性材料製として提供されてもよい。反応部分7の壁は、多孔質膜28によって充填される孔8を有する。反応部分の全表面積における孔開き表面積の割合は、多孔質膜のために十分な表面積を獲得するためにも、患者の皮膚の中に導入するのに十分な強靭な針を実現するためにも、0.1と0.5の間にあることが好ましい。例えば、孔開き表面の割合は、0.2と0.3の間である。針は、5から30mm長であってもよく、0.1mmから1.0mmの直径30を有していてもよい。針は、プラスチック材料から製造されてもよいが、適切なものであればいずれの材料からでもよく、例えば、金属材料又はセラミック材料から成っていてもよい。
【0063】
患者の皮膚表面下に置かれる針の長さは、通常、15mmから20mmと測定され、一方、反応部分は2mmから10mm、非反応部分は7mmから13mmと測定される。針の厚みは、10μmから40μm、もっとも好ましくは20から30μmと測定される。針の直径は、典型的には、0.3mmと測定され、該針の腔10の容量を定める。前述の便利な較正法を確保するため、針の直径及び反応部分の長さは、ポンプ容量に適応されてもよい(又は、逆に、後者が前者に適応されてもよい)。
【0064】
多孔質膜28で孔8を充填する場合、腔の直径31よりも僅かに小さい直径を有するスペーサーを、針の中に同軸的に挿入してもよい。多孔質膜を印加した後、スペーサーを取り出すと、腔はやや小さい直径32を持つことになる。
【0065】
埋設可能部材4を取り囲む溶液におけるグルコース濃度が変化するにつれて、孔8の中に含まれる多孔質膜28の孔度が変化する。好ましくは、多孔質膜は、固定化コンカナバリンAとデキストラン分子を含み、ヒドロゲルを形成し、これが、更に別の支持構造、例えば、0.1mmのポアサイズを持つナイロンガーゼ支持体によって保持される(Tang et al.2003:A reversible hydrogel membrane and delivery of macromolecules(「可逆的ヒドロゲル膜及び巨大分子輸送」).Biotechnology and Bioengineering,Vol.82,No.1,April5,2003)。しかしながら、前述の、他のグルコース反応性化合物を使用することも可能である。
【0066】
ヒドロゲルは、存在するグルコース濃度に依存してその構造を可逆的に変えることが可能である。遊離グルコース分子は、固定化コンカナバリンA分子に対し、競合的、特異的に結合する。グルコース濃度の上昇は、グルコース分子によって占拠される、コンカナバリンA結合部位の数を増し、従って、ヒドロゲル中に存在する孔(ポア)のサイズを拡大する。グルコース濃度が減少すると、コンカナバリンAに結合するグルコースは、デキストラン分子によって置換され、これらデキストラン分子は、互いに連結して網状構造を形成し、従って、ヒドロゲル中に存在する孔のサイズを縮小する。多孔質膜が、周辺液に従ってグルコース濃度の平衡の95パーセントまで達するのに要する反応時間は、通常60秒と測定される。
【0067】
埋設可能部材4を取り巻く溶液中のグルコース濃度の変化が0mmol/lから30mmol/lとすると(ヒト血液におけるグルコース濃度の正常帯域は、4mmol/lから8mmol/lである)、多孔質膜における実効ポアサイズは、典型的には、直径10nmから100nmの範囲を持つと考えられる。
【0068】
図3aから図3dを参照すると、埋設可能部材4の別の実施態様が示される。薬剤投与のために、該埋設可能部材の中にはバルブ14が設けられる。このバルブは、埋設可能部材の自由端又は先端の近傍に配置される。埋設可能部材の反応性部分7には、孔8を含む支持チューブ9が設けられる。前述のような、グルコース反応性ヒドロゲル28を含む多孔質膜が、支持構造9の孔8の中に搭載される。
【0069】
多孔質膜通過時の流動抵抗の測定を可能とするために、バルブ14は、ある臨界圧に達するまで閉鎖したままである。薬剤の投与が予定される時刻になると、圧発生手段は、埋設可能デバイス中に、臨界圧を越える液体圧を創出し、それによってバルブが開放され、薬剤の患者に対する投与が可能となる。前記臨界圧は、多孔質膜通過時の流動抵抗を測定するために使用される圧よりも有意に高いことが好ましい。流動抵抗を測定するための典型的値は50mbarから100mbarの範囲にあり、従って、バルブにおける典型的臨界圧値は150から400mbarの範囲にある。これらの数字は、単に例示目的のために挙げるものであって、前述のものと同じ原理に従う、他の数値の組み合わせも、本発明の精神の範囲内に含めることが可能である。
【0070】
バルブ14は、図3a及び3bに示すものと同様の、弾性材料(例えば、ゴム)から製造されてもよい圧バルブを含んでもよい。好ましくは、この圧バルブは、指定の弾性圧下に互いに当接する対向する弾性突起を含み、そのために、バルブ上流の、指定閾値よりも大きい圧における液体は、これらの突起を無理に引き離し、液体の流出を可能とする。しかしながら、バルブは他の構造体を含んでもよく、例えば、フラップバルブ、又はバネ・弾丸バルブ、又は、必要な機能を満たすものであれば、他のどの種類のバルブであってもよい。
【0071】
図3eを参照すると、埋設可能部材4の更に別の実施態様が示される。これは、該埋設可能部材の反応性部分7に孔8を設ける支持構造、チューブ、又はスリーブ9、及び、支持構造の中に挿入されるチューブ形状を持つ、グルコース反応性多孔質膜28'を含む。従って、グルコース反応性多孔質膜28'は、支持構造とは別に製造されて、該構造に組み込まれてもよい。チューブ28'は、前述したように、単独のグルコース反応性ヒドロゲルを含んでもよいし、或いは、非グルコース反応性多孔質基質の中又は上に組み込まれたグルコース反応性ヒドロゲルを含んでもよい。基質は、セルロース繊維を含むと有利である場合がある。セルロース繊維基質のポアサイズは、好ましくは10−50nmの範囲、壁厚は好ましくは10−50μm、より好ましくは20−30μmである。支持スリーブ9は、例えば、平均直径が20−1000μm、好ましくは50−200μmの開口8を持つ、スチール又はチタン合金から製造されてもよい。薬剤投与のための他の実施態様に関連して前述したように、埋設可能部材の中にバルブ14を設けてもよい。バルブ14は、ボーラス投与のために使用してもよく、一方、基礎率は、多孔質膜及び/又はバルブを通じて投与してもよい。
【0072】
図4を参照すると、センサー3の好ましい実施態様が示される。圧発生手段によって輸送される、正確な量の液体が、流入チャンネル15においてセンサーチャンバ17に入り、流動抵抗センサー3の中に含まれる屈曲性膜18を変位させる。屈曲性膜の減衰(即ち、緩和)行動は、埋設可能部材中の多孔質膜の孔度に依存する流動抵抗に応じて変動する。多孔質膜を通過するときの流動抵抗が高ければ高いほど、圧発生手段によって輸送される液体によって引き起こされる変位の後、屈曲性膜が、その元の位置に達するのに要する時間は長くなる。屈曲性膜18は、その安静位置に戻るが、その一方で、液体は、流出口チャンネル16を通じてセンサーチャンバを離脱し、従って、該液体は、埋設可能部材の方に運ばれる。
【0073】
屈曲性膜18の変位を測定するには、コンデンサ19を用いると有利である。第1コンデンサ電極12を形成する、屈曲性膜の上面には導電性コーティング、例えば、金コーティングが設けられ、もう一つの固定位置コンデンサ電極11は、屈曲性膜の上方に一定距離隔てられて置かれる。これらの電極間の容量値は、屈曲性膜変位の振幅(24、25)を表す。外部の撹乱性信号に備えて測定値を調整するために、参照コンデンサ電極13を設けると有利である。
【0074】
医用デバイスは、第2の、又はそれ以上の液剤、例えば、インスリンと組み合わせてグルカゴンを投与し、それによって、デバイスが、血糖調節及び反調節薬剤を持つ人工すい臓として機能することができるように、一つを超えるポンプ及び貯留システムを備えてもよい。図1aに例示されるように、第2ポンプシステム22'は、埋設可能部材に接続されてもよい。第2ポンプシステム22'は、ポンプ22と同様に構築されてもよいが、ただし、第2ポンプシステム22'の通路中の死腔を最小とするために流動抵抗センサー3を持たず、ポンプ22に隣接して配置される。
【0075】
上述したように、本発明は、測定される特定の分析対象に対して反応性を持つ多孔質膜を用いることによって、グルコース以外の分析対象の感受に使用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象監視及び薬剤送達に、特に、グルコースの監視、及び糖尿病患者の治療に好適な医用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者の治療のために意図される種々のデバイスがこれまで記載されている:個々に異なるグルコースセンサー(例えば、電気化学的、粘度測定、又は光学センサーなど)、個々に異なる薬剤送達デバイス(例えば、インスリンポンプ及びインスリンペンなど)、及び、いわゆる閉鎖ループシステム、即ち、グルコースセンサーと薬剤送達を統合するシステムである。後者は、すい臓機能を理想的に模倣する、即ち、血中グルコースレベルを制御することが可能な薬剤が、血中グルコース濃度に応じて放出される。
【0003】
グルコース監視ユニットを、薬剤輸液ユニットと組み合わせた医用システムが、US 2006/0224141(特許文献1)に記載される。この医用システムでは、分析対象監視ユニットは、医用輸液ユニットとは別物とされる。分析対象センサーは、分析対象濃度の変化に従う電気抵抗の変化を定量するのに電極の使用に依存する。
US 5569186A(特許文献2)は、別の閉鎖ループシステムで、医用システムの部品が患者の体内に完全に埋設されるシステムを開示する。
【0004】
もう一つの閉鎖ループシステムが、WO 03047426A1(特許文献3)に記載される。このシステムでは、少なくとも部分的に埋設されるグルコースセンサーは注入ペンと通じ合うが、一方、ユーザーは、このグルコースセンサーによって測定されるグルコース濃度に基づいて注入される用量を調節することが可能である。
【0005】
薬剤輸液を制御するための前述の閉鎖ループシステムは、電子インターフェイスを介して接続される、少なくとも二つの個別ユニットから成る。
【0006】
WO 89/01794(特許文献4)は、一体化薬剤送達システムのための埋設可能グルコースセンサーを開示する。このセンサーは、加圧され、カテーテルを通じて流れる輸液対象を含む。このカテーテルの一セクションは、微小孔から成る多孔質膜を含み、この膜において、輸液対象中に存在するグルコースの濃度は、数分から1時間の反応時間において平衡に達する。次に、この平衡化輸液対象は、コンカナバリンA及びデキストラン分子を含む基質から成る化学バルブを通って流れる。化学バルブ中の基質は、輸液対象中に存在するグルコース濃度に応じてその孔度を変え、従って、患者の体内に流入する輸液対象の量を調節する。
【0007】
WO 89/01794(特許文献4)に開示されるシステムが、単に、周辺媒体におけるグルコース濃度を監視するためにのみ用いられる場合は、カテーテルは、更に別のグルコースセンサー、例えば、酵素電極、燃料電池、又はアフィニティセンサーなどを含むが、一方、化学バルブは存在しない。更に提案されているのは、孤立型センサーであって、その場合、輸液対象が化学バルブ基質を通過する前後で、その圧が定量され、一方、化学バルブ基質を横切る圧降下は、平衡輸液対象中のグルコース濃度に逆比例する。
【0008】
糖尿病患者において血中グルコース濃度を制御するには、結果を速やかに取得し、それによって薬剤の送達を調整することが重要である。これが、グルコースセンサー内部の成分の反応時間が、薬剤送達プログラムの成功を決める最重要ファクターである理由である。もしも、WO 89/01794(特許文献4)に記載されるように、平衡領域が、最大1時間の反応時間を持ち、化学バルブ中に含まれる基質が更にそれに加わる反応時間を有するのであれば、薬剤投与は、患者の体内にはもはや存在しない血中グルコース値に合わせて調整されることになり、従って、患者の血中グルコース濃度の調節は最善のものとはならない。
【0009】
更に、孔(ポア)サイズを決める基質が流動状態にある場合、即ち、輸液対象とともに到着する新規成分(例えば、デキストラン分子)が、輸液対象とともに洗い流されて患者の体内に入る成分を置換する場合、治療に与らない成分が、患者の体内に入る可能性がある(コンカナバリンAは有毒化合物である)。この基質は、時間とともに特徴を変えることが予想される。なぜなら、新規成分による置換は、均一分布的には行われないと考えられるからである(新規成分を持つ輸液対象が最初に到着する基質の入り口において凝集塊が生じると考えられる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2006/0224141
【特許文献2】US 5569186A
【特許文献3】WO 03047426A1
【特許文献4】WO 89/01794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者における分析対象レベルの測定のための、急速で、正確な医用デバイスを提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、分析対象レベルの、繊細で、タイムリーな調節を可能とする医用デバイスを提供することである。
【0013】
本発明の、特別の一つの目的は、患者における血中グルコースレベルの測定のための、急速で、正確な医用デバイスであって、血中グルコースレベルの繊細で、タイムリーな調節を可能とするデバイスを提供することである。
【0014】
本発明の、特別のもう一つの目的は、患者における血中グルコースレベルの調節のための医用デバイスであって、血中グルコースレベルの、急速、正確で、かつ、タイムリーな調節を実現するデバイスを提供することである。
【0015】
コンパクト、軽量で、かつ、製造が経済的な、分析対象測定及び/又は調節のための医用デバイスを提供することができるならば、それは有利であると考えられる。
【0016】
便利で、装着が容易な、分析対象測定及び/又は調節のための医用デバイスを提供することができるならば、それは有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、請求項1による分析対象濃度測定のための医用デバイスを提供し、請求項12に従って分析対象濃度を測定し、分析対象レベルを調節する方法を提供することによって達成された。
【0018】
本明細書に開示されるものは、液体を輸送するように適応される圧発生手段を含む医用デバイスである。この医用デバイスは更に、流動抵抗を測定するように適応されるセンサー、及び、多孔質膜を含む埋設可能部材を含む。前記多孔質膜は、埋設可能部材を取り囲む媒体に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を可逆的に変える。特に分析対象はグルコースである。
【0019】
本発明の一実施態様による液体は、患者における分析対象レベル(例えば、血中グルコースレベル)に影響を及ぼすことが可能な薬剤を含み、そのため、この医用デバイスは、薬剤投与のために使用することも可能である。
【0020】
更に開示されるものは、分析対象濃度を測定する方法であって:埋設可能部材であって、該埋設可能部材を取り囲む溶液中に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える多孔質膜を有する埋設可能部材を含む医用デバイスを準備すること;前記多孔質膜に向けて不連続用量の液体を注入すること;前記多孔質膜を通過する前記液体の流れに対する抵抗と相関する値を測定すること;及び、多孔質膜を通る流動抵抗と相関する測定数値に基づいて分析対象濃度を計算すること、を含む方法である。
【0021】
分析対象がグルコースである場合、ある実施態様によれば、前記方法は更に、患者の血中グルコースレベルに対し影響を及ぼすことが可能な一つ以上の薬剤を、測定されたグルコース濃度に応じて送達する工程を含んでもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施態様によれば、圧発生手段は、ポンプ及び貯留槽を含む。ポンプは、正確に指定量の液体を、貯留槽から埋設可能部材に向けて輸送する。このようなポンプは、従来技術分野において周知である。本発明の精神の範囲内に留まりながら、種々のタイプのポンプ、例えば、ピストンポンプ、又はペリスタルチックポンプなどを使用することが可能である。特に好ましい一つのポンプが、EP 1527793A1に記載される。なお、この特許文書を、参照により本明細書の中に組み入れる。このようなポンプは、サイズが小さいばかりでなく、少量の液体を正確に輸送することが可能である。貯留槽は、屈曲性壁を備えた扁平変形が可能な貯留槽であってもよく、或いは、可動プラグを備えたガラス製の標準アンプルなどの固定形状を持つ貯留槽であってもよい。
【0023】
発明のある実施態様によれば、ポンプは、貯留槽から流体を抽出し、この流体を埋設可能部材に向けて輸送する。本発明の別の好ましい実施態様によれば、貯留槽は加圧され、そのため、液体はポンプに向けて強制的に押し出される。これは、種々の方法で、例えば、ガラスアンプル貯留槽においてプラグを前方に押しこむことによって、又は、屈曲性貯留槽の側壁に力を加えることによって、又は、加圧ガスで満たされた第2貯留槽(この加圧ガスは、液体で満たされた貯留槽に対して圧をかける)を用いることによって実現することが可能である。
【0024】
貯留槽の液体を加圧下に置く場合、ポンプの代わりにバルブを使用することが可能である。正確な量の液体を輸送するために開閉するバルブは、従来技術に記載されており、この分野の当業者によく知られている。
【0025】
液体は、多孔質膜に向けて不連続(即ち、連続で無い)用量として輸送される。不連続用量の輸送の間に、多孔質膜におけるグルコース濃度は、周辺溶液中に存在するグルコース濃度に対し、拡散によって調整される。該多孔質膜中のグルコース濃度が、周辺溶液中のグルコース濃度に合致すると、液体が該多孔質膜を通じて強制的に流通させられるときに測定される流動抵抗は、周辺溶液中に存在するグルコース濃度の測定値として使用可能となる。
【0026】
ある好ましい実施態様では、流動抵抗を測定するように適応されるセンサーは、チャンバを区画する屈曲性膜を含み、この膜は、圧発生手段によって指定容量の液体がチャンバ内に注入されると、それによって弾性的に変位される。緩和の際、屈曲性膜は、埋設可能部材中に含まれる多孔質膜に向かって液体を輸送する圧を発生する。屈曲性膜は緩和して、膜の孔度(この孔度自体が周辺組織におけるグルコース濃度に依存する)に依存する速度で元の位置に戻る。弾性膜の緩和(又は、振幅減衰)速度は、流動抵抗の尺度として使用することが可能である。ある好ましい実施態様では、膜変位は、例えば、コンデンサによって測定してもよい。別法として、膜変位は、レーザー又はホールセンサーなどの他の手段によって測定することも可能である。
【0027】
ある好ましい実施態様では、埋設可能部材中の多孔質膜は、分析対象濃度に従ってその孔度を可逆的に変えるヒドロゲルを含む。分析対象がグルコースである場合、ヒドロゲルが、グルコース反応性ヒドロゲルを含むと有利である。グルコース反応性ヒドロゲルは、レクチン(特に、コンカナバリンA)、フェニルボロン酸系ヒドロゲル、及びその他の、グルコース、又はグルコースオキシダーゼに対するアフィニティ受容体、又は、その他の、グルコースに可逆的に結合することが可能な分子を用いることによって製造することが可能である。他の分析対象の場合は、当業者に公知であって、その分析対象に対して特異的な、適切なアフィニティ受容体、例えば、結合タンパク又は抗体(例えば、Miyata et al.1999:A reversibly antigen−responsive hydrogel(「抗原に対し可逆的反応性を持つヒドロゲル」). Nature Vol.399,pp.766−769を参照)、又はその他を使用することが可能である。
【0028】
ヒドロゲルは、スロットを含む管状部材の中に保持されてもよい。膜は、堅固なものであればいずれの材料、例えば、金属、プラスチック、又はセラミック材料で製造されてもよい埋設可能部材の管状構造によって支持されると有利である。この埋設可能部材は、ほんの部分的に(これは、当該技術分野では最小浸襲度とも言われるが)患者の体内に埋設されてもよい。
【0029】
本発明人らは、他の応用に関連して記載されるヒドロゲルが、本発明において、分析対象がグルコースである特定の場合において使用するのに好適な使用形態を持つことを見出した。Tangらは、いくつかの機械的形状に注型成形される、機械的、化学的に安定なグルコース反応性ヒドロゲル膜の合成法を報告している。グルコース濃度の変化に対する反応は、両方向、即ち、ゲル相及びゾル相の間の移行において可逆的であることが実証された。更に、長期に亘って、ヒドロゲルのコンカナバリンAの漏洩は無視できる程度のものであることが示された。異なる分子量を持つ二つのデキストラン分子を用いると、ゲル構造に対しより強力な制御が可能となり、そのため、特性変化は、ヒドロゲルの内部孔度の変化に限局させることが可能となる(Tang et al.2003:A reversible hydrogel membrane and delivery of macromolecules(「可逆的ヒドロゲル膜及び巨大分子輸送」). Biotechnology and Bioengineerig, Vol.82,No.1,April 5,2003)。
【0030】
コンカナバリンAをヒドロゲル中に固定し、それによって、コンカナバリンAが患者の体内へ入れないようにすると有利である。なぜなら、コンカナバリンAは、ヒトに対し有毒作用を及ぼすことが報告されているからである。コンカナバリンAを固定する方法は既に報告されている:Miyataらは、コンカナバリンAと、グルコシルオキシエチルメタクリレート(GEMA)とのコポリマーヒドロゲルの合成において、その合成物から、コンカナバリンAは漏洩せず、従って、多孔質膜孔度の可逆的変化を実現することが可能であることを報告している(Miyata et al.2004:Glucose−responsive hydrogels prepared by copolymerization of a monomer with Con A(「あるモノマーとCon Aとのコポリマー形成によって調製されるグルコース反応性ヒドロゲル」).Journal Biomaterial Science Polymer Edition,Vol.15,No.9,pp.1085−1098,2004)。Kim及びParkは、グルコース含有ポリマーに対する、コンカナバリンAの不動的固定を報告した(Kim J.J.and Park K.2001:Immobilization of Concanavalin A to glucose−containing polymers(「グルコース含有ポリマーに対するコンカナバリンAの固定」).Macromolecular Symposium,No.172,pp95−102,2001)。
【0031】
しかしながら、本発明の範囲内において、この多孔質膜は、一般に、グルコース濃度測定において、糖尿病管理のためのグルコースセンサー、及びインスリン送達システムにおいて公知の、様々なグルコース反応性ヒドロゲルから製造されてもよい(例えば、T.Miyata,T.Uragami,K.Nakamae Adv.Drug Deliver.Rev.2002,54,79;Y.Qiu,K.Park Adv.Drug.Deliver.Rev.2001,53,321;S.Chaterji,I.K.Kwon,K.park Prog.Polym.Sci.2007,32,1083;N.A.Peppas J.Drug Del.Sci.Tech.2004,14,247−256を参照)。ヒドロゲルは、大量の水を吸収して膨張する、架橋結合されるポリマー基質である。これらの材料は、その構造的一体性を維持するために物理的、化学的に架橋結合されてもよい。ヒドロゲルは、熱力学的に活性な官能基の存在下に、外部環境の条件に対して感受性を持つことが可能である。これらのゲルの膨張活動は、pH、温度、イオン強度、又は溶媒組成に依存してもよい。これらの特性は、グルコース感受性ポリマーシステムなどの、刺激反応性、又は「インテリジェント」ヒドロゲルを設計するために従来使用されている。(例えば、G.Albin,T.A.Horbett,B.D.Ratner,J.Controlled Release,1985,2,153.;K.Ishihara,M.Kobayashi,I.Shinohara PolymerJ.1984,16,625を参照されたい)。
【0032】
グルコースオキシダーゼ負荷ヒドロゲル:
グルコース反応性ヒドロゲルを設計するために、pH感受性ヒドロゲルと、グルコースオキシダーゼ(GOD)の組み合わせが従来調べられている。グルコースは、GODによって酵素的にグルコン酸に変換され、これは環境のpHを下げる。この酵素は組み合わされて種々のタイプのpH感受性ヒドロゲルを創出する。ポリ(N,N'−ジエチルアミノエチルメタクリレート)などのポリカチオンを含むヒドロゲルでは、pHの低下は、N,N'−ジエチルアミノエチル側鎖のイオン化によるヒドロゲル膜の膨張をもたらす。膜が膨張すると、分子は、扁平状態に比べより容易に拡散する。ヒドロゲルが、ポリ(メタクリル酸)などのポリアニオンを含む場合、高いpH値では、ポリマー鎖における電荷同士の静電気的反発によって孔(ポア)は閉鎖される。pHの低下後、ポアは、メタクリル酸側鎖のプロトン化によって鎖が潰れるために、開放する。(Y.Ito,M.Casolaro,K.Kono,I.Yukio J.Controlled Release 1989,10,195)。
【0033】
レクチン負荷ヒドロゲル:
グルコース反応性ヒドロゲルを設計するための別方法は、グルコース含有ポリマーを、コンカナバリンA(Con A)などの炭水化物結合性タンパク(レクチン)と組み合わせることである。Con Aのグルコース受容体と、グルコース含有ポリマーの間の、生体特異的アフィニティ結合から、遊離グルコース濃度に反応して可逆的ゾル−ゲル移行を実行することが可能なゲル形成が実現される。各種の、天然の、グルコース含有ポリマー、例えば、ポリスクロース、デキストラン、及びグリコーゲンが使用されてきた(例えば、M.J.Taylor,S.Tanna,J.Pharm.Pharmacol.1994,46,1051;M.J.Taylor,S.Tanna,P.M.Taylor,G.Adams,J.Drug Target.1995,3,209;S.Tanna,M.J.Taylor,J.Pharm.Pharmacol.1997,49,76;S.Tanna,M.J.Taylor,Pharm Pharmacol.Commun.1998,4,117;S.Tanna,M.J.Taylor,Proc.Int.Symp.Contr.Rel.Bioact.Mater.1998,25,737B.;S.Tanna,M.J.Taylor,G.Adams,J.Pharm.Pharmacol.1999,51,1093を参照されたい)。更に、明確にその特性が定められるサッカリド残基、例えば、ポリ(2−グリコシロエチルメタクリレート)(PGEMA)を持つ、いくつかの合成ポリマーも調べられている(K.Nakamae,T.Miyata,A.Jikihara,A.S.Hoffman J.Biomater.Sci.polym.Ed.1994,6,79)。
【0034】
フェニルボロン酸成分を持つヒドロゲル:
タンパク質を取り込んだグルコース反応性ヒドロゲルの製造及び取り扱いは、生物学的成分の不安定性のために困難である。この課題を克服するために、フェニルボロン酸成分を含む合成ヒドロゲルが調べられてきた。フェニルボロン酸及びその誘導体は、水溶液において、ポリオール化合物、例えばグルコースと複合体を形成する。実際、これらのルイス酸は、可逆的に、サッカリドのシス−1,2−又は1,3−ジオールに共有的に結合して、5員又は6員の環を形成する(C.J.Ward,P.Patel,T.D.James,Org.Lett.2002,4,477)。フェニルボロン酸とポリオール化合物の間の複合体は、より強力な複合体を形成することが可能な、競合的ポリオール化合物の存在下に解離させることが可能である。このアイデアに従って、フェニルボロン酸の、グルコース及びポリ(ビニールアルコール)に対する競合的結合を利用して、グルコース感受性システムが構築された(例えば、A.Kikuchi,K.Suzuki,O.Okabayashi,H.Hoshino,K.Kataoka,Y.Sakurai,T.Okano Anal.Chem.1996,68,823−828;K.Kataoka,H.Miyazaki Macromolecules 1994,27,1061−1062を参照)。この場合、遊離グルコースの存在は、ヒドロゲルの膨張をもたらした。有望な結果にも拘らず、前述のこのシステムは、グルコース濃度のインビボ監視には二つの理由で使用することができない:
1)生理的条件:フェニルボロン酸とポリオールとの可逆的結合は、生理的条件(温度、イオン強度、及びpH値)では実現されなかった。
2)選択性:フェニルボロン酸の結合は選択的ではない。実際、フェニルボロン酸は、シス−1,2−又は1,3−ジオールを持つものであればどのようなサッカリドとも(例えば、グルコース、フルクトース、及びガラクトース、及び乳酸塩)複合体を形成することが可能である。健康な個人では、グルコースは普通4−8mMの範囲で存在し、一方、グルコースに次いでもっとも豊富な糖類であるフルクトース及びガラクトースは、mMol以下のレベルで生理液中に存在する(R.Badugu,J.R.Lakowicz,C.D.Geddes,Analyst 2004,129,516)。フェニルボロン酸は、グルコースに対してよりも、フルクトースに対してはるかに大きいアフィニティを持つ(J.P.Lorand,J.O.Edwards,J.Am.Chem.Soc.1959,24,769)、これは、グルコース測定の精度に影響を及ぼす可能性のある特徴である。フェニルボロン酸成分を持つヒドロゲルについては、そのゲルの選択性を改善し、生理的条件におけるより優れた可逆性を確保するために、いくつかの処方が提案されている。もっとも有望な処方の内の一つが、2006年にPritchardによって提出されている(G.J.Worsley,G.A.Toumiaire,K.E.S.Medlock,F.K.Sartain,H.E.Harmer,M.Thatcher,A.M.Horgan,J.Pritchard Clinical Chem.2007,53,1820−1826)。三次アミンモノマー(N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−アクリルアミド)を、3−アクリルアミドフェニルボロン酸とコポリマー形成させると、グルコースに対して特異的アフィニティを持つグルコース反応性ヒドロゲルが得られた。この場合、グルコース濃度の増加は、ゲルの収縮を誘発する。この観察される収縮に対する、もっとも可能性のある説明は、有利な立体化学的構成を持つ二つの隣接ボロン酸受容体の、グルコースによる架橋結合によってビス−ボロン酸グルコース複合体が得られるというものである。ヒト血漿中のグルコースに対する測定能力を明らかに示すホログラフィーグルコースセンサーを設計するために、このグルコース反応性ヒドロゲルのフィルムに、AgBrの光感受性結晶を負荷した(例えば、S.Tanna,T.S.Sahota,J.Clark,M.J.Taylor J.Drug Target.2002,10 411.;S.Tanna,T.Sahota,J.Clark,M.J.Taylor,J.Pharm.Pharmacol.2002,54,1461を参照)。
【0035】
ある好ましい方法では、定量されたグルコース濃度は、更に別の測定値で較正されるが、この更に別の測定は、グルコース反応性多孔質膜が該液体によって濯がれた後に行われ、そのため、その別の測定は、該液体中に存在するグルコース濃度を決定する。
【0036】
これは、本発明の融通性及び単純性を増す、本発明の重要な利点である:グルコース濃度の測定値をそれに対して比べることが可能な参照数値を決めるために、一連の、不連続容量の液体が注入される。いくつかのユニットが輸送された後、多孔質膜の孔度は、医用デバイス中に含まれる液体のグルコース濃度によって決められる値に達するが、これは既知の値であり、参照値として使用することが可能である。グルコース測定を較正するには、単純に、前述の一連の測定値の最初の測定値(これは、埋設可能部材を取り巻く溶液のグルコース濃度を測定する)を、最終測定値(これは、医用デバイスの貯留槽中に存在する液体の、既知のグルコース濃度を測定する)と比較するだけでよい。従って、グルコース測定値は、測定を歪める可能性のある影響、例えば、温度、湿度、電子部品の安定性、ヒドロゲルの経時劣化などの材料特性などの変化に対して調整することが可能となる。この自動較正は、本医用デバイスをきわめて単純に、融通性の高いものにする。なぜなら、単純に、液体輸送プログラムを前述のように操作することによって参照値と比較することが可能となるからである。
【0037】
まったくユニットを輸送しないと、多孔質膜の孔度は、膜を取り囲むグルコース濃度によって決定される値に達する。その後に輸送される最初のユニットは、周辺溶液のグルコース濃度によって決められる孔度を持つ多孔質膜を通じて強制的に流され、このようにして、前述の組み込み較正を持つ新規測定サイクルが開始される。
【0038】
本医用デバイスが薬剤投与のために使用される場合、薬剤投与用に別チャンネルが用意されると有利である。なぜなら多孔質膜を通じる流通容量は制限されるからである。これは、埋設可能部材の中に設けられる第2の腔、又は第2埋設部材、又はもっとも好ましくは埋設可能部材の中に含まれるバルブによって実現されてもよい。バルブを設ける利点は、ただ一つの埋設可能部材と同時に、ただ一つの圧発生手段しか必要としないことである。血中グルコースレベルを測定するには、圧発生手段は、バルブの開放圧未満の圧を印加し、そのため、バルブは閉鎖したままで、液体は、多孔質膜を通じてのみ埋設部材を離脱することが可能である。薬剤投与が必要な場合は、圧発生手段は、バルブの開放圧よりも高く圧を上昇させ、そのため、液体中に含まれる、ある一定量の薬剤が投与される。このようにして、多孔質膜の(孔)ポアを通じて基礎率のインスリンを投与し、バルブを通じてインスリンのボーラス投与を実行することが可能となる。
【0039】
本発明のある実施態様によれば、本医用デバイスに使用される液体は、生理学的水溶液であり、これは、安価で、安全であり、長期間保存することが可能である。本医用デバイスが、薬剤投与のためではなく、グルコースの連続監視のために使用される場合、このような溶液が使用される。
【0040】
本発明の別の実施態様によれば、医用デバイスに使用される液体は、患者の血中グルコースレベルに対し調節機能を持つ薬剤物質、例えば、インスリン又はグルカゴンを含む。この場合、医用デバイスは、グルコース監視のためばかりでなく、液体の中に含まれる医用化合物の投与にとっても好適である。一つ以上の貯留槽、及び一つ以上のポンプを用い、一つ以上の薬剤物質を使用し、複数の薬剤物質を独立に投与することを可能としてもよい。
【0041】
薬剤の投与のために、一つ以上の埋設可能部材を設けてもよいし、或いは、一つの埋設部材の中に複数のチャンネルを設けてもよい。このような変異態様では、一つの埋設可能部材は薬剤投与のために使用され、バルブを備えてもよく、一方、第2の埋設可能部材は、血中グルコースの監視のために前述のヒドロゲルを含んでもよい。更に、ヒドロゲルを含む埋設可能部材は、薬剤の基礎率を送達するために使用されてもよく、一方、バルブを含む埋設可能部材は、薬剤のボーラス投与率を送達するために使用されてもよい。
【0042】
本発明によれば、医用デバイスは、閉鎖ループシステムにおいて使用されてもよい、即ち、生理的パラメータの監視は、前記生理的パラメータを調節する、薬剤送達部に直接連結されてもよい。しかしながら、本発明による医用デバイスは、半閉鎖ループシステムにおいて使用されてもよい。この場合、生理的パラメータの測定は、ディスプレイ又はその他の交信手段によって表示され、そのため、患者はある任意の瞬間に必要とされる薬剤送達に関して情報又は勧告を受信することが可能となる。従って、半閉鎖ループシステムは、監視と薬剤送達を直接連結はしないが、患者に対し、監視ユニットからの情報を受信する一方で、双方向対話、指令、又は薬剤投与の制御の実行を可能とする。
【0043】
本医用デバイスは、遠隔のユーザーデバイスとの交信を可能としてもよい。この交信能力は、ケーブルか、又は無線通信手段によって実現可能とされる。ユーザーの遠隔デバイスは、腕時計又は携帯電話などの、別のデバイスの一体化部分であってもよいし、或いは、別個のデバイスを構成してもよい。その機能は、医用デバイスによって決定されるデータに関連して患者に報知及び警告することである。
【0044】
それに加えて、更に外部警告システムがあってもよい。これは、医用デバイスと、又は、ユーザーの遠隔デバイスと直接交信状態に置かれていてもよい。この外部警告システムは、例えば、インターネット系サービスを通じて、患者の状態について医師又は病院に報知するのに好適である。
【0045】
本医用デバイスは、埋設可能部材、グルコース感受性デバイス、及び液剤貯留槽を含むディスポーザブル(廃棄可能)ユニット、及び、グラフ表示ユーザーインターフェイス、信号処理回路、及びポンプ電源及び制御手段を含む再使用可能ユニットを含むと有利であると考えられる。
【0046】
本発明の更に別の目的及び有利局面は、特許請求項、及び、図面と関連させて、本発明の実施態様に関する、下記の詳細な説明を読むことによって明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】図1aは、ポンプ、感受性手段、及び埋設可能部材を含む、本発明の実施態様の断面図を提示する。
【図1b】図1bは、圧発生手段、感受性手段、及び埋設可能部材を含む、本発明の実施態様による医用デバイスの断面図を提示する。
【図1c】図1cは、図1bの医用デバイスにおいて、該デバイスの分離可能でディスポーザブルなユニット及び再使用可能ユニットを示す、該デバイスの分解斜視図を提示する。
【図2a】図2aは、本発明の実施態様による、バルブ無しの埋設部材の断面図を提示する。
【図2b】図2bは、図2aの、バルブ無し埋設可能部材の三次元図を提示する。
【図2c】図2cは、図2aの、バルブ無し埋設可能部材の、部分的に断面を持つ三次元図を提示する。
【図3a】図3aは、バルブが閉鎖される、本発明の実施態様によるバルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図3b】図3bは、バルブが開放する、図3aのバルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図3c】図3cは、図3aのバルブ付き埋設可能部材の三次元図を提示する。
【図3d】図3dは、図3aの、バルブ付き埋設可能部材の、部分的に断面を持つ三次元図を提示する。
【図3e】図3eは、本発明の別の実施態様による、バルブ付き埋設可能部材の断面図を提示する。
【図4】本発明の実施態様に従って流動抵抗を測定するように適応されるセンサーの断面図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面、特に、図1aから図1cを参照すると、本発明による医用デバイス1の実施態様は、圧発生手段2、流動抵抗を測定するように適応されるセンサー3、及び埋設可能部材4を含む。
【0049】
圧発生手段2は、液体をセンサー3に向けて輸送し、センサーでは、埋設可能部材4の中の膜の孔度に依存する流動抵抗が測定される。センサー3は、流動抵抗を測定する外に、埋設可能部材4に向けて液体を移送する。
【0050】
本医用デバイス1は、該医用デバイス1の下面5における接着性ベースによって患者の皮膚に付着されるのが好ましい。医用デバイス1と患者の間の接続は、該接続が数日間持続するが、いつでも皮膚から外すことが可能とされるように構成されてもよい。
【0051】
本発明による医用デバイス1の設計は弾力的である。ある好ましい実施態様では、医用デバイス1は、患者の衣服下における装着が意図されるので、使用の便利を確保するために平坦である。
【0052】
固定壁を持つ貯留槽20を備える圧発生手段2の好ましい実施態様が示される。貯留槽20は、インスリン送達デバイスにおいてしばしば標準として使用されるガラスアンプルであってもよい。貯留槽20は、該貯留槽の出口に向けて強制的に押しこまれるプラグを含む。これは、例えば、該プラグに対して圧力を及ぼすバネ21によって実現される。
【0053】
それとは別に、プラグは、貯留槽からセンサーに向かう液体流を直接制御するモーターによって駆動されてもよく、こうすると、貯留槽とセンサーの間に別のポンプを入れる必要がなくなる。
【0054】
液体は更に、ポンプ22(22a、22b)によってセンサーに向けて移送される。ポンプは、液体を、正確な、断続ユニットとして輸送する。それとは別に、ポンプ22の代わりに、バルブ(図示せず)を用いてもよい。
【0055】
別の実施態様によれば、貯留槽20は、加圧下に置かれない(図示せず)。この場合、ポンプ22は、プラグが貯留槽の出口に向けて移動するように、貯留槽から液体を吸引する。
【0056】
それとは別に、貯留槽20は、屈曲性材料(図示せず)から製造されてもよい。プラスチック材料から製造されてもよい、貯留槽の屈曲性壁によって、貯留槽から、強力な吸引を印加することなく液体を汲みだすことが可能となる。例えば、欧州特許出願EP 1527793A1に記載されるものと同じ小ピストンポンプを用いてもよい。屈曲性貯留槽は、医用デバイスにもっとも適合するように、様々の形状において提供することが可能である点で有利である。医用デバイスのサイズは、装着したときもっとも快適となるように最小化されることが好ましいので、このことは重要である。
【0057】
図1cを参照すると、医用デバイスは、ディスポーザブル(廃棄可能)ユニット36及び再使用可能ユニット38を含むと有利である場合がある。このディスポーザブルユニットは、埋設可能部材4、流動抵抗センサー3の一部3a、液剤貯留槽20、及び、ポンプ22の一部22aを含む。再使用可能ユニット38は(必要に応じて)、ユーザーインプット及びディスプレイインターフェイス(図示せず)、信号処理回路、電源、例えば、コンデンサ電極などのセンサー電子回路を含む、流動抵抗センサー3の補足部分3b、及び、例えば、電磁石などのポンプ駆動手段を含む、ポンプ22の補足部分22bを含む。このディスポーザブル及び再使用可能ユニットは分離可能であり、そのため、ディスポーザブルユニットは、使用後、再使用可能ユニットから取り外して、新規ディスポーザブルユニットと交換することが可能である。このようにして、高価な制御及びユーザーインターフェイス成分は、再使用可能ユニットに搭載され、複数回の使用のために保存されるので、本液剤回路における、そのまま廃棄されるべき(ディスポーザブル)成分(埋設可能部材及び液剤貯留槽)の使用の安全性を脅かすことなく、無駄を抑え、コストを節約することが可能となる。
【0058】
それに対するグルコース濃度測定値の比較を可能とする参照値を定めるために、一連の、不連続用量液体を、例えば、50ナノリットルを3秒間隔で注入する、即ち、屈曲性膜がその緩和状態に達するや否や、新規不連続容量の液体を輸送する。このようにして、測定の間に長い休止を置くこと無く、一連の流動抵抗測定が速やかに実行される。いくつかの汲みこみ工程、例えば、5工程が行われた後、多孔質膜の孔度は、医用デバイス中に含まれる液体のグルコース濃度によって決められる数値、即ち、既知の数値であり、参照値として使用することが可能な値に達する。第1工程は、埋設可能部材を取り囲む溶液中のグルコース濃度を測定するのに使用され、第2工程は、注射針腔中の平衡液体の、例えば、80%を置換し(この実施例では、ポンプ容量は、針中の活性容量に等しい)、第3工程後は、針の反応領域には、平衡液体の僅か約3%しか残っていない。従って、多孔質膜を通じて汲みこまれる、少数のユニット、例えば、5工程は、多孔質膜を洗い濯ぎ、較正のための参照値を取得するのに十分である。
【0059】
グルコース測定値を較正するには、前述の一連の測定値の内の第1測定値(埋設可能部材を取り巻く溶液のグルコース濃度を測定する)を、最終測定値(医用デバイス中に存在する液体のグルコース濃度を測定する)と比較するだけでよい。
【0060】
一呼吸の後、例えば、60秒間の休止の後、多孔質膜の孔度は、再び膜を取り囲むグルコース濃度によって決定される値に達する。約60秒後、多孔質膜のポアサイズが10nmから100nmであるならば、針の反応部分の液体も、周辺溶液中に存在するものとほぼ同じグルコース濃度に達する。従って、前述の、一体化較正を備える新規測定サイクルを始めてもよい。
【0061】
通常、新規測定サイクルは、5分から10分置きよりも高頻度は必要とされない。従って、細胞間液と、血中グルコースの間には、文献に通常受容される典型的生理的遅延時間として8−17分があるが、それに徴するならば、前述の遅延時間は、連続グルコース監視のための、本発明の応用を不当に制限することはない。
【0062】
図2aから図2cを参照すると、埋設可能部材4の実施態様が示される。この埋設可能部材は、注射針の形状を持ち、二つのセクション:非反応部分6及び反応部分7に分けられる。非反応部分の壁は閉鎖され、患者の装着快適性を強調するために、プラスチックなどの屈曲性材料製として提供されてもよい。反応部分7の壁は、多孔質膜28によって充填される孔8を有する。反応部分の全表面積における孔開き表面積の割合は、多孔質膜のために十分な表面積を獲得するためにも、患者の皮膚の中に導入するのに十分な強靭な針を実現するためにも、0.1と0.5の間にあることが好ましい。例えば、孔開き表面の割合は、0.2と0.3の間である。針は、5から30mm長であってもよく、0.1mmから1.0mmの直径30を有していてもよい。針は、プラスチック材料から製造されてもよいが、適切なものであればいずれの材料からでもよく、例えば、金属材料又はセラミック材料から成っていてもよい。
【0063】
患者の皮膚表面下に置かれる針の長さは、通常、15mmから20mmと測定され、一方、反応部分は2mmから10mm、非反応部分は7mmから13mmと測定される。針の厚みは、10μmから40μm、もっとも好ましくは20から30μmと測定される。針の直径は、典型的には、0.3mmと測定され、該針の腔10の容量を定める。前述の便利な較正法を確保するため、針の直径及び反応部分の長さは、ポンプ容量に適応されてもよい(又は、逆に、後者が前者に適応されてもよい)。
【0064】
多孔質膜28で孔8を充填する場合、腔の直径31よりも僅かに小さい直径を有するスペーサーを、針の中に同軸的に挿入してもよい。多孔質膜を印加した後、スペーサーを取り出すと、腔はやや小さい直径32を持つことになる。
【0065】
埋設可能部材4を取り囲む溶液におけるグルコース濃度が変化するにつれて、孔8の中に含まれる多孔質膜28の孔度が変化する。好ましくは、多孔質膜は、固定化コンカナバリンAとデキストラン分子を含み、ヒドロゲルを形成し、これが、更に別の支持構造、例えば、0.1mmのポアサイズを持つナイロンガーゼ支持体によって保持される(Tang et al.2003:A reversible hydrogel membrane and delivery of macromolecules(「可逆的ヒドロゲル膜及び巨大分子輸送」).Biotechnology and Bioengineering,Vol.82,No.1,April5,2003)。しかしながら、前述の、他のグルコース反応性化合物を使用することも可能である。
【0066】
ヒドロゲルは、存在するグルコース濃度に依存してその構造を可逆的に変えることが可能である。遊離グルコース分子は、固定化コンカナバリンA分子に対し、競合的、特異的に結合する。グルコース濃度の上昇は、グルコース分子によって占拠される、コンカナバリンA結合部位の数を増し、従って、ヒドロゲル中に存在する孔(ポア)のサイズを拡大する。グルコース濃度が減少すると、コンカナバリンAに結合するグルコースは、デキストラン分子によって置換され、これらデキストラン分子は、互いに連結して網状構造を形成し、従って、ヒドロゲル中に存在する孔のサイズを縮小する。多孔質膜が、周辺液に従ってグルコース濃度の平衡の95パーセントまで達するのに要する反応時間は、通常60秒と測定される。
【0067】
埋設可能部材4を取り巻く溶液中のグルコース濃度の変化が0mmol/lから30mmol/lとすると(ヒト血液におけるグルコース濃度の正常帯域は、4mmol/lから8mmol/lである)、多孔質膜における実効ポアサイズは、典型的には、直径10nmから100nmの範囲を持つと考えられる。
【0068】
図3aから図3dを参照すると、埋設可能部材4の別の実施態様が示される。薬剤投与のために、該埋設可能部材の中にはバルブ14が設けられる。このバルブは、埋設可能部材の自由端又は先端の近傍に配置される。埋設可能部材の反応性部分7には、孔8を含む支持チューブ9が設けられる。前述のような、グルコース反応性ヒドロゲル28を含む多孔質膜が、支持構造9の孔8の中に搭載される。
【0069】
多孔質膜通過時の流動抵抗の測定を可能とするために、バルブ14は、ある臨界圧に達するまで閉鎖したままである。薬剤の投与が予定される時刻になると、圧発生手段は、埋設可能デバイス中に、臨界圧を越える液体圧を創出し、それによってバルブが開放され、薬剤の患者に対する投与が可能となる。前記臨界圧は、多孔質膜通過時の流動抵抗を測定するために使用される圧よりも有意に高いことが好ましい。流動抵抗を測定するための典型的値は50mbarから100mbarの範囲にあり、従って、バルブにおける典型的臨界圧値は150から400mbarの範囲にある。これらの数字は、単に例示目的のために挙げるものであって、前述のものと同じ原理に従う、他の数値の組み合わせも、本発明の精神の範囲内に含めることが可能である。
【0070】
バルブ14は、図3a及び3bに示すものと同様の、弾性材料(例えば、ゴム)から製造されてもよい圧バルブを含んでもよい。好ましくは、この圧バルブは、指定の弾性圧下に互いに当接する対向する弾性突起を含み、そのために、バルブ上流の、指定閾値よりも大きい圧における液体は、これらの突起を無理に引き離し、液体の流出を可能とする。しかしながら、バルブは他の構造体を含んでもよく、例えば、フラップバルブ、又はバネ・弾丸バルブ、又は、必要な機能を満たすものであれば、他のどの種類のバルブであってもよい。
【0071】
図3eを参照すると、埋設可能部材4の更に別の実施態様が示される。これは、該埋設可能部材の反応性部分7に孔8を設ける支持構造、チューブ、又はスリーブ9、及び、支持構造の中に挿入されるチューブ形状を持つ、グルコース反応性多孔質膜28'を含む。従って、グルコース反応性多孔質膜28'は、支持構造とは別に製造されて、該構造に組み込まれてもよい。チューブ28'は、前述したように、単独のグルコース反応性ヒドロゲルを含んでもよいし、或いは、非グルコース反応性多孔質基質の中又は上に組み込まれたグルコース反応性ヒドロゲルを含んでもよい。基質は、セルロース繊維を含むと有利である場合がある。セルロース繊維基質のポアサイズは、好ましくは10−50nmの範囲、壁厚は好ましくは10−50μm、より好ましくは20−30μmである。支持スリーブ9は、例えば、平均直径が20−1000μm、好ましくは50−200μmの開口8を持つ、スチール又はチタン合金から製造されてもよい。薬剤投与のための他の実施態様に関連して前述したように、埋設可能部材の中にバルブ14を設けてもよい。バルブ14は、ボーラス投与のために使用してもよく、一方、基礎率は、多孔質膜及び/又はバルブを通じて投与してもよい。
【0072】
図4を参照すると、センサー3の好ましい実施態様が示される。圧発生手段によって輸送される、正確な量の液体が、流入チャンネル15においてセンサーチャンバ17に入り、流動抵抗センサー3の中に含まれる屈曲性膜18を変位させる。屈曲性膜の減衰(即ち、緩和)行動は、埋設可能部材中の多孔質膜の孔度に依存する流動抵抗に応じて変動する。多孔質膜を通過するときの流動抵抗が高ければ高いほど、圧発生手段によって輸送される液体によって引き起こされる変位の後、屈曲性膜が、その元の位置に達するのに要する時間は長くなる。屈曲性膜18は、その安静位置に戻るが、その一方で、液体は、流出口チャンネル16を通じてセンサーチャンバを離脱し、従って、該液体は、埋設可能部材の方に運ばれる。
【0073】
屈曲性膜18の変位を測定するには、コンデンサ19を用いると有利である。第1コンデンサ電極12を形成する、屈曲性膜の上面には導電性コーティング、例えば、金コーティングが設けられ、もう一つの固定位置コンデンサ電極11は、屈曲性膜の上方に一定距離隔てられて置かれる。これらの電極間の容量値は、屈曲性膜変位の振幅(24、25)を表す。外部の撹乱性信号に備えて測定値を調整するために、参照コンデンサ電極13を設けると有利である。
【0074】
医用デバイスは、第2の、又はそれ以上の液剤、例えば、インスリンと組み合わせてグルカゴンを投与し、それによって、デバイスが、血糖調節及び反調節薬剤を持つ人工すい臓として機能することができるように、一つを超えるポンプ及び貯留システムを備えてもよい。図1aに例示されるように、第2ポンプシステム22'は、埋設可能部材に接続されてもよい。第2ポンプシステム22'は、ポンプ22と同様に構築されてもよいが、ただし、第2ポンプシステム22'の通路中の死腔を最小とするために流動抵抗センサー3を持たず、ポンプ22に隣接して配置される。
【0075】
上述したように、本発明は、測定される特定の分析対象に対して反応性を持つ多孔質膜を用いることによって、グルコース以外の分析対象の感受に使用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用デバイスであって:
埋設可能部材において、該埋設可能部材を取り囲む媒体に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を可逆的に変える、分析対象反応性多孔質膜を含む埋設可能部材と;
液体を該分析対象反応性多孔質膜に輸送するように構成される圧発生手段と;
前記液体が該分析対象反応性多孔質膜を通過するときの流動抵抗を測定するように適応されるセンサーと、
を含む、医用デバイス。
【請求項2】
前記圧発生手段が、液体を一連の不連続量として前記グルコース反応性多孔質膜に向けて輸送する、請求項1記載の医用デバイス。
【請求項3】
前記センサーが、液体輸送時に変位される屈曲性膜を含み、該屈曲性膜の減衰行動が流動抵抗の定量に使用される、請求項1又は2記載の医用デバイス。
【請求項4】
ディスポーザブルユニット(36)及び再使用可能ユニット(38)を含む、請求項1ないし3いずれか1項に記載の医用デバイスであって、該ディスポーザブルユニットが、埋設可能部材(4)と流動抵抗センサー(3)の一部(3a)と液剤貯留槽(20)とポンプ(22)の一部(22a)とを含み、該再使用可能ユニットが、信号処理回路と電源と前記流動抵抗センサーの補足部分(3b)と前記ポンプの補足部分(22b)を含む、医用デバイス。
【請求項5】
前記埋設可能部材が、前記分析対象反応性多孔質膜(28, 28’)によって充填、又はコートされる孔(8)を持つ支持チューブ(9)を含む、請求項1ないし4いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項6】
前記分析対象反応性多孔質膜(28’)が、前記支持チューブ(9)内に挿入されるチューブの形状を取る、請求項5記載の医用デバイス。
【請求項7】
前記分析対象反応性多孔質膜が、分析対象反応性ヒドロゲルを取り込む多孔質基質を含む、請求項6記載の医用デバイス。
【請求項8】
前記埋設可能部材が、該埋設可能部材の自由端の近傍に配置されるバルブ(14)を含む、請求項1ないし7いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項9】
前記バルブが、対向当接する弾性突起から造られる圧バルブを含む、請求項8記載の医用デバイス。
【請求項10】
前記分析対象がグルコースであり、前記液体が患者の血中グルコースレベルを調節することが可能な薬剤を含む、請求項1ないし9いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項11】
前記分析対象がグルコースであり、前記多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項1ないし10いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項12】
分析対象反応性多孔質膜を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、該分析対象反応性多孔質膜を含む医用デバイスを操作する方法であって:
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において汲みこむこと;
該分析対象反応性多孔質膜を通過する液体の流動抵抗を測定すること;
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定すること、
を含む方法。
【請求項13】
前記液体を前記多孔質膜を通じて汲みこむことによって前記分析対象反応性多孔質膜を濯ぐこと、その後、該多孔質膜を通過する該液体の流動抵抗を測定することを含む較正工程を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記流動抵抗が前記液体の汲みこみ時に変位される屈曲性膜を含むセンサーによって測定され、その際、該屈曲性膜の減衰行動が測定されて流動抵抗を定量する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記分析対象がグルコースであり、前記分析対象反応性多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項12ないし14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分析対象濃度を測定する方法であって:
分析対象反応性多孔質膜を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、該分析対象反応性多孔質膜を含む医用デバイスを準備する工程と;
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において輸送する工程と;
該分析対象反応性多孔質膜を通過する液体の流動抵抗を測定する工程と;
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記液体を前記多孔質膜を通じて汲みこむことによって前記分析対象反応性多孔質膜を濯ぐこと、その後、グルコース反応性多孔質膜を通過する該液体の流動抵抗を測定することを含む較正工程を更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記流動抵抗が、液体輸送時に変位される屈曲性膜を含むセンサーによって測定され、その際、該屈曲性膜の減衰行動が流動抵抗を定量するために使用される、請求項17又は18記載の医用デバイス。
【請求項19】
前記分析対象がグルコースであり、前記グルコース反応性多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項16ないし18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
患者の体内の分析対象レベルに影響を及ぼすために薬剤を投与する方法であって、
埋設可能部材を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、分析対象反応性多孔質膜を備える該埋設可能部材含む医用デバイスを準備する工程と、
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において輸送する工程と、
該分析対象反応性多孔膜を通過する液体の流動抵抗を測定する工程と、
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定する工程と、
を含む分析対象濃度を測定する工程と、
その測定されたグルコース濃度に従って患者の体内の分析対象レベルに影響を及ぼすことが可能な薬剤を送達する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記薬剤が前記埋設可能部材の中に含まれるバルブを通じて送達される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記分析対象がグルコースであり、前記分析対象反応性多孔質膜がグルコース反応性多孔質膜である、請求項19又は20記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤の基礎率は前記グルコース反応性多孔質膜を通じて送達され、該薬剤のボーラス率は前記バルブを通じて送達される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤が別の第2埋設可能部材を通じて、又は前記埋設可能部材の中の別の腔を通じて送達される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記患者に血中グルコースレベルに関する情報を提供すること、及び、前記薬剤の送達に関連する該患者による指令を受容することを含む、患者双方向対話工程を更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記送達薬剤が、インスリン、グルカゴン、及びアミリンの群から選ばれる、血中グルコース濃度に影響を及ぼすことが可能な物質の内任意の一つ以上である、請求項22記載の方法。
【請求項1】
医用デバイスであって:
埋設可能部材において、該埋設可能部材を取り囲む媒体に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を可逆的に変える、分析対象反応性多孔質膜を含む埋設可能部材と;
液体を該分析対象反応性多孔質膜に輸送するように構成される圧発生手段と;
前記液体が該分析対象反応性多孔質膜を通過するときの流動抵抗を測定するように適応されるセンサーと、
を含む、医用デバイス。
【請求項2】
前記圧発生手段が、液体を一連の不連続量として前記グルコース反応性多孔質膜に向けて輸送する、請求項1記載の医用デバイス。
【請求項3】
前記センサーが、液体輸送時に変位される屈曲性膜を含み、該屈曲性膜の減衰行動が流動抵抗の定量に使用される、請求項1又は2記載の医用デバイス。
【請求項4】
ディスポーザブルユニット(36)及び再使用可能ユニット(38)を含む、請求項1ないし3いずれか1項に記載の医用デバイスであって、該ディスポーザブルユニットが、埋設可能部材(4)と流動抵抗センサー(3)の一部(3a)と液剤貯留槽(20)とポンプ(22)の一部(22a)とを含み、該再使用可能ユニットが、信号処理回路と電源と前記流動抵抗センサーの補足部分(3b)と前記ポンプの補足部分(22b)を含む、医用デバイス。
【請求項5】
前記埋設可能部材が、前記分析対象反応性多孔質膜(28, 28’)によって充填、又はコートされる孔(8)を持つ支持チューブ(9)を含む、請求項1ないし4いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項6】
前記分析対象反応性多孔質膜(28’)が、前記支持チューブ(9)内に挿入されるチューブの形状を取る、請求項5記載の医用デバイス。
【請求項7】
前記分析対象反応性多孔質膜が、分析対象反応性ヒドロゲルを取り込む多孔質基質を含む、請求項6記載の医用デバイス。
【請求項8】
前記埋設可能部材が、該埋設可能部材の自由端の近傍に配置されるバルブ(14)を含む、請求項1ないし7いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項9】
前記バルブが、対向当接する弾性突起から造られる圧バルブを含む、請求項8記載の医用デバイス。
【請求項10】
前記分析対象がグルコースであり、前記液体が患者の血中グルコースレベルを調節することが可能な薬剤を含む、請求項1ないし9いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項11】
前記分析対象がグルコースであり、前記多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項1ないし10いずれか1項に記載の医用デバイス。
【請求項12】
分析対象反応性多孔質膜を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、該分析対象反応性多孔質膜を含む医用デバイスを操作する方法であって:
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において汲みこむこと;
該分析対象反応性多孔質膜を通過する液体の流動抵抗を測定すること;
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定すること、
を含む方法。
【請求項13】
前記液体を前記多孔質膜を通じて汲みこむことによって前記分析対象反応性多孔質膜を濯ぐこと、その後、該多孔質膜を通過する該液体の流動抵抗を測定することを含む較正工程を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記流動抵抗が前記液体の汲みこみ時に変位される屈曲性膜を含むセンサーによって測定され、その際、該屈曲性膜の減衰行動が測定されて流動抵抗を定量する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記分析対象がグルコースであり、前記分析対象反応性多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項12ないし14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分析対象濃度を測定する方法であって:
分析対象反応性多孔質膜を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、該分析対象反応性多孔質膜を含む医用デバイスを準備する工程と;
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において輸送する工程と;
該分析対象反応性多孔質膜を通過する液体の流動抵抗を測定する工程と;
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記液体を前記多孔質膜を通じて汲みこむことによって前記分析対象反応性多孔質膜を濯ぐこと、その後、グルコース反応性多孔質膜を通過する該液体の流動抵抗を測定することを含む較正工程を更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記流動抵抗が、液体輸送時に変位される屈曲性膜を含むセンサーによって測定され、その際、該屈曲性膜の減衰行動が流動抵抗を定量するために使用される、請求項17又は18記載の医用デバイス。
【請求項19】
前記分析対象がグルコースであり、前記グルコース反応性多孔質膜が、グルコースオキシダーゼ、レクチン、及びフェニルボロン酸系ヒドロゲルの群から選ばれる、グルコース反応性ヒドロゲルを含む、請求項16ないし18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
患者の体内の分析対象レベルに影響を及ぼすために薬剤を投与する方法であって、
埋設可能部材を取り囲む溶液に見られる分析対象濃度の変化に応じてその孔度を変える、分析対象反応性多孔質膜を備える該埋設可能部材含む医用デバイスを準備する工程と、
該分析対象反応性多孔質膜に向けて、液体を一つ以上の不連続な指定容量において輸送する工程と、
該分析対象反応性多孔膜を通過する液体の流動抵抗を測定する工程と、
その測定された流動抵抗に基づいて分析対象濃度を決定する工程と、
を含む分析対象濃度を測定する工程と、
その測定されたグルコース濃度に従って患者の体内の分析対象レベルに影響を及ぼすことが可能な薬剤を送達する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記薬剤が前記埋設可能部材の中に含まれるバルブを通じて送達される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記分析対象がグルコースであり、前記分析対象反応性多孔質膜がグルコース反応性多孔質膜である、請求項19又は20記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤の基礎率は前記グルコース反応性多孔質膜を通じて送達され、該薬剤のボーラス率は前記バルブを通じて送達される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤が別の第2埋設可能部材を通じて、又は前記埋設可能部材の中の別の腔を通じて送達される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記患者に血中グルコースレベルに関する情報を提供すること、及び、前記薬剤の送達に関連する該患者による指令を受容することを含む、患者双方向対話工程を更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記送達薬剤が、インスリン、グルカゴン、及びアミリンの群から選ばれる、血中グルコース濃度に影響を及ぼすことが可能な物質の内任意の一つ以上である、請求項22記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【公表番号】特表2011−501684(P2011−501684A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530609(P2010−530609)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054348
【国際公開番号】WO2009/053911
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510028512)ゼンズィーレ パット アーゲー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054348
【国際公開番号】WO2009/053911
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510028512)ゼンズィーレ パット アーゲー (3)
【Fターム(参考)】
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