説明

ケモカイン受容体の調節物質としての環式第四級アミノ誘導体

式(1)(式中、m、n、R、R、R、ALK、E、及びYは、特許請求の範囲において定義するものである)の化合物は、CXCR3受容体へのケモカイン結合の強力且つ選択的な阻害物質であり、したがって、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び免疫調節異常、例えばリウマチ様関節炎を含めて、T細胞の不適切な輸送が関与する病態の治療及び/又は予防において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の環式第四級アミノ誘導体、それらを含む組成物、それらを調製するプロセス、及び医薬品でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年のうちに、ケモカイン(走化性サイトカイン)が炎症プロセスでの様々な細胞型の動員及び活性化、例えば、喘息、鼻炎、湿疹、及び寄生虫感染症を含めていくつかの病理状態の特徴である組織の好酸球増加症における好酸球の動員において、重要な役割を果たしていることが次第に明らかになっている。さらに、一部のケモカインは、リウマチ様関節炎、過敏性腸疾患、及び多発性硬化症など様々な自己免疫疾患に関係があるとされており、且つ、HIVによる侵入などウイルス感染の経路において極めて重要な役割を果たしている(Schwarz、M.K.及びWells、T.N.C.、Curr.Opin.Chem.Biol.、1999年、3、407〜17頁;Bousquet、J.他、N.Eng.J.Med.、1990年、323、1033〜39頁;Kay、A.B.及びCorrigan、C.J.、Br.Med.Bull.、1992年、48、51〜64頁)。
【0003】
ケモカインは、多種多様の細胞によって放出されて、様々な細胞型のうちでも、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、好酸球、好塩基球、及び好中球を誘引し活性化する(Luster、New Eng.J.Med.、1998年、338、436〜45頁;Rollins、Blood、1997年、90、909〜28頁)。これまでに、ほぼ40種のヒトケモカインが十分に特徴づけられており(Schwarz、M.K.、前掲論文;Wells、T.N.C.他、Trends Pharmacol Sci、1998年、19、376〜380頁)、これらは、アミノ酸配列中の最初の2つのシステインが1つのアミノ酸によって隔てられているか(CXC)、又は隣接しているか(CC)によって、2つの主要なクラス、即ちCXC及びCCに分類されている。追加の2つのクラスのメンバー、即ちCケモカイン(リンホタクチン−1及びリンホタクチン−2)並びにCX3Cケモカイン(フラクタルカイン)も同定されている。当初、IL−8(好中級誘引物質)などのCXCケモカインが急性炎症に関連し、CCケモカインが、喘息、関節炎、及びアテローム性動脈硬化症など慢性の炎症性疾患に関連していると考えられていた。しかし、現在では、どちらのクラスのメンバーも慢性炎症と急性炎症の双方に関与していることが知られている。通常、インターロイキン−8(IL−8)、好中球活性化タンパク質−2(NAP−2)、及び黒色腫成長刺激活性化タンパク質(MGSA)などのCXCケモカインは、主に好中球及びTリンパ球に対して走化性であり、一方、RANTES(活性化により調節、正常T細胞で発現及び分泌される)、MIP−1α、MIP−1β、単球走化性タンパク質(MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MCP−5)、エオタキシン(−1、−2及び−3)などのCCケモカインは、マクロファージ、Tリンパ球、好酸球、樹状細胞、及び好塩基球に対して走化性である。
【0004】
ケモカインは、特異的な細胞表面受容体に結合する。17種の哺乳動物の受容体がこれまでに報告されており(Schwarz、M.K.前掲論文)、これらはすべて、7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体である。これらの受容体のリガンド結合特性が確認されており、例えば、CCR−1に対するリガンドはRANTES、MIP−1α、及びMCP−3であり、CCR−2に対するリガンドはMCP−1、2、3、4及び5である。
【0005】
ケモカイン及びそれらの受容体は、炎症性疾患、感染性疾患、及び免疫調節異常、並びにリウマチ様関節炎やアテローム性動脈硬化症など自己免疫性の病態の重要な媒介物であることが示唆されている。
【0006】
CXCR3ケモカイン受容体は、主にTリンパ球で発現され、その機能活性は、細胞質ゾルのカルシウム上昇又は走化性によって測定することができる。この受容体は、以前はGPR9又はCKR−L2と呼ばれていた。その染色体位置は、Xq13に局在しており、ケモカイン受容体のうちでは珍しい。選択的で高い親和性を有することが確認されているリガンドは、CXCケモカイン、インターフェロン−γ誘導性タンパク質(IP10)、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(MIG)、及びインターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質(ITAC)である。
【0007】
CXCR3が高選択的に発現すると、これは、不適切なT細胞輸送を中断させる処置のための理想的な標的になる。このような処置の臨床適応は、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、及びI型糖尿病などT細胞媒介性疾患である。不適切なT細胞浸潤は、真の自己免疫疾患ではないかもしれないが、乾癬、及び他の病原性の皮膚の炎症状態でも生じる。なお、ケラチン合成細胞でのIP−10発現の上方調節は、皮膚の免疫病理における共通の特徴である。CXCR3の阻害は、臓器移植の拒絶反応を減らす上で役に立つことができる。ある種の腫瘍、特にB細胞悪性腫瘍のサブセット(subset)でのCXCR3の異所性発現は、CXCR3の選択的な阻害物質が腫瘍の免疫療法、特に転移の抑制において価値を有するであろうことを示唆している(例えば、Qin S.他、J.Clin.Invest、1998年、101、746〜754頁;Sorenson T.L.他、J.Clin.Invest、1999年、103、807〜815頁を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、CXCR3が臨床上重要であることから、CXCR3機能を調節する新しい治療用薬剤の必要性が大きい。本発明者は、CXCR3とそのケモカインリガンドとの相互作用の強力且つ選択的な調節物質である環式第四級アミノ誘導体の1クラスを発見した。この相互作用の選択的な調節は、有益な効果があると予想することができ、したがって、これらの化合物は、医療において、例えば、以下に記載するある種の炎症性疾患、自己免疫疾患、及び免疫調節異常などT細胞の不適切な輸送が関与する病態の予防又は治療において有用である。
【0009】
国際特許出願WO 01−14333号、同WO 00−76973号、同WO 00−76513号、同WO 00−76511号、同WO 00−76512号、同WO 00−76514号、同WO 00−76972号、及び欧州特許第916668号明細書は、すべて、一般にケモカイン受容体活性を調節するのに有用な置換型ピペリジン誘導体のいくつかのクラスを一般的に開示している。
【0010】
国際特許出願WO 02−16353号は、CCR3とそのケモカインリガンドとの相互作用の阻害物質としての二環式の複素環式芳香族誘導体の1クラスを開示している。
【0011】
欧州特許第625507号明細書は、ACAT阻害物質として使用するための尿素誘導体の一般的なクラスを開示している。
【0012】
米国特許第3,424,761号明細書は、鎮痛性の活性、中枢神経系への活性、及び精神薬理上の活性を特徴とする3−ウレイドピロリジンの1クラスを開示している。
【0013】
米国特許第6,329,395号明細書は、神経ペプチドのY5受容体の拮抗物質として使用するための尿素の一般的なクラスを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第1の態様によれば、本発明者らは、式(1)の化合物、
【化1】


[式中、
m及びnは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ0又は整数1若しくは2であり、
Alkは、共有結合又は直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキレン鎖であり、
及びRは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又は直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基であり、
Dは、任意選択で置換された芳香族基又は複素環式芳香族基であり、
Eは、任意選択で置換されたC7〜10シクロアルキル基、C7〜10シクロアルケニル基、又はC7〜10多環式脂肪族基であり、
は、任意選択で置換されたアルキル基であり、
Yは、製薬上許容される対イオンである]
及びその塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、或いはN−オキシド化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
式(1)のある種の化合物は、幾何異性体(E異性体又はZ異性体)として存在してよいことを理解されたい。この化合物は、1つ又は複数のキラル中心を有してもよく、鏡像異性体又はジアステレオマーとして存在してもよい。本発明は、ラセミ体を含めて、このようなすべての幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物に拡大適用されるものと理解されたい。式(1)及び以下の式は、別段の記載や指示のない限り、個々の異性体及びそれらの混合物をすべて示すものとする。さらに、式(1)の化合物は、互変異性体、例えば、尿素の互変異性体(−NHC(O)NH−)と(−NC(OH)NH−)として存在してよい。式(1)及び以下の式は、別段の記載がない限り、個々の互変異性体及びそれらの混合物をすべて示すものとする。
【0016】
望まれる場合は、本発明の化合物を、薬剤として許容されるプロドラッグの形で、例えば、保護されたカルボン酸誘導体として、例えば、生理的に許容されるエステルとして投与してよいことも理解されたい。さらに、このプロドラッグはin vivoで式(1)の活性な化合物に変換されることができ、本発明はこのようなプロドラッグに拡大適用されるものとすることも理解されたい。このようなプロドラッグは、文献で公知である。例えば、国際特許出願WO 00/23419号、Bodor N.(Alfred Benson Symposium、1982年、17、156〜177頁)、Singh G.他(J.Sci.Ind.Res.、1996年、55、497〜510頁)、及び、Bundgaard H.(プロドラッグのデザイン(Design of Prodrugs)、1985年、Elsevier、Amsterdam)を参照のこと。
【0017】
本発明の化合物において、式(1)及び以下のより詳細な記述によって表される場合、置換基に関して使用する一般的な用語のうちのいくつかは、別段の指定がない限り、以下の原子又は基を含むものと理解すべきである。
【0018】
即ち、本明細書では、「アルキル」という用語は、基として存在しようと基の一部として存在しようと、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝のC1〜10アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、neo−ペンチル基などのC1〜6アルキル基を含む。これらの基上に存在する任意選択の置換基としては、以下に言及する任意選択の置換基が挙げられる。
【0019】
「アルキレン鎖」という用語は、前述したアルキル基において、その末端水素原子が共有結合で置き換えられて2価の鎖を生じたものを含むものとする。任意選択で置換された、


などのC1〜6アルキレン鎖が例として挙げられる。これらの基上に存在する任意選択の置換基としては、アルキル基について以下に言及する任意選択の置換基が挙げられる。
【0020】
本発明の化合物において、Eで示されるシクロアルキル基及びシクロアルケニル基には、非芳香族で環式若しくは多環式の飽和若しくは部分飽和した、C7〜10シクロアルキル環系又はC7〜10シクロアルケニル環系が含まれる。シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が、適宜、後述の1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0021】
Eで示されるC7〜10多環式脂肪族基には、任意選択で置換されたC7−10ビシクロ若しくはトリシクロアルキル基、又はC7〜10ビシクロ若しくはトリシクロアルケニル基が含まれる。
【0022】
Eで示される基の例としては、それだけには限らないが、任意選択で置換されたシクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、アダマンチル基、アダマンタノニル基、ノルアダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプテニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、ビシクロ[3.2.1]オクタニル基、ビシクロ[3.2.1]オクテニル基、ビシクロ[3.3.1]ノナニル基、ビシクロ[6.2.0]デカニル基、オクタヒドロ−4,7−メタノインデニル基、又はオクタヒドロナフタレニル基が挙げられる。
【0023】
基E上に存在してよい任意選択の置換基には、以下のものから選択される1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の置換基が含まれ、それぞれ同じものでも異なるものでもよい。即ち、オキソ基、アルコキシ基、ハロアルキル基(例えば−CF、−CFH)、ハロアルコキシ基(例えば−OCFH)、ヒドロキシ基(−OH)、チオール基(−SH)、アルキルチオ基、−CN、−COH、−CO9a(R9aは、任意選択で置換されたC1〜6アルキル基である)、−SOH、−SOR10a(R10aは、C1〜6アルキル基である)、−SO10、−SO10、−OCO10、−C(O)H、−C(O)R10、−OC(O)R10、−C(S)R10、−C(O)N(R11a)(R12a)(R11a及びR12aは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又はC1〜6アルキル基である)、−N(R11a)C(O)R12a、−CSN(R11a)(R12a)、−N(R11a)C(S)(R12a)、−SON(R11a)(R12a)、−N(R11a)SO12a、−N(R11a)C(O)N(R12a)(R13a)(R13aは水素原子又はC1〜6アルキル基である)、−N(R11a)C(S)N(R12a)(R13a)、−N(R11a)SON(R12a)(R13a);任意選択で置換された環式脂肪族基、複素環式脂肪族基、芳香族基、又は複素環式芳香族基;或いは、同じ若しくは異なる、ハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ヒドロキシ基(−OH)、チオール基(−SH)、アルキルチオ基、アミノ基(−NH)、置換型アミノ基、任意選択で置換された


、又は任意選択で置換された環式脂肪族基、複素環式脂肪族基、芳香族基、若しくは複素環式芳香族基のうちの1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上によって任意選択で置換された直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基若しくはC2〜6アルケニル基である。
【0024】
通常、式(1)の化合物では、「環式脂肪族基」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基、又はビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基など、任意選択で置換された非芳香族で環式若しくは多環式の飽和若しくは部分飽和したC3〜10環系を含む。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など任意選択で置換されたC3〜6シクロアルキル環系が挙げられる。これらの基上に存在する任意選択の置換基には、以下に言及する置換基が含まれる。
【0025】
「複素環式脂肪族基」という用語は、1つ、2つ、3つ、若しくは4つのL連結原子若しくは連結基を含む、任意選択で置換された非芳香族で3〜10員環の飽和若しくは部分飽和した単環式若しくは多環式の炭化水素環系を意味する。適切なL原子若しくは基の具体例としては、原子−O−若しくは−S−、又は、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(S)−、−S(O)−、−S(O)−、−N(R14)−(式中、R14は、水素原子又はC1〜6アルキル基である)、−N(R14)N(R14)、−N(R14)O、−ON(R14)−、−CON(R14)−、−OC(O)N(R14)−、−CSN(R14)−、−N(R14)CO−、−N(R14)C(O)O−、−N(R14)CS−、−S(O)N(R14)−、−N(R14)S(O)−、−N(R14)CON(R14)−、−N(R14)CSN(R14)−、−N(R14)SON(R14)−などの基が挙げられる。連結基が2つのR14置換基を含む場合、これらは、同じものでも異なるものでもよい。複素環式脂肪族基上に存在する任意選択の置換基には、以下に言及する置換基が含まれる。
【0026】
複素環式脂肪族基の具体例としては、任意選択で置換されたシクロブタノニル基、シクロペンタノニル基、シクロヘキサノニル基、アゼチジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリニル基(例えば2−若しくは3−ピロリニル基)、ピロリジニル基、ピロリジノニル基、オキサゾリジニル基、オキサゾリジノニル基、ジオキソラニル基(例えば1,3−ジオキソラニル基)、イミダゾリニル基(例えば2−イミダゾリニル基)、イミダゾリジニル基、ピラゾリニル基(例えば2−ピラゾリニル基)、ピラゾリジニル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、ピラニル基(例えば2−若しくは4−ピラニル基)、ピラノニル基、ピペリジニル基、ピペリジノニル基、キヌクリジニル基、1,4−ジオキサニル基、モルホリニル基、モルホリノリル基、1,4−ジチアニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基、N−C1〜6アルキルピペラジニル基、ホモピペラジニル基、ジヒドロルフラン−2−オニル基、テトラヒドロピラン−2−オニル基、イソチアゾリジニル1,1−ジオキシド、[1,2]チアジアニル1,1−ジオキシド、テトラヒドロチオフェニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピラゾリジン−3−オニル基、テトラヒドロチオピラニル1,1−ジオキシド、テトラヒドロチオフェニル1,1−ジオキシド基、1,3,5−トリチアニル基、オキサジニル基(例えば2H−1,3−、6H−1,3−、6H−1,2−、2H−1,2−若しくは4H−1,4−オキサジニル基)、1,2,5−オキサチアジニル基、イソキサジニル基(例えばo−若しくはp−イソキサジニル基)、オキサチアジニル基(例えば1,2,5若しくは1,2,6−オキサチアジニル基)、又は、1,3,5,−オキサジアジニル基が挙げられる。
【0027】
前述のアルキル基、環式脂肪族基、又は複素環式脂肪族基上に存在してよい任意選択の置換基には、以下のものから選択される1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の置換基が含まれ、それぞれ同じものでも異なるものでもよい。即ち、ハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ヒドロキシ基(−OH)、チオール基(−SH)、アルキルチオ基、アミノ基(−NH)、置換型アミノ基、任意選択で置換されたC6〜12アリールアミノ基、−CN、−COH、−CO(Rは、任意選択で置換されたC1〜6アルキル基である)、−SOH、−SOR10(R10は、C1〜6アルキル基である)、−SO10、−SO10、−OCO10、−C(O)H、−C(O)R10、−OC(O)R10、−C(S)R10、−C(O)N(R11)(R12)(R11及びR12は、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又はC1〜6アルキル基である)、−OC(O)N(R11)(R12)、−N(R11)C(O)R12、−CSN(R11)(R12)、−N(R11)C(S)(R12)、−SON(R11)(R12)、−N(R11)SO12、−N(R11)C(O)N(R12)(R13)(R13は水素原子又はC1〜6アルキル基である)、−N(R11)C(S)N(R12)(R13)、−N(R11)SON(R12)(R13);任意選択で置換された芳香族基若しくは複素環式芳香族基;或いは、ハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アミノ基、置換型アミノ基、任意選択で置換された


又は、任意選択で置換された芳香族基若しくは複素環式芳香族基から選択される、同じ若しくは異なる原子若しくは基の1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上によって任意選択で置換されたC1〜6アルキル基である。置換型アミノ基には、−NHR10及び−N(R10)(R11)基が含まれる。
【0028】
環式脂肪族基は、利用可能な任意の環炭素原子によって、式(1)の化合物の残り部分に結合してもよい。複素環式脂肪族基は、利用可能な任意の環炭素原子、又は利用可能な場合は任意の環窒素原子によって、式(1)の化合物の残り部分に結合してもよい。
【0029】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を含むものとする。
【0030】
「ハロアルキル」という用語は、前述のハロゲン原子のうちの1つ、2つ、又は3つによって置換された前述のアルキル基を含むものとする。このような基の具体例としては、−CF、−CCl、−CHF、−CHCl、−CHF、及び−CHCl基が挙げられる。
【0031】
本明細書では「アルコキシ」という用語は、直鎖若しくは分枝のC1〜10アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシなどのC1〜6アルコキシを含むものとする。本明細書では「ハロアルコキシ」とは、前述のハロゲン原子のうちの1つ、2つ、又は3つによって置換されたアルコキシ基の任意のものを含む。具体例としては、−OCF、−OCCl、−OCHF、−OCHCl、−OCHF、及び−OCHCl基が挙げられる。
【0032】
本明細書では、「アルキルチオ」という用語は、直鎖若しくは分枝のC1〜10アルキルチオ、例えば、メチルチオ基やエチルチオ基などのC1〜6アルキルチオを含むものとする。
【0033】
「芳香族基」及び「アリール基」という用語は、例えば、任意選択で置換された、フェニル基など単環式のC6〜12芳香族基、又は、1−若しくは2−ナフチル基など二環が融合したC6〜12芳香族基を含むものとする。
【0034】
「複素環式芳香族基」及び「ヘテロアリール基」という用語は、例えば、任意選択で置換された、例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子から選択されるヘテロ原子を1つ、2つ、3つ、又は4つ有するC1〜9複素環式芳香族基(或いはその酸化型)を含むものとする。通常、複素環式芳香族基は、例えば、単環式の複素環式芳香族基でも、二環が融合した複素環式芳香族基でもよい。単環式の複素環式芳香族基には、例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子から選択されるヘテロ原子を1つ、2つ、3つ、又は4つ有する5員若しくは6員の複素環式芳香族基が含まれる。二環式の複素環式芳香族基には、例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子から選択されるヘテロ原子を1つ、2つ、又はそれ以上有する8〜13員の融合環の複素環式芳香族基が含まれる。
【0035】
これらの芳香族基又は複素環式芳香族基は、それぞれ、以下に定義するように、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のR16原子又は基によって任意選択で置換されてよい。
【0036】
このタイプの単環式の複素環式芳香族基の具体例としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、N−C1〜6アルキルイミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、テトラゾリル基、又はトリアジニル基が挙げられる。
【0037】
このタイプの二環式の複素環式芳香族基の具体例としては、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアゾリル基、インドリル基、インダゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾピラニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチルジニル基、ピリド[3,4−b]ピリジル基、ピリド[3,2−b]ピリジル基、ピリド[4,3−b]−ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、又はフタラジニル基が挙げられる。
【0038】
芳香族基又は複素環式芳香族基に存在してよい任意選択の置換基には、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の置換基が含まれ、それぞれR16原子又は基から選択される。R16は、−R16a又は−Alk(R16aであって、式中、R16aは、ハロゲン原子、又は、アミノ基(−NH)、置換型アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基(−OH)、置換型ヒドロキシル基、アミジノ基、ホルミル基、カルボキシル基(−COH)、エステル化カルボキシル基、チオール基(−SH)、置換型チオール基、−COR17(式中、R17は、−Alk(R16a、複素環式脂肪族基、環式脂肪族基、アリール基、若しくはヘテロアリール基である)、−CSR17、−SOH、−SOR17、−SO17、−SO17、−SONH、−SONHR17、SON(R17、−CONH、−CSNH、−CONHR17、−CSNHR17、−CON(R17、−CSN(R17、−N(R18)SO17、(式中、R18は水素原子若しくはC1〜6アルキル基である)、


−SONHet(式中、−NHetは、少なくとも1つのN原子を含み、また、任意選択で1つ又は複数の他の原子−O−若しくは−S−、又は、基−N(R18)−、−C(O)−若しくは−C(S)−を含む、任意選択で置換されたC3〜7複素環式脂肪族基である)、−CONHet、−CSNHet、−N(R14)SONHet、−N(R18)CONHet、−N(R18)CSNHet、−SON(R18)Het(式中、Hetは、1つ又は複数の原子−O−若しくは−S−、又は、基−N(R18)−、−C(O)−若しくは−C(S)−を任意選択で含む、任意選択で置換された単環式のC3〜7環式脂肪族基である)、−Het、−CON(R18)Het、−CSN(R18)Het、−N(R18)CON(R18)Het、−N(R18)CSN(R18)Het、或いは、任意選択で置換されたアリール基又はヘテロアリール基であり;Alkは、場合によっては1つ、2つ、又は3つの原子−O−若しくは−S−、又は基−S(O)(式中、gは整数の1若しくは2)若しくは−(N)(R18)−が割り込んだ、直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキレン鎖、C2〜6アルケニレン鎖、又はC2〜6アルキニレン鎖であり、;fは0又は整数の1、2、若しくは3である。2つのR17基又はR18基が上記の置換基のうちの1つの中に存在するとき、このR17基又はR18基は、同じものでも異なるものでもよいことを理解されたい。
【0039】
基−Alk(R16aにおいてfが整数1、2、又は3であるとき、1つ又は複数の置換基R16aは、−Alk中の任意の適切な炭素原子上に存在してよいことを理解されたい。複数の置換基R16aが存在する場合、これらは同じものでも異なるものでもよく、−Alk中の同じ原子上に存在しても異なる原子上に存在してもよい。fが0で、置換基R16aが存在しないときは、Alkで示される鎖が、対応する基になることは明らかである。
【0040】
16aが置換型アミノ基であるとき、それは、例えば、基−NHR17(R17は上記で定義済みである)でも、基−N(R17でもよく、R17基はそれぞれ同じ又は異なるものである。
【0041】
16aが置換型ヒドロキシル基又は置換型チオール基であるとき、それは、例えば、それぞれ基−OR17又は基−SR17でよい。
【0042】
基R16aで示されるエステル化カルボキシル基には、式−COAlk(式中、Alkは任意選択で置換されたアルキル基である)の基が含まれる。
【0043】
Alkが置換基中に又は置換基として存在するとき、それは、例えば、場合によっては1つ、2つ、又は3つの原子−O−若しくは−S−、又は基−S(O)−、−S(O)−、若しくは−N(R15)−が割り込んだ、メチレン鎖、エチレン鎖、n−プロピレン鎖、i−プロピレン鎖、s−ブチレン鎖、i−ブチレン鎖、s−ブチレン鎖、t−ブチレン鎖、エテニレン鎖、2−プロペニレン鎖、2−ブテニレン鎖、3−ブテニレン鎖、エチニレン鎖、2−プロピニレン鎖、2−ブチニレン鎖、又は3−ブチニレン鎖でよい。
【0044】
−NHet又は−Hetが置換基R16の一部を形成するときは、それぞれ、例えば、任意選択で置換された2−若しくは3−ピロリニル基、ピロリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、オキサゾリジニル基、又はチアゾリジニル基でよい。さらに、Hetは、例えば、任意選択で置換されたシクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示してもよい。−NHet又は−Het上に存在してよい任意選択の置換基には、芳香族基に関して前述した置換基群が含まれる。
【0045】
16で示される特に有用な原子又は基には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、若しくはヨウ素原子;C1〜6アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、若しくはt−ブチル基);任意選択で置換されたフェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フリル基、チアゾリル基、チエニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基、C1〜6ヒドロキシアルキル基(例えばヒドロキシメチル基若しくはヒドロキシエチル基)、カルボキシC1〜6アルキル基(例えばカルボキシエチル基)、C1〜6アルキルチオ基(例えばメチルチオ基若しくはエチルチオ基)、カルボキシC1〜6アルキルチオ基(例えばカルボキシメチルチオ基、2−カルボキシエチルチオ基、若しくは3−カルボキシプロピルチオ基)、C1〜6アルコキシ基(例えばメトキシ基若しくはエトキシ基)、ヒドロキシC1〜6アルコキシ基(例えば2−ヒドロキシエトキシ基);任意選択で置換されたフェノキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリオキシ基、フェニルチオ基、又はピリジルチオ基、C5〜7シクロアルコキシ基(例えばシクロペンチルオキシ基)、ハロC1〜6アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、ハロC1〜6アルコキシ基(例えばトリフルオロメトキシ基)、C1〜6アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基若しくはエチルアミノ基)、アミノ基(−NH)、アミノC1〜6アルキル基(例えばアミノメチル基若しくはアミノエチル基)、C1〜6ジアルキルアミノ基(例えばジメチルアミノ基若しくはジエチルアミノ基)、アミノC1〜6アルキルアミノ基(例えばアミノエチルアミノ基)、HetNC1〜6アルキルアミノ基(例えばモルホリノプロピルアミノ基)、C1〜6アルキルアミノC1〜6アルキル基(例えばエチルアミノエチル基)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルキル基(例えばジエチルアミノエチル基)、アミノC1〜6アルコキシ基(例えばアミノエトキシ基)、C1〜6アルキルアミノC1〜6アルコキシ基(例えばメチルアミノエトキシ基)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルコキシ基(例えばジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基、ジイソプロピルアミノエトキシ基、若しくはジメチルアミノプロポキシ基)、ヒドロキシC1〜6アルキルアミノ基(例えばヒドロキシエチルアミノ基)、フタルイミド基やナフタルイミド基(例えば1,8−ナフタルイミド基)などのイミド基、ニトロ基、シアノ基、アミジノ基、ホルミル基(HC(O)−)、カルボキシル基(−COH)、−COAlk(Alkは上記で定義済みである)、C1〜6アルカノイル基(例えばアセチル基)、任意選択で置換されたベンゾイル基、チオール基(−SH)、チオC1〜6アルキル基(例えばチオメチル基若しくはチオエチル基)、−SC(=NH)NH、スルホニル基(−SOH)、−SO18、C1〜6アルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基)、C1〜6アルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル基)、アミノスルホニル基(−SONH)、C1〜6アルキルアミノスルホニル基(例えばメチルアミノスルホニル基若しくはエチルアミノスルホニル基)、C1〜6ジアルキルアミノスルホニル基(例えばジメチルアミノスルホニル基若しくはジエチルアミノスルホニル基)、任意選択で置換されたフェニルアミノスルホニル基、カルボキサミド基(−CONH)、C1〜6アルキルアミノカルボニル基(例えばメチルアミノカルボニル基若しくはエチルアミノカルボニル基)、C1〜6ジアルキルアミノカルボニル基(例えばジメチルアミノカルボニル基若しくはジエチルアミノカルボニル基)、アミノC1〜6アルキルアミノカルボニル基(例えばアミノエチルアミノカルボニル基)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルキルアミノカルボニル基(例えばジエチルアミノエチルアミノカルボニル基)、アミノカルボニルアミノ基、C1〜6アルキルアミノカルボニルアミノ基(例えばメチルアミノカルボニルアミノ基若しくはエチルアミノカルボニルアミノ基)、C1〜6ジアルキルアミノカルボニルアミノ基(例えばジメチルアミノカルボニルアミノ基若しくはジエチルアミノカルボニルアミノ基)、C1〜6アルキルアミノカルボニルC1〜6アルキルアミノ基(例えばメチルアミノカルボニルメチルアミノ基)、アミノチオカルボニルアミノ基、C1〜6アルキルアミノチオカルボニルアミノ基(例えばメチルアミノチオカルボニルアミノ基若しくはエチルアミノチオカルボニルアミノ基)、C1〜6ジアルキルアミノチオカルボニルアミノ基(例えばジメチルアミノチオカルボニルアミノ基若しくはジエチルアミノチオカルボニルアミノ基)、C1〜6アルキルアミノチオカルボニルC1〜6アルキルアミノ基(例えばエチルアミノチオカルボニルメチルアミノ基)、−CONHC(=NH)NH、C1〜6アルキルスルホニルアミノ基(例えばメチルスルホニルアミノ基若しくはエチルスルホニルアミノ基)、C1〜6ジアルキルスルホニルアミノ基(例えばジメチルスルホニルアミノ基若しくはジエチルスルホニルアミノ基)、任意選択で置換されたフェニルスルホニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基(−NHSONH)、C1〜6アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えばメチルアミノスルホニルアミノ基若しくはエチルアミノスルホニルアミノ基)、C1〜6ジアルキルアミノスルホニルアミノ基(例えばジメチルアミノスルホニルアミノ基若しくはジエチルアミノスルホニルアミノ基)、任意選択で置換されたモルホリンスルホニルアミノ基若しくはモルホリンスルホニルC1〜6アルキルアミノ基、任意選択で置換されたフェニルアミノスルホニルアミノ基、C1〜6アルカノイルアミノ基(例えばアセチルアミノ基)、アミノC1〜6アルカノイルアミノ基(例えばアミノアセチルアミノ基)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルカノイルアミノ基(例えばジメチルアミノアセチルアミノ基)、C1〜6アルカノイルアミノC1〜6アルキル基(例えばアセチルアミノメチル基)、C1〜6アルカノイルアミノC1〜6アルキルアミノ基(例えばアセトアミドエチルアミノ基)、C1〜6アルコキシカルボニルアミノ基(例えばメトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、若しくはt−ブトキシカルボニルアミノ基)、任意選択で置換されたベンジルオキシ基、ベンジルアミノ基、ピリジルメトキシ基、チアゾリルメトキシ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノC1〜6アルキル基(例えばベンジルオキシカルボニルアミノエチル基)、チオベンジル基、ピリジルメチルチオ基、又はチアゾリルメチルチオ基が含まれる。
【0046】
望まれる場合は、2つの隣接したR16置換基は互いに結合して環状エーテル、例えば、メチレンジオキシ基やエチレンジオキシ基などの環状C1〜6アルキレンジオキシ基、又は、本明細書で定義したC3〜6シクロアルキル基若しくは3〜10員環の単環式の複素環式脂肪族基など環式の基を形成してよい。
【0047】
2つ以上のR16置換基が存在する場合は、これらは必ずしも同じ原子及び/又は基である必要はないことを理解されたい。通常、置換基は、芳香族基又は複素環式芳香族基中の利用可能な任意の環位置に存在してよい。
【0048】
10、R10a、R11、R11a、R12、R12a、R13、R13a、R14、又はR18がC1〜6アルキル基として存在するとき、それは、直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基などのC1〜3アルキル基でよい。
【0049】
式−CO、−CO9a、及び−COAlkのエステル基中に存在する任意選択で置換されたアルキル基の例としては、本明細書に記載のC1〜6アルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に存在してよい任意選択の置換基には、本明細書に定義した任意選択で置換された環式脂肪族基、芳香族基、又は複素環式芳香族基が含まれる。
【0050】
式(1)の化合物中に任意選択で置換されたアルキル基として存在するときのRは、先に定義した任意選択で置換された任意のアルキル基でよい。このような基の具体例としては、C1〜6アルキル基及び任意選択で置換されたC6〜12アリールC1〜6アルキル基、特に、メチル基、エチル基、及び任意選択で置換されたベンジル基が挙げられる。
【0051】
製薬上許容される対イオンとは、それが結合している物質の電荷と反対の電荷を有し、且つ製薬上許容されているイオンを意味する。代表的な例としては、それだけには限らないが、「Remingtonの製薬科学(Remington‘s Pharmaceutical Sciences)」、第17版、Mack Publishing Company、Easton、PA、1985年に記載されているような、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メタンスルホン酸塩、p−トリルスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩などが挙げられる。
【0052】
式(1)の化合物中にある種の置換基が存在すると、その化合物の塩の形成が可能となることがある。適切な塩には、薬剤として許容される塩、例えば、無機酸又は有機酸から誘導された酸付加塩、並びに、無機塩基及び有機塩基から誘導された塩が含まれる。
【0053】
酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩)、イソチオン酸塩、アリールスルホン酸塩(例えばp−トルエンスルホン酸塩、ベシル酸塩、ナプシル酸塩)、リン酸塩、硫酸塩、硫化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、及び安息香酸塩が含まれる。
【0054】
無機塩基又は有機塩基から誘導された塩には、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、マグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び、モルホリン塩、ピペリジン塩、ジメチルアミン塩、若しくはジエチルアミン塩などの有機アミン塩が含まれる。
【0055】
本発明による化合物の特に有用な塩には、薬剤として許容される塩、特に薬剤として許容される酸付加型塩が含まれる。
【0056】
式(1)の化合物の1つのグループにおけるAlkは、C1〜3アルキレン鎖、特に、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、より具体的には−CH−であることが好ましい。
【0057】
或いは、式(1)の化合物の別のグループにおけるAlkは、共有結合である。
【0058】
式(1)の化合物において、m及びnは同じものでも異なるものでもよく、特に、それぞれ0又は整数1である。特に、m及びnはそれぞれ整数1である。
【0059】
及びRは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又は直鎖若しくは分枝のC1〜3アルキル基、特にメチル基であることが好ましい。本発明の化合物の1つの特定のグループでは、R及びRはそれぞれ水素原子である。本発明の化合物の別の特定のグループでは、Rが水素原子であり、Rがメチル基である。
【0060】
本発明の化合物の1つの特定のグループにおけるRは、メチル基やエチル基などのC1〜3アルキル基、特にメチル基である。
【0061】
本発明の化合物の1つのグループは、式(1)を有し、式中のDは、任意選択で置換されたフェニル基、1−若しくは2−ナフチル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、N−C1〜6アルキルイミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、テトラゾリル基、トリアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアゾリル基、インドリル基、インダゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾピラニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチルジニル基、ピリド[3,4−b]ピリジル基、ピリド[3,2−b]ピリジル基、ピリド[4,3−b]−ピリジル基、キノリニル基、又はイソキノリニル基から選択される。
【0062】
より具体的な基Dには、任意選択で置換されたフェニル基、1−若しくは2−ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチルジニル基、キノリニル基、又はイソキノリニル基が含まれる。Dは、特に、任意選択で置換されたピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、N−C1〜6アルキルイミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、又はイソチアゾリル基でもよい。
【0063】
式(1)の化合物の1つのグループにおいては、Dは特に、任意選択で置換されたフェニル基又はチエニル基である。
【0064】
基D上に存在してよい具体的な置換基は、フッ素、塩素、臭素、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝のC1〜3アルキル基(式中、任意選択のアルキル置換基は、特に、任意選択で置換されたフェニル基、又は単環式ヘテロアリール基、特にピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フリル基、チアゾリル基、若しくはチエニル基である)、任意選択で置換されたフェニル基、単環式ヘテロアリール基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、メトキシ基、フェノキシ基、ピリジルオキシ基、ベンゾイル基、ピリドイル基、又は、COCH、OCF、OCFH、CF、NO、NH、NHCH、N(CH、CONH、CONHCH、CON(CH、COCH、COCHCH、COH、−CN、−SCH、−SCHCH、−SOCHから選択される1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の原子又は基であり、或いは、2つの隣接した置換基が互いに結合してメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、又はシクロペンチル基を形成してもよい。このタイプの化合物中の単環式ヘテロアリール置換基は、特に、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フリル基、チアゾリル基、又はチエニル基から選択される。
【0065】
より具体的な置換基Dは、フッ素、塩素、CF、メチル基、エチル基、メトキシ基、OCFH、OCF、又は任意選択で置換されたフェニル基、単環式ヘテロアリール基、特にピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フリル基、チアゾリル基、チエニル基、フェノキシ基、ピリジルオキシ基、若しくは−SCHから選択される。特に有用な置換基Dには、フッ素、塩素、CF、メチル基、エチル基、メトキシ基、−SCH、又は任意選択で置換されたフェニル基若しくはフェノキシ基が含まれる。これらのアリール基又はヘテロアリール基上に特に存在してよい任意選択の置換基は、フッ素、塩素、臭素、直鎖若しくは分枝のC1〜3アルキル基、メトキシ基、OCF、OCFH、CF、CN、NO、NH、NHCH、N(CH、CONH、CONHCH、CON(CH、COCH、COCHCH、COHから選択される1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の原子又は基である。
【0066】
基Dの具体例としては、3,4−ジクロロベンゼン基、3−若しくは4−クロロベンゼン基、3−若しくは4−トリフルオロメチルベンゼン基、3−若しくは4−エチルベンゼン基、3,5−ビストリフルオロメチルベンゼン基、3−若しくは4−メチルスルファニルベンゼン基、又は5−フェニルチエン−2−イル基が挙げられる。本発明の化合物の1つのグループでは、Dは、3−エチルベンゼン基、3−トリフルオロメチルベンゼン基、又は5−フェニルチエン−2−イル基から選択される基である。
【0067】
化合物の1つのグループは、式(1)を有し、式中のEは、任意選択で置換されたシクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、又はビシクロ[3.1.1]ヘプテニルから選択される。
【0068】
基E上に存在してよい具体的な置換基は、ヒドロキシ基、又は任意選択で置換されたフェニル基若しくは単環式複素環式芳香族基、CONH、CONHCH、CON(CH、COCH、COCHCH、COH、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基若しくはC2〜6アルケニル基(式中、任意選択のアルキル若しくはアルケニルの置換基は、特に、任意選択で置換されたフェニル基若しくは単環式複素環式芳香族基である)から選択される1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の基である。任意選択で置換されたC1〜6アルキル基若しくはC2〜6アルケニル基の具体例としては、


が挙げられる。
【0069】
化合物の1つの好ましいグループは、Eが1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のメチル基で置換されているものである。
【0070】
本発明の化合物の1つの特定のグループにおけるEは、1−シクロオクテニル基、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イル基、アダマンチル基、又はシクロオクチル基である。本発明の化合物の1つのグループにおいて、Eは、特に、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イル基である。
【0071】
式(1)の化合物の環式脂肪族基又は複素環式脂肪族基上、特に、基D又は基Eの置換基上に存在してよい、1つの特定のグループの任意選択の置換基は、


、又は、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝のC1〜3アルキル基(任意選択のアルキル置換基は、特に、


である)から選択される1つ、2つ、又は3つの基である。
【0072】
式(1)の化合物上、特に、基D又は基Eの置換基上に存在してよい具体的な芳香族置換基又は複素環式芳香族置換基は、フッ素、塩素、臭素、直鎖若しくは分枝の


から選択される1つ、2つ、又は3つの原子又は基である。
【0073】
本発明による化合物は、CCR3などの他のケモカイン受容体と比べてCXCR3受容体を示差的に阻害することから実証されているように、CXCR3受容体に結合するケモカインの強力且つ選択的な阻害物質である。この化合物のこのような作用の能力は、以下の実施例で記述するような試験を実施することによって簡単に決定することができる。
【0074】
この化合物は、ケモカイン媒介性の細胞シグナル伝達の調節に有用であり、特にT細胞の不適切な輸送を伴う疾患又は障害の予防及び/又は治療に有用である。本発明は、そのような用途、及び、このような疾患及び障害を治療するための医薬品を製造するために式(1)の化合物を使用することに拡大適用される。具体的な疾患としては、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び免疫調節異常が挙げられる。
【0075】
本発明の化合物を適用してよい具体的な用途には、(1)全身性アナフィラキシー、過敏性反応、薬物アレルギー、昆虫刺傷によるアレルギーなどの炎症性疾患又はアレルギー性疾患;クロン病、潰瘍性の大腸炎、回腸炎、腸炎など炎症性の腸疾患、;膣炎;乾癬、及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんま疹など炎症性の皮膚疾患;血管炎;脊椎関節炎;強皮症;喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患など呼吸器のアレルギー性疾患、(2)関節炎(リウマチ及び乾癬)、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、糖尿病、糸球体腎炎などの自己免疫疾患、(3)移植片拒絶反応(同種移植片拒絶反応及び移植片対宿主病を含む)、並びに、(4)疾患で起こる望ましくない炎症性反応を阻害できる他の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、筋肉炎、神経変性疾患、アルツハイマー病、腸炎、髄膜炎、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、結膜炎、耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎、ベーチェット症候群、シェーグレン症候群、及び糸球体腎炎などが含まれる。
【0076】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、病因とは関係なく、前述の例示的な疾患の治療に、例えば、多発性硬化症、乾癬、リウマチ様関節炎、同種移植片拒絶反応及び移植片対宿主疾患の治療に有用である。
【0077】
式(1)の化合物は、単独で使用することも、喘息及びアレルギー性疾患だけでなく、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、アテローム性動脈硬化症など自己免疫性の病態及び本明細書で記載した病態を含めて、炎症性で免疫調節に関する異常及び疾患を予防及び治療する上で関連した有用性を有する他の化合物と併用することもできる。
【0078】
疾患を予防又は治療するために、本発明の化合物を薬剤組成物として投与することができる。本発明の別の態様によれば、本発明者らは、式(1)の化合物を、1種又は複数の製薬上許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とともに含む薬剤組成物を提供する。
【0079】
本発明の代替組成物は、式(1)の化合物又はその塩、免疫抑制剤又は抗炎症剤から選択される追加の薬剤、及び製薬上許容される任意の担体、佐剤、又はビヒクルを含む。
【0080】
本発明の薬剤組成物は、経口投与、口腔内投与、非経口投与、経鼻投与、局所投与、経膣投与、又は直腸投与に適した形態、或いは、吸入又は通気による投与に適した形態を取ることができる。
【0081】
経口投与の場合は、薬剤組成物は、結合剤(例えばアルファ化コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、若しくはリン酸水素カルシウム)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、若しくはシリカ)、崩壊剤(例えばポテトスターチ若しくはグリコール酸ナトリウム)、又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)など製薬上許容される賦形剤とともに従来手段によって調製した、例えば、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態を取ることができる。錠剤は、当技術分野で公知の手段によって被覆してよい。経口投与用の液状製剤は、例えば、液剤、シロップ剤、又は懸濁剤の形態を取ることができ、或いは、使用前に水若しくは適切な他のビヒクルに溶解するための乾燥製品として提供してもよい。このような液状製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、保存剤など製薬上許容される添加剤を用いて従来の手段によって調製することができる。製剤は、緩衝塩、矯味剤、着色剤、及び甘味剤を適宜含んでもよい。
【0082】
活性化合物が制御放出されるように経口投与用製剤を適切に配合してもよい。
【0083】
口腔内投与の場合は、組成物は、従来の方法で配合した錠剤又はトローチ剤の形態を取ることができる。
【0084】
式(1)の化合物は、注射、例えばボーラス注射若しくは輸液などによる非経口投与用に配合することができる。注射用の製剤は、単位投与形態で、例えば、ガラスアンプルに入れても、或いは複数回投与用の容器、例えば、ガラスバイアル瓶に入れて提供してもよい。注射用の組成物は、油性ビヒクル若しくは水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、又は乳濁剤などの形態を取ることができ、また、懸濁化剤、安定化剤、保存剤、及び/又は分散化剤などの配合用薬剤を含んでよい。或いは、有効成分は、適切なビヒクル、例えば、滅菌したパイロジェンフリー水に使用前に溶解させるための散剤の形態でもよい。粒子による投与の場合は、式(1)の化合物で、微小な金粒子などの粒子表面をコーティングしてよい。
【0085】
前述の製剤に加えて、式(1)の化合物を、デポ製剤として配合することもできる。このような長期間作用型の製剤は、埋め込みによって又は筋肉内注射によって投与することができる。
【0086】
経鼻投与又は吸入による投与の場合は、本発明に従って使用する化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガス、又は他の適切なガス若しくはガス混合物を用いて、加圧缶又はネブライザー用の状態にしたエアロゾルスプレーの形態で好都合に送達される。
【0087】
経膣投与又は直腸投与の場合は、式(1)の化合物を、坐剤として配合することができる。これらの製剤は、有効成分を、室温では固体であるが体温で液体となる適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製することができる。このような材料には、例えば、ココアバター、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0088】
組成物は、望むなら、有効成分を含む1回投与量の製剤又は複数回投与量の製剤を含むことができるパック又は計量分配装置に入れて提供してもよい。パック又は計量分配装置に、投与説明書を添付してもよい。
【0089】
具体的な状態の予防又は治療に必要な本発明の化合物の量は、選択する化合物、及び治療対象の患者の状態によって変わる。しかし、通常、1日投与量は、約100ng/kg体重〜100mg/kg体重、例えば、経口投与若しくは口腔内投与では約0.01mg/kg〜40mg/kg体重、非経口投与では約10ng/kg体重〜50mg/kg体重、経鼻投与又は吸入若しくは通気による投与では約0.05mg〜約1000mg、例えば、約0.5mg〜約1000mgの範囲でよい。
【0090】
本発明の化合物は、以下に概略を記述するような、より詳細には以下の実施例におけるいくつかのプロセスによって調製することができる。ここに記述する反応の多くは、様々な化合物に適用することができ、また、本発明の化合物を生成するだけでなく、必要であればそれまでの中間体も生成することができる、公知の標準的な合成方法である。
【0091】
以下のプロセスの記述において、示した式で使用する記号D、E、Alk、n、m、R、Y、R、及びRは、別段の指示がない限り、式(1)に関係する前述の基を示すものと理解されたい。以下に記述する反応において、反応性の官能基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオ基、又はカルボキシ基が最終産物中で必要な場合に、反応物中でそれらの望ましくない反応への関与が起こるのを避けるために、これらを保護することが必要なことがある。通常の保護基を、標準実施法(例えば、Green,T.W.「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、John Wiley and Sons、(1999年)及び本明細書の実施例を参照のこと)に従って使用することができる。いくつかの場合では、脱保護が、式(1)の化合物の合成における最終ステップとなることがあり、以下に記述する本発明によるプロセスは、このような保護基の除去にも拡大適用されるものと理解されたい。
【0092】
したがって、本発明の別の態様によれば、式(1)の化合物は、反応式Aで示す通常の方法を用いて、一般式(i)のアミンから調製することができる。
【化2】

【0093】
即ち、式(1)の化合物は、式(2)の化合物を、例えば室温で、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、又はアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールなどの溶媒或いはこれらの溶媒の混合物中で、ハロゲン化アルキル、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、又は臭化ベンジルなどのハロゲン化ベンジルのようなアルキル化剤と反応させることによって形成させることができる。
【0094】
式(2)の化合物及びそれに続く任意の中間体は、当業者には既知の方法を用いて、又は、以下に記述する方法を用いて調製することができる。
【0095】
即ち、式(2)の化合物(Rは水素原子で、Rは本明細書で定義するものである)は、反応式Bで示す通常の方法を用いて、一般式(i)のアミンから調製することができる。
【化3】

【0096】
即ち、式(i)のアミンを、ほぼ室温で、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタンなどの溶媒中で、アミン塩基、例えばトリエチルアミン若しくはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下で、一般式(ii)のイソシアネートと反応させて、一般式(2)の化合物を生成させることができる。
【0097】
一般式(i)のアミンは、以下に示す一般的な反応式Cを用いて調製することができる。
【化4】

【0098】
即ち、一般式(iii)のアミン(Pは適切な保護基、例えばtert−ブトキシカルボニルである)を、式E−Alk−Xの化合物(v)(Xは、適切な脱離基(例えば、塩素や臭素などのハロゲン、又は、p−トルエンスルホネートなどのアリールスルホニルオキシ基)である)と反応させて、一般式(vi)の化合物を生成させることができる。この反応は、ほぼ室温で、例えばアセトニトリル又はN,N−ジメチルホルムアミドの還流液中で、炭酸カリウムなどの塩基の存在下で実施することができる。
【0099】
或いは、一般式(vi)の保護されたアミンは、式E−Alk3bの化合物(iv)(Alk3bはAlkの適切な前駆体であり、例えば、Alk3bは反応性カルボニルなどの反応性基を含む)を用いて、式(iii)の化合物を還元的にアルキル化することによって調製することができる。この反応は、当業者に既知の方法を用いて実現することができる。例えば、Alk3bがアルデヒドであるとき、適切な条件は、ほぼ室温で、必要であれば酢酸などの酸の存在下で、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、又はアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールなどの溶媒中で、還元剤として適切な水素化ホウ素、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用することを含んでよい。オルトギ酸エステル、例えばオルトギ酸トリエチル又はオルトギ酸トリメチルなどの脱水剤も反応に使用してよい。
【0100】
式(v)の化合物は、当業者に既知の標準の方法を用いて、一般式E−Alk−OHのアルコール(vii)から調製することができる。例えば、Xがアリールスルホン酸エステルであるとき、これは、アルコール(vii)を、ジクロロメタンやテトラヒドロルフランなど適切な溶媒中で、アミン塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で、p−トルエンスルホニルクロライドと反応させることによって調製することができる。
【0101】
式(vii)の化合物は、本明細書で記述するような標準の酸化条件を用いて、式(iv)の化合物を調製するのにも使用してよい。
【0102】
式(vi)の中間体化合物を標準の方法、例えば、トリフルオロ酢酸や塩酸などの酸で処理することにより脱保護して、一般式(i)のアミン出発物質(Rは水素原子である)を生成させることができる。これを、本明細書に記述する方法など当業者に既知の標準の技術を用いてアルキル化し、式(vi)のアミン(Rはアルキル基である)を生成させることができる。
【0103】
式(2)の化合物(Rは水素原子であり、Rは本明細書で定義するものである)は、反応式Dで示す通常の方法によって、調製することもできる。
【化5】

【0104】
即ち、式(viii)のイソシアネートを、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタンなどの溶媒中で、アミン塩基、例えばトリエチルアミン若しくはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下で、式(ix)のアミンと反応させて、一般式(2)の化合物を生成させることができる。
【0105】
式(2)の化合物を調製する反応の順序が変えられることもさらに理解されたい。したがって、例えば、式(x)のアミン
【化6】


(式中のPは上記で定義済みである)を前述の反応を用いて一般式(ii)のイソシアネートと反応させて、式(xi)の化合物を生成させることができる。或いは、式(x)のアミン(Rは水素原子である)を、例えば、当業者に既知の条件でトリホスゲンやクロロギ酸トリクロロメチルなど適切な試薬を用いてイソシアネートに変換し、それに続いて式(ix)のアミンと反応させることができる。得られる式(xi)の尿素を、
【化7】


当業者に既知の方法を用いて脱保護し、本明細書で記述する方法などの標準技術を用いて、一般式(iv)又は(v)の化合物と反応させることができる。
【0106】
式(1)又は(2)の化合物の合成は、当業者には公知のコンビナトリアル合成法やパラレル合成法など高スループットの方法によって行うことができる。
【0107】
式(i)〜(xi)の中間体、及び式(1)の化合物を得るのに必要な他の任意の中間体は、市販されていなくても、「Roddの炭素化合物の化学(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)、1〜15巻及び補遺(Elsevier Science Publishers、1989年)」、「Fieser及びFieserの有機合成のための試薬(Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis)、1〜19巻(John Wiley and Sons、1999年)」、「複素環式化合物の化学全書(Comprehensive Heterocyclic Chemistry)、Katritzky他編、1〜8巻、1984年、及び1〜11巻、1994年(Pergamon)」、「有機官能基変換全書(Comprehensive Organic Functional Group Transformations)、Katritzky他編、1〜7巻、1995年(Pergamon)」、「有機合成全書(Comprehensive Organic Synthesis)、Trost及びFlemming編、1〜9巻(Pergamon、1991年)」、「有機合成用試薬百科事典(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)、Paquette編、1〜8巻(John Wiley and Sons、1995年)」、「Larockの有機変換全書(Larock’s Comprehensive Organic Transformations)(VCH Publishers Inc.、1989年)」、及び「Marchの上級有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry)(John Wiley and Sons、1992年)」などの参考文献で発表されている手順に従い、当業者に既知の方法によって調製することができる。
【0108】
例えば、一般式(ii)又は(viii)のイソシアネートは、適切なアミン前駆体を、当業者に既知の条件でトリホスゲンやクロロギ酸トリクロロメチルなど適切な試薬と反応させることによって調製することができる。
【0109】
式(i)、(iii)、(ix)、又は(x)のアミン前駆体は、市販されていないときは、公知の文献の方法を用いて調製することができる。
【0110】
式(1)の化合物、又は先行する任意の中間体は、置換反応、酸化反応、還元反応、又は開裂反応を使用する1種又は複数の標準の合成方法によってさらに誘導体化できることを理解されたい。具体的な置換手法には、従来のアルキル化、アリール化、ヘテロアリール化、アシル化、チオアシル化、ハロゲン化、スルホン化、ニトロ化、ホルミル化、及びカップリングの手順が含まれる。これらの方法を、適切な官能基がその中に存在する式(1)の他の化合物を得、又は修飾するのに使用してよいことも理解されたい。
【0111】
例えば、エステル基を、エステルの性質に応じて酸触媒又は塩基触媒を用いて加水分解することにより、対応する酸[−COH]に変換することができる。酸触媒又は塩基触媒による加水分解は、例えば、有機酸又は無機酸、例えば水性溶媒中のトリフルオロ酢酸やジオキサンなどの溶媒中の塩酸などの無機酸、或いは、水溶性アルコール、例えば水溶性メタノール中のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウムで処理することによって実現することができる。同様に、酸[−COH]を、例えば、エタノールなどのアルコール溶媒を還流させた中で水酸化ナトリウムなどの塩基を使用して対応するニトリル[−CN]を加水分解することによって、調製することもできる。
【0112】
別の実施例では、−OH基を、例えば、メタノールなどの溶媒中でリチウムアルミニウム水素化物や水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素錯化合物を使用して、還元により、対応するエステル又はアルデヒド[−CHO]から生成させることができる。或いは、アルコールを、テトラヒドロフランなどの溶媒中で例えばリチウムアルミニウム水素化物を使用して、対応する酸[−COH]を還元することによって調製することもできる。
【0113】
アルコール基を、当業者に既知の条件を用いて、ハロゲン原子、又は、アルキルスルホニルオキシ基(例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシ基)やアリールスルホニルオキシ基(例えばp−トルエンスルホニルオキシ基)などのスルホニルオキシ基のような脱離基に変換することができる。例えば、アルコールを、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン中で塩化チオニルと反応させて、対応する塩化物を生成させることができる。塩基、例えばトリエチルアミンもこの反応に使用してよい。
【0114】
アルデヒド基[−CHO]を、公知の条件で対応するアルコールを酸化することによって得ることができる。例えば、ペルヨージナン、例としてDess Martinなどの酸化剤を、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン溶媒中で使用する。代替の酸化法では、例えば、塩化オキサリルを用いてジメチルスルホキシドを適切に活性化し、次にアルコールを加え、続いてトリエチルアミンなどのアミン塩基を添加して反応を停止させる。この反応に適切な条件は、適切な溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素、例としてジクロロメタンを−78℃で使用した後、続いて室温まで温めることでよい。
【0115】
α,β−不飽和アルデヒド、例えば、式OHCE(Eはシクロアルケニルである)は、対応するアリルニトロ化合物を加水分解することによって、調製することができる。これは、例えば、アリルニトロ化合物を、ナトリウムメトキシドやカリウムtert−ブトキシドなどの塩基で処理し、続いて緩衝処理した三塩化チタン水溶液を加えることによって実現することができる。アリルニトロ化合物は、ニトロメタンを対応するケトンに求核付加させ、続いて水を除去することによって、調製することができる。この反応に適切な条件は、N,Nジメチルエチレンジアミンなどのアミン塩基の存在下で、Dean Stark条件下でトルエン中で還流させることとしてよい。これらのアルデヒドを、本明細書に記載する条件を用いて、還元的アルキル化で使用して式(1)(Alkは−CH−である)の化合物を生成させることができることを理解されたい。
【0116】
別の実施例では、一級アミン基(−NH)又は二級アミン基(−NH−)を、ほぼ室温で、必要であれば酢酸などの酸の存在下で、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、アセトンなどのケトン、又はエタノールなどのアルコールなどの溶媒中で、アルデヒド、及び水素化ホウ素、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム若しくはシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用する還元的アルキル化プロセスを用いて、アルキル化することができる。
【0117】
別の実施例では、アミン基[−NH]を、室温で、アルコール、例えばエタノールなどの溶媒中で、対応するイミドをヒドラジンと反応させることにより、加水分解によって得ることができる。
【0118】
別の実施例では、ニトロ基[−NO]を、例えば、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、又はアルコール、例えばエタノールなどの溶媒中で、金属触媒、例えばカーボンなどの支持体上のパラジウムの存在下で例えば水素を使用する、触媒を用いた水素化によって、或いは、塩酸などの酸の存在下で例えばスズや鉄などの金属を使用して化学的還元を行うことによって、アミン[−NH]に還元することができる。
【0119】
別の実施例では、アミン基(−CHNH)を、例えば、場合によっては、室温から還流温度までの温度で、アンモニア溶液の存在下で、エーテル、例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、又はアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールなどの溶媒中で、金属触媒、例えばカーボンなどの支持体上のパラジウム若しくは「Raney(商標)」ニッケルの存在下で、例えば水素を使用する、接触水素化により、或いは、0℃から還流温度までの温度で、エーテル、例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなどの溶液中で、例えば金属水素化物、例として、リチウムアルミニウム水素化物を使用して化学的還元を行うことにより、ニトリル(−CN)を還元することによって得ることができる。
【0120】
化合物中の芳香族のハロゲン置換基を、テトラヒドロフランなどの溶液中で、場合によっては低温、例えば約−78℃で、塩基、例えば、n−ブチルリチウムやt−ブチルリチウムなどのリチウム塩基とのハロゲン金属交換反応にかけ、次に、求電子試薬によって反応を停止させ、所望の置換基を誘導することができる。即ち、例えば、ホルミル基を、求電子試薬としてジメチルホルムアミドを用いることによって誘導することができ、チオメチル基を、求電子試薬としてジメチルジスルフィドを用いることによって誘導することができる。
【0121】
式(1)の化合物のN−オキシドを、例えば、高温、例えば約70〜80℃で酢酸などの酸の存在下で、過酸化水素などの酸化剤を使用して対応する窒素塩基を酸化させることにより、又はその代わりに、室温で溶媒、例えばジクロロメタン中で過酢酸などの過酸と反応させることにより、調製することができる。
【0122】
式(1)の化合物の塩は、式(1)の化合物を、従来の手順を用いて、適切な溶媒又は溶媒の混合物、例えば、ジエチルエーテルなどのエーテルやエタノールなどのアルコールのような有機溶媒、又は水性溶媒中で、適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。式(1)の化合物の塩を、従来のイオン交換クロマトグラフィー法を用いて、他の塩と交換することができる。
【0123】
式(1)の化合物の特定の鏡像異性体を得ることが望まれる場合、これを、鏡像異性体.を分離する適切な従来の手順のいずれかを用いて、対応する鏡像異性体の混合物から生成させることができる。
【0124】
したがって、例えば、ジアステレオマー誘導体、例えば塩は、式(1)の鏡像異性体の混合物、例えばラセミ体と、適切なキラル化合物、例えばキラル塩基とを反応させることによって、調製することができる。次いで、ジアステレオマーを、任意の従来手段、例えば、結晶化によって分離し、所望の鏡像異性体を、例えば、ジアステレオマーが塩であるような場合には酸で処理することによって、回収する。
【0125】
別の分割プロセスでは、式(1)のラセミ体を、キラル高速液体クロマトグラフィーを用いて分離することができる。或いは、望むなら、特定の鏡像異性体を、前述のプロセスのうちの1つにおいて適切なキラル中間体を使用することによって得ることができる。
【0126】
本発明の特定の幾何異性体を得ることが望まれる場合は、中間体又は最終産物に対して、クロマトグラフィー、再結晶、及び他の従来の分離手順を使用することもできる。
【0127】
以下の実施例は、本発明を例示するものである。すべての温度の単位は℃である。試薬調製の実験詳細を示していない場合、それらは、市販されているか、又は文献で知られており、それらのCAS登録番号を引用する。これらの化合物を、MDL Information Systems GmbH(Theodor−Heuss−Allee 108、D−60486 フランクフルト、ドイツ)が提供するBeilstein Autonomを用いて命名する。
【実施例】
【0128】
別段の指示がない限り、H NMRスペクトルは、300MHz又は400MHzで得た。
【0129】
以下のLCMS条件を使用して、本明細書に報告する保持時間を得た。
LCMS条件:
HP1100(ダイオードアレイ)をFinnigan LcQ Duo質量分析装置に連結。
カラム:Luna C18(2)100×4.6mm、粒子サイズ5μnの分析用カラム
カラム温度:35℃
移動相: A:HO中0.08%ギ酸
B:MeCN中0.08%ギ酸
流速:3ml/分
勾配:時間(分):Bの組成比(%)
0.0 95.0
4.40 5.0
5.30 5.0
5.32 95.0
6.50 95.0
実行時間: 6.50分
通常の注入量:10μl
検出波長:210nm

予備的LC条件(HPLC):
MassLynxセットアップ
カラム:Luna C18(2)100×21.2mm、粒子サイズ5μnのPREP
カラム温度:室温
移動相: A:水+0.08%ギ酸
B:アセトニトリル+0.08%ギ酸
勾配:LCMSスクリーン中での試料の保持に応じて可変
実行時間:10分
流速:20ml/分
通常の注入量:20mg/ml溶液を0.8ml
検出波長:210nm及び254nm

使用する略語:
DCM−ジクロロメタン THF−テトラヒドロフラン
MeOH−メタノール EtOAc−酢酸エチル
TFA−トリフルオロ酢酸 BOC−tert−ブトキシカルボニル
CDCl−重水素化クロロホルム DMSO−d−重水素化ジメチルスルホキシド
メタノール−d−重水素化メタノール DMF−N,N−ジメチルホルムアミド
【0130】
中間体1
[1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
ピペリジン−4−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステルハイドロクロライド[CAS No.73874−95−0](1.63g)をDCM(20ml)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(1.44ml)及びオルトギ酸トリメチル(20ml)を加えた。6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−カルバルデヒド[CAS No.18486−69−6](1.26ml)を加え、その混合物を30分間攪拌し、次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.8g)を加え、その混合物を室温で一晩攪拌した。この溶液を、炭酸水素ナトリウム(20ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させて淡黄色の油を得た(2.91g)。シリカカラムクロマトグラフィー(5%MeOH/DCM)で精製すると、無色の固体として表題の化合物が得られた(1.75g)。
保持時間 2.25分、M+H 335
【0131】
中間体2
1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イルアミンビスヒドロクロリド
中間体1(1.75g)をMeOH(2.5ml)中に溶解し、ジエチルエーテル中HCl溶液(20ml、1.0M)を加えた。室温で一晩攪拌した後、濾過により白い沈殿物を回収し、表題の化合物を得た(1.44g)。
保持時間 1.17分、M+H 235
【0132】
中間体3
[1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]メチルアミン
中間体1(368mg)をTHF(5.0ml)中に溶解し、0℃まで冷却した。THF中LiAlH溶液(14ml、1.0M)を加え、この反応混合物を室温で一晩攪拌した。イソプロパノール(約5ml)を注意深く加え、続いてHO(0.156ml)、15%NaOH(0.156ml)、及びHO(0.469ml)を加えた。1時間攪拌後、灰色の沈殿物を濾過して取り除き、濾液を濃縮して、黄色い油として表題の化合物を得た(250mg)。
保持時間 1.10分、M+H 249
【0133】
中間体4
1−[1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−3−(3−エチルフェニル)尿素
DCM(10ml)中の中間体2(614mg)及びジイソプロピルアミン(0.70ml)の冷却した溶液(−78℃)に、3−エチルフェニルイソシアナート(300mg)を加え、続いて、室温で一晩攪拌した。この反応混合物を炭酸水素ナトリウム(20ml)、及び塩水(20ml)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、蒸発させた。残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(5%MeOH/DCM)で精製すると、無色の固体として表題の化合物が得られた(600mg)。
保持時間 2.38分、M+H 382
【0134】
中間体5
1−[1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)尿素
トリフルオロメタトリルイソシアネート(38mg)に、乾燥DCM中の中間体3溶液(1.0ml、0.2M)を加えた。反応混合物を濃縮し、分取HPLCで精製することによって表題の化合物を得た(32mg)。
保持時間 2.46分、M+H 436
【0135】
中間体6の化合物を、中間体5と同様の方法で調製した。
【0136】
中間体6
1−[1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−3−(5−フェニルチオフェン−2−イル)尿素
5−フェニル−2−チエニルイソシアネート(40mg)及び乾燥DCM中の中間体3溶液(1.0ml、0.2M)から得た(42mg)。
保持時間 2.54分、M+H 450
【0137】
(実施例1)
1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)−4−[3−(3−エチルフェニル)−ウレイド]−1−メチルピペリジニウム;ヨウ化物
中間体4を、乾燥ジエチルエーテル(2ml)に溶解し、ヨードメタン(1ml)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。生じた沈殿物を濾過して分離し、白色の固体として表題の化合物を得た(8mg)。
保持時間 2.49分、M396
【0138】
実施例2〜3の化合物を、実施例1の化合物と同様の方法で調製した。
【0139】
(実施例2)
1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)−1−メチル−4−[1−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]ピペリジニウム;ヨウ化物
中間体5(4mg)から。3mg生成。
保持時間 2.53分、M450
【0140】
(実施例3)
1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イルメチル)−1−メチル−4−[1−メチル−3−(5−フェニルチオフェン−2−イル)ウレイド]ピペリジニウム;ヨウ化物
中間体6(7.5mg)から。5mg生成
保持時間 2.67分、M464
【0141】
生物学的分析
本発明の化合物の活性及び選択性を実証するために、以下の分析を使用した。
【0142】
ケモカインカルシウム分析
ケモカインのその受容体への結合の阻害を判定するために、以下の分析を使用することができる。
【0143】
ヒトCXCR3で安定的にトランスフェクトしたCHO細胞を96ウェル、黒色、透明ボトムの組織培養プレートに蒔き、5%COの存在下、37℃で一晩インキュベートした。培養培地を穏やかにウェルから除去し、3μM Fluo−4及び0.03%プルロン酸を含む洗浄バッファー(ハンクス液、0.2%BSA及び20mM HEPESを含む、pH 7.2)で置き換えた。このプレートを1〜2時間、37℃でインキュベートし、静かに洗浄し、ウェル当たり100μlの洗浄バッファーを加えた。
【0144】
試験化合物をDMSO中に溶解し、さらに、洗浄バッファー中で希釈して、DMSO濃度を0.8%にした(「FLIPR(登録商標)」中の分析プレートに加えるときは0.2%まで薄めた)。
【0145】
「FLIPR(登録商標)」(Molecular Devices)を用いて、分析を実施した。化合物を、10秒のベースライン後に分析プレートに加えた。希釈したヒト組換えITAC、IP−10、又はMIGをさらに2分後に加えた。化合物の活性を、対照のDMSO溶媒での阻害に対する比率として計算した。
【0146】
本発明の化合物、例えば、実施例の化合物は、ITAC、IP−10、又はMIGがそれらの受容体(CXCR3)に結合するのを、5μmで50%超の活性で阻害することができる。この分析では、本発明のほとんどの活性化合物のIC50値は約1μM以下である。
【0147】
上記の分析は、CXCR3をCCR3など代替のケモカイン受容体で置き換え、そのような受容体に結合することが知られているエオタキシンなどのケモカインを使用することによって、本発明の化合物の選択性を決定するのにも使用することができる。
【0148】
このようにして、本発明の化合物が、CXCR3の選択的な阻害物質であることを示すことができる。即ち、例えば、実施例の化合物は、CCR3など他のケモカイン受容体に対してよりも、CXCR3に対して少なくとも5倍選択性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物、
【化1】


[式中、
m及びnは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ0又は整数1若しくは2であり、
Alkは、共有結合又は直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキレン鎖であり、
及びRは、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又は直鎖若しくは分枝のC1−6アルキル基であり、
Dは、任意選択で置換された芳香族基又は複素環式芳香族基であり、
Eは、任意選択で置換されたC7〜10シクロアルキル基、C7〜10シクロアルケニル基、又はC7〜10多環式脂肪族基であり、
は任意選択で置換されたアルキル基であり、
Yは、製薬上許容される対イオンである]
及びその塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、或いはN−オキシド化合物。
【請求項2】
m及びnが同じものでも異なるものでもよく、それぞれ0又は整数1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
m及びnがそれぞれ整数1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Alkが−CH−、−CHCH−、又は−CHCHCH−鎖である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Alkが−CH−鎖である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
及びRが、同じものでも異なるものでもよく、それぞれ水素原子又はC1〜3基である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Dが、任意選択で置換されたフェニル基、1−若しくは2−ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチルジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、N−C1〜6アルキルイミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、又はイソチアゾリル基である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Eが、任意選択で置換されたシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル基、又はビシクロ[3.1.1]ヘプテニル基である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Eが、1−シクロオクテニル基、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イル基、アダマンチル基、又はシクロオクチル基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物を、1種又は複数の製薬上許容される担体、賦形剤又は希釈剤とともに含む薬剤組成物。
【請求項11】
炎症性疾患、自己免疫疾患、及び免疫調節異常の治療に使用するための、請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物。

【公表番号】特表2006−523659(P2006−523659A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506110(P2006−506110)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001559
【国際公開番号】WO2004/094381
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】