説明

コネクタキャップ

【課題】指掛け部を設けたことに伴うコネクタキャップの大型化を回避し、コネクタキャップの押し込み作業を容易にする。
【解決手段】本発明は、底面12の外周縁から筒状をなして前方に延出されることで前方に開口する形態をなすフード部11を有するコネクタキャップ10であって、フード部11は、コネクタ30と嵌合可能な嵌合部11Aと、この嵌合部11Aの後方に設けられコネクタ30とは嵌合しない非嵌合部11Bとを備えて構成され、非嵌合部11Bの外周における後端部に指掛け部16が設けられており、この指掛け部16は、底面12の外周縁から前方に向かう途中部分が幅方向に膨出して形成されており、底面12における幅寸法W1は、指掛け部16の前端における幅寸法W2よりも小さい構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面の外周縁から筒状をなして前方に延出されることで前方に開口する形態をなすフード部を有するコネクタキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタキャップとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタキャップのフード部は、コネクタと嵌合可能な嵌合部と、この嵌合部の後方に設けられた非嵌合部とを備えて構成されている。非嵌合部は、コネクタとは嵌合せず、コネクタの外部に露出される。また、非嵌合部の外周における後端部には、指掛け部が設けられている。この指掛け部は、後方に向かうほど側方に張り出す形態をなし、指掛け部の外面は階段状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−335329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成によると、指掛け部を設けたことに伴って底面が側方に拡張されており、指掛け部を設けない場合と比較してコネクタキャップ全体が大型化することになる。また、指掛け部に指を引っ掛けてコネクタキャップを離脱させることはできるものの、コネクタキャップをコネクタに向けて押し込む際に、指掛け部の後端における鋭角部分に指の腹を押し当てる必要があり、コネクタキャップの押し込み作業が困難になる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、指掛け部を設けたことに伴うコネクタキャップの大型化を回避し、コネクタキャップの押し込み作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底面の外周縁から筒状をなして前方に延出されることで前方に開口する形態をなすフード部を有するコネクタキャップであって、フード部は、コネクタと嵌合可能な嵌合部と、この嵌合部の後方に設けられコネクタとは嵌合しない非嵌合部とを備えて構成され、非嵌合部の外周における後端部に指掛け部が設けられており、この指掛け部は、底面の外周縁から前方に向かう途中部分が幅方向に膨出して形成されており、底面における幅寸法は、指掛け部の前端における幅寸法よりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、底面における幅寸法が指掛け部の前端における幅寸法よりも小さいため、指掛け部を設けたことに伴うコネクタキャップ全体の大型化を回避できる。また、指掛け部を、底面の外周縁から前方に向かう途中部分が幅方向に膨出する形態としたから、指の腹を押し当てる部分が鋭角とならず、コネクタキャップの押し込み作業を容易にできる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
コネクタは回動式のレバーを有するレバー式コネクタであって、レバーにカム溝が形成されているものにおいて、嵌合部の外面に、レバーの回動に伴ってカム溝と係合可能なカムピンが突出して形成されている構成としてもよい。
【0009】
このような構成によると、一方の手でコネクタを持ち、他方の手でコネクタキャップを持つことにより、他方の手の指の腹を指掛け部に押し当てながらコネクタキャップをコネクタに浅く嵌合させる作業に連続して、一方の手でレバーを回動させることができる。したがって、コネクタキャップをコネクタに嵌合させる作業を円滑に行うことができる。
【0010】
指掛け部は、階段状をなして形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、指の腹を指掛け部に対して滑りにくくできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、指掛け部を設けたことに伴うコネクタキャップの大型化を回避することができ、コネクタキャップの押し込み作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態におけるコネクタキャップを斜め後方から見た図
【図2】コネクタを斜め前方から見た図
【図3】指掛け部に指の腹を宛った状態におけるコネクタキャップの平面図
【図4】コネクタキャップの背面図
【図5】コネクタキャップの左側面図
【図6】コネクタキャップの正面図
【図7】コネクタキャップの底面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるコネクタキャップ10は、図2に示すコネクタ30に対して嵌合可能とされている。コネクタ30は、回動式のレバー40を有するレバー式コネクタである。コネクタ30は、合成樹脂製のコネクタハウジング31を有しており、このコネクタハウジング31に対してレバー40が回動可能に支持されている。レバー40は、コネクタキャップ10との嵌合開始時に配置される初期位置(図2に示す位置)と、コネクタキャップ10との嵌合完了時に配置される嵌合位置(図示せず)との間を回動可能とされている。
【0014】
コネクタハウジング31は前方に開口する筒状で、かつ、幅方向に長い横長の長円形状をなしている。コネクタハウジング31の内部には、例えば雌型の端子金具(図示せず)を収容可能な端子収容部34が設けられている。コネクタハウジング31の内周下面には、ガイド溝35が前後方向に延びて設けられている。また、コネクタハウジング31の両側面部32には、レバー40の初期位置にて前方に向けて開口する挿通溝33が形成されている。挿通溝33は、前後方向に延びて設けられている。さらに、両側面部32において挿通溝33の後方には、レバー40を回動可能に支持する支持ピン36が側方に突出して設けられている。
【0015】
レバー40は略門形をなし、一対の側板41を操作部42で連結した構成とされている。両側板41は、コネクタハウジング31の両側面部32を幅方向両側から挟む配置とされている。側板41には、支持ピン36と嵌合可能な軸孔43が設けられている。また、側板41の内面において挿通溝33と対応する位置には、カム溝44が形成されている。カム溝44の入口は、レバー40の初期位置にて前方に向けて開口しており、カム溝44の入口から終端にかけての範囲は、軸孔43に近づくように弧状をなして延出されている。なお、カム溝44の入口には、後述するカムピン13をカム溝44の入口に保持する抜止突起45が設けられている。
【0016】
コネクタキャップ10は合成樹脂製であって、前方に開口するフード部11を有している。フード部11は、その奥壁に底面12を有し、この底面12の外周縁から筒状をなして前方に延出された構成とされている。フード部11は、コネクタハウジング31の内部に嵌合可能とされており、この嵌合に伴って端子収容部34がフード部11の内部に嵌合可能とされている。このようなコネクタキャップ10は、コネクタ30を相手コネクタと嵌合させないときに、水や埃などの異物がコネクタ30の内部に進入することを防ぐ目的で使用される。なお、フード部11は、コネクタハウジング31の形状と同様に、幅方向に長い横長の長円形状をなしている。
【0017】
フード部11は、コネクタ30と嵌合可能な嵌合部11Aと、この嵌合部11Aの後方に設けられた非嵌合部11Bとを備えて構成されている。非嵌合部11Bは、嵌合部11Aとコネクタ30が嵌合した状態では外部に露出されており、コネクタ30とは嵌合しない部分である。嵌合部11Aの下面には、嵌合部11Aをコネクタ30に嵌合させたときにガイド溝35に嵌り込むガイドリブ17が設けられている。ガイドリブ17がガイド溝35に嵌り込むことでコネクタ30と嵌合部11Aの嵌合動作が案内される。
【0018】
非嵌合部11Bの下面には、図7に示すように、ブラケット(図示せず)が装着されるブラケット装着部14が形成されている。ブラケット装着部14は、図4に示すように、横長の筒状をなし、非嵌合部11Bの下面から下方に突出して形成されている。ブラケット装着部14は、ブラケット装着部14の内外方向に撓み可能な撓み係止片14Aが形成されている。撓み係止片14Aには、ブラケットの挿入経路上に配置された係止部14Bが形成されている。これにより、ブラケットをブラケット装着部14の内部に挿入すると、ブラケットが係止部14Bに摺動して撓み係止片14Aを外方に撓み変形させる。そして、ブラケットが所定の挿入位置に至ると、ブラケットに設けられた係止孔(図示せず)に係止部14Bが嵌り込んで弾性的に係止することによりブラケットがブラケット装着部14に対して抜け止め状態に保持される。
【0019】
また、嵌合部11Aの幅方向両側には、一対のカムピン13が側方に突出して形成されている。カムピン13は、図4および図5に示すように、円柱状をなしている。カムピン13は、嵌合部11Aとコネクタ30を嵌合させることで挿通溝33およびカム溝44に進入可能とされている。カムピン13がカム溝44の入口に進入して抜止突起45を乗り越えると、カムピン13がカム溝44の入口に保持される。この後、レバー40を回動させると、カムピン13とカム溝44がカム作用を発揮しながら係合し、コネクタキャップ10とコネクタ30が正規に嵌合する。
【0020】
嵌合部11Aの幅方向両側においてカムピン13の基端側における周囲には、係止解除部15が形成されている。係止解除部15は、図3に示すように、カムピン13の前端位置から後方に向けて上り勾配をなす前側傾斜面15Aと、前側傾斜面15Aの後縁から水平姿勢で後方に延びる乗上面15Bと、乗上面15Bの後縁から後方に向けて下り勾配をなす後側傾斜面15Cとを有している。一方、カム溝44の入口には、係止解除部15と係合して初期位置におけるレバー40の回動を許容するレバー保持部(図示せず)が設けられている。具体的には、嵌合部11Aをコネクタ30に嵌合させると、レバー保持部が前側傾斜面15Aに摺接しながら乗上面15Bに乗り上げた状態となって両側板41が開き変形することにより、初期位置に固定されたレバー40の回動が許容される。
【0021】
非嵌合部11Bの幅方向両側には、一対の指掛け部16が設けられている。指掛け部16は、図3に示すように、底面12の外周縁から前方に向かう途中部分が幅方向に膨出して形成されている。換言すると、指掛け部16の略前半部は、前方に向かうほど下り勾配となる離脱傾斜面16Aとされている一方、指掛け部16の略後半部は、後方に向かうほど下り勾配となる押込傾斜面16Bとされている。両傾斜面16A,16Bは、いずれも階段状に形成されている。このため、例えば図3に示すように親指の腹20と人差し指の腹20とを押込傾斜面16Bに宛った状態では、各指の腹20が押込傾斜面16Bの段差部分に食い込むことで各指の腹20を両傾斜面16A,16Bに対して滑りにくくできる。
【0022】
ここで、図7に示すように、底面12の幅寸法W1は、指掛け部16の前端における幅寸法W2よりも小さめとされている。これは、指掛け部16を設けない場合と比較して底面12を幅方向に小型化できることを意味している。すなわち、指掛け部16を設けない場合における底面の幅寸法はW2となるのに対して、指掛け部16を設けた場合には、底面12の幅寸法をW2よりも小さいW1にすることができる。したがって、底面12の小型化に伴ってコネクタキャップ10を小型化できる。
【0023】
また、両傾斜面16A,16Bの境界16C(離脱傾斜面16Aの後端)は、指掛け部16の前端よりも側方に張り出した形状となっている。仮に境界16Cに底面を設けた場合、この底面の幅寸法がW2よりも大きくなるため、コネクタキャップ10の後端が側方に張り出した状態でコネクタキャップ10全体が大型化することになる。その点、本実施形態では離脱傾斜面16Aの後方に押込傾斜面16Bを設けているから、底面12の幅寸法W1をW2よりも小さくすることができる。したがって、コネクタキャップ10全体の大型化を回避できる。さらに、押込傾斜面16Bに指の腹20を宛うことができるため、コネクタキャップ10をコネクタ30に対して押し込み易くできる。
【0024】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、コネクタキャップ10とコネクタ30の嵌合を開始するにあたっては、指掛け部16の押込傾斜面16Bに指の腹20を宛いながらコネクタキャップ10を左手で把持する。一方、レバー40を初期位置に配置した状態でコネクタ30を右手で持ちながら、親指の腹を操作部42に宛う。
【0025】
そして、コネクタキャップ10とコネクタ30を浅く嵌合させると、カムピン13がカム溝44の入口に進入し、抜止突起45によってカムピン13がカム溝44の入口に保持される。このとき、コネクタキャップ10の両係止解除部15によって両側板41が開き方向に変形し、レバー40の回動が許容される。
【0026】
引き続き、レバー40を初期位置から嵌合位置へ回動させると、カムピン13がカム溝44に沿って軸孔43側へ移動する。このとき、カムピン13とカム溝44のカム作用によってコネクタキャップ10がコネクタ30に引き寄せられ、レバー40が嵌合位置に至ると、コネクタキャップ10とコネクタ30が正規に嵌合する。
【0027】
次に、コネクタキャップ10とコネクタ30の離脱を開始するにあたっては、レバー40を嵌合位置から初期位置へ回動させる。この間、カムピン13とカム溝44のカム作用によってコネクタキャップ10がコネクタ30から引き離される。こうして、レバー40が初期位置に至ると、カムピン13がカム溝44の入口に配置される。
【0028】
この後、指掛け部16の押込傾斜面16Bに指の腹20を宛いながらコネクタキャップ10を左手で把持する一方、レバー40が初期位置に配置された状態のコネクタ30を右手で持つ。そして、左手を後方に引っ張ることにより、コネクタキャップ10をコネクタ30から離脱させることができる。
【0029】
以上のように本実施形態では、底面12の幅寸法W1を指掛け部16の前端における幅寸法W2よりも小さくしたから、底面12の小型化に伴ってコネクタキャップ10を小型化することができる。また、指掛け部16に押込傾斜面16Bを設けたから、この押込傾斜面16Bに指の腹20を宛うことができ、コネクタキャップ10をコネクタ30に押し込み易くできる。ここで、押込傾斜面16Bを階段状に形成したため、指の腹20を押込傾斜面16Bに対して滑りにくくできる。
【0030】
また、コネクタキャップ10をレバー式のコネクタ30に嵌合させる際には、左手でコネクタキャップ10を把持し、右手でコネクタ30を持つことができるので、コネクタキャップ10をコネクタ30に浅く嵌合させる操作が容易になる。さらに、コネクタキャップ10の嵌合操作に続けて、レバー40の回動操作を行うことができる。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0032】
(1)上記実施形態では指掛け部16が両傾斜面16A,16Bによって構成されているものの、本発明によると、指掛け部が曲面形状をなして側方に膨出する形態としてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態ではコネクタ30がレバー式コネクタとされているものの、本発明によると、レバー40の代わりにロックアームを備えたコネクタとしてもよい。この場合、カムピン13および係止解除部15を廃止して、ブラケット装着部14と反対側の面にロックアームと係止可能なロック突部を設けてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では指掛け部16が階段状に形成されているものの、本発明によると、階段状の段差をなくして円滑な面によって指掛け部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…コネクタキャップ
11…フード部
11A…嵌合部
11B…非嵌合部
12…底面
13…カムピン
16…指掛け部
30…コネクタ
40…レバー
44…カム溝
W1…底面における幅寸法
W2…指掛け部の前端における幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の外周縁から筒状をなして前方に延出されることで前方に開口する形態をなすフード部を有するコネクタキャップであって、
前記フード部は、コネクタと嵌合可能な嵌合部と、この嵌合部の後方に設けられ前記コネクタとは嵌合しない非嵌合部とを備えて構成され、
前記非嵌合部の外周における後端部に指掛け部が設けられており、この指掛け部は、前記底面の外周縁から前方に向かう途中部分が幅方向に膨出して形成されており、前記底面における幅寸法は、前記指掛け部の前端における幅寸法よりも小さいことを特徴とするコネクタキャップ。
【請求項2】
前記コネクタは回動式のレバーを有するレバー式コネクタであって、前記レバーにカム溝が形成されているものにおいて、前記嵌合部の外面に、前記レバーの回動に伴って前記カム溝と係合可能なカムピンが突出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタキャップ。
【請求項3】
前記指掛け部は、階段状をなして形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−258414(P2011−258414A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131835(P2010−131835)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】