説明

ケルセチンのアナログまたは誘導体(プロドラッグ)

【課題】より大きな水溶性を有し、薬学的処方物中での使用により適切であり、そして処置を必要とする患者へ投与された後に体内でケルセチンを放出するように生物学的に分解され得るプロドラッグとして作用し得る、ケルセチンのアナログまたは誘導体を生成すること。
【解決手段】ケルセチンの新規なカルバメートエステルアナログまたは誘導体(プロドラッグ)が提供される。これは増強された水溶性を有し、そして臨床使用のために処方される薬学的組成物中の生分解可能なプロドラッグとしての使用にとりわけ適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生化学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明はケルセチンのアナログまたは誘導体およびそれらの調製物に関する。これらの化合物は、腫瘍の化学治療、炎症の処置、およびアレルギーにおいて潜在的に有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フラボノイドのケルセチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)は、カルシウムおよびリン脂質依存性プロテインキナーゼ(プロテインキナーゼC)を含む種々の酵素の活性を、インビボおよびインビトロで阻害することが示されている。さらに、それはcis−ジアミンジクロロ白金II(cis−DDP)の抗増殖活性をインビボおよびインビトロの両方で相乗的に増強し、それゆえヒト腫瘍の化学治療における使用のための有望な治療剤として興味深い。しかし、第1相臨床試験は、薬学的に受容可能な溶媒中でのケルセチンの限られた溶解度に起因して、問題があることを証明しており、そしてこの特徴は、さらなる臨床的な発展を妨げている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するために、例えば以下を提供する。
(項目1) 以下の構造式Iを有する化合物、およびそれらの薬学的に受容可能な塩:
【0004】
【化1】

ここで、R、R、R、R、およびRのうち、1つはアミノ酸カルバメート基CONHCH(R)COHであり、そして残りはそれぞれ水素であり、
そしてここで、Rは水素またはC1−4低級アルキルである。
(項目2) Rがメチルである、上記項1に記載の化合物。
(項目3) R、R、R、およびRがそれぞれ水素であり、そしてRがCONHCHCOHである、上記項1または2に記載の化合物。
(項目4) R、R、R、およびRがそれぞれ水素であり、そしてRがCONHCHCOHである、上記項1または2に記載の化合物。
(項目5) アルカリ金属塩、アンモニウム塩、またはアミン塩の形態である、上記項1〜4のいずれかに記載の化合物。
(項目6) アミノ糖と共に形成されるアミン塩である、上記項5に記載の化合物。
(項目7) N−アルキルアミノ糖と共に形成されるアミン塩である、上記項5に記載の化合物。
(項目8) 前記アミノ糖がN−メチル−D−グルカミンである、上記項7に記載の化合物。
(項目9) 前記アミノ糖が以下から選択される、上記項6に記載の化合物:
1−アミノ−1−デオキシ−D−ソルビトール、
N−メチル−D−グルカミン(メグルミン)、
1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−D−ガラクチトール、
1−デオキシ−1−(オクチルアミノ)−D−グルシトール、
1−デオキシ−1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−D−グルシトール、
ジソルビチルアミン、
D−ガラクトサミン、
D−グルコサミン、および
D−マンノサミン。
(項目10) RがCONHCHCOHである上記項5〜9のいずれかに記載の化合物と、RがCONHCHCOHである上記項5〜9のいずれかに記載の化合物との混合物を含む、プロドラッグ組成物。
(項目11) 3’−((N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボン、N−メチルグルカミン塩と、4’−((N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ)−3,3’,5,7−テトラヒドロキシフラボン、N−メチルグルカミン塩との混合物を含む、ケルセチンに生分解可能なプロドラッグ組成物。
(項目12) 上記項1〜9のいずれかに記載の化合物、あるいは上記項10または11に記載の組成物の、新生物疾患またはガンに罹患する哺乳動物の処置のための治療における、使用。
(項目13) 上記項1〜9のいずれかに記載の化合物の、あるいは上記項10または11に記載のプロドラッグ組成物の治療的に有効な非毒性量を、適合性の薬学的に受容可能な添加剤、キャリア、希釈剤、または賦形剤と混合して含む、薬学的組成物。
(項目14) インビボでケルセチンに生分解可能なケルセチンカルバメートエステルを含有する、上記項13に記載の薬学的組成物。
(項目15) 単位投薬形態で提供される無菌液体調製物の形態である、上記項13または14に記載の薬学的組成物。
(項目16) 前記化合物またはプロドラッグ組成物がリン酸緩衝化生理食塩水中に溶解される、上記項15に記載の薬学的組成物。
(項目17) 新生物疾患またはガンに罹患する哺乳動物を処置する方法であって、上記項13〜16のいずれか1項に記載の薬学的組成物を該動物に投与する工程を包含する、方法。
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、より大きな水溶性を有し、薬学的処方物中での使用により適切であり、そして処置を必要とする患者へ投与された後に体内でケルセチンを放出するように生物学的に分解(degrade)または分解(break down)され得るプロドラッグとして作用し得る、ケルセチンのアナログまたは誘導体を生成するための努力から発展している。
【0006】
より詳細には、1つの局面から、本発明は以下の構造式Iの化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩を提供する:
【0007】
【化2】

ここで、R、R、R、R、およびRのうち、1つはアミノ酸カルバメート基CONHCH(R)COHであり、そして残りはそれぞれ水素であり、
そしてここで、Rは水素またはC1−4低級アルキル(例えばメチル)である。
【0008】
本発明の好ましい化合物は、R、R、R、およびRがそれぞれ水素であり、そしてRがCONHCHCOHである化合物、ならびにR、R、R、およびRがそれぞれ水素であり、そしてRがCONHCHCOHである化合物を含む。本発明はまた、これらの酸性ケルセチンアナログの塩を提供する。アルカリ金属およびアンモニウム塩の他に、アミン塩、例えばアミノ糖から形成されるアミン塩、とりわけN−アルキルアミノ糖(例えば、N−メチルグルカミン)から形成されるアミン塩が、特に興味深い。
【0009】
一般に、上記のように定義される本発明の化合物は、増強された水溶性を有し、そして臨床使用のために処方される薬学的組成物中の生分解可能なプロドラッグとしての使用にとりわけ適切である、ケルセチンの新規なアナログまたは誘導体である。
【0010】
従って、本発明はまた、医学的または獣医学的処置の間の任意の適切な様式(例えば非経口(静脈内、筋肉内、および皮下を含む)または経口)における投与のために調製または処方される、そのようなプロドラッグを提供する新規なアナログまたは誘導体を含むかまたは含有する薬学的組成物を含む。治療的に有効な非毒性量のプロドラッグ化合物、または等価の治療的に有効な非毒性量の活性薬物化合物を、おそらくは適合性の薬学的に受容可能な添加剤、キャリア、希釈剤、または賦形剤を提供する少なくとも1つの他の成分と共に、好都合には単位投薬形態で含有するかまたは取り込むそのような組成物は、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。
【0011】
本発明はまた、場合によっては特定の新規な中間体化合物を含む、上記で言及される化合物の少なくともいくつかを調製するための新規なプロセスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ケルセチンのカルバメートエステル誘導体またはアナログ、特に3’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンおよび対応する4’−異性体のN−メチルグルカミン塩(メグルミン塩と称される)の調製および特性への特定の参照によって、さらに記載および例示される。
【0013】
これらのケルセチンのカルバメートエステルは、水溶液中でかなり安定であることが見出されているが、しかしそれらは生理学的条件下でケルセチンに分解する。
【0014】
最初に、3’および4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボンのメグルミン塩が臨床試験のための処方物について所望の特性を有することを実証するために使用された分析条件を、以下に提示する。次いで、これらのケルセチンのアナログまたは誘導体を合成するためのプロセスの詳細を提示する。
【0015】
分析方法論−非生物学的サンプル
以下の条件は、3’および4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボンのメグルミン塩を分析するために使用された。
HPLC
カラム: Primesphere HC C−18, 5μm, 250×3.2mm
移動相: 3mM酢酸アンモニウム中45%メタノール、pH3.4
流速: 0.5ml/分
温度: 常温
検出: 368nmのUV
注入容量: 100mg/ml水溶液の60μl(6μgのサンプルが、カラム上に注入された;6μgは検出器を通過し、そして1:1スプリッタを使用して、3μgが続けて質量分析計に通された。
【0016】
保持時間: 成分1−15.8分
成分2−16.7分
同一のクロマトグラフィー条件下で、ケルセチンは22.8分の保持時間を有する
質量分析
コーン電圧:30V
イオン化様式:エレクトロスプレーポジティブ
流速:約0.25ml/分(流速は1:1に分割された)
水溶性
3’および4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボンのメグルミン塩の溶解度は、HPLCによって決定されており、そして10mg/ml以上であることが示されている。
水中での安定性
3’/4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボンは、塩基性条件下よりも酸性pHでより大きな安定性を示す。10mg/ml水溶液は約7のpHを有し、そして−20℃では少なくとも12週の期間にわたって安定であるが、4℃では同一の期間にわたって25%までの分解が生じる。デキストロース中の1mg/mlの最終プロドラッグ濃度までの希釈は、常温で4時間にわたって5%未満の分解を生じる約6のpHを有する溶液を与える。
【0017】
ヒト血漿に対する安定性
3’/4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボンのメグルミン塩の安定性は、ヒト血漿中でHPLCによって評価されている。新鮮に調製された血漿(2.5ml)を37℃でインキュベートし、そしてプロドラッグ化合物の6.3mg/ml水溶液の0.02mlを添加した。血漿のアリコートを、ゼロ時およびその後間隔を置いてHPLC分析のために採取した。サンプルを冷却メタノールによってクエンチし、得られた沈澱を4℃にて800rpmで5分間遠心分離し、そして上清をHPLCによって分析した。
【0018】
両方の異性体、すなわち3’および4’カルバメートエステルの両方が、ケルセチンに変換されることが見出された。ヒト血漿中での各異性体の半減期は、約1時間であった。
(実施例)
3’/4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボン、N−メチル−D−グルカミン塩の合成
本発明に従う化合物の調製の例として、容易に入手可能なケルセチンから出発する7段階合成を利用する、3’/4’−[(N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ]−3,4’(3’),5,7−テトラヒドロキシフラボン、N−メチル−D−グルカミン塩の調製のためのプロセスをここで記載する。位置選択的合成を達成するために、Jurd, J.Am Chem. Soc., 80, 5531(1958)によって最初に報告されたアセチル化/ベンジル化ストラテジーを適用し、3’位の選択的な誘導体化を可能にした。プロセス中の異なる工程または段階を、以下の図表に例示する。主要な標的生成物は3’異性体であるようであったが、第6段階の後に4’異性体の形成もまた導くいくらかの転位が生じ、その結果最終生成物は3’および4’異性体の両方の混合物であることが見出された。
【0019】
【化3】

第1段階−3,3’,4’,5,7−ペンタアセトキシフラボンの調製
濃硫酸(約0.05ml)を、無水酢酸(300ml)中のケルセチン二水和物(50.02g、0.15mol)の氷冷懸濁液に添加し、そして黄色から橙色への素早い色変化を観察した。混合物を90℃で0.25時間加熱し、次いで氷浴中で冷却した。重厚なオフホワイトの沈澱物が形成し、これを濾過によって回収し、水で洗浄し、そしてKarl−Fischer滴定によって水が全く検出され得なくなるまで、室温で五酸化リンによって真空下乾燥した。収量58.1g(0.11mol、77%)。
【0020】
【化4】

第2段階−3’−アセトキシ−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボンの調製
3,3’,4’,5,7−ペンタアセトキシフラボン(54.1g、0.11mol)、ヨウ化カリウム(4.4g、0.026mol)、炭酸カリウム(127.5g、0.92mol)、および塩化ベンジル(120ml)を、無水ホウ酸によって乾燥したブタノン(780ml)中で還流下加熱した。48時間後、反応混合物を常温まで冷却し、そして濾過した。残渣をアセトン(3×200ml)で洗浄し、そして合わせた洗浄液および濾液を真空下エバポレートした。エバポレーション残渣を酢酸エチル/鉱油から2回再結晶し、所望の生成物をオフホワイトの固体(62.8g、0.089mol、84%)として得た。
【0021】
【化5】

第3段階−3’−ヒドロキシ−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボンの調製
水酸化ナトリウム水溶液(10%w/v溶液の191ml)を、メタノール/アセトン(2:5v/v溶液の780ml)中の3’−アセトキシ−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボン(61.9g、0.088mol)の還流下の溶液に添加した。1時間後、反応混合物を常温に冷却し、水(480ml)で希釈し、そして塩酸(2M溶液の230ml)でpH1に酸性化した。黄色の沈殿物が形成され、これを濾過によって単離し、水(3×120ml)で洗浄し、真空下乾燥し、そして酢酸エチル/鉱油から再結晶した。収量47.4g(0.072mol、81%)。
【0022】
【化6】

第4段階−3’−((N−エトキシカルボニルメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボンの調製
トリエチルアミン(11ml)およびエチルイソシアナートアセテート(11.8ml、13.6g、0.11mol)を、テトラヒドロフラン(425ml)中の3’−ヒドロキシ−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボン(46.7g、0.071mol)の懸濁液に添加し、そして混合物を50℃で攪拌した。0.5時間後、懸濁された固体は溶解した。さらに18時間後、エチルイソシアナートアセテート(3ml、3.5g、0.027mol)のさらなる部分を添加し、そして攪拌を続けた。さらに2.5時間後、反応混合物を真空下エバポレートし、そして残渣をジクロロメタン/鉱油から再結晶し、N,N’−ジ(エトキシカルボニルメチル)尿素を得た。上澄み液をエバポレートし、そして残渣を酢酸エチル/鉱油から再結晶し、表題化合物を白色固体(36.5g、0.046mol、65%)として得た。
【0023】
【化7】

第5段階−3’−((N−エトキシカルボニルメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンの調製
THF(460ml)中の3’−((N−エトキシカルボニルメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラベンジルオキシフラボン(24.6g、0.031mol)の溶液を、活性炭担持パラジウム触媒(10%w/w Pd、2.5g)の存在下、水素雰囲気下(pH=110psi)で振盪した。20時間後、反応混合物を濾過し、そして濾液を真空下エバポレートし、表題化合物を黄色固体(14.7g)として得た。これには、H−NMRによって判断されるようにトルエンおよびTHFが混入していたが、さらなる乾燥なしで使用に適切であると考えられた。
【0024】
【化8】

第6段階−3’−((N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンの調製
3’−((N−エトキシカルボニルメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボン(6.03g、0.014mol)をTHF(400ml)に溶解し、そして還流下加熱した。硫酸(2M溶液の350ml)を添加し、そして反応混合物を70℃で加熱した。反応の進行を、0.5時間の間隔を置いてHPLC(Primesphere HC C−18, 5mm 250×3.2mm;移動相:水中の34%アセトニトリルおよび0.04%トリフルオロ酢酸;流速:0.9ml/分;検出:220nmのUV)によってモニターした:出発エステル、所望の生成物、およびケルセチンを、全て反応混合物中に検出した。2時間後、所望の生成物の割合は最大であるようであった。反応混合物を水(1.5L)中に注ぎ、そして酢酸エチル(500ml、3×200ml)で抽出した。酢酸エチル抽出液を合わせ、そして水(5×100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして真空下エバポレートして所望の生成物を黄色固体(5.57g)として得た。これには、HPLCによって判断されるように、8%w/wのケルセチンおよび1%w/wの3’−((N−エトキシカルボニルメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンが混入していた。
【0025】
【化9】

第7段階−3’−((N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボン、N−メチル−D−グルカミン塩の調製
メタノール(200ml)中のN−メチル−D−グルカミン(2.76g、0.014mol)の溶液を、メタノール(300ml)中の3’−((N−カルボキシメチル)カルバモイルオキシ)−3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボン(5.78g、90%純度、0.013mol)の溶液に添加した。溶媒を真空下除去し、そして残渣を水(500ml)中に溶解した。溶液を1M塩酸でpH6.9に調整し、酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、そして凍結乾燥した。凍結乾燥固体を水(500ml)中に再溶解し、そして1.2μm、0.45μm、および0.2μmのフィルターを通じて連続的に濾過し、そして再び凍結乾燥し、所望の生成物を澄んだ黄色の固体(6.12g、0.01mol、79%)として得た。
【0026】
【化10】

最終生成物は3’および4’異性体の混合物であるが、これらは、例えばHPLCによって、所望であれば分離され得る。しかし、両方ともケルセチンに分解するプロドラッグとして作用し得るので、分離は一般に不要である。最終生成物はまた、一定量のN−メチル−D−グルカミンを含有し得るが、やはりこれは生成物の所望のケルセチンプロドラッグの特徴を妨害しないようであると考えられる。
【0027】
がアルキルである、他の実施態様における使用のためのN−アルキル化カルバメートが、フェノールとRR’NCOCl型の試薬(これは、適切なアミンとホスゲンとの反応によって好都合にはインサイチュで調製される)との反応によって調製され得る。あるいは、それらは、RR’NH型のアミンとクロロギ酸アリールArOCOCl(これ自身は、フェノールとホスゲンとの反応によってインサイチュで調製される)との反応によって調製され得る。従って、例えばArOC(O)NRCHCOEtは、ホスゲンまたはトリホスゲンの存在下、ArOHとRNHCHCOEtとの反応によって調製され得る。
【0028】
アミノ糖を使用して、本発明に従うケルセチンアナログまたは誘導体のアミン塩を調製する際には、本明細書中前記のN−メチル−D−グルカミン以外の種々のアミノ糖が、当然ながら代わりに使用され得る。そのような塩を形成するために適切なアミノ糖の非限定的なリストを、以下に提供する:
A 1−アミノ−1−デオキシ−D−ソルビトール
B N−メチル−D−グルカミン(メグルミン)
C 1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−D−ガラクチトール
D 1−デオキシ−1−(オクチルアミノ)−D−グルシトール
E 1−デオキシ−1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−D−グルシトール
F ジソルビチルアミン
G D−ガラクトサミン
H D−グルコサミン
I D−マンノサミン
上記の化合物A〜Iの構造を、本説明の最後の図表中に例示する(それらは、対応するように標識される)。
【0029】
(治療的使用)
既に示したように、本発明によって提供されるケルセチンの新規なアナログまたは誘導体、とりわけインビボでケルセチンに生分解し、そして水溶性であるアナログまたは誘導体は、治療的処置(例えば、新生物疾患またはガンに罹患する哺乳動物の治療的処置)における投与のための薬学的処方物へと調製され得るプロドラッグとして特に有用である。
【0030】
そのような薬学的処方物を、例えば非経口使用のための無菌液体調製物の形態で調製する際には、予め決定された治療的に有効な非毒性量の、関係する特定のアナログまたは誘導体がリン酸緩衝化生理食塩水中に溶解され得、そして調製物は単位投薬形態で提供され得、そして静脈内注入としての使用に備えた密封アンプル中に含有され得る。一般に、少なくとも水溶液中では、ケルセチンについて使用されるのと等価な濃度が好ましいが、最適の有効性のために必要とされる量および投薬ルーチンは当然ながら変動し、そして最終的には、各特定の場合において、哺乳動物を処置する医師または獣医師の裁量に委ねられる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
見出されるように、本発明は多数の異なる局面を提供し、そして一般には、本明細書中に明示的または暗示的のいずれかで、そして単独または相互の組合せのいずれかで開示される、全ての新規かつ進歩的な特徴および局面(新規な化合物を含む)を包含する。さらに、本発明の範囲は、例示的な実施例によって、および単に記述または説明の意味で本明細書中で使用される用語および表現によって限定されるとは解釈されない。
【0032】
【化11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の化合物。

【公開番号】特開2009−46486(P2009−46486A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212293(P2008−212293)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【分割の表示】特願平10−502560の分割
【原出願日】平成9年6月27日(1997.6.27)
【出願人】(307040794)セレロン セラピューティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】