説明

コネクタ

【課題】ハウジング内でのキャビティの高密度化を図る。
【解決手段】電線10の端末に接続された端子金具20が後方から挿入されるキャビティ35を有するハウジング30と、キャビティ35内に固定的に設けられ、端子金具20の側面と係合して同端子金具20を抜け方向に仮係止しかつ所定以上の抜け方向の力が作用した場合には仮係止が解除される仮係止部60と、ハウジング30に装着され端子金具20における軸線方向と略直交する被係止面25に係止して同端子金具20を抜け方向に本係止する本係止部55と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングのキャビティ内に端子金具を抜け止めして収容したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタの一般的な構造として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このものは、ハウジングに設けられたキャビティ内にランスが設けられる一方、ハウジングにはリテーナが装着されるようになっている。そして、電線の端末に接続された端子金具がハウジングのキャビティ内に後方から挿入されると、ランスを弾性撓みさせつつ端子金具が押し込まれ、正規位置まで押し込まれたところでランスが復元変位して一次係止され、そののちリテーナが装着されることで端子金具が二次係止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−236695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコネクタでは、ランスとリテーナとによりいわゆる二重係止することで端子金具の抜け止め力の強化を図っているのであるが、当該コネクタの配設場所やコネクタの形状等の条件によっては、電線の引っ張り等に抗した抜け止め力はリテーナによる係止のみで賄うことができ、ランスによる係止は、リテーナを装着する前に、端子金具をキャビティ内でずれ止めする程度に利用すれば足りる場合がある。
一方、キャビティ内にランスを設けるからには、その撓み空間を確保する必要がある等のためにキャビティ間のピッチが大きくなり、結果キャビティの高密度化を図る際の妨げとなっていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、ハウジング内でのキャビティの高密度化を図るところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電線の端末に接続された端子金具が後方から挿入されるキャビティを有するハウジングと、前記キャビティ内に固定的に設けられ、前記端子金具の側面と係合して同端子金具を抜け方向に仮係止しかつ所定以上の抜け方向の力が作用した場合には前記仮係止が解除される仮係止部と、前記ハウジングに装着され前記端子金具における軸線方向と略直交する被係止面に係止して同端子金具を抜け方向に本係止する本係止部と、から構成されているところに特徴を有する。
【0006】
ハウジングのキャビティに端子金具が挿入されると、仮係止部が端子金具と係合して端子金具を比較的弱い係止力で仮係止し、一方ハウジングに装着された本係止部が端子金具の被係止面に係止することで、端子金具はキャビティ内において所望の抜け止め力を受けて収容される。端子金具をキャビティから抜く場合は、本係止部を外して本係止を外したのち、電線を所定以上の力で引っ張ると、仮係止が解除されて端子金具が抜き取られる。
端子金具に仮係止する手段として、ランスの代替として撓み空間が不要な仮係止部を設けた構造としたから、キャビティ間のピッチを狭めてハウジング内におけるキャビティの高密度化を図ることができる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記仮係止部が、前記端子金具の側面を押圧して同端子金具を圧入させる圧入突部である。
端子金具がキャビティ内に挿入されると、圧入突部で側面が押圧されつつ端子金具が圧入され、抜け方向に仮係止される。電線を所定以上の力で引っ張ることで、端子金具は圧入突部から抜けて引き抜かれる。
【0008】
(2)前記仮係止部が、前記端子金具の側面に突設された被係止部に係止可能で、かつその係止面を順テーパ面とした係止突部である。
端子金具がキャビティ内に挿入されると、被係止部が係止突部に乗り上げ、正規位置まで押し込まれたところで、被係止部が係止突部の前方に嵌ることで、抜け方向に仮係止される。電線を所定以上の力で引っ張ると、被係止部が順テーパ面を上って係止突部を後方に乗り越え、端子金具が引き抜かれる。
【0009】
(3)前記ハウジングの後面には前記端子金具と電線とを挿通可能な挿通孔が設けられた一括型のゴム栓が配され、前記ハウジングに組み付けられたホルダにより前記ゴム栓が前記ハウジングの後面に密着した状態に保持されているとともに、前記ホルダの前面には、前記ゴム栓を水密な状態で貫通して前記キャビティ内に臨みかつ前記端子金具の前記被係止面に弾性的に係止する弾性係止部が突出形成されており、前記ホルダの前記弾性係止部が前記本係止部となっている。
端子金具は、ゴム栓の挿通孔を通ってホルダに突設された弾性係止部を弾性変位させつつキャビティ内に挿入され、正規位置まで挿入されたところで弾性係止部が復元変位して被係止面に係止することで、端子金具を本係止する。
【0010】
(4)前記ハウジングには、前記キャビティと対応する位置ごとに前記端子金具の被係止面に係止する固定係止部を備えたリテーナが、同ハウジングの側面若しくは後面側から装着可能に設けられ、前記リテーナの前記固定係止部が前記本係止部となっている。
リテーナがハウジングに装着されると、リテーナに設けられた固定係止部がキャビティ内に挿入された端子金具の被係止面に係止することで本係止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコネクタによれば、ランスの代替として撓み空間が不要な仮係止部を設けたことにより、ハウジング内でのキャビティの高密度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る雌端子をハウジングに装着する前の状態を示す縦断面図
【図2】その雌端子の挿入後の状態を示す縦断面図
【図3】ゴム栓の正面図
【図4】同側面図
【図5】ホルダの正面図
【図6】同平面図
【図7】同側面図
【図8】実施形態2に係る雌端子をハウジングに装着する前の状態を示す縦断面図
【図9】その雌端子の挿入後の状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図7に基づいて説明する。本実施形態では、一括シール型の防水コネクタに適用した場合を例示する。
本実施形態の防水コネクタは、図1に示すように、電線10の端末に接続された雌端子20が収容される雌ハウジング30と、雌ハウジング30に装着されて電線10の周りをシールする一括ゴム栓40(以下、単にゴム栓40という)と、雌ハウジング30に装着されてゴム栓40を保持するホルダ50とから構成されている。
【0014】
電線10は、芯線11の回りを絶縁被覆12で覆った被覆電線であって、電線10の端末では、皮剥きされることで芯線11の端末が一定長露出した処理が施される。
雌端子20は、導電性に優れた金属板をプレス加工することで形成され、相手の雄端子(図示せず)のタブが挿入接続される角筒形をなす端子接続部21の後方に、ワイヤバレル22とインシュレーションバレル23とが設けられた構造である。ワイヤバレル22は左右一対のバレル片22Aが対向して形成され、インシュレーションバレル23は、左右一対のバレル片23A,23Bが前後にずれて形成されている。
【0015】
上記の端末処理が施された電線10における芯線11の端末には雌端子20のワイヤバレル22が、残った絶縁被覆12の端末にはインシュレーションバレル23がかしめられ、詳細には、ワイヤバレル22では、一対のバレル片22Aが、それぞれ突出端を突き合わせつつハート型をなすようにかしめられ、インシュレーションバレル23では、一対のバレル片23A,23Bが前後にずれた形態で絶縁被覆12に巻き付くようにかしめられることで、電線10の端末に雌端子20が固着接続されている。
このかしめられたインシュレーションバレル23のうち、後側のバレル片23Bの後面が、本係止用の被係止面25として適用されるようになっている。
【0016】
雌ハウジング30は合成樹脂製であって、横長のブロック状をなす端子収容部31の回りに、前面開口のフード部32が形成された形状であり、雌ハウジング30の前面側から、相手の雄ハウジング(図示せず)が嵌合されるようになっている。
端子収容部31の基端側の外周には、雄ハウジングとの間をシールするゴムリング33が嵌着されているとともに、上面側には相手の雄ハウジングとの間を嵌合状態にロックするロックアーム34が設けられている。
【0017】
雌ハウジング30の端子収容部31には、電線10の端末に接続された雌端子20を後方から挿入して収容可能な8室のキャビティ35が、4室ずつ上下2段に分かれて形成されている。キャビティ35の前壁36には、相手の雄ハウジングに装着された雄端子のタブが挿入される端子挿入口36Aが開口されている。
【0018】
さて、各キャビティ35の前端部の天井面には、圧入突部60が段差状に張り出して形成されている。詳細には、この圧入突部60の下面とキャビティ35の底面との間隔が、雌端子20の端子接続部21における前端側の高さより所定寸法小さく設定されている。圧入突部60の後面は、順テーパ状のガイド面60Aとされている。この圧入突部60が、本発明の仮係止部に相当する。
【0019】
雌ハウジング30の端子収容部31における後面には、一回り大きい横長の方形をなす周壁38が突設され、同周壁38の内側に、ゴム栓40並びにホルダ50を収容可能な収容室39が後方へ開口して設けられている。
ゴム栓40は、図3及び図4にも示すように、横長の方形をなす厚板状に形成されており、上記した収容室39における奥側(前側)の略半分の領域に緊密に嵌合可能となっている。ゴム栓40の外周面には、収容室39の内周面に密着して両面間を水密状に保つための外周リップ41が3条周設されている。
【0020】
ゴム栓40には、雌端子20並びに電線10を挿通可能な挿通孔42が前後面に貫通して設けられている。同挿通孔42は、上記した雌ハウジング30に設けられたキャビティ35の配列と対応して4個ずつ上下2段に形成されており、ゴム栓40が収容室39に収容された場合に各キャビティ35と整合するようになっている。
挿通孔42は、電線10よりも若干大きい径を持った円形孔であって、その内周面には、電線10の外周面に密着して両面間を水密状に保つための内周リップ43が3条周設されている。
【0021】
ホルダ50は合成樹脂製であって、図5ないし図7にも示すように、ゴム栓40とほぼ同じ大きさの横長の方形をなす厚板状に形成されている。ホルダ50には、雌端子20及び電線10を挿通可能な導入孔51が前後に貫通して設けられている。導入孔51は、雌端子20がクリアランスを持って挿通できるように、ゴム栓40の挿通孔42よりも大きい方形孔として形成されており、挿通孔42並びに雌ハウジング30のキャビティ35と同じ配列で形成されている。
【0022】
ホルダ50は、収容室39内においてゴム栓40の後方に収容可能となっており、ホルダ50の前面がゴム栓40の後面に当接した位置でロックされるようになっている。
そのため、ホルダ50の後端部の外周には、前方に折り返されるようにして一回り大きい方形状の筒部52が形成されており、同筒部52の内周面には、上下の面に左右2個ずつ、左右の面に1個ずつの合計6個のロック突部53が形成されている。
一方、収容室39の周壁38における後端部の外周面には、ホルダ50のロック突部53と対向した位置ごとに、同数のロック孔38Aが開口されている。
【0023】
収容室39内にゴム栓40が収容されることに続いてホルダ50が押し込まれると、同ホルダ50の筒部52が収容室39の周壁38に外嵌され、ホルダ50がゴム栓40を端子収容部31の後面に押し付けるまで押し込まれたところで、各ロック突部53が対応するロック孔38Aに嵌ることによりホルダ50がロックされ、ゴム栓40が端子収容部31の後面に密着した状態に保持されるようになっている。
【0024】
ホルダ50の前面には、雌端子20のインシュレーションバレル23における後側のバレル片23Bの後面である被係止面25に係止する8本の弾性係止部55が、同ホルダ50に形成された各導入孔51の前面側の上縁における幅方向の中央部の位置から、前方に向けて水平姿勢で一体的に突出形成されている。この弾性係止部55が、本発明の本係止部に相当する。
弾性係止部55は詳細には、ゴム栓40の厚さよりも若干大きい長さ寸法を持った丸棒からなるロッド56の先端に、頭部57が設けられた形状である。この頭部57は、ロッド56よりも太い短寸の丸棒における上側の半分弱を切除したような形状であって、この頭部57の前面が、かしめられたインシュレーションバレル23における後側のバレル片23Bの上部位置の後面に係止可能である。また、頭部57は、ロッド56との接続部を中心として上方へ弾性変位可能となっている。
【0025】
一方、ゴム栓40には、上記した弾性係止部55を挿通可能な8本の補助挿通孔45が前後面に貫通して設けられている。同補助挿通孔45は、図3にも示すように、上記した各挿通孔42の小間隔を開けた上部位置ごとに形成されており、ゴム栓40が端子収容部31の後面に密着された際には、各キャビティ35の後端である入口35Aの天井面に対応するようになっている。
補助挿通孔45はまた、弾性係止部55のロッド56よりも若干大きい径を持った円形孔であって、その内周面には、ロッド56の外周面に密着して両面間を水密状に保つための内周リップ46が3条周設されている。
【0026】
ホルダ50の前面に突出形成された各弾性係止部55が、ゴム栓40の対応する補助挿通孔45に後方から挿通され、ホルダ50の前面がゴム栓40の後面に当接するまで押し込まれると、弾性係止部55におけるロッド56の全長が補助挿通孔45内に水密に嵌合され、また、頭部57は補助挿通孔45の前面開口から前方に突出して、上方への弾性変位可能に配される。
また、雌ハウジング30の各キャビティ35の入口35Aにおける天井部には、ゴム栓40の前面から突出した弾性係止部55の頭部57が進入することを許容し、かつ上方への弾性変位を許容するべく逃がし凹部37がそれぞれ形成されている。
【0027】
続いて、本実施形態の作用を説明する。防水コネクタの組み付けに当たっては、まずホルダ50の前面にゴム栓40を装着する。すなわち、ホルダ50の前面に突出形成された弾性係止部55を補助挿通孔45に挿通しつつゴム栓40をホルダ50の前面に向けて押し込む。ゴム栓40がホルダ50の前面に押し付けられたところで、弾性係止部55におけるロッド56の全長が補助挿通孔45内に水密に嵌合され、また頭部57が補助挿通孔45の前方に上方への弾性変位可能に突出した形態で、ゴム栓40がホルダ50に前面に一体的に装着される。
【0028】
このように一体的に組み付けられたゴム栓40とホルダ50とが、雌ハウジング30における端子収容部31の後面に形成された収容室39に後方から挿入される。ホルダ50の筒部52は弾性的に拡開変形しつつ押し込まれる。
【0029】
ゴム栓40が収容室39の奥面すなわち端子収容部31の後面に当たるまで押し込まれると、図1に示すように、ホルダ50の筒部52が復元変形してそのロック突部53が収容室39の周壁38のロック孔38Aに嵌ることにより、ホルダ50が抜け止め状態にロックされ、併せてゴム栓40の前面が端子収容部31の後面に密着した状態に保持される。
このとき、ゴム栓40の前面から突出した弾性係止部55の頭部57は、対応するキャビティ35の入口35Aの天井面に形成された逃がし凹部37内に進入する。
【0030】
このように雌ハウジング30側が組み付けられたら、雌ハウジング30の各キャビティ35内に電線10に接続した雌端子20が挿入される。雌端子20は、図1の矢線に示すように、ホルダ50の導入孔51に後方から挿通され、続いてゴム栓40の挿通孔42を拡径させつつ押し込まれて、最後にキャビティ35に挿入される。
【0031】
雌端子20は、初めに弾性係止部55の頭部57を逃がし凹部37内で上方に弾性変位させつつ押し込まれ、押し込みの終盤では、端子接続部21の前端部が、ガイド面60Aで案内されつつ圧入突部60とキャビティ35の底面との間に圧入されるとともに、弾性係止部55の頭部57がインシュレーションバレル23の上面に乗り上げて上方に弾性変位しつつ押し込まれる。
【0032】
図2に示すように、雌端子20が前壁36に当たる正規位置まで押し込まれると、圧入突部60の全長に亘って雌端子20の端子接続部21の前端部が圧入されて、いわゆる仮係止される一方、雌端子20のインシュレーションバレル23が弾性係止部55の頭部57を通過することで、頭部57が復動変位して後側のバレル片23Bの後面である被係止面25に係止し、これにより雌端子20はキャビティ35内に本係止されて収容される。一方電線10は、ゴム栓40の挿通孔42内に水密に挿通された状態となる。すべての雌端子20について上記したキャビティ35への挿入作業が終了したところで、本実施形態の防水コネクタの組み付けが完了する。
【0033】
メンテナンス等において、雌端子20を雌ハウジング30のキャビティ35から抜く場合は、以下のようにして行う。図2の状態から、治具等を用いて筒部52を拡開させることでホルダ50のロックを外し、ホルダ50を後方に引っ張ると、弾性係止部55がゴム栓40の挿通孔42を通過しつつホルダ50が電線10に沿って後方に引き抜かれる。これにより雌端子20に対する本係止が解除される。続いて、雌ハウジング30の後面側に出ている電線10を束ねて後方に所定以上の力で引っ張ると、端子接続部21の前端部の圧入された部分が抜けつつ雌端子20がキャビティ35内を後方に引かれ、途中からゴム栓40ともども引っ張られてキャビティ35から抜き取られる。
【0034】
本実施形態では、雌端子20を抜け止めする本係止手段は、ホルダ50に設けた弾性係止部55に委ねる一方で、いわゆる仮係止手段は、キャビティ35の天井面に圧入突部60を固定的に設けることによる圧入構造を採用している。
言い換えると、雌端子20を仮係止する手段として、ランスの代替として撓み空間が不要な圧入構造を採用したから、その分キャビティ35間のピッチを狭めることができ、雌ハウジング30内でのキャビティ35の高密度化を図ることができる。
【0035】
また本実施形態では、雌端子20に本係止する機能を、リテーナではなくてホルダ50に一体的に形成した弾性係止部55で果たすようにしたから、リテーナを備えることが割愛できて部品点数の削減が図れ、またリテーナの装着スペースも不要となって雌ハウジング30の特に軸方向の小型化を図ることに有利となる。
【0036】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図8および図9によって説明する。この実施形態2では、実施形態1と比べて、雌端子20をキャビティ35内で仮係止する部分の構造に変更が加えられている。
以下では、実施形態1との相違部分を主に説明し、実施形態1と同一機能を有する部位、部材については、同一符号を付すことによって説明を省略または簡略化する。
【0037】
実施形態2の仮係止構造としては、雌端子20の端子接続部21の上面における前端側には、被係止部27が突出形成されている。
一方、キャビティ35の前端部の天井面には、上記の雌端子20の被係止部27に係止する仮係止部である係止突部65が形成されている。この係止突部65は前面側が係止面となるが、同係止面並びに後面の両面が順テーパ面66A,66Bとされた台形状に形成されている。
その他の構造については上記実施形態1と同様である。
【0038】
実施形態2の作用は以下のようである。雌端子20は、図8の矢線に示すように、ホルダ50の導入孔51からゴム栓40の挿通孔42を拡径させつつ押し込まれ、続いてキャビティ35に挿入される。
押し込みの終盤では、雌端子20の端子接続部21の上面に設けられた被係止部27が、後側の順テーパ面66Bを通って係止突部65に乗り上げつつ押し込まれ、図9に示すように、雌端子20が前壁36に当たる正規位置まで押し込まれると、被係止部27が係止突部65の前面側に落ち込むことで、いわゆる仮係止される。併せて、弾性係止部55の頭部57がバレル片23Bの後面である被係止面25に係止し、これにより雌端子20はキャビティ35内に本係止されて収容される。
【0039】
雌端子20を雌ハウジング30のキャビティ35から抜く場合は、図9の状態からホルダ50を外して、弾性係止部55による雌端子20に対する本係止を解除したのち、雌ハウジング30の後面側に出ている電線10を束ねて後方に所定以上の力で引っ張ると、雌端子20の被係止部27が、前側の順テーパ面66Aを通って係止突部65を後方へ乗り越えつつ、雌端子20がキャビティ35内を後方に引かれ、途中からゴム栓40ともども引っ張られてキャビティ35から抜き取られる。
【0040】
本実施形態では、雌端子20を仮係止する手段として、雌端子20の被係止部27に係止するべくキャビティ35の天井面に固定的に設けた係止突部65の係止面を、順テーパ面66Aとした構造を採用している。端的には、ランスの代替として撓み空間が不要であるセミロック構造を採用したから、その分キャビティ35間のピッチを狭めることができて、雌ハウジング30内でのキャビティ35の高密度化を図ることができる。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ホルダの着脱時において筒部が弾性的に拡開し易くなるように、筒部の開口縁側から適宜にスリットを入れるようにしてもよい。
(2)雌端子を本係止する手段としては、雌端子の被係止面に係止する固定係止部を設けたサイドリテーナやバックリテーナを別途備えて、それらのリテーナを雌ハウジングに後から装着するものであってもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(3)本発明は、雄端子を雄ハウジングのキャビティ内に収容して一括ゴム栓でシールするようにした雄側の防水コネクタにも同様に適用することが可能である。
(4)本発明はまた、個々のキャビティをゴム栓でシールする個室防水型の防水コネクタにも適用可能である。
(5)さらに非防水のコネクタにも適用することもでき、要はハウジングのキャビティ内に端子金具を抜け止めして収容したコネクタ全般に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10…電線
20…雌端子(端子金具)
21…端子接続部
23…インシュレーションバレル
23B…後側のバレル片
25…被係止面
27…被係止部
30…雌ハウジング(ハウジング)
31…端子収容部
35…キャビティ
39…収容室
40…ゴム栓
42…挿通孔
45…補助挿入孔
50…ホルダ
55…弾性係止部(本係止部)
60…圧入突部(仮係止部)
65…係止突部(仮係止部)
66A…順テーパ面(係止面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に接続された端子金具が後方から挿入されるキャビティを有するハウジングと、
前記キャビティ内に固定的に設けられ、前記端子金具の側面と係合して同端子金具を抜け方向に仮係止しかつ所定以上の抜け方向の力が作用した場合には前記仮係止が解除される仮係止部と、
前記ハウジングに装着され前記端子金具における軸線方向と略直交する被係止面に係止して同端子金具を抜け方向に本係止する本係止部と、
から構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記仮係止部が、前記端子金具の側面を押圧して同端子金具を圧入させる圧入突部であることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記仮係止部が、前記端子金具の側面に突設された被係止部に係止可能で、かつその係止面を順テーパ面とした係止突部であることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの後面には前記端子金具と電線とを挿通可能な挿通孔が設けられた一括型のゴム栓が配され、前記ハウジングに組み付けられたホルダにより前記ゴム栓が前記ハウジングの後面に密着した状態に保持されているとともに、前記ホルダの前面には、前記ゴム栓を水密な状態で貫通して前記キャビティ内に臨みかつ前記端子金具の前記被係止面に弾性的に係止する弾性係止部が突出形成されており、前記ホルダの前記弾性係止部が前記本係止部となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記キャビティと対応する位置ごとに前記端子金具の被係止面に係止する固定係止部を備えたリテーナが、同ハウジングの側面若しくは後面側から装着可能に設けられ、前記リテーナの前記固定係止部が前記本係止部となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62056(P2013−62056A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198180(P2011−198180)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】