説明

ケーブル充填材料

本発明は、電気ケーブルおよび光ケーブルなどの通信ケーブルのために有用な充填材に関する。1つの実施態様において、充填材が、(a)約60〜95重量パーセントの鉱油と、(b)スチレン−エチレン/ブチレン、スチレン−エチレン/プロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のブロックコポリマーと、(c)約10重量パーセント未満の石油ワックスと、(d)約20重量パーセント未満の中空ガラス微小球と、(e)粘土、コロイド金属酸化物、ヒュームド金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のチキソトロープ剤と、を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルおよび光ケーブルなどの通信ケーブルに使用するための充填材料に関する。特に、前記充填材料が低い誘電率を示し、高温において加工され得る。
【背景技術】
【0002】
多くの通信ケーブルは現在、地中に埋設されている。このような適用において、水がケーブルの性能に深刻な影響を与えることがあるので、通信ケーブルは、ケーブル中への水浸透に耐える必要がある。例えば、電気ケーブルにおいて、水は、電気導体のキャパシタンスのバランスを壊す。光ケーブルにおいて、水は、光ケーブルの完全性に悪影響を与えることがある。
【0003】
ケーブル中への水浸透を最小限に抑えるために当業者によって工夫された1つの解決法は、ケーブルの内部を乾燥空気で加圧することを必要とする。加圧乾燥空気ケーブルはケーブル中への水の移動を止めるのに有用であることがあるが、維持するために費用がかかることが判明しており、地下に埋設されたケーブルのための広範囲に受け入れられた解決法ではない。
【0004】
別の、より広範囲に実施される解決法は、ケーブルを塞ぎ、水の移動を止めるシーラントなどの水不溶性充填材料をケーブルの内部間隙に充填することを必要とする。充填材料が使用されるとき、例えば、組成物のその誘電率、密度、老化および温度安定性、疎水性の性質の他、加工および取扱特性、冷却時の充填材料の収縮、毒性、およびコストなどのいくつかの要因が通常考慮される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の技術は有用である場合があるが、前の段落に記載された要因を考慮しつつ、より低い誘電率を有する様々な充填材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気ケーブルまたは光ケーブルなどの電気または光学系において使用できる充填材が本願明細書に開示される。1つの例示的な実施態様において、充填材が、(a)約60〜95重量パーセントの鉱油と、(b)スチレン−エチレン/ブチレン、スチレン−エチレン/プロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のブロックコポリマーと、(c)約10重量パーセント未満の石油ワックスと、(d)約20重量パーセント未満の中空ガラス微小球と、(e)粘土、コロイド金属酸化物、ヒュームド金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のチキソトロープ剤と、を含む。別の例示的な実施態様において、表面改質ヒュームド金属酸化物、特に、表面改質ヒュームドシリカが使用される。本願明細書において、用語「約(about)」は、全ての数値を修飾するものとみなされる。
【0007】
別の例示的な実施態様において、充填材が、(a)約80.0〜85.0重量パーセントの鉱油と、(b)約2.5重量パーセントのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーと、(c)約3.0重量パーセントの石油ワックスと、(d)約6.0〜11.5重量パーセントの中空ガラス微小球と、(e)約3.0重量パーセントの表面改質ヒュームドシリカと、(f)約0.2重量パーセントの酸化防止剤または安定剤とを含む。
【0008】
当業者は容易に理解するように、1000℃より高い温度の気相中で四塩化ケイ素を加水分解し、高純度の非常に微細な、非孔質、非晶質シリカを生じさせることによって、ヒュームドシリカを製造する。例えば、ポリマー科学および工学の百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第7巻、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、1987年、57ページを参照のこと。用語「表面改質ヒュームドシリカ(surface modified fumed silica)」は一般に、ヒュームドシリカが化学反応によるかまたは他の機構によるかのいずれかによって変えられていることを意味する。以下に詳細に記載されるように充填材を製造する間、ヒュームドシリカをin situで変えることは本発明の範囲内である。
【0009】
本発明の例示的な実施態様の1つの利点は、充填材が、1.85以下の誘電率である低誘電率を有するので、電気ケーブルの導体絶縁の厚さは、必要とされる相互キャパシタンスを維持したまま低減され得るということである。使用される絶縁を少なくすることによって、得られたケーブルは小さくなり、より軽量である。この利点は、その性能を損なわずにより低コストの電気ケーブルを可能にする。
【0010】
本発明において、中空ガラス微小球は、充填材の誘電率を低下させるのを助ける。しかしながら、微小球は課題を提起することがある。中空ガラス微小球の密度が充填材において用いられる他の成分の密度より低いので、中空ガラス微小球は、特に高温条件において相分離することがある。本明細書中で用いられるとき、語句「高温(high temperature)」は、充填材が90℃を超える温度、一般的に約110℃に暴露される場合を意味するために用いられる。本発明の1つの実施態様の1つの利点は、充填材が、他の要因のなかでも、粘土、コロイド金属酸化物、ヒュームド金属酸化物、およびそれらの組合せなどのチキソトロープ剤の使用のために相分離しないということである。
【0011】
ケーブルにおいて使用されるとき、充填材は、それがケーブルから流出するのを防ぐために十分に高い溶融落下温度を有している必要がある。本発明の1つの実施態様の利点は、それが高い溶融落下温度を示すということである。高い溶融落下温度は、ASTM D−127によって測定したときに一般的に90℃より高い溶融落下温度である。本発明の1つの実施態様の別の利点は、それが高温条件において低粘度を示すということである。低粘度は、ASTM D−3236によって測定したときに、110℃および40sec−1の剪断速度において200cP(0.2Pa・s)より低い粘度である。低粘度充填材は、取扱および加工を容易にするという点において望ましい。例えば、低粘度を有する充填材は、ケーブルに存在する間隙をいっそう容易に充填することができる。低粘度はまた、充填材を高温において加工することを可能にする。本発明の充填材は、電気ケーブルを製造する間に冷却され得るがその必要はない。本発明の1つの実施態様のさらに別の利点は、充填材が低密度を有するということである。低密度は、0.8g/cmより小さい密度であり、いくつかの適用において0.5g/cmより小さい場合がある。密度の変化は、中空ガラス微小球の含量に依存する。ケーブルにおいて使用されるとき、充填材は同等の重量をケーブルに寄与せず、従ってより軽量のケーブルをもたらすので、低密度充填材が望ましい。
【0012】
本発明の充填材は様々な電気、光電気(すなわち、光学および電子部品の組合せ)、および光学用途において用いられてもよい。このような用途の具体例には、ケーブル、コネクタ、およびクロージャーなどがある。実例となるコネクタには、不連続コネクタ、モジュラーコネクタ、コネクタボックスおよびグリースボックスなどがあるがそれらに限定されない。実例となるクロージャーには、ドロップワイヤークロージャー、充填クロージャー、埋設クロージャー、およびターミナルブロックなどがあるがそれらに限定されない。
【0013】
本発明の上記の概要は、本発明の各々の開示された実施態様または全ての実施について記載することを意図するものではない。以下の図面および詳細な説明は、実例となる実施態様をより詳しく例示する。
【0014】
本発明は、以下の図面を参照してより十分に説明することができる。
【0015】
図は、縮尺通りに描かれておらず、あくまで例示のためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の充填材を用いる例示的な電気ケーブルを示す。電気ケーブル10は、一般的により合わせられて対を形成する銅ワイヤーなどの2つの電気導体12を含む。各電気導体を囲んでいるのはポリエチレンなどのポリマー絶縁体14である。外部ケーブル構造体18は、より合わせられた対の電気導体と充填材16とを密閉する。図1は一対の電気導体を示すが、当業者は、任意の数の電気導体を使用可能であることを理解するであろう。本発明の重点は充填材にあり、それは、(i)鉱油、(ii)ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるブロックコポリマー、(iii)石油ワックス、(iv)中空ガラス微小球、および(v)チキソトロープ剤を含むかまたは本質的にそれらから成る。場合により、酸化防止剤または安定剤もしくは官能化ポリマーを充填材に添加することができる。充填材は、バルク相および不連続相を有するとして説明することができる。バルク相は、全体積の50体積パーセントまで存在し、鉱油、ブロックコポリマー、石油ワックス、およびチキソトロープ剤を含有する。不連続相は、全体積の50体積パーセントまで存在し、中空ガラス微小球を含有する。上に記載された成分の各々は、以下に詳細に記載される。以下の説明において、全ての記載された重量パーセントは、充填材の全重量を基準にしている。
【0017】
鉱油は最大成分であり、最低60重量%で存在する。鉱油は、最高95重量%で存在する。鉱油は、パラフィン系鉱油またはナフテン系鉱油のどちらであってもよい。鉱油は、15%未満の芳香族含量を有する。ナフテン系鉱油は、ナフテン基を含有する鉱油であり(より適切にはシクロパラフィンと称される)、ASTM D−2501によって、35%を超えるナフテン系および65%未満のパラフィン系である。本発明において使用可能な適した市販の鉱油は、コネチカット州、ミドルバーグのクロンプトン・コーポレーション(Crompton Corp.,Middleburg,Connecticut)製のケイドール(KAYDOL)(登録商標)ホワイト・ミネラル・オイルである。www.cromptoncorp.comのクロンプトンのウェブサイトによれば、ケイドール(登録商標)ホワイト・ミネラル・オイルは、飽和脂肪族および脂環式無極性炭化水素からなる高精製油であり、疎水性、無色、無味、無臭であり、化学的に不活性である。別の有用な市販の鉱油は、同様にクロンプトン・コーポレーション製のセムトール(SEMTOL)(登録商標)40ホワイト・ミネラル・オイルである。
【0018】
充填材は、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるブロックコポリマーを含有する。ブロックコポリマーは、最高10重量%で存在する。適したジブロックコポリマーには、スチレン−エチレン/ブチレンおよびスチレン−エチレン/プロピレンなどがあるがそれらに限定されない。適したトリブロックコポリマーには、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)、およびスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)などがあるがそれらに限定されない。本発明において使用可能な適した市販のSEBSブロックコポリマーには、共にテキサス州、ヒューストンのクラトンポリマー(Kraton Polymers,Houston,Texas)から入手可能なクラトン(KRATON)TMG−1650ブロックコポリマーおよびクラトンTMG−1652ブロックコポリマーなどがある。www.kraton.comウェブサイトによれば、両方のポリマーは質量分析法において30%のブロックスチレン含量を有する線状SEBSブロックコポリマーである。ウェブサイトには、クラトンTMG−1650ブロックコポリマーについて25℃のトルエン中25%の質量において8Pa・sの溶液粘度および1g未満/10分の溶融流量が報告されている。ウェブサイトには、クラトンTMG−1652ブロックコポリマーについて25℃のトルエン中25%の質量において1.35Pa・sの溶液粘度および5g/10分の溶融流量が報告されている。別の有用な市販のブロックコポリマーはクラトンTMG−1726ブロックコポリマーである。
【0019】
充填材は、最高10重量%で存在する石油ワックスを含有する。石油ワックスの1つの機能は、充填材の溶融落下温度を改良する、すなわち、増加させることである。石油ワックスの融点は、90℃より高い。適した石油ワックスは、90℃より高い融点を有するポリエチレンワックスである。適した、本発明において使用可能な市販の石油ワックスには、97.8℃の融点を有することが報告されているパラフリント(PARAFLINT)(登録商標)C105パラフィンワックス、および107.8℃の融点を有することが報告されているパラフリント(登録商標)H1パラフィンワックスなどがある。上に記載された両方のパラフリント(登録商標)パラフィンワックスは、フィッシャー−トロプシュ法によって製造された合成ワックスであると考えられ、コネチカット州、シェルトンのムーア&ミュンガー社(Moore & Munger,Inc.,Shelton,Connecticut)から入手可能である。
【0020】
充填材は、最高20重量%において存在する中空ガラス微小球を含有する。有用な中空ガラス微小球は、(体積によっておよび有効トップサイズ(95%)において)10〜140マイクロメートルの粒度および0.1g/cm〜0.4g/cmの真密度を有する。本発明において使用可能な適した市販の中空ガラス微小球には、ミネソタ州、セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)製の3MTMスコッチライト(SCOTCHLITE)TMガラス気泡のSシリーズ、Kシリーズ、およびAシリーズがある。例えば、S22、K1、K15、K20およびA16タイプの中空ガラス微小球を使用することができ、以下の表1は、それらの真密度および粒度を記載する。用語「真密度(true density)」は、単位体積当たりの質量(重量)によって測定したときの物質の濃度である。機能化中空ガラス微小球を使用することは本発明の範囲内である。
【0021】
表1

【0022】
本発明において使用された中空ガラス微小球は1.0の誘電率を有する空気の大きな体積分率(例えば、90%〜95%程度の空気)を含有するので、それらは、充填材の全誘電率を低減するように機能する。充填材の成分の残りと比べたとき、中空ガラス微小球は低い密度を有するので、微小球は、充填材が加工温度において溶融されるときに相分離する傾向がある。当業者は容易に理解するように、溶融状態にあるときの充填材からの中空ガラス微小球の相分離は、加工問題を生じ、機能の不均一なる充填材をもたらす。チキソトロープ剤の使用は、中空ガラス微小球の相分離の問題を除かないにしても最小限に抑えるのを助けることができることがわかった。
【0023】
中空微小球などの粒子の沈降または浮遊(すなわち、相分離)をストークスの法則として知られている以下の式:
=[d(ρρ)]÷(18η
によって表すことができ、上式中、「V」は、粘度「η」および密度「ρ」の流動媒体による、重力場gにおいて直径「d」および密度「ρ」を有する単一中空球の最終浮遊速度(terminal float velocity)である。ストークスの法則を用いて希釈分散体中の中空球の沈降または浮遊に対する安定性を予想するが、この概念を本発明の充填材に拡大することができる。ストークスの法則を用いて、中空球が相分離しないために必要とされる最小流体粘度を、所与の中空球の直径および密度について推定することができる。充填材の流体粘度をチキソトロープ剤の使用によって制御することができる。
【0024】
充填材は、最高10重量%で存在するチキソトロープ剤を含有する。本発明において有用であるチキソトロープ剤は、粘土、コロイド金属酸化物、ヒュームド金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。有用な金属酸化物には、コロイドであるかまたは発煙されるかに関わらず、シリカ、アルミナ、ジルコニア、およびチタニアなどがあるがそれらに限定されない。適したチキソトロープ剤は、図2に示された剪断粘度対剪断速度応答に似た剪断粘度対剪断速度応答を有する充填材をもたらすはずである。すなわち、所与の温度について、低剪断速度においての充填材の粘度は、高剪断速度においての粘度より高い。低剪断速度において、粘度は、相分離しないように溶液中に中空ガラス微小球を閉じ込めるために十分に高くするべきであり、高い剪断速度において、粘度は、充填材溶液が加工のために流動することができ、例えば、充填材をポンプ輸送することができるように十分に低いので、このタイプの相互作用が望ましい。当業者は理解するように、定応力レオメータ(デラウェア州、ニューキャッスルのTAインストルメンツ(TA Instruments,New Castle,Delaware)製の最新式レオメータ2000など)を用いて所与の温度においての充填材の剪断速度に応じた粘度を連続的に測定し、図2に示されたグラフを作成することができる。
【0025】
図2に示された剪断粘度(V)対剪断速度応答は、ベキ乗則流体として知られる以下の式:
V=kS−(n−1)
によって関連づけられ、上式中、「k」が定数であり、1sec−1においての粘度の指標であり、「n」がベキ指数(PLI)として知られ、剪断が粘度に及ぼす効果の指標である。図2のグラフから、特定のチキソトロープ剤がレオロジーに及ぼす効果、すなわち、充填材の流れ性質を測定することができる。例えばニュートン流体におけるように、充填材の剪断粘度(V)が剪断速度(S)に影響を受けない場合、PLIは1である。粘度が剪断によって減少する充填材は非ニュートン性であり、「チキソトロピー」として知られている。チキソトロピー材料のPLIは0<n<1の範囲である。
【0026】
本発明において、充填材において、チキソトロープ剤の量が増加するとき、充填材の「k」値が増加し、「n」値が減少する。本発明の充填材の最低粘度は、ベキ乗則流体パラメータによって定義されるとき、0.8の「n」値および0.25Pa・sの「k」値において生じる。本発明の充填材の最高粘度は、ベキ乗則流体パラメータによって定義されるとき、0.2の「n」値および7.0Pa・sの「k」値において生じる。粒状チキソトロープ充填材の粒度、表面親液性/疎液性、および濃度などの要因が充填材の粘度(「k」値)および剪断減粘の程度(「n」値)に影響を与えることに留意されたい。1つの実施態様において、チキソトロープ剤は、ヒュームドシリカなどのヒュームド金属酸化物である。
【0027】
異なったタイプのヒュームドシリカは中空ガラス微小球の相分離を異なった程度に最小化するが、表面処理ヒュームドシリカが本発明において特に有用であり得ることが知られている。他の理由の中でも、表面処理ヒュームドシリカは吸湿性であり、未処理ヒュームドシリカに比べて剪断による粘度の低下を速める。本発明において使用可能な適した市販の表面処理ヒュームドシリカには、イリノイ州、タスコラのキャボット・コーポレーション(Cabot Corporation,Tuscola,Illinois)製の、CAB−O−SIL(登録商標)TS−530処理ヒュームドシリカ(ヘキサメチルジシラザン処理された疎水性ヒュームドシリカ)、CAB−O−SIL(登録商標)TS−610処理ヒュームドシリカ(ジメチルジクロロシラン処理された疎水性ヒュームドシリカ)、およびCAB−O−SIL(登録商標)TS−720処理ヒュームドシリカ(ジメチルシリコーン流体処理された疎水性ヒュームドシリカ)などがある。他の適した市販の表面処理ヒュームドシリカには、ニュージャージー州、アレンデールのデグッサ・コーポレーション(Degussa Corporation,Allendale,New Jersey)製のエーロシル(AEROSIL)(登録商標)R−104およびR−106ヒュームドシリカ(オクタメチルシロテトラシロキサン処理された疎水性ヒュームドシリカ)、およびエーロシル(登録商標)R−972およびR−974ヒュームドシリカ(ジメチルジクロロシラン処理された疎水性ヒュームドシリカ)などがある。上に記載されたヒュームドシリカは、表面処理した後に実質的に疎水性である。
【0028】
充填材は場合により、酸化防止剤または安定剤を1重量%未満の量において含有し、加工を改良するかまたは熱によって起こされた環境老化に対して保護することができる。適した酸化防止剤または安定剤には、フェノール、ホスフィット、燐灰土、チオ相乗剤、アミン、ベンゾエート、およびそれらの組合せなどがある。有用な市販のフェノール系酸化防止剤には、ニューヨーク州、タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,New York)製のイルガノックス(IRGANOX)(登録商標)1035、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1076酸化防止剤およびワイヤーおよびケーブル用途の熱安定剤などがある。
【0029】
1つの実施態様において、充填材は、以下の機能性の性質を示す。1メガヘルツにおいて、共にASTM D−150によって測定したときに、それは2.0より小さい誘電率および0.001より小さい誘電正接を有する。別の実施態様において、充填材は1メガヘルツにおいて1.85より小さい誘電率を有する。さらに別の実施態様において、充填材は1メガヘルツにおいて1.65より小さい誘電率を有する。それは、ASTM D−257によって測定したときに500ボルトにおいて1013Ω−cmより大きい体積抵抗率を有する。それは、ASTM D−127によって測定したときに90℃より高い溶融落下点を有する。充填材は、110℃において200cP(0.2Pa・s)の最高溶液粘度および40sec−1の剪断速度を有する。別の実施態様において、充填材は、110℃において75cP(0.075Pa・s)の溶液粘度および40sec−1の剪断速度を有する。SC 4−27スピンドルを有する、100rpmの回転速度のブルックフィールドRVTサーモセル(Thermocel)粘度計を用いて、ASTM D−3236によって溶液粘度を測定することができる。
【0030】
以下の例示的な方法を用いて充填材を作製することができる。成分が実質的に分散されるまで鉱油、ブロックコポリマー、および石油ワックスを少なくとも110℃に加熱された容器内で混合する。110℃の溶液温度を維持したまま、チキソトロープ剤を添加し、溶液中に実質的に分散されるまで均質化した。均質化の間に閉じ込められている場合がある気泡を除去するために、溶液を110℃〜120℃に加熱された真空炉内に置いた。30インチHg(102kPa)の真空が用いられる。その後、その温度を110℃に維持したまま、中空ガラス微小球を溶液に添加する。
【0031】
中空ガラス微小球を相分離することなく少なくとも1時間、少なくとも110℃の温度において本発明の充填材を溶液の形で維持できることが見出された。1つの例示的な実施態様において、充填材を、相分離することなく24時間、少なくとも110℃の温度の溶液中に維持することができる。中空ガラス微小球の相分離を様々な方法を用いて測定することができる。1つの例示的な方法は、充填材を溶液の形で採取し、それをガラス瓶などの容器内に110℃において貯蔵することを必要とする。特定の時間の後、例えば、1時間、4時間、8時間、12時間等の後、ガラス瓶を炉から取り出し、内容物を室温において冷却した。次いで、固化された充填材を半分に切断し、上半分の密度を下半分の密度と比較する。上半分と下半分との間の0.01より小さい密度単位の密度の差は、分離を示さない。
【0032】
1つの適用において、本発明の充填材は電気ケーブルにおいて使用される。例示的な電気ケーブルは、撚り金属(銅など)ワイヤーの25対を含有する。1つの例示的なケーブル製造方法において、撚りワイヤーの単一対は、本発明の充填材を含有するホッパーに送られる。撚りワイヤーの対がホッパー中に移動するとき、充填材はワイヤー間の間隙を充填する。ホッパーの排出端において、撚りワイヤーの対を互いに接近して配置し、ポリマーシースを用いて撚りワイヤーの対を束ね合わせる。この時点で、充填材は、ワイヤー間の間隙を占めるだけでなく、ワイヤーの対間の間隙も占める。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の例示的な電気ケーブルの略断面図である。
【図2】一般的なチキソトロピー材料について溶液粘度と剪断速度との間の相互作用を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約60〜95重量パーセントの鉱油と、
(b)スチレン−エチレン/ブチレン、スチレン−エチレン/プロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のブロックコポリマーと、
(c)約10重量パーセント未満の石油ワックスと、
(d)約20重量パーセント未満の中空ガラス微小球と、
(e)粘土、コロイド金属酸化物、ヒュームド金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される、約10重量パーセント未満のチキソトロープ剤と、を含む充填材。
【請求項2】
前記鉱油がパラフィン系鉱油またはナフテン系鉱油である、請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
前記パラフィン系鉱油またはナフテン系鉱油が、約15%未満の芳香族含量を有する、請求項2に記載の充填材。
【請求項4】
前記石油ワックスが約90℃より高い融点を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項5】
前記石油ワックスが、約90℃より高い融点を有するポリエチレンワックスである、請求項1に記載の充填材。
【請求項6】
前記石油ワックスが、約90℃より高い融点を有する合成ワックスである、請求項1に記載の充填材。
【請求項7】
前記中空ガラス微小球が約10〜140マイクロメートルの粒度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項8】
前記中空ガラス微小球が約0.1〜0.4g/cmの真密度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項9】
前記ヒュームド金属酸化物が表面改質ヒュームドシリカである、請求項1に記載の充填材。
【請求項10】
前記表面改質ヒュームドシリカが実質的に疎水性の表面を有する、請求項9に記載の充填材。
【請求項11】
ASTM D−3236によって測定したときに110℃において約0.2Pa・sより小さい粘度および40sec−1の剪断速度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項12】
ASTM D−150によって測定したときに1メガヘルツにおいて2.0以下の誘電率を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項13】
ASTM D−127によって測定したときに90℃より高い溶融落下温度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項14】
ASTM D−150によって測定したときに1メガヘルツにおいて0.001より小さい誘電正接を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項15】
ASTM D−257によって測定したときに500ボルトにおいて1013Ω−cmより大きい体積抵抗率を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項16】
ベキ乗則流体パラメータによって表したとき、「n」値が0.8であり「k」値が0.25Pa・sである場合、最低粘度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項17】
ベキ乗則流体パラメータによって表したとき、「n」値が0.2であり「k」値が7.0Pa・sである場合、最高粘度を有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項18】
請求項1に記載の充填材を含む電気ケーブル。
【請求項19】
(a)約80.0〜85.0重量パーセントの鉱油と、
(b)約2.5重量パーセントのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーと、
(c)約3.0重量パーセントの石油ワックスと、
(d)約6.0〜11.5重量パーセントの中空ガラス微小球と、
(e)約3.0重量パーセントの表面改質ヒュームドシリカと、
(f)約0.2重量パーセントの酸化防止剤または安定剤と、を含む、充填材。
【請求項20】
前記中空ガラス微小球が約0.125〜0.220g/cmの真密度を有する、請求項19に記載の充填材。
【請求項21】
前記中空ガラス微小球が65〜120マイクロメートルの粒度を有する、請求項19に記載の充填材。
【請求項22】
前記酸化防止剤または安定剤が、フェノール、ホスフィット、燐灰土、チオ相乗剤、アミン、ベンゾエート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の充填材。
【請求項23】
請求項19に記載の充填材を含む電気ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510034(P2007−510034A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538018(P2006−538018)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/032804
【国際公開番号】WO2005/045852
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】