説明

グレーチングの製造方法

【課題】 安全性を考慮した滑り止め機能を発揮させる一方、低コスト化を図ると共にステンレス鋼の高級感,高品質を保てるグレーチングの製造方法を提供する。
【解決手段】 ステンレス鋼製帯状長尺材を必要長さの帯板1aに切断する第一工程、該帯板の幅方向を上下にして板面12同士を当接させ、帯板1aを寄せ集める第二工程、板面12同士を当接させて複数の帯板1aの上面平坦部13にショットブラスト処理する第三工程、ショットブラスト処理を終えた上面平坦部13に溶射処理し、上面平坦部13を粗面化する第四工程、第四工程を終えた帯板1aを主部材1として、粗面化した上面平坦部13を上にして平行に複数配設すると共に連結材2を格子状に直交させて組付け、さらに各主部材1の両側端部14に側板3であてがって方形盤状体に組付けた後、接合部を溶接固定してグレーチングGにする第五工程、の各工程の結合からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステンレス鋼製のグレーチングに関する。
【背景技術】
【0002】
側溝等に蓋をする溝蓋には、排水を良くするために金属製グレーチングが多用されている。しかし、斯かるグレーチングは、金属製であるため滑りやすく、表面が濡れていたりすると特に滑りやすい。こうしたことから、滑り止め対策を施したグレーチングがいくつか提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2710111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の発明は、主部材の上面平坦部に凹溝を形成するもので、滑り止めに効果があっても、転倒時に、凹溝を構成するエッジ部,角部で怪我を大きくする虞があった。
この問題を解決しようとするステンレス鋼製グレーチングで、溶射処理して滑り止め対策を施したものがある。しかし、圧接式であるため、圧接加工によりグレーチング形状を整えた後に、溶射処理面がグレーチング全面に施される。そのため、コスト増や品質低下の新たな不具合を招いた。ステンレス鋼製グレーチングは、本来、その光沢が高級感,高品質を提示する製品である。滑り止めに役立つ面はグレーチング上面だけであり、グレーチング上面以外に溶射処理面を付与することは不要であり、さらにグレーチング上面以外に溶射処理することは経済的ロスが大きく、製品のコスト増を招いた。加えて、滑り止め機能とは全く関係のないグレーチング上面以外に溶射処理することは、ステンレス鋼特有の光沢に伴う高級感,高品質を失わせるものであった。ステンレス鋼製グレーチングの全体に溶射すれば、ステンレス鋼そのものの美観を損ね、意匠的にもステンレス鋼という価値を低下させていた。さらにいえば、グレーチング上面以外に溶射処理された部分、例えば主部材の上面平坦部以外の板面には、経年変化でチリ,ゴミが付着しやすく、屋内使用においては衛生上支障をきたす虞もあった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、安全性を考慮した滑り止め機能を発揮させる一方、ステンレス鋼のもつ光沢が失われる部分をグレーチング上面の滑り止め部分の最小限にとどめて、低コスト化を図ると共にステンレス鋼の有する高級感,高品質を保てるグレーチングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、(イ)ステンレス鋼製の帯状長尺材を必要長さの帯板に切断する第一工程、(ロ)該帯板の幅方向を上下にし、且つその板面同士を当接させて、複数の帯板を寄せ集める第二工程、(ハ)板面同士を当接させて寄せ集められた複数の前記帯板の上面平坦部に、ショットブラスト処理する第三工程、(ニ)ショットブラスト処理を終えた前記上面平坦部に、該帯板が複数寄せ集められたままの状態で溶射処理し、該上面平坦部を粗面化する第四工程、(ホ)第四工程を終えた帯板を主部材として、粗面化した上面平坦部が上になるよう幅方向を上下にして、該主部材を平行に複数配設すると共に、ステンレス鋼製の連結材を該主部材に格子状に直交させて組付け、さらに各主部材の両側端部にステンレス鋼製の側板であてがって方形盤状体に組付けた後、それらの接合部を溶接固定してグレーチングにする第五工程、の各工程の結合からなることを特徴とするグレーチングの製造方法にある。
請求項2の発明たるグレーチングの製造方法は、請求項1で、側板もステンレス鋼製の帯状長尺材を用いて、前記第一工程から第四工程を経て、上面平坦部を粗面化した帯板からなる側板とし、前記第四工程を終えた該側板を、前記主部材と共に、粗面化した上面平坦部が上になるよう幅方向を上下にして、該側板、前記主部材及び前記連結材を使って方形盤状体とした後、それらの接合部を溶接固定してグレーチングにすることを特徴とする。
請求項3の発明たるグレーチングの製造方法は、請求項1又は2で、第二工程にて、方形枠体を形成した作業用具を用意し、該作業用具の枠体内に前記帯板の幅方向を上下にし、且つその板面同士を当接させて、複数の該帯板を寄せ集め、これらを保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグレーチングの製造方法は、安全対策を講じながら滑り止め機能を発揮するだけでなく、グレーチング上面のみに溶射処理面を付与して、ステンレス鋼のもつ光沢が失われる部分をグレーチング上面の滑り止め部分の最小限にとどめることによって、低コスト化を実現すると共にステンレス鋼の有する高級感,高品質を維持できるなど極めて有益となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のグレーチングの製造方法の一形態で、(イ)が主部材用帯板の全体斜視図で、(ロ)が該帯板の側面図である。
【図2】連結材と側板用帯板の斜視図である。
【図3】作業用具の枠体内に主部材用帯板の幅方向を上下にして並べる様子を示す斜視図である。
【図4】図3の状態から進んで、作業用具の枠体内に複数の主部材用帯板を寄せ集め、これらを並び終えた斜視図である。
【図5】図4の各帯板の上面平坦部にブラスト処理する様子の斜視図である。
【図6】図5のブラスト処理を終えた上面平坦部に溶射処理する様子の斜視図である。
【図7】図6の主部材用帯板と図2の側板用帯板をブラスト処理した側板とを使って出来上がったグレーチングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るグレーチングの製造方法について詳述する。図1〜図7は本発明のグレーチングの製造方法の一形態で、図1は(イ)が主部材用帯板の全体斜視図で(ロ)が該帯板の側面図である。図2が連結材と側板用帯板の斜視図、図3が作業用具の枠体内に主部材用帯板の幅方向を上下にして並べる様子を示す斜視図、図4が図3の状態から進んで、作業用具の枠体内に、複数の主部材用帯板を並び終えた斜視図、図5が図4の各帯板の上面平坦部にブラスト処理している様子を示した斜視図、図6が図5のブラスト処理を終えた前記上面平坦部に溶射処理している様子を示した斜視図、図7が図6の主部材用帯板と、図2の側板用帯板をブラスト処理した側板とを使って組み立て、それらの接合部を溶接固定してなるグレーチングの斜視図である。
【0010】
本グレーチングの製造方法は、以下のような組立て式のグレーチングの一製造方法であり、例えば次のようにして行う。まず、グレーチングの主要構成部材である主部材1を用意する。
主部材1は、図1(ロ)側面図の端面形状したステンレス鋼(例えばSUS304)製の帯状長尺材たるIバーを準備し、該長尺材から主部材1としての必要長さMの帯板1aに切断する(第一工程)。側溝の溝幅に相当する長さMの帯板1aが多数用意される。各帯板1aには長さMの中間地点で且つ本体11の上下方向の中央部位に図示のごとくの組立て用通孔15を穿設する。通孔15は連結材2が通り抜けできる孔で、図1の帯板1aの幅方向を上下にして立てた状態下、上下に水平部15aを設ける。通孔15に連結材2を通した後、回転させ起立すると連結材2が水平部15aに当接し、主部材1に連結材2が組付けられるようになる。尚、主部材1のうち、グレーチングGの外枠(枠体)形成用の二つの主部材1Aだけは通孔15を形成しない。
【0011】
次に、前記帯板1aの幅方向を上下にし、且つその板面12同士を当接させて、複数の帯板1aを寄せ集める(第二工程)。詳しくは、図3のような方形枠体61を形成した作業用具6を用意し、該作業用具6の枠体内61aに前記帯板1aの幅方向を上下にし、且つ帯板1aの板面12同士を当接させて、複数の帯板1aを寄せ集めていく。図3中、符号62は枠体内61aで、各帯板1aを受ける受板を示す。方形枠体61は一の対向内寸が帯板1aの長さMに略等しくして、他の内寸が帯板1aの上面平坦部13の厚み幅のほぼ正の整数倍になるよう形成されている。従って、方形枠体61内に帯板1aをその幅方向を上下にして互いに当接するように並べていくと、図4のように枠体内61aに上面平坦部13が上になった帯板1aを、作業用具6によって寄せ集め密着状態で保持することができる。図4の枠体61と接する部位では、隙間があるよう図示するが、実際は帯板1aと枠体61が密着する。本実施形態も、作業用具6を使って、帯板1aを枠体内61aに鮨詰め状態で寄せ集め保持する。
【0012】
続いて、板面12同士を当接させて寄せ集められた複数の前記帯板1aの上面平坦部13に、ショットブラスト処理する(第三工程)。その後の溶射処理で、溶射粒5aを上面平坦部13に密着し易くさせるためである。ここでは、図4のごとく、枠体内61aに上面平坦部13を上にした帯板1aが鮨詰め状態で寄せ集められ、作業用具6に保持された各上面平坦部13に対し、ショットブラスト処理を行う。上面平坦部13の表面のみのブラスト処理で済むため、無駄なエネルギ,コストを抑える。本実施形態のブラスト処理は、インペラの遠心力により投射材を投射する機械式を採用し、手動タイプのショットブラスト装置4を用いる(図5)。勿論、これに代え、例えばコンベア方式の自動装置を用いてもよい。ショットブラスト処理し、投射材4aたる粒子が、枠体内61aを埋め尽くした各上面平坦部13に衝突し、その面の汚れを取り去ると同時にその表面を荒らし研磨する。上面平坦部13を上にし、且つ隣接する帯板1aの板面12同士を当接させて、帯板1aが隙間なく詰めて並べられた状態にあるので、ショットブラスト処理されるのは、帯板1aの上面平坦部13のみとなる。
投射材4aには金属系,セラミック系等があるが、ここではスチールビーズやアルミナを用いる。アルミナの球形粒子や微粉末の投射はステンレス鋼製帯材の表面研磨,研削に特に有効である。図5の丸印内の拡大断面図のごとく、ショットブラスト処理を行うことによって、上面平坦部13の表面が、例えばブラスト処理済み窪み13aが多数在る梨地模様状態となる。
【0013】
ショットブラスト処理を終えた前記上面平坦部13に対し、引き続いて、帯板1aが複数寄せ集められたままの状態で溶射処理し、該上面平坦部を粗面化する(第四工程)。溶射材料には金属・合金・サーメットやカーバイド,セラミック等があるが、本実施形態はクロム・ニッケルの耐食合金粉末を使用する。
前記ショットブラスト処理によって、帯板1aに係る上面平坦部13の表面が荒らされ研磨された状態になるが、その状態のまま、次に、溶射装置5を使って溶射処理し、上面平坦部13の表面に溶射材料を加熱・溶融して吹きつけて皮膜を形成し、その表面をザラザラした粗面にする(図6)。上面平坦部13を上にし、且つ隣接する帯板1aの板面12同士を当接させて、帯板1aが隙間なく詰めて並べられた状態にあるので、溶射処理されるのは、帯板1aの上面平坦部13のみとなる。上面平坦部13の表面のみの溶射処理で済むため、無駄なエネルギ,コストを抑える。
【0014】
溶射にはフレーム溶射,爆発溶射,電気式溶射,高速フレーム溶射、コールドスプレー等があるが、本溶射は電気式溶射を採用する。電気式溶射のアーク溶射,プラズマ溶射,線爆溶射等のなかで、コスト面から優れるアーク溶射を採用する。金属製溶射材料が加熱により液滴化された金属溶射粒5aとなって上面平坦部13上に吹き付けられる(図6)。該溶射粒を上面平坦部13上に凝固・密着させて、表面がザラザラした滑り止め効果のある粗面を形成する。模式的に図示すれば、図6の丸印内の拡大断面図のごとく、ブラスト処理によって上面平坦部13に窪み13aができて荒らされたその面に、溶射粒5aの溶着固化粒5bが固着する。そして、該溶着固化粒の皮膜が作る表面が図示のごとくでこぼこし、ザラザラした滑り止め効果のある粗面となる。予めブラスト処理がなされているので、ブラスト処理済み窪み13a等の在る主部材1の上面平坦部13上に、溶着固化粒5bの皮膜がアンカー効果で密着固定される。長期に亘って滑り止め効果のある粗面になる。
こうして、帯板1aが前記ショットブラスト処理,溶射処理を終え、グレーチング用主部材1を造り終える。
【0015】
前記主部材1の他、グレーチングGを構成する部材として、連結材2,側板3がある。連結材2は、図2のごとく、主部材1の高さhよりも高さhが小さい側面視細長四角のステンレス鋼製長尺フラットバーを、グレーチングの長手方向長さLから主部材1二本分の厚み幅を差し引いた必要長さの連結材用帯板2aに切断する。高さhは前記通孔15の水平方向の最大孔径よりも若干小さい。連結材用帯板2aには、粗面化した上面平坦部13が上になるよう幅方向を上下にした状態で、主部材1を平行に複数配設する場所に、切欠溝25を設けて、これを連結材2とする。切欠溝25の深さは透孔の上端水平部15aから上面平坦部23までの距離に略等しくする。
側板3は、高さhのフラットバーのステンレス製帯状長尺材から必要長さ(グレーチングの長手方向長さに相当)Lに切断したものを使う。側板3の高さhは主部材1の高さhに略等しい。
【0016】
前記連結材2,側板3を用意し、また上面平坦部13がブラスト処理,溶射処理された粗面の主部材1を用い、粗面化した該上面平坦部が上になるよう幅方向を上下にして、主部材1を所定ピッチあけて平行に複数配設すると共に、連結材2を該主部材1に格子状に直交させて組付け、さらに各主部材1の両サイド(両側端部14)に側板3であてがって方形盤状体に組付ける。しかる後、それらの接合部を溶接固定してグレーチングGにする。単なる側板3,連結材2を組付け一体化したグレーチングGでも、グレーチング上面で主部材1が大きな面積割合を占めることから滑り止めに十分有効となる。
【0017】
しかるに、本実施形態は、主部材1と同じように側板3もブラスト処理,溶射処理し、上面平坦部33がザラザラした一段と滑り止め効果のある粗面とする。
側板3も、まずステンレス鋼製の帯状長尺材を用いて、図2のごとくこれを必要長さLの帯板3aに切断する。側板3は長尺フラットバーを、グレーチングの長手方向長さLの側板用帯板3aに切断する。側板3の高さhは主部材1の高さhに略等しい。
【0018】
長さLの側板用帯板3aに切断後、次に、主部材1と同様、帯板3aの幅方向を上下にし、且つその板面32同士を当接させて、複数の帯板3aを寄せ集める第二工程、板面32同士を当接させて寄せ集められた複数の前記帯板3aの上面平坦部3aに、ショットブラスト処理する第三工程、ショットブラスト処理を終えた前記上面平坦部3aに、帯板3aが複数寄せ集められたままの状態で溶射処理し、該上面平坦部3aを粗面化する第四工程、を経て、側板3の上面平坦部33を溶着固化粒5bによる粗面にする。側板3の上面平坦部33に微細な窪み33aができて荒らされたその面に、溶射粒5aの溶着固化粒5bが固着し、該溶着固化粒5bの皮膜が作る表面がでこぼこし、ザラザラした滑り止め効果のある粗面とする。該粗面とする製法詳細は、主部材1のときと同様で、その詳細説明を省く。
尚、側板3においても、第二工程で、方形枠体61を形成した作業用具6を用意し、該作業用具の枠体内61aに前記帯板3aの幅方向を上下にし、且つその板面32同士を当接させて、複数の帯板3aを寄せ集め、これらを保持する製法を採用する。側板3用の方形枠体61は一の対向内寸が側板用帯板3aの長さLに略等しくして、他の内寸が側板用帯板3aの上面平坦部33の厚み幅の正の整数倍になるよう形成される。
【0019】
その後、図6のブラスト処理を終えた主部材1を、粗面化した上面平坦部13が上になるよう幅方向を上下にして、該主部材1を平行に所定ピッチで複数配設すると共に、連結材2を該主部材1に格子状に直交させて組付け、さらに各主部材1の両側端部14(両サイド)に、粗面を上にした側板3を当接させて方形盤状体に組付け、しかる後、それらの接合部を溶接固定してステンレス鋼製グレーチングGにする。図7中、符号wdは溶接部分を示す。
【0020】
詳しくは、まず、粗面化した上面平坦部13を上にして主部材1を立てた状態で、所定ピッチで全長Lからスリット幅の二つ分を差し引いた長さになるまで主部材1を複数配設する。
次に、連結材2の板面22を横にして寝かせ、該連結材を各主部材1の通孔15に挿通する。本実施形態は、連結材2が各主部材1の中央部の通孔15を挿通する一本だけとする。挿通後、該連結材2を回動させて起立させる。この起立によって連結材2の上下が通孔15の水平部15aに当接し組立てられる。連結材2は幅方向が上下になって起立し、連結材2の上面平坦部23と主部材1の上面平坦部23が略面一になる。平行配設された複数の主部材1に対し、連結材2が串刺し状態になる。
続いて、各主部材1の両側端部14に、それぞれ上面平坦部33が上になるようにして側板3を当接させ組付ける。連結材2の両端24に、通孔15のない前記主部材1Aを当接させる。両端の二つの主部材1Aと両側板3で長方形の枠体を組付け形成し、該枠体とその枠体内に配設される各主部材1と連結材2とで格子状の方形盤状体が組み上がる。ここで、前記連結材2の両端24には、通孔15のない主部材1Aに代えて、長さMの単なるステンレス鋼製フラットバーを当接させてもよい。二つのフラットバーと両側板3で長方形の枠体を組付け形成してもよい。
しかる後、方形盤状体を形成する主部材1,連結材2,側板3の各接合部を溶接固定して、主部材1のみならず側板3をも粗面化した所望のステンレス鋼製グレーチングとなる(図7)。符号SLはグレーチングのスリットを示す。
【0021】
このように構成したステンレス鋼製のグレーチングの製造方法は、組立て式グレーチングの製法であるので、既述のごとく、グレーチング上面にあたる主部材1の上面平坦部13や側板3の上面平坦部33のみに、滑り止めに必要なブラスト処理,溶射処理を行うことができる。従って、経済的であり、製品の低コスト化を実現する。上面平坦部13,33の表面のみのブラスト処理,溶射処理で済むため、無駄なエネルギ,コストを抑える。
【0022】
その一方で、ブラスト処理,溶射処理される面は主部材1の上面平坦部13(側板3の上面平坦部33)に限るので、ステンレス鋼製グレーチングGとして見た場合、ステンレス鋼特有の光沢に伴う高級感,高品質を維持でき、外面を損なうことなくバランスのとれた装飾製品となる。本ステンレス鋼製グレーチングは、ブラスト処理,溶射処理を行っても、主部材1の上面平坦部13(さらに側板3の上面平坦部33)の一部に限定され、依然として周囲の景観に調和し、高級感を漂わす。
【0023】
そして、こうした品質と低コスト化を実現しながら、滑り止め効果をいかんなく発揮する。グレーチングGの主部材1の上面平坦部13、さらに側板3の上面平坦部33が溶射処理の溶着固化粒5bで粗面化されることによって、その粗面が図6の拡大丸印の模式図で示されたような微細な凹凸になり、ノンスリップ効果を発揮する。図6では簡略図示するが、主部材1の上面平坦部13(側板3の上面平坦部33)に細かい溶着固化粒5bが緻密に固着された状態にあり、全方向にノンスリップ効果がある。特に水場で威力を発揮する。加えて、図示のごとく、特許文献1に見られるような凹溝やエッジ部がなく、転倒時の怪我を最小限にとどめることができる。安全性対策が確実に実行されながら滑り止め機能をいかんなく発揮する。
かくのごとく、本グレーチングの製造方法は、数々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0024】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。主部材1,連結材2,側板3,作業用具6等の形状,大きさ,個数等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態では主部材1としてIバーを用いたが、これに代えフラットバーやTバーを用いることができる。連結材2の上面平坦部23にブラスト処理,溶射処理して、その上面平坦部23を粗面化させても勿論よい。実施形態は連結材2を各主部材1に一本通した細長盤状体のグレーチングであるが、主部材1の長さMを長くし、平行配設された各主部材1に間隔をあけて連結材2を複数本通したステンレス製グレーチングであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 主部材
1a 帯板
12 板面
13 上面平坦部
2 連結材
3 側板
3a 帯板
32 板面
33 上面平坦部
4 ショットブラスト装置(ブラスト装置)
5 溶射装置
5b 溶着固化粒
6 作業用具
61 方形枠体
G グレーチング
wd 溶接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各工程の結合からなるグレーチングの製造方法。
(イ)ステンレス鋼製の帯状長尺材を必要長さの帯板に切断する第一工程
(ロ)該帯板の幅方向を上下にし、且つその板面同士を当接させて、複数の帯板を寄せ集める第二工程
(ハ)板面同士を当接させて寄せ集められた複数の前記帯板の上面平坦部に、ショットブラスト処理する第三工程
(ニ)ショットブラスト処理を終えた前記上面平坦部に、該帯板が複数寄せ集められたままの状態で溶射処理し、該上面平坦部を粗面化する第四工程
(ホ)第四工程を終えた帯板を主部材として、粗面化した上面平坦部が上になるよう幅方向を上下にして、該主部材を平行に複数配設すると共に、ステンレス鋼製の連結材を該主部材に格子状に直交させて組付け、さらに各主部材の両側端部にステンレス鋼製の側板であてがって方形盤状体に組付けた後、それらの接合部を溶接固定してグレーチングにする第五工程
【請求項2】
前記側板もステンレス鋼製の帯状長尺材を用いて、前記第一工程から第四工程を経て、上面平坦部を粗面化した帯板からなる側板とし、前記第四工程を終えた該側板を、前記主部材と共に、粗面化した上面平坦部が上になるよう幅方向を上下にして、該側板、前記主部材及び前記連結材を使って方形盤状体とした後、それらの接合部を溶接固定してグレーチングにする請求項1記載のグレーチングの製造方法。
【請求項3】
前記第二工程で、方形枠体を形成した作業用具を用意し、該作業用具の枠体内に前記帯板の幅方向を上下にし、且つその板面同士を当接させて、複数の該帯板を寄せ集め、これらを保持する請求項1又は2に記載のグレーチングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281057(P2010−281057A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133553(P2009−133553)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(599147218)東北岡島工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】