説明

コネクタユニット

【課題】コネクタを嵌合させる際に、寸法誤差を吸収することができる技術を提供する。
【解決手段】メスコネクタは、アウターハウジング50とインナーハウジング60とメス端子金具90から構成されている。アウターハウジング50は、外形が略直方体となっており、内部に二つのハウジング収容室55を備え、インナーハウジング60をそれぞれに収容可能に構成されている。また、各ハウジング収容室55においては、上面には上部可撓アーム58aが、下面には下部可撓アーム58bが設けられている。上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bは、オスタブの位置ずれ等が発生したときに、そのずれを吸収可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタユニットに係り、オスコネクタとメスコネクタとが嵌合するときに、端子金具等の位置誤差を吸収可能としたコネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気配線におけるオスコネクタとメスコネクタとからなる電気コネクタにあっては、嵌合位置が定めらており、端子金具同士の寸法誤差等に対する要求が厳しい場合がある。図1は、従来技術に係るモータユニット210を示している。このモータユニット210は、ECU(Electronic Control Unit)ユニット212とモータ214とを備えている。ECUユニット212とモータ214とは、メスコネクタ220とオスコネクタ280とによって電気的に接続されている。
【0003】
図2は、メスコネクタ220とオスコネクタ280とを示している。図2(a)〜(c)に示すように、メスコネクタ220は、端子収容室224にメス端子金具290を収容し、ランス226によってメス端子金具290を固定している。また、図2(d)に示すように、オスコネクタ280においては、コネクタ本体281の前面282からオスタブ242が突出している。
【0004】
そして、ECUユニット212をモータ214に取り付けるときに、メスコネクタ220のメス端子金具290とオスコネクタ230のオスタブ242とが接続される。つまり、オスタブ242はメスコネクタ220のコネクタ本体221の前面222に形成された端子挿入開口223より挿入され、メスコネクタ220内部に収容されているメス端子金具290に嵌合する。また、メスコネクタ220は、嵌合用開口216に収容されるため、オスタブ242とメス端子金具290との嵌合位置の自由度は原則として非常に小さい。
【0005】
ところで、通常は、一定の誤差が許容されるように所定のクリアランスを持って各要素の寸法が設計されている。図3は、オスタブ242が挿入されたときのメスコネクタ220について、上記クリアランスに着目して示している。図示のように、端子挿入開口223の横方向開口寸法全体に対する所定のクリアランスbが設けられている場合、オスタブ242の左右それぞれ半分のb/2となる状態が設計基準となる。また、上下方向には、端子挿入開口223の縦方向開口寸法全体に対する所定のクリアランスaに対して、半分のa/2が設計基準となっている。
【0006】
そして、寸法誤差により双方のコネクタに位置ずれが生じた場合であっても、吸収可能とする様々な技術が提案されている。例えば、メスコネクタのハウジングに設けられた可撓アームの撓みによりハウジングが移動するようにした技術がある(特許文献1参照)。この技術によると、寸法誤差によって双方のコネクタに位置ずれが生じた場合であっても、それを吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−139250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図2(d)に示したようなオスタブ242にあっては、オスタブ242を溶着や接着等の加工を施すことによってユニットに固定する場合に、オスタブ242の水平面に垂直方向の製作上の位置ずれが大きくなる傾向がある。また、複数極を有するコネクタの場合、各オスタブ242においての製作上の位置ずれが一定とならないため、オスタブ242間の位置ずれが発生する可能性がある。
【0009】
さらに、オスタブ242間に位置ずれが生じた場合、従来構造では、端子収容室(キャビティ)224とメスコネクタ間のクリアランス(片側a/2)分しか、そのずれを吸収することができない。このとき、オスタブ242のずれ量が誤差a以下に保たれていれば、可撓アームの変位量分だけ位置ずれを吸収可能である。一般には、メス端子金具290の固定の観点から、縦方向のクリアランスaは横方向のクリアランスbより相対的に小さい(b>a)。
【0010】
また、特許文献1に開示の技術では、ハウジングの可撓アームの反力や、接続された電線の屈曲に力が必要となるため、その合力によってハウジングの移動による調芯機能を損なう懸念がある。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコネクタユニットは、オス端子が取り付けられたオスコネクタと、前記オス端子が挿入されるメス端子が取り付けられたメスコネクタとを具備するコネクタユニットであって、前記オスコネクタまたは前記メスコネクタのいずれかは、アウターハウジングと前記アウターハウジング内に収容されるインナーハウジングとを備え、前記インナーハウジングに前記オス端子又は前記メス端子が収容され、前記アウターハウジングは、前記インナーハウジングが収容された際に、前記オス端子と前記メス端子との嵌合の位置ずれを吸収する撓み手段を備える。
【0013】
また、前記オス端子は、平板状に形成されており、前記メス端子は、前記平板状の前記オス端子を挿入可能に形成されており、前記撓み手段は、前記オス端子が前記メス端子に挿入された際に、前記平板状の面に対して垂直方向の位置ずれを吸収可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コネクタを嵌合させる際に、寸法誤差を吸収することができる技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術に係る、モータユニットの外形を示す斜視図である。
【図2】従来技術に係る、メスコネクタとオスコネクタを示した図である。
【図3】従来技術に係る、オスタブが挿入された状態のメスコネクタを示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、ECUユニットとモータとが分離した状態のモータユニットを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、メスコネクタとオスコネクタを示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る、メスコネクタの分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る、メスコネクタのアウターハウジングとインナーハウジングの組み付けを説明する図であり、インナーハウジングの挿入前の状態を示した図である。
【図8】本発明の実施形態に係る、メスコネクタのアウターハウジングとインナーハウジングの組み付けを説明する図であり、インナーハウジングが可撓アームに当接するまで挿入された状態を示した図である。
【図9】本発明の実施形態に係る、メスコネクタのアウターハウジングとインナーハウジングの組み付けを説明する図であり、インナーハウジングが完全に挿入された状態を示した図である。
【図10】本発明の実施形態に係る、メスコネクタのアウターハウジングとインナーハウジングの組み付けを説明する図であり、インナーハウジングが上下方向のいずれかに偏って挿入された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図4は、本実施形態に係るモータユニット10をECUユニット12とモータ14に分離した状態で示した斜視図である。図1(b)で示したモータユニット210の構成と異なる点は、ECUユニット12のメスコネクタ20の形状及び構造にある。そして、ECUユニット12とモータ14とが組み付けられる際に、メスコネクタ20は、モータ14の嵌合用開口16に収容される。
【0018】
図5は、メスコネクタ20とオスコネクタ30とを示した斜視図である。オスコネクタ30は、図2(d)で示した構造と同一であり、コネクタ本体31の前面32から二つのオスタブ40が水平に並んで突出している。一方で、メスコネクタ20は、アウターハウジング50の内部にインナーハウジング60が収容された状態となっている。さらに、インナーハウジング60にはメス端子金具90が収容されている。
【0019】
図6(a)は、メスコネクタ20をアウターハウジング50とインナーハウジング60とメス端子金具90に分解して示した斜視図であり、(b)はメスコネクタ20のアウターハウジング50を後方から見た斜視図である。また、図7は、メスコネクタ20のアウターハウジング50とインナーハウジング60の組み付けを説明する図であり、インナーハウジングの挿入前の状態を示した図である。図7(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA1−A1断面図及びB1−B1断面図を示している。図示のように、メスコネクタ20のアウターハウジング50は、外形が略直方体となっており、内部に二つのハウジング収容室55を備え、インナーハウジング60をそれぞれに収容可能に構成されている。具体的には、アウターハウジング50の前面51には、ハウジング収容室55に連通する前面開口51aが形成されており、同様に、背面52にも開口が形成されている。
【0020】
前面開口51aは、略十字状となっており、メス端子金具90を備えたインナーハウジング60が挿入されたときに、メス端子金具90にオスタブ40が適正に挿入可能であり、必要に応じてメス端子金具90を操作可能な形状に構成されている。また、インナーハウジング60が挿入されたときに、内壁面でインナーハウジング60と当接するようになっている(後述の図9(c)参照)。
【0021】
さらに、各ハウジング収容室55においては、上面には上部可撓アーム58aが、下面には下部可撓アーム58bが設けられている。詳細には、主に図7(c)に示すように、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bは、上面及び下面からハウジング収容室55の内部側に凹んだ状態になっている。つまり、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bは、断面が略台形の外形となって、両端から水平に架橋している。上部可撓アーム58aと下部可撓アーム58bとの間隔は、インナーハウジング60の高さより若干狭くなっており、インナーハウジング60が挿入されたときに、外側方向に撓むようになっている。そしてこのとき、インナーハウジング60は挿入方向が挿入軸線方向と同方向に、つまり、図示では水平を保ったままとなっている。
【0022】
また、ハウジング収容室55の内面の両側壁には、それぞれ前後方向に延びる2本のリム57が上下に並列に形成されている。また、ハウジング収容室55の内面側壁の背面52近傍には、リム57に挟まれる位置に係止片56が形成されている。この係止片56は、インナーハウジング60がアウターハウジング50に挿入されたときに、インナーハウジング60をアウターハウジング50のハウジング収容室55に固定する。
【0023】
インナーハウジング60は、図2(c)と同様の内部構造を有しており、メス端子金具90を収容し、収容室の下面内壁に形成されたランスが、メス端子金具90を固定する。
【0024】
図8は、インナーハウジング60がアウターハウジング50のハウジング収容室55の途中まで挿入された状態を示している。具体的には、インナーハウジング60の前面61が上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bの後端部分(図示の破線円)まで挿入された状態を示している。また、図9は、アウターハウジング50の前面51の内壁面に当接するまで完全にインナーハウジング60が挿入された状態を示している。図示のように、インナーハウジング60の上面及び下面は、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bによって挟まれた状態となっている。このとき、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bは、外方向に撓んでおり、その撓んだ弾性力によってインナーハウジング60を内側方向に付勢している。なお、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bは、この状態を基準として、さらに外側に撓むことができるように構成されている。
【0025】
図10は、インナーハウジング60が完全に挿入されてはいるが、上方向または下方向に偏った状態を示している。図10(c)は、(b)のA4−A4断面を示しておりインナーハウジング60が上方向に偏った状態となっている。それに伴い、上部可撓アーム58aは、図9と比較して、より外側(図示で上方向)に撓んでいる。また、図10(d)はB4−B4断面を示しており、インナーハウジング60が下方向に偏った状態となっている。それに伴い、下部可撓アーム58bは、図9と比較して、より外側(図示で下方向)に撓んでいる。このような撓みは、例えば、オスコネクタ30のオスタブ40の位置ずれによって生じる。
【0026】
上述の通り、メスコネクタ20の嵌合相手であるオスコネクタ30(オスタブ40)はモータ14に直接固定されている。オスタブ40における溶着等の加工精度によりY方向への位置ずれ誤差が大きい場合、従来の技術では、その誤差を吸収することが難しかった。しかし、インナーハウジング60が上下可動構造となっていることから、上部可撓アーム58a及び下部可撓アーム58bによってインナーハウジング60が動くことにより、そのような誤差を吸収することができる。
【0027】
以上、本発明を実施形態を基に説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、本実施形態では、メスコネクタ20をインナーハウジング60とアウターハウジング50の二重構造としたが、オスコネクタ30を二重構造にしてオスタブ40が可動となってもよい。また、可撓アームとして、上部可撓アーム58aまたは下部可撓アーム58bのいずれか一方であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 モータユニット
12 ECUユニット
14 モータ
20 メスコネクタ
30 オスコネクタ
40 オスタブ
50 アウターハウジング
56 係止片
57 リム
58a 上部可撓アーム
58b 下部可撓アーム
60 インナーハウジング
90 メス端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス端子が取り付けられたオスコネクタと、前記オス端子が挿入されるメス端子が取り付けられたメスコネクタとを具備するコネクタユニットであって、
前記オスコネクタまたは前記メスコネクタのいずれかは、アウターハウジングと前記アウターハウジング内に収容されるインナーハウジングとを備え、
前記インナーハウジングに前記オス端子又は前記メス端子が収容され、
前記アウターハウジングは、前記インナーハウジングが収容された際に、前記オス端子と前記メス端子との嵌合の位置ずれを吸収する撓み手段を備えることを特徴とするコネクタユニット。
【請求項2】
前記オス端子は、平板状に形成されており、
前記メス端子は、前記平板状の前記オス端子を挿入可能に形成されており、
前記撓み手段は、前記オス端子が前記メス端子に挿入された際に、前記平板状の面に対して垂直方向の位置ずれを吸収可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14491(P2011−14491A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159767(P2009−159767)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】