説明

コネクタ装置、及びそれを備える産業用ロボット

【課題】 内圧防爆用容器が振動しても外れないコネクタ装置を提供する。
【解決手段】 コネクタ装置10は、産業用ロボットに備わる内圧防爆用容器3内に設けられる電動機7と外部電源とを電気的に接続及び切り離し可能なコネクタ25を有する。このコネクタ25を内圧防爆用容器2から表出させるために内圧防爆用容器2には、貫通孔8が形成されており、またこの貫通孔8を塞ぐようにコネクタ用ケーシング11が固定されている。コネクタ用ケーシング11には、コネクタ25と外部電源とを接続するケーブル13が挿通されており、コネクタ用ケーシング内には、ケーブル13を保持するクランプ部材が収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに備わる内圧防爆用容器内にある電気駆動装置と、内圧防爆用容器外にある外部電源とを電気的に繋ぐための内圧防爆用容器用のコネクタ装置、及びそれを備える産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
塗装用ロボット等の産業用ロボットは、電動機、電磁弁又は電空弁等の電気駆動装置を備えている。電気駆動装置は、商用電源等の外部電源からの電流により駆動するようになっている。電気駆動装置と外部電源との間には、コネクタが介在しており、このコネクタにより電気駆動装置と外部電源とを電気的に接続及び切り離すことができるようになっている。塗装用ロボット等のように揮発性溶剤を扱う場合、ロボット本体が揮発性溶剤を含む雰囲気下(いわゆる、危険場所)に設置されており、コネクタ等で電気スパークが発生すると、揮発性溶剤に引火し爆発することがある。このような爆発に対して様々な対策を講じられ、様々な防爆構造が開発されている。
【0003】
防爆構造としては、例えば、特許文献1に記載されるような内圧防爆構造がある。この内圧防爆構造は、内圧防爆用容器内に電気駆動装置及びコネクタを配置し、ポンプにより加圧して内圧防爆用容器の内圧を外圧よりも高く保ち、内圧防爆用容器内に揮発性溶剤が入らないようしている。これにより、コネクタ等で電気スパークが発生しても揮発性溶剤に引火することがなく、爆発が起きることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−260241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗装用ロボットは、複数の間接を有するマニピュレータを備え、間接を曲げることでマニピュレータの先端に設けられた塗装ノズルを移動させることができるようになっている。塗装用ロボットでは、複数の間接を曲げる際にマニピュレータが振動し、この振動が内圧防爆用容器に伝わり、内圧防爆用容器内にあるコネクタを振動させる。コネクタは、ソケット及びプラグからなり、ソケットにプラグを挿入することで電気駆動装置と外部電源とを電気的に接続するようになっている。そのため、コネクタが振動すると、プラグが弛んだり、ソケットから外れたりしてコネクタで接触不良が起こり、外部電源と電気駆動装置とが電気的に切り離されることがある。切り離されると、対応する関節が曲がらなくなり塗装ノズルを所望の位置に移動させることができなくなる。それ故、内圧防爆用容器が振動してもコネクタが外れて電気駆動装置と外部電源とが電気的に切り離されないようにすることが必要である。
【0006】
そこで本発明は、内圧防爆用容器が振動しても電気駆動装置と外部電源とが電気的に切り離されないコネクタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタ装置は、産業用ロボットに備わる内圧防爆用容器内にある電気駆動装置と、該内圧防爆用容器外にある外部電源とを電気的に接続及び切り離し可能なコネクタと、前記内圧防爆用容器から前記コネクタを表出させるために前記内圧防爆用容器に形成される貫通孔を塞ぐコネクタ用ケーシングと、前記コネクタ用ケーシングを挿通し、前記コネクタと外部電源とを接続するケーブルと、前記コネクタ用ケーシング内に固定され、前記ケーブルを保持するクランプ部材とを備えるものである。
【0008】
本発明に従えば、クランプ部材によりケーブルを保持することで、産業用ロボット駆動時の振動に伴って内圧防爆用容器が振動してもケーブルがあまり動かなくなり、外部電源と電気駆動装置とが電気的に接続された状態を保つことができる。即ち、外部電源と電気駆動装置とが電気的に切り離されることを防ぐことができ、これに起因する産業用ロボットの停止を防ぐことができる。
【0009】
更に、クランプ部材がコネクタ用ケーシングに固定されているので、コネクタ用ケーブルが振動したときにクランプ部材がコネクタ用ケーブルと同じように振動する。ケーブルにおいて、コネクタ用ケーシングに挿通される部分とクランプ部材に保持されている部分と間の相対振動が小さくなり、振動時におけるコネクタの振動を抑えることができる。これにより、この振動に伴って外部電源と電気駆動装置とが電気的に切り離されることを防ぐことができ、それに起因して産業用ロボットが突然動かなくなることを防ぐことができる。
【0010】
上記発明において、前記コネクタは、互いに接続及び切り離し可能な電気駆動装置側コンタクト及び外部電源側コンタクトを有し、前記電気駆動装置側コンタクトは、電気駆動装置に接続されて内圧防爆用容器に固定され、外部電源側コンタクトは、ケーブルを介して外部電源に接続されて前記クランプ部材に設けられていることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、コネクタ用ケーシングを内圧防爆用容器から外すことで電気駆動装置側コンタクトと外部電源側コンタクトとが電気的に切り離され、コネクタ用ケーシングを内圧防爆用容器に固定することで電気駆動装置側コンタクトと外部電源側コンタクトとが電気的に接続される。このようにコネクタ用ケーシングを着脱することで電気駆動装置と外部電源との電気的な接続及び切り離しができるので、接続及び切り離しが容易である。
【0012】
上記発明において、前記クランプ部材は、前記ケーブルの外周面に作用する圧力が略均一になるようにケーブルを保持するようになっていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、クランプ部材の保持力を大きくしてもケーブルが拉げて扁平することがなく、ケーブルの配線の断線を抑えることができる。それ故、大きな保持力でケーブルを保持し引留めることができるようになり、ケーブルをより抜けにくくすることができる。
【0014】
上記発明において、前記ケーブルの前記コネクタ用ケーシングから出ている表出部分に設けられ、該表出部分を保護するように覆う保護外装と、前記ケーブルが挿通すべくコネクタ用ケーシングに形成された挿通孔の外側開口部に設けられ、前記保護外装を引留める引留め機構と、前記挿通孔の内側開口部に設けられ、前記コネクタ用ケーシングとケーブルとの間から入る気体を防ぐべく内部シール構造とを備え、前記コネクタ用ケーシングは、シールを達成した状態で内圧防爆用容器に固定されていることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、引留め機構により保護外装を引留めることで、保護外装がケーブルから外れる等してケーブルの表出部分がむき出しになることを防ぐことができる。これにより、ケーブルを曲げたり動かしたりしてもケーブルの一部分がむき出しになることがなく、ケーブルが損傷する等して配線がむき出しになることを防ぐことができる。
【0016】
このような引留め機構が挿通孔の外側開口部に設けられているので、内部シール構造が内側開口部に設けられており、この内部シール構造によりコンタクト用ケーシングとケーブルとの間における気体の行き来が防がれる。このような内部シール構造が設けられたコネクタ用ケーシングを内圧防爆用容器にシールを達成した状態で固定することで、コネクタ用ケーシング及び内圧防爆用容器外からの気体の進入を防ぐことができ、またコネクタ用ケーシング及び内圧防爆用容器の内圧低下を防ぐことができる。即ち、コネクタ用ケーシングを内圧防爆用容器にシールを達成した状態で固定するだけで、コネクタ用ケーシング及び内圧防爆用容器内を密閉することができ、内圧防爆用容器内の密閉を簡単に実現できる。
【0017】
上記発明において、前記クランプ部材は、前記内部シール構造と前記コネクタとの間を保持するようになっていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、コネクタにより近い箇所で保持することができる。これにより、ロボット駆動時において、ケーブルにおけるコネクタ側の部分の振れ幅をより小さくすることができる。
【0019】
上記発明において、前記ケーブルは、複数の配線と、該複数の配線を覆うシースとを有しており、前記複数の配線の先端部は、前記シースから表出し、撓ませた状態で前記コネクタに接続されていることが好ましい。
【0020】
上記構成に従えば、ケーブルが多少動いてもその動きを配線の撓みにより吸収させ、配線の断線を防ぐことができる。
【0021】
本発明の産業用ロボットは、上記記載のいずれかのコネクタ装置と、前記内圧防爆用容器とを備えるものである。
【0022】
上記構成に従えば、前述のようなコネクタ装置を備える産業用ロボットを実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内圧防爆用容器が振動しても電気駆動装置と外部電源とが電気的に切り離されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のコネクタ装置を備える内圧防爆構造を示す平面図である。
【図2】図1の内圧防爆構造を切断線A−Aで切断して見た断面図である。
【図3】図2の内圧防爆構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】コネクタを拡大して示す拡大斜視図である。
【図5】図2のクランプ部材を拡大して示す拡大正面図である。
【図6】第2実施形態のクランプ部材を示す拡大正面図である。
【図7】第3実施形態の内圧防爆構造を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
産業用ロボットは、複数の間接を有するマニピュレータを備えている。各間接には、電動機が設けられており、各電動機を駆動することで対応する間接を曲げてマニピュレータの先端に設けられるアタッチメントを所望の位置に動かすことができるようになっている。このように構成される産業用ロボットは、例えば、マニピュレータの先端に塗装ノズルを装着して塗装用ロボットとして用いられることがある。この塗装用ロボット(以下、単に「ロボット」ともいう)は、塗装ノズルから揮発性溶剤を塗布するため、揮発性溶剤を含む雰囲気下に配置される。電気駆動装置である電動機は、このような揮発性溶剤を含む雰囲気から隔離する必要があり、塗装用ロボットには、前記電動機を隔離すべく図1に示すような内圧防爆構造1が備わっている。
【0026】
内圧防爆構造1は、中空の直方体状の内圧防爆用容器2を備えており、内圧防爆用容器2には、調圧弁3を介してポンプ4が接続されている。ポンプ4は、空気又は不活性ガス等の高圧ガスを内圧防爆用容器2に供給するようになっており、調圧弁3は、ポンプから供給されるガスを調圧し、内圧防爆用容器2の内圧を外圧よりも高く保つようになっている。また、内圧防爆用容器2には、その中にあるガスを排出すべく切換弁5が接続されており、切換弁5は、ロボット用制御部6からの指令信号に応じて内圧防爆用容器2内のガスを排出するようになっている。
【0027】
内圧防爆用容器2内には、図2に示すように電動機7が収容されている。電動機7は、その出力軸7aだけが内圧防爆用容器2から突出するように配置され(図1参照)、内圧防爆用容器2の内壁にシールを達成した状態で固定されている。このように内圧防爆用容器2に固定される電動機7は、コネクタ装置10を介して商用電源等の外部電源(図示せず)に接続されており、このコネクタ装置10を内圧防爆用容器2に取り付けるために、内圧防爆用容器2には、貫通孔8が形成されている。貫通孔8は、内圧防爆用容器2を内外に貫通する断面矩形状の孔であり、貫通孔8には、後述するコネクタ25が外方に表出するようにコネクタ装置10が挿入されている(図3も参照)。
【0028】
コネクタ装置10は、コネクタ用ケーシング11を備えており、コネクタ用ケーシング11は、貫通孔8を外方から塞ぐように内圧防爆用容器2の外壁に設けられている。コネクタ用ケーシング11は、大略的に断面が矩形の有底筒状になっており、開口端部11aに半径方向外方に延びる固定用フランジ11bを有している。固定用フランジ11bは、平面視で矩形状になっており、その四つ角にボルト等の締結具が夫々挿通され、これらの締結具によって予め定められた位置に固定されている。固定する際、固定用フランジ11bと内圧防爆用容器2との間には、パッキン12が設けられ、それらの間がパッキン12によりシールされている。なお、コネクタ用ケーシング11は、予め定められた位置に固定されるように位置決めピンなどによって位置決めされるようになっていてもよい。
【0029】
コネクタ用ケーシング11の底部には、その軸線に沿って挿通孔11cが形成されており、この挿通孔11cには、ケーブル13が挿通されている。ケーブル13の大部分は、コネクタ用ケーシング11から表出しており、この表出部分13aの外側には、中空円筒状の保護外装14が配置されている。この保護外装14は、メッシュ層を含む複数の層が積層されて成り、ケーブル13の表出部分13aが曲げられたり、力を加えられたりすることで損傷しないように、表出部分13aを保護している。このように表出部分13aを保護する保護外装14は、コネクタ装置10から外れないように留め機構15が設けられている。
【0030】
引留め機構15は、インナキャップ16と、アウトキャップ17と、引留め用ニップル18と、フクロナット19とを備える。インナキャップ16及びアウトキャップ17は、大略円筒状に形成されており、保護外装14の開口端部14aの内表面と外表面に夫々密着するように装着されている。保護外装14の開口端部14aは、インナキャップ16及びアウトキャップ17を装着した状態で引留め用ニップル18に挿入されている。
【0031】
引留め用ニップル18は、大略円筒状を有し、その一端部が挿通孔11cの外側開口部11dに螺合されており、一端部を螺合することで引留め用ニップル18がコネクタ用ケーシング11にシールを達成した状態で固定される。なお、引留め用ニップル18とコネクタ用ケーシング11との間は、シールされていなくてもよい。引留め用ニップル18は、その他端部側の開口18aから保護外装14の開口端部14aが挿入されており、その内面に段差を有する。保護外装14の開口端部14aは、この段差の部分に着座している。引留め用ニップル18の他端部には、内テーパ19aを有するフクロナット19が螺合されており、保護外装14が着座した状態でフクロナット19を閉めると、フクロナット19の内テーパ19aによりアウトキャップ17の上端部が縮径する。アウトキャップ17の上端部は、内側へと折り返されているため、縮径することで上端部により保護外装14の外周面が内側に向かって押され、アウトキャップ17とインナキャップ16とにより保護外装14が挟持され引留められる。
【0032】
このように引留め機構15により保護外装14を引留めることで、保護外装14がコネクタ装置10から外れる等してケーブル13の表出部分13aがむき出しになることを防いでいる。これにより、ケーブル13を曲げたり動かしたりしてもケーブル13の一部分がむき出しになることがなく、ケーブル13のシース13bが損傷する等して配線13cがむき出しになることを防ぐことができる。
【0033】
このようにして保護されているケーブル13は、引留め用ニップル18内を通り、更に挿通孔11cを通ってコネクタ用ケーシング11内に抜け出ている。ケーブル13がコネクタ用ケーシング11内へと抜け出る挿通孔11cの内側開口部11eには、内部シール構造20が設けられている。内部シール構造20は、図3に示すように、ニップル21と、パッキン22と、ロックナット23と、シール部材24とを備えている。ニップル21は、大略円筒状に形成され、ニップル21の外表面には、その周方向全周にわたって半径方向外方に向かって突出するフランジ21aが形成されている。
【0034】
ニップル21は、その中にケーブル13が挿通されており、その一端部が挿通孔11cの内側開口部11eに螺合されている。ニップル21のフランジ21aとコネクタ用ケーシング11との間には、円環状のパッキン22が設けられており、ニップル21を内側開口部8aに螺合することで、ニップル21がコネクタ用ケーシング11にシールを達成した状態で固定される。また、ニップル21の他端部には、ロックナット23が螺合されている。このロックナット23内には、シール部材24が収容され、ロックナット23及びシール部材24を共に挿通するようにケーブル13が配置されている。シール部材24は、大略円筒状に形成されており、その外周部には、周方向全周にわたって半径方向内方に向かって凹む凹所24aが形成されている。シール部材24は、この凹所24aにより拉げることできるようになっており、ロックナット23を締めていくと、ロックナット23とニップル21とによって拉げられて、シール部材24がケーブル13とロックナット23とに密着してケーブル13とロックナット23との間をシールするようになっている。
【0035】
このように内部シール構造20は、ニップル21とコネクタ用ケーシング11との間、及びケーブル13とロックナット23との間をシールし、貫通孔8からコネクタ用ケーシング11内へのガスの行き来を防いでいる。これにより、内圧防爆用容器2内に揮発性溶剤を含むガスが入り込むことを防ぐことができ、またコネクタ用ケーシング11及び内圧防爆用容器2の内圧の低下を防ぐことができる。このように、内圧防爆構造1では、コネクタ用ケーシング11を内圧防爆用容器2にシールを達成した状態で固定するだけで、コネクタ用ケーシング11及び内圧防爆用容器2内を密封することができる。従って、コネクタ装置10の取付けが容易であり、また内圧防爆構造1の密閉を容易に実現できる。即ち、シールと達成した状態でケーブル13をコネクタ用ケーシング11内に引き込むことができる。
【0036】
ケーブル13は、複合ケーブルであり、シース13bを有し、このシース13b内に複数の配線13cを有する。これら複数の配線13cは、その一端部がコンセントを介して外部電源に接続され、他端部がコネクタ25を介して電動機7に電気的に接続される。即ち、ケーブル13の一端部は、外部電源に電気的に接続され、他端部は、コネクタ25を介して電動機7に電気的に接続されている。
【0037】
コネクタ25は、図4に示すようにプラグ26とソケット27とを有し、電動駆動装置側コンタクトであるプラグ26をソケット27に嵌め込んだり外したりすることで電動機7と外部電源とを電気的に接続及び切り離し可能になっている。プラグ26は、平面視で矩形状の基板26aを備えており、この基板26aの外形寸法は、貫通孔8に入れることができる寸法になっている。基板26aの表側面には、複数のピン26bが並ぶように立設されている。複数のピン26bの各々には、配線28が接続されており、複数のピン26bは、これら複数の配線13cを介して電動機7等に電気的に接続されている。このように電動機7等に電気的に接続されるプラグ26は、取付板29に固定されている。
【0038】
取付板29は、平面視で矩形状を有し、その外形寸法がプラグ26の外形寸法より大きくなっている。取付板29の長手方向両端部は、貫通孔8の内圧室側周縁部8bにボルト等の締結具で固定されている。これにより、プラグ26は、貫通孔8の内側開口部8a内に配置され、貫通孔8を介して外方から見えるようになっている。即ち、コネクト25が貫通孔8から表出するようになっている。なお、取付板29の幅方向の寸法は、貫通孔8の外径よりも小さくなっているため、貫通孔8が取付板29により完全に覆われることなく、コネクタ用ケーシング11内と内圧防爆用容器2内との間でガスの行き来ができるようになっている(図4の矢符B参照)。それ故、コネクタ用ケーシング11の内圧は、内圧防爆用容器2の内圧と略一致しており、外圧より高くなっている。
【0039】
外部電源側コンタクトであるソケット27は、平面視でプラグ26の基板26aと略同一形状になっており、そこには、複数のピン26bを夫々嵌め込むべくピン26bと同数のソケット孔27aが形成されている。各ソケット孔27aには、図示しない端子が設けられている。ケーブル13には、端子と同数の配線13cが備わっており、各端子は、配線13cに接続されている。
【0040】
このようにソケット27が接続されたケーブル13を保持すべく、コネクタ用ケーシング11内には、クランプ部材31が設けられている。クランプ部材31は、ブラケット32と、クランプ33と、プラグ固定部34とを有している。ブラケット32は、矩形状の板部材であり、コネクタ用ケーシング11内に設けられている。ブラケット32の基端部は、コネクタ用ケーシング11の底部にケーブル13から離して設けられており、コネクタ用ケーシング11にボルト等の締結具によって固定されている。このように固定されるブラケット32は、コネクタ用ケーシング11の軸線に平行に延びており、その中間部には、クランプ33が設けられている。
【0041】
クランプ33は、ケーブル13を保持して引留めるようになっており、図5に示すように基台33aと、クランプ部33bとを有している。基台33aは、ブラケット32に一体的に設けられ、ケーブル13に向かって延びている。基台33aの先端部には、ケーブル13の外径と略同一の径を有する半円状の座33cが形成されており、この座33cにケーブル13を置くことができるようになっている。この座33cが形成される先端部には、覆い被さるようにクランプ部33bが設けられている。クランプ部33bには、ケーブル13の外径と略同一の径を有する半円状のクランプ溝33dが形成され、クランプ部33bを基台33aの先端部の所定の位置に配置すると、このクランプ溝33dにケーブル13が嵌まり込むようになっている。更に、クランプ部33bは、基台33aの先端部にボルト等の締結具によって前記所定の位置にて固定されるようになっている。
【0042】
即ち、クランプ部33bを所定の位置にて基台33aに固定することで、内部シール構造20とソケット27との間でケーブル13が基台33aとクランプ部33bとにより挟持され、クランプ部材31によってケーブル13が保持され引留められる。これにより、ロボット駆動時の振動に伴って内圧防爆用容器2が振動してもケーブルが動かなくなり、振動によりケーブル13が抜けたり、ソケット27からプラグ26が脱落したりすることがなくなる。また、クランプ部材31によってケーブル13が保持されることで、ケーブル13に人の足が引っかかったり物が落ちてきたりしてケーブル13が引っ張られるようなことがあっても、ケーブル13が抜けたり、ソケット27からプラグ26が脱落したりすることがなくなる。それ故、ソケット27とプラグ26との接続状態を良好に保つことができる。即ち、ケーブル13が抜けたり、ソケット27からプラグ26が脱落(コネクタ25の接触不良)したりして、電動機7と外部電源とが電気的に切り離されることを防ぐことができる。これにより、ケーブル13の抜けやコネクタ25の接触不良に起因するロボットの停止を防ぐことができる。
【0043】
また、コネクタ用ケーシング11にクランプ部材31を固定することで、コネクタ用ケーシング11が振動したときにクランプ部材31がコネクタ用ケーシング11と同じように振動する。ケーブル13において、コネクタ用ケーシング11に挿通される部分とクランプ部材31に保持されている部分と間の相対振動が小さくなり、振動時におけるプラグ26とソケット27との相対振動を抑えることができる。これにより、この相対振動に伴ってプラグ26がソケット27から抜けて外部電源と電気駆動装置とが電気的に切り離されることを防ぐことができ、それに起因して産業用ロボットが突然動かなくなることを防ぐことができる。
【0044】
また、ケーブル13がその内部シール構造20とプラグ26との間の部分で保持されることで、ケーブル13がプラグ26により近い箇所で保持される。これにより、ロボット駆動時において、ケーブル13におけるプラグ26側の部分の振れ幅をさらに小さくすることができる。これにより、プラグ26とソケット27との間の相対振動も更に小さくなり、この相対振動に伴ってプラグ26がソケット27から抜けて外部電源と電気駆動装置とが電気的に切り離されることを更に抑えることができる。また、プラグ26とケーブル13との間の相対振動により発生する配線13cの断線も抑えることができる。配線13cの断線については、プラグ26とシース13bとの間で配線13cを撓ませてあり、ケーブル13が多少動いてもその動きを配線13cの撓みにより吸収できるようにすることによっても防いでいる。
【0045】
このようにクランプ33が設けられたブラケット32の先端部には、更にプラグ固定部34が設けられている。プラグ固定部34には、図示しない複数の孔(例えば、ピン26bと同数の孔)が形成されており、その表側面(図3の下面)には、プラグ26の裏側面が固定されて、裏側面は、ケーブル13のシース13bの先端部に面している。シース13bからは、配線13cをピン26bに接続すべく配線13cの先端側部分が出ており、この先端側部分がプラグ固定部34の裏側面から各孔に差し込まれてプラグ26の各ピン26bに接続されている。なお、先端側部分は、図2及び3に示すように撓ませた状態で対応するピン26bに余裕を持って結線されており、プラグが振動等によって配線13cが断線しないようになっている。
【0046】
プラグ固定部34に固定されるプラグ26は、コネクタ用ケーシング11を内圧防爆用容器2の外壁の予め定められる位置に固定すると、貫通孔8に挿入されてソケット27に嵌まり込み、ソケット27と電気的に接続されるようになっている。つまり、プラグ26は、コネクタ用ケーシング11を内圧防爆用容器2の外壁の予め定められる位置に配置されるように動かしながらクランプ部材31を貫通孔8に挿入することでソケット27に嵌まり込み、ソケット27に電気的に接続される。それ故、コネクタ用ケーシング11の位置を確認しながら内圧防爆用容器2に固定することでプラグ26とソケット27との嵌り具合を確認することができ、プラグ26とソケット27との嵌り具合を確認するための孔等を形成する必要がなく、またプラグ26とソケット27との接続が簡単である。逆に、コネクタ用ケーシング11を内圧防爆用容器2から外すことで、プラグ26とソケット27とが切り離される。従って、プラグ26とソケット27との切り離しも簡単である。
【0047】
なお、ソケット孔27aは、テーパ状になっており、その開口径がピン26bの外径よりも大きくなっている。それ故、ソケット27にプラグ26を嵌め込む際、ソケット孔27aとピン26bとの軸が互いにズレていても、ソケット孔27aにより案内されて軸同士が合うようになっている。それ故、コネクタ用ケーシング11を固定する位置が多少ズレていても、ピン26bがソケット孔27aにより案内され、プラグ26とソケット27とを接続することができる。これにより、確実に外部電源と電動機7とを接続することができる。
【0048】
また、ソケット27が取付板29に固定されているため、コネクタ用ケーシング11を内圧防爆用容器2に取り付ける際に、ソケット27と電動機7とを繋ぐ配線28が拉げたりすることがなく、また配線28が内圧防爆用容器2内に設けられる図示しない構成に干渉したりすることがない。それ故、配線28の断線やショートを防ぐことができる。プラグ26がクランプ部材31に固定され、またケーブル13がクランプ部材31に保持されているため、ケーブル13の配線13cも同様に拉げたり、他の配線13cに干渉したりすることがない。それ故、ケーブル13の配線13cの断線やショートを防ぐことができる。
【0049】
<第2実施形態>
このように構成される内圧防爆構造1において、クランプ部材31に代えて図6(a)に示すようなクランプ131を用いることができる。なお、クランプ部材131は、クランプ部材31と構成が類似しており、同一の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。クランプ部材31は、ブラケット32と、クランプ133と、プラグ固定部34とを有する。クランプ133は、図6に示すように連結部133aと、クランプ部133bとを有する。連結部133aの基端部は、ブラケット32に一体的に設けられ、先端部には、クランプ部133bが設けられている。クランプ部133bは、C字状に形成される円弧部分133cと、円弧部分の端部に夫々設けられる2つの固定部分133dとを有する。
円弧部分133cは、その中にケーブル13を挿通できるようになっており、固定部分133dは、連結部133aに平行に延在している。クランプ部133bは、可撓性を有する材料から成り、円弧部分133cを変形させることができ、固定部分133dを合わせるように変形させると、円弧部分133cによりケーブル13を挟持するようになっている。ケーブル13が挟持された状態で2つの固定部分133dをボルト等の締結具で固定すると、クランプ部133bによりケーブル13が保持される。なお、円弧部分133cがケーブル13の全周を覆って挟持するため、挟持する際にケーブル13の外周面に作用する圧力は略均一になっている。それ故、ケーブル13が扁平することなく保持される。即ち、クランプ133の挟持力(保持力)を大きくしてもケーブル13が拉げて扁平することがなく、配線13cの断線を抑えることができる。それ故、大きな挟持力(保持力)でケーブル13を保持し引留めることができるようになり、ケーブル13をより抜けにくくすることができる。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態の内圧防爆構造1Bは、第1実施形態の内圧防爆構造1と構成が類似している。以下では、第3実施形態の内圧防爆構造1Bの構成について、第1実施形態の内圧防爆構造1の構成と異なる点について説明し、同一の構成について同一の符号を付して説明を省略する。内圧防爆構造1Bでは、図7に示すように、クランプ部材31Bがコネクタ用ケーシング11Bの挿通孔11c内に配置されており、コネクタ用ケーシング11Bと一体的に形成されている。これにより、クランプ部材31Bは、引留め機構15と内部シール構造20との間に配置される。
【0051】
クランプ部材31Bは、基台33a及びクランプ部33bを有し、基台33a及びクランプ部33bによりクランプ33が構成される。基台33aは、コネクタ用ケーシング11Bに一体的に設けられており、この基台33aの座33cにケーブル13が載せられる。コネクタ用ケーシング11Bには、覗き孔11fが形成されており、この覗き孔11fから挿入孔11cにクランプ部33bを入れることができるようになっている。ここから入れられたクランプ部33bは、ケーブル13を載せられた基台33aに被せられて固定される。固定することで基台33aとクランプ部33bとによってケーブル13が保持される。なお、クランプ部33bを入れた覗き孔は、蓋部材40によって閉められる。
【0052】
このようにして構成される内圧防爆構造1Bは、第1実施形態の内圧防爆構造1と同様の作用効果を奏する。
【0053】
上記の第1乃至第3実施形態では、内圧防爆用容器2内に収容される電気駆動装置の一例として電動機7を示したが、収容される電気駆動装置は電動機7に限定されず、電磁弁、電空弁、又は制御基盤であってもよく、電気で駆動するものであればよい。
【0054】
また、上記の第1乃至第3実施形態では、プラグ26とクランプ部材31とが別体で形成されているけれども、一体的に形成されていてもよい。
【0055】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明は、産業用ロボットに備わる内圧防爆用容器内にある電気駆動装置と、内圧防爆用容器外にある外部電源とを電気的に繋ぐための内圧防爆用容器用のコネクタ装置、及びそれを備える産業用ロボットに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 内圧防爆用容器
7 電動機
8 貫通孔
10 コネクタ装置
11,11B コネクタ用ケーシング
13 ケーブル
13a 表出部分
13b シース
13c 配線
14 保護外装
15 引留め機構
20 内部シール構造
25 コネクタ
26 プラグ
27 ソケット
27a ソケット孔
31,131 クランプ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットに備わる内圧防爆用容器内にある電気駆動装置と、該内圧防爆用容器外にある外部電源とを電気的に接続及び切り離し可能なコネクタと、
前記内圧防爆用容器から前記コネクタを表出させるために前記内圧防爆用容器に形成される貫通孔を塞ぐコネクタ用ケーシングと、
前記コネクタ用ケーシングを挿通し、前記コネクタと外部電源とを接続するケーブルと、
前記コネクタ用ケーシング内に固定され、前記ケーブルを保持するクランプ部材とを備えることを特徴とする内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項2】
前記コネクタは、互いに接続及び切り離し可能な電気駆動装置側コンタクト及び外部電源側コンタクトを有し、
前記電気駆動装置側コンタクトは、電気駆動装置に接続されて内圧防爆用容器に固定され、
外部電源側コンタクトは、ケーブルを介して外部電源に接続されて前記クランプ部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項3】
前記クランプ部材は、前記ケーブルの外周面に作用する圧力が略均一になるようにケーブルを保持するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項4】
前記ケーブルの前記コネクタ用ケーシングから出ている表出部分に設けられ、該表出部分を保護するように覆う保護外装と、
前記ケーブルが挿通すべくコネクタ用ケーシングに形成された挿通孔の外側開口部に設けられ、前記保護外装を引留める引留め機構と、
前記挿通孔の内側開口部に設けられ、前記コネクタ用ケーシングとケーブルとの間から入る気体を防ぐべく内部シール構造とを備え、
前記コネクタ用ケーシングは、シールを達成した状態で内圧防爆用容器に固定されていることを特徴とする1乃至3の何れか1つに記載の内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項5】
前記クランプ部材は、前記内部シール構造と前記コネクタとの間を保持するようになっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、複数の配線と、該複数の配線を覆うシースとを有しており、
前記複数の配線の先端部は、前記シースから表出し、撓ませた状態で前記コネクタに接続されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の内圧防爆用容器用のコネクタ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載のコネクタ装置と、前記内圧防爆用容器とを備えることを特徴とする産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−34790(P2011−34790A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179490(P2009−179490)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】