説明

ケーブル組立体用ラッチ

【課題】コネクタへの荷重力とは逆向きのラッチ力を与えるラッチ組立体を提供する。
【解決手段】コネクタ用ラッチ組立体が提供される。ラッチ組立体は、コネクタに結合されたラッチ(42)を有する。ラッチは、横断バー(74)及びこの横断バーから延びるラッチアーム(76)を有する。ラッチアームは、相手コネクタと係合するよう構成される。固定点(72)はラッチに係合する。ラッチは、ラッチアームが相手コネクタから係合解除するよう構成された開位置と、ラッチアームが相手コネクタと係合するよう構成された閉位置との間で、固定点の回りを回転する。付勢機構(90)は、ラッチを閉位置へ付勢するようラッチの横断バーと係合する。閉位置において、ラッチ組立体は、コネクタ及び相手コネクタの少なくとも一方に印加された荷重力とは逆向きに相手コネクタにラッチ力を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にはケーブル組立体に関し、特にケーブル組立体用ラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル組立体コネクタは、コネクタを相手コネクタにしっかりと接続するためのラッチを有するのが一般的である。ラッチはコネクタのハウジングに固定され、相手コネクタがコネクタに印加する荷重力に対抗するよう構成される。荷重力は、ケーブル組立体に沿って軸方向に印加されるのが代表的であり、コネクタ及び相手コネクタを嵌合解除させる。一般的に、ラッチは、一体品として形成されるラッチ部材と保持ばねとを有する。ラッチ部材は、コネクタを相手コネクタに固定するために相手コネクタのラッチキャビティに係合する。保持ばねは、軸の回りでラッチキャビティと係合した状態でラッチ部材を付勢するラッチ力を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、公知のラッチ付きコネクタは、欠点が無い訳ではない。例えば、公知のコネクタのラッチは、ラッチを繰り返し使用すること及びコネクタに向かって下方へラッチを繰り返し押下することにより、容易に塑性変形する。ラッチが塑性変形すると、ラッチは、塑性変形する前はコネクタ同士を固定していたが、固定しなくなる。他の公知のコネクタは、製造に費用と時間がかかる比較的複雑なラッチを有する。
【0004】
さらに、保持ばねが生ずるラッチ力は、コネクタに印加される荷重力に対して直交する方向に発生することがある。荷重力がケーブル組立体コネクタの縦軸に沿って発生するのが一般的であるのに対し、ラッチ力はケーブル組立体コネクタの縦軸に直交する方向に発生する。ラッチ力及び荷重力の直交関係は、保持ばねの曲がりを生じさせることがある。保持ばねが曲がると、コネクタ及び相手コネクタのラッチ解除に要する荷重力の量が減少し、コネクタ及び相手コネクタを嵌合解除させてしまうおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コネクタへの荷重力とは逆向きのラッチ力を与えるラッチ組立体に対するニーズが残っていることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段は、コネクタ用ラッチ組立体により提供される。ラッチ組立体は、コネクタに結合されたラッチを有する。ラッチは、横断バー及びこの横断バーから延びるラッチアームを有する。ラッチアームは、相手コネクタと係合するよう構成される。固定点(anchor point)はラッチに係合する。ラッチは、ラッチアームが相手コネクタから係合解除するよう構成された開位置と、ラッチアームが相手コネクタと係合するよう構成された閉位置との間で、固定点の回りを回転する。付勢機構は、ラッチを閉位置へ付勢するようラッチの横断バーと係合する。閉位置において、ラッチ組立体は、コネクタ及び相手コネクタの少なくとも一方に印加された荷重力とは逆向きに相手コネクタにラッチ力を発生する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成されたケーブル組立体を前から見た斜視図である。
【図2】図1に示されたケーブル組立体の分解図である。
【図3】図2に示されたラッチを下から見た図である。
【図4】図2に示されたラッチと係合する、図2のアクチュエータを示す図である。
【図5】図1に示された上側シェルを上から見た斜視図である。
【図6】相手コネクタに結合された、図1に示されたケーブル組立体を示す図である。
【図7】図6の6線に沿ったケーブル組立体の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を例示により説明する。
【0009】
上述の要約も以下の実施形態の詳細な説明も、添付図面と併せて読めば、より理解されるであろう。本明細書で使用されるように、単数形で上げられた部材又は工程は、明示しない限り、複数の部材又は工程を排除しないものと理解すべきである。また、「一実施形態」に対する言及は、上げられた特徴を組み込んだ追加の実施形態の存在を排除すると解釈することを意図したものではない。その上、例外について明示しない限り、特定の特性を有する単一又は複数の部材を「具備する」又は「有する」実施形態は、その特性を有さないこのような部材を追加で有してもよい。
【0010】
図1は、典型的な一実施形態に従って形成されたケーブル組立体10を示す図である。ケーブル組立体10は、ケーブル14の一端に実装されたコネクタ12を有する。ケーブル14は、例えば、光ファイバ又は銅線を基礎とするケーブル等の任意の導体材料であってもよい。図示の実施形態において、コネクタ12はトランシーバに代表される。コネクタ12は、光ファイバ又は銅線を基礎とするトランシーバであってもよい。コネクタ12は、回路基板実装型リセプタクルコネクタ又はケーブル実装型リセプタクルコネクタ等内に、電子デバイスに差込み可能に接続されるよう構成される。任意であるが、コネクタ12は、寸法及び互換性の要求事項を定めるスモール・フォームファクタ・差込み可能(SFP)モジュール規格等の特定の規格に従って構成されてもよい。別の実施形態において、本発明は、トランシーバ以外の他のタイプのケーブル実装型コネクタで使用されてもよい。
【0011】
ケーブル組立体10はハウジング20を具備し、ハウジング20は上側シェル22及び下側シェル24を有する。上側シェル22及び下側シェル24は、互いに結合され、それらの間に収容室26を区画する。この収容室26は、嵌合端30及びケーブル端32間を縦軸28に沿って延びる。ケーブル組立体10は、嵌合端30に最も近い収容室26に受容された1個以上の回路基板36を有する。回路基板36は、相手コネクタ150(図6参照)と嵌合するための嵌合インタフェースを区画する。回路基板36は、ケーブル14の1本以上の導体に接続される。例えば、ケーブル14は、1枚以上の回路基板36に接続された中心導体を有してもよい。別の一実施形態において、ケーブル組立体10は、回路基板36ではなく、対応する相手コネクタと嵌合するために嵌合端30に最も近く配置された個別コンタクトを有してもよい。個別コンタクトは、例えば、ケーブル14の電線である個別導体の端部に接続されてもよい。
【0012】
ケーブル14は、リテーナ54を用いてコネクタ12に固定される。リテーナ54は、コネクタ12に結合すると共に、ハウジング20に対してケーブル14の外被56を固定するために外被56にも係合する。典型的な一実施形態において、リテーナ54は、プラスチック又はゴム材料等の誘電性材料で製造される。リテーナ54は、オーバーモールド工程の最中に外被56に固定される。別の一実施形態において、リテーナ54は、接合作業で外被56に固定される。他の実施形態において、リテーナ54は、別の方法で外被56に固定されてもよい。任意であるが、リテーナ54は、誘電性材料で製造されるのではなく、金属材料で製造されてもよい。リテーナ54は、圧着作業で外被56に固定されてもよい。
【0013】
ケーブル組立体10は、コネクタ12を相手コネクタ150にしっかりと接続するためにラッチ42を有する。ラッチ42を操作するためのアクチュエータ46は、ケーブル端部32付近から延びる。ラッチ42及びアクチュエータ46は、アクチュエータガイド48を用いてハウジング20に固定される。このアクチュエータガイド48は、ラッチ42及びアクチュエータ46の上に配置される。アクチュエータガイド48は、固定具44を用いてハウジング20に固定される。固定具44はまた、上側シェル22を下側シェル24にしっかり結合するのに使用される。ラッチ42は、閉位置へ付勢される。閉位置において、ラッチ42は、ケーブル組立体10や相手コネクタ150のいずれかに対して印加される荷重力に対抗する。ラッチ42は、荷重力を超えて相手コネクタ150がケーブル組立体10に対して移動するのを防止するように相手コネクタ150に対してラッチ力を印加する。荷重力は、嵌合端30内で縦軸28とほぼ平行に発生する。この場合、ラッチ42が発生するラッチ力は、ケーブル端32の方向に沿って縦軸28とほぼ平行である。
【0014】
ラッチ42を解除するために、解除力は、ケーブル端32の方向に沿ってアクチュエータ46に直接的又は間接的に印加される。アクチュエータ46は、ラッチ42と係合し、ケーブル組立体10が相手コネクタ150から接続解除される開位置へラッチ42が移動するように付勢機構90の力を超える。解除力がアクチュエータ46から除去されると、アクチュエータ46は閉位置へ戻る。
【0015】
図2は、図1に示されたケーブル組立体10の分解図である。ラッチ42は、ハウジング20に結合されると共に相手コネクタ150(図6参照)と係合してケーブル組立体10及び相手コネクタ150を一緒に固定するよう構成される。例えば、ラッチ42は、相手コネクタ150及びケーブル組立体10の一方又は双方に印加される荷重力156(図6参照)の方向に沿って相手コネクタ150に対してケーブル組立体10が移動することを防止する。
【0016】
ラッチ42は、回転可能な基部70及び1個以上の固定点を有する。典型的な一実施形態において、固定点は回転軸72である。或いは、固定点は、ラッチを固定するための適当な任意の機構であってもよい。図示の実施形態において、回転軸72は各基部70から延びている。回転軸72は各基部70を貫通してもよい。任意であるが、回転軸72は、基部70の側面から延びてもよいし、基部70に形成されたキャビティ内に位置してもよい。基部70は、上側シェル22に対する基部70の回転を可能にする丸い端71を有する。上側シェル22は、丸い端71を受容する丸いキャビティを有する。丸い端71は、丸いキャビティ内で回転する。典型的な実施形態において、基部70は回転軸72の回りを回転する。或いは、ラッチ42が回転軸72を有さず、代わりに、丸い端が丸いキャビティ内で回転するように、基部70が丸いキャビティに保持される。別の実施形態において、基部70は、丸い端71を有さず、上側シェル22に接触しないで回転軸72に関してのみ回転する。回転軸72は、基部70とは別体であり、基部70に結合される。或いは、回転軸72は基部70と一体に形成されてもよい。典型的な実施形態において、ラッチ42は、2個の基部70及び2個の回転軸72を有する。しかし、ラッチ42は、任意の数の基部70及び回転軸72を有してもよい。例えば、ラッチ42は、上側シェル22の中心に単一の基部70を有してもよいし、ラッチ42を支持するために3個以上の基部70を有してもよい。複数の基部70を有する実施形態において、一部の基部70のみが回転軸72を有してもよい。
【0017】
横断バー74は、基部70間を延びると共に基部70同士を結合する。横断バー74はまた、基部70を超えて延びるように構成されてもよい。単一の基部70を有する一実施形態において、横断バー74は、基部70から延びるタブとして構成されてもよい。横断バー74は、回転軸72に対してケーブル端32に向かった回転軸72の後方に設けられる。回転軸72及び横断バー74間の距離は、アクチュエータ46によって横断バー74に力が伝達される際にラッチ42の動作を制御するモーメントアームを定める。付勢機構90の耐荷重(load capacity)を超えるように要求されるモーメントアームが大きいほど、横断バー74は、回転軸72からより後方に配置される。横断バー74はまた、付勢機構90を受容するキャビティを有する。任意であるが、横断バー74は、スロット、タブ、切欠、又は付勢機構90に結合する他の任意の適当な機構を有してもよい。
【0018】
アーム76は、基部70からケーブル組立体10の嵌合端30の方へ延びる。各アーム76は、横断バー74とは反対側の基部70の一側に位置する。アーム76の長さは、相手コネクタにラッチ力を発生するのに必要なモーメントアームに少なくとも部分的に基づいて選択される。さらに、アーム76の長さは、相手コネクタ150に設けられるラッチキャビティ154(図6参照)の位置に依存する。任意であるが、単一のアームや3本以上のアームがあってもよいし、アーム76の一部は他のアーム76とは異なる長さを有してもよい。或いは、アーム76は、基部70からではなく横断バー74から延びてもよい。別の実施形態において、ラッチ42は、基部70の嵌合端30に向かって配置された第2横断バーを有する。第2横断バーからは、1本以上のアーム76が延びてもよい。
【0019】
各アーム76は、相手コネクタ150のラッチキャビティ154と係合するために末端にフック80を有する。典型的な一実施形態において、フック80及び回転軸72は、ラッチが閉位置に位置する際に縦軸28と平行な平面内にある。ラッチ42が開位置へ回転すると、フック80及び回転軸72は、縦軸28に対して所定角度で延びる平面内に位置する。閉位置において、フック80及び回転軸72は、縦軸28に沿って延びるラッチ力を与えることができる。
【0020】
各フック80は、相手コネクタ150がコネクタ10に結合される際に相手コネクタ150と係合するよう構成される丸い前端82を有する。結合している間、丸い前端82は、ラッチ42を開位置へ付勢する傾斜部として作用する。各フック80はまた、相手コネクタ150と係合するよう構成されたラッチ点を有する。図示の実施形態において、このラッチ点は、フック80の一端でケーブル端32を向いた平坦な係止面84である。或いは、ラッチ42は、相手コネクタ150と係合する任意の適当なラッチ点を有してもよい。係止面84は、ケーブル組立体10が相手コネクタ150に結合される際にラッチキャビティ154内に受容される。平坦な係止面84はまた、ラッチキャビティ154に形成されたリップ部又は切欠に係止するよう構成された、ケーブル端32の方へ延びるタブを有してもよい。任意であるが、フック80は、ラッチキャビティ154に圧入するよう寸法が設定されてもよい。ここで、フック80は、摩擦によってラッチキャビティ154内に保持される。別の実施形態において、フック80は、ラッチキャビティ154の側面に係止する歯、又はラッチキャビティ154に形成された切欠を有してもよい。
【0021】
ラッチ42は、回転軸72によってケーブル組立体10の上側シェル22内に配置される。或いは、基部70が、上側シェル22内にラッチ42を保持してもよい。ラッチ42は、開位置及び閉位置間を回転軸72の回りに回転するよう構成される。ラッチ42はまた、基部70の丸い端71の回りに回転してもよい。一実施形態において、ラッチ42は、縦軸28に対して0〜90°の範囲内で回転する。ここで、ラッチ42は、閉位置にあり、0°で縦軸28と平行である。さらに、ラッチ42は、縦軸28と平行ではない角度で閉位置にあってもよい。例えば、ラッチ42の閉位置は、縦軸28に対して−10°であってもよい。
【0022】
開位置において、ラッチ42のフック82は、コネクタ20から、結合後は相手コネクタ150から離れる方向に位置する。閉位置において、ラッチ42のフック82は、コネクタ20に、結合後は相手コネクタ150に接近又は接触して位置する。付勢機構90は、閉位置でラッチ42を付勢し、ラッチ42を閉位置に付勢するよう横断バー74と接触した状態で位置する。付勢機構90は、横断バー74と面一に配置されるか、任意の適当な結合機構を用いて横断バー74に結合されてもよい。典型的な実施形態において、付勢機構90はばねである。或いは、付勢機構90は、閉位置でラッチ42を付勢できる任意の機構であってもよい。付勢機構90は、荷重力156がラッチ42をラッチキャビティ154から係合解除させないように、荷重力156を相殺するのに必要な耐荷重に基づいて選択され寸法が設定される。ラッチ42はまた、荷重力156を相殺する任意の数の付勢機構を有してもよい。
【0023】
アクチュエータ46は、ラッチ42の横断バー74と係合するよう構成された傾斜部100を有する。傾斜部100は、付勢機構90に横断バー74を付勢するよう構成される。アクチュエータ46は、ユーザがアクチュエータ46に力を印加する輪102を有する。或いは、アクチュエータ46は、タブ、ノブ、又は他の任意の適当な力印加機構を有してもよい。ユーザは、縦軸28に沿ってケーブル端32の方へ輪102を引っ張ることにより、アクチュエータ46に力を印加する。力が印加されると、傾斜部100は、付勢機構90の力に対抗するようラッチ42の横断バー74と係合する。ラッチ42は、相手コネクタ150のラッチキャビティ154からラッチ42のフック80を係合解除する開位置へ回転する。
【0024】
アクチュエータガイド48は、上側シェル22の溝94内にアクチュエータ46を保持する。アクチュエータガイド48はまた、上側シェル22内にラッチ42及び付勢機構90を保持する。アクチュエータガイド48は、固定具44で上側シェル22に固定される。アクチュエータ46は、溝94に沿って延びる細長部92を有する。溝94は位置決めタブ96を有し、アクチュエータ46は位置決めスロット98を有する。位置決めスロット98は、アクチュエータ46が溝94を通って摺動すると、位置決めタブ96と係合してアクチュエータ46を案内する。アクチュエータ46は、アクチュエータガイド48及び溝94内で縦軸28に沿って摺動するよう構成される。
【0025】
図3は、ラッチ42の底面図である。横断バー74は、底面73及び嵌合端面75を有する。底面73は付勢機構90と係合する。一実施形態において、底面73は、付勢機構90と面一に配置される。或いは、付勢機構90は、底面73に形成された凹部内に載置されてもよい。別の実施形態において、底面73は、切欠、タブ、又は横断バー74に付勢機構90を結合させる他の任意の適当な結合機構を有してもよい。付勢機構90は、横断バー74と係合してラッチ42を閉位置に付勢する。
【0026】
アクチュエータ46の傾斜部100は、傾斜面101を有する。傾斜面101は、アクチュエータ46の細長部92からコネクタ組立体10の嵌合端30の方へ傾斜する。傾斜面101は、横断バー74の嵌合端面75と係合するよう構成される。傾斜面101は、嵌合端面75と面一に配置される。任意であるが、傾斜面101は、ケーブル端32の方向に沿った力が縦軸28に沿ってアクチュエータ46に印加される際に嵌合端面75と接触状態となるよう引き込まれる。別の実施形態において、嵌合端面75はスロットを有し、傾斜面101は嵌合端面75のスロットと係合するタブを有してもよい。或いは、スロットが傾斜面101に配置され、タブが嵌合端面75に配置されてもよい。
【0027】
傾斜面101は、アクチュエータ46に力が印加されると、嵌合端面75に係合する。力は、嵌合端面75に沿って傾斜面101を摺動させ、これにより、ラッチ42を付勢機構90に付勢する。アクチュエータ46への力が付勢機構90の耐荷重を超える場合、付勢機構90が駆動されてラッチ42が開位置へ回転できる。アクチュエータ46への力が解除されると、付勢機構90は、嵌合端面75に傾斜面101と係合させる。傾斜面101は、ラッチ42が閉位置に回転できる位置へ付勢される。
【0028】
図3に示されるように、アクチュエータガイド48は、アクチュエータ46と面一に配置される。アクチュエータガイド48及びアクチュエータ46はまた、アクチュエータガイド48をアクチュエータ46に結合する適当な結合機構を有してもよい。アクチュエータガイド48はまたタブ49を有する。このタブ49は、ラッチ42の回転軸72に当接して配置される。タブ49は、回転軸72に結合する凹部又は他の結合機構を有してもよい。アクチュエータガイド48は、上側シェル22に固定されており、上側シェル22に形成されたキャビティ又はポケット内でラッチ42、回転軸72、付勢機構90及びアクチュエータ46を所定位置に保持する。上側シェル22のキャビティについては、図5を参照してより詳細に説明する。
【0029】
図4は、アクチュエータ46及びラッチ42の係合を示す。アクチュエータ46及びラッチ42の係合は、図4に図示されているような開位置へラッチ42を回転させる。アクチュエータは閉位置で始まる。解除力103は、図4に図示されるように、アクチュエータ46を開位置に移動させるようアクチュエータ46に直接的又は間接的に印加される。解除力103は、縦軸28とほぼ平行に印加される。アクチュエータ46の傾斜部100は、横断バー74と係合し、付勢機構90の耐荷重を超える開離力105を発生する。開離力105は、縦軸28にほぼ直交する。付勢機構90への開離力105により、ラッチ42は開位置に回転できる。開位置において、ラッチ42は、縦軸28に対して所定角度107で配向される。一実施形態において、角度107は、0〜90°の範囲内にあってもよい。
【0030】
アクチュエータ46への力が除かれると、付勢機構90は閉鎖力109を発生する。閉鎖力109は開離力105とは逆向きである。付勢機構90は、アクチュエータ46の傾斜部100と接触するよう横断バー74を押圧する。位置を戻す力111が、解除力103とは逆向きに発生し、アクチュエータ46を閉位置に戻す。アクチュエータ46が閉位置に移動すると、ラッチ42は、付勢機構90により閉位置へ付勢される。閉位置において、ラッチ42のアーム76は、縦軸28とほぼ平行に配置される。或いは、閉位置において、アーム76は、縦軸28に対して負の角度で配置されてもよい。
【0031】
図5は、図1に示された上側シェル22を上から見た斜視図である。上側シェル22は、ラッチ42を保持するための保持キャビティを有する。基部キャビティ104は、ラッチ42の基部70を保持する寸法及び形状に設定される。基部キャビティ104の表面113は、基部70の丸い端71を受容するよう丸くされてもよい。任意であるが、表面113は、基部70が表面内で回転できる任意の構成を有してもよい。さらに、基部キャビティ104の表面113は、基部70の回転を可能にするよう摩擦を低くしたり、潤滑剤を差したりしてもよい。別の実施形態において、基部70は、基部キャビティ104に形成されたスロットに対応するタブ又は突条を有してもよい。タブは、基部キャビティ104内に基部70を保持するようスロット内へロックする。タブは、基部70の回転を可能にするようスロット内で移動する。
【0032】
回転軸キャビティ106は、ラッチ42の回転軸72を保持するよう構成される。この回転軸キャビティ106は、その中での回転軸72の回転を可能にする寸法及び形状に設定される。回転軸キャビティ106の表面115は、丸くされるか、回転軸72の回転を可能にする任意の構成を有してもよい。さらに、表面115は、回転軸72の回転を可能にするよう小さな摩擦係数を有するか、潤滑剤が差されてもよい。一実施形態において、回転軸ポケットは、その中に回転軸72の一部を受容する開口を有してもよい。これらの開口は、上側シェル22内に回転軸72を保持する。
【0033】
付勢機構90を保持するために、付勢機構キャビティ108が設けられる。付勢機構キャビティ108の寸法及び形状は、付勢機構90の耐荷重に依存する。付勢機構90の必要な耐荷重が増大すると、付勢機構90の寸法も増大する。従って、付勢機構キャビティ108の寸法及び形状は、付勢機構90の寸法の増大に伴って増大する。付勢機構キャビティ108は、スロット、タブ、切欠、付勢機構キャビティ108内で付勢機構90を結合する他の適当な結合構造を有してもよい。
【0034】
ラッチ42が閉位置に位置する際にアーム76が載置されるように、アームキャビティ110が設けられる。アームキャビティ110は、ラッチ42が閉位置に位置する際にアーム76を受容する寸法及び形状に設定される。さらに、横断バー74を保持するために、横断バーキャビティ112が設けられる。横断バーキャビティ112は、ラッチ42が回転すると横断バー74が移動できる深さを有する。
【0035】
典型的な実施形態において、ラッチ42及び付勢機構90は、アクチュエータガイド48によりキャビティ104,106,108,110,112内に保持される。アクチュエータガイド48は、ラッチ42及び付勢機構90の上に位置する。次に、アクチュエータガイド48は、ラッチ42及び付勢機構90をその下に保持するよう、固定具44を用いて上側シェル22に結合される。
【0036】
図6は、相手コネクタ150に結合されたケーブル組立体10の図である。相手コネクタ150の外側シェル部のみが図6に示される。ケーブル組立体10の嵌合端30は、相手コネクタ150の嵌合端152内に受容されるよう構成される。相手コネクタ150は、嵌合端155を有するラッチキャビティ154を具備する。これらのラッチキャビティ154は、ラッチ42のアーム76と整合する。
【0037】
ラッチ42のアーム76は、上側シェル22から延びると共に、相手コネクタ150の嵌合端152の上に配置される。ラッチ42は閉位置で図示される。閉位置において、ラッチ42のアーム76は、ケーブル組立体10の縦軸28とほぼ平行に配置される。
【0038】
ケーブル組立体10が相手コネクタ150に結合されると、各フック80の丸い前端82は、相手コンタクト150の嵌合端152に接触する。丸い前端82は、嵌合端152に沿って摺動して、付勢機構90に対してラッチ42を付勢させる。ラッチ42は、アクチュエータ46を引っ張ることなく、自動的に開位置へ回転する。開位置において、ラッチ42は、相手コネクタ150のラッチキャビティ154と係合できる。ケーブル組立体10が相手コネクタ150に一旦嵌合すると、付勢機構90は、フック80がラッチキャビティ154内に位置する閉位置にラッチ42を戻すようラッチ42を付勢する。
【0039】
フック80の係止面84は、ラッチキャビティ154と係合して内部にラッチ42を保持するように平坦である。係止面84は、ラッチキャビティ154の嵌合端155と係合し、相手コネクタ150内にケーブル組立体10を保持する。一実施形態において、フック80の平坦な係止面84はまた、ラッチキャビティ154のリップ部と係止するよう構成されたタブを有してもよい。
【0040】
図7は、図6の7−7線に沿ったケーブル組立体10の側断面図である。図7は、閉位置にあるラッチ42を示す。付勢機構90は、横断バー74と係合し、横断バー74を上方へ付勢する。ラッチ42は、横断バー74及びアーム76がほぼ同じ縦平面内に位置するように、回転軸72の回りに回転する。ここで、縦平面は縦軸28と平行である。縦平面において、アーム76は、相手コネクタ150との係合状態へ付勢される。フック80は、ラッチキャビティ154内に位置する。フック80の係止面84は、ラッチキャビティ154の嵌合端155と係合し、相手コネクタ150内にケーブル組立体10を保持する。
【0041】
相手コネクタ150に対してケーブル組立体10を移動させる方向に縦軸28に沿って且つ縦軸28とほぼ平行に、荷重力156が延びる。この荷重力156は、相手コネクタ150からケーブル組立体10を嵌合解除する縦方向の力を代表する。付勢機構90は、荷重力156と少なくとも同等である耐荷重を有する。付勢機構90の耐荷重はラッチ42に伝達され、ラッチ42がラッチ力158を発生することができる。荷重力156に応えて、ラッチ力158は荷重力156に対抗する。ラッチ力158は、フック80の端部84によってラッチキャビティ154の嵌合端155に印加される。ラッチ力158は、荷重力156とは逆向きに印加される。荷重力156及びラッチ力158の双方は、縦軸28に沿って平面157内に延びる。
【0042】
ラッチ力158は、荷重力156と少なくとも同等であり、荷重力156がケーブル組立体10又は相手コネクタ150に印加される際に閉位置にラッチ42を保持する。付勢機構90はまた、その耐荷重より大きな破断(break-off)力制限を有する。破断力により、ケーブル組立体10が相手コネクタ150から接続解除することができる。
【0043】
ケーブル組立体10及び相手コネクタ150の接続中、フック80は、相手コネクタ150の嵌合端152と係合する。ケーブル組立体10及び相手コネクタ150の嵌合により、付勢機構90の耐荷重と相殺する力が発生する。ラッチ42は、フック80がラッチキャビティ154に隣接配置できる開位置へ付勢される。次に、ラッチ42は、フック80がラッチキャビティ154と係合するように、閉位置へ移動する。各フック80の平坦な係止面84は、ラッチキャビティ154内にフック80を保持する。付勢機構90の耐荷重により、ケーブル組立体10及び相手コネクタ150の一方又は双方に印加される荷重力156と同じ平面157内で、ラッチがラッチ力158を発生することができる。ラッチ力158は、荷重力156に対抗し、ケーブル組立体10及び相手コネクタ150間の接続を維持する。
【0044】
ケーブル組立体10及び相手コネクタ150を嵌合解除するために、付勢機構90の破断力制限に少なくとも相当する開離力がアクチュエータ46に印加される。アクチュエータ46は、傾斜部100をラッチ42の横断バー74と接触した状態にするよう縦軸28に沿って移動する。傾斜部100への開離力は、付勢機構90の破断力制限を超え、ラッチ42を開位置へ強制する。ラッチ42が開位置にあると、ケーブル組立体10及び相手コネクタ150は嵌合解除される。ケーブル組立体10及び相手コネクタ150の嵌合解除の後、付勢部材90は、ラッチ42を閉位置へ戻すようにラッチ42を強制する。ラッチ42の横断バー74は、アクチュエータ46の傾斜部100と係合し、縦軸28に沿って閉位置までアクチュエータ46を移動させる。
【0045】
本明細書に記載された実施形態は、ケーブル組立体への荷重力とは逆向きに発生するラッチ力を有するラッチ組立体を提供する。実施形態は、ラッチ組立体の付勢機構の曲がり及び不良を防止する。従って、ケーブル組立体は、相手コネクタからケーブル組立体コネクタを嵌合解除することなく、より大きな荷重力に耐えることができる。
【符号の説明】
【0046】
12 コネクタ
42 ラッチ
46 アクチュエータ
48 アクチュエータガイド
72 回転軸(固定点)
74 横断バー
76 アーム(ラッチアーム)
84 係止面(ラッチ点)
90 付勢機構
150 相手コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ(12)に結合されたラッチ(42)及び該ラッチに係合する固定点(72)を具備するコネクタ用ラッチ組立体であって、
前記ラッチは、横断バー(74)及び該横断バーから延びるラッチアーム(76)を有し、
前記ラッチアームは、相手コネクタ(150)と係合するよう構成され、
前記ラッチは、前記ラッチアームが前記相手コネクタから係合解除するよう構成された開位置と、前記ラッチアームが前記相手コネクタと係合するよう構成された閉位置との間で、前記固定点の回りを回転し、
前記閉位置において、前記ラッチ組立体は、前記コネクタ及び前記相手コネクタの少なくとも一方に印加された荷重力とは逆向きに前記相手コネクタにラッチ力を発生することを特徴とするラッチ組立体。
【請求項2】
前記ラッチを前記閉位置へ付勢するよう前記ラッチと係合する付勢機構(90)をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のラッチ組立体。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記ラッチの前記横断バーと係合することを特徴とする請求項2記載のラッチ組立体。
【請求項4】
前記ラッチ力及び前記荷重力は、前記コネクタの縦軸と平行に延びることを特徴とする請求項1記載のラッチ組立体。
【請求項5】
前記荷重力は、前記コネクタ及び前記相手コネクタを嵌合解除する方向に印加されることを特徴とする請求項1記載のラッチ組立体。
【請求項6】
前記ラッチアームの一端に配置されたラッチ点(84)をさらに具備し、
前記ラッチ点及び前記固定点は、前記ラッチ組立体が前記閉位置に位置する際に、前記コネクタの縦軸と平行に延びる平面内に配置され、
前記ラッチ点及び前記固定点は、前記ラッチが前記開位置に位置する際に、前記縦軸に対して所定角度で延びる平面内に配置されることを特徴とする請求項1記載のラッチ組立体。
【請求項7】
前記コネクタに結合されたアクチュエータ(46)をさらに具備し、
前記アクチュエータは、前記ラッチを前記開位置へ付勢するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のラッチ組立体。
【請求項8】
前記荷重力とは逆向きに前記アクチュエータを案内するアクチュエータガイド(48)をさらに具備することを特徴とする請求項7記載のラッチ組立体。
【請求項9】
前記付勢機構はばねであることを特徴とする請求項2記載のラッチ組立体。
【請求項10】
前記アクチュエータは前記横断バーと係合することを特徴とする請求項12記載のラッチ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−253812(P2011−253812A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−121213(P2011−121213)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】