説明

コネクタ

【課題】不正な嵌合操作を規制して確実にロック音を発生させる。
【解決手段】本発明におけるコネクタ1は、互いに嵌合可能な雄コネクタMと雌コネクタFとから構成されている。雌コネクタFには、個々に変位可能な係止アーム23と解除操作部24とからなるロックアームと、解除操作部24の支持部24Aから垂下形成されている押圧部34と、押圧部34に干渉して解除操作を規制する撓み片33とが設けられている。一方、雄コネクタMには、嵌合操作に伴って撓み片33を変位させつつ、押圧部34に干渉して解除操作を継続して規制する突縁部15が設けられている。解除操作部24は、正規嵌合時に解除操作に伴って押圧部34が連係部36に連係し、連係部36が係止アーム23側に寄せられて係止アーム23に摺接することで、係止アーム23を解除方向に撓ませることが可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアームを備えるコネクタの一般的構造として、下記特許文献1に記載のものがある。このものは、シーソー形状をなすロックアームが雌ハウジング上面において撓み可能に設けられ、ロックアームの後端側に配される操作部を押圧することにより解除操作が可能とされている。雌雄両ハウジングの嵌合途上では、ロックアームの前端が雄ハウジングの係止部を乗り越えつつ、雌雄両ハウジングが正規嵌合に至るとロックアームが復帰して相手側ハウジングの外面を叩きつけることでロック音が発生し、このロック音を聞くことによって雌雄両ハウジングが正規嵌合に至ったことを検知可能としている。
【特許文献1】特開平10−241788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このものは、操作部を押圧しながら嵌合操作を行う、いわゆる不正な嵌合操作が可能な構成とされており、この不正な嵌合操作が行われると、ロック音が発生せず、嵌合検知ができなくなるため、雌雄両ハウジングは半嵌合状態に留め置かれてしまう可能性がある。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、不正な嵌合操作を規制して確実にロック音を発生させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、第1ハウジングと第2ハウジングとが嵌合可能に設けられ、前記第1ハウジングには、被係止部が設けられ、前記第2ハウジングには、個々に変位可能なロック機能部とロック解除部とからなるロックアームが設けられ、前記ロック機能部は、前記嵌合方向に沿う形態で、その基端部より嵌合面側に配されている係止部が前記両ハウジングの正規嵌合時に前記被係止部と係止して前記両ハウジングをロック状態に保持することが可能とされており、前記ロック機能部と前記ロック解除部とが、これらの間に設けられている連係部を介して連動可能に設けられているコネクタであって、前記ロック解除部は、前記正規嵌合時以外では解除規制部に拘束されて前記連係部に連係不能とされることで解除操作が規制されているものの、前記両ハウジングの嵌合操作に伴って前記解除規制部を変位させることで前記正規嵌合時には前記連係部に連係して前記ロック状態を解除することが可能とされている構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記解除規制部は、前記第2ハウジングにおいて変位可能に設けられている第2受け部と、前記ロック解除部を変位可能に支持している支持部から前記第2受け部に向けて突出する形態の押圧部とを含む構成であって、前記第2受け部の自由端部が前記押圧部の突出端と干渉することで前記解除操作が規制されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記解除規制部は、前記第1ハウジングにおいて前記嵌合方向に沿って延出する形態の第1受け部を含む構成であって、その第1受け部は、前記押圧部の突出端と干渉することで前記解除操作が規制されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記第1受け部は、前記両ハウジングの嵌合操作に伴って前記第2受け部を前記押圧部の突出端との干渉を回避する方向に変位させつつ前記押圧部の突出端と干渉可能な領域に相対変位することで前記解除操作が継続して規制されるところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のものにおいて、前記第1ハウジングにおいて前記第1受け部の後端より前記嵌合方向における後方には、前記正規嵌合時に前記解除操作に伴って前記押圧部の突出端が進入して前記解除操作が許容される押し込み許容部が設けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記ロック解除部は、前記ロック機能部と並んで配され、かつ前記嵌合方向において前記基端部より前記嵌合面側に配されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のものにおいて、前記ロック解除部には、前記解除操作に伴って前記連係部を前記ロック機能部側に寄せるための寄せ部材が設けられ、その寄せ部材は、前記連係部に連係して前記ロック機能部を解除方向に撓ませることで前記ロック状態が解除されるところに特徴を有する。
【0011】
請求項8の発明は、請求項7に記載のものにおいて、前記寄せ部材は、前記押圧部を兼ねているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
一般的なロックアームは、ロック機能部(アーム部分)とロック解除部(解除操作部)が一体成形されており、不正な嵌合操作を防ぐためには、ロックアームの揺動軌跡の範囲内に変位を規制する規制部材を設けること等が考えられる。しかしながら、このことは、ロックアームの撓み動作を規制することを意味するため、正規の撓み動作が阻害され、本来のロック音を発生させることができなくなるおそれがある。この対策として、ロック機能部とロック解除部を別体で構成し、ロック解除部に規制部材を設けることで、ロック機能部の正規の撓み動作を保証することができる。このような場合、ロック機能部とロック解除部を連動可能に連係させてロック機能部に解除変位を行わせるようにする必要がある。その点、請求項1の発明によると、ロック解除部は、正規嵌合時以外では解除規制部に拘束されて連係部に連係不能とされることで解除操作が規制されているものの、両ハウジングの嵌合操作に伴って解除規制部を変位させることで正規嵌合時には連係部に連係してロック状態を解除することが可能である。これにより、不正な嵌合操作を防止することができるとともに、ロック機能部の正規の撓み動作を保証して、確実にロック音を発生させることができる。
【0013】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によると、第2ハウジングに設けられている第2受け部の自由端部と押圧部の突出端とが干渉し合うことで解除操作が規制される。この結果、不正な嵌合操作を行うための前提として、第2ハウジング単体の状態で解除操作を行うこと自体が規制されることになり、未然に不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0014】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によると、相手側ハウジングである第1ハウジングに設けられている第1受け部が押圧部の突出端と干渉することで解除操作が規制される。これにより、相手側ハウジングとの嵌合操作に伴って確実に不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0015】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によると、両ハウジングの嵌合操作に伴って第1受け部が第2受け部を押圧部の突出端との干渉を回避する方向に変位させつつ押圧部の突出端と干渉可能な領域に相対変位することで解除操作が継続して規制される。このようにすると、両ハウジングの嵌合前後を問わずに解除規制を行うことができ、万全の状態で不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0016】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によると、両ハウジングの正規嵌合時に解除操作に伴って押圧部の突出端が押し込み許容部に進入することで解除操作が許容されるようにしたから、正規嵌合時に両ハウジングの解除操作を行うことができる。
【0017】
<請求項6の発明>
ロック解除部が基端部を境として嵌合面と反対側に配されている構成の場合、第2受け部が嵌合面側からより離れた位置となり、第1受け部を従来よりも前方に配置する必要があり、その分だけ第1ハウジングの全長が長くなってしまう。その点、請求項6の発明によると、ロック解除部を基端部より嵌合面側に設けたから、第1ハウジングの全長を短くすることができる。
【0018】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によると、寄せ部材が連係部に連係してロック機能部を解除方向に撓ませることでロック状態を解除することができる。これにより、連係部をカム機能部とすることで解除操作力の伝達方向を自在に変換することが可能となり、ロック解除部を自由に配置することが可能となる。この結果、ロック解除部を押し込み操作することに伴い、ロック機能部を手前側に引き寄せるようにして解除操作を行うことも可能である。
【0019】
<請求項8の発明>
請求項8の発明によると、寄せ部材が押圧部を兼ねるようにしたから、これらを別々に設ける場合と比較して、全体の構造を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図14によって説明する。本実施形態におけるコネクタ1は、図13に示すように、互いに嵌合可能な雄コネクタMと雌コネクタFとから構成されている。尚、以下の説明において、前後方向とは両コネクタF,Mの嵌合方向(図7における紙面と直交する方向)を基準として各嵌合面側を前方とし、幅方向とは図7における横方向を基準とし、高さ方向とは図7における上下方向を基準として上側を上方とする。また、本実施形態において両コネクタF,Mは、電線Wに接続されているものの、図面の簡略化のため、電線Wについては一部省略して図示してある。
【0021】
雄コネクタMは、雄ハウジング(本発明における第1ハウジングに相当する。)10を有し、雄ハウジング10の外面における幅方向両側には、嵌合方向に沿ってガイド突部17が一対形成されている。一方、雌コネクタFは、雌ハウジング(本発明における第2ハウジングに相当する。)20を有し、両コネクタF,Mの嵌合時にガイド突部17と対応する位置には、ガイド突部17を収容可能なガイド受け部18が嵌合方向に沿って凹設されている。これにより、両コネクタF,Mは、嵌合途上においてガイド突部17がガイド受け部18に進入することで、高さ方向と幅方向に位置決めされた状態で嵌合可能とされている。
【0022】
雄ハウジング10は合成樹脂性で、図6に示すように、前方に開口するフード部11を有している。フード部11の奥壁12には、タブ状をなす雄端子13が前方に突出して設けられている。フード部11の外周面における上面中央には、被係止部14が突出して設けられている。フード部11の外周面において被係止部14を幅方向に挟む両側には、図5に示すように、一対の突縁部(本発明における第1受け部に相当するとともに、本発明における解除規制部を構成している。)15,15が嵌合方向に沿って延出する形態で設けられている。突縁部15は、前後方向における略中央部が切り欠かれて前後に分断されており、嵌合方向前側の突縁部15より後方(すなわち前後に隣り合う両突縁部15,15間の領域)には、両コネクタF,Mの正規嵌合時に解除操作に伴って後述する押圧部34の突出端34Aが進入可能な押し込み許容部16が形成されている。
【0023】
雌ハウジング20は合成樹脂製で、図2に示すように、略方形のブロック状をなす端子収容部21を有している。端子収容部21の外周面を周方向に沿って覆う位置には、前方に開口するフード状をなす筒状嵌合部22が形成されている。端子収容部21の内部には、前後方向に沿って貫通するキャビティ25が形成されている。キャビティ25の内部には、後方から雌端子26が挿入可能とされている。雌端子26は、図14に示すように、両コネクタF,Mの嵌合操作に伴って雄端子13と導通可能に接続されるようになっている。雌端子26の角筒部26Aの後端には、キャビティ25のランス25Aが係止しており、これによって雌端子26が後方へ抜止めされた状態で保持されている。角筒部26Aの後方に形成されているバレル部には、電線Wの被覆部がゴム栓27ともども圧着されている。ゴム栓27の外周面には、図示3個のリップ部が周設されており、このリップ部がキャビティ25の内周面と密着することで、端子収容部21の後方からキャビティ25の内部に水が浸入することが規制されている。
【0024】
端子収容部21の嵌合面には、キャップ状のリテーナ31が冠着されている。リテーナ31は合成樹脂製で、端子収容部21へ冠着する際にランス25Aの撓み空間に入り込んでランス25Aの撓みを規制する撓み規制部31Aを備えている。これにより、雌端子26は、ランス25Aとともに二重係止された状態となっている。端子収容部21の外周面においてリテーナ31の開口縁と筒状嵌合部22の奥壁との間には、シールリング28が嵌着されている。シールリング28は、リテーナ31の開口縁により前方へ抜止め状態に保持されている。リテーナ31の外周面と筒状嵌合部22の内周面との間には、嵌合操作に伴って雄ハウジング10のフード部11が進入可能とされている。両コネクタF,Mの正規嵌合時には、シールリング28のリップ部とフード部11の内周面とが密着することで、フード部11の内部に水が浸入することが規制されている。
【0025】
端子収容部21の上方には、図1に示すように、筒状嵌合部22と連続しつつ上方に立ち上げられて幅方向に対向状態をなす一対の側面部29,29が形成されている。両側面部29,29の間には、両側面部29,29の嵌合面側における上端同士を連結することにより、上面部30が設けられている。両側面部29,29によって挟まれた領域には、個々に変位可能な係止アーム(本発明におけるロック機能部に相当する。)23と解除操作部(本発明におけるロック解除部に相当する。)24とからなるロックアームが配されている。解除操作部24は、図14に示すように、係止アーム23と並んで配され、係止アーム23の上方に配されている。
【0026】
両側面部29,29の対向面における下縁部には、一対の撓み片(本発明における第2受け部に相当し、本発明における解除規制部を構成している。)33,33が対向状態で配されている。撓み片33は、前後方向において上面部30の後端部付近と対応する位置から後方に向けて延出し、撓み片33の前後方向略中央部から後方部分は、係止アーム23側に向きを変えており、自由端部33Aとされている。係止アーム23の幅方向外側には、図8に示すように、撓み片33の撓み空間が形成されている。これにより、撓み片33の自由端部33Aは、幅方向外側(係止アーム23から離間する方向)に変位可能とされている。
【0027】
係止アーム23は、端子収容部21の上面において筒状嵌合部22の後端から上方に立ち上がる基端部23Bを有し、この基端部23Bから前方へ突出する片持ち状に形成されている。アーム部23の前端下面側には、係止部23Aが配されている。係止部23Aは、雌ハウジング20の成形時において係止アーム23の前端部分を残して幅方向中央における下面側を後方に向けて型抜きすることにより形成されている。これにより、係止部23Aは、係止アーム23の幅方向中央における断面形状では、図14に示すように、下方に突出する形態をなし、両コネクタF,Mの正規嵌合時に被係止部14と係止して両コネクタF,Mをロック状態に保持可能としている。このとき、係止部23Aより後方の型抜き空間には、被係止部14が進入可能となっている。係止アーム23は、両コネクタF,Mの嵌合途上では、上方に撓み変形しつつ被係止部14を乗り越えると、弾性復帰し、係止アーム23の前端部分がフード部11の外面を叩打することでロック音が発生するようになっている。両コネクタF,Mの嵌合作業を行う作業者は、このロック音を聞くことによって両コネクタF,Mの正規嵌合状態を検知可能とされている。
【0028】
解除操作部24は、図1に示すように、上面部30の後端縁部から後方に向けて突出する一対の支持部24A,24Aを有し、その支持部24Aの後端同士を連結することにより、操作部32が形成されている。支持部24Aにおいて操作部32寄りには、押圧部(本発明における解除規制部を構成し、本実施形態においては本発明における寄せ部材を兼ねる構成としてある。)34が撓み片33の自由端部33Aに向けて垂下形成されている。押圧部34の突出端34Aは、図2に示すように、幅方向内側に向けて拡幅形成されており、突出端34Aの下面は、撓み片33の自由端部33Aの上面とほぼ同一の高さ位置とされている。また、押圧部34の突出端34Aは、図1に示すように、上下方向において撓み片33の自由端部33Aと一部対面する位置に配されている。したがって、解除操作部24は、雌コネクタF単体の状態において、押圧部34の突出端34Aが撓み片33の自由端部33Aの上面と干渉することで、解除操作が規制されるようになっている。
【0029】
撓み片33の自由端部33Aは、図8に示すように、両コネクタF,Mの嵌合途上において雄ハウジング10の突縁部15と接触可能な位置に配されている。また、突縁部15の上面は、図7に示すように、両コネクタF,Mの嵌合途上において撓み片33の自由端部33Aの上面とほぼ同一の高さ位置とされている。これにより、両コネクタF,Mの嵌合操作に伴って、突縁部15の前端が撓み片33の自由端部33Aに接触し、突縁部15が、自由端部33Aを幅方向外側(押圧部34の突出端34Aとの干渉を回避する方向)に変位させつつ押圧部34の突出端34Aと干渉可能な領域に相対変位することになる。この結果、突縁部15は、解除操作部24の解除操作に伴って押圧部34の突出端34Aと干渉することで、解除操作を継続して規制可能としている。そして、撓み片33の自由端部33Aは、図10に示すように、両コネクタF,Mの正規嵌合時には、突縁部15の側面によって押圧部34の突出端34Aと上下方向において対面しない位置まで撓んだ状態に保持されている。このとき、押圧部34の突出端34Aは、押し込み許容部16の上方に位置しているため、解除操作部24の操作部32の押し込み操作に伴って押し込み許容部16に進入し、解除操作部24の操作部32の押し込み操作が許容されるようになっている(図12参照)。
【0030】
上面部30において両支持部24A,24Aの幅方向内側には、図1に示すように、一対の連係部36,36が配されている。連係部36は、上面部30の後端縁部から後方に突出する形態をなす連係アーム36Aと、その連係アーム36Aの後端部から下方に向けて垂下形成されているカム機能部36Bとから構成されている。連係アーム36Aは、解除操作部24の支持部24Aの撓み変位とは独立しており、幅方向において係止アーム23と両支持部24A,24Aとの間に配されている。カム機能部36Bは、前後方向において係止アーム23の前端と操作部32の前端との間に配されている。
【0031】
カム機能部36Bの下端部には、図2に示すように、下方に向けて幅広となる幅広部36Cが形成されている。幅広部36Cの下面は、係止アーム23の下面とほぼ同じ高さ位置となるように設定されている。また、幅広部36Cの幅方向における外側端部は、両コネクタF,Mの嵌合途上において突縁部15と干渉しない位置に設定されている。幅広部36Cの幅方向外側面と押圧部34の突出端34Aの下面とは、図1に示すように、上下方向において対向する位置に配されている。したがって、解除操作部24の解除操作に伴って押圧部34の突出端34Aが下方に押し込まれると、突出端34Aの下面が幅広部36Cの外側面に摺接することにより、解除操作部24が連係部36に連係するようになっている。これに伴って、幅広部36Cは、幅方向内側(係止アーム23側)に寄せられるとともに、幅広部36Cの内側面は、図11に示すように、係止アーム23の下面における幅方向両側縁に摺接しつつ係止アーム23の下方に入り込むようにされている。この結果、係止アーム23は、上方に持ち上げられて撓み変形するとともに、係止部23Aと被係止部14とのロック状態が解除可能とされている。すなわち、係止アーム23と解除操作部24は、連係部36を介して連動可能に連係するように設けられている。
【0032】
本実施形態は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。
まず、両コネクタF,Mの嵌合前においては、図1に示すように、雌コネクタFの操作部32を押圧して解除操作しようとすると、押圧部34の突出端34Aの下面が撓み片33の自由端部33Aの上面と干渉することで、解除操作部24の解除操作が不能とされている。これにより、不正な嵌合操作を行うための前提として、雌コネクタF単体の状態で解除操作を行うこと自体が規制され、未然に不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0033】
そして、両コネクタF,Mの嵌合を行う。両コネクタF,Mの嵌合開始にあたっては、図7に示すように、雄コネクタMのガイド突部17が雌コネクタFのガイド受け部18に進入するように浅く嵌合し、両コネクタF,Mが上下方向と幅方向に位置決めされた状態にしておく。これにより、両コネクタF,Mの嵌合時における案内が可能となる。また、この状態においては、図8に示すように、押圧部34の突出端34Aが依然として撓み片33の自由端部33Aと干渉しており、解除操作部24の解除操作が不能とされている。
【0034】
突縁部13は、嵌合操作に伴って押圧部34の突出端34Aと干渉可能な領域に入り込む。この状態においては、押圧部34の突出端34Aが自由端部33Aと突縁部13との双方によって干渉することで解除操作部24の解除操作が継続して規制されている。このまま嵌合操作を続けると、突縁部15の前端は、撓み片33の自由端部33Aに摺接しつつ、撓み片33を幅方向外側に撓み変形させる。そして、撓み片33の自由端部33Aは、突縁部15の側面によって突出端34Aと上下方向において対面しない位置に保持される。こうして、両コネクタF,Mが正規嵌合に至ると、係止アーム23が被係止部14を乗り越えて復帰し、係止部23Aと被係止部14とが係止して両コネクタF,Mがロック状態に保持される。このとき、押圧部34の突出端34Aは、図12に示すように、押し込み許容部16の上方に位置している一方、撓み片33の自由端部33Aは、押圧部34の突出端34Aと干渉しない位置に保持されている。すなわち、両コネクタF,Mは、嵌合過程において正規嵌合時以外では解除操作が規制されているものの、正規嵌合時には解除操作が許容されるようになっている。
【0035】
次に、両コネクタF,Mの離脱を行う。離脱操作にあたっては、操作部32を押圧して、押圧部34の突出端34Aを下方に押し込む。すると、押圧部34の突出端34Aは、連係部36におけるカム機能部36Bの幅広部36Cの幅方向外側面に摺接しつつ、押し込み許容部16に進入する。幅広部36Cは、図11に示すように、突出端34Aに連係して係止アーム23側に寄せられ、係止アーム23の下面における幅方向両側縁に摺接しつつ、係止アーム23の下方に入り込むことで、係止アーム23を上方(解除方向)へ撓ませる。このようにして、解除操作部24が連係部36を介して係止アーム23と連動可能に連係することで、係止アーム23の係止部23Aは、雄コネクタMの被係止部14とのロック状態が解除され、両コネクタF,Mを離脱方向に引き抜くことが許容される。
【0036】
両コネクタF,Mの引き抜き操作途上において、撓み片33の自由端部33Aは、突縁部15の幅方向外側面に摺接しつつ、突縁部15の前端が自由端部33Aを通過すると、撓み片33が復帰し、押圧部34の突出端34Aが突縁部15と自由端部33Aとの双方に干渉することで解除操作部24が解除規制された状態となる。そして、突縁部15を押圧部34の突出端34Aと上下方向において対面しない位置まで引き抜くと、解除操作部24は、撓み片33と干渉することで解除操作部24の解除規制を継続して行いつつ、両コネクタF,Mを完全に引き抜くことができる。このように、両コネクタF,Mは、離脱過程において正規嵌合時以外では、解除操作部24の解除規制が行われた状態に保持することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態においては次に述べるような効果をもたらすことができる。
1.解除操作部24は、正規嵌合時以外では撓み片33もしくは突縁部15によって連係部36に連係不能とされることで解除操作が規制されているものの、嵌合操作に伴って撓み片33が変位し、もしくは、突縁部15が相対変位することで正規嵌合時には連係部36に連係して解除操作が許容される。これにより、不正な嵌合操作を防止することができるとともに、係止アーム23の正規の撓み動作を保証することで確実にロック音を発生させることができる。
【0038】
2.雌コネクタFに設けられている撓み片33の自由端部33Aと押圧部34の突出端34Aとが干渉し合うことで解除操作部24の解除操作が規制される。この結果、不正な嵌合操作を行うための前提として、雌コネクタF単体の状態で解除操作部24の解除操作を行うこと自体が規制されることになり、未然に不正な嵌合操作を防ぐことができる。
3.雄コネクタMに設けられている突縁部15が押圧部34の突出端34Aと干渉することで解除操作部24の解除操作が規制される。これにより、両コネクタF,Mの嵌合時において確実に不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0039】
4.両コネクタF,Mの嵌合操作に伴って突縁部15が撓み片33の自由端部33Aを押圧部34の突出端34Aとの干渉を回避する方向に変位させつつ、押圧部34の突出端34Aと干渉可能な領域に相対変位することで解除操作が継続して規制される。このようにすると、両コネクタF,Mの嵌合前後を問わずに解除規制を行うことができ、万全の状態で不正な嵌合操作を防ぐことができる。
【0040】
5.両コネクタF,Mの正規嵌合時に解除操作部24の解除操作に伴って押圧部34の突出端34Aが押し込み許容部16に進入することで、解除操作部24の解除操作が許容されるようにしたから、正規嵌合時に両コネクタF,Mの解除操作を行うことができる。
6.解除操作部24を基端部23Bより嵌合面側に設けたから、解除操作部24を基端部23Bより嵌合方向における後方に設けた場合と比較して、雄コネクタMの全長を短くすることができる。
【0041】
7.押圧部34の突出端34Aが連係部36に連係して解除操作部24を解除方向に撓ませることでロック状態を解除することができる。これにより、連係部36をカム機能部36Bとすることで解除操作力の伝達方向を自在に変換することが可能となり、解除操作部24を自由に配置することが可能となる。この結果、解除操作部24を押し込み操作することに伴い、係止アーム23を手前側に引き寄せるようにして解除操作を行うことも可能である。
【0042】
8.本発明においては、連係部36を係止アーム23側に寄せるための寄せ部材と、解除操作部24の解除規制を行うための押圧部34とを別々に設けることも可能であるところ、本実施形態では、寄せ部材が押圧部34を兼ねるようにしたから、別々に設ける場合と比較して、全体の構造を簡素化することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0044】
(1)本実施形態によると、解除規制部が雄コネクタMに配されている突縁部15と雌コネクタFに配されている撓み片33とを含む構成のものを例示しているが、本発明によると、撓み片33のみを設けておき、両コネクタF,Mの離脱時に解除治具等を用いて撓み片33を撓ませて解除操作を許容するようにしてもよいし、あるいは突縁部15のみを設けるようにしてもよい。
【0045】
(2)本実施形態によると、両コネクタF,Mの嵌合操作に伴って突縁部15と撓み片33との双方が押圧部34の突出端34Aと干渉する嵌合過程を含ませることで解除操作を継続して規制するものを例示しているが、本発明によると、厳密に継続している必要はなく、撓み片33による解除規制と突縁部15による解除規制との間に、解除操作を許容する嵌合過程が一部含まれるものでもよい。
【0046】
(3)本実施形態によると、前後方向に並んで配されている前側突縁部15Aと後側突縁部15Bとの間に押し込み許容部16を設けるようにしているものを例示しているが、本発明によると、押し込み許容部16が確保されていれば、必ずしも後側突縁部15Bを設けなくてもよい。
【0047】
(4)本実施形態によると、解除操作部24は、係止アーム23の基端部23Bよりも嵌合面側に設置しているものを例示しているものの、本発明によると、解除操作部24は、基端部23Bよりも後方に設置してもよい。この場合には、押圧部34と別体で構成された寄せ部材を係止アーム23の嵌合方向における長さ範囲内に設けておき、寄せ部材が連係部36に連係して係止アーム23を解除方向に撓ませるようにしておくことで、解除操作が可能となる。
【0048】
(5)本実施形態によると、寄せ部材が押圧部34を兼ねるものを例示しているが、本発明によると、寄せ部材と押圧部34とは別体で設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態1において雌コネクタ単体時における平面図
【図2】その雌コネクタ単体時における正面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】図1におけるIV−IV線断面図
【図5】実施形態1において雄コネクタ単体時における平面図
【図6】その雄コネクタ単体時における正面図
【図7】その嵌合途上において雌コネクタの嵌合面側からみた両コネクタの正面図
【図8】その図7における両コネクタの一部切り欠き平面図
【図9】その正規嵌合時において雌コネクタの嵌合面側からみた両コネクタの拡大正面図
【図10】その正規嵌合時における両コネクタの平面図
【図11】その解除操作時において雌コネクタの嵌合面側からみた両コネクタの拡大正面図
【図12】その解除操作時における両コネクタの一部切り欠き平面図
【図13】その嵌合前における両コネクタの断面図(図1におけるXIII−XIII線断面図)
【図14】その正規嵌合時における両コネクタの断面図
【符号の説明】
【0050】
1…コネクタ
10…雄ハウジング(第1ハウジング)
14…被係止部
15…突縁部(第1受け部)
16…押し込み許容部
20…雌ハウジング(第2ハウジング)
23…係止アーム(ロック機能部)
23A…係止部
23B…基端部
24…解除操作部(ロック解除部)
24A…支持部
33…撓み片(第2受け部)
33A…自由端部
34…押圧部(解除規制部)
34A…突出端
36…連係部
F…雌コネクタ
M…雄コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと第2ハウジングとが嵌合可能に設けられ、
前記第1ハウジングには、被係止部が設けられ、前記第2ハウジングには、個々に変位可能なロック機能部とロック解除部とからなるロックアームが設けられ、前記ロック機能部は、前記嵌合方向に沿う形態で、その基端部より嵌合面側に配されている係止部が前記両ハウジングの正規嵌合時に前記被係止部と係止して前記両ハウジングをロック状態に保持することが可能とされており、前記ロック機能部と前記ロック解除部とが、これらの間に設けられている連係部を介して連動可能に設けられているコネクタであって、
前記ロック解除部は、前記正規嵌合時以外では解除規制部に拘束されて前記連係部に連係不能とされることで解除操作が規制されているものの、前記両ハウジングの嵌合操作に伴って前記解除規制部を変位させることで前記正規嵌合時には前記連係部に連係して前記ロック状態を解除することが可能とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記解除規制部は、前記第2ハウジングにおいて変位可能に設けられている第2受け部と、前記ロック解除部を変位可能に支持している支持部から前記第2受け部に向けて突出する形態の押圧部とを含む構成であって、前記第2受け部の自由端部が前記押圧部の突出端と干渉することで前記解除操作が規制されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記解除規制部は、前記第1ハウジングにおいて前記嵌合方向に沿って延出する形態の第1受け部を含む構成であって、その第1受け部は、前記押圧部の突出端と干渉することで前記解除操作が規制されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1受け部は、前記両ハウジングの嵌合操作に伴って前記第2受け部を前記押圧部の突出端との干渉を回避する方向に変位させつつ前記押圧部の突出端と干渉可能な領域に相対変位することで前記解除操作が継続して規制されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1ハウジングにおいて前記第1受け部の後端より前記嵌合方向における後方には、前記正規嵌合時に前記解除操作に伴って前記押圧部の突出端が進入して前記解除操作が許容される押し込み許容部が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ロック解除部は、前記ロック機能部と並んで配され、かつ前記嵌合方向において前記基端部より前記嵌合面側に配されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ロック解除部には、前記解除操作に伴って前記連係部を前記ロック機能部側に寄せるための寄せ部材が設けられ、その寄せ部材は、前記連係部に連係して前記ロック機能部を解除方向に撓ませることで前記ロック状態が解除されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記寄せ部材は、前記押圧部を兼ねていることを特徴とする請求項7記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−311067(P2007−311067A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136654(P2006−136654)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】