説明

コイン型記憶媒体

【課題】効率良く製造でき、全体として十分な質量と強度を備えたコイン型記憶媒体を提供する。
【解決手段】本発明に係るコイン型記憶媒体は、環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターン(1a)を備えるICタグ(1)と、質量調整補強材(2)と、樹脂で形成された外殻体(3)とで構成される。該質量調整補強材(2)は該コイル状パターン(1a)の内側に配置されていても良く、該外殻体(3)が中空の円板状をなす場合は、該ICタグ(1)の該コイル状パターン(1a)が該外殻体の内周面に沿って配置されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信により非接触でデータの授受を行うことのできるICタグを装備した記憶媒体のうち、特に円板形状のコイン型記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品代金の精算に用いられるプリペイドカードは、接触式の磁気カードから非接触式のICカード(ICタグを装備したカード)に移行しつつあるが、このICカードは非接触式であるため、支払に必要な所定の情報を保持し、通信機能を備えるものでさえあれば、その形状に制限はない。そこで、近年では、一般的な長方形のカードに代わり、代金精算機能を備えた携帯電話等も使用されるようになっている。
【0003】
パチンコやスロットマシーンなどによる娯楽を提供する遊戯施設においても、従来の磁気カードに代わってICカードが球やコインの貸し出しに際し用いられるようになってきているが、近年では、更に、一般的な長方形のカードに代わり、ICタグを搭載したコイン(以下、コイン型記憶媒体と称す)が使用されつつある。
【0004】
上記コイン型記憶媒体は、合成樹脂で形成した円板状の外殻体内部にICタグを配置して作ることができるが、この種の記憶媒体は、球やコインの貸し出し機に硬貨と同様に投入する方式での使用が望まれているところ、その質量が小さすぎると、機械への投入に際し不具合が生じることが多くなるという問題があった。そこで、コイン型記憶媒体の質量を大きくするための方法が提案されており、そのような方法として、例えば、特許第3533497号公報や、特許第3554295号公報に開示されている製造方法がある。
【0005】
特許第3533497号公報に開示されている製造方法では、コイン型記憶媒体の外殻体を構成する樹脂材料に高比重材料を混合することにより、重量化を図ることができる。一方、特許第3554295号公報に開示されている製造方法では、コイン型記憶媒体の外殻体の周縁部を金属リングで形成することにより、重量化を図ることができる。
【特許文献1】特許第3533497号公報
【特許文献2】特許第3554295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許第3533497号公報に開示されている製造方法では、高比重材料の混合が樹脂材料の流動性を悪化させ、製造効率を低下させるという問題があった。また、高比重材料として使用される金属粉末が製造に使用される金型の摩耗を早め、コストを増大させるという問題もあった。
【0007】
一方、特許第3554295号公報に開示されている製造方法で製造されるコイン型記憶媒体は、内部に配置されるICタグの基板の形状により、補強材を配置できる場所が限定されいた。そのため、補強材が配置されず金属リングによる支持が及ばない中央部分において強度が低くなるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、効率良く製造でき、全体として十分な質量と強度を備えたコイン型記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコイン型記憶媒体は、環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターンを備えるICタグと、質量調整補強材と、樹脂で形成された外殻体とで構成される。
【0010】
該質量調整補強材は、該コイル状パターンの内側に配置されていてもよい。
【0011】
該外殻体は中空の円板状をなし、該ICタグは該コイル状パターンが該外殻体の内周面に沿って配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるコイン型記憶媒体は、環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターンを備えるICタグが独立して安定した構造であるため、質量調整補強材の配置が制約されず、それぞれを自由に配置することが可能となる。そのため、ICタグと質量調整補強材を最適な状態で配置することにより、コイン型記憶媒体の質量を必要なものとしながら全体的な強度を高めることができる。また、質量調整補強材のみで質量と強度を調整できるため、樹脂に高比重材料等を混合することなく、製造効率とコスト面で優れた樹脂を使用することができる。
【0013】
ICタグと質量調整補強材が配置される位置に制限はなく、適宜最適な配置位置とすれば良いが、例えば、質量調整補強材を、コイル状パターンの内側に配置してもよい。この場合、コイル状パターンの内側にできる空間を質量調整用として有効に利用するとともに、樹脂で形成された外殻体の強度が最も弱くなる部位を簡単に補強できる。
【0014】
また、樹脂で形成した外殻体が中空の円板状であれば、周縁部は周壁により強度を高めることができるので、この部位に補強材を配置する必要がない。そのため、コイル状パターンがこの外殻体の内周面に沿って配置される大きさのICタグを採用することにより、コイル状パターンの内側の質量調整用空間を大きくし、質量調整の幅を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係るコイン型記憶媒体の具体例を示し、(a)は分解斜視図、(b)は完成状態の斜視図である。
このコイン型記憶媒体は、ICタグ1と、質量調整補強材2と、樹脂で形成された外殻体3とで構成される。ICタグ1は、環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターン1aを備え、このコイル状パターン1aにはICチップ1bが溶着されている。なお、線材には、銅線が採用されている。外殻体3は、円形底板の周縁に沿って側壁を設けた形状の扁平部材の一対3a、3bで構成される中空の円板状で、両部材3a、3bの底板と側壁で囲まれて形成される内部空間に、ICタグ1と質量調整補強材2を内包する構造となっている。質量調整補強材2は、この外殻体3の内部に収まる大きさの円板で、このコイン型記憶媒体全体として必要とされる質量を持たせるため、金属で形成されたものとなっている。ただし、質量調整補強材2の材質に制限はなく、十分な質量と強度を得られるものであればその他の材質のものであってもよい。
【0016】
このコイン型記憶媒体は、環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターン1aを備えるICタグ1が独立して安定した構造であるため、質量調整補強材2の配置が制約されず、それぞれを自由に配置することが可能となる。そのため、ICタグ1と質量調整補強材2を最適な状態で配置することにより、コイン型記憶媒体の質量を必要なものとしながら全体的な強度を高めることができる。また、質量調整補強材2のみで質量と強度を調整できるため、樹脂に高比重材料等を混合することなく、製造効率とコスト面で優れた樹脂を使用することができる。
【0017】
質量調整補強材2は、その直径がコイル状パターン1aよりも小さく、コイル状パターン1aの内側に配置されている。この場合、コイル状パターン1aの内側にできる空間が質量調整用として有効に利用しながら、外殻体3の強度が最も弱くなる部位が簡単な構造で補強することができる。
【0018】
外殻体3は上述の通り中空の円板状となっている。そして、周縁部の強度は周壁により高められておりこの部位に補強材を配置する必要がないことから、コイル状パターン1aが外殻体3の内周面に沿って配置される大きさのICタグ1が採用されている。そのため、コイル状パターン1aの内側の質量調整用空間が大きくされ、質量調整の幅を広げることができるものとなっている。
【0019】
なお、外殻体3の内面には、ICタグ1と質量調整補強材2の配置位置を安定させるため、これらを抑える図示しない突起が設けられている。ただし、突起の形状に制限は無く、ICタグ1と質量調整補強材2の配置状態に応じて、適切な形状のものを適宜設ければ良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るコイン型記憶媒体の具体例を示し、(a)は分解斜視図、(b)は完成状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ICタグ
1a コイル状パターン
2 質量調整補強材
3 外殻体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に巻いた線材で形成されたコイル状パターン(1a)を備えるICタグ(1)と、質量調整補強材(2)と、樹脂で形成された外殻体(3)とで構成されることを特徴とするコイン型記憶媒体。
【請求項2】
該質量調整補強材(2)が該コイル状パターン(1a)の内側に配置されている請求項1に記載のコイン型記憶媒体。
【請求項3】
該外殻体(3)は中空の円板状をなし、該ICタグ(1)の該コイル状パターン(1a)が該外殻体(3)の内周面に沿って配置されている請求項1又は2に記載のコイン型記憶媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−108000(P2008−108000A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289153(P2006−289153)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(505033824)株式会社アイ・ディ・ソリューション (4)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【出願人】(503263241)株式会社昭好 (4)
【Fターム(参考)】