グローブボックス
【課題】本体に開設されたフィルタ交換口を介したフィルタの交換作業の簡易化を図る。
【解決手段】フィルタ交換口20は、本体10の奥壁14および一方の側壁12に亘って開設される。フィルタ交換口20を開閉する扉部材50は、該フィルタ交換口20における側壁12側の第1開口領域20Aに整合する側方扉体52と、奥壁14側の第2開口領域20Bに整合する後方扉体60とを備える。側方扉体52は、本体10にヒンジ部36を介して枢支され、ヒンジ端と対向する他端が第1開口領域20Aから離間するよう姿勢変位する。後方扉体60は、側方扉体52の他端にスライド部40を介してスライド自在に連結される。これにより扉部材50は、本体10から取り外すことなくフィルタ交換口20を開閉し得る。
【解決手段】フィルタ交換口20は、本体10の奥壁14および一方の側壁12に亘って開設される。フィルタ交換口20を開閉する扉部材50は、該フィルタ交換口20における側壁12側の第1開口領域20Aに整合する側方扉体52と、奥壁14側の第2開口領域20Bに整合する後方扉体60とを備える。側方扉体52は、本体10にヒンジ部36を介して枢支され、ヒンジ端と対向する他端が第1開口領域20Aから離間するよう姿勢変位する。後方扉体60は、側方扉体52の他端にスライド部40を介してスライド自在に連結される。これにより扉部材50は、本体10から取り外すことなくフィルタ交換口20を開閉し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローブボックスに関し、更に詳細には、本体に開設されたフィルタ交換口を開放可能に閉成する扉部材を取付けたグローブボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、自動車の乗員室におけるフロントガラス下部には、車両内装部材であるインストルメントパネルIPが、その前面側を乗員室後方に向けた状態で配設されている。このインストルメントパネルIPには、運転席側にスピードメーターやタコメーター等を纏めた計器ユニット等が取付けられていると共に、助手席側に車体装備品や携帯品等を収納し得るグローブボックスGBが配設されている。このグローブボックスGBは、上方に開口する物品収納部を画成したバケット状に形成されてインストルメントパネルIPに回転可能に取付けられるバケットタイプや、乗員室側に開口する物品収納部を画成したボックス状に形成されてインストルメントパネルIPに固定されるボックスタイプ等がある。なお図10では、ボックスタイプのグローブボックスGBを示しており、インストルメントパネルIPの一部をなす開閉扉18により、該インストルメントパネルIPの前面側に開口した前側開口部が開閉されるようになっている。
【0003】
また、前記インストルメントパネルIPの内部には、図11に示すように、乗員室内の空調に供されるエアコンユニットACが搭載される。そして、エアコンユニットACのフィルタ配設部AC1は、乗員席側から見てグローブボックスGBの後方側に位置している。このため、ボックスタイプのグローブボックスGBの場合は、図10および図11に示すように、該グローブボックスGBの本体10におけるエアコンユニットACに対応する位置にフィルタ交換口20を開口形成し、このフィルタ交換口20を介してフィルタ配設部AC1に対するフィルタAFの着脱を行ない得るよう構成されている。そして、フィルタ交換口20には、該フィルタ交換口20の開口形状に整合する外郭形状の蓋部材30が着脱可能に装着され、フィルタAFの交換作業時に取外すようになっている。なお、グローブボックスGBに設けたフィルタ交換口20を介してフィルタAFを交換する構成に関しては、特許文献1に開示されている。
【0004】
なお、グローブボックスGBの配設位置およびエアコンユニットACの搭載位置は車種毎に異なり、図10および図11に示すように、グローブボックスGBの斜め後方にフィルタ配設部AC1が位置する場合がある。両者の位置関係がこのような場合には、フィルタAFのフィルタ通過領域Lが、本体10のフィルタ配設部AC1に臨むコーナー部分10Aを挟んで隣接する側壁12および奥壁14に跨るようになるので、フィルタ交換口20は奥壁14から側壁12に亘って開口する平面視L形となる。従って、フィルタ交換口20に装着される蓋部材30も、該フィルタ交換口20の形態に合わせたL形となっている。
【特許文献1】特開2002−347525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した蓋部材30は、図10および図11に示すように、該蓋部材30の下端部や側端部等に設けた係止片部32を、フィルタ交換口20の開口縁部に係止させることで、本体10に着脱可能に装着する構造となっている。このため、蓋部材30の取外し時には、該蓋部材30を手前へ強く引張らなければ係止片部32が本体10から外れないと共に、蓋部材30の取付け時には、該蓋部材30を奥側へ強く押込まなければ係止片部32が本体10に係止されない。すなわち、蓋部材30の弾性変形に基づいて着脱が可能な構成となっており、着脱作業を行ない難い欠点があった。また、蓋部材30をフィルタ交換口20へ取付ける際に、係止片部32と本体10とが適切に整合していないと、蓋部材30がフィルタ交換口20を介して本体10の裏側へ脱落する不都合もあった。更に、本体10から蓋部材30を取外した際および蓋部材30を本体10に取付ける際に、蓋部材30がグローブボックスGBの内面に接触して、該内面に傷が付いてしまう不都合等もあった。また更に、取り外した蓋部材30の置き場所を確保する必要があり、床等に置いた蓋部材30を踏んで破損させたり紛失するおそれもあった。
【0006】
そこで本発明では、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく、本体に開設されたフィルタ交換口を開閉させ得るよう構成することで、フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業の簡易化を図ったグローブボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両内装部材に設けられて乗員室側に開口する本体と、該本体に開設され、空調用のフィルタを出し入れ可能なフィルタ交換口と、前記本体に配設され、前記フィルタ交換口を開閉可能な扉部材とを備えるグローブボックスであって、
前記扉部材は、
前記フィルタ交換口の第1開口領域に整合し、前記フィルタ交換口の一方の端部において前記本体にヒンジ部を介して枢支され、該ヒンジ部から離間する他端が前記第1開口領域から離間するよう姿勢変位可能な第1扉体と、
前記フィルタ交換口の前記第1扉体が整合する第1開口領域を除く第2開口領域に整合し、前記第1扉体の他端にスライド部を介してスライド自在に連結される第2扉体とを備えたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、本体に開設されたフィルタ交換口を、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく開閉することができ、フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業を可能とし得る。すなわち扉部材は、第1扉体に対して第2扉体をスライドさせたもとで、これら第1扉体と第2扉体とを回転させることで、フィルタ交換口を簡易に開放し得る。そして、扉部材が本体に連結されているので、フィルタ交換口を開閉させる際に扉部材が本体の裏側へ脱落することがない。また、フィルタ交換口を開閉させる際に扉部材を本体から取り外さないので、扉部材の置き場所を確保する必要がないと共に、破損させたり紛失することもない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第2扉体の端部が、前記フィルタ交換口の他方の端部に係止手段を介して係脱自在に係止されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、フィルタ交換口を閉成した第2扉体の姿勢保持を図り得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記フィルタ交換口は、前記本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設され、
前記第1扉体は、前記フィルタ交換口における側壁側の第1開口領域に整合し、
前記第2扉体は、前記フィルタ交換口における奥壁側の第2開口領域に整合することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設されたフィルタ交換口であっても、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく該フィルタ交換口を開閉し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るグローブボックスによれば、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく、本体に開設されたフィルタ交換口を開閉させ得るので、該フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業を簡易に行ない得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るグローブボックスにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお各実施形態では、グローブボックスGBの奥行き方向(側壁12の延在方向)を前後方向とし、グローブボックスGBの左右方向(奥壁14の延在方向)を左右方向と指称する。そして、インストルメントパネルIPの乗員席側を指向する方向、すなわち本体10の開口部側をグローブボックスGBの「前方」とし、本体10の奥側を「後方」と指称する。
【実施例】
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のグローブボックスGBにおいて、本体10のコーナー部分10Aに設けたフィルタ交換口20と、このフィルタ交換口20を開閉するように本体10に取付けられる扉部材50とを示した分解斜視図である。実施形態1のグローブボックスGBは、図10に示すように、車両内装部材であるインストルメントパネルIPの助手席側前方において、該インストルメントパネルIPの前方(乗員室側)に開口するボックス状の本体10を備えている。この本体10は、底壁16、図示省略した上壁、左右の側壁(左側の側壁は図示省略)12および奥壁14から構成され、インストルメントパネルIPの前方へ開口している。
【0014】
フィルタ交換口20は、コーナー部分10Aを挟んで隣接する奥壁14から右側の側壁12に亘って平面視L形で横長矩形状に開設されている。ここで説明の便宜上、フィルタ交換口20のコーナー部分10Aを境とした側壁12側に位置する一方の開口領域を第1開口領域20Aとし、奥壁14側に位置する他方の開口領域を第2開口領域20Bと指称する。なおフィルタ交換口20は、図1に示すように、第1開口領域20Aの前後開口幅W1より、第2開口領域20Bの左右開口幅W2の方が大きく設定されている。また、第2開口領域20Bの左右開口幅W2は、フィルタ交換口20の上縁における本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されている。
【0015】
そして、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aにおける前縁部を第1縁部21、上縁部を第2縁部22、下縁部を第3縁部23とすると、第1縁部21と第2縁部22との角部および第1縁部21と第3縁部23との角部には、ヒンジ部36を構成するヒンジ孔38,38が、第1開口領域20Aに開口するように形成されている。また、第2縁部22の後端および第3縁部23の後端、すなわちコーナー部分10Aの近傍には、スライド部40を構成するスライドピン41,41(後述)が右方から嵌合保持される凹部43,43が形成されている。更に、フィルタ交換口20の第2開口領域20Bにおける左縁部を第4縁部24、上縁部を第5縁部25、下縁部を第6縁部26とすると、第5縁部25および第6縁部26には、左端から各縁部25,26に沿って所要長さで延在して第2開口領域20B側に開口するガイド溝27,27が延設されている。なお、ガイド溝27,27の右端は奥壁14の前方向へ折曲し、奥壁14の内面に開口した挿通部27A,27Aとなっている。
【0016】
扉部材50は、図1に示すように、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合する外郭形状に形成された第1扉体としての側方扉体52と、該フィルタ交換口20の第2開口領域20Bに整合する外郭形状に形成された第2扉体としての後方扉体60とから構成されている。すなわち、側方扉体52および後方扉体60により折曲状態となった扉部材50により、フィルタ交換口20が全面的に閉成され得るようになっている。なお、側方扉体52の前端部を第1端部53、上端部を第2端部54、下端部を第3端部55、後端部を第4端部56と指称すると共に、後方扉体60の左端部を第5端部61、上端部を第6端部62、下端部を第7端部63、右端部を第8端部64と指称する。
【0017】
側方扉体52は、図1に示すように、略正方形状のプレート状部材であって、該側方扉体52の前後長H1は、第1開口領域20Aの前後開口幅W1と同一となっている。そして、側方扉体52における第2端部54の前端および第3端部55の前端には、ヒンジ部36を構成するヒンジピン37,37が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。また、第2端部54の後端および第3端部55の後端には、スライド部40を構成する丸棒状のスライドピン41,41が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。従って側方扉体52は、ヒンジピン37,37を対応のヒンジ孔38,38に夫々突入嵌合させることで、フィルタ交換口20における一方の端部である第1縁部21において本体10に回転可能に取付けられる。これにより側方扉体52は、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合した状態(図2)と、ヒンジ端となる第1端部53と対向離間する自由端である第4端部56が、フィルタ交換口20から右方(外方)へ離間した状態(図5)とに姿勢変位可能となっている。
【0018】
なお、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した際には、前述したスライドピン41,41の先端部が凹部43,43に嵌合するので、側方扉体52が本体10の内側方向へ姿勢変位するのは規制される。また、凹部43,43のスライドピン41,41が通過する開口部分の幅寸法は、該スライドピン41,41の外径より僅かに小さく設定されており、凹部43,43に対するスライドピン41,41の嵌脱は若干の力を付与することで実現される。従って、凹部43,43にスライドピン41,41が嵌合している状態では、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した状態に姿勢保持される。
【0019】
後方扉体60は、図1に示すように、長方形状のプレート状部材であって、該後方扉体60の左右長H2は、本体10の前述した奥行き寸法Dより大きく、第2開口領域20Bの左右開口幅W2と同一となっている。そして、後方扉体60の後述するガイドピン(係止手段)45,45を除く部分は、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aおよび第2開口領域20Bに対して、本体10の内外方向への通過が可能な形状・サイズに形成されている。この後方扉体60における第6端部62の左端および第7端部63の左端には、前述したガイド溝27,27に摺動自在に係合するガイドピン45,45が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。また、後方扉体60の第6端部62および第7端部63には、スライド部40を構成する長孔状のスライド孔42,42が、後方扉体60の延在方向に沿って延在形成されている。これらスライド孔42,42には、前述したスライドピン41,41が上下に貫通し、該スライド孔42,42の上方および下方へ突出したスライドピン41,41の突出先端部が、前述した凹部43,43に嵌合するよう構成されている。従って、スライド孔42,42にスライドピン41,41が摺動可能に係合することで、側方扉体52に対して後方扉体60がスライド自在に連結される(図3)。なお、ガイド溝27の全長S1とスライド孔42の全長S2とは同一となっていると共に、側方扉体52の前後長H1と後方扉体60におけるスライド孔42が形成されていない部位の長さH3とが略同一となっている。
【0020】
また、スライド孔42,42に係合したスライドピン41,41は、スライド孔42,42に係合した状態において、軸心を中心とした周方向への回転が許容される。これにより後方扉体60は、スライドピン41,41を回転中心として、側方扉体52に連結された状態で回転が可能となっている(図4)、すなわち、実施形態1のスライド部40はヒンジ機能を併有している。
【0021】
従って後方扉体60は、図2に示すように、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した状態において、スライドピン41,41がスライド孔42,42の左端に到来するまで右方へスライドさせると、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の挿通部27A,27Aに整合するよう構成されている。また、この状態で後方扉体60を左方向へ押すと、ガイドピン45,45がガイド溝27,27に沿って移動すると共に、スライドピン41,41がスライド孔42,42に沿って相対的に移動することで、後方扉体60は左方向へ移動して第2開口領域20Bに整合した状態となる。また、スライド部40から対向離間する第5端部61側に設けたガイドピン45,45がガイド溝27,27に係止されることで、後方扉体60の第5端部61側が本体10の外方向(後方)へ移動するような姿勢変位が規制される。
【0022】
なお、後方扉体60の裏面には、図1に示すように、第5端部61から左方へ延出した係止片部65が形成され、この係止片部65の前面には凸部66が形成されている。また、奥壁14の裏面には、図1に示すように、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した際に前述した凸部66が係合する凹部67が形成されている。更に、後方扉体60の前面には陥凹状の指掛部68が形成されており、後方扉体60を左右にスライドさせる際に指先を掛け得るようになっている。
【0023】
従って、前述のように構成された実施形態1のグローブボックスGBでは、扉部材50がフィルタ交換口20を閉成した際には、前述すると共に図2に示すように、側方扉体52が該フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合し、後方扉体60が該フィルタ交換口20の第2開口領域20Bに整合する。そして、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した際に凸部66が凹部67に嵌合するので、該後方扉体60は第2開口領域20Bを閉成した状態に姿勢保持される。また、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した状態では、スライドピン41,41がスライド孔42,42の右端に位置して凹部43,43に嵌合保持されるので、側方扉体52は第1開口領域20Aを閉成した状態に姿勢保持される。
【0024】
そして、フィルタ交換口20を開放する場合には、先ず図3に示すように、後方扉体60を右方向へスライド移動させる。すなわち、指掛部68に指先を掛けたもとで後方扉体60を右方向へ押すと凸部66と凹部67との嵌合が解除され、後方扉体60が右方向へスライドし始める。この際に、ガイドピン45,45がガイド溝27,27に沿って右方向へ移動すると共に、スライド孔42,42に対してスライドピン41,41が左方向へ相対的に移動するので、後方扉体60は前後方向への姿勢変位が規制されながら第2開口領域20Bに沿って右方へ移動する。そして、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の右端に当接すると共に、スライドピン41,41がスライド孔42,42の左端に当接すると、後方扉体60は図3に示した位置で位置規制される。
【0025】
次いで、図4に示すように、後方扉体60の第5端部61を前方に引張る。これにより後方扉体60は、スライドピン41,41を中心として前方へ回転し、側方扉体52の左側に折り重なった状態となる。なお、前述すると共に図1に示すように、側方扉体52の前後長H1と、後方扉体60の第2ヒンジ孔42が形成されていない部位の長さH3とが略同一となっているので、後方扉体60の第5端部61は、側方扉体52の第1端部53と略同じ位置となってグローブボックスGBから前方へ突出しない。すなわち、後方扉体60の左右長H2が本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されているが、右方へスライドさせた状態で回転させるため、後方扉体60はグローブボックスGB(本体10)から前方へ突出しない。また、後方扉体60はスライド部40を介して側方扉体52に連結されているので、前方へ回転する際に該後方扉体60が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0026】
次いで、図5に示すように、後方扉体60の後側部分を右方へ押すと、凹部43,43に嵌合保持されていたスライドピン41,41が該凹部43,43が抜け出て、側方扉体52がヒンジ部36を中心として右方(外方)へ回転する。これにより、側方扉体52に連結された後方扉体60も、側方扉体52の回転に追従して右方へ姿勢変位する。従って側方扉体52および後方扉体60は、図5に示すように、フィルタAFのフィルタ通過領域Lから側方へ退避した位置へ姿勢変位してフィルタ交換口20を開放し、フィルタ交換口20を介したフィルタAFの交換作業が可能となる。なお、側方扉体52はヒンジ部36を介して本体10に連結されているので、側方扉体52に追従して姿勢変位する後方扉体60が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0027】
フィルタ交換口20を閉成する場合は、図5の状態において、先ず後方扉体60の後側部分を左方へ移動させる。これにより、後方扉体60および側方扉体52がヒンジ部36を中心として左方へ回転し、スライドピン41,41が各凹部43,43に嵌合することで、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合する(図4)。
【0028】
次いで、前方を指向している後方扉体60の第5端部61を左後方へ押すと、該後方扉体60はスライドピン41,41を中心として回転し、ガイドピン45,45が挿通部27A,27Aからガイド溝27,27に係止される(図3)。そして、後方扉体60を左方へスライドさせ、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の左端に当接すると共にスライドピン41,41がスライド孔42,42の右端に当接することで、後方扉体60は第2開口領域20Bに整合した状態となる(図2)。
【0029】
このように、実施形態1のグローブボックスGBによれば、本体10の奥壁14から一方の側壁12に亘って開設されたフィルタ交換口20を、該本体10に枢支自在に取り付けた側方扉体52および該側方扉体52にスライド自在に連結した後方扉体60により閉成することが可能である。また、フィルタ交換口20を開放する際には、後方扉体60を側方扉体52に対してスライドさせると共に回転させ、折り重なった後方扉体60と側方扉体52とを本体10に対して回転させることで、扉部材50を本体10から取り外すことなくフィルタ交換口20を開放することができ、フィルタ交換口20を介したフィルタAFの交換作業を簡易に行ない得る。そして、後方扉体60が側方扉体52に対してスライド自在に連結されているので、側方扉体52に折り重なった後方扉体60の左右長H2が本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されていても、該後方扉体60が本体10(グローブボックスGB)の前方へ突出することが防止される。また、フィルタ交換口20を開放する際に扉部材50を本体10から取り外さないので、該扉部材50の置き場所を確保する必要がないと共に、取り外すことによる紛失や破損等を防止し得る。また、フィルタ交換口20を開閉する際に、扉部材50が本体10の内面に接触しないので、該本体10の内面に傷が付くことがない。
【0030】
(実施形態2)
図6は、実施形態2のグローブボックスGBにおいて、本体10の奥壁14に設けたフィルタ交換口70と、このフィルタ交換口70を開閉するように本体10に取付けられる扉部材80とを示した分解斜視図である。実施形態2のグローブボックスGBは、本体10における平坦状の奥壁14のみにフィルタ交換口70が開設されている。また扉部材80は、本体10に枢支された第1扉体である第1後方扉体82と、この第1後方扉体82にスライド自在に連結した第2扉体である第2後方扉体90とから構成されている。
【0031】
フィルタ交換口70は、右縁部である第1縁部71、上縁部である第2縁部72、下縁部である第3縁部73および左縁部である第4縁部74からなる横長矩形状に開設され、フィルタFの挿通を許容する大きさに設定されている。図6および図7に示すように、フィルタ交換口70の左右開口幅Wは、本体10の奥行き寸法Dの2倍程度に設定されている。なお、説明の便宜上、左右方向の中間を境とした右側の開口領域を第1開口領域70Aとし、左側の開口領域を第2開口領域70Bと指称する。そして、フィルタ交換口70の第1縁部71における上方および下方には、ヒンジ部96を構成する蝶番形態のヒンジ部材97,97が取付けられている。また、第2縁部72および第3縁部73の第4縁部74側には、所要長さのガイド溝107,107が、該縁部72,73に沿って第2開口領域70B側に開口するように延設されている。なお、ガイド溝107,107の右端は奥壁14の前方向へ折曲し、奥壁14の内面に開口した挿通部107A,107Aとなっている。更に、第2縁部72および第3縁部73の左右略中央には、後述するスライド部100の枠状ガイド101の上下部分が夫々整合する嵌合凹部108,108が形成されている。
【0032】
第1後方扉体82は、図6および図7に示すように、略矩形状のプレート状部材で第1開口領域70Aに整合する形状となっており、該第1後方扉体82の左右長H1は、フィルタ交換口70の左右開口幅Wの1/2よりやや大きく設定され、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっている。そして、第1後方扉体82の第1端部83には、前述したヒンジ部96を構成するヒンジ部材97,97が取付けられ、これらヒンジ部材97,97を介して本体10に枢支される。また、図6に示すように、第1後方扉体82の裏面左縁には、スライド部100を構成する左右方向へ開口する枠状ガイド101が、第4端部86に沿って上下方向へ延在するように形成されている。この枠状ガイド101には、第2後方扉体90が左側から挿通して摺動可能となっており、第1後方扉体82の裏面に沿って第2後方扉体90が左右方向へスライド自在に連結される。なお枠状ガイド101は、第2端部84の上方および第3端部85の下方へ突出しており、この上下突出部分が前述した嵌合凹部108,108に夫々嵌合するようになっている。また第1端部83には、後方へ突出したストッパー部87が形成されており、第2後方扉体90を右方へ最大にスライドさせた際に、該第2後方扉体90の第5端部91が該ストッパー部87に当接するようになっている。
【0033】
第2後方扉体90は、図6に示すように、略矩形状のプレート状部材で第2開口領域70Bに整合する形状となっており、該第2後方扉体90の左右長H2は、フィルタ交換口70の左右開口幅Wの1/2よりやや大きく設定され、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっている。この第2後方扉体90の第6端部92および第7端部93の左端には、前述したガイド溝107,107に摺動自在に係合するガイドピン(係止手段)106,106が、上方および下方へ突出した状態に形成されている。そして第2後方扉体90は、図8に示すように、第1後方扉体82が第1開口領域70Aに整合した状態において右方へ最大にスライドさせると、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の挿通部107A,107Aに整合するよう構成されている。また、この状態で第2後方扉体90を左方向へ押すと、ガイドピン106,106がガイド溝107,107に沿って移動すると共に、該第2後方扉体90が枠状ガイド101内を摺動することで、第2後方扉体90は左方向へスライドして第2開口領域70Bに整合した状態となる(図7)。
【0034】
第2後方扉体90の裏面には、図6に示すように、第8端部94から左方へ延出した係止片部110が形成され、この係止片部110の前面には凸部111が形成されている。また、奥壁14の第4縁部74に隣接した裏面には、図6に示すように、第2後方扉体90が第2開口領域70Bに整合した状態において凸部111が嵌合する凹部112が形成されている。更に、第2後方扉体90の前面には、陥凹状の指掛部113が形成されている。
【0035】
従って、前述のように構成された実施形態2のグローブボックスGBでは、扉部材80がフィルタ交換口70を閉成した際には、前述すると共に図7に示すように、第1後方扉体82が該フィルタ交換口70の第1開口領域70Aに整合し、第2後方扉体90が該フィルタ交換口70の第2開口領域70Bに整合する。この状態では、第1後方扉体82の左側部分と第2後方扉体90の右側部分とが前後方向において重なり、扉部材80の左右全長Hはフィルタ交換口70の左右開口幅Wと同一となる。そして、凸部111が凹部112に嵌合保持されると共に、枠状ガイド101が嵌合凹部108,108に嵌合保持されるので、扉部材80はフィルタ交換口70を閉成した状態に姿勢保持される。
【0036】
フィルタ交換口70を開放する場合には、先ず図8に示すように、第2後方扉体90を右方向へスライドさせる。すなわち、指掛部113に指先を掛けたもとで第2後方扉体90を右方向へ押すと、凸部111と凹部112との嵌合が解除され、第2後方扉体90が右方向へスライドし始める。この際に、ガイドピン106,106がガイド溝107,107に沿って右方向へ移動すると共に、第2後方扉体90がスライド部100の枠状ガイド101内を摺動するので、第2後方扉体90は前後方向への姿勢変位が規制されながら第2開口領域70Bに沿って右方へスライドする。そして、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の右端に当接する共に、第2後方扉体90の第5端部91が第1後方扉体82のストッパー部87に当接し、第2後方扉体90は図8に示した位置で位置規制されて、第2後方扉体90は第1後方扉体82の裏側に重なった状態となる。
【0037】
次いで、図9に示すように、第2後方扉体90の第8端部94側を前方に引き出すことで、枠状ガイド101が嵌合凹部108,108から前方へ移動し、第2後方扉体90および第1後方扉体82は重なった状態でヒンジ部96を中心として前方へ回転する。なお、前述すると共に図6に示すように、第1後方扉体82の左右長H1および第2後方扉体90の左右長H2は、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっているので、第1後方扉体82の第4端部86および第2後方扉体90の第8端部94は、グローブボックスGB(本体10)から前方へ突出しない。そして、第2後方扉体90はスライド部100を介して第1後方扉体82に連結されているので、第1後方扉体82が前方へ回転する際に該第2後方扉体90が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0038】
フィルタ交換口70を閉成する場合は、図9の状態において、先ず重なっている第1後方扉体82および第2後方扉体90を、左後方へ押しながらヒンジ部96を中心して回転させる。これにより、枠状ガイド101の上下部分が嵌合凹部108,108に嵌合して、第2後方扉体90および第1後方扉体82が第1開口領域70Aに整合すると共に、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の挿通部107A,107Aに整合する。次いで、第2後方扉体90を左方向へスライドさせ、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の左端に当接し、第2後方扉体90は第2開口領域70Bに整合した状態となる(図7)。
【0039】
このように、実施形態2のグローブボックスGBによれば、本体10の奥壁14に開設されたフィルタ交換口70を、該本体10に枢支自在に取り付けた第1後方扉体82および該第1後方扉体82にスライド自在に連結した第2後方扉体90により閉成することが可能である。また、フィルタ交換口70を開放する際には、第2後方扉体90を第1後方扉体82に対してスライドさせ、重なった第2後方扉体90と第1後方扉体82とを本体10に対して回転させることで、扉部材80を本体10から取り外すことなくフィルタ交換口70を開放することができ、フィルタ交換口70を介したフィルタAFの交換作業を簡易に行ない得る。そして、第2後方扉体90が第1後方扉体82に対してスライド自在に連結されているので、フィルタ交換口70を閉成する扉部材80の左右全長Hが本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されていても、該第2後方扉体90が本体10(グローブボックスGB)の前方へ突出することが防止される。しかも、開放させた扉部材80の第1後方扉体82および第2後方扉体90は、何れも本体10から後方へ突出しない。更に、フィルタ交換口70を開放する際に扉部材80を本体10から取り外さないので、該扉部材80の置き場所を確保する必要がないと共に、取り外すことによる紛失や破損等を防止し得る。また更に、フィルタ交換口70を開閉する際に、扉部材80が本体10の内面に接触しないので、該本体10の内面に傷が付くことがない。
【0040】
第1扉体52,82を本体10に回転自在に枢支させるヒンジ手段は、実施形態1のヒンジ部36の形態や実施形態2のヒンジ部96の形態に限定されず、様々な態様のヒンジ手段を実施することが可能である。
【0041】
第2扉体60,90を第1扉体52,82にスライド自在に連結するスライド手段は、実施形態1のスライド部40の形態や、実施形態2のスライド部100の形態に限定されるものではなく、様々な態様のスライド手段を実施することが可能である。
【0042】
実施形態1では、ヒンジ機能を併有したスライド部40を例示したが、実施形態1にヒンジ機能を有さないスライド部40を実施することも可能である。この場合は、第1扉体である側方扉体52に対して第2扉体である後方扉体60を、スライド部により側方扉体52に対して所要量スライドさせた後、所謂「T形」または「逆L形」に変形した扉部材50を、ヒンジ部36を中心として右方へ回転させれば、フィルタ交換口20を開放することが可能である。
【0043】
フィルタ交換口20,70の開口形状や、第1扉体52,82および第2扉体60,90の形状は、実施形態1および実施形態2に示した形状に限定されない。例えば実施形態1では、第1扉体である側方扉体52がフィルタ交換口20を通過して本体10内へ姿勢変位しないので、該側方扉体52は第1開口領域20Aより大きく設定してもよい。また、フィルタ交換口20,70における第1開口領域20A,70Aおよび第2開口領域20B,70Bの開口比率や、第1扉体52,82と第2扉体60,90との寸法比率等も、実施形態1や実施形態2に示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1に係るグローブボックスのフィルタ交換口が開設された部位と、本体に配設される扉部材とを示した分解斜視図である。
【図2】実施形態1における扉部材の側方扉体および後方扉体により、フィルタ交換口を閉成した状態を示した平断面図である。
【図3】後方扉体を右方へスライドさせた状態を示した平断面図である。
【図4】後方扉体を前方へ回転させ、該後方扉体を側方扉体へ折り重ねた状態を示した平断面図である。
【図5】後方扉体および側方扉体を右方へ回転させ、両扉体をフィルタ通過領域から退避した位置へ姿勢変位させてフィルタ交換口を開放させた状態を示した平断面図である。
【図6】実施形態2に係るグローブボックスのフィルタ交換口が開設された部位と、本体に配設される扉部材とを示した分解斜視図である。
【図7】実施形態2における扉部材の第1後方扉体および第2後方扉体により、フィルタ交換口を閉成した状態を示した平断面図である。
【図8】第2後方扉体を右方へスライドさせた状態を示した平断面図である。
【図9】第2後方扉体および第1後方扉体を前方へ回転させ、両扉体をフィルタ通過領域から退避した位置へ姿勢変位させてフィルタ交換口を開放させた状態を示した平断面図である。
【図10】グローブボックスにおける本体に設けたフィルタ交換口から蓋部材を取外し、このフィルタ交換口を介してフィルタを取外す状態を示した斜視図である。
【図11】図10の状態を示した平断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 本体,12 側壁,14 奥壁,20 フィルタ交換口,20A 第1開口領域
20B 第2開口領域,36 ヒンジ部,40 スライド部,45 ガイドピン(係止手段)
50 扉部材,52 側方扉体(第1扉体),60 後方扉体(第2扉体)
70 フィルタ交換口,70A 第1開口領域,70B 第2開口領域,80 扉部材
82 第1後方扉体(第1扉体),90 第2後方扉体(第2扉体),96 ヒンジ部
100 スライド部,106 ガイドピン(係止手段),AF フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローブボックスに関し、更に詳細には、本体に開設されたフィルタ交換口を開放可能に閉成する扉部材を取付けたグローブボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、自動車の乗員室におけるフロントガラス下部には、車両内装部材であるインストルメントパネルIPが、その前面側を乗員室後方に向けた状態で配設されている。このインストルメントパネルIPには、運転席側にスピードメーターやタコメーター等を纏めた計器ユニット等が取付けられていると共に、助手席側に車体装備品や携帯品等を収納し得るグローブボックスGBが配設されている。このグローブボックスGBは、上方に開口する物品収納部を画成したバケット状に形成されてインストルメントパネルIPに回転可能に取付けられるバケットタイプや、乗員室側に開口する物品収納部を画成したボックス状に形成されてインストルメントパネルIPに固定されるボックスタイプ等がある。なお図10では、ボックスタイプのグローブボックスGBを示しており、インストルメントパネルIPの一部をなす開閉扉18により、該インストルメントパネルIPの前面側に開口した前側開口部が開閉されるようになっている。
【0003】
また、前記インストルメントパネルIPの内部には、図11に示すように、乗員室内の空調に供されるエアコンユニットACが搭載される。そして、エアコンユニットACのフィルタ配設部AC1は、乗員席側から見てグローブボックスGBの後方側に位置している。このため、ボックスタイプのグローブボックスGBの場合は、図10および図11に示すように、該グローブボックスGBの本体10におけるエアコンユニットACに対応する位置にフィルタ交換口20を開口形成し、このフィルタ交換口20を介してフィルタ配設部AC1に対するフィルタAFの着脱を行ない得るよう構成されている。そして、フィルタ交換口20には、該フィルタ交換口20の開口形状に整合する外郭形状の蓋部材30が着脱可能に装着され、フィルタAFの交換作業時に取外すようになっている。なお、グローブボックスGBに設けたフィルタ交換口20を介してフィルタAFを交換する構成に関しては、特許文献1に開示されている。
【0004】
なお、グローブボックスGBの配設位置およびエアコンユニットACの搭載位置は車種毎に異なり、図10および図11に示すように、グローブボックスGBの斜め後方にフィルタ配設部AC1が位置する場合がある。両者の位置関係がこのような場合には、フィルタAFのフィルタ通過領域Lが、本体10のフィルタ配設部AC1に臨むコーナー部分10Aを挟んで隣接する側壁12および奥壁14に跨るようになるので、フィルタ交換口20は奥壁14から側壁12に亘って開口する平面視L形となる。従って、フィルタ交換口20に装着される蓋部材30も、該フィルタ交換口20の形態に合わせたL形となっている。
【特許文献1】特開2002−347525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した蓋部材30は、図10および図11に示すように、該蓋部材30の下端部や側端部等に設けた係止片部32を、フィルタ交換口20の開口縁部に係止させることで、本体10に着脱可能に装着する構造となっている。このため、蓋部材30の取外し時には、該蓋部材30を手前へ強く引張らなければ係止片部32が本体10から外れないと共に、蓋部材30の取付け時には、該蓋部材30を奥側へ強く押込まなければ係止片部32が本体10に係止されない。すなわち、蓋部材30の弾性変形に基づいて着脱が可能な構成となっており、着脱作業を行ない難い欠点があった。また、蓋部材30をフィルタ交換口20へ取付ける際に、係止片部32と本体10とが適切に整合していないと、蓋部材30がフィルタ交換口20を介して本体10の裏側へ脱落する不都合もあった。更に、本体10から蓋部材30を取外した際および蓋部材30を本体10に取付ける際に、蓋部材30がグローブボックスGBの内面に接触して、該内面に傷が付いてしまう不都合等もあった。また更に、取り外した蓋部材30の置き場所を確保する必要があり、床等に置いた蓋部材30を踏んで破損させたり紛失するおそれもあった。
【0006】
そこで本発明では、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく、本体に開設されたフィルタ交換口を開閉させ得るよう構成することで、フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業の簡易化を図ったグローブボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両内装部材に設けられて乗員室側に開口する本体と、該本体に開設され、空調用のフィルタを出し入れ可能なフィルタ交換口と、前記本体に配設され、前記フィルタ交換口を開閉可能な扉部材とを備えるグローブボックスであって、
前記扉部材は、
前記フィルタ交換口の第1開口領域に整合し、前記フィルタ交換口の一方の端部において前記本体にヒンジ部を介して枢支され、該ヒンジ部から離間する他端が前記第1開口領域から離間するよう姿勢変位可能な第1扉体と、
前記フィルタ交換口の前記第1扉体が整合する第1開口領域を除く第2開口領域に整合し、前記第1扉体の他端にスライド部を介してスライド自在に連結される第2扉体とを備えたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、本体に開設されたフィルタ交換口を、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく開閉することができ、フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業を可能とし得る。すなわち扉部材は、第1扉体に対して第2扉体をスライドさせたもとで、これら第1扉体と第2扉体とを回転させることで、フィルタ交換口を簡易に開放し得る。そして、扉部材が本体に連結されているので、フィルタ交換口を開閉させる際に扉部材が本体の裏側へ脱落することがない。また、フィルタ交換口を開閉させる際に扉部材を本体から取り外さないので、扉部材の置き場所を確保する必要がないと共に、破損させたり紛失することもない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第2扉体の端部が、前記フィルタ交換口の他方の端部に係止手段を介して係脱自在に係止されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、フィルタ交換口を閉成した第2扉体の姿勢保持を図り得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記フィルタ交換口は、前記本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設され、
前記第1扉体は、前記フィルタ交換口における側壁側の第1開口領域に整合し、
前記第2扉体は、前記フィルタ交換口における奥壁側の第2開口領域に整合することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設されたフィルタ交換口であっても、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく該フィルタ交換口を開閉し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るグローブボックスによれば、本体に取り付けた扉部材を該本体から取り外すことなく、本体に開設されたフィルタ交換口を開閉させ得るので、該フィルタ交換口を介したフィルタの交換作業を簡易に行ない得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るグローブボックスにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお各実施形態では、グローブボックスGBの奥行き方向(側壁12の延在方向)を前後方向とし、グローブボックスGBの左右方向(奥壁14の延在方向)を左右方向と指称する。そして、インストルメントパネルIPの乗員席側を指向する方向、すなわち本体10の開口部側をグローブボックスGBの「前方」とし、本体10の奥側を「後方」と指称する。
【実施例】
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のグローブボックスGBにおいて、本体10のコーナー部分10Aに設けたフィルタ交換口20と、このフィルタ交換口20を開閉するように本体10に取付けられる扉部材50とを示した分解斜視図である。実施形態1のグローブボックスGBは、図10に示すように、車両内装部材であるインストルメントパネルIPの助手席側前方において、該インストルメントパネルIPの前方(乗員室側)に開口するボックス状の本体10を備えている。この本体10は、底壁16、図示省略した上壁、左右の側壁(左側の側壁は図示省略)12および奥壁14から構成され、インストルメントパネルIPの前方へ開口している。
【0014】
フィルタ交換口20は、コーナー部分10Aを挟んで隣接する奥壁14から右側の側壁12に亘って平面視L形で横長矩形状に開設されている。ここで説明の便宜上、フィルタ交換口20のコーナー部分10Aを境とした側壁12側に位置する一方の開口領域を第1開口領域20Aとし、奥壁14側に位置する他方の開口領域を第2開口領域20Bと指称する。なおフィルタ交換口20は、図1に示すように、第1開口領域20Aの前後開口幅W1より、第2開口領域20Bの左右開口幅W2の方が大きく設定されている。また、第2開口領域20Bの左右開口幅W2は、フィルタ交換口20の上縁における本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されている。
【0015】
そして、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aにおける前縁部を第1縁部21、上縁部を第2縁部22、下縁部を第3縁部23とすると、第1縁部21と第2縁部22との角部および第1縁部21と第3縁部23との角部には、ヒンジ部36を構成するヒンジ孔38,38が、第1開口領域20Aに開口するように形成されている。また、第2縁部22の後端および第3縁部23の後端、すなわちコーナー部分10Aの近傍には、スライド部40を構成するスライドピン41,41(後述)が右方から嵌合保持される凹部43,43が形成されている。更に、フィルタ交換口20の第2開口領域20Bにおける左縁部を第4縁部24、上縁部を第5縁部25、下縁部を第6縁部26とすると、第5縁部25および第6縁部26には、左端から各縁部25,26に沿って所要長さで延在して第2開口領域20B側に開口するガイド溝27,27が延設されている。なお、ガイド溝27,27の右端は奥壁14の前方向へ折曲し、奥壁14の内面に開口した挿通部27A,27Aとなっている。
【0016】
扉部材50は、図1に示すように、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合する外郭形状に形成された第1扉体としての側方扉体52と、該フィルタ交換口20の第2開口領域20Bに整合する外郭形状に形成された第2扉体としての後方扉体60とから構成されている。すなわち、側方扉体52および後方扉体60により折曲状態となった扉部材50により、フィルタ交換口20が全面的に閉成され得るようになっている。なお、側方扉体52の前端部を第1端部53、上端部を第2端部54、下端部を第3端部55、後端部を第4端部56と指称すると共に、後方扉体60の左端部を第5端部61、上端部を第6端部62、下端部を第7端部63、右端部を第8端部64と指称する。
【0017】
側方扉体52は、図1に示すように、略正方形状のプレート状部材であって、該側方扉体52の前後長H1は、第1開口領域20Aの前後開口幅W1と同一となっている。そして、側方扉体52における第2端部54の前端および第3端部55の前端には、ヒンジ部36を構成するヒンジピン37,37が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。また、第2端部54の後端および第3端部55の後端には、スライド部40を構成する丸棒状のスライドピン41,41が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。従って側方扉体52は、ヒンジピン37,37を対応のヒンジ孔38,38に夫々突入嵌合させることで、フィルタ交換口20における一方の端部である第1縁部21において本体10に回転可能に取付けられる。これにより側方扉体52は、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合した状態(図2)と、ヒンジ端となる第1端部53と対向離間する自由端である第4端部56が、フィルタ交換口20から右方(外方)へ離間した状態(図5)とに姿勢変位可能となっている。
【0018】
なお、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した際には、前述したスライドピン41,41の先端部が凹部43,43に嵌合するので、側方扉体52が本体10の内側方向へ姿勢変位するのは規制される。また、凹部43,43のスライドピン41,41が通過する開口部分の幅寸法は、該スライドピン41,41の外径より僅かに小さく設定されており、凹部43,43に対するスライドピン41,41の嵌脱は若干の力を付与することで実現される。従って、凹部43,43にスライドピン41,41が嵌合している状態では、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した状態に姿勢保持される。
【0019】
後方扉体60は、図1に示すように、長方形状のプレート状部材であって、該後方扉体60の左右長H2は、本体10の前述した奥行き寸法Dより大きく、第2開口領域20Bの左右開口幅W2と同一となっている。そして、後方扉体60の後述するガイドピン(係止手段)45,45を除く部分は、フィルタ交換口20の第1開口領域20Aおよび第2開口領域20Bに対して、本体10の内外方向への通過が可能な形状・サイズに形成されている。この後方扉体60における第6端部62の左端および第7端部63の左端には、前述したガイド溝27,27に摺動自在に係合するガイドピン45,45が、垂直方向の同一軸線上において上方および下方へ突出形成されている。また、後方扉体60の第6端部62および第7端部63には、スライド部40を構成する長孔状のスライド孔42,42が、後方扉体60の延在方向に沿って延在形成されている。これらスライド孔42,42には、前述したスライドピン41,41が上下に貫通し、該スライド孔42,42の上方および下方へ突出したスライドピン41,41の突出先端部が、前述した凹部43,43に嵌合するよう構成されている。従って、スライド孔42,42にスライドピン41,41が摺動可能に係合することで、側方扉体52に対して後方扉体60がスライド自在に連結される(図3)。なお、ガイド溝27の全長S1とスライド孔42の全長S2とは同一となっていると共に、側方扉体52の前後長H1と後方扉体60におけるスライド孔42が形成されていない部位の長さH3とが略同一となっている。
【0020】
また、スライド孔42,42に係合したスライドピン41,41は、スライド孔42,42に係合した状態において、軸心を中心とした周方向への回転が許容される。これにより後方扉体60は、スライドピン41,41を回転中心として、側方扉体52に連結された状態で回転が可能となっている(図4)、すなわち、実施形態1のスライド部40はヒンジ機能を併有している。
【0021】
従って後方扉体60は、図2に示すように、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合した状態において、スライドピン41,41がスライド孔42,42の左端に到来するまで右方へスライドさせると、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の挿通部27A,27Aに整合するよう構成されている。また、この状態で後方扉体60を左方向へ押すと、ガイドピン45,45がガイド溝27,27に沿って移動すると共に、スライドピン41,41がスライド孔42,42に沿って相対的に移動することで、後方扉体60は左方向へ移動して第2開口領域20Bに整合した状態となる。また、スライド部40から対向離間する第5端部61側に設けたガイドピン45,45がガイド溝27,27に係止されることで、後方扉体60の第5端部61側が本体10の外方向(後方)へ移動するような姿勢変位が規制される。
【0022】
なお、後方扉体60の裏面には、図1に示すように、第5端部61から左方へ延出した係止片部65が形成され、この係止片部65の前面には凸部66が形成されている。また、奥壁14の裏面には、図1に示すように、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した際に前述した凸部66が係合する凹部67が形成されている。更に、後方扉体60の前面には陥凹状の指掛部68が形成されており、後方扉体60を左右にスライドさせる際に指先を掛け得るようになっている。
【0023】
従って、前述のように構成された実施形態1のグローブボックスGBでは、扉部材50がフィルタ交換口20を閉成した際には、前述すると共に図2に示すように、側方扉体52が該フィルタ交換口20の第1開口領域20Aに整合し、後方扉体60が該フィルタ交換口20の第2開口領域20Bに整合する。そして、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した際に凸部66が凹部67に嵌合するので、該後方扉体60は第2開口領域20Bを閉成した状態に姿勢保持される。また、後方扉体60が第2開口領域20Bに整合した状態では、スライドピン41,41がスライド孔42,42の右端に位置して凹部43,43に嵌合保持されるので、側方扉体52は第1開口領域20Aを閉成した状態に姿勢保持される。
【0024】
そして、フィルタ交換口20を開放する場合には、先ず図3に示すように、後方扉体60を右方向へスライド移動させる。すなわち、指掛部68に指先を掛けたもとで後方扉体60を右方向へ押すと凸部66と凹部67との嵌合が解除され、後方扉体60が右方向へスライドし始める。この際に、ガイドピン45,45がガイド溝27,27に沿って右方向へ移動すると共に、スライド孔42,42に対してスライドピン41,41が左方向へ相対的に移動するので、後方扉体60は前後方向への姿勢変位が規制されながら第2開口領域20Bに沿って右方へ移動する。そして、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の右端に当接すると共に、スライドピン41,41がスライド孔42,42の左端に当接すると、後方扉体60は図3に示した位置で位置規制される。
【0025】
次いで、図4に示すように、後方扉体60の第5端部61を前方に引張る。これにより後方扉体60は、スライドピン41,41を中心として前方へ回転し、側方扉体52の左側に折り重なった状態となる。なお、前述すると共に図1に示すように、側方扉体52の前後長H1と、後方扉体60の第2ヒンジ孔42が形成されていない部位の長さH3とが略同一となっているので、後方扉体60の第5端部61は、側方扉体52の第1端部53と略同じ位置となってグローブボックスGBから前方へ突出しない。すなわち、後方扉体60の左右長H2が本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されているが、右方へスライドさせた状態で回転させるため、後方扉体60はグローブボックスGB(本体10)から前方へ突出しない。また、後方扉体60はスライド部40を介して側方扉体52に連結されているので、前方へ回転する際に該後方扉体60が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0026】
次いで、図5に示すように、後方扉体60の後側部分を右方へ押すと、凹部43,43に嵌合保持されていたスライドピン41,41が該凹部43,43が抜け出て、側方扉体52がヒンジ部36を中心として右方(外方)へ回転する。これにより、側方扉体52に連結された後方扉体60も、側方扉体52の回転に追従して右方へ姿勢変位する。従って側方扉体52および後方扉体60は、図5に示すように、フィルタAFのフィルタ通過領域Lから側方へ退避した位置へ姿勢変位してフィルタ交換口20を開放し、フィルタ交換口20を介したフィルタAFの交換作業が可能となる。なお、側方扉体52はヒンジ部36を介して本体10に連結されているので、側方扉体52に追従して姿勢変位する後方扉体60が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0027】
フィルタ交換口20を閉成する場合は、図5の状態において、先ず後方扉体60の後側部分を左方へ移動させる。これにより、後方扉体60および側方扉体52がヒンジ部36を中心として左方へ回転し、スライドピン41,41が各凹部43,43に嵌合することで、側方扉体52が第1開口領域20Aに整合する(図4)。
【0028】
次いで、前方を指向している後方扉体60の第5端部61を左後方へ押すと、該後方扉体60はスライドピン41,41を中心として回転し、ガイドピン45,45が挿通部27A,27Aからガイド溝27,27に係止される(図3)。そして、後方扉体60を左方へスライドさせ、ガイドピン45,45がガイド溝27,27の左端に当接すると共にスライドピン41,41がスライド孔42,42の右端に当接することで、後方扉体60は第2開口領域20Bに整合した状態となる(図2)。
【0029】
このように、実施形態1のグローブボックスGBによれば、本体10の奥壁14から一方の側壁12に亘って開設されたフィルタ交換口20を、該本体10に枢支自在に取り付けた側方扉体52および該側方扉体52にスライド自在に連結した後方扉体60により閉成することが可能である。また、フィルタ交換口20を開放する際には、後方扉体60を側方扉体52に対してスライドさせると共に回転させ、折り重なった後方扉体60と側方扉体52とを本体10に対して回転させることで、扉部材50を本体10から取り外すことなくフィルタ交換口20を開放することができ、フィルタ交換口20を介したフィルタAFの交換作業を簡易に行ない得る。そして、後方扉体60が側方扉体52に対してスライド自在に連結されているので、側方扉体52に折り重なった後方扉体60の左右長H2が本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されていても、該後方扉体60が本体10(グローブボックスGB)の前方へ突出することが防止される。また、フィルタ交換口20を開放する際に扉部材50を本体10から取り外さないので、該扉部材50の置き場所を確保する必要がないと共に、取り外すことによる紛失や破損等を防止し得る。また、フィルタ交換口20を開閉する際に、扉部材50が本体10の内面に接触しないので、該本体10の内面に傷が付くことがない。
【0030】
(実施形態2)
図6は、実施形態2のグローブボックスGBにおいて、本体10の奥壁14に設けたフィルタ交換口70と、このフィルタ交換口70を開閉するように本体10に取付けられる扉部材80とを示した分解斜視図である。実施形態2のグローブボックスGBは、本体10における平坦状の奥壁14のみにフィルタ交換口70が開設されている。また扉部材80は、本体10に枢支された第1扉体である第1後方扉体82と、この第1後方扉体82にスライド自在に連結した第2扉体である第2後方扉体90とから構成されている。
【0031】
フィルタ交換口70は、右縁部である第1縁部71、上縁部である第2縁部72、下縁部である第3縁部73および左縁部である第4縁部74からなる横長矩形状に開設され、フィルタFの挿通を許容する大きさに設定されている。図6および図7に示すように、フィルタ交換口70の左右開口幅Wは、本体10の奥行き寸法Dの2倍程度に設定されている。なお、説明の便宜上、左右方向の中間を境とした右側の開口領域を第1開口領域70Aとし、左側の開口領域を第2開口領域70Bと指称する。そして、フィルタ交換口70の第1縁部71における上方および下方には、ヒンジ部96を構成する蝶番形態のヒンジ部材97,97が取付けられている。また、第2縁部72および第3縁部73の第4縁部74側には、所要長さのガイド溝107,107が、該縁部72,73に沿って第2開口領域70B側に開口するように延設されている。なお、ガイド溝107,107の右端は奥壁14の前方向へ折曲し、奥壁14の内面に開口した挿通部107A,107Aとなっている。更に、第2縁部72および第3縁部73の左右略中央には、後述するスライド部100の枠状ガイド101の上下部分が夫々整合する嵌合凹部108,108が形成されている。
【0032】
第1後方扉体82は、図6および図7に示すように、略矩形状のプレート状部材で第1開口領域70Aに整合する形状となっており、該第1後方扉体82の左右長H1は、フィルタ交換口70の左右開口幅Wの1/2よりやや大きく設定され、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっている。そして、第1後方扉体82の第1端部83には、前述したヒンジ部96を構成するヒンジ部材97,97が取付けられ、これらヒンジ部材97,97を介して本体10に枢支される。また、図6に示すように、第1後方扉体82の裏面左縁には、スライド部100を構成する左右方向へ開口する枠状ガイド101が、第4端部86に沿って上下方向へ延在するように形成されている。この枠状ガイド101には、第2後方扉体90が左側から挿通して摺動可能となっており、第1後方扉体82の裏面に沿って第2後方扉体90が左右方向へスライド自在に連結される。なお枠状ガイド101は、第2端部84の上方および第3端部85の下方へ突出しており、この上下突出部分が前述した嵌合凹部108,108に夫々嵌合するようになっている。また第1端部83には、後方へ突出したストッパー部87が形成されており、第2後方扉体90を右方へ最大にスライドさせた際に、該第2後方扉体90の第5端部91が該ストッパー部87に当接するようになっている。
【0033】
第2後方扉体90は、図6に示すように、略矩形状のプレート状部材で第2開口領域70Bに整合する形状となっており、該第2後方扉体90の左右長H2は、フィルタ交換口70の左右開口幅Wの1/2よりやや大きく設定され、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっている。この第2後方扉体90の第6端部92および第7端部93の左端には、前述したガイド溝107,107に摺動自在に係合するガイドピン(係止手段)106,106が、上方および下方へ突出した状態に形成されている。そして第2後方扉体90は、図8に示すように、第1後方扉体82が第1開口領域70Aに整合した状態において右方へ最大にスライドさせると、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の挿通部107A,107Aに整合するよう構成されている。また、この状態で第2後方扉体90を左方向へ押すと、ガイドピン106,106がガイド溝107,107に沿って移動すると共に、該第2後方扉体90が枠状ガイド101内を摺動することで、第2後方扉体90は左方向へスライドして第2開口領域70Bに整合した状態となる(図7)。
【0034】
第2後方扉体90の裏面には、図6に示すように、第8端部94から左方へ延出した係止片部110が形成され、この係止片部110の前面には凸部111が形成されている。また、奥壁14の第4縁部74に隣接した裏面には、図6に示すように、第2後方扉体90が第2開口領域70Bに整合した状態において凸部111が嵌合する凹部112が形成されている。更に、第2後方扉体90の前面には、陥凹状の指掛部113が形成されている。
【0035】
従って、前述のように構成された実施形態2のグローブボックスGBでは、扉部材80がフィルタ交換口70を閉成した際には、前述すると共に図7に示すように、第1後方扉体82が該フィルタ交換口70の第1開口領域70Aに整合し、第2後方扉体90が該フィルタ交換口70の第2開口領域70Bに整合する。この状態では、第1後方扉体82の左側部分と第2後方扉体90の右側部分とが前後方向において重なり、扉部材80の左右全長Hはフィルタ交換口70の左右開口幅Wと同一となる。そして、凸部111が凹部112に嵌合保持されると共に、枠状ガイド101が嵌合凹部108,108に嵌合保持されるので、扉部材80はフィルタ交換口70を閉成した状態に姿勢保持される。
【0036】
フィルタ交換口70を開放する場合には、先ず図8に示すように、第2後方扉体90を右方向へスライドさせる。すなわち、指掛部113に指先を掛けたもとで第2後方扉体90を右方向へ押すと、凸部111と凹部112との嵌合が解除され、第2後方扉体90が右方向へスライドし始める。この際に、ガイドピン106,106がガイド溝107,107に沿って右方向へ移動すると共に、第2後方扉体90がスライド部100の枠状ガイド101内を摺動するので、第2後方扉体90は前後方向への姿勢変位が規制されながら第2開口領域70Bに沿って右方へスライドする。そして、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の右端に当接する共に、第2後方扉体90の第5端部91が第1後方扉体82のストッパー部87に当接し、第2後方扉体90は図8に示した位置で位置規制されて、第2後方扉体90は第1後方扉体82の裏側に重なった状態となる。
【0037】
次いで、図9に示すように、第2後方扉体90の第8端部94側を前方に引き出すことで、枠状ガイド101が嵌合凹部108,108から前方へ移動し、第2後方扉体90および第1後方扉体82は重なった状態でヒンジ部96を中心として前方へ回転する。なお、前述すると共に図6に示すように、第1後方扉体82の左右長H1および第2後方扉体90の左右長H2は、本体10の奥行き寸法Dと略同一となっているので、第1後方扉体82の第4端部86および第2後方扉体90の第8端部94は、グローブボックスGB(本体10)から前方へ突出しない。そして、第2後方扉体90はスライド部100を介して第1後方扉体82に連結されているので、第1後方扉体82が前方へ回転する際に該第2後方扉体90が本体10の底壁16や上壁に接触することがなく、よって本体10の内面に傷が付くことが防止される。
【0038】
フィルタ交換口70を閉成する場合は、図9の状態において、先ず重なっている第1後方扉体82および第2後方扉体90を、左後方へ押しながらヒンジ部96を中心して回転させる。これにより、枠状ガイド101の上下部分が嵌合凹部108,108に嵌合して、第2後方扉体90および第1後方扉体82が第1開口領域70Aに整合すると共に、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の挿通部107A,107Aに整合する。次いで、第2後方扉体90を左方向へスライドさせ、ガイドピン106,106がガイド溝107,107の左端に当接し、第2後方扉体90は第2開口領域70Bに整合した状態となる(図7)。
【0039】
このように、実施形態2のグローブボックスGBによれば、本体10の奥壁14に開設されたフィルタ交換口70を、該本体10に枢支自在に取り付けた第1後方扉体82および該第1後方扉体82にスライド自在に連結した第2後方扉体90により閉成することが可能である。また、フィルタ交換口70を開放する際には、第2後方扉体90を第1後方扉体82に対してスライドさせ、重なった第2後方扉体90と第1後方扉体82とを本体10に対して回転させることで、扉部材80を本体10から取り外すことなくフィルタ交換口70を開放することができ、フィルタ交換口70を介したフィルタAFの交換作業を簡易に行ない得る。そして、第2後方扉体90が第1後方扉体82に対してスライド自在に連結されているので、フィルタ交換口70を閉成する扉部材80の左右全長Hが本体10の奥行き寸法Dより大きく設定されていても、該第2後方扉体90が本体10(グローブボックスGB)の前方へ突出することが防止される。しかも、開放させた扉部材80の第1後方扉体82および第2後方扉体90は、何れも本体10から後方へ突出しない。更に、フィルタ交換口70を開放する際に扉部材80を本体10から取り外さないので、該扉部材80の置き場所を確保する必要がないと共に、取り外すことによる紛失や破損等を防止し得る。また更に、フィルタ交換口70を開閉する際に、扉部材80が本体10の内面に接触しないので、該本体10の内面に傷が付くことがない。
【0040】
第1扉体52,82を本体10に回転自在に枢支させるヒンジ手段は、実施形態1のヒンジ部36の形態や実施形態2のヒンジ部96の形態に限定されず、様々な態様のヒンジ手段を実施することが可能である。
【0041】
第2扉体60,90を第1扉体52,82にスライド自在に連結するスライド手段は、実施形態1のスライド部40の形態や、実施形態2のスライド部100の形態に限定されるものではなく、様々な態様のスライド手段を実施することが可能である。
【0042】
実施形態1では、ヒンジ機能を併有したスライド部40を例示したが、実施形態1にヒンジ機能を有さないスライド部40を実施することも可能である。この場合は、第1扉体である側方扉体52に対して第2扉体である後方扉体60を、スライド部により側方扉体52に対して所要量スライドさせた後、所謂「T形」または「逆L形」に変形した扉部材50を、ヒンジ部36を中心として右方へ回転させれば、フィルタ交換口20を開放することが可能である。
【0043】
フィルタ交換口20,70の開口形状や、第1扉体52,82および第2扉体60,90の形状は、実施形態1および実施形態2に示した形状に限定されない。例えば実施形態1では、第1扉体である側方扉体52がフィルタ交換口20を通過して本体10内へ姿勢変位しないので、該側方扉体52は第1開口領域20Aより大きく設定してもよい。また、フィルタ交換口20,70における第1開口領域20A,70Aおよび第2開口領域20B,70Bの開口比率や、第1扉体52,82と第2扉体60,90との寸法比率等も、実施形態1や実施形態2に示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1に係るグローブボックスのフィルタ交換口が開設された部位と、本体に配設される扉部材とを示した分解斜視図である。
【図2】実施形態1における扉部材の側方扉体および後方扉体により、フィルタ交換口を閉成した状態を示した平断面図である。
【図3】後方扉体を右方へスライドさせた状態を示した平断面図である。
【図4】後方扉体を前方へ回転させ、該後方扉体を側方扉体へ折り重ねた状態を示した平断面図である。
【図5】後方扉体および側方扉体を右方へ回転させ、両扉体をフィルタ通過領域から退避した位置へ姿勢変位させてフィルタ交換口を開放させた状態を示した平断面図である。
【図6】実施形態2に係るグローブボックスのフィルタ交換口が開設された部位と、本体に配設される扉部材とを示した分解斜視図である。
【図7】実施形態2における扉部材の第1後方扉体および第2後方扉体により、フィルタ交換口を閉成した状態を示した平断面図である。
【図8】第2後方扉体を右方へスライドさせた状態を示した平断面図である。
【図9】第2後方扉体および第1後方扉体を前方へ回転させ、両扉体をフィルタ通過領域から退避した位置へ姿勢変位させてフィルタ交換口を開放させた状態を示した平断面図である。
【図10】グローブボックスにおける本体に設けたフィルタ交換口から蓋部材を取外し、このフィルタ交換口を介してフィルタを取外す状態を示した斜視図である。
【図11】図10の状態を示した平断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 本体,12 側壁,14 奥壁,20 フィルタ交換口,20A 第1開口領域
20B 第2開口領域,36 ヒンジ部,40 スライド部,45 ガイドピン(係止手段)
50 扉部材,52 側方扉体(第1扉体),60 後方扉体(第2扉体)
70 フィルタ交換口,70A 第1開口領域,70B 第2開口領域,80 扉部材
82 第1後方扉体(第1扉体),90 第2後方扉体(第2扉体),96 ヒンジ部
100 スライド部,106 ガイドピン(係止手段),AF フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材に設けられて乗員室側に開口する本体と、該本体に開設され、空調用のフィルタを出し入れ可能なフィルタ交換口と、前記本体に配設され、前記フィルタ交換口を開閉可能な扉部材とを備えるグローブボックスであって、
前記扉部材は、
前記フィルタ交換口の第1開口領域に整合し、前記フィルタ交換口の一方の端部において前記本体にヒンジ部を介して枢支され、該ヒンジ部から離間する他端が前記第1開口領域から離間するよう姿勢変位可能な第1扉体と、
前記フィルタ交換口の前記第1扉体が整合する第1開口領域を除く第2開口領域に整合し、前記第1扉体の他端にスライド部を介してスライド自在に連結される第2扉体とを備えた
ことを特徴とするグローブボックス。
【請求項2】
前記第2扉体の端部が、前記フィルタ交換口の他方の端部に係止手段を介して係脱自在に係止される請求項1記載のグローブボックス。
【請求項3】
前記フィルタ交換口は、前記本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設され、
前記第1扉体は、前記フィルタ交換口における側壁側の第1開口領域に整合し、
前記第2扉体は、前記フィルタ交換口における奥壁側の第2開口領域に整合する請求項1または2記載のグローブボックス。
【請求項1】
車両内装部材に設けられて乗員室側に開口する本体と、該本体に開設され、空調用のフィルタを出し入れ可能なフィルタ交換口と、前記本体に配設され、前記フィルタ交換口を開閉可能な扉部材とを備えるグローブボックスであって、
前記扉部材は、
前記フィルタ交換口の第1開口領域に整合し、前記フィルタ交換口の一方の端部において前記本体にヒンジ部を介して枢支され、該ヒンジ部から離間する他端が前記第1開口領域から離間するよう姿勢変位可能な第1扉体と、
前記フィルタ交換口の前記第1扉体が整合する第1開口領域を除く第2開口領域に整合し、前記第1扉体の他端にスライド部を介してスライド自在に連結される第2扉体とを備えた
ことを特徴とするグローブボックス。
【請求項2】
前記第2扉体の端部が、前記フィルタ交換口の他方の端部に係止手段を介して係脱自在に係止される請求項1記載のグローブボックス。
【請求項3】
前記フィルタ交換口は、前記本体の奥壁から一方の側壁に亘って開設され、
前記第1扉体は、前記フィルタ交換口における側壁側の第1開口領域に整合し、
前記第2扉体は、前記フィルタ交換口における奥壁側の第2開口領域に整合する請求項1または2記載のグローブボックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−113588(P2009−113588A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287416(P2007−287416)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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