説明

コネクタ、コネクタの製造方法、ワイヤハーネス及び配線材と接続対象部材との接続方法

【課題】カードエッジ型コネクタ等において異物の侵入による接続不良の発生を防止する。
【解決手段】電線の末端に設けられるコネクタC。このコネクタCは、弾性接触片36を備え、電線Wの末端に装着されるコネクタ端子30と、回路基板10(接続対象部材)が挿入される挿入用凹部24を有しかつこの挿入用凹部24に挿入される回路基板10の接続用導体に弾性接触片36が接続可能となるようにコネクタ端子30を保持するハウジングHと、挿入用凹部24の挿入口を塞ぐ防塵体26とを含む。この防塵体26は、樹脂材料からなるシート体を含みこのシート体が少なくとも前記挿入用凹部24の周囲の位置で前記ハウジングに固定されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードエッジ型コネクタ等のコネクタ、このコネクタの製造方法、前記コネクタが配線材の末端に設けられるワイヤハーネスおよび配線材と接続対象部材との接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程では、車体にワイヤハーネスを配索しながらその電線(配線材)を前記車体に組み込まれた電装品に接続することが行われている。例えば、電線の末端に所謂カードエッジ型コネクタを装着しておき、このコネクタを車体に搭載されたECU等の回路基板に接続することが行われている。
【0003】
カードエッジ型コネクタとしては、例えば特許文献1に記載されるものが公知である。この特許文献1に記載されるカードエッジ型コネクタは、複数の電線の端末にそれぞれ装着されるコネクタ端子と、これらコネクタ端子を保持するとともに、回路基板が挿入される基板挿入用凹部を有するハウジングとを備える。各コネクタ端子は、弾性変位可能な弾性接触片を備えており、前記ハウジングは、各コネクタ端子の弾性接触片が前記基板挿入用凹部に挿入される回路基板をその表裏両側から挟み込み、かつ、回路基板の幅方向に沿って複数個の端子が並ぶような配列で前記端子を保持する。これにより前記ハウジングの基板挿入用凹部に回路基板が挿入されると、各コネクタ端子の弾性接触片が当該回路基板の対応する接続用導体に圧接し、各電線が回路基板に対して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−178834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなカードエッジ型コネクタは、基板挿入用凹部の挿入口が比較的広いことに加え、回路基板をその表裏両側から挟み込み得るように各コネクタ端子の弾性接触片が基板挿入用凹部内に臨んでいる。そのため、未接続の状態が続くと、基板挿入用凹部に粉塵等の異物が進入して弾性接触片に付着し、接触不良をもたらす原因となることが考えられる。
【0006】
これを防ぐために、例えばハウジングと同等の材料でキャップを製造し、回路基板との接続直前まで前記キャップをハウジングに装着しておくことで、基板挿入用凹部を防塵することが考えられている。しかし、この場合には、キャップの製造、ハウジングへのキャップの着脱作業によって工数の増加やコスト高をまねく。
【0007】
なお、このような問題は、カードエッジ型コネクタに限らず、例えば光コネクタについても考えられる。すなわち、光コネクタは、光ファイバ芯線の端部に装着されたフェルール等の筒状の光ファイバ用端子をハウジングで保持したものであり、雄型ハウジングを有する雄コネクタと雌型ハウジングを有する雌コネクタのハウジング同士を互いに嵌合せることで光ファイバ同士を突き合わせ状態として接続する。その場合、雌コネクタの雌型ハウジングについては、雄コネクタの雄型ハウジングが挿入される挿入用凹部の奥端部にさらに雄コネクタ側の光ファイバ用端子が挿入されるファイバ孔が形成されているため、前記挿入用凹部からこのファイバ孔に異物が侵入して接続不良をもたらすおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、カードエッジ型コネクタ等において、工数やコストの増加を抑えながら、粉塵などの侵入による接続不良の発生を効果的に防止できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明のコネクタは、配線材を接続対象部材に接続するための、防塵機能を有するコネクタであって、前記接続対象部材に接触可能な接触部を有し、配線材の末端に装着される端子部材と、前記接続対象部材が挿入されることが可能な挿入用凹部を備え、かつこの挿入用凹部に挿入される前記接続対象部材に前記接触部が接触可能となるように前記端子部材を保持するハウジングと、前記挿入用凹部の挿入口を塞ぐことにより当該挿入用凹部を防塵する防塵体と、を備え、前記防塵体は、前記接続対象部材の前記挿入用凹部への挿入に伴い当該接続対象部材により突き破られることが可能となるように形成されているものである。
【0010】
このコネクタによれば、ハウジングの前記挿入用凹部の挿入口が防塵体により塞がれて当該挿入用凹部が防塵されるため、前記挿入用凹部に異物が侵入して前記接触部に付着することが防止される。しかも、防塵体は、接続対象部材の前記挿入用凹部への挿入に伴い当該接続対象部材により突き破られることが可能に形成されているため、防塵体を除去することなく、配線材と接続対象部材とを接続することが可能となる。
【0011】
このコネクタにおいて、前記防塵体は、樹脂材料からなるシート体を含みこのシート体が少なくとも前記挿入用凹部の周囲の位置で前記ハウジングに固定されたものである。
【0012】
この構成によれば、防塵体として、前記挿入用凹部への粉塵の侵入を確実に防止するとともに、前記挿入用凹部への接続対象部材の挿入に伴い当該接続対象部材により容易に突き破らせることが可能なものを形成することが可能となる。また、挿入用凹部の周囲の位置でシート体がハウジングに固定されているので、前記挿入口に対して防塵体のずれが防止されることに加え、ハウジング(挿入用凹部)への接続対象部材の挿入時には、防塵体が挿入用凹部内に引き込まれることが防止され、これにより接続対象部材による防塵体の破断性(突き破り性)が向上する。さらに、樹脂材料からなるシート体により防塵体が形成されるため、防塵体を比較的安価に設けることができる。
【0013】
この場合、前記シート体は、融着等の手段によりハウジングに固定されてもよいが、前記ハウジングに接着されることにより当該ハウジングに固定されるのが好適である。
【0014】
この構成によれば、簡単かつ安価にシート体をハウジングに固定して、防塵体を形成することができる。
【0015】
なお、上記コネクタの具体的な構成として、前記端子部材は、電線を前記配線材としてその末端に装着されるコネクタ端子であって、前記接触部として端子軸方向と直交する方向に変位可能な弾性接触片を備え、前記ハウジングは、縁部の表面に接続用導体が設けられた回路基板を前記接続対象部材として当該回路基板が挿入されることが可能な前記挿入用凹部を備え、かつこの挿入用凹部に挿入される前記回路基板の前記接続用導体に前記弾性接触片が接触可能となるように前記コネクタ端子を保持し、前記防塵体は、前記挿入用凹部に前記回路基板が挿入されるに伴い当該回路基板により突き破られることが可能となるように形成されている。
【0016】
この構成は、本発明がいわゆるカードエッジ型のコネクタに適用されたものである。すなわち、ハウジングの挿入用凹部に回路基板が挿入されることにより、このハウジングに保持されたコネクタ端子の弾性接触片と前記回路基板の縁部に設けられた接続用導体とが接触し、この接触により前記電線と回路基板とが電気的に接続されるものである。このコネクタでは、ハウジングの挿入用凹部の挿入口が防塵体により塞がれていることで、前記挿入用凹部に異物が侵入してコネクタ端子の弾性接触片に付着することが防止される。また、コネクタ接続時には、前記挿入用凹部への前記回路基板の挿入に伴い当該回路基板により防塵体が突き破られる。
【0017】
また、上記コネクタの他の具体的な構成として、前記端子部材は、光ファイバを前記配線材としてその末端に装着される第1ファイバ用端子であって当該第1ファイバ用端子の端面が前記接触部とされるものであり、前記ハウジングは、前記光ファイバに接続される相手側光ファイバの末端に装着される第2ファイバ用端子及び当該第2ファイバ用端子を保持するハウジングを含む相手側コネクタを前記接続対象部材として当該相手側コネクタが挿入されることが可能な前記挿入用凹部を備え、かつ前記挿入用凹部に挿入される前記相手側コネクタのハウジングに保持される前記第2ファイバ用端子と前記第1ファイバ用端子とが突き合わさせ状態となるように前記第1ファイバ用端子を保持し、前記防塵体は、前記挿入用凹部に前記相手側コネクタが挿入されるに伴い当該相手側コネクタにより突き破られることが可能となるように形成されている。
【0018】
この構成は、本発明がいわゆる光コネクタに適用されたものである。すなわち、コネクタのハウジングの挿入用凹部に相手側コネクタが挿入されることにより、このハウジングに保持されている第1ファイバ用端子と、相手側コネクタのハウジングに保持されている第2ファイバ用端子とが突き合わせ状態となり、これにより各ファイバ用端子が装着されている光ファイバ同士が接続されるものである。このコネクタでは、ハウジングの挿入用凹部の挿入口が防塵体により塞がれていることで、前記挿入用凹部に異物が侵入することが防止される。また、コネクタ接続時には、前記挿入用凹部への前記相手側コネクタの挿入に伴い当該相手側コネクタにより防塵体が突き破られる。
【0019】
なお、上記のようなコネクタは、以下のような製造方法によって容易にかつ安価に製造することが可能となる。すなわち、本発明のコネクタの製造方法は、配線材の末端に前記端子部材を装着し、この端子部材を前記ハウジングに保持させるコネクタ組立工程と、前記ハウジングに前記防塵体を形成する防塵体形成工程と、を含み、この防塵体形成工程は、エアを吸引するための複数の吸引口が開口する成型面をもつ真空成形用型の当該成型面上に、前記挿入用凹部が上向きに開口する姿勢で前記ハウジングを配置する工程と、前記挿入用凹部の挿入口を覆うように前記ハウジングにシート体を被せる工程と、前記真空成形用型の吸引口からエアを吸引することにより前記シート体を前記ハウジングに密着させる工程とを含む、ものである。
【0020】
一方、本発明のワイヤハーネスは、複数本の配線材を含むワイヤハーネスであって、前記配線材のうち特定の配線材の末端に上記のようなコネクタを備えているものである。
【0021】
また、本発明の配線材と接続対象部材との接続方法は、配線材の末端に端子部材を装着し、この端子部材を保持するためのハウジングであって前記接続対象部材が挿入されることが可能な挿入用凹部を備えるものを準備して前記端子部材を当該ハウジングに保持させる工程と、前記ハウジングの前記挿入用凹部の挿入口を塞ぐことにより当該挿入用凹部を防塵する防塵体を前記ハウジングに形成する工程と、前記接続対象部材により前記防塵体を突き破りながら当該接続対象部材を前記ハウジングの前記挿入用凹部に挿入することにより当該接続対象部材を前記端子に接触させる工程と、を含むものである。
【0022】
このようなワイヤハーネス及び接続方法によれば、コネクタのハウジング(挿入用凹部)への異物の侵入を有効に防止しながら、配線材の配索および配線材と接続対象部材との接続作業を一般的な作業と同等に行う事ができる。つまり、コネクタから防塵体を取り外す必要がないため、一般的なコネクタ接続作業と同様にして配線材と接続対象部材との接続作業を進めることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、カードエッジ型コネクタ等において、工数やコストの増加を抑えながら、コネクタ挿入用凹部への粉塵などの侵入による接続不良の発生を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるカードエッジ型コネクタと、このカードエッジ型コネクタが接続される回路基板を備えた電子回路ユニットとを示す断面図(接続前の状態を示す断面図)である。
【図2】カードエッジ型コネクタを示す斜視図である。
【図3】前記カードエッジ型コネクタと電子回路ユニットとを示す断面図(接続過程を示す断面図)である。
【図4】前記カードエッジ型コネクタと電子回路ユニットとを示す断面図(接続完了状態を示す断面図)である。
【図5】前記カードエッジ型コネクタに適用されるコネクタ端子を示す側面図である。
【図6】前記カードエッジ型コネクタの製造工程を示す断面図である。
【図7】前記カードエッジ型コネクタの製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明にかかる第1光コネクタと、この第1光コネクタに接続される第2光コネクタ(相手側コネクタ)を示す断面図(接続前の状態を示す断面図)である。
【図9】前記第1光コネクタと前記第2光コネクタを示す断面図(接続完了状態を示す断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るワイヤハーネスの要部、具体的には、電線(配線材)の末端に装着されたコネクタと当該コネクタが接続される電子回路ユニットとをそれぞれ断面図(接続前の状態の断面図)で示しており、図2は、前記コネクタを斜視図で示している。
【0027】
前記電子回路ユニットEUは、回路基板10と、この回路基板10が収容されるケース12とを有する。前記回路基板10は、例えばプリント回路基板からなり、その表裏両面には回路構成用の導体パターンが配設されるとともに、回路を構成する電子部品が実装される。この実施の形態にかかる回路基板10は矩形状をなし、その一端側の縁部10a(同図では左側の縁部)の表側面上及び裏側面上には、それぞれ複数の薄板状の接続用導体が設けられる。これらの接続用導体は前記縁部10aに沿って配列されている。
【0028】
前記ケース12は、プラスチック等の絶縁材料により成形され、天壁16a、底壁16b、左右一対の側壁16c及び後壁部16dを有する断面四角筒状をなす。ケース12は、さらにその内部に仕切壁16eを有し、これにより、ケース12は、その内部が基板収容部13と特定方向に開口するコネクタ嵌合部14とに仕切られている。
【0029】
前記回路基板10は、その縁部10aを前記仕切壁16eに形成された開口部を通じてコネクタ嵌合部14側に突出させた状態で前記基板収容部13に収容されている。詳しくは、その左右両端が前記側壁16cに形成された図外のガイド溝に挿入されることで、前記天壁16a及び底壁16bの間にそれらと略平行な状態で収容されている。なお、ケース12のうち後壁部16dはその他の部分に対して着脱が可能であり、これにより基板収容部13は、前記コネクタ嵌合部14とは反対側に開放可能となっている。
【0030】
前記ワイヤハーネスは、その全体図を省略しているが、複数本の電線が束ねられることにより幹線が形成され、この幹線から複数本の電線が分岐電線群として引き出されたものであり、図1に示すように、この分岐電線群に含まれる電線Wの末端に、当該電線Wを前記電子回路ユニットEUに接続するための共通のコネクタCが装着されている。
【0031】
このコネクタCは、いわゆるカードエッジ型コネクタであり、前記回路基板10の縁部10aに接続される。このコネクタCは、プラスチック等の絶縁材料により成形されるハウジングHと、それぞれ電線Wに装着されて前記ハウジングHに保持されるコネクタ端子30とを含む。
【0032】
コネクタ端子30(以下、単に端子30という)は、導体である金属板により形成され、対応する電線Wの端末に装着されている。なお、電線Wは、図略の導体と、これを覆う絶縁被覆とからなり、電線Wの端末では前記絶縁被覆が除去されて前記導体が露出している。
【0033】
端子30は、図4に示すように、基板接触部31と電線接続部32とを端子軸方向の前後に有する。電線接続部32は、一対の導体バレル33と一対のインシュレーションバレル34とを前後に有し、導体バレル33が電線Wの端末の露出した導体を抱き込むようにして当該導体に圧着され、インシュレーションバレル34が、前記導体の露出部分よりも後ろ側に位置する絶縁被覆の部分を抱き込むようにして電線Wに圧着されることで、端子30が前記導体と導通する状態で電線Wの末端に装着されている。
【0034】
前記基板接触部31は、端子軸方向に延びる箱状の本体部35と、この本体部35から端子軸方向と直交する方向に膨出する形状の弾性接触片36とを有する。前記弾性接触片36は、前記本体部35の内側から窓35aを通じて当該本体部35の外部に弓なりに膨出している。この弾性接触片36は前記回路基板10の縁部10aの接続用導体と接触する際には当該縁部10aからの反力を受けて窓35a内に没入するように撓み変位し、その弾発力で前記接続用導体に圧接する。なお、図4中の符号37は、前記本体部35内に設けられる弾発力補強部材37であり、接触端部36aの撓み変位に伴って弾性変形することで前記接触端部36aの弾性復帰力を増強する。
【0035】
前記ハウジングHは、各端子30の弾性接触片36がそれぞれ前記回路基板10の縁部10aの接続用導体に同時に接触するような配列で各端子30をまとめて保持する。
【0036】
より具体的に、前記ハウジングHは、図1に示すように、互いに平行に延びる上下一対の天壁21a及び底壁21bと、これら天壁21a及び底壁21bの間に位置する中間壁21cと、左右一対の側壁21dとを有し、前記天壁21aと前記中間壁21cとの間、及び前記底壁21bと前記中間壁21cとの間に、それぞれ、左右方向(図1では紙面に直交する方向)に並ぶ複数の端子収容室22が形成される。前記中間壁21cの前端(図1では右端)は天壁21aおよび底壁21bの前端よりも後ろ側に位置し、この中間壁21cの前端の前側に、前記回路基板10の縁部10aがそれぞれ挿入可能な基板挿入空間(以下、挿入用凹部24と呼ぶ)が確保されている。そして、各端子30における弾性接触片36が前記挿入用凹部24に臨むとともに、前記挿入用凹部24への回路基板10の挿入に伴い弾性接触片36が接触しかつこの接触により一定量だけ当該弾性接触片36が変位し得る状態で、各端子30が端子保持部22に保持されている。すなわち、前記天壁21aと前記中間壁21cとの間の端子収容室22に収容される端子30は、その弾性接触片36が下を向くように端子保持部22に保持され、前記底壁21bと中間壁21cとの間の端子収容室22に収容される端子30は、その弾性接触片36が上を向くように端子保持部22に保持される。
【0037】
図1及び図2に示すように、前記コネクタCには、ハウジングHのうちその前端を含む一定の範囲に防塵体26が設けられており、これにより前記挿入用凹部24が防塵されている。この防塵体26は、樹脂材料からなるシート体が前記ハウジングHに被着されることにより形成されている。具体的には、防塵体26は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂からなるシート本体層と、例えばブチルゴム系の粘着剤やエポキシ樹脂などの熱硬化性の液状剤からなる接着剤層とを有するシート体からなり、当該シート体が前記接着剤層により前記ハウジングHに接着、固定されることにより形成されている。この防塵体26は、前記挿入用凹部24に前記回路基板10が挿入されるのに伴い当該回路基板10により突き破ることが可能となるように、その材質や厚みが選定され、少なくともハウジングHの前端面では、当該前端面に沿って張った状態で当該ハウジングHに固定されている。
【0038】
なお、上記防塵体26は、前記ハウジングHに設けられていてもよいが、当実施形態では、前記電線Wへの端子30の装着および当該端子30のハウジングHへの収納が行われた後、例えば前記ワイヤハーネスの製造工程の最終段階で行われる。
【0039】
この防塵体26は、例えば図6に示すような真空成形機を用いて前記シート体がハウジングHに固定されることにより形成される。この真空成形機は、平坦な上面を有した真空成形用型50を有する。この真空成形用型50の上面には、複数の吸引孔52が開口しており、これらの吸引口52は前記真空成形用型60の内部に形成されたエア通路を介して図略の真空ポンプに接続され、この真空ポンプは前記吸引口52からその上方のエアを吸引する。また、真空成形用型50の上方には、ヒータ54が配置され、ヒータ54はその下面上にシート体を保持する保持部55を有する。
【0040】
まず、同図に示すように、治具56に保持された状態で前記ハウジングHが真空成形用型50上に載置される。具体的には、ハウジングHの前端面が真上に向く状態で載置される。その一方で、前記ヒータ54の下面上に防塵体26となるシート体26′が保持部55によって保持される。このシート体26′は、上述の通り熱可塑性樹脂からなるシート本体層と接着剤層とを有するもので、ハウジングHの前端面および側面(天壁21a、底壁21b及び側壁21d)の一部に被さる大きさを有し、前記接着剤層が下側に位置する状態でヒータ54の下面上に保持される。
【0041】
そして、ヒータ66の加熱によりシート体26′が軟化した状態で、当該シート体26′が前記ヒータ54から切り離され、さらに所定のタイミングで前記吸引口52からのエアの吸引が行われる。これより、図7に示すように、シート体26′がハウジングHの上に被さり、当該ハウジングHの前端面および側面に密着した状態で当該ハウジングHに接着、固定される。これにより前記防塵体26が形成される。
【0042】
この場合、ワイヤハーネスに複数の前記コネクタCが含まれる場合には、これらコネクタCについて上記防塵体26の形成が同時に行われることで工数の増加が抑えられる。また、ワイヤハーネスの製造工程において、真空成形用型50を用い、樹脂材料からなるシート体(上記シート体26′と同等のもの)を電線群に被着してまとめることで前記幹線や分岐電線群を形成する工程がある場合には、当該工程と上記のような防塵体26の形成工程とを一工程で行うことで、ワイヤハーネスの製造工数の増加が抑えられる。
【0043】
前記コネクタCと電子回路ユニットEUとの接続は、コネクタCをその前端側から電子回路ユニットEUのケース12(コネクタ嵌合部14)に挿入することにより行われる。
【0044】
前記コネクタCがコネクタ嵌合部14に挿入されると、図3に示すように、コネクタCの前記ハウジングH(挿入用凹部24)に、前記回路基板10がその縁部10aを先頭として挿入される。この挿入に伴いコネクタCの前記防塵体26が回路基板10の先端で突き破られる。この際、防塵体26は、基板挿入用凹部24の挿入口の部分で張った状態とされ、当該挿入口の周囲の部分がハウジングHに接着、固定されているので、回路基板10の挿入に伴い基板挿入用凹部24内に引き込まれることが防止され、当該基板挿入用凹部24により容易に突き破られる。
【0045】
そして、図4に示すように、回路基板10の先端がコネクタCの前記ハウジングHの中間壁21cの前端に突き当たる位置まで到達すると、当該回路基板10の縁部10aの両面に設けられた各接続用導体が各30の弾性接触片36に同時に接触する状態が形成され、これによりコネクタCが回路基板10に接続される。
【0046】
そして、同図に示すコネクタCと回路基板10との接続状態で、電子回路ユニットEUの前記ケース12(コネクタ嵌合部14)に形成された弾性係止片18がコネクタCの前記ハウジングH(天壁21a)に形成された係止部23が係合し、この係合により前記接続状態が維持される。
【0047】
以上のようなワイヤハーネスによれば、コネクタCに防塵体26が設けられることにより前記ハウジングHの挿入用凹部24の防塵が図られている。そのため、ワイヤハーネスの製造後、実際にコネクタCが電子回路ユニットEUに接続されるまでの間に挿入用凹部24内に異物が侵入し、この異物が端子30の弾性接触片36に付着して接続不良をもたらすという不都合を未然に防止することが可能となる。
【0048】
しかも、防塵体26はポリ塩化ビニル等の樹脂材料からなるシート体から形成されており、コネクタCと回路基板10との接続時には、上記のように、回路基板10の挿入動作に伴って当該回路基板10が防塵体26を容易に突き破ってコネクタCと接続される。そのため、防塵体26の取り外しは不要であり、当該防塵体26を備えていないコネクタと同等の接続作業でコネクタCを回路基板10に接続できる。従って、上記ワイヤハーネスの配索および接続作業において、工数の増加を伴うことなく上記の作用効果を享受することができる。
【0049】
また、防塵体26は、上記のように樹脂材料からなるシート体を、真空成形機を用いてハウジングHに被着することにより容易に形成できるため、コストの著しい増加を伴うことなく上記の作用効果を享受することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図8は、光ケーブル(配線材)にそれぞれ装着された光コネクタであり、本発明にかかる第1光コネクタC1と、これに接続される第2光コネクタC2(本発明の相手側コネクタに相当する)とを断面図で概略的に示しており、第1光コネクタは、例えば配線材の一つとして上記ワイヤハーネスに含まれる光ケーブルの末端に装着されている。
【0051】
同図に示すように、第1光コネクタC1は、プラスチック等の絶縁材料により成形される第1ハウジングH1と、光ファイバ芯線の末端に装着されるフェルール66(本発明の第1ファイバ用端子に相当する)とを含む。
【0052】
フェルール66は、詳しく図示していないが、例えば光ファイバが挿入される細径のファイバ孔とこれよりも太径の固定孔とが軸方向に並んだ樹脂材料からなる筒状体である。このフェルール66は、末端の被覆が除去されることにより光ファイバが露出した状態の光ファイバ芯線がその末端側から前記固定孔に挿入され、前記ファイバ孔に光ファイバが挿入された状態でその後側の位置で被覆部分が前記固定孔の部分に接着されることでファイバ芯線の末端に装着されている。
【0053】
前記第1ハウジングH1は、第2光コネクタC2の第2ハウジングH2が挿入されることが可能な挿入用凹部62を備えた雌型のハウジングである。第1ハウジングH1の前記挿入用凹部62の奥端部には、フェルール収容孔64が穿設されており、第1ハウジングH1は、このフェルール収容孔64内に前記フェルール66を配置した状態で当該フェルール66と光ファイバ芯線の末端部分を一体的に保持する。
【0054】
この第1光コネクタC1には、第1ハウジングH1のうちその前端(図8では右端)を含む一定の範囲に防塵体68が設けられており、これにより挿入用凹部62が防塵されている。この防塵体68は、第1の実施形態のものと同等のものであり、コネクタ結合時に、前記第2光コネクタにより突き破ることが可能となるようにその材質やシート厚みが選定されている。なお、防塵体68の形成方法は、第1の実施形態と同等であり、ここでは説明を省略する。
【0055】
一方、第2光コネクタC2は、プラスチック等の絶縁材料により成形される第2ハウジングH2と、光ファイバ芯線の末端に装着されるフェルール74(本発明の第2ファイバ用端子に相当する)とを含む。
【0056】
前記フェルール74は、上述した第1光コネクタC1のフェルール66と同等のものであり、当該フェルール66と同様にファイバ芯線に装着されている。
【0057】
前記第2ハウジングH2は、その前端に、第1光コネクタC1の前記第1ハウジングH1の挿入用凹部62に嵌合可能な嵌合部72を備えた雄型のハウジングである。この第1ハウジングH1は、同図に示すように、前記嵌合部72の先端に前記フェルール74の一部を突出させた状態で当該フェルール74と光ファイバ芯線の末端部分を一体に保持する。
【0058】
第1光コネクタC1と第2光コネクタC2との接続は、同図に示すように、コネクタC1,C2を向かい合わせに配置し、第1光コネクタC1の第1ハウジングH1の挿入用凹部62に、第2光コネクタC2の第2ハウジングH2がその前端側から挿入されることにより行われる。このように第1ハウジングH1に第2ハウジングH2が挿入されると、この挿入に伴い第1光コネクタC1の前記防塵体68が第2光コネクタC2の先端で突き破られる。そして、図9に示すように、第2ハウジングH2の前端が第1ハウジングH1の前記挿入用凹部24の奥端部に突き当たる位置まで到達すると、第2光コネクタC2のフェルール74が前記フェルール収容孔64に挿入されて相手側のフェルール66と突き合わせ状態となり、第1光コネクタC1側の光ファイバと第2光コネクタC2側の光ファイバとが相互に接続される。
【0059】
そして、同図に示す第1光コネクタC1と第2光コネクタC2との接続状態では、第2ハウジングH2に形成された係止片74が第1ハウジングH1の前記挿入用凹部62の内側面に形成された係止凹部62aに係合し、この係合により前記接続状態が維持される。
【0060】
以上のような第2実施形態のワイヤハーネスによれば、光ケーブルを含む複合型のワイヤハーネスにおいて、第1実施形態のものと同様の作用効果を奏することができる。すなわち、第1光コネクタC1に防塵体68が設けられて前記挿入用凹部62の防塵が図られているため、第1光コネクタC1が第2光コネクタC2に接続されるまでの間に挿入用凹部24内に異物が侵入し、この異物がフェルール収容孔64に詰まって光ファイバの接続不良をもたらすという不都合を未然に防止することができる。しかも、両コネクタC1、C2の接続時には、挿入用凹部62が第2光コネクタC2により突き破られることで、防塵体68の取り外しを行うことなく両コネクタC1、C2の接続を行うことができる。従って、上記光ケーブルを含むワイヤハーネスの配索および接続作業において、工数の増加を伴うことなく上記の作用効果を享受することができる。
【0061】
なお、以上は本発明の好ましい実施形態の例示であって、これら実施形態中で説明したコネクタC、C1、C2及び電子回路ユニットEUの具体的な構成や防塵体26、68の具体的な形成方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
例えば第1実施形態では、防塵体26は、コネクタCの前端面と側面(天壁21a、底壁21b及び側壁21d)の一部を覆うように形成されているが、コネクタCの前端面のみを覆うもの、若しくはコネクタCの全体を覆うものであってもよい。要するに、防塵体26は、挿入用凹部24を防塵することができ、かつ回路基板10との接続時に当該回路基板10で突き破ることが可能であればよい。第2実施形態についても同様である。
【0063】
また、第1実施形態では、ポリ塩化ビニル等のシート本体層と接着剤層とを有するシート体26′を用い、このシート26′体を第1ハウジングH1に接着、固定することで防塵体26を形成しているが、接着剤層をもたないシート体を用い、このシート体の熱収縮を利用して第1ハウジングH1に当該シート体を被着することによって前記防塵体26を形成するようにしてもよい。第2実施形態についても同様である。
【0064】
また、第1実施形態では、熱可塑性樹脂からなるシート本体層を有するシート体26′を用い、ヒータ54によりシート体26′を軟化させた状態で第1ハウジングH1に被せているが、これはシート体26′を第1ハウジングH1の外形になじませる上で有利なためであり、シート体26′の材質は、実施形態のものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
C コネクタ
EU 電子回路ユニット
H ハウジング
10 回路基板
12 ケース
24 基板挿入用凹部
26 防塵体
26′ シート体
30 コネクタ端子
36 弾性接触片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線材を接続対象部材に接続するための、防塵機能を有するコネクタであって、
前記接続対象部材に接触可能な接触部を有し、配線材の末端に装着される端子部材と、
前記接続対象部材が挿入されることが可能な挿入用凹部を備え、かつこの挿入用凹部に挿入される前記接続対象部材に前記接触部が接触可能となるように前記端子部材を保持するハウジングと、
前記挿入用凹部の挿入口を塞ぐことにより当該挿入用凹部を防塵する防塵体と、を備え、
前記防塵体は、前記接続対象部材の前記挿入用凹部への挿入に伴い当該接続対象部材により突き破られることが可能となるように形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記防塵体は、樹脂材料からなるシート体を含みこのシート体が少なくとも前記挿入用凹部の周囲の位置で前記ハウジングに固定されたものであることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記シート体は、前記ハウジングに接着されることにより当該ハウジングに固定されることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記端子部材は、電線を前記配線材としてその末端に装着されるコネクタ端子であって、前記接触部として端子軸方向と直交する方向に変位可能な弾性接触片を備え、
前記ハウジングは、縁部の表面に接続用導体が設けられた回路基板を前記接続対象部材として当該回路基板が挿入されることが可能な前記挿入用凹部を備え、かつこの挿入用凹部に挿入される前記回路基板の前記接続用導体に前記弾性接触片が接触可能となるように前記コネクタ端子を保持し、
前記防塵体は、前記挿入用凹部に前記回路基板が挿入されるに伴い当該回路基板により突き破られることが可能となるように形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記端子部材は、光ファイバを前記配線材としてその末端に装着される第1ファイバ用端子であって当該第1ファイバ用端子の端面が前記接触部とされるものであり、
前記ハウジングは、前記光ファイバに接続される相手側光ファイバの末端に装着される第2ファイバ用端子及び当該第2ファイバ用端子を保持するハウジングを含む相手側コネクタを前記接続対象部材として当該相手側コネクタが挿入されることが可能な前記挿入用凹部を備え、かつ前記挿入用凹部に挿入される前記相手側コネクタのハウジングに保持される前記第2ファイバ用端子と前記第1ファイバ用端子とが突き合わさせ状態となるように前記第1ファイバ用端子を保持し、
前記防塵体は、前記挿入用凹部に前記相手側コネクタが挿入されるに伴い当該相手側コネクタにより突き破られることが可能となるように形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のコネクタの製造方法であって、
配線材の末端に前記端子部材を装着し、この端子部材を前記ハウジングに保持させるコネクタ組立工程と、
前記ハウジングに前記防塵体を形成する防塵体形成工程と、を含み、
この防塵体形成工程は、エアを吸引するための複数の吸引口が開口する成型面をもつ真空成形用型の当該成型面上に、前記挿入用凹部が上向きに開口する姿勢で前記ハウジングを配置する工程と、前記挿入用凹部の挿入口を覆うように前記ハウジングにシート体を被せる工程と、前記真空成形用型の吸引口からエアを吸引することにより前記シート体を前記ハウジングに密着させる工程とを含む、ことを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項7】
複数本の配線材を含むワイヤハーネスであって、
前記配線材のうち特定の配線材の末端に請求項1乃至5の何れか一項に記載のコネクタを備えていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項8】
配線材と接続対象部材とを接続する方法であって、
配線材の末端に端子部材を装着し、この端子部材を保持するためのハウジングであって前記接続対象部材が挿入されることが可能な挿入用凹部を備えるものを準備して前記端子部材を当該ハウジングに保持させる工程と、
前記ハウジングの前記挿入用凹部の挿入口を塞ぐことにより当該挿入用凹部を防塵する防塵体を前記ハウジングに形成する工程と、
前記接続対象部材により前記防塵体を突き破りながら当該接続対象部材を前記ハウジングの前記挿入用凹部に挿入することにより当該接続対象部材を前記端子に接触させる工程と、を含むことを特徴とする配線材と接続対象部材との接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252889(P2012−252889A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124890(P2011−124890)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】