説明

ゲル製品

【課題】 揮散性薬剤の揮散性の向上と揮散の持続性向上とゲルの保形性の維持とを図ることができるゲル製品を提供する。
【解決手段】 揮散性薬剤を含有したゲル13と、ゲル13が充填される容器11と、容器11の上部に取り付けられるキャップ12と、を備えるゲル製品10であって、ゲルの強度は、100gf/cm以上で、キャップ12の天面板17及び側面板18、または、キャップ12の天面板17と容器11の側面板26に揮散口を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、忌避剤、防虫剤、芳香剤、消臭剤等の揮散性薬剤を含有したゲルを容器に充填したゲル製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゲル製品の一例として、キャップ本体のフランジに切欠きを形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8に示すように、上記特許文献1に記載されたゲル製品70は、ゲル状の薬剤71が収容された容器72にキャップ73を装着しており、このキャップ73のフランジ74の上端部に切欠き75,75を相対向して形成する。また、キャップ73のキャップ本体76の上面に、複数のリブ77,78,79を有し、この複数のリブ77,78,79と、キャップ本体76とにより複数の揮散口80を形成する。
【0004】
このようなゲル製品70では、キャップ73の上部を流動する空気aが、キャップ本体76の揮散口80から容器72の開口部81を介して容器72内に流入して薬剤71に接触した後、開口部81を介して揮散口80からキャップ73の上部に流出するという空気aの流通経路を形成すると共に、キャップ73の側面に流れてくる空気bがフランジ74の切欠き75,75からキャップ本体76の揮散口80と容器72の開口部81とを介して容器72内に流入して薬剤71に接触した後、開口部81を介して揮散口80からキャップ73の上部に流出する空気bの流通経路を形成することで、薬剤71をキャップの73の外部に揮散させるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−166986号公報(第2−5頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、キャップ73の上部から容器72内に流入する空気aと、キャップ73の側面から容器72内に流入する空気bと、が同一の揮散口80を通過するために、揮散性が良好ではない。
【0007】
また、一般的にこの種のゲル製品は、内部に収容されているゲル状の薬剤の保形性が十分ではなく、運搬時、保管時に形くずれが起きたり、転倒した場合などにゲル状の薬剤が外部に漏れ出る可能性があり、商品価値を損なうことがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、揮散性薬剤の揮散性の向上と揮散の持続性向上とゲルの保形性の維持とを図ることができるゲル製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1) 本発明に係るゲル製品は、揮散性薬剤を含有したゲルと、前記ゲルが充填される容器と、前記容器の上部に取り付けられるキャップと、を備えるゲル製品であって、
前記ゲルのゲル強度は、100gf/cm以上で、
前記キャップの天面板及び側面板、または、前記キャップの天面板と前記容器の側面板に揮散口を設けることを特徴とする。
【0010】
前記(1)に記載の発明によれば、ゲルのゲル強度を100gf/cm以上にするので、ゲルの保形性を向上でき、ゲルの漏れを防止できる。また、キャップの天面板及び側面板、または、キャップの天面板と容器の側面板に揮散口を設けるので、両方の揮散口から空気を効率良く取り込み、且つ流通することができる。これにより、キャップ内に取り込まれた空気を回り易くすることができるので、揮散性薬剤の揮散性や、揮散の持続性を向上できる。
【0011】
(2) 本発明に係るゲル製品は、前記(1)に記載のゲル製品において、 前記キャップの前記側面板に設けられる揮散口は、上部開口を前記天面板まで形成すると共に、下部開口を前記容器の上端部近傍まで形成することを特徴とする。
【0012】
前記(2)に記載の発明によれば、側面板に設けられる揮散口の上部開口を天面板まで形成すると共に、下部開口を容器の上端部近傍まで形成するので、側面板に設けられた揮散口から空気を効率良く取り込み、且つ流通することができる。これにより、キャップ内に取り込まれた空気を回り易くすることができるので、揮散性薬剤の揮散性や、揮散の持続性を向上できる。
【0013】
(3) 本発明に係るゲル製品は、前記(1)又は(2)に記載のゲル製品において、前記ゲルは、少なくとも揮散性薬剤として植物精油類を含有することを特徴とする。
【0014】
前記(3)に記載の発明によれば、ゲルに揮散性薬剤として植物精油類を含有させるので、蚊やハエなどの害虫を忌避、防虫させると共に、芳香、消臭効果を付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゲル製品によれば、揮散性が良好ではない、ゲルが形くずれしたり漏れる、という問題を解消でき、これにより、揮散性の向上と、揮散の持続性向上と、ゲルの保形性の維持と、を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るゲル製品の第1実施形態を示す外観斜視図、図2は図1に示すゲル製品の側面図、図3は図1に示すゲル製品の縦断面図、図4は第1実施形態の変形例1を示す縦断面図、図5は第1実施形態の変形例2を示す縦断面図、図6は本発明に係るゲル製品の第2実施形態を示す縦断面図である。
【0017】
(第1実施形態)
まず図1,図2を参照して、本発明の第1実施形態であるゲル製品について説明する。
【0018】
本発明の第1実施形態であるゲル製品10は、容器11と、キャップ12と、揮散性薬剤を含有したゲル13と、から構成されるもので、ゲル13が充填された容器11にキャップ12を取り付ける。
【0019】
ゲル13は、本実施形態では、揮散性薬剤(例えば、防虫剤、害虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤、消臭剤等)、ゲル化剤(例えば、寒天、カラギナーン、ジェランガム、キサンタンガム等)、溶剤(例えば、水、アルコール、多価アルコール等)等を、加熱して均一に混合し、容器11に充填した後、冷却固化させることで、ゲル強度100gf/cm以上に製造する。また、必要に応じて、界面活性剤(例えば、POE硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POE・POPブロックポリマー、SG−3(松本油脂製)等の非イオン系、脂肪族カルボン酸塩、ジアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等の陰イオン系、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン系、アルキルベタイン等の両性系、アミン酸系、等の各種界面活性剤)、防腐剤(例えば、パラベン、ビオサイド(商品名)等)、酸化防止剤(例えば、BHT、BHA、ポリフェノール、ビタミン等)、着色剤(例えば、黄色、青色、赤色、緑色、紫色、橙色等)、紫外線吸収剤、消泡剤等を配合してもよい。
【0020】
揮散性薬剤としては、ペニーロイヤル油、レモングラス油、オレンジ油、カシア油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油、ヒバ油、ピメント油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ラベンダー油、ルー油、ユーカリ油等の植物精油類の1種又は2種以上を用いることがよく、これらは上記用途の他にも吸血阻害効果を付与することができる。
この他にも、上記植物精油類の主成分として含有されている、リモネン、ピネン、カルボン、シトロネラール、リナロール、シトラール、ゲラニオール、オイゲノール、メントール等のテルペン等を用いてもよい。
【0021】
ゲル13は、ゲル強度を100gf/cm以上に製造するものであり、これは、ゲル13の保形性を向上させ、転倒時等におけるゲル13の漏れを防止するためである。しかしながら、ゲル強度を高くすることにより、若干ゲル13に含有される揮散性薬剤が揮散し難くなる可能性がある。そこで、以下に説明する容器11及びキャップ12を使用することで、揮散性を向上すると共に、揮散の持続性を向上することができる。
【0022】
容器11は、樹脂のブロー成形によって薄肉状に形成されるもので、上端部にフランジ14を有し、このフランジ14の内周側に開口部15を有する。また、開口部15は、出荷時及び使用時前に、例えば、アルミニウム製のシール16(図3参照)により密封されており、使用時に、該シール16が取り外される。なお、夏季の載置面は場所により温度の高低があり、温度により揮散性に影響が出る場合があるので、容器11に少なくとも1mm以上10mm以下の脚又は台を設けるようにしてもよい。
【0023】
キャップ12は、樹脂の射出成形によって薄肉状に形成され、略四角形の板形状の天面板17と、略四角柱状の側面板18と、を一体的に形成するもので、天面板17には、揮散口19が形成され、側面板18には、スリット状の揮散口(以下、揮散スリット20という。)が形成される。
【0024】
揮散口19は、天面板17の中心から点対称に形成される花びらを模した形状の開口で、天面板17の面積に対して30%以上の開口率で形成されていれば良いものであるが、開口率は30〜85%の方がより好ましい。
【0025】
ここで、揮散口19の開口率が30〜85%であることにより、ゲル製品10を使用する際、揮散口19があればキャップ12内に空気を効率良く取り込み、且つ流通させることができる。この効果を得るためには、揮散口19の開口率が50%以上であることがよい。一方、揮散口19の開口率が85%を超えると、空気の流通性・流入性が不安定になり、揮散の持続性が悪くなるため85%以下とするのがよい。
【0026】
揮散スリット20は、キャップの幅方向に所定の間隔を存して複数形成されるもので、上部開口を天面板まで形成すると共に、下部開口を容器の上端部近傍まで形成する。また、この揮散スリット20の開口面積は、揮散口19の開口面積と同等以上が好ましい。さらに、揮散スリット20の大きさは、幅5〜20mm、側面視長さ10〜30mmの範囲にする方が好ましいものであるが、この範囲に限定されるものではない。
【0027】
また、キャップ12は、天面板17と側面板18とによって、ゲル13の表面の上方、且つキャップ12の内部に空間を形成するもので、その空間の容積は、120cm以上であれば良いものであるが、120cm〜250cmの方がより好ましい。
【0028】
また、キャップ12は、天面板17に花びらを模した揮散口19を形成しているので、使用者に対して、意匠的に優しい印象を与えることができる。なお、揮散口19は、花びら以外にも動物模様、図形文字、キャラクター等の所期の意匠性をもたせることができる。
【0029】
そして、このように構成されたゲル製品10内に形成される空間の容積と、キャップ12に形成される揮散口19及び揮散スリット20の揮散口総面積とのバランスとしては、使用初期において、空間容積190〜240cmに対しては、総面積50〜70cmの揮散口を形成した方が好ましい。
【0030】
図3に示すように、キャップ12は、側面板18の内側で、高さ方向のほぼ中央部に形成した係止突部21を容器11のフランジ14に外嵌させることにより容器11に取り付けられる。そのため、キャップ12を容器11に嵌め込むことによりキャップ12と容器11が容易に外れることを防ぐ、さらに、キャップ12を容器11から取り外す際は、キャップ12を容器11に対して回転させることにより容易に外すことができ、側面板18に大きな応力をかけることがないので、側面板18を破損することなく、確実な取り付け・取り外しができる。
【0031】
また、キャップ12は、側面板18の内側面に、それぞれリブ22を対向するように設け、このリブ22を、天面板17の外縁内側と側面板18の内側とを繋ぐように、且つ側面板18の内側方向に向けて突出形成する。これにより、天面板17と側面板18との組合せ剛性を高めることができ、キャップ12の変形を防止できる。
【0032】
また、キャップ12は、側面板18に揮散スリット20を設けているので、キャップ12の高さ寸法が大きくなり、キャップ12内に大きな空間を形成する。これにより、揮散スリット20から取り込んだ空気を回り易くすることができるので、空気の流通性・流入性や、揮散性薬剤の揮散性や、揮散の持続性を向上できる。
【0033】
また、キャップ12は、揮散スリット20の下部開口を、容器11の上端部であるフランジ14の上面の近傍まで形成するので、揮散スリット20の下部開口を、容器11に収容されているゲル13に接近させることができる。これにより、容器11内に外気を流入させ易くすると共に、ゲル13に多くの空気を接触させることができるので、空気の流通性・流入性や、揮散性薬剤の揮散性や、揮散の持続性を向上することができる。
【0034】
さらに、キャップ12は、側面板18の下端部の外縁部を、容器11の最大幅部の外縁部に略等しい形状となるように形成している。これにより、外観的に安定した意匠を付与することができると共に、空間の遮蔽性の向上を図ることができる、また、遮蔽性を高めることにより、不要な箇所からの空気の流入を防ぐことができるので、揮散口19及び揮散スリット20の空気の流通性・流入性を安定させ、揮散の持続性をより一層向上することができる。
【0035】
このようなゲル製品10は、使用時において、容器11の開口部15に貼り付けられているシール16を取り外し、容器11のフランジ14にキャップ12の係止突部21を外嵌させて使用される。そして、外気が側面板18の揮散スリット20から流入されて容器11内のゲル13に接触し、ゲル13から揮散した薬剤成分がその空気と共に天面板17の揮散口19または側面板18の揮散スリット20から外部へと放出される。
【0036】
従って、ゲル製品10によれば、ゲル13のゲル強度を100gf/cm以上にするので、ゲル13の保形性を向上でき、転倒時等におけるゲル13の漏れを防止できる。また、キャップ12の天面板17に揮散口19を設けると共に、キャップ12の側面板18に揮散スリット20を設けるので、揮散口19及び揮散スリット20から空気を効率よく取り込むことができると共に、キャップ12内に大きな空間を確保することができる。これにより、キャップ12内に取り込まれた空気を回り易くすることができるので、空気の流通性・流入性や、揮散性薬剤の揮散性や、揮散の持続性を向上できる。
なお、キャップ12は、揮散口(揮散スリット)の大きさを使用状況に応じて変更できる開度調節機能を有していてもよい。その開度調節機能としては、キャップにスライド式の部材を設ける方式、キャップに再接着可能な粘着シールを貼り付ける方式、キャップにヒンジで開閉自在な蓋を設ける方式、キャップを2重構造にして、片方のキャップを回転させることで開度を調整する方式などが挙げられる。
【0037】
なお、本実施形態の変形例1として、キャップ12は、図4に示すようなキャップ12aであってもよい。このキャップ12aは、内キャップ23と外キャップ24とから構成され、内キャップ23及び外キャップ24にはそれぞれ天面板17に複数の揮散口19が、側面板18に複数の揮散スリット20が形成される。そして、内キャップ23と外キャップ24は天面板中心に設けられるピン25によって回動自在に連結され、外キャップ24を内キャップ23に対して回動することで揮散口19及び揮散スリット20の開度を調整することができる。なお、この場合、内キャップ23及び外キャップ24は円筒形状に形成される。
【0038】
さらに、本実施形態の変形例2として、ゲル製品10は、図5に示すように、ゲル13より高さの低い容器11bにゲル13を嵌め入れ、この容器11bをすべて被覆するように容器11bにキャップ12bを嵌合する構成にしてもよい。このキャップ12bには、天面板17に複数の揮散口19、側面板18に複数の揮散スリット20が形成される。なお、この場合、ゲル13は容器11bに充填して形成することはできないので、予め所定の形状に形成されたゲル13を容器内に嵌め入れる。また、ゲル13は包材に包まれた状態とし、用時に包材を除くようにするとよい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態であるゲル製品について説明する。なお、第1実施形態と重複する部分については、図に同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図6に示すように、本実施形態のゲル製品30は、天面板17に複数の揮散口19が形成されるキャップ12cと、側面板26に複数の揮散スリット20が形成される容器11cと、容器12cに収容されるゲル13とを備え、ゲル13を充填させた容器11cの上端開口にキャップ12cを嵌合、載置する構成である。
その他の構成及び作用効果については上記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、ゲルとして、本発明の実施形態では植物精油類を含有したゲルを使用しているが、これに限定されず、揮散性薬剤を含有したゲルであれば、いずれの場合にも適用してよい。
また、本発明の実施形態では、予め容器にゲルが入れられているが、これに限定されず、包材に包まれたゲルを用時に開封し容器内に入れることにより、ゲル製品を揮散可能な状態にしてもよい。
さらに、本発明の実施形態では、キャップ及び容器の材料に樹脂を使用しているが、直射日光などの熱の影響を考慮して、材料に断熱性樹脂を用いる又は容器に断熱シート(例えば、アルミ箔など)を貼り付けてもよい。
【0041】
その他、前述した実施の形態に例示した容器、キャップ、シール、揮散口、揮散スリットなどの材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明のゲル製品10(本発明品)の作用効果を確認するために行った試験について説明する。
【0043】
各試験に使用する本発明品は、図1に示すように、容器11と、キャップ12と、ゲル13と、から構成されるもので、容器11に充填されるゲル13には、揮発性薬剤として植物精油類を使用する。
【0044】
ゲル13は、植物精油類(ここでは吸血阻害効果、忌避効果をもつものを数種混合した。)8重量%、ゲル化剤1.5重量%、界面活性剤15重量%を含有し、溶剤に加えて全体を100重量%とし、これらを加熱して均一に混合し、容器11に充填した後、冷却固化させて、ゲル強度250gf/cmとなるように調製した。このゲル13は、さらに防腐剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤、着色剤を適量含有させたものである。
上記の各種成分は、本明細書に記載されたものより選択して用いればよい。
【0045】
キャップ12は、天面板17に花びらを模した揮散口19を設けると共に、天面板17から側面板18にかけて、複数の揮散スリット20を設ける。また、キャップ12の大きさは、上端幅74.4mm、下端幅81mm、高さ49.5mmで、使用時において、キャップ12内に形成される空間の容積は120cmである。
【0046】
揮散口19は、天面板17の面積約37.2cmに対して、60%の開口率で形成され、即ち、22.3cmの開口を形成する。
【0047】
揮散スリット20は、幅が7mm、側面視長さが21.5mm、22.70mm、26.0mmの3種類で、キャップ12の側面に適宜間隔を存して16個形成される、また、側面視長さが26mmの揮散スリット20の場合、その下部開口は、容器11のフランジ14の上端面から2mm高い位置に形成される。
【0048】
[揮散試験]
本試験では、本発明品と比較例を2個ずつ用意し、それぞれの8日間の揮散量を測定する。また、比較例は、天面板が容器の上端部に近接対向し、側面側に空気の流入口のないキャップを用い、残りの仕様を本発明品と同一としたゲル製品を使用する。なお、試験揮散条件は、27℃60%RH無風である。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
揮散試験の結果、本発明品の平均揮散量が28.99gであるのに対して、比較例の平均揮散量は18.35gであることから、本発明品は比較例より、58.0%揮散量が向上することがわかった。また、本試験後、本発明品の揮散量を引き続き測定したところ、揮散性薬剤の揮散は40日以上有効に持続することがわかった。
【0051】
[吸血阻害効力試験]
本試験では、本発明品を用いて揮散処理したケージと、本発明品を設置しないケージ(比較例)とを2個ずつ用意し、それぞれのケージ内での供試虫の吸血率を算出して、本発明品の供試虫に対する吸血阻害効力を評価する。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
(試験方法)
(1)25cm立方の金属製ケージ(20メッシュ)に動き回らないように金網袋で固定したマウスを吸血源として天井面に吊り下げ、ケージをラップで覆い、密閉空間にする。
(2)本発明品をケージ内中央に設置し、自然揮散を開始する。
(3)揮散を開始してから2時間後に、供試虫(ヒトスジシマカ、雌成虫)約25頭を入れる。
(4)1時間曝露後の吸血固体数を数える。
(5)試験中は、温度条件を27±1℃に、湿度条件を60±10%に保つようにする。
(6)試験ゲージを設置した居室は、自然換気条件とする。
【0054】
吸血阻害効力試験の結果、本発明品の平均吸血率が33.0%であるのに対して、比較例の平均吸血率は93.7%であることから、本発明品が64.7%の吸血阻害率を有することとなり、吸血阻害効果をもつ植物精油類が有効に揮散されたことがわかった。
【0055】
[忌避効力試験]
本試験では、図7に示すように、長さ40cm(φ20cm)の2個(A区、C区)の円筒部材101,102と、長さ22cm(φ20cm)の1個(B区)の円筒部材103と、円筒部材101,103の間に仕切り板104を入れる試験装置105を用い、本発明品を揮散処理した円筒内への供試虫の滞留状況から、本発明品の供試虫に対する忌避効力を評価した。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
(試験方法)
(1)A区とB区との間に仕切り板104を入れてA区を密封し、A区内で本発明品を揮散させる。
(2)A区およびC区には、誘引源としてマウスを金網で固定して設置する。
(3)揮散を開始してから10分後に、A区とB区の間の仕切り板104を抜きとり、すばやく、B区の投入口からヒトスジシマカの雌約50頭を投入する。
(4)5分後のA区、C区のそれぞれの円筒内にいる供試虫数を計数して忌避率を算出する。
【0058】
表3から明らかなように、忌避効力試験の結果、1回目の試験では、忌避率が87.9%であり、2回目の試験では、忌避率が67.6%である。よって、本発明品は、77.8%の忌避率を有することとなり、吸血阻害効果と同様に十分な忌避効果が得られることがわかった。
【0059】
また、本発明品を用いて悪臭検体(イソ吉草酸、アンモニア)に対する消臭試験を行なった結果、上記吸血阻害効果、忌避効果と同様に十分な消臭効果が得られることがわかった。
【0060】
さらに、本発明品を用いて供試菌(黄色ブドウ球菌、黒カビ)に対する抗菌・防カビ試験を行なった結果、上記吸血阻害効果、忌避効果、消臭効果と同様に十分な抗菌・防カビ効果が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るゲル製品の第1実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すゲル製品の側面図である。
【図3】図1に示すゲル製品の縦断面図である。
【図4】第1実施形態の変形例1を示す縦断面図である。
【図5】第1実施形態の変形例2を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係るゲル製品の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】忌避効力試験に用いた試験装置の外観斜視図である。
【図8】従来のゲル製品の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 ゲル製品
11 容器
12 キャップ
13 ゲル
14 フランジ
15 開口部
16 シール
17 天面板
18 側面板
19 揮散口
20 揮散スリット
21 係止突部
22 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性薬剤を含有したゲルと、前記ゲルが充填される容器と、前記容器の上部に取り付けられるキャップと、を備えるゲル製品であって、
前記ゲルのゲル強度は、100gf/cm以上で、
前記キャップの天面板及び側面板、または、前記キャップの天面板と前記容器の側面板に揮散口を設けることを特徴とするゲル製品。
【請求項2】
前記キャップの前記側面板に設けられる揮散口は、上部開口を前記天面板まで形成すると共に、下部開口を前記容器の上端部近傍まで形成することを特徴とする請求項1に記載のゲル製品。
【請求項3】
前記ゲルは、少なくとも揮散性薬剤として植物精油類を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−213640(P2006−213640A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28019(P2005−28019)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】