説明

ゲートアンテナ

【課題】直交する直線偏波出力を時間的に切り替えることで、円偏波型アンテナの通信距離が短いという欠点を克服し、かつ無線タグの角度依存性の少ない安定した認識率を得ることができるゲートアンテナを提供すること。
【解決手段】ほぼ矩形の平板状アンテナ導体12の面内における所定方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第1の給電部13が設けられる。また、前記所定方向にほぼ垂直な方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第2の給電部が設けられる。前記第1および第2の給電部には、高周波スイッチング回路21により交互に高周波電力が給電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグシステムで使用されるゲートアンテナに関し、特に、パッチアンテナを用いたゲートアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2.45GHz帯の無線タグ(RFID)を用いたシステムが注目されている。直線偏波アンテナを使用した無線タグシステムにおいては、使用する無線タグに内蔵されるアンテナの向きでその読み取り率が変化する。電界の振幅方向に無線タグのアンテナを一致させたときが電波を受けやすく読み取り率が最大になるが、無線タグをアンテナの時計の針のように回していくとだんだん読み取り難くなり角度90度になるとほぼ読めなくなる。この様子を図4の(a)に示す。この無線タグの角度依存性を解決する方法は、使用するアンテナを円偏波型にすればよい。図4の(b)に示すように円偏波型アンテナでは偏波面が360度ぐるぐると回っているので、無線タグをどのような角度に回転させても読み取ることができる。しかし、この円偏波型アンテナは、同じ出力のとき直線偏波型の通信距離に比べて、半分程度しかないといった欠点がある。電波法により使用できるアンテナの最大出力は決まっているので、通信距離が短いからといってある規定以上に出力をあげることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の目的は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、直線偏波型アンテナの無線タグ角度依存性を軽減するとともに、通信距離を直線偏波型と同程度とするゲートアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のゲートアンテナは、ほぼ矩形の平板状アンテナ導体と、この平板状アンテナ導体面内の所定方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第1の給電部と、前記所定方向にほぼ垂直な方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第2の給電部と、前記第1および第2の給電部に交互に高周波電力を給電するように接続された第1および第2の給電線と、これらの第1および第2の給電線に前記高周波電力を交互に給電するように接続された高周波スイッチング回路と、を備えたことを特徴とするものである。
【0005】
また、上記本発明のゲートアンテナにおいては、前記第1および第2の給電部は、前記平板状アンテナ導体のほぼ中心部を中心とする同一の円周上に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、直交する二つの直線偏波出力を交互に切り替えて出力することにより、直線偏波型アンテナを使用した場合の無線タグ指向性を緩和でき、かつ円偏波型アンテナより強電界で使用することができる。
【0007】
よって無線タグの読み取れる距離を直線偏波型アンテナと同じくでき、無線タグの角度依存性を軽減して安定した認識率を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施形態につき詳細に説明する。通常、直線偏波型パッチアンテナは、誘電体を挟んで導体パターンと接地導体が対向する層構造を有する基板上に、約1/2波長の正方形導体パターンを配置し、共振させるための給電部を設けることによって形成できる。例えば2.45GHz帯のパッチアンテナを考えると1/2波長は(Cは光速、fは周波数、λは波長)
λ/2 = C/2f = 3×108 / 4.9×109 = 61.2(mm)
となる。この長さは空気中での長さであるので、例えば使用する基板の比誘電率を4.3とした場合には、屈折率分だけ波長が短縮されるので
61.2 / √4.3 = 29.5(mm)となる。
【0009】
給電部の位置はその入力インピーダンスが、使用するシステムのインピーダンス(例えば50Ω系)に整合するように設定される。
【0010】
図1はかかるパッチアンテナを用いた本発明のゲートアンテナの構成例を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は図(a)のX軸に沿った断面図である。
【0011】
誘電体基板10の裏面には接地導体11が設けられ、表面にはほぼ正方形の板状の導体パターン12が設けられている。この導体パターン12は、1辺の長さが約1/2波長となっている。この導体パターン12の面上の所定の位置には、第1および第2の給電部13、14が選定配置されている。第1の給電部13は、この導体パターン12の面内の所定方向、例えば、図のX軸方向に対して共振する直線偏波を発生する位置に配置されている。第2の給電部14は、前記所定方向にほぼ垂直な方向、例えば図のY軸方向に対して共振する直線偏波を発生する位置に配置されている。これらの第1および第2の給電部13、14の位置は、また、その入力インピーダンスが、使用するシステムのインピーダンス系に整合される位置に設定されている。また、給電部13、14はパッチアンテナの中心(図のXY軸の交点)からほぼ等しい距離にある。
【0012】
これらの第1および第2の給電部13、14には、図2に示されるように、第1および第2の給電線23、24が接続され、これらの給電線を介して高周波電力が交互に給電される。第1および第2の給電線23、24は例えば、同軸ケーブルにより構成されている。高周波電力は図示しないが別に設けられた高周波電力回路から供給され、この高周波電力は高周波スイッチング回路21により切り替えられ、第1および第2の給電線23、24に交互に給電される。この高周波スイッチング回路21としては、例えば1つの入力を2つの出力ポートに振り分けるSPDTスイッチ(Single Port Double Throw)などで構成できる。この電気的スイッチはアンテナ内部にあっても外部にあってもよい。
【0013】
次に、図3により本発明のゲートアンテナの動作を説明する。
【0014】
同図において無線タグ31、32は、それらの長辺方向が無線タグに内蔵されたアンテナの方向である。高周波スイッチング回路21の2つの出力ポートのうちCH1がオフとなり、CH2がオンの場合、図3(a)に示すように、第2の給電線24を介して第2の給電部14に給電され、垂直偏波が発生する。このため、無線タグ31は読み取れるが無線タグ32は読み取れない。しかし、次のタイムスロットではCH1がオンとなりCH2がオフとなり、第1の給電線24を介して第1の給電部13に給電されるので水平偏波が発生する。この結果、逆に、無線タグ31は読み取れなくなり、無線タグ32は読み取れるようになる。したがって、チャンネル切替の1サイクル内では垂直水平のどちらかの偏波を受信して垂直方向と水平方向の無線タグを読み取ることができるようになる。
【0015】
またこの場合、無線タグを45度に傾けた場合が最も通信距離は短くなるが、直線偏波型アンテナのように全く読めなくなるような角度は存在しない。その上、出力電力は直線偏波型と同じであり、同じ電界強度を円偏波アンテナで得ようとした場合の半分とすることができる。
【0016】
上記の構成のアンテナ22において、第1の給電部13と第2の給電部14に電界の位相差を90度分与えて給電すれば円偏波がえられるが、本発明においては、この給電部13と給電部14に交互に給電することによって、パッチアンテナから直交する直線偏波を交互に出力することができる。
【0017】
円偏波型アンテナは、直交する直線偏波を同時に出力しているので、無線タグの設置角度によらないという利点があるが、無線タグを同一方向へ揃えている場合などその垂直方向の出力は無駄となるので、同じ出力の場合は円偏波型アンテナの最大通信距離は、直線偏波型アンテナに比べて半分程度になってしまう。
【0018】
本発明では、直交する直線偏波を90度の位相差をつけて出力するという円偏波方式ではなく、直交する直線偏波を交互に時間的に切り替えて使用することにより、同出力において電界強度を上げることが出来る。さらに直交する偏波が交互に出力されていることにより、無線タグをどちら偏波方向に向けても読みとることができる。
【0019】
このように構成された本発明の実施形態に係るパッチアンテナおよび無線タグリーダライタによれば、直交する二つの直線偏波出力を交互に切り替えて出力することができるので、直線偏波型アンテナを使用した場合の無線タグ指向性を緩和でき、かつ円偏波型アンテナより強電界で使用することができる。
【0020】
よって無線タグの読み取れる距離を直線偏波型アンテナと同じくでき、無線タグの角度依存性を軽減して安定した認識率を得ることができる。
【0021】
本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態であるゲートアンテナの要部構成図で、同図(a)は平面図、同図(b)は断面図である。
【図2】本発明の実施形態であるゲートアンテナの駆動回路を含む構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態であるゲートアンテナの動作を説明する図である。
【図4】従来の直線偏波型および円偏波型アンテナの出力電波と無線タグの方向との読み取り関係を示した図である。
【符号の説明】
【0023】
10…誘電体基板
11…接地導体
12…パターン導体
13,14…第1、第2の給電部
21…高周波スイッチング回路
22…パッチアンテナ
23,24…第1、第2の給電線
31,32…無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ矩形の平板状アンテナ導体と、この平板状アンテナ導体面内の所定方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第1の給電部と、前記所定方向にほぼ垂直な方向に対して共振する直線偏波を発生するように、前記平板状アンテナ導体面内の所定の位置に配置された第2の給電部と、前記第1および第2の給電部に交互に高周波電力を給電するように接続された第1および第2の給電線と、これらの第1および第2の給電線に前記高周波電力を交互に給電するように接続された高周波スイッチング回路と、を備えたことを特徴とするゲートアンテナ。
【請求項2】
前記第1および第2の給電部は、前記平板状アンテナ導体のほぼ中心部を中心とする同一の円周上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のゲートアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−279202(P2006−279202A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91398(P2005−91398)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】