説明

グレモンハンドルのロックシステム

【課題】扉が施錠された状態で、グレモンハンドルを動かそうとしてこのハンドルに大きな力を作用させても、グレモンハンドルが動かず、かつ施錠用部品は損傷しない。
【解決手段】開口部15の扉11による閉止時にグレモン機構13が扉を枠体12に引き寄せて扉周縁を枠体に密着させる。グレモン機構は、扉の中央に回動可能に取付けられたグレモンハンドル14と、グレモンハンドルに連結された第1係止具21と、グレモンハンドルにアッパロッド16及びロアロッド17を介して連結された第2及び第3係止具22,23と、第1〜第3係止具に対向する枠体に形成され第1〜第3係止具を係止可能な第1〜第3被係止孔12a〜12cとを有する。グレモンハンドルの操作による第1〜第3係止具の第1〜第3被係止孔への係止時に、グレモンハンドルの操作を不能にするハンドルロック手段がアッパロッドの上端に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレモンハンドルを操作することにより部屋の電磁波シールド機能や遮音機能などを発揮する扉の開閉機構において、上記グレモンハンドルをロックするシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に設置された方形の枠に戸体が開閉可能に設けられ、戸体の戸先側に設けられた箱錠にラッチ及びラッチを操作する把手を設けるとともに、戸体の戸先側に上下方向に移動する移動部材が設けられ、移動部材にラッチの下方及び上方に少なくとも1つずつの係止手段が設けられるとともに、縦枠に各係止手段に離脱可能に係止する被係止手段が設けられ、更に移動部材の上方又は下方への移動により係止手段が被係止手段に係止されて戸体が枠側に引き寄せられて施錠され、移動部材の施錠動作時と反対方向への移動により係止手段の被係止手段による係止が解かれて解錠されるように構成された開口部装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この開口部装置では、ラッチを操作する把手が、移動部材の施錠方向の操作又は解錠方向の操作の少なくともいずれかの操作に兼用されるように構成される。また戸体のラッチより上方と下方に位置する箇所にそれぞれデッドボルトを有する本締まり錠が取付けられ、下方の本締まり錠は室外側からキーにて施錠できるようになっている。更に移動部材の中間部には孔が設けられ、この孔には上記デッドボルトを通す孔付きの合成樹脂製のガイドピースがその係止爪を移動部材の孔に押込んで孔の縁に係止させることにより取付けられる。
【0003】
このように構成された開口部装置では、戸体の戸先側に箱錠を設け、この箱錠のラッチの上下にそれぞれ1つ以上の係止手段を設け、各係止手段に対応して縦枠に被係止手段を設けたので、戸体の戸先側の中間部を枠側に引き寄せることができ、戸体に反りがある場合においても、その反りを矯正して戸体を枠に密着した状態で閉めることができ、気密性が向上する。また箱錠の把手が、係止手段と被係止手段との係止又は係止解除による施錠又は解錠の少なくともいずれかに兼用されるため、操作が簡単となる上、操作部材の兼用により、部品点数が削減されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−210291号公報(請求項1、段落[0011]、[0023]、[0033]、[0034])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された開口部装置では、本締まり錠のデッドボルトを移動部材の孔に挿入することにより移動部材の上下動が阻止されるけれども、この状態で箱錠の把手を動かそうとすると、デッドボルトと移動部材の孔との間にガタツキがあり、またデッドボルトが比較的小さく機械的強度が低いため、本締まり錠に大きな力が作用して、本締まり錠が故障するおそれがあった。一方、本締まり錠のデッドボルトが移動部材の孔ではなく枠に係合する構造とすると、本締まり錠を施錠した状態で、箱錠の把手を操作して箱錠を解錠することが可能となってしまい、この場合、戸体の枠への密着性が低下して戸体の性能を発揮できなくなる問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、扉が施錠された状態で、グレモンハンドルを動かそうとしてこのハンドルに大きな力を作用させても、グレモンハンドルが動かず、かつ施錠用部品を損傷させない、グレモンハンドルのロックシステムを提供することにある。本発明の別の目的は、扉の施錠状態でグレモンハンドルを操作することが可能となってしまうことによる扉の電磁波シールド性や扉の枠体への密着性等の性能の低下を防止できる、グレモンハンドルのロックシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、図1〜図3及び図9に示すように、建物の壁の開口部15周縁に沿って取付けられた枠体12と、枠体12に一方の側縁が枢着されて開口部15を開閉可能に閉止する扉11と、開口部15が扉11により閉止されたときに扉11を枠体12に引き寄せて扉11周縁を枠体12に密着させるグレモン機構13とを備え、グレモン機構13が、扉11の他方の側縁の中央に回動可能に取付けられたグレモンハンドル14と、グレモンハンドル14に連結され扉11の他方の側縁の中央から枠体12に向って出没する第1係止具21と、グレモンハンドル14にアッパロッド16を介して連結され扉11の他方の側縁の上部から枠体12に向って出没する第2係止具22と、グレモンハンドル14にロアロッド17を介して連結され扉11の他方の側縁の下部から枠体12に向って出没する第3係止具23と、第1〜第3係止具21〜23に対向する枠体12に形成され第1〜第3係止具21〜23をそれぞれ係止可能な第1〜第3被係止孔12a〜12cとを有する扉の開閉構造において、グレモンハンドル14を操作して第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したときに、グレモンハンドル14の操作を不能にするハンドルロック手段36がアッパロッド16の上端又はロアロッド17の下端に設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1〜図3及び図9に示すように、扉11上部にアッパベルクランク19の中央がアッパ軸24を介して枢着され、アッパベルクランク19の基端にアッパロッド16の上端が枢着され、アッパベルクランク19の先端に第2係止具22が設けられ、ハンドルロック手段36が、扉11の上部かつ内部に上下動可能に収容され磁性材料により形成された被吸着体37と、アッパ軸24の回動を被吸着体37の上下運動に変換する運動変換機構38と、グレモンハンドル14を操作して第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したことを検出するハンドルセンサ39と、扉11の上部かつ内部に収容され被吸着体37を磁力により吸着する電磁石41と、この電磁石41の磁力を解除する解除手段42と、ハンドルセンサ39及び解除手段42の各検出出力に基づいて電磁石41を制御する制御回路44とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に扉下部にロアベルクランクの中央がロア軸を介して枢着され、ロアベルクランクの基端にロアロッドの下端が枢着され、ロアベルクランクの先端に第3係止具が設けられ、ハンドルロック手段が、扉の下部かつ内部に上下動可能に収容され磁性材料により形成された被吸着体と、ロア軸の回動を被吸着体の上下運動に変換する運動変換機構と、グレモンハンドルを操作して第1〜第3係止具が第1〜第3被係止孔に係止したことを検出するハンドルセンサと、扉の下部かつ内部に収容され被吸着体を磁力により吸着する電磁石と、この電磁石の磁力を解除する解除手段と、ハンドルセンサ及び解除手段の各検出出力に基づいて電磁石を制御する制御回路とを有することを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第2又は第3の観点に基づく発明であって、更に図1及び図2に示すように、運動変換機構38が、レバー・ピン機構、カム機構、ピニオン・ラック機構、又はリンク機構のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の観点のロックシステムでは、グレモンハンドルを操作して第1〜第3係止具が第1〜第3被係止孔に係止したときに、グレモンハンドルの操作を不能にするハンドルロック手段をアッパロッドの上端又はロアロッドの下端に設けたので、扉が施錠された状態で、グレモンハンドルを動かそうとしてこのハンドルに大きな力を作用させても、グレモンハンドルの操作がハンドルロック手段により不能にされており、グレモンハンドルが動かない。この結果、ハンドルロック手段等の施錠用部品を損傷することはない。また本締まり錠のデッドボルトが移動部材の孔ではなく枠に係合する構造とした場合、従来の開口部装置では、本締まり錠を施錠した状態で、箱錠の把手を操作して箱錠を解錠することが可能となってしまい、戸体の枠への密着性が低下してしまっていたが、本発明では、そのような扉の電磁波シールド性や扉の枠体への密着性等の性能の低下を防止できる。即ち、本発明では、扉を施錠した状態でグレモンハンドルを操作することができない構造であるため、扉の施錠状態で扉の電磁波シールド性や扉の枠体への密着性等の性能が低下することはない。
【0011】
本発明の第2の観点のロックシステムでは、扉が閉止した状態で解除手段により電磁石の磁力を解除した後に、グレモンハンドルを操作すると、電磁石が被吸着体を吸着する磁力を発揮していないので、第1〜第3係止具を第1〜第3被係止孔から離脱させることができる。このときグレモンハンドルに連結されたアッパロッドが上昇又は下降し、アッパベルクランク及びアッパ軸が回転するので、レバーが係合ピンを移動体とともに引き下げて、被吸着体が電磁石から離れる。一方、開放した扉を閉じてグレモンハンドルを操作すると、第1〜第3係止具を第1〜第3被係止孔に係止する。このときグレモンハンドルに連結されたアッパロッドが下降又は上昇し、アッパベルクランク及びアッパ軸が回転するので、レバーが係合ピンを移動体とともに押し上げて、被吸着体が電磁石に接触する。同時にハンドルセンサが、グレモンハンドルの操作により第1〜第3係止具が第1〜第3被係止孔に係止したことを検出するので、制御回路はこのハンドルセンサの検出出力に基づいて電磁石に通電する。この結果、電磁石が被吸着体をその磁力により吸着するので、扉が施錠される。その後、グレモンハンドルを操作しようとして、ハンドルに大きな力を作用させても、グレモンハンドルが動かない。また電磁石、運動変換機構などの施錠用部品が堅牢であるので、これらの部品は損傷しない。
【0012】
本発明の第3の観点のロックシステムでは、扉が閉止した状態で解除手段により電磁石の磁力を解除した後に、グレモンハンドルを操作すると、電磁石が被吸着体を吸着する磁力を発揮していないので、第1〜第3係止具を第1〜第3被係止孔から離脱させることができる。このときグレモンハンドルに連結されたロアロッドが上昇又は下降し、ロアベルクランク及びロア軸が回転するので、レバーが係合ピンを移動体とともに引き下げて、被吸着体が電磁石から離れる。一方、開放した扉を閉じてグレモンハンドルを操作すると、第1〜第3係止具を第1〜第3被係止孔に係止する。このときグレモンハンドルに連結されたロアロッドが下降又は上昇し、ロアベルクランク及びロア軸が回転するので、レバーが係合ピンを移動体とともに押し上げて、被吸着体が電磁石に接触する。同時にハンドルセンサが、グレモンハンドルの操作により第1〜第3係止具が第1〜第3被係止孔に係止したことを検出するので、制御回路はこのハンドルセンサの検出出力に基づいて電磁石に通電する。この結果、上記と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明実施形態のグレモンハンドルのロックシステムを示す図2(a)のA−A線断面図であり、(b)は図2(b)のB−B線断面図である。
【図2】(a)は図1(a)のC−C線断面図であり、(b)は図1(b)のD−D線断面図である。
【図3】図9の要部断面拡大図である。
【図4】図3のE−E線断面図である。
【図5】図9のF−F線断面図である。
【図6】図3のG−G線断面図である。
【図7】図3のH−H線断面図である。
【図8】図3のI−I線断面図である。
【図9】そのグレモンハンドルを含む扉により枠体の開口部を閉止した状態を示す正面図である。
【図10】そのロックシステムの電気的接続を示すブロック図である。
【図11】本発明の別の実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。建物に電磁波をシールドした部屋が設けられ、この部屋の壁に入退室するための開口部が設けられ、この開口部には電磁波シールド構造の扉が設けられる。図9に示すように、扉11の開閉構造は、上記開口部15周縁に沿って取付けられた枠体12と、枠体12に一方の側縁が枢着されて開口部15を開閉可能に閉止する扉11と、開口部15が扉11により閉止されたときに扉11を枠体12に引き寄せて扉11周縁を枠体12に密着させるグレモン機構13とを備える。上記開口部15は長方形状に形成され、枠体12は開口部15に嵌め込まれる。また扉11は長方形状に形成され、その一方の側縁が枠体12の一方の側縁に枢着されてこの枢着部を中心に水平面内で回動するように構成される。上記グレモン機構13は、扉11の他方の側縁の上下方向中央に回動可能に取付けられたグレモンハンドル14と、グレモンハンドル14に連結された第1係止具21と、グレモンハンドル14にアッパロッド16を介して連結された第2係止具22と、グレモンハンドル14にロアロッド17を介して連結された第3係止具23と、第1〜第3係止具21〜23に対向する枠体12に形成された第1〜第3被係止孔12a〜12cとを有する(図3及び図4)。第1係止具21は扉11の他方の側縁の中央から枠体12の他方の側縁の中央に向って出没し、第2係止具22は扉11の他方の側縁の上部から枠体12の上部に向って出没し、第3係止具23は扉11の他方の側縁の下部から枠体12の下部に向って出没するように構成される。また第1〜第3係止具21〜23は突出したときに第1〜第3被係止孔12a〜12cにそれぞれ係止するように構成される。
【0015】
グレモンハンドル14,14は略への字状に形成され、扉11の他方の側縁中央の室内側及び室外側にそれぞれ設けられる(図3、図5、図7及び図9)。これらのハンドル14,14の屈曲部14aが扉に回動可能に貫通された中間軸18の両端に接続されることにより、ハンドル14,14が扉に枢着される。これらのハンドル14の基端には把持部14bがそれぞれ設けられ、室内側のハンドル14の先端にのみ上記第1係止具21が設けられる。また扉11の他方の側縁上部の室内側にはアッパベルクランク19の中央がアッパ軸24を介して枢着される。このアッパベルクランク19の基端にはアッパ接続具26の上端が枢着され、アッパベルクランク19の先端には上記第2係止具22が設けられる。また扉11の他方の側縁下部の室内側にはロアベルクランク27の中央がロア軸28を介して枢着される。このロアベルクランク27の基端にはロア接続具31の下端が枢着され、ロアベルクランク27の先端には上記第3係止具23が設けられる。更に室内側のハンドル14の把持部14bと中間軸18との間に中間接続具31の中央が枢着される。この中間接続具31の上端にアッパロッド16の下端が接続され、アッパロッド16の上端がアッパ接続具26の下端に接続される。また中間接続具31の下端にロアロッド17の上端が接続され、ロアロッド17の下端がロア接続具29の上端に接続される。
【0016】
一方、図4に詳しく示すように、第1〜第3被係止孔12a〜12cはそれぞれ縦長に形成され、これらの孔12a〜12cの一方の内側面(閉止した扉11側の内側面)にはブロック32がそれぞれ取付けられる。これらのブロック32は、孔12a〜12cの下部に位置する薄肉部32aと、孔12a〜12cの上部に位置する厚肉部32bと、薄肉部32aと厚肉部32bとをなだらかに接続する傾斜部32cとを有する。また図6〜図8に詳しく示すように、枠体12の内周縁には、扉11周縁に対向する凹溝12dが形成され、この凹溝12dには帯状弾性体33が挿着される。この帯状弾性体33は天然ゴム又は合成ゴムのラテックススポンジ紐などを導電性網体で被包することにより形成される。更に扉11には枠体12の凹溝12dに対向してステンレス鋼などの金属により形成された突起34が設けられる。グレモンハンドル14を操作して第1〜第3係止部21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cの薄肉部32aから傾斜部32cを通って厚肉部32bに移動すると(図4)、扉11が枠体12に引き寄せられ、扉11の突起34が枠体12の凹溝12d内の帯状弾性体33に食い込んで、扉11周縁が枠体12に密着して電磁波がシールドされるようになっている(図6〜図8)。
【0017】
本実施の形態の特徴ある構成は、グレモンハンドル14を操作して第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したときに、グレモンハンドル14の操作を不能にするハンドルロック手段36がアッパロッド16の上端に設けられたところにある(図1〜図3)。このハンドルロック手段36は、扉11の上部かつ内部に上下動可能に収容された被吸着体37と、アッパ軸24の回動を被吸着体37の上下運動に変換する運動変換機構38と、グレモンハンドル14を操作して第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したことを検出するハンドルセンサ39と、扉11の上部かつ内部に収容された電磁石41と、この電磁石41の磁力を解除する解除手段42と、ハンドルセンサ39及び解除手段42の各検出出力に基づいて電磁石41を制御する制御回路44とを有する(図1〜図3及び図10)。
【0018】
上記被吸着体37、運動変換機構38及び電磁石41は両側面が開口するケース43に収容され、このケース43は扉11内部に収容される(図1及び図2)。被吸着体37は鋼等の磁性材料により比較的厚い板状に形成される。また運動変換機構38は、この実施の形態では、レバー・ピン機構である。具体的には、運動変換機構38は、基端がアッパ軸24に嵌着され先端に切欠き部46aが形成されたレバー46と、上面に被吸着体37が取付けられケース43内を上下動可能な移動体47と、この移動体47に設けられレバー46の切欠き部46aに遊挿された係合ピン48とを有する。ケース43の内部には、移動体47の幅より僅かに広い幅を維持しながら上下方向に所定の間隔をあけて複数の案内ピン43aが2列に取付けられる。移動体47はこれら2列の案内ピン43aに案内されてケース43内を上下動するように構成される。また移動体47は両側面が開口する箱状に形成され、幅方向中央に沿いかつ下端から上部に延びる凹部47aを有する。この凹部47aがアッパ軸24に遊嵌され、レバー46が移動体47内でアッパ軸24を中心に回動することにより切欠き部46aに遊挿された係合ピン48が移動体47とともに上下動するようになっている。
【0019】
ハンドルセンサ39はグレモンハンドル14又は中間軸18の近傍に設けられ、グレモンハンドル14又は中間軸18の回動を検出する(図3及び図10)。具体的には、ハンドルセンサ39は、グレモンハンドル14を操作して、第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したときにオンし、第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cから離脱したときにオフするように構成される。また解除手段42は、この実施の形態では、扉11に施された入退管理システムである(図10)。この入退管理システム42では、扉11の近傍の壁の室外側及び室内側にそれぞれ入退チェック装置42aが設けられ、これらの入退チェック装置42aにカードを挿入するか、指や掌をかざすか、或いは暗証番号をテンキー入力することにより、入退室が許可された者であるか否かが検出される。そして入退室が許可された者であることが検出されると、電磁石41への通電が解除され、入退室が許可された者でないことが検出されると、電磁石41への通電が維持されるように構成される。更に電磁石41は被吸着体37に対向するようにケース43の上壁下面に取付けられる(図1及び図2)。ハンドルセンサ39及び入退管理システム42の各検出出力は制御回路44の制御入力に接続され、制御回路44の制御出力は電磁石41に接続される(図10)。また制御回路44にはメモリ44aが設けられ、このメモリ44aには入退が許可された者のカード情報、生体情報又は暗証番号が記憶されている。
【0020】
このように構成されたグレモンハンドル14のロックシステムの動作を説明する。電磁波をシールドした部屋に入る場合、入室しようとする者は、入退管理システム42の入退チェック装置42aにカードを挿入するか、指や掌をかざすか、或いは暗証番号をテンキー入力する。そして制御回路44は、入退チェック装置42aの検出した上記カードの情報、生体情報又は暗証番号が記憶情報と一致すると判断すると、電磁石41への通電を解除する。この状態で入室しようとする者がグレモンハンドル14を操作すると、電磁石41が被吸着体37を吸着する磁力を発揮していないので、グレモンハンドル14の把持部14bを引上げて、第1〜第3係止具21〜23を第1〜第3被係止孔12a〜12cから離脱させることができる。このときグレモンハンドル14に連結された中間接続具31とアッパロッド16とアッパ接続具26とが上昇して、アッパベルクランク19の基端側が上方に回転するので、アッパ軸24が図1(b)の実線矢印の方向に回転し、レバー46が係合ピン48を移動体47とともに引き下げて、被吸着体37が電磁石41から離れる。
【0021】
上記入室しようとする者が入室して部屋の内側から扉11を閉めてグレモンハンドル14を押下げると、第1〜第3係止具21〜23を第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止することができる。このときグレモンハンドル14に連結された中間接続具31とアッパロッド16とアッパ接続具26とが下降して、アッパベルクランク19の基端側が下方に回転するので、アッパ軸24が図1(a)の破線矢印の方向に回転し、レバー46が係合ピン48を移動体47とともに押し上げて、被吸着体37が電磁石41に接触する。同時にハンドルセンサ39が、グレモンハンドル14の操作により第1〜第3係止具21〜23が第1〜第3被係止孔12a〜12cに係止したことを検出してオンするので、制御回路44はこのハンドルセンサ39の検出出力に基づいて電磁石41に通電する。この結果、電磁石41が被吸着体37をその磁力により吸着するので、扉11が施錠される。その後、グレモンハンドル14を操作しようとして、ハンドル14に大きな力を作用させても、ハンドル14は動かない。また電磁石41、運動変換機構38などの施錠用部品が堅牢であるので、これらの部品は損傷しない。
【0022】
なお、上記実施の形態では、運動変換機構をアッパ軸側に設けたが、運動変換機構をロア軸側に設けてもよい。この場合、ハンドルロック手段が、扉の下部かつ内部に上下動可能に収容され磁性材料により形成された被吸着体と、ロア軸の回動を被吸着体の上下運動に変換する運動変換機構と、グレモンハンドルを操作して第1〜第3係止具が第1〜第3被係止孔に係止したことを検出するハンドルセンサと、扉の下部かつ内部に収容され被吸着体を磁力により吸着する電磁石と、この電磁石の磁力を解除する解除手段と、ハンドルセンサ及び解除手段の各検出出力に基づいて電磁石を制御する制御回路とを有する。
また、上記実施の形態では、解除手段として入退管理システムを挙げたが、解除手段を、扉に取付けられた解除ノブや解除キーシリンダと、これらの動きを検出するセンサとにより構成してもよい。この場合、解除ノブや解除キーシリンダの動きがセンサにより検出され、このセンサの検出出力が制御回路の制御入力に接続される。
【0023】
上記実施の形態では、運動変換機構としてレバー・ピン機構を用いたが、カム機構、ピニオン・ラック機構又はリンク機構などの運動変換機構を用いてもよい。運動変換機構としてカム機構を用いる場合には、図11に示すように、ハンドルロック手段76の運動変換機構78は、基端がアッパ軸24に嵌着されたカム86と、上面に被吸着体37が取付けられケース83内を上下動可能な移動体87と、この移動体87に上下方向に所定の間隔をあけて設けられカム86を遊嵌する一対の係合ピン88,88とを有する。ケース83の内部には、移動体87の幅より狭い幅を維持しながら上下方向に所定の間隔をあけて複数の案内ピン83aが2列に取付けられる。また移動体87は両側面が開口する箱状に形成される。移動体87は、幅方向中央に沿いかつ下端から上部に延びる凹部87aと、上記2列の案内ピン83aをそれぞれ遊挿可能な一対の長孔87b,87bとを有する。移動体87は2列の案内ピン83aに案内されてケース83内を上下動するように構成される。また上記凹部87aがアッパ軸24に遊嵌され、カム86が移動体87内でアッパ軸24を中心に回動することによりカム86に遊嵌された一対の係合ピン88,88が移動体87とともに上下動するようになっている。図11において図1と同一符号は同一部品を示す。
【0024】
運動変換機構としてピニオン・ラック機構を用いる場合には、アッパ軸にピニオンが嵌入され、このピニオンに噛合し上下動可能に設けられたラックに電磁石が取付けられる。このピニオン・ラック機構では、アッパ軸が回転すると、ピニオンが回転し、このピニオンの回転運動がラックの直線運動に変換されて電磁石が上下動するように構成される。
運動変換機構としてリンク機構を用いる場合には、アッパ軸に第1リンクの基端が嵌着され、上下動可能な電磁石に第2リンクの基端が取付けられ、第1リンクの先端と第2リンクの先端とが連結される。即ち、このリンク機構は、エンジンのクランク軸の回転運動をピストンの直線運動に変換する機構に近似する機構である。このリンク機構では、アッパ軸が回転すると、第1リンクが回転し、この第1リンクの回転運動が第2リンクの基端の直線運動に変換されて電磁石が上下動するように構成される。
【符号の説明】
【0025】
11 扉
12 枠体
12a 第1被係止孔
12b 第2被係止孔
12c 第3被係止孔
13 グレモン機構
14 グレモンハンドル
15 開口部
16 アッパロッド
17 ロアロッド
18 中間軸
19 アッパベルクランク
21 第1係止具
22 第2係止具
23 第3係止具
24 アッパ軸
36,76 ハンドルロック手段
37 被吸着体
38,78 運動変換機構
39 ハンドルセンサ
41 電磁石
42 解除手段(入退管理システム)
44 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁の開口部(15)周縁に沿って取付けられた枠体(12)と、前記枠体(12)に一方の側縁が枢着されて前記開口部(15)を開閉可能に閉止する扉(11)と、前記開口部(15)が前記扉(11)により閉止されたときに前記扉(11)を前記枠体(12)に引き寄せて前記扉(11)周縁を前記枠体(12)に密着させるグレモン機構(13)とを備え、前記グレモン機構(13)が、前記扉(11)の他方の側縁の中央に回動可能に取付けられたグレモンハンドル(14)と、前記グレモンハンドル(14)に連結され前記扉(11)の他方の側縁の中央から前記枠体(12)に向って出没する第1係止具(21)と、前記グレモンハンドル(14)にアッパロッド(16)を介して連結され前記扉(11)の他方の側縁の上部から前記枠体(12)に向って出没する第2係止具(22)と、前記グレモンハンドル(14)にロアロッド(17)を介して連結され前記扉(11)の他方の側縁の下部から前記枠体(12)に向って出没する第3係止具(23)と、前記第1〜第3係止具(21〜23)に対向する前記枠体(12)に形成され前記第1〜第3係止具(21〜23)をそれぞれ係止可能な第1〜第3被係止孔(12a〜12c)とを有する扉の開閉構造において、
前記グレモンハンドル(14)を操作して前記第1〜第3係止具(21〜23)が前記第1〜第3被係止孔(12a〜12c)に係止したときに、前記グレモンハンドル(14)の操作を不能にするハンドルロック手段(36,76)がアッパロッド(16)の上端又はロアロッド(17)の下端に設けられたことを特徴とするグレモンハンドルのロックシステム。
【請求項2】
扉(11)上部にアッパベルクランク(19)の中央がアッパ軸(24)を介して枢着され、前記アッパベルクランク(19)の基端にアッパロッド(16)の上端が枢着され、前記アッパベルクランク(19)の先端に第2係止具(22)が設けられ、ハンドルロック手段(36,76)が、前記扉(11)の上部かつ内部に上下動可能に収容され磁性材料により形成された被吸着体(37)と、前記アッパ軸(24)の回動を前記被吸着体(37)の上下運動に変換する運動変換機構(38,78)と、前記グレモンハンドル(14)を操作して前記第1〜第3係止具(21〜23)が前記第1〜第3被係止孔(12a〜12c)に係止したことを検出するハンドルセンサ(39)と、前記扉(11)の上部かつ内部に収容され前記被吸着体(37)を磁力により吸着する電磁石(41)と、前記電磁石(41)の磁力を解除する解除手段(42)と、前記ハンドルセンサ(39)及び前記解除手段(42)の各検出出力に基づいて前記電磁石(41)を制御する制御回路(44)とを有する請求項1記載のグレモンハンドルのロックシステム。
【請求項3】
扉下部にロアベルクランクの中央がロア軸を介して枢着され、前記ロアベルクランクの基端にロアロッドの下端が枢着され、前記ロアベルクランクの先端に第3係止具が設けられ、ハンドルロック手段が、前記扉の下部かつ内部に上下動可能に収容され磁性材料により形成された被吸着体と、前記ロア軸の回動を前記被吸着体の上下運動に変換する運動変換機構と、前記グレモンハンドルを操作して前記第1〜第3係止具が前記第1〜第3被係止孔に係止したことを検出するハンドルセンサと、前記扉の下部かつ内部に収容され前記被吸着体を磁力により吸着する電磁石と、前記電磁石の磁力を解除する解除手段と、前記ハンドルセンサ及び各解除手段の各検出出力に基づいて前記電磁石を制御する制御回路とを有する請求項1記載のグレモンハンドルのロックシステム。
【請求項4】
運動変換機構(38,78)が、レバー・ピン機構、カム機構、ピニオン・ラック機構、又はリンク機構のいずれかである請求項2又は3記載のグレモンハンドルのロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−222907(P2010−222907A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73388(P2009−73388)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】