説明

コネクタ

【課題】シェルと相手方シェルとの接続部分から基板までの経路をできるだけ短くしてなるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ10は、シェル300を備えている。シェル300は、コネクタ10の基板への搭載時において基板に対向する下板部310を有している。この下板部310には、下板部310の前縁312から所定距離だけ後方に凹んだ凹部340と、基板に接続されるグランド部350とが形成されている。グランド部350は、凹部340の内奥縁342から前方(−X方向)に向けて突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に搭載固定されるコネクタであって、ケーブル等を接続された相手方コネクタと嵌合するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1のコネクタ(特許文献1の図4参照)は、レセプタクルコネクタであり、ケーブルやFPC(Flexible Printed Circuit)等を接続されたプラグコネクタ(特許文献1の図1参照)を相手方コネクタとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193916号公報、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレセプタクルコネクタのグランド部、即ち基板のグランド部に接続される部分はシェルの上板部の側方から基板に向けて延びる部分である。かかる構成では、レセプタクルコネクタのシェルとプラグコネクタのシェル(相手方シェル)との接続部分から基板までの経路が長くなってしまう。
【0005】
一方、EMI(Electro-Magnetic Interference)対策を強化することを考えると、レセプタクルコネクタのシェルとプラグコネクタのシェル(相手方シェル)との接続部分から基板までの経路はできるだけ短い方がよい。
【0006】
そこで、本発明は、シェルと相手方シェルとの接続部分から基板までの経路をできるだけ短くしてなるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コネクタの前端から相手方コネクタを挿入し嵌合する場合、シェルと相手方シェルとの接続部分から基板までの経路をできるだけ短くするためには、基板に接続されるグランド部をシェルの前端近傍、即ち相手方コネクタの相手方嵌合部近傍で、且つシェルの下板部に設けることが好ましい。
【0008】
しかしながら、例えば、シェルの前縁から前方に延びるようなグランド部を設けると、コネクタと相手方コネクタとの嵌合時に相手方コネクタがグランド部に干渉してしまわないように相手方コネクタをも設計変更しなければならない。かかる設計変更は、相手方コネクタについての設計資産を無駄にするものであり、相手方コネクタの大型化の要因となるものである。また、上記干渉を避けるために相手方コネクタの嵌合部を前後方向に長くすると、信号伝送特性が劣化してしまうという恐れもある。
【0009】
従って、相手方コネクタについての設計変更を特に要することなく、上述したような目的を達成することが好ましい。本発明は、かかる観点からなされたものであり、具体的には以下に掲げる構成を備えるものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、第1のコネクタとして、
複数のコンタクトと、該複数のコンタクトを左右方向に列設させるようにして保持する保持部材と、該保持部材を少なくとも部分的にカバーするシェルとを備えると共に、基板に搭載されて用いられ、前端から後端に向けて挿入された相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、
前記シェルは、当該コネクタの前記基板への搭載時に該基板に対向する下板部を有しており、
前記下板部には、当該下板部の前縁から所定距離だけ後方に凹んだ凹部と、前記基板に接続されるグランド部とが形成されており、
前記凹部は、前記前縁から前記所定距離だけ離れて位置する内奥縁と該内奥縁及び前記前縁を結ぶ内側縁とで規定されており、
前記グランド部は、前記内奥縁から前方に向けて突出している
コネクタが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記グランド部は、前記前縁を超えておらず前記凹部内に位置している
コネクタが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタであって、
左右方向において、前記グランド部の幅は前記コンタクトの幅よりも大きい
コネクタが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第4のコネクタとして、第1乃至第3のいずれかのコネクタであって、
前記相手方コネクタは相手方シェルを備えており、
前記シェルは、前記相手方コネクタを誤って上下逆に挿入しようとした際に、前記相手方シェルを受けることにより、その誤挿入を防止するストッパーを備えており、
該ストッパーは、前記内奥縁から前方に向かって延びている
コネクタが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第5のコネクタとして、第4のコネクタであって、
前記ストッパーは、少なくとも2つあり、
前記凹部の前記左右方向の中心を挟む左領域及び右領域の2つの領域に分けた場合に、前記ストッパーは該左領域と該右領域に少なくとも一つずつ位置している
コネクタが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第6のコネクタとして、第1乃至第5のいずれかのコネクタであって、
前記相手方コネクタの嵌合部を収容する収容部を備えており、
前記シェルには、内部接点部を有する内部グランド端子が設けられており、
前記内部接点部は、前記収容部内に位置している
コネクタが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第7のコネクタとして、第6のコネクタであって、
前記内部グランド端子は後方又は後斜め方向に向かって延びている
コネクタが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第8のコネクタとして、第6又は第7のコネクタであって、
前記内部グランド端子は前記下板部から延びている
コネクタが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第9のコネクタとして、第1乃至第8のいずれかのコネクタであって、
前記シェルは、前記保持部材の上面を少なくとも部分的にカバーする上板部を更に有しており、
前記上板部は、上から見た場合に、略コの字形状を有しており、
当該コネクタを上から見た場合に、前記凹部は略コの字形状の前記上板部で三方を囲まれた領域内に位置しており、前記グランド部は前記上板部と重なっていない
コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シェルの下板部の前縁から後方に向かって凹んだ凹部を設け、且つ、その凹部内から前方に突出したグランド部を設けたことから、相手方コネクタを設計変更することなく嵌合時における相手方コネクタとグランド部の干渉を避けつつ、シェルと相手方シェルとの接続部分から基板までの経路を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタを示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタを示す平面図である。
【図3】図1のコネクタを示すIII--III線斜視片側断面図である。
【図4】図1のコネクタに含まれるシェルを示す斜視図である。
【図5】図1のコネクタを示すV--V線断面図である。
【図6】図2のコネクタの変形例を示す平面図である。
【図7】図2のコネクタの他の変形例を示す平面図である。
【図8】図2のコネクタの更に他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至3及び図5を参照すると、本発明の実施の形態によるコネクタ10は、複数のコンタクト100と、絶縁体からなる保持部材200と、金属製のシェル300とを備えている。コンタクト100は、保持部材200に保持されており、それによって左右方向(Y方向)に列設させられている。シェル300は、保持部材200を少なくとも部分的にカバーしている。本実施の形態によるコネクタ10は、基板(図示せず)に搭載されて用いられるレセプタクルコネクタである。図1、図3及び図5に示されるように、コネクタ10は、前端12側に開口した収容部16を有しており、前端12から後端14に向けて(+X方向に沿って)相手方コネクタ(プラグコネクタ:図示せず)の嵌合部を収容部16に対して挿入することにより、相手方コネクタと嵌合・接続するものである。即ち、コネクタ10に対する相手方コネクタの嵌合抜去方向は、コネクタ10の前後方向(X方向)である。
【0022】
図1及び図4を参照すると、本実施の形態によるシェル300は、一枚の金属板をプレス加工して得られるものであり、コネクタ10の基板(図示せず)への搭載時に基板に近接配置され且つ基板と対向する下板部310と、保持部材200の上面を少なくとも部分的にカバーする上板部320と、下板部310と上板部320とを左右両端にて連結する2つの連結部330とを備えている。
【0023】
下板部310には、その前縁312から所定距離だけ後方(+X方向)に凹んだ凹部340が形成されている。詳しくは、凹部340は、前縁312から所定距離だけ後方に離れて位置する内奥縁342と、内奥縁342と前縁312とを結ぶ2つの内側縁344とで規定されるものであり、内奥縁342の長さは内側縁344の長さよりもかなり長い。そのため、図2に示されるように、凹部340は、左右方向に長い形状を有している。なお、図に示されるように凹部340は、グランド部350とストッパー360とにより、複数に分割された形状を呈している。
【0024】
図1、図2及び図3に示されるように、本実施の形態による下板部310には、複数のグランド部350と、複数のストッパー360とが設けられている。グランド部350は4カ所あり、ストッパー360は3カ所ある。本実施の形態においては、グランド部350とストッパー360とが左右方向において交互に配置されている。
【0025】
詳しくは、グランド部350は、凹部340の内奥縁342から前方(−X方向)に向かって突出している。本実施の形態によるグランド部350の前端は下板部310の前縁312を超えておらず、従って、本実施の形態においては、グランド部350の全体が上方から見た場合に凹部340内のみに位置しており(図2参照)、凹部340の外には出ていない。このグランド部350は、基板(図示せず)に設けられたグランドパターン(図示せず)に半田付けされる。左右方向において、グランド部350の幅はコンタクト100の幅よりも大きい。このグランド部350の個数については、特に制限はない。例えば、図6に示されるコネクタ10′のシェル300′のように3つであってもよいし、図7に示されるコネクタ10″のシェル300″のように5つであってもよい。但し、グランド部350の個数は、EMI対策の観点からは、多ければ多いほどよい。
【0026】
ストッパー360は、グランド部350と同様に、凹部340の内奥縁342から前方(−X方向)に向かって突出している。このストッパー360は、コネクタ10に対して相手方コネクタ(図示せず)を誤って上下逆に挿入しようとした際に相手方コネクタの有する相手方シェル(図示せず)を受けることにより、コネクタ10に対する相手方コネクタの誤挿入を防止するためのものである。このストッパー360は、コネクタ10に対する相手方コネクタの右斜め挿入及び左斜め挿入の双方において上記誤挿入を防止するため、凹部340をその左右方向の中心を挟む左領域及び右領域の2つの領域に分けた場合に、それら左領域と右領域とに少なくとも一つずつ設けられていることが望ましい。即ち、ストッパー360は、少なくとも2つ設けられていることが好ましい。但し、ストッパー360の個数についても特に制限はなく、例えば、図6に示されるコネクタ10′のシェル300′のように2つであってもよいし、図7に示されるコネクタ10″のシェル300″のように4つであってもよい。
【0027】
図3及び図5を参照すると、本実施の形態による下板部310には、収容部16内にて相手方シェル(図示せず)と接続する複数の内部グランド端子370が更に設けられている。詳しくは、内部グランド端子370の夫々は相手方シェル(図示せず)に接続する内部接点部372を備えている。内部グランド端子370は、コネクタ10の相手方コネクタとの未嵌合時において内部接点部372が収容部16内に位置するように、後方(+X方向)又は後斜め方向(+X方向と+Z方向の合成方向)に下板部310から延びている。この内部グランド端子370を設けることにより、シェル300と相手方シェル(図示せず)との接触を更に強固なものとすると共にシェル300と相手方シェル(図示せず)との接続部分からグランド部350までの距離を短くすることができることから、EMI特性の更なる向上を図ることができる。
【0028】
図2から理解されるように、本実施の形態による上板部320は、上から見た場合に、略コの字形状を有しており、下板部310の凹部340、グランド部350及びストッパー360は、その略コの字形状の上板部320で三方を囲まれた領域内に位置している。そのため、グランド部350は上板部320と重なっておらず、基板(図示せず)への半田付けを行った際に半田付けの状態を視認することができる。この上板部320には、左右両端から下側に向けて断面L字状に延びるホールドダウン322が設けられている。ホールドダウン322は基板(図示せず)に対して半田付けされ、それによってコネクタ10は基板に更に強固に固定される。
【0029】
本実施の形態による連結部330は、夫々、下板部310の右端(又は左端)近傍の前端と上板部320の右端(又は左端)近傍の前端とを連結している。そのため、コネクタ10と相手方コネクタ(図示せず)との嵌合時に相手方コネクタの一部がシェル300に当たったとしても上板部320がめくれてしまったりすることがない。
【0030】
上述した本発明の実施の形態において、グランド部350はコネクタ10の前端12側(即ち、相手方コネクタの挿入側)に設けられていることから、シェル300と相手方シェルとの接続部分から基板までの経路を短くすることができ、高い耐EMI特性を得ることができる。また、かかるグランド部350を下板部310の前縁312から後方に凹んだ凹部340内に設けたことから相手方コネクタの設計に際してグランド部350の存在に起因した設計を行う必要がない。
【0031】
更に、コネクタ10の前端12近傍でグランド部350が基板(図示せず)に半田付けされることから、コネクタ10の前端12近傍が基板(図示せず)にしっかりと固定されることになるので、ケーブルの煽り等により相手方コネクタを通じて加えられる好ましくない力に対しても耐性が高くなり、当該力による破損等の問題も生じにくくすることができる。詳しくは、相手方コネクタ(図示せず)に接続されるケーブル等が煽られたりした際などにコネクタ10に好ましくない力が加わる場合がある。しかし、コネクタ10が搭載固定される基板(図示せず)に対してグランド部350を半田付けすることにより、相手方コネクタ(図示せず)により近い部位であるコネクタ10の前端12近傍を基板(図示せず)に固定することができることから、本実施の形態によれば、上述した好ましくない力に対する耐性を高めることができる。
【0032】
以上、具体的な例を掲げて本発明について説明してきたが、本発明は詳述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、図1及び図6と図7を比較すれば理解されるように、コンタクト100の本数などには特に限定はない。
【0033】
また、上述した実施の形態によるコネクタ10は、グランド部350とストッパー360とを左右方向に交互に配してなるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、グランド部350とストッパー360とが交互に配されていなくてもよい。また、ストッパー360を省略することとしてもよい。更に、図8に示されるコネクタ10aのシェル300aのように、ストッパー360の省略により空いたスペースに対してもグランド部350を配することとすると、より耐EMI特性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
10,10′,10″,10a コネクタ
12 前端
14 後端
16 収容部
100 コンタクト
200 保持部材
300,300′,300″,300a シェル
310 下板部
312 前縁
320 上板部
322 ホールドダウン
330 連結部
340 凹部
342 内奥縁
344 内側縁
350 グランド部
360 ストッパー
370 内部グランド端子
372 内部接点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトと、該複数のコンタクトを左右方向に列設させるようにして保持する保持部材と、該保持部材を少なくとも部分的にカバーするシェルとを備えると共に、基板に搭載されて用いられ、前端から後端に向けて挿入された相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、
前記シェルは、当該コネクタの前記基板への搭載時に該基板に対向する下板部を有しており、
前記下板部には、当該下板部の前縁から所定距離だけ後方に凹んだ凹部と、前記基板に接続されるグランド部とが形成されており、
前記凹部は、前記前縁から前記所定距離だけ離れて位置する内奥縁と該内奥縁及び前記前縁を結ぶ内側縁とで規定されており、
前記グランド部は、前記内奥縁から前方に向けて突出している
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記グランド部は、前記前縁を超えておらず前記凹部内に位置している
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
左右方向において、前記グランド部の幅は前記コンタクトの幅よりも大きい
コネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタであって、
前記相手方コネクタは相手方シェルを備えており、
前記シェルは、前記相手方コネクタを誤って上下逆に挿入しようとした際に、前記相手方シェルを受けることにより、その誤挿入を防止するストッパーを備えており、
該ストッパーは、前記内奥縁から前方に向かって延びている
コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタであって、
前記ストッパーは、少なくとも2つあり、
前記凹部の前記左右方向の中心を挟む左領域及び右領域の2つの領域に分けた場合に、前記ストッパーは該左領域と該右領域に少なくとも一つずつ位置している
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタであって、
前記相手方コネクタの嵌合部を収容する収容部を備えており、
前記シェルには、内部接点部を有する内部グランド端子が設けられており、
前記内部接点部は、前記収容部内に位置している
コネクタ。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタであって、
前記内部グランド端子は後方又は後斜め方向に向かって延びている
コネクタ。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のコネクタであって、
前記内部グランド端子は前記下板部から延びている
コネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタであって、
前記シェルは、前記保持部材の上面を少なくとも部分的にカバーする上板部を更に有しており、
前記上板部は、上から見た場合に、略コの字形状を有しており、
当該コネクタを上から見た場合に、前記凹部は略コの字形状の前記上板部で三方を囲まれた領域内に位置しており、前記グランド部は前記上板部と重なっていない
コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−159598(P2011−159598A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22537(P2010−22537)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】