説明

ケーブルの故障箇所検知システム及び方法

【課題】本発明はケーブルの故障箇所検知システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明によるケーブルの故障箇所検知システムは、故障電流を伝送するケーブルと、ケーブルに接続されて故障電流を受信し、故障電流の元信号を検出する変流部と、故障電流の元信号から高周波領域のディテール成分である第1ディテール信号及び第2ディテール信号を検出する検出部と、第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較してケーブルの故障を判定する比較部と、第1ディテール信号及び第2ディテール信号を用いて第1フィルタリング信号及び第2フィルタリング信号を生成し、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較して比較結果により故障検知信号を出力する信号フィルター部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの故障箇所検知システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高圧送電のための地中ケーブルに故障が発生した場合、故障箇所を検知するためには、ホイーストンブリッジ(Wheatstone bridge)原理を用いたマレールーフ(Murray loop) 方法、進行波の原理を用いたTDR(Time Domain Reflectometer)方法、ピンポインティング方法など様々な方法が用いられている。これら方法は、地中ケーブルの故障箇所を検知するためにオフラインで実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの方法は、故障が発生した場合には、該当する線路を系統から完全に分離した後に故障箇所を検知する方法を実行するため、故障箇所検知及び故障復旧に長時間を要するなどの問題があった。
【0004】
こうした従来技術の問題点に鑑み、本発明は、オンラインでケーブルの故障箇所を検知するケーブルの故障箇所検知システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、上記ケーブルの故障箇所検知システムを用いてオンラインでケーブルの故障箇所を検知するケーブルの故障箇所検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、ケーブルの故障箇所検知システムが提供される。
ケーブルの故障箇所検知システムは、故障電流を伝送するケーブルと、ケーブルに接続されて故障電流を受信し、故障電流の元信号を検出する変流部と、故障電流の元信号から高周波領域のディテール成分である第1ディテール信号及び第2ディテール信号を検出する検出部と、第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較してケーブルの故障を判定する比較部と、第1ディテール信号及び第2ディテール信号を用いて第1フィルタリング信号及び第2フィルタリング信号を生成し、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較して比較結果により故障検知信号を出力する信号フィルター部と、を含む。
【0006】
本発明の他の実施形態によれば、ケーブルの故障箇所検知方法が提供される。
ケーブルの故障箇所検知方法は、ケーブルの両端から故障電流の元信号を検出するステップと、ウェーブレット変換により故障電流の元信号から第1近似信号及び第1ディテール信号を検出するステップと、第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較してケーブルに故障が発生したか否かを判定するステップと、ウェーブレット変換により第1近似信号から第2近似信号及び第2ディテール信号を検出するステップと、第1ディテール信号と第2ディテール信号の演算により第1フィルタリング信号を生成するステップと、第1ディテール信号及び第1フィルタリング信号を用いて設定された相関関係方程式から第2フィルタリング信号を生成するステップと、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較して故障検知信号を出力するステップと、を含む。
【0007】
本発明のまた他の実施形態によれば、ケーブルの故障箇所検知方法を実行させるためのプログラムが記録された記録媒体が提供される。
【0008】
送電系統において記録媒体は、ケーブルの故障箇所検知方法を実行させるためのプログラムが記録された電子装置で読み取り可能な記録媒体であって、ケーブルの両端から故障電流の元信号を検出するステップと、ウェーブレット変換により故障電流の元信号から第1近似信号及び第1ディテール信号を検出するステップと、第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較してケーブルの故障が発生したか否かを判定するステップと、ウェーブレット変換により第1近似信号から第2近似信号及び第2ディテール信号を検出するステップと、第1ディテール信号と第2ディテール信号の演算により第1フィルタリング信号を生成するステップと、第1ディテール信号及び第1フィルタリング信号を用いて、設定された相関関係方程式から第2フィルタリング信号を生成するステップと、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較して故障検知信号を出力するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるケーブルの故障箇所検知システムは、ウェーブレット変換により故障電流の元信号から検出された第1ディテール信号及び第2ディテール信号を用いて第1フィルタリング信号を生成し、第1フィルタリング信号及び第1ディテール信号を用いて生成された第2フィルタリング信号を第1ディテール信号と比較してノイズを除去した後、反射波と判定された信号を最終的に出力することにより、ケーブルにおける故障箇所をオンラインで検知することができる。
【0010】
また、本発明によるケーブルの故障箇所検知方法は、進行波を用いてオンラインで故障箇所を検知し、ケーブルの両端の母線から検出された故障信号を用いて故障箇所を計算することができる。したがって、オフラインで故障箇所を検知する方法とは異なって、故障が発生すると同時にオンラインで故障箇所検知が行われるので、迅速な故障箇所検知が可能となり、これにより故障復旧のための時間及び費用を最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知システムを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による検出部のウェーブレット変換を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態より比較部に設定された基準値を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は様々な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるため、本願では特定実施形態を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0013】
本発明を説明するに当たって、係る公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をかえって不明にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、「第1」、「第2」などの用語は、多様な構成要素を説明に用いることに過ぎなく、上記構成要素が上記用語により限定されるものではない。上記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的だけに用いられる。
【0014】
また、本明細書において、ある構成要素が他の構成要素に接続されていると記載された時には、ある構成要素が他の構成要素に直接接続されていることは勿論、特に反対の記載が存在しない限り、中間にまた他の構成要素を介して間接的に接続されている場合を含む。
【0015】
以下、添付した図面に基づいて本発明の実施形態によるケーブルの故障箇所検知システム及び方法について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知システムを示す図である。
【0017】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知システム100は、ケーブル110、第1及び第2変流部121,123、第1及び第2検出部131,133、第1及び第2比較部141,143、第1及び第2信号フィルター部151,153、演算部160を含む。
【0018】
ケーブル110は、電流を伝送する。
【0019】
第1及び第2変流部121,123のそれぞれは、ケーブル110の両端に接続配置される。第1及び第2変流部121,123は、ケーブル110の末端から故障電流を受信し、故障電流から故障電流の元信号を検出し、検出された故障電流の元信号を第1及び第2検出部131,133に提供する。
【0020】
第1及び第2検出部131,133は、故障電流の元信号を受信し、故障電流の元信号にウェーブレット変換を実行する。ウェーブレット変換の実行後に、第1及び第2検出部131,133は、故障電流の元信号から低周波領域の第1近似信号及び高周波領域の第1ディテール信号を検出する。第1及び第2検出部131,133は、第1ディテール信号を第1及び第2比較部141,143に提供する。
【0021】
例えば、第1及び第2検出部131,133は、マスワークス社のマットラブ(MATLAB)を用いて故障電流の元信号にウェーブレット変換を実行する。
【0022】
ここで、ウェーブレット変換は、解析学の一つであって、信号処理、映像処理などに関連して用いられる。ウェーブレット変換は、周波数領域だけでなく、時間領域においても過渡信号の分析が可能であるため、故障箇所を検知するのに好適である。
【0023】
ウェーブレット変換は、1波長の波形を基本波形として設定し、その大きさと位置を変化させながら相関関係を明らかにする。ウェーブレット変換は、フーリエ級数の周波数変化に類似した概念で大きさを変化させる。ウェーブレット変換は、1波長の波形に対して、大きさとともに位置も変化させるので、周波数の情報とともに時間の情報も分かるようになる。例えば、ウェーブレット変換は、時間−スケール領域において可変窓の特性を示すので、低いスケール(low scale)では高周波成分を示し、高いスケール(high scale)では低周波成分を示す。
【0024】
以下では、図2を参照して第1及び第2検出部131,133のウェーブレット変換を説明する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による検出部のウェーブレット変換を説明するための図である。説明の便宜上、第1検出部131を基準として説明する。
【0026】
図2に示すように、第1検出部131は、第1から第nのウェーブレットフィルター部131−1,131−2,…,131―nを含む。ここで、nは自然数を表す。第1ウェーブレットフィルター部131−1は、故障電流の元信号Sを低域通過フィルター(low pass filter)及び高域通過フィルター(high pass filter)に通過させて故障電流の元信号Sから低周波領域の第1近似信号A1及び高周波領域の第1ディテール信号D1を検出する。また、第2ウェーブレットフィルター部131−2は、第1近似信号A1から低周波領域の第2近似信号A2及び高周波領域の第2ディテール信号D2を検出する。第1検出部131は、第1から第nのウェーブレットフィルター部131−1,131−2,…,131―nを用いて故障電流の元信号Sから所望する信号を得るまで検出過程を繰り返して行う。
【0027】
図1に示されたように、第1及び第2比較部141,143は、第1及び第2検出部131,133から第1ディテール信号を受信する。第1及び第2比較部141,143は、第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較する。
【0028】
ここで、基準値は、ケーブル110において故障を判定する基準として設定される。ケーブル110の故障は、ケーブル110の状態や負荷条件、故障抵抗などにより異なる特性を有するため、基準値はケーブル110の状態または条件により様々に設定できる。
【0029】
以下に、図3を参照して基準値を説明する。
図3は、本発明の一実施形態により比較部に設定された基準値を説明するための図である。
図3を参照すると、第1及び第2比較部141,143は、第1ディテール信号を、ケーブル110の状態または条件により設定された基準値190と比較する。例えば、基準値190は、約8350のサンプリングポイントで設定できる。
【0030】
第1及び第2比較部141,143は、第1ディテール信号が基準値190を超過する場合、ケーブル110が故障状態であると判断する。または、第1及び第2比較部141,143は、第1ディテール信号が基準値190以下である場合、ケーブル110が正常状態であると判断する。第1及び第2比較部141,143は、第1ディテール信号が基準値を超過する場合、第1及び第2検出部131,133に故障発生を通知する。
【0031】
図1に示されたように、第1及び第2検出部131,133は、ケーブル110に故障が発生した場合、第1近似信号にウェーブレット変換を実行する。第1及び第2検出部131,133は、第1近似信号から第2近似信号及び第2ディテール信号を検出する。これについては、図2の説明で詳述したので、重複する説明は省略する。第1及び第2検出部131,133は第1ディテール信号または第2ディテール信号を第1及び第2信号フィルター部151,153に提供する。
【0032】
第1及び第2信号フィルター部151,153は第1及び第2検出部131,133からの第1ディテール信号または第2ディテール信号を受信する。第1及び第2信号フィルター部151,153は第1ディテール信号と第2ディテール信号の相関関係に基づいて演算する。
【0033】
具体的に、第1及び第2信号フィルター部151,153は第1ディテール信号と第2ディテール信号の相関関係によるマルチスケール相関関係方法を用いて第1フィルタリング信号を生成する。例えば、第1及び第2信号フィルター部151,153は、第1ディテール信号に第2ディテール信号を乗じて第1フィルタリング信号を生成する。
【0034】
また、第1及び第2信号フィルター部151,153は、第1ディテール信号及び第1フィルタリング信号との演算により第2フィルタリング信号を生成する。第2フィルタリング信号は、下記の相関関係方程式(1)から求めることができる。
【数1】

式中、Cは、上記第1フィルタリング信号を表し、C_newは、上記第2フィルタリング信号を表し、Dは上記第1ディテール信号を表す。
【0035】
式(1)は、第1ディテール信号の計数を二乗して和した値と、第1フィルタリング信号の計数を二乗して和した値とを用いた相関関係係数を第1フィルタリング信号に乗じるように設定される。
【0036】
第2ディテール信号は、ウェーブレット変換を行うことにより、第1ディテール信号に比べて過渡信号に含まれたノイズが減ることになる。同時に、第2ディテール信号は、不規則的に発生するノイズに比べて、ケーブル110の長さに比例して一定したパターンで現われる反射波が同一の時間領域でピークを見せている。すなわち、ノイズの含まれたマキシマ(maxima)の数は、スケールが増加するにつれ漸次的に減少する。したがって、第1ディテール信号に第2ディテール信号を乗じると、ピーク値とノイズの格差がさらに大きくなる。
【0037】
ここで、第2フィルタリング信号は、第1フィルタリング信号からよりも完璧な相関関係信号を検出するために、第1フィルタリング信号に
【数2】

の係数を用いて生成される。
【0038】
第1ディテール信号と第2ディテール信号との乗算により生成される第1フィルタリング信号は、第1ディテール信号に比べて大きくなるため、第1ディテール信号を2倍し、第1ディテール信号の二乗の和を第1フィルタリング信号の二乗の和で割った値の平方根を係数にして、第2フィルタリング信号を生成する。例えば、第1ディテール信号と第1フィルタリング信号は、上記式(1)で、各々の信号を係数に適用するために、各々の信号成分の二乗値を和して式(1)に適用する。第1ディテール信号の二乗の和及び第1フィルタリング信号の二乗の和は、第1ディテール信号及び第1フィルタリング信号における各々の信号成分を式(1)に適用するために多くの信号成分が含まれるように設定される。
【0039】
第1及び第2信号フィルター部151,153は、第1ディテール信号の絶対値と第2フィルタリング信号の絶対値を比較する。ここで、第2フィルタリング信号はケーブル110に故障が発生した場合は、第1ディテール信号よりも大きい絶対値を有することがある。第2フィルタリング信号が第1ディテール信号よりも大きい理由は、ケーブル110の第1端部111及び第2端部113から反射される時点に検出される故障電流は、故障発生時にノイズが増加する特性を有するからである。
【0040】
または、第2フィルタリング信号は、第1ディテール信号よりも小さい絶対値を有することがある。これは、スケールが増加すると、第2フィルタリング信号のノイズ成分が減少する特性を有するからである。
【0041】
第1及び第2信号フィルター部151,153は、第2フィルタリング信号の絶対値が第1ディテール信号の絶対値よりも大きい場合は、第2フィルタリング信号をケーブル110から反射された反射波と判定する。判定後、第1及び第2信号フィルター部151,153は、第2フィルタリング信号を故障検知信号として出力する。
【0042】
第1及び第2信号フィルター部151,153は、第2フィルタリング信号の絶対値が第1ディテール信号の絶対値以下である場合は、第2フィルタリング信号をノイズと判定して第2フィルタリング信号を除去する。除去後、第1及び第2信号フィルター部151,153は、第1ディテール信号を故障検知信号として出力する。
【0043】
第1及び第2信号フィルター部151,153は、第1フィルタリング信号に係数を乗じた値が第1ディテール信号よりも大きい場合は、反射波と判定して故障検知信号として出力し、その他の信号はノイズとみなして除去する。
【0044】
演算部160は、第1及び第2信号フィルター部151,153に接続されて故障検知信号を受信する。ここで、演算部160は、データ通信装置170を用いて第1及び第2信号フィルター部151,153に接続される。例えば、演算部160は、光ケーブルを含む通信線またはGPS装置などを用いたデータ通信装置170を用いて故障検知信号の遅延時間を計算する。
【0045】
演算部160は、故障検知信号の遅延時間とケーブル110の伝送速度を用いて故障箇所までの距離を計算する。演算部160は、下記の式(2)を用いて故障箇所までの距離を計算する。
【数3】

式中、Xは、故障箇所までの距離であり、Lは、ケーブルの両端間の距離であり、νは、ケーブルの伝送速度であり、TAP1は、ケーブル110の第1端部111に最初に到着する信号の第1到着時間であり、TBP1は、ケーブル110の第2端部113に最初に到着する信号の第2到着時間である。
【0046】
演算部160は、第1端部111及び第2端部113のそれぞれに到着する進行波の到着時間の差である遅延時間を受信する。演算部160は、遅延時間にケーブル110の伝送速度を乗じ、ケーブル110の両端間の距離を加算した後、2で割る。
【0047】
例えば、ケーブル110の20Km地点で故障が発生したと仮定すると、第1及び第2信号フィルター部151,153を経てノイズの除去された第1ディテール信号は、それぞれ第1到着時間TAP1及び第2到着時間TBP1にケーブル110の両端に到着する。ここで、ケーブル110の両端間の距離Lが、101.7Km、ケーブル110の伝送速度νが、約137.2m/μs、第1到着時間TAP1を0.008475、第2到着時間TBP1を0.008924に設定して故障箇所までの距離を計算すると、演算部160は、約20.24kmの距離を算出することになる。
【0048】
本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知システムは、ウェーブレット変換により検出された第1ディテール信号と第2ディテール信号とを用いて第1フィルタリング信号を生成し、第1フィルタリング信号と第1ディテール信号とを用いて生成された第2フィルタリング信号を第1ディテール信号と比較してノイズを除去した後、反射波と判定された信号を最終的に出力することにより、ケーブルの故障箇所を検知する。ケーブルの故障箇所検知システムは、オンラインでケーブルの故障箇所を検知することができる。
【0049】
ケーブルの故障箇所検知システムは、信号フィルターが故障電流の元信号に含まれた多量のノイズを効果的に除去し、ケーブルから反射される信号のみを検出することにより、長距離ケーブルにおける急激な信号の減衰現状の影響を減少させる。したがって、ケーブルの故障箇所検知システムは、故障箇所を正確に検知することができる。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知方法を示す図面である。以下では、図1に示されたケーブルの故障箇所検知システムを参照してケーブルの故障箇所検知方法を説明する。
【0051】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知方法は、故障電流の元信号を検出するステップS10と、第1ディテール信号を検出するステップS20と、第1ディテール信号を基準値と比較するステップS30と、第2ディテール信号を検出するステップS40と、第1フィルタリング信号を生成するステップS50と、第2フィルタリング信号を生成するステップS60と、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較して故障検知信号を検出するステップS70と、故障箇所を検知するステップS80と、を含む。
【0052】
ステップS10で、変流部は電流を伝送するケーブルの両端のそれぞれに配置された導電体に設けられて故障電流の元信号を検出する。ここで、変流部はケーブルから故障電流を受信し、データサンプリングにより故障電流の元信号を検出する。
【0053】
ステップS20で、検出部は、故障電流の元信号にウェーブレット変換を適用して低周波領域の近似成分である第1近似信号と高周波領域のディテール成分である第1ディテール信号を検出する。
【0054】
ステップS30で、比較部は、検出部から第1ディテール信号を受信し、予め設定された基準値と比較する。ここで、基準値は、ケーブルにおいて故障を判定する基準として設定される。ケーブルの故障は、ケーブルの状態や負荷条件、故障抵抗などにより異なる特性を有するため、基準値は、ケーブルの状態または条件により様々に設定できる。
【0055】
比較部は、第1ディテール信号と基準値とを比較してケーブルに故障が発生したか否かを判定する。比較部は、第1ディテール信号が基準値以下である場合は、ケーブルに故障がないと判定する。また、比較部は、第1ディテール信号が基準値を超過する場合は、ケーブルに故障が発生したと判定する。
【0056】
ステップS40で、検出部は、比較部の比較結果からケーブルに故障が発生したと判定された場合、第1近似信号にウェーブレット変換を実行して第2近似信号及び第2ディテール信号を検出する。ここで、第2近似信号は、第1近似信号から検出された低周波領域の近似成分である。また、第2ディテール信号は第1近似信号から検出された高周波領域のディテール成分である。
【0057】
ステップS50で、信号フィルター部は、検出部から第1ディテール信号及び第2ディテール信号を受信する。信号フィルター部は、第1ディテール信号と第2ディテール信号との相関関係の演算により第1フィルタリング信号を生成する。例えば、信号フィルター部は、第1ディテール信号に第2ディテール信号を乗じて第1フィルタリング信号を生成する。
【0058】
ステップS60で、信号フィルター部は相関関係方程式を用いて第2フィルタリング信号を生成する。ここで、相関関係方程式は、第1ディテール信号の計数を二乗して和した値と、第1フィルタリング信号の計数を二乗して和した値を用いた相関関係係数を第1フィルタリング信号に乗じるように設定される。
【0059】
ステップS70で、信号フィルター部は、第1ディテール信号と第2フィルタリング信号とを比較する。具体的に、信号フィルター部は第1ディテール信号の絶対値と第2フィルタリング信号の絶対値とを比較して故障検知信号を検出する。信号フィルター部は、第2フィルタリング信号の絶対値が第1ディテール信号の絶対値よりも大きい場合は、第2フィルタリング信号をケーブルの両端から反射された反射波と判定して故障検知信号として検出する。また、信号フィルター部は、第2フィルタリング信号の絶対値が第1ディテール信号の絶対値よりも小さい場合は、第2フィルタリング信号をノイズとして判定して第2フィルタリング信号を除去する。そして、信号フィルター部は、第1ディテール信号を故障検知信号として検出する。故障検知信号は、ケーブルに故障が発生したとき、故障信号がケーブルの母線の両側に進行して母線から反射される時点を検知する信号である。信号フィルター部は、故障検知信号を演算部へ出力する。
【0060】
ステップS80で、演算部は、ケーブルの両端のそれぞれから故障検知信号を検出する。その後、演算部は、データ通信装置を用いて検出された故障検知信号の遅延時間を計算する。そして、演算部は、故障検知信号の遅延時間とケーブルの伝送時間を用いてケーブルの故障箇所までの距離を計算する。
【0061】
本発明の一実施形態によるケーブルの故障箇所検知方法は、進行波を用いてオンラインで故障箇所を検知し、ケーブルの両端の母線から検出された故障信号を用いて故障箇所を計算する。上記ケーブルの両端の母線から故障信号を検出する方法は、両端の母線に最初に到着する信号のみ検出すればよいので、以後に到着する信号により発生する減衰現象から影響を受けることはない。したがって、オフラインで故障箇所を検知する方法と異なって、故障が発生する同時にオンラインで故障箇所検知が行われるので、故障箇所検知が迅速に行われる。このため、故障復旧時間及び費用を最小化することができる。
【0062】
本発明の実施形態は、様々なコンピューターで実行させるためのプログラム命令を含むコンピューター読み取り可能な媒体を含むことができる。上記コンピューター読み取りできる媒体は、プログラム命令、ローカルデータファイル、ローカルデータ構造などを単独でまたは組み合わせて含むことができる。上記媒体は、本発明のために特別に設計され構成されたものであるが、コンピューターソフトウェアの当業者に公知なものを使用するものであってもよい。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障電流を伝送するケーブルと、
前記ケーブルに接続されて前記故障電流を受信し、故障電流の元信号を検出する変流部と、
前記故障電流の元信号から高周波領域のディテール成分である第1ディテール信号及び第2ディテール信号を検出する検出部と、
前記第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較して前記ケーブルの故障を判定する比較部と、
前記第1ディテール信号及び前記第2ディテール信号を用いて第1フィルタリング信号及び第2フィルタリング信号を生成し、前記第1ディテール信号と前記第2フィルタリング信号の比較結果により故障検知信号を出力する信号フィルター部と、
を含むケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項2】
前記検出部は、
前記故障電流の元信号にウェーブレット変換を実行して第1近似信号及び前記第1ディテール信号を検出し、
前記第1近似信号にウェーブレット変換を実行して第2近似信号及び前記第2ディテール信号を検出することを特徴とする請求項1に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記第1ディテール信号が前記基準値を超過した場合に前記第2ディテール信号を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項4】
前記信号フィルター部は、
前記第1ディテール信号に前記第2ディテール信号を乗じて前記第1フィルタリング信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項5】
前記信号フィルター部は、
前記第1ディテール信号と前記第1フィルタリング信号の相関関係方程式から前記第2フィルタリング信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項6】
前記相関関係方程式(1)は、
【数1】

に設定されることを特徴とする請求項5に記載のケーブルの故障箇所検知システム。(式中、C_newは、第2フィルタリング信号を示し、Cは、第1フィルタリング信号を示し、D1は、第1ディテール信号を示す。)
【請求項7】
前記信号フィルター部は、前記第2フィルタリング信号と前記第1ディテール信号の絶対値を比較して前記故障検知信号を出力し、
前記故障検知信号は、前記第2フィルタリング信号の絶対値が前記第1ディテール信号の絶対値よりも大きい場合に出力されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項8】
前記信号フィルター部は、前記第2フィルタリング信号の絶対値が前記第1ディテール信号の絶対値よりも小さい場合には、前記第2フィルタリング信号を除去することを特徴とする請求項7に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項9】
前記信号フィルター部から前記故障検知信号を受信し、前記故障検知信号の遅延時間及び前記ケーブルの伝送速度を用いて故障箇所までの距離を計算する演算部をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項、又は請求項7に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項10】
前記信号フィルター部は、前記演算部に接続されて前記故障検知信号の遅延時間を前記演算部に提供する通信装置をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のケーブルの故障箇所検知システム。
【請求項11】
ケーブルの両端から故障電流の元信号を検出するステップと、
ウェーブレット変換により前記故障電流の元信号から第1近似信号及び第1ディテール信号を検出するステップと、
前記第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較して前記ケーブルに故障が発生したか否かを判定するステップと、
ウェーブレット変換により前記第1近似信号から第2近似信号及び第2ディテール信号を検出するステップと、
前記第1ディテール信号と前記第2ディテール信号との演算により第1フィルタリング信号を生成するステップと、
前記第1ディテール信号及び前記第1フィルタリング信号を用いて設定された相関関係方程式から第2フィルタリング信号を生成するステップと、
前記第1ディテール信号と前記第2フィルタリング信号を比較して故障検知信号を出力するステップと、
を含むケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項12】
前記第2ディテール信号は、前記第1ディテール信号が前記基準値を超過する場合に検出されることを特徴とする請求項11に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項13】
前記ケーブルに故障が発生したか否かを判定するステップは、
前記第1ディテール信号が前記基準値以下である場合に前記ケーブルが正常状態であると判定することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項14】
前記第1フィルタリング信号は、前記第1ディテール信号に前記第2ディテール信号を乗じて生成されることを特徴とする請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項15】
前記故障検知信号を出力するステップは、
前記第1ディテール信号の絶対値と前記第2フィルタリング信号の絶対値とを比較することを特徴とする請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項16】
前記故障検知信号を用いて前記ケーブルの故障箇所を検知するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11から請求項15までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項17】
前記ケーブルの故障箇所は、前記故障検知信号の遅延時間と前記ケーブルの伝送速度を用いて計算されることを特徴とする請求項16に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項18】
前記相関関係方程式(1)は、
【数2】

に設定されることを特徴とする請求項11から請求項16までのいずれか1項に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
(式中、C_newは、第2フィルタリング信号を示し、Cは、第1フィルタリング信号を示し、D1は第1ディテール信号を示す。)
【請求項19】
前記故障検知信号は、
前記第2フィルタリング信号の絶対値と前記第1ディテール信号の絶対値とを比較して前記第2フィルタリング信号の絶対値が前記第1ディテール信号の絶対値よりも大きい場合に検出されることを特徴とする請求項11から請求項16までのいずれか1項、又は請求項18に記載のケーブルの故障箇所検知方法。
【請求項20】
送電系統においてケーブルの故障箇所検知方法を実行させるためのプログラムが記録された電子装置で読み取りできる記録媒体であって、
ケーブルの両端から故障電流の元信号を検出するステップと、
ウェーブレット変換により前記故障電流の元信号から第1近似信号及び第1ディテール信号を検出するステップと、
前記第1ディテール信号を予め設定された基準値と比較して前記ケーブルに故障が発生したか否かを判定するステップと、
ウェーブレット変換により前記第1近似信号から第2近似信号及び第2ディテール信号を検出するステップと、
前記第1ディテール信号と前記第2ディテール信号の演算により第1フィルタリング信号を生成するステップと、
前記第1ディテール信号及び前記第1フィルタリング信号を用いて、設定された相関関係方程式から第2フィルタリング信号を生成するステップと、
前記第1ディテール信号と前記第2フィルタリング信号とを比較して故障検知信号を出力するステップと、
を含むケーブルの故障箇所検知方法を実行させるためのプログラムが記録された記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−75555(P2011−75555A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214121(P2010−214121)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(510255336)コリア エレクトリック パワー コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】