説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】ハイブリッド自動車等に使用されるケースモールド型コンデンサに関し、高精度と小型軽量化を両立することを目的とする。
【解決手段】樹脂ケース9に舌片状の締結部9aを設け、この締結部9aを金属ケース7に設けられた締結部7a上に載置するケースモールド型コンデンサにおいて、樹脂ケース9に設けられた舌片状の締結部9aの根元部の一部に薄肉部9cを設けた構成により、締結部9aの強度が弱くなるため、樹脂ケース9を金属ケース7に結合する際に、樹脂ケース9の締結部9aが締結方向に移動し易くなり、これにより、締結部9aに過大な応力が加わるのを抑制すると共に、振動によって締結部9aに割れが発生するのを防止することができるようになり、耐振動性を向上させることができる。この結果、ケースモールド型コンデンサの高精度化と小型軽量化を両立することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このようにHEV用として用いられる金属化フィルムコンデンサには、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0005】
図5(a)、(b)はこの種の従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図と正面断面図であり、図5において、11は樹脂製のコンデンサケース、12はコンデンサ素子を示す。13aおよび13bは一体に連なる接続金具で、13aはコンデンサケース11に内蔵される部分、13bはコンデンサケース11から外部に出ている部分を示す。14はコンデンサ素子12を固定するエポキシ樹脂等の充填樹脂、15は電極部、16はコンデンサを外部に取り付けるための取り付け脚、17は充填樹脂14を注型する注型面を示すものである。
【0006】
そして、上記コンデンサ素子12は、図示しない金属化フィルムを巻回または積層してなり、電極部15を端面に設けている。そして接続金具13aを電極部15に接続し、この接続金具13b(13aと一体に繋がっている)を外部機器等と電気的に接続している。
【0007】
また、コンデンサケース11はコンデンサ素子12全体と、接続金具13aを内蔵し、内部に充填樹脂14を充填させて固定している。なお、図5において、コンデンサケース11の底部(注型面17)は、樹脂充填する前は開口面であり、この面を、充填樹脂14を注型する面としている。更に、この注型面17から接続金具13bがコンデンサケース11から外部に出ているものである。
【0008】
また、コンデンサケース11は、図5に示すように、取り付け脚16を有しており、外部機器等にビス等で取り付けできるようになっている。コンデンサケース11は、コンデンサ素子12を複数個内蔵するためにケース自体が大きく、取り付け脚16はコンデンサ全体の重量及び衝突時の耐用から4箇所に設けられ、四方に伸びた形状となっている。
【0009】
このように構成された従来のケースモールド型コンデンサは、充填樹脂14を注型する注型面17を取り付け脚16と同じ側にすると共に、接続金具13を注型面17から外部に出すようにすることで、接続金具13a、13bの外部機器等と接続するまでの距離を短くでき、これにより、接続金具13a、13bのインダクタンスを抑えることができるというものである。また、このように構成されたケースモールド型コンデンサを図示しないアルミニウム製の外装ケース内に結合し、この外装ケースを被装着体である自動車に取り付けるという使用方法が多くなってきているものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−146724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら上記従来のケースモールド型コンデンサでは、樹脂製のコンデンサケース11を用いて樹脂モールドされたケースモールド型コンデンサを図示しないアルミニウム製の外装ケース内に結合して使用するような用途の場合、樹脂製のコンデンサケース11に設けられた取り付け脚16を介して図示しないアルミニウム製の外装ケースに設けられた取り付け部にボルト等を用いて結合した際に、樹脂製のコンデンサケース11やアルミニウム製の外装ケースに歪みが発生し、これにより、このアルミニウム製の外装ケースを被装着体に取り付ける際に、取り付けができなくなったり、また、樹脂製のコンデンサケース11に設けられた取り付け脚16に過大な応力が加わるため、最悪の場合には、振動によって取り付け脚16に割れが発生する恐れがあるという課題があった。
【0013】
なお、このような現象は、小型軽量化の追及からアルミニウム製の外装ケースの厚みが薄くなってきていることに加え、アルミニウム製の外装ケースの取り付け部、樹脂製のコンデンサケース11の取り付け脚16の、双方の寸法公差に起因するものである。
【0014】
本発明はこのような従来の課題を解決し、樹脂ケースを金属ケース内に結合しても双方に歪みが発生することがなく、高精度と小型軽量化を両立することが可能なケースモールド型コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、複数の素子をバスバーで夫々接続し、これらを収容して樹脂モールドした樹脂ケースと、この樹脂ケースを内部に結合した金属ケースからなり、上記樹脂ケースに舌片状の締結部を設け、この締結部を金属ケースに設けられた締結部上に載置すると共に、樹脂ケースに設けられた舌片状の締結部の根元部の一部に薄肉部を設け、樹脂ケースの締結部を締結方向に移動し易くした構成のものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によるケースモールド型コンデンサは、樹脂ケースに設けられた舌片状の締結部の根元部の一部に薄肉部を設けた構成により、締結部の強度が弱くなるため、樹脂ケースを金属ケースに結合する際に、樹脂ケースの締結部が締結方向に移動し易くなり、これにより、締結部に過大な応力が加わるのを抑制すると共に、振動によって締結部に割れが発生するのを防止することができるようになり、耐振動性を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの構成を示した斜視図
【図2】同側面断面図
【図3】同締結部近傍を示した要部断面図
【図4】本発明の実施の形態2によるケースモールド型コンデンサの締結部近傍の構成を示した要部断面図
【図5】(a)従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図、(b)同正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの構成を示した斜視図、図2は同側面断面図、図3は同締結部近傍を示した要部断面図であり、図1〜図3において、1は金属化フィルムコンデンサ素子(以下、素子1と呼ぶ)を示し、この素子1はポリプロピレンフィルム等からなる誘電体フィルムの片面または両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回し、両端面に亜鉛を溶射したメタリコン電極を形成することによってP極とN極の一対の取り出し電極を夫々設けて構成されたものである。
【0019】
2はP極バスバー、2aはこのP極バスバー2の一端に設けられた外部接続用のP極端子、3はN極バスバー、3aはこのN極バスバー3の一端に設けられた外部接続用のN極端子であり、このP極バスバー2とN極バスバー3により、上記素子1を複数個並列接続して連結しているものである。
【0020】
4は上面開放形の樹脂ケース、4aはこの樹脂ケース4を後述する金属ケース7に結合するために側面の複数箇所に設けられた舌片状の締結部、4bはこの締結部4a内に設けられた取り付け孔である。5はこの取り付け孔4b内にインサート成型された金属製のカラーであり、このカラー5は上記締結部4aの厚さ(t)よりも長い高さ寸法(h)、(すなわちh>t)の円筒状に形成されており、カラー5の両端が締結部4aの上面側ならびに下面側に夫々突出するように構成されているものである。
【0021】
6はエポキシ樹脂等からなる絶縁性のモールド樹脂であり、このモールド樹脂6は、上記P極バスバー2とN極バスバー3により並列接続されて連結された複数個の素子1を樹脂ケース4内に収容した状態で、この樹脂ケース4内に充填されることによって樹脂モールドしたものであり、これにより、P極端子2aとN極端子3aがモールド樹脂6から表出したケースモールド型コンデンサが構成されているものである。
【0022】
7はアルミニウムからなる金属ケースであり、この金属ケース7は外装ケースとしての機能を果たすものである。7aはこの金属ケース7内に上記複数個の素子1が樹脂モールドされた樹脂ケース4を結合するために設けられた締結部、7bはこの金属ケース7を被装着体に取り付けるための取り付け部、7cはこの取り付け部7b内に設けられた取り付け孔であり、この金属ケース7に設けられた締結部7aへの樹脂ケース4の締結部4aの結合はボルト8を螺合することによって行われるものである。
【0023】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、樹脂ケース4の締結部4aに設けられた取り付け孔4b内に締結部4aの厚さtより長い高さ寸法hの円筒状のカラー5を配設し、ボルト8により樹脂ケース4の締結部4aを金属ケース7の締結部7aに結合するようにした構成により、上記カラー5の両端がボルト8と金属ケース7の締結部7aに夫々当接するようになるため、樹脂ケース4の締結部4aはカラー5によってガイドされてはいるものの、カラー5が円筒状であるために締結方向には移動可能な状態になり、金属ケース7内に樹脂ケース4を結合しても、樹脂ケース4と金属ケース7の双方の寸法公差のバラツキを吸収し、双方に歪みが発生することがなく、高い寸法精度を発揮することができるため、金属ケース7の厚みを薄くして小型軽量化を図ることができるという格別の効果を奏するものである。
【0024】
なお、上記カラー5は、外周中央部に溝加工等を施すことによって窪み部を形成したものを用い、これをインサート成型することによって上記窪み部に樹脂が回り込んで抜け止め効果が得られるものを使用するのが一般的であるが、このようなカラーを用いた場合には、本発明のように、樹脂ケース4の締結部4aが締結方向に移動するという効果が得られないため、本発明のような円筒状のカラー5を用いることが必要になるものである。
【0025】
なお、このような効果は、カラー5の外径寸法φAと、このカラー5が嵌まり込むように設けられた樹脂ケース4の締結部4aの取り付け孔4bの寸法φBの関係を、φA<φBとすることにより、樹脂ケース4の締結部4aが移動し易くなるために、更に効果的になるものである。また、上記φA<φBの関係にすることにより、上記カラー5がインサート成型できないようになる場合には、樹脂ケース4の締結部4aに設けられた取り付け孔4b内にカラー5を配設するようにすれば良いものである。
【0026】
(実施の形態2)
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1〜図3を用いて説明したケースモールド型コンデンサに用いる樹脂ケースの構成が一部異なるようにしたものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図4は本発明の実施の形態2によるケースモールド型コンデンサの締結部近傍の構成を示した要部断面図であり、図4において、9は上面開放形の樹脂ケース、9aはこの樹脂ケース9を金属ケース7に結合するために側面の複数箇所に設けられた舌片状の締結部、9bはこの締結部9a内に設けられた取り付け孔である。9cは上記締結部9aの下面となる金属ケース7の締結部7a側の根元部の一部を部分的に薄くするようにして設けられた薄肉部である。
【0028】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、上記実施の形態1によるケースモールド型コンデンサにより得られる効果に加え、樹脂ケース9の締結部9aの根元部に薄肉部9cを設けた構成により、締結部9aの強度が弱くなるため、樹脂ケース9を金属ケース7に結合する際に、樹脂ケース9の締結部9aが締結方向に移動し易くなり、これにより、締結部9aに過大な応力が加わるのを抑制すると共に、振動によって締結部9aに割れが発生するのを防止することができるようになり、耐振動性を向上させることもできるという格別の効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、高い寸法精度を確保することができるために小型軽量化を図ることができるという効果を有し、特に、小型軽量化と耐振動性が強く要求される自動車用のコンデンサ等として有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 素子
2 P極バスバー
2a P極端子
3 N極バスバー
3a N極端子
4、9 樹脂ケース
4a、7a、9a 締結部
4b、7c、9b 取り付け孔
5 カラー
6 モールド樹脂
7 金属ケース
7b 取り付け部
8 ボルト
9c 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に一対の電極が設けられた素子を複数個並列して外部接続用の端子部を一端に設けたバスバーで夫々接続し、これらを内部に収容して少なくとも上記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドした樹脂ケースと、この樹脂ケースを内部に結合した金属ケースからなるケースモールド型コンデンサにおいて、
上記樹脂ケースに舌片状の締結部を設け、この締結部を金属ケースに設けられた締結部上に載置すると共に、
樹脂ケースに設けられた舌片状の締結部の根元部の一部に薄肉部を設け、樹脂ケースの締結部を締結方向に移動し易くしたケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
上記薄肉部は、樹脂ケースの締結部の根元部において、金属ケースの締結部側に設けられた請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77832(P2013−77832A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274280(P2012−274280)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2008−97931(P2008−97931)の分割
【原出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】