説明

コネクタソケット

【課題】環境試験などにおいて、コンタクトを支持するコネクタ本体の歪によるコンタクトの接点の変位を小さくし、それにより、接続対象物との電気的接続が防止され得るコネクタソケットを提供する。
【解決手段】接続対象物が挿入されるプラグ収容空間及びプラグ収容空間に挿入された接続対象物の電極と接触するコンタクトを収容、支持する複数のスリットが形成されているソケット本体、それぞれが、接続対象物の対応する1つの電極に接触する接点を有する2つの弾性変形部、及び該2つの弾性変形部の基端部を弾性変形可能に支持するとともに、複数のスリットそれぞれに圧入される固定部を含んでいる複数のコンタクトを備えるコネクタソケットにおいて、コンタクトは、短い弾性変形部と長い弾性変形部を含み、該長い弾性変形部の最下点とスリットの底面との間の距離が、長い弾性変形部の接点の変位量より小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板対基板の接続に用いられるコネクタを構成するコネクタソケットに関し、特に、コンタクト構造の改良を図ったコネクタソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を搭載したプリント配線基板または電子部品それ自体を別のプリント配線基板または電子部品に接続する基板対基板接続用コネクタは、特許文献1に示されるように、雄型コネクタとしてのコネクタプラグと雌型コネクタとしてのコネクタソケットから構成されている。コネクタプラグ及びコネクタソケットは、それぞれ、例えば、異なるプリント配線基板に設けられ、コネクタプラグがコネクタソケットに挿入されることで、異なるプリント配線基板間が電気的に接続される。特許文献1に開示される基板対基板接続用コネクタにおいては、コネクタプラグの電気的接触部材として、電極またはパッドが設けられ、コネクタソケットの電気的接触部材として、弾性変形可能なコンタクトが設けられている。また、コネクタソケットの弾性変形可能なコンタクトは、金属薄板を帯状に打ち抜き、帯板状に打ち抜かれた金属薄板を曲げ加工することで形成され、したがって、コンタクトは、金属薄板の表面と交差する方向、概ね直交する方向に変形する。さらに、特許文献1に開示されるコネクタソケットにおいては、電気的接触を確実にするために1つの電極に対応して2つの接点を備える1つのコンタクトが配置されている。
【0003】
近年、コネクタの大きさの小型化が求められ、また、プリント配線基板の配線が増大するとともに、配線間のピッチが狭くなってきたことで、図7(a)に示されるようなコネクタソケットが提案されている。当該コネクタソケットにおいては、このような配線間の挟ピッチ化に対応するために、特許文献1に示されるコンタクトに代えて、金属薄板を打ち抜き加工のみで形成されたコンタクトが使用されている。ここで、当該コネクタソケットについて図7(a)及び(b)を参照して簡単に説明する。
【0004】
図7(a)に示されるように、コネクタソケット101は、硬質の合成樹脂から成形され、概略細長い直方体状のソケット本体110及び該ソケット本体110内に上下に配置される、該コネクタソケット101の電気的接触部材としての複数の第1のコンタクト130a及び複数の第2のコンタクト130bを含んでいる。
【0005】
ソケット本体110には、電気的接触部材としての電極またはパッドを有するコネクタプラグ(図1(c)参照)の先端部が挿入されるプラグ収容空間115が形成されている。該プラグ収容空間115は、前方(図7(a)において、右側)に向かって開放している。プラグ収容空間115は、図7(a)においては、上下に設けられているように見えるが、図7(a)において図面と垂直方向に延在し、両側部で連通しており、したがって、プラグ収容空間115は、前方から見ると、ロ字形状をしている(図1(b)参照)。プラグ収容空間115は、中心線O1−O1に対して上下対称形状をなしている。
【0006】
ソケット本体110には、また、第1のコンタクト130a及び第2のコンタクト130bがそれぞれ圧入固定される複数の第1のスリット112a及び複数の第2のスリット112bが形成されている。複数の第1のスリット112a及び複数の第2のスリット112bは、それぞれ、ソケット本体110の、中心線O1−O1に対して、上方及び下方に配置され、互いに平行に形成されている。複数の第1のスリット112a及び複数の第2のスリット112bは、それぞれ、図7(a)に示されるように、断面で略L字形をなしており、後方(図7(a)において、左側)に向かって開放するとともに、前方は、対応する上下のプラグ収容空間115に向かって開放し、該プラグ収容空間115に連通している。
【0007】
コネクタソケット101の電気的接触部材としての第1のコンタクト130a及び第2のコンタクト130bは、いずれも同じ形状を有し、金属薄板から打ち抜き加工により形成されている。ここでは、第1のコンタクト130aの構造についてのみ説明し、第2のコンタクト130bについては、図において数字に添付されるアルファベットaまたはAに代えてアルファベットbまたはBを添付することで説明を省略する。
【0008】
第1のコンタクト130aは、2つの弾性変形可能な弾性変形部、すなわち、第1の弾性変形部131a及び第2の弾性変形部132a、第1及び第2の弾性変形部131a、132aの基端部に連結し、ソケット本体110の第1のスリット112a内に圧入され、コンタクト130aの第1及び第2の弾性変形部131a、132aを弾性変形可能に支持する固定部133aを有する。第1の弾性変形部131a及び第2の弾性変形部132aは、それぞれの先端部に、第1の接点131A及び第2の接点132Aを有し、いずれも、打ち抜かれた金属薄板の板厚方向と直交する方向に弾性変形するように形成されている。また、第1の弾性変形部131aは、第2の弾性変形部132aより短く形成されている。
【0009】
図7(a)に示されるように、第1のコンタクト130aがスリット112a内に圧入固定されたとき、第1の弾性変形部131aは、中心線O1−O1から離れた位置に、該中心線O1−O1に対してほぼ平行に配置される。同様に、第2の弾性変形部132aは、中心線O1−O1よりに、スリット112aの底面113aから寸法Aだけ離れた位置に、中心線O1−O1に対してほぼ平行に配置される。また、図7(a)に示されるように、第1の接点131A及び第2の接点132Aは、スリット112aの前方に配置され、いずれもスリット112aから上方に位置する収容空間115内に寸法Bだけ突出するように配置される。
【0010】
このような構成を備えるコネクタソケット101に対して、対応するコネクタプラグの先端部が挿入されると、コネクタプラグに設けられている電極またはパッドに対応するコンタクト130の接点が所定の接圧で電気的に接触する。
【0011】
【特許文献1】特開2001−23711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した、コンタクトが金属薄板から打ち抜き加工のみで形成されているコネクタにおいても、さらなる小型化が要求される。この場合、例えば、第1のコンタクト130aにおいて、第1、第2の弾性変形部131a、132a及び固定部133aの前後方向の長さL1、L2及びL3を小さくすることでコネクタソケット側の小型化に対応している。
【0013】
このような小型化されたコネクタソケットが、環境試験の場、例えば、温度85℃、試験時間500時間の耐久試験において、プリント配線基板を接続した状態で用いられる場合、コネクタソケットのコンタクトとコネクタプラグの電極との電気的接続が不安定になる恐れがある。
【0014】
具体的には、図7(a)及び(b)に示されるように、コネクタプラグの先端部がコネクタソケットの収容空間115内に挿入されると、コンタクト130aの第1及び第2の接点131A及び132Aは、寸法Bだけ下方に変位する。この2つの接点131A及び132Aの変位に要する力が、コンタクト130aの2つの接点131A、132Aとコネクタプラグの電極との所望の接圧を生み出す。他方、この2つの接点131A、132Aの変位による反力が、固定部133a、ひいてはコンタクト130aを回転させる回転力として作用する。コンタクト130aの回転の中心は、該コンタクト130aの固定部133aの、スリット112aの底面113aに当接する前方下面角部134aとなる。
【0015】
上述したように、コネクタソケット101が耐久試験などの環境試験の場にあると、時間の経過に伴い、合成樹脂からなるソケット本体110が若干柔らかくなり、歪が増大する。この時、固定部133aの長さL3が十分長ければ、スリット112aの上面114aに当接する固定部133aの上面部分も長いため、柔らかくなっているスリット112aの上面114aを変形させる力が分散する。すなわち、前方下面角部134a回りの回転力が分散され、それにより、コンタクト130aが回転することを抑えることができる。
【0016】
しかしながら、上述したようにコネクタソケット101の大きさが小さくなると、固定部133aの長さL3も短くなり、該固定部133aの上面部分が当接するスリット112aの上面114aを変形させる力が集中し、大きくなる。したがって、ソケット本体110の歪が増大し、第2の弾性変形部132aがスリット112aの底面113aに当接するまで、すなわち、第2の弾性変形部132aとスリット112aの底面113aとの間の寸法A分、前方下面角部134a周りの回転が発生し得る。この時、寸法A>寸法Bであると、第1及び第2の接点131A及び132Aは、コネクタプラグの電極から離れる方向に変位し、それによりコネクタソケットとコネクタプラグ間の電気的接触が弱くなり、場合によって、電気的接触が断たれる恐れが生じる。結果として、試験対象物としてのコネクタソケットは不良品として判別される恐れが発生する。
【0017】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、環境試験などにおいて、コンタクトを支持するコネクタ本体の歪によるコンタクトの接点の変位を小さくし、それにより、コネクタプラグなどの接続対象物との電気的接続が防止され得るコネクタソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタソケットは、接続対象物が挿入されるプラグ収容空間及び該プラグ収容空間に挿入された接続対象物の電極と接触するコンタクトを収容、支持する複数のスリットが形成されているソケット本体、それぞれが、前記接続対象物の対応する1つの前記電極に接触する接点を有する2つの弾性変形部、及び該2つの弾性変形部の基端部を弾性変形可能に支持するとともに、前記複数のスリットそれぞれに圧入される固定部を少なくとも含んでいる複数のコンタクトを備えるコネクタソケットにおいて、前記コンタクトそれぞれは、短い弾性変形部と長い弾性変形部を含み、短い弾性変形部の長さは、その接点が水平方向で前記長い弾性変形部の接点と該長い弾性変形部の最下点との間に位置するように設定されるとともに、前記長い弾性変形部の最下点と前記スリットの底面との間の距離が、前記接続対象物がプラグ収容空間に挿入されたときの前記短い弾性変形部の前記接点の変位量より小さく設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るコネクタソケットは、長い弾性変形部の最下点と前記スリットの底面との間の距離がゼロであってもよい。さらに長い弾性変形部は湾曲して形成されていてもよい。
【0020】
本発明に係るコネクタソケットは、また、プラグ収容空間内に、前記スリットが延在し、前記複数のコンタクトのそれぞれの2つの弾性変形部が収容される中央コンタクト収容部が形成されることが好ましく、さらに、スリットは、ソケット本体の上下に互いに平行に形成されるとともに、ソケットの上側に形成されたスリットと下側に形成されたスリットは、左右方向に位置がずれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、コンタクトの長い弾性変形部の最下点と前記スリットの底面との間の距離が、接続対象物がプラグ収容空間に挿入されたときの長い弾性変形部の接点の変位量より小さく設定されていることで、コネクタソケットが環境試験などにおいて歪むことになっても、コンタクトの回転が抑制または防止される。さらに、仮に、コンタクトが回転することになっても、コンタクトの接点が説側対象物の電極から離れるよりも先に、コンタクトの第2の弾性変形部の最下点が収容されるスリットの底面に当接することで、接続対象物とコンタクトの接続が確実に保持される。
【0022】
本発明に係るコネクタソケットに用いられるコンタクトは、従来のコンタクトの構造を若干変更するのみでよく、製造も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明の実施態様について説明する。
図1(a)は、本発明に係るコネクタソケットを含む基板対基板接続用コネクタの斜視図であり、図1(b)は、本発明に係るコネクタソケットの斜視図であり、図1(c)は、本発明に係るコネクタソケットに対応するコネクタプラグの斜視図である。図2は、図1(a)に示される基板対基板接続用コネクタの正面図、図3(a)は、図2のIII−III線に沿う断面図、図3(b)は、図3(a)のC部分の一部拡大断面図である。図4は、図3(b)のIV−IV線に沿う断面図である。図5(a)は、本発明の第1の実施例に係るコネクタソケットの図4と同様の断面図であり、図5(b)は、図5(a)のE部分の一部拡大断面図である。図6(a)は、本発明の第2の実施例に係るコネクタソケットの図4と同様の断面図であり、図6(b)は、図6(a)のF部分の一部拡大断面図である。
【0024】
本明細書では、本発明に係るコネクタソケット10が基板対基板接続用コネクタ1を構成するものとして説明する。基板対基板接続用コネクタ1は、図1(b)に示されるコネクタソケット10と該コネクタソケットに接続される接続対象物としての、図1(c)に示されるコネクタプラグ80とで構成されている。コネクタソケット10は、通常、例えば、任意のある基板(不図示)に取り付けられており、コネクタプラグ80は、それとは別の基板(不図示)に取り付けられている。コネクタソケット10に対して、コネクタプラグ80が図1(a)に示されるように差し込まれることで基板と基板が電気的に接続される。
【0025】
最初に、基板対基板接続用コネクタ1を構成するコネクタプラグ80について簡単に説明する。コネクタプラグ80は、硬質の合成樹脂から成形される細長い概略直方体状のプラグ本体81及びコネクタプラグ80の電気的接触部材としての金属薄板から形成される複数の電極91を含んでいる。
【0026】
プラグ本体81は、その後方部分(図1(c)において上方部分、図4において左方部分;以下「先端部」ともいう。)が後述するコネクタソケット10のプラグ収容空間15内に挿入される部材であり、後方(先端部)に向かって開放されたコンタクト収容空間84が形成されている。コンタクト収容空間84は、断面扁平な矩形状をしており、該コンタクト収容空間84内には、後述するコネクタソケット10の中央コンタクト収容部16が嵌合する。すなわち、プラグ本体81は、後方から見て、ロ字形状をなしている。なお、コンタクト収容空間84の深さ(前後方向の長さ)は、中央コンタクト収容部16の長さより若干短く形成されている。
【0027】
図3(b)に示されるように、コンタクト収容空間84の上下には、該コンタクト収容空間84に向かって肩部87を介して階段状に開放するスリット85が形成されている。該スリット85は、プラグ本体81を前後方向に貫通して形成されている。スリット85の肩部87に金属薄板から打ち抜き形成された電極91が圧入され、固定される。本実施例においては、電極91は、プラグ本体81に圧入固定されているが、これに限られるものではなく、例えば、インサート成形によりプラグ本体81の成形と同時に設けられるようにしてもよい。スリット85は、後述するコネクタソケット10のソケット本体11の中央コンタクト収容部16に設けられている第1のスリット12a及び第2のスリット12bに対応して形成される。
【0028】
スリット85は、本実施例では、図3(a)、(b)に詳細に示されるように、上下において、位置がずれて形成されている。したがって、スリット85の肩部87に固定される電極91も、中心線O1−O1を挟んで、例えば、上方に形成されている隣接するスリット85のほぼ中間に、下方に形成されているスリット85が位置するように、上下において位置がずれて配置される。
【0029】
このように電極が配置されるため、コネクタソケット10にコネクタプラグ80が挿入されるとき、それぞれに配置されるコンタクト30と電極91が正しく接続されるように、プラグ本体81の左右の外側側壁82、82には、段部82a、82aが形成されることが好ましい。
【0030】
また、プラグ本体81の左右の外側側壁の前方(図1(c)において下方、図4において右方)には、停止段部83a、83aを介して固定部83、83が設けられる。停止段部83a、83aは、後述するコネクタソケット10のソケット本体11の前端面19に当接し、それにより、プラグ本体81のコネクタソケット10のプラグ収容空間15内への挿入量を所定の長さとなるように規制する。固定部83には、L字形の固定金具83bが設けられ、該固定金具83bを介して半田付けなどによりプリント配線基板にコネクタプラグ80が固定される。
【0031】
プラグ本体81のスリット85に圧入固定される電極91は、金属薄板から打ち抜き加工及びプレス加工により形成される。電極91各々は、コネクタソケット10のコンタクト30に接触する接触部92、スリット85の段部に圧入される固定部94及びプリント配線基板に半付けで接続される端子部96を含んでいる。
【0032】
次に、基板対基板接続用コネクタ1を構成する、本発明に係るコネクタソケット10について説明する。コネクタソケット10は、基本的には、コンタクト30の構成を除いて、図7(a)、(b)を用いて説明した上記従来例とほぼ同じ構成を有している。
【0033】
図1、4及び5(a)に示されるように、コネクタソケット10は、硬質の合成樹脂から成形され、概略細長い直方体状のソケット本体11及び該ソケット本体11内に上下に配置される、該コネクタソケット10の電気的接触部材としての複数のコンタクト30、本実施例では、複数の第1のコンタクト30a及び複数の第2のコンタクト30bを含んでいる。複数の第1のコンタクト30a及び複数の第2のコンタクト30bそれぞれは、同じ形状で同じ大きさを有している。
【0034】
ソケット本体11には、上述したコネクタプラグ80の先端部が挿入されるプラグ収容空間15が形成されている。該プラグ収容空間15は、前方(図4及び図5(a)において、右側)に向かって開放している。プラグ収容空間15は、図1(b)に明瞭に示されるように、扁平なロ字形状をなしており、中心線O1−O1に対して上下対称形状をなしている(図3(a)参照)。プラグ収容空間15内には、その中央に断面矩形状の中央コンタクト収容部16がソケット本体11と一体に形成されている。
【0035】
本実施例では、ソケット本体11には、複数の第1のコンタクト30a及び複数の第2のコンタクト30bがそれぞれ圧入固定される複数の第1のスリット12a及び複数の第2のスリット12bが中心線O1−O1を挟んで上下に形成されている。複数の第1のスリット12a及び複数の第2のスリット12bは、コンタクト30a、30bの板厚より若干大きい幅を有している。複数の第1のスリット12a及び複数の第2のスリット12bは、それぞれ、ソケット本体11の、中心線O1−O1に対して、上方及び下方に配置され、互いに平行に形成されている。ソケット本体11の上下に形成される第1のスリット12a及び第2のスリット12bは、図3(b)に詳細に示されるように、上述したコネクタプラグ80の電極91が固定されるスリット85に対応して、左右方向にずれて配置されている。すなわち、第1のスリット12a及び第2のスリット12bは、例えば、上方に形成された隣接する第1のスリット12a、12aのほぼ中間に、下方に形成される第2のスリット12bが位置するように、配置される。このように、上下に形成される第1及び第2のスリット12a及び12bを千鳥状に配置することで、第1及び第2のスリット12a及び12b間の壁厚が大きく取れ、ソケット本体11の強度を確保することができる。したがって、プリント配線のピッチが小さくなっても、第1、第2のコンタクト30a、30bを第1、第2のスリット12a、12b内にそれぞれ確実に固定支持することができる。
【0036】
複数の第1のスリット12a及び複数の第2のスリット12bは、それぞれ、図4(a)、5(a)に示されるように、断面で略L字形をなしており、後方(図4(a)、5(a)において、左側)に向かって開放するとともに、前方は、対応する上下のプラグ収容空間15に向かって開放し、該プラグ収容空間15に連通している。すなわち、第1のスリット12a及び第2のスリット12bは、後方側が、前後方向にソケット本体11を貫通する断面矩形状の孔として形成され、前方側は、中央コンタクト収容部16内に延在する溝として形成されている。また、第1のスリット12a及び第2のスリット12bの前方は、中央コンタクト収容部16により塞がれている。第1のスリット12a及び第2のスリット12bは、同じ形状で同じ大きさのコンタクト30を収容し、固定支持するので、同じ形状、大きさを有している。
【0037】
コネクタソケット10の電気的接触部材としての第1のコンタクト30a及び第2のコンタクト30bは、上述したように、いずれも同じ形状、大きさを有し、金属薄板からプレスで打ち抜き加工されるだけで形成される。ここでは、特に意図的に説明されない限り、第1のコンタクト30aを中心に説明する。したがって、第2のコンタクト30bについては、図において数字に添付されるアルファベットaまたはAに代えてアルファベットbまたはBを添付することで第2のコンタクト30bに関連する説明は省略される。
【0038】
第1のコンタクト30aは、2つの弾性変形部、すなわち、第1の弾性変形部31a及び第2の弾性変形部32a、固定部33a及び端子部35aを含んでいる。第2の弾性変形部32aは、頂点すなわち最下点34aを有するように湾曲形成される。第1の弾性変形部31aは、第2の弾性変形部32aと同様に湾曲形成されていてもよいし、ほぼ直線状に傾斜して形成されていてもよい。固定部33aは、上方に形成された突起部36aを介してソケット本体11の第1のスリット12aの後方側の孔内に圧入、固定される。第1及び第2の弾性変形部31a、32aの基端部が連結されていることから、固定部33aは、コンタクト30aの第1及び第2の弾性変形部31a、32aを弾性変形可能に支持する。第1の弾性変形部31a及び第2の弾性変形部32aは、それぞれの先端部すなわち後方端に、第1の接点31A及び第2の接点32Aを有し、いずれも、打ち抜かれた金属薄板の板厚方向と直交する方向に弾性変形するように形成されている。第1の接点31A及び第2の接点32Aは、コネクタプラグ80の対応する1つの電極91に接触する。また、本実施例では、第1の弾性変形部31aの長さは、第2の弾性変形部32aの長さより短く形成されている。さらに、図5(b)に明瞭に示されるように、第1の弾性変形部31aの長さは、その接点31Aが水平方向(図5(b)において、中心線O1−O1に平行な線p上)で第2の弾性変形部32aの接点32Aと該第2の弾性変形部32aの最下点34aとの間に位置するように、設定されることが好ましい。
【0039】
本実施例では、図5(a)に示されるように、第1のコンタクト30aが第1のスリット12a内に圧入固定されたとき、第1の弾性変形部31aは、中心線O1−O1から離れた位置に配置される。他方、第2の弾性変形部32aは、湾曲形成されている部分の頂点34a、言い換えれば、第2の弾性変形部32aの最下点が第1のスリット12aの底面13aから寸法Aだけ離れて位置するように、第1の弾性変形部31aより中心線O1−O1寄りに配置される。この時、図5(a)または5(b)に示されるように、第1の接点31A及び第2の接点32Aは、第1のスリット12aの前方側、すなわち、中央コンタクト収容部16に形成されている第1のスリット12a内を上下動する。すなわち、第1の接点31A及び第2の接点32Aは、また、いずれも、第1のスリット12aの上方に位置する収容空間15内に、中央コンタクト収容部16の上面すなわち第1のスリット12aの上面17aから寸法Bだけ上方に突出するように、形成される。なお、第2のコンタクト30bの第1の接点31B及び第2の接点32Bも、第2のスリット12bの下方に位置するプラグ収容空間15内に、中央コンタクト収容部16の下面17bから寸法Bだけ下方に突出するように形成される。
【0040】
以上説明したような構成を備えるコネクタソケット10とコネクタプラグ80は、上述したように、コネクタプラグ80のプラグ本体81の先端部がコネクタソケット10プラグ収容空間15内に挿入される。この時、コネクタソケットの10の中央コンタクト収容部16がコネクタプラグ80のコンタクト収容空間84内に嵌合する。それにより、コネクタプラグ80の複数の電極91と対応するコネクタソケット10の複数のコンタクト30の接点それぞれが概ね寸法Bだけ変位し、電極91とコンタクト30は、それぞれ所定の接圧で接触する。結果として、コネクタソケット10及びコネクタプラグ80が取り付けられているプリント配線基板が電気的に接続されることになる。この時、本実施例においては、寸法Aは、第2の弾性接触部32aの頂点34aが第1のスリット12aの底面13aに当接しないように設定されている。
【0041】
次に、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)を用いて、環境試験の場において、時間の経過に伴い、合成樹脂からなるソケット本体の歪が増大しても、従来のような弊害が生じることのない、本発明に係るコネクタソケットの実施例について説明する。なお、ここでも、第1のコンタクト30aを中心に説明し、図において数字に添付されるアルファベットaに代えてアルファベットbを添付することで第2のコンタクト30bに関連する説明を省略する。
【0042】
(第1の実施例)
第1の実施例においては、図5(b)に示されるように、上記寸法A<寸法Bとなるように第1のコンタクト30aの第2の弾性変形部32aを形成することを発明の特徴とする。第1のコンタクト30aをこのように形成することで、上述したような環境試験の過酷な場においても、第1のコンタクト30aは、若干回転するが、所望の接圧で対応するコネクタプラグ80の電極91と接触し、電気的接続が断たれることもない。
【0043】
本実施例においては、第1のコンタクト30aの固定部33aの前後方向の長さが短い場合、第1のコンタクト30aが固定部33aの前方下面角部37aを中心として回転し得る。しかしながら、第1のコンタクト30aが回転しても、第1及び第2の弾性変形部31a及び32aの第2の接点32Aがコネクタプラグ80の電極91から離れるよりも先に、第2の弾性変形部32aの湾曲部の頂点(最下点)34aが第1のスリット12aの底面13aに当接する。このことにより、第2の弾性変形部32aは、頂点34a回りに弾性変形し、したがって、第2の接点32Aは、第2の弾性変形部32aの頂点34aを支点として変位する。それにより、第2の弾性変形部32aのばね力が大きくなり、第2の接点32Aは、対応するコネクタプラグ80の電極91に対して所望の接圧を維持して接触することが可能となる。
【0044】
また、第2の弾性変形部32aの頂点34aが第1のスリット12aの底面13aに当接することで、第1のコンタクト30aの前方下面角部37a回りの回転も阻止され、第1の弾性変形部31aの回転も阻止される。したがって、第1のコンタクト30aの第1の接点31Aとコネクタプラグ80の電極91との接触も維持される。仮に、第2の弾性変形部31aの接点32Aが電極91との接触が外れても、第1の弾性変形部32aの接点31Aは、電極91との接触を確実に維持される。
【0045】
したがって、第1のコンタクト30aの2つの接点31A、32Aは、コネクタプラグ80の電極91との接触が確保され、従来のように電気的接続が断たれることは確実に阻止される。
【0046】
なお、本実施例においては、第1のコンタクト30aの第2の弾性変形部32aが湾曲して形成されているが、必ずしもこれに限られることもない。例えば、片持ち梁状に直線状であってもよい。この場合、第2の弾性変形部32aの所定位置に下方に向けて(第1のスリット12aの底面13aに向けて)突起が形成され、該突起の最下点と第1のスリット12aの底面13aの間に寸法A分だけ間隔があけられることになる。また、本実施例においては、寸法Aは、第1のコンタクト30aがコネクタプラグ80の電極91と接触している通常の場合、第2の弾性接触部32aの頂点34aが第1のスリット12aの底面13aに当接しないように設定されているが、これに限られるものではない。
【0047】
上述したように、第2のコンタクト30bについては説明を省略したが、第2のコンタクト30bの第2の弾性変形部32bも寸法A<寸法Bとなるように形成されている。それにより、第2のコンタクト30bも、上記第1のコンタクト30aに関して説明したと同様の作用効果を奏する。
【0048】
(第2の実施例)
第2の実施例においては、図6(b)に示されるように、第1のコンタクト30aの固定部33aの、第1のスリット12aと当接する前方下面角部37aが前方に位置するように第1のコンタクト30aを形成することを発明の特徴とする。すなわち、第1のコンタクト30aの第2の弾性変形部32aが短く設定され、その分、第2の弾性変形部32が本来形成されているべき場所に、固定部33aが延在するように形成される。言い換えれば、本実施例は、第1の実施例において、第2の弾性変形部32aに第1のスリット12aの底面13aに当接する当接部を形成したものといえる。さらに言えば、第1の実施例において、第2の弾性変形部32aの最下点と第1のスリット12aの底面13aとの間の寸法Aを0としたもの(A=0)ともいえる。第1のコンタクト30aをこのように形成することで、第1のコンタクト30aの固定部33aの、第1のスリット12aの底面13aに当接する部分が実質的に長くなる。それにより、環境試験の過酷な場においても、第1のコンタクト30aは、回転することが阻止され、所望の接圧で対応するコネクタプラグ80の電極91と接触し、電気的接続が断たれることもない。
【0049】
具体的には、第2の弾性変形部32aは、常に前方下面角部37aの近傍の回りに弾性変形するのみであり、したがって、第2の接点32Aは、常に第2の弾性変形部32aの前方下面角部37aの近傍を支点として変位するだけである。それにより、第2の弾性変形部32aのばね力が所望の接圧を得られるように設定されていれば、第2の接点32Aは、常に、対応するコネクタプラグ80の電極91に対して所望の接圧で接触することが可能となる。
【0050】
また、第1のコンタクト30aが回転しないので、第1の弾性変形部31aの回転もほとんど生じることがない。したがって、第1のコンタクト30aの第1の接点31Aとコネクタプラグ80の電極91との接触も維持される。したがって、第1のコンタクト30aの2つの接点30A、30Bは、コネクタプラグ80の電極91との接触が確保され、従来のように電気的接続が断たれることは確実に阻止される。本実施例においても、第2のコンタクト30bは、第1のコンタクト3aと同様に形成され、同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
【0051】
以上、複数のコンタクトがソケット本体の中央コンタクト収容部に配置されるコネクタソケットに本発明を適用した実施例について説明してきたが、これに限られるものではない。例えば、本発明は、上記従来例としての特許文献1に示されるような複数のコンタクトの配置がソケット本体の上下に配置されるコネクタソケットにも適用可能である。また、コネクタソケットに接続される接続対象物としてコネクタプラグを例示したが、接続対象物はこれに限られるものではなく、例えば、基板それ自体であってもよいし、アダプターであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は、本発明に係るコネクタソケットを含む基板対基板接続用コネクタの斜視図であり、(b)は、本発明に係るコネクタソケットの斜視図であり、(c)は、本発明に係るコネクタソケットに対応するコネクタプラグの斜視図である。
【図2】図1(a)に示される基板対基板接続用コネクタの正面図である。
【図3】(a)は、図2のIII−III線に沿う断面図、(b)は、(a)のC部分の一部拡大断面図である。
【図4】図3(b)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】(a)は、本発明の第1の実施例に係るコネクタソケットの図4と同様の断面図であり、(b)は、(a)のE部分の一部拡大断面図である。
【図6】(a)は、本発明の第2の実施例に係るコネクタソケットの図4と同様の断面図であり、(b)は、(a)のF部分の一部拡大断面図である。
【図7】(a)は、従来のコネクタソケットの図4と同様の断面図であり、(b)は、(a)のG部分の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基板対基板接続用コネクタ
10 コネクタソケット
11 ソケット本体
12a 第1のスリット
12b 第2のスリット
13a、13b (第1及び第2のスリット12a及び12bそれぞれの)底面
15 プラグ収容空間
16 中央コンタクト収容部
17a、17b (中央コンタク収容部の)上面及び下面
30 コンタクト
30a 第1のコンタクト
30b 第2のコンタクト
31a、31b (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)第1の弾性変形部
32a、32b (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)第2の弾性変形部
31A、31B (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)第1の接点
32A、32B (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)第2の接点
33a、33b (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)固定部
34a、34b (第2の弾性変形部32a、32bそれぞれの)湾曲頂点
35a、35b (第1及び第2のコンタクト30a及び30bそれぞれの)端子部
37a、37b (固定部33a、33bそれぞれの)前方下面角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物が挿入されるプラグ収容空間及び該プラグ収容空間に挿入された接続対象物の電極と接触するコンタクトを収容、支持する複数のスリットが形成されているソケット本体、
それぞれが、前記接続対象物の対応する1つの前記電極に接触する接点を有する2つの弾性変形部、及び該2つの弾性変形部の基端部を弾性変形可能に支持するとともに、前記複数のスリットそれぞれに圧入される固定部を少なくとも含んでいる複数のコンタクト、
を備えるコネクタソケットにおいて、
前記コンタクトそれぞれは、短い弾性変形部と長い弾性変形部を含み、短い弾性変形部の長さは、その接点が水平方向で前記長い弾性変形部の接点と該長い弾性変形部の最下点との間に位置するように設定されるとともに、前記長い弾性変形部の最下点と前記スリットの底面との間の距離が、前記接続対象物がプラグ収容空間に挿入されたときの前記短い弾性変形部の前記接点の変位量より小さく設定されていることを特徴とするコネクタソケット。
【請求項2】
該長い弾性変形部の最下点と前記スリットの底面との間の距離がゼロであることを特徴とする請求項1に記載のコネクタソケット。
【請求項3】
前記長い弾性変形部は、湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタソケット。
【請求項4】
前記プラグ収容空間内には、前記スリットが延在し、前記複数のコンタクトのそれぞれの2つの弾性変形部が収容される中央コンタクト収容部が形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコネクタソケット。
【請求項5】
前記スリットは、ソケット本体の上下に互いに平行に形成されるとともに、ソケットの上側に形成されたスリットと下側に形成されたスリットは、左右方向に位置がずれていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−252588(P2009−252588A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100424(P2008−100424)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】