説明

コネクタの一体成形方法

【課題】部品点数を削減することができ、生産性を向上させることができるコネクタの一体成形方法を提供する。
【解決手段】電線7と、ターミナル11と、被覆部材13とを有し、被覆部材13は、接続部の周囲に設けられ被覆部5と接着すると共にターミナル11と圧接して接続部をシールする弾性樹脂15と、この弾性樹脂15の周囲に設けられ弾性樹脂15と接着すると共にターミナル11と圧接する樹脂17とを有したコネクタ1の一体成形方法において、接続部の周囲に弾性樹脂15を射出成形し、被覆部5と弾性樹脂15とを接着させる第1工程と、この第1工程の後、弾性樹脂15の周囲に弾性樹脂15を押さえ込むように樹脂17を射出成形し、弾性樹脂15とターミナル11とを圧接させて接続部をシールさせると共に弾性樹脂15と樹脂17とを接着させ、ターミナル11と樹脂17とを圧接させる第2工程とを有した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性を有するコネクタの一体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水性を有するコネクタとしては、電線とハウジングとが熱可塑性樹脂によって一体成形され、各部材の接合部が熱可塑性樹脂によってシールされているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなコネクタでは、コネクタ側の防水性がコネクタに接続される相手側の形状に依存しており、防油などの種類によっては相手側にシールが必要ないこともあるが、コネクタ側を封止しないと油などが電線を伝わり拡散する恐れがある。また、シール機構を必要とする場合には、部品点数の削減や小型化の観点からコネクタ側にシール性能を備えた方が効率がよい。
【0004】
そこで、端子とケーブルの被覆材とを一体に覆う一次樹脂成形部材を設け、一次樹脂成形部材と被覆材との接合部分にシールリングを組付け、一次樹脂成形部材と被覆材とシールリングとを覆う二次樹脂成形部材を設けることによって一体成形させたコネクタが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、端子金具とシールド電線とを一体に覆う合成樹脂製の断熱層を設け、端子金具のタブにホットメルトを塗布し、断熱層とシールド電線とホットメルトとを覆う合成樹脂製のハウジングを設けることによって一体成形させたコネクタも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134220号公報
【特許文献2】特開2008−269858号公報
【特許文献3】特開2001−273946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2,3のようなターミナルを樹脂でシールするコネクタでは、一般的にターミナルの材料が銅やアルミなどの金属にメッキを施したものであるので、金属に接着する樹脂を使用した場合、樹脂の成形時に樹脂が金型に接着して離型性が悪くなり、生産性の低下や形状の変化などの悪影響を引き起こし、量産が困難であった。
【0008】
また、特許文献2,3では、電線やターミナルからの水の侵入を抑制することが出来るが、一次樹脂成形部材や断熱層とは別にシールリングやホットメルトを必要としており、部品点数や組付け工数が増加していた。
【0009】
そこで、この発明は、部品点数を削減することができ、生産性を向上させることができるコネクタの一体成形方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、芯線部が被覆部に覆われた電線と、この電線の前記芯線部に接続部で接続されたターミナルと、前記接続部の周囲に設けられた被覆部材とを一体的に成形させるコネクタの一体成形方法であって、前記被覆部材は、前記接続部の周囲に設けられ前記被覆部と接着すると共に前記ターミナルと圧接して前記接続部をシールする弾性樹脂と、この弾性樹脂の周囲に設けられ前記弾性樹脂と接着すると共に前記ターミナルと圧接する樹脂とを有し、前記接続部の周囲に前記弾性樹脂を射出成形し、前記被覆部と前記弾性樹脂とを接着させる第1工程と、この第1工程の後、前記弾性樹脂の周囲に前記弾性樹脂を押さえ込むように前記樹脂を射出成形し、前記弾性樹脂と前記ターミナルとを圧接させて前記接続部をシールさせると共に前記弾性樹脂と前記樹脂とを接着させ、前記ターミナルと前記樹脂とを圧接させる第2工程とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタの一体成形方法であって、前記第2工程において、前記接続部の周囲に射出成形された前記弾性樹脂のうち前記被覆部側に位置する部分が露出するように前記樹脂を射出成形させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のコネクタの一体成形方法は、弾性樹脂と被覆部及び弾性樹脂と樹脂とが接着し、弾性樹脂及び樹脂はターミナルに対して圧接されるものであるので、第1工程と第2工程における射出成形時に用いられる金型に対して弾性樹脂及び樹脂が接着されることがなく、離型性を向上させることができる。これにより、生産性の低下や形状の変化などの悪影響を抑制することができ、量産を達成することができる。
【0013】
また、第2工程において、弾性樹脂の周囲に弾性樹脂を押さえ込むように樹脂を射出成形し、弾性樹脂とターミナルとを圧接させて接続部をシールさせるので、コネクタを防水するために他の部材を用いる必要がなく、部品点数や組付け工数を削減することができる。
【0014】
従って、部品点数を削減することができ、生産性を向上させることができる。
【0015】
請求項2のコネクタの一体成形方法は、第2工程において、接続部の周囲に射出成形された弾性樹脂のうち被覆部側に位置する部分が露出するように樹脂を射出成形させるので、電線の引き出し部の強度を確保しつつ、電線の引き出し部を屈曲可能とすることができ、コネクタの配索の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコネクタの一体成形の過程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るコネクタの一体成形の過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図4を用いて本発明の実施の形態に係るコネクタ及びコネクタの一体成形方法について説明する。
【0018】
本実施の形態に係るコネクタ1は、芯線部3が被覆部5に覆われた電線7と、この電線7の芯線部3に接続部9で接続されたターミナル11と、接続部9の周囲に設けられた被覆部材13とを有している。また、被覆部材13は、接続部9の周囲に設けられ被覆部5と接着すると共にターミナル11と圧接して接続部9をシールする弾性樹脂15と、この弾性樹脂15の周囲に設けられ弾性樹脂15と接着すると共にターミナル11と圧接する樹脂17とを有している。
【0019】
そして、このコネクタ1の一体成形方法は、接続部9の周囲に弾性樹脂15を射出成形し、被覆部5と弾性樹脂15とを接着させる第1工程と、この第1工程の後、弾性樹脂15の周囲に弾性樹脂15を押さえ込むように樹脂17を射出成形し、弾性樹脂15とターミナル11とを圧接させて接続部9をシールさせると共に弾性樹脂15と樹脂17とを接着させ、ターミナル11と樹脂17とを圧接させる第2工程とを有する。
【0020】
また、第2工程において、接続部9の周囲に射出成形された弾性樹脂15のうち被覆部5側に位置する部分が露出するように樹脂17を射出成形させる。
【0021】
なお、「接着」とは、当接する部分同士が一体となることを示し、「圧接」とは、外力を加えることによって当接する部分同士が密着し、外力を除くと当接する部分同士が離間できることを示すものとする。
【0022】
図1〜図4に示すように、コネクタ1は、電線7と、ターミナル11と、被覆部材13とを備えている。電線7は、芯線部3と被覆部5とからなり、芯線部3が被覆部5によって覆われている。この電線7は、両端部のうち一端側が電装品などに電気的に接続され、他端側が被覆部5が剥がされて露出した芯線部3が接続部9となり、この接続部9にターミナル11が接続されている。
【0023】
ターミナル11は、薄板状の銅やアルミなどの金属からなり、芯線部3が露出した接続部9に加締められて電線7と電気的に接続されている。このターミナル11は、他の電装品や他の電線に電気的に接続された相手側ターミナル(不図示)に電気的に接続される。このような電線7とターミナル11との接続部9の周囲には、被覆部材13が設けられている。
【0024】
被覆部材13は、弾性樹脂15と、樹脂17とを備えている。弾性樹脂15は、樹脂製の電線7の被覆部5とは接着するが、金属製のターミナル11とは接着しない、エステル、スチレン、オレフィン、ウレタン、ポリアミド系エラストマーなどの材料からなり、弾性を有している。この弾性樹脂15は、電線7の被覆部5が位置する部分では被覆部5と接着されるので、水や油などが電線7側からコネクタ1内へ侵入することを防止することができる。また、ターミナル11が位置する部分では、弾性樹脂15とターミナル11とが接着されておらず、弾性樹脂15の周囲に設けられた樹脂17によって弾性樹脂15がターミナル11に圧接される。これにより、ターミナル11側がシールされ、水や油などがターミナル11側からコネクタ1内へ侵入することを防止することができる。
【0025】
樹脂17は、弾性樹脂15とは接着するが、金属製のターミナル11とは接着しない、一般的にコネクタで使用されるSPS、PBTなどの材料からなる。この樹脂17は、弾性樹脂15を外部から内部へ向けて押し込むように射出成形される。このとき、樹脂17と弾性樹脂15とが接着され、樹脂17と弾性樹脂15との間がシールされる。この樹脂17が形成される際の射出圧により、弾性樹脂15が押しつぶされるようにターミナル11に圧接され、ターミナル11側がシールされる。
【0026】
このように、コネクタ1の電線7側では、電線7の被覆部5と弾性樹脂15の接着によってシールされる。また、コネクタ1のターミナル11側では、樹脂17が形成される際の射出圧によって弾性樹脂15がターミナル11に圧接されてシールされる。また、弾性樹脂15と樹脂17との間は、互いの接着によってシールされる。従って、水や油などが侵入できる間隙がなくなり、コネクタ1内を完全にシールすることができる。
【0027】
ここで、コネクタ1の一体成形方法について説明する。
【0028】
まず、ターミナル11が加締められた電線7の接続部9近傍に対して、金型(不図示)を用いて弾性樹脂15を射出成形し、被覆部5と弾性樹脂15とを接着させる。このとき、弾性樹脂15は、被覆部5と接着するが、ターミナル11には接着されていない。(第1工程)
次に、第1工程終了後の部材を金型19,21にセットし、金型19,21の孔部23,25から樹脂17の材料を射出して弾性樹脂15の周囲に弾性樹脂15を押さえ込むように樹脂17を射出成形させる。このとき、矢印で示すような樹脂17の射出圧によって弾性樹脂15が押しつぶされ、弾性樹脂15とターミナル11とが圧接される。また、弾性樹脂15と樹脂17とが当接する部分が接着され、弾性樹脂15に設けられた孔部27,29から樹脂17が侵入し、弾性樹脂15と樹脂17とが一体化され、ターミナル11と樹脂17とが圧接された状態となる。(第2工程)
この第2工程において、接続部9の周囲に射出成形された弾性樹脂15のうち被覆部5側に位置する部分を、外部に露出する露出部分18となるように樹脂17を射出成形させる。このような樹脂17の射出成形により、露出部分18が位置する電線7の引き出し部は、弾性樹脂15の被覆による強度を確保しつつ、弾性樹脂15の弾性によって屈曲可能となる。このため、電線7の引き出し位置が限定されるような狭い場所などにもコネクタ1を配置させることができる。
【0029】
このような工程で一体成形されたコネクタ1は、水や油などが侵入できる間隙がなく、接続部9が位置するコネクタ1内が完全にシールされる。
【0030】
このようなコネクタ1の一体成形方法では、弾性樹脂15と被覆部5及び弾性樹脂15と樹脂17とが接着し、弾性樹脂15及び樹脂17はターミナル11に対して圧接されるものであるので、第1工程と第2工程における射出成形時に用いられる金型に対して弾性樹脂15及び樹脂17が接着されることがなく、離型性を向上させることができる。これにより、生産性の低下や形状の変化などの悪影響を抑制することができ、量産を達成することができる。
【0031】
また、第2工程において、弾性樹脂15の周囲に弾性樹脂15を押さえ込むように樹脂17を射出成形し、弾性樹脂15とターミナル11とを圧接させて接続部9をシールさせるので、コネクタ1を防水するために他の部材を用いる必要がなく、部品点数や組付け工数を削減することができる。
【0032】
従って、部品点数を削減することができ、生産性を向上させることができる。
【0033】
また、第2工程において、接続部9の周囲に射出成形された弾性樹脂15のうち被覆部5側に位置する部分が露出するように樹脂17を射出成形させるので、電線7の引き出し部の強度を確保しつつ、電線7の引き出し部を屈曲可能とすることができ、コネクタ1の配索の自由度を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明の実施の形態に係るコネクタでは、弾性樹脂と樹脂とが接着することによって防水性が高くなっているが、樹脂の射出成形によって弾性樹脂と樹脂とが密着できるものであれば、弾性樹脂と樹脂とが接着しなくともよい。
【符号の説明】
【0035】
1…コネクタ
3…芯線部
5…被覆部
7…電線
9…接続部
11…ターミナル
13…被覆部材
15…弾性樹脂
17…樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線部が被覆部に覆われた電線と、この電線の前記芯線部に接続部で接続されたターミナルと、前記接続部の周囲に設けられた被覆部材とを一体的に成形させるコネクタの一体成形方法であって、
前記被覆部材は、前記接続部の周囲に設けられ前記被覆部と接着すると共に前記ターミナルと圧接して前記接続部をシールする弾性樹脂と、この弾性樹脂の周囲に設けられ前記弾性樹脂と接着すると共に前記ターミナルと圧接する樹脂とを有し、
前記接続部の周囲に前記弾性樹脂を射出成形し、前記被覆部と前記弾性樹脂とを接着させる第1工程と、
この第1工程の後、前記弾性樹脂の周囲に前記弾性樹脂を押さえ込むように前記樹脂を射出成形し、前記弾性樹脂と前記ターミナルとを圧接させて前記接続部をシールさせると共に前記弾性樹脂と前記樹脂とを接着させ、前記ターミナルと前記樹脂とを圧接させる第2工程と、
を有することを特徴とするコネクタの一体成形方法。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタの一体成形方法であって、
前記第2工程において、前記接続部の周囲に射出成形された前記弾性樹脂のうち前記被覆部側に位置する部分が露出するように前記樹脂を射出成形させることを特徴とするコネクタの一体成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−14260(P2011−14260A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154937(P2009−154937)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】