説明

コク味フレーバー化合物および使用

本発明は、消費財およびフレーバー組成物に対しコク味フレーバーを提供する式(I)で表されるγ−グルタミルおよびβ−アスパラギルペプチド化合物、および当該化合物を含む消費財およびフレーバー組成物に関する。該化合物を調製する酵素法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費財におけるコク味(KOKUMI)フレーバー化合物の使用、および該化合物を含むフレーバー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コク味は、フレーバー工業において例えば持続性、広がり(mouthfulness)、豊かさ、および濃さなどの特性を述べるために使用される言葉である。それに対し、基本味に関する官能用語は、塩味、甘味、酸味、苦味またはうま味であり、最後に名づけられたのはグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味である。コク味は、知覚できる味の特性、またはむしろ味を強化する特性であり、それは訓練されたパネリストによる官能試験により容易に検知され、そして差別化される。コク味を付与する化合物は通常は水中では無味であるが、しかし上記の特性に関し、他の味物質と組み合わせてその味を強化する。
【0003】
所望の感覚器官を刺激する特性に加え、好ましくは、化合物は1つまたは2つ以上の以下の特性を有するべきである:それらは低価格で生産でき、長期貯蔵の間にわたり、ならびに高温多湿、および極端なpHを含むかもしれない加工条件に対し、安定であるべきである。
【発明の開示】
【0004】
出願人は、消費財にコク味を与え、および上述の要件を満たすことができる、γ−グルタミルおよびβ−アスパラギルペプチドの群に属する、式Iで表される化合物を同定した。
【0005】
β−アスパラギルペプチドの知覚特性について入手可能な文献情報はない一方、あるγ−グルタミルペプチドはフレーバー特性を提供する、または変化させることが知られている。Phe、Val、LeuおよびHisのγ−L−グルタミルジペプチド誘導体は、本来のアミノ酸(Phe、Val、Leu、His)の苦味を低減させることが知られている(Suzukiら、J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 313-318)。アリイン((+)−S−アリル−L−システインスルホキシド)、シクロアリイン(3−(S)−メチル−1,4−チアザン−5−(R)−カルボン酸−1−オキサイド)、MeCSO((+)−S−メチル−L−システインスルホキシド)、GACSO(γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システインスルホキシド)、GAC(γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システインスルホキシド)、およびGSH(グルタチオン、γ−L−グルタミル−L−システイニル−グリシンまたはγ−Glu−Cys−Gly)を含むさまざまな硫黄含有ペプチドが、グルタミン酸ナトリウム(MSG)およびリボヌクレオチドを含有するウマミ水溶液に、または牛肉抽出物に、「コク味」フレーバーを付与することが知られている(Uedaら、Agric.Biol.Chem. 1990, 54, 163-169; Uedaら、Biosci. Biotech. Biochem. 1997, 61, 1977-1980)。
【0006】
消費財に「コク味」フレーバーを提供するための、代替のまたは改良した化合物の必要性が残存する。
【0007】
驚くべきことに、出願人は式Iで表される化合物がコク味フレーバーを提供できることを見出した。これは従来技術からは全く予測できないものであった。
【0008】
最初の側面において、本発明は、それゆえに、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用に関する。
【化1】

式中、基RおよびRは以下のように選択される
は−CHSH、−CHCHSH、および−CHCHCHSH、−CHSCH、−CHCHSCH、および−CHCHCHSCH、−CH−S−CHCH(NH)−COOH、および−CH−S−S−CHCH(NH)−COOHからなる群から選択される基であり;
はγ−Glu(−CO−CH−CH−CH(NH)−COOH)、およびβ−Asp(−CO−CH−CH(NH)−COOH)の基の群から選択される基であり、
および式中、Rが硫黄を含む場合、該化合物は硫化物、あるいは2つのR基中のスルフィド基を介して結合している式Iで表される2つの異なるまたは同一の化合物で形成される二硫化物である。
【0009】
これらの化合物は、例えば、Rが−CHSH、−CHCHSH、−CHCHCHSHからなる群から選択される式Iで表される化合物;Rが−CHSHである式Iで表される化合物;Rが−CHSCH、−CHCHSCH、および−CHCHCHSCHからなる群から選択される式Iで表される化合物;およびRが−CO−CH−CH−CH(NH)−COOHである式Iで表される化合物を含む。
【0010】
他の側面において、本発明はRが−CO−CH−CH(NH)−COOHである式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用に関する。
【0011】
さらに他の側面において、本発明は上文で定義した式Iで表される1つまたは2つ以上の化合物を含むフレーバー組成物、またはその組成物に関する。
【0012】
さらに他の側面において、本発明は1〜25,000ppmの濃度で上文で定義した1または2以上の式(I)で表される化合物、またはその混合物を含む消費財に関する。
【0013】
他の側面において、本発明は消費財に対しコク味フレーバーを付与する方法に関し、コク味を付与するのに十分な濃度で消費財に対し上文で定義された1つまたは2つ以上の化合物の添加を含む。化合物は、それが生成される未精製の酵素反応混合物の形態で、当該混合物の粗抽出物の形態で、植物抽出物の形態で、植物の分離株の形態で、または精製した形態で添加してもよい。
【0014】
アミノ酸に関する標準的な略語は、遊離アミノ酸よりも幾分大きい化合物内の残基を同定するために、この本文中で使用され、例えば、上のRはγ−Gluまたはβ−Aspであってもよい。システイン残基に関しては、硫黄基は硫化物または二硫化物(CysSH、Cys−S−S−Cysまたは(CysS))を明示してもよい。本発明に係る全てのアミノ酸残基は、L−アミノ酸の残基である。
【0015】
式Iで表される化合物、ホモグルタチオンまたはhGSH(γ−L−グルタミル−L−システイニル−β−アラニンまたはγ−Glu−Cys−β−Ala)はマメ科植物または遺伝子組み換え植物、例えばマメ科ホモグルタチオン合成酵素を発現する遺伝子組み換えタバコ、に生じることが記述される(Sugiyamaら、2004, Plant Biotechnology 21, 79-83)。しかしながら、式Iで表される化合物はこれまでコク味/味の強化を付与するために、またはフレーバーとして使用されたことはない。
【0016】
式Iで表される化合物は先述の形態で、または対イオンを有するかまたは有さないそのイオン形、例えばそのナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩または類似物で存在してもよい。代わりに、または加えて、式Iで表される化合物は前述の形態(還元型)で存在してもよいし、または代わりに、それはジスルフィド架橋を介して結合した式Iで示される2つの異なるまたは同一の化合物の2単位により形成された二硫化物としてのその酸化形で存在してもよい。
【0017】
好ましい化合物はhGSHである。hGSHは従来技術の化合物より強い消費者の嗜好を引き起こす、先行技術のコク味フレーバー化合物GSHと比較した場合に、強度が改善されている強いコク味(広がり、複雑さ、豊かさ)を提供する。さらに強いコク味を、誘導形で存在する場合、それらの化合物により提供される。
【0018】
式Iで表される化合物の例を、以下の表1に記載する。
【表1】

【0019】
他の側面において、本発明は上文で定義された式Iで表される1つまたは2つ以上の化合物を含むフレーバー組成物に関する。
【0020】
他の側面においては、本発明は、上文で定義された式(I)で表される1つまたは2つ以上の化合物、またはその混合物を1〜25,000ppm(重量/重量)の濃度で含む、消費財に関する。
【0021】
他の側面において、本発明は消費財に対しコク味フレーバーを付与する方法に関し、消費財に対する上文で定義された化合物の添加を含む。化合物はそれが生成された未精製の酵素反応混合物の形態で、当該混合物の粗抽出物の形態で、植物抽出物の形態で、または精製した形態で添加してもよい。
【0022】
本発明において使用するペプチド化合物は、当該分野においてよく知られた手順に従い、植物供給源から調製または単離してもよい。例えば、Neish and Rylett(1963), Tetrahedron, 19, 2031-2032はhGSHの化学合成について記載する。式Iで表される他の化合物は、当業者にとって自明適切な供給化合物を使用して同じように合成してもよい。あるいは、各種のよく知られたペプチド合成法を使用してもよい。JP2004041146はhGSHの酵素的合成について記載する。Klapheck(1988), Physiologia, Plantarum, 74, 727-732は、マメ科植物からのhGSHの単離について記載する。それらはまた、例えばSugiyamaら, 2004, Plant Biotechnology 21, 79-83に記載のとおり、式Iで表される化合物を生成する酵素を発現する適切な遺伝子組み換え植物から単離してもよい。
【0023】
ある種の式Iのγ−グルタミルジペプチドはまた、商業的供給源を含む様々な供給源から酵素を使用する分野において周知のγ−グルタミル−トランスペプチターゼ酵素(GGTP)の使用により酵素的に調製することができ、および、すでに、例えば、Suzukiら, J. Mol. Catal. 1999, B6, 175-184; Suzukiら J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 313-318), Suzukiら; J. Agric. Food Chem.; 52(2004); 577-580; StrumeyerおよびBloch, Biochem. Prep. 1962, 9, 52-55; Thompson and Meister, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1975, 72, 1985-1988; Allison and Meister, J. Biol. Chem. 1981, 256, 2988-2992 ;Meister, The Enzymes B (Academi,NewYork), 3rd. Ed., Vol. 10, pp.671-697; Strumeyer and Bloch, J. Biol. Chem. 1969, 235, 27;Thompson and Meister, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1975,72, 1985-1988; Oppenheimerら、J. Biol. Chem. 1979, 254, 5184-5190; Tate and Meister, J. Biol. Chem., 1975, 250,4619-4627に記載される。
【0024】
出発物質および酵素は商業上容易に入手でき、または上記の参考資料に記載のように得ることができる。
【0025】
生成された生成物は精製し、精製した形態でフレーバーとして使用してもよく、または、それらは粗形態(酵素反応混合物)でフレーバーとして使用してもよく、また発酵からのもしくは単離酵素との酵素反応からの粗抽出物として使用してもよい。あるいは、式Iで表される化合物は植物の供給源、特に植物またはマメ科植物により自然に生産してもよく、およびこの物質、特に十分に高濃度な式Iで表される化合物、特にhGSH、を有する植物性抽出物または植物抽出物を使用してもよい。濃度はまさに当業者にとって自明であるように、化合物および所望の強度に依存して変化する。大半の用途においては、0.1〜50mmol/L、特に0.5〜20mmol/L、または1〜10mmol/Lの濃度が有用である。
【0026】
所望ならば、生成物は以下のとおり精製してもよい;凍結乾燥、続いてクロマトグラフのワークアップ、例えばゲル透過クロマトグラフィーを用いてもよい。クロマトグラフィーは固相としてセファデックスG−10(Amersham Bioscience, Uppsalla,Sweden)および移動相として水を用いて行ってもよい。流出物は、例えば220nmでUV−検出器の使用により測定される。生成物の溶出液は当該分野においてよく知られている分析方法、例えば液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC−MS)および核電磁気共鳴(NMR)分光法により確認できる。
【0027】
本発明で用いる化合物は消費財に対しコク味を付与する。明細書中で使用される消費財という用語は、食料品、飲料、口腔ケア用品、および当該製品への混合物に関する組成物、特にフレーバー組成物、を含む。フレーバー組成物はその製造工程で加工食品もしくは飲料に添加してもよく、または、それらは実際にそれ自体が消費財、例えばソースなどの調味料であってもよい。
【0028】
本発明の化合物またはその混合物は、フレーバー組成物中のフレーバー原料として使用してもよい。化合物または化合物の混合物は、前記の組成物中の他のフレーバー原料と混合してもよい。化合物または化合物の混合物はすべての種類の消費財にコク味を与え、および特にいい味のする消費財に対し関心を引く。
【0029】
消費財の例は穀物製品、パン屋の製品、パン製品、ガム、チューインガム、酵母製品、塩およびスパイス製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、スープ、加工食品、調理されたフルーツおよび野菜製品、肉および肉製品、卵製品、牛乳および乳製品、チーズ製品、バターおよびバター代用製品、ミルク代用製品、大豆製品、食用油製品および食用脂製品、薬剤、飲料、アルコール飲料、ビール、ソフトドリンク、食用抽出物、植物抽出物、肉抽出物、調味料、甘味料、栄養補助食品、薬用のガムおよび薬用ではないガム、錠剤、トローチ剤、あめ玉、エマルジョン、エリキシル剤、シロップならびに飲料、インスタント飲料および発泡剤を作るための他の調製品を含む。
【0030】
式(I)で表される化合物のフレーバー特性は、広範囲な濃度にわたって明らかである。例えば、食品および飲料製品の場合には、化合物または化合物の混合物は、例えば、1〜10,000ppm、5〜25,000ppm、10〜10,000ppm、50〜5000ppmおよび100〜1000ppmの範囲(重量に基づく)の濃度で存在していてもよい。当業者は、適切な濃度が、消費財、他のフレーバーの存在、および所望のコク味の強度に依存するであろうと十分に理解するであろう。濃度は、当業者により所望の効果に容易に調節されうる。
【0031】
当業者にとって、製剤および消費財が、凝結防止剤、消泡剤、酸化防止剤、結合剤、着色料、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、封入剤(encapsulating agent)または製剤、酵素、油脂、フレーバーエンハンサー、香味剤、ガム、潤滑剤、多糖類、保存料、タンパク質、可溶化剤、溶媒、安定剤、糖誘導体、界面活性剤、甘味剤、ビタミン、ロウなどを含む、業界で周知の様々な添加剤および賦形剤を含む付加成分を含有してもよいということを十分に理解する。用いてもよい溶媒は当業者に公知であり、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、フタル酸ジエチルおよびフタル酸ジメチルを含む。カプセル化剤およびガムは、マルトデキストリン、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、加工でんぷん、および多糖類を含む。フレーバーまたはフレグランス組成物の添加剤、賦形剤、担体、希釈剤、または溶媒の例は、例えば”Perfume and Flavor Materials of Natural Origin”, S. Arctander, Ed., Elizabeth, N.J., 1960; in "Perfume and Flavor Chemicals", S. Arctander, Ed., Vol.I&II, Allured Publishing Corporation,Carol Stream, USA, 1994; in “Flavourings”, E.Ziegler and H.Ziegler(ed.), Wiley-VCHWeinheim, 1998、および“CTFA Cosmetic Ingredient Handbook”, J. M. Nikitakis(ed.), 1st ed., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988. 中に見出せる。
【0032】
本発明を説明するに役立つ一連の非制限の例が、以下に続く。
【0033】
例1〜4
他の表示がない限り、全ての官能試験は3点比較法であり、Amtliche Sammlung von Untersuchungsverfahren nach §35 LMBG (Lebensmittel- und Bedarfsgegenstaendegesetz)“; L00.907, Untersuchung von Lebensmitteln, Sensorische Pruefverfahren, Dreieckspruefung (Uebernahme der gleichnahmigen Deutschen Norm DIN ISO 4120, Ausgabe Januar 1995)中のガイドラインに従い、以下のとおり行った。
【0034】
官能パネリストは、文献(Wieser and Belitz, Z. Lebensm. Unters. Forsch., 1975, 159, 65-72)に記載のとおり、3点比較法を用い、以下の標準的な味覚化合物の水溶液(各々4ml)の味を評価するように訓練されている;甘味に関してはショ糖(40mmol/L);酸味に関してはクエン酸(5mmol/L);塩味に関してはNaCl(12mmol/L);苦味に関してはカフェイン(2mmol/L);およびうま味に関してはグルタミン酸ナトリウム(MSG;6mmol/L)。コク味に関しては、希釈したチキンスープ濃縮物(Goumet Bouillon Huhn, Maggi, Singen, Germany; 3g/100gボトルウォーター(Evian(登録商標))中のグルタチオン溶液(10mmol/L)を調製し、グルタチオンを添加していないチキンスープの味と比較した。
【0035】
全ての官能分析は8〜10人の訓練を受けたパネリストにより、3つの別の期間にわたり、22〜25℃下の官能パネル室で行った。
【0036】
味のプロファイルを記録するために、試料を以下の実施例で示すように調製した。試料の味の分析結果は3つの異なるセッションにわたって、22〜25℃の官能パネル室において3点比較法により決定した。パネリストは、セッション前の少なくとも1時間は飲食を控えた。セッションの開始時および各試行前には、被験者は水ですすぎ、そして吐き出した。参加者は2つのブランクおよび1つの味試料のセットを受け取った。液体試料は口の中で短く回し、吐き出した。固体試料は20秒咀嚼し、吐き出した。どのガラスのバイアルが異なる味のプロファイルおよび鮮明度の描写を示すかを示したのち、参加者は2つのブランクおよび1つの味試料の別の試行セットを受け取った。添加物が入った各試料と添加物の入っていない対照試料とを比較した。0〜5のスケールに従い(5が一番強い)、0〜5で格付けした。添加物を消費財に添加し、および試料を均質化した。均質化後、試料を直接、官能パネリストに渡した。官能パネリストは、パネリストが訓練された10人からなる実施例2を除いて、訓練を受けた8人を含んだ。
【0037】
例1
チキンスープにおけるhGSHの官能効果
官能試験(3点比較法)は結果を確認するために異なる個々の官能パネリストにより、各化合物につき少なくとも3回行った。GSHは全てのテストで3.5のコク味の強度を有すると測定された。
チキンスープは、水100ml(Evian)でチキンスープ濃縮物3g(Gourmet Bouillon Huhn; Maggi, Singen, Germany)の希釈により調製した。添加物は下の表で明記したように添加した。
全ての試料のpH値は、ギ酸(0.1mol/L)または水酸化ナトリウム(0.1mol/L)を用いて6.5に調整した。
【0038】
テストの結果を下の表に示す。各試料について、コク味の強度をランク付けし、パネリストに官能の特徴を記述するよう求めた。
【表2】

【0039】
以下の化合物を上述のように試験し、コク味を有さないことが分かる:アミノ酸Asp、Asn、Glu、Gln、Ala、β−Ala、Cys、およびジスルフィド[Cys−S−S−Cys、(CysS)]。
【0040】
パネリストはNaClの陽性対照は陰性対照よりも塩味が強く、およびMSGの陽性対照はより高度なうま味(MSGの味)の強度を有するが、味のプロファイルの広がりおよび複雑さについて効果は観察されなかった。
【0041】
hGSH試料は広がり、複雑さ、およびチキンスープの長期持続の味覚が増加した。
【0042】
例2
クリームチーズ中のhGSH
hGSHを最終濃度1000ppmまでクリーム・チーズ(Philadelphia、Kraft)に添加した。かかる混合物を均質化するまで攪拌した。
【0043】
【表3】

【0044】
10人のパネリスト中9人がhGSH試料(γ−Glu−Cys−β−Ala)は参考試料と異なり、好ましいと感じた。hGSH試料はより広がり、豊かさ、およびコク味様の複雑さを有すると記述した。
【0045】
例3
トマトジュース中のグルタチオンおよびホモグルタチオン
グルタチオンおよびホモグルタチオンを以下の濃度でトマトジュースに添加した。
【0046】
【表4】

【0047】
γ−Glu−Cys−β−Ala250ppmを8人のパネリスト中7人が好ましいとし、およびより強く、十分にバランスがとれたコク味を有すると記述した。この効果は濃度が高くなると共に増した。
γ−Glu−Cys−β−Ala5000ppmは同濃度のグルタチオン試料と比較してより顕著なコク味感覚を示した。
【0048】
例4
ケチャップ中のグルタチオンおよびホモグルタチオン
グルタチオン(GSH)およびホモグルタチオン(hGSH)を2500ppmの濃度でケチャップ(Kraft)に添加した。
【0049】
【表5】

【0050】
hGSHは8人中7人のパネリストが、肉様、ブイヨン様、および全体的な味を強化すると指摘した。GSHは試料3と類似するが、観察される効果はより低いと記述された。
【0051】
例5
チキンスープ中の式Iで表される化合物の官能効果
下の表に記載の式Iで表される化合物をチキンスープで試験し(実施例1に記載のとおりに調製した)、hGSHと比較した。試料化合物はhGSHと類似のコク味を提供した。
【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される少なくとも1つの化合物、またはその塩のフレーバーとしての使用、
【化1】

式中、基RおよびRは以下のように選択される:
は−CHSH、−CHCHSH、−CHCHCHSH、−CHSCH、−CHCHSCH、および−CHCHCHSCH、−CH−S−CHCH(NH)−COOH、および−CH−S−S−CHCH(NH)−COOHからなる群から選択される基であり;
はγ−Glu(−CO−CH−CH−CH(NH)−COOH)、およびβ−Asp(−CO−CH−CH(NH)−COOH)の基の群から選択される基であり、
および式中、Rが硫黄を含む場合、該化合物は硫化物、あるいは、2つのR1基中のスルフィド基を介して結合する式Iで表される2つの異なるまたは同一の化合物で形成される二硫化物である。
【請求項2】
R1が−CHSH、−CHCHSH、−CHCHCHSHからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1が−CHSHである、請求項3に記載の使用。
【請求項4】
R1が−CHSCH、−CHCHSCH、および−CHCHCHSCHからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
が−CO−CH−CH−CH(NH)−COOHである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
が−CO−CH−CH(NH)−COOHである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかで定義された式Iで表される1つまたは2つ以上の化合物を含むフレーバー組成物、またはその混合物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかで定義された式(I)で表される1つまたは2つ以上の化合物、またはその混合物を1〜25,000ppm(重量/重量)の濃度で含有する、消費財。
【請求項9】
消費財にコク味フレーバーを付与する方法であって、請求項1〜6いずれかで定義された1つまたは2つ以上の化合物を、コク味フレーバーを付与するのに十分な濃度で消費財への添加を含む、前記方法。
【請求項10】
化合物を、それが生成した未精製の酵素反応混合物の形態で、混合物の粗抽出物の形態で、植物抽出物の形態で、植物の分離体の形態で、または精製した形態で添加する、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511030(P2009−511030A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534925(P2008−534925)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009817
【国際公開番号】WO2007/042273
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508112221)
【氏名又は名称原語表記】THOMAS FRANK HOFMANN & ANDREAS DUNKEL
【住所又は居所原語表記】Institut fuer Lebensmittelchemie,Westfaelische Wilhelms−Universitaet,Corrensstr.45,48161 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】