説明

コネクティングロッドの潤滑構造

【課題】コンロッド小端部内側の潤滑に寄与するオイル量を増やすことの可能なコンロッドの潤滑構造を提案する。
【解決手段】コンロッド1における小端部1aの頭頂部分に貫通形成された油孔1bと、ピストン裏面2aの略中央に突出させた凸部3と、を含んで構成されることを特徴とする。ピストン裏面に形成した凸部が、ピストン裏面に付着するオイルを集約する核となり、ここから滴となってオイルがコンロッド小端部の油孔へ滴下されるので、小端部内側で潤滑に関与するオイル量が増し、潤滑特性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンピンとクランクピンとを連接するコネクティングロッドに関し、特に、その小端部の潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においてピストンピンとクランクピンとを連接するコネクティングロッド(以下コンロッド)では、その小端部におけるフレッティング摩耗の低減を図る目的で、特許文献1に示すような潤滑構造がとられている。すなわち、小端部の頭頂部分に油孔を貫通形成し、オイルジェット等によりピストンの裏側へ供給されるオイルをその油孔を通し導いて、小端部内側におけるピストンピンとの潤滑を図っている。
【特許文献1】実開平5−22941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の潤滑構造は、小端部に貫通形成した油孔でオイルを小端部内側に導こうというものであるが、ピストン裏側へ供給されるオイルはほとんどがピストンの冷却空洞に捕集されてピストン冷却のために消費されてしまい、小端部の油孔を通って小端部内側に到達するオイルは不足気味である。
そこで本発明では、コンロッド小端部内側の潤滑に寄与するオイル量を増やすことの可能なコンロッドの潤滑構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るコンロッドの潤滑構造は、コンロッドにおける小端部の頭頂部分に形成された油孔と、ピストン裏面の略中央に突出させた凸部と、を含んで構成されることを特徴とする。
あるいは、本発明に係るコンロッドの潤滑構造は、コンロッドにおける小端部の頭頂部分に形成された油孔と、ピストン裏面の略中央に穿たれた凹部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0005】
これらコンロッドの潤滑構造においては、凸部又は凹部からピストン半径方向へピストン裏面に延設した溝を含んだ構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ピストン裏面に形成した凸部又は凹部が、ピストン裏面に付着するオイルを集約する核となり、ここから滴となってオイルがコンロッド小端部の油孔へ滴下される。すなわち、ピストン裏面に付着するオイルが略中央の凸部及び凹部を通して油孔へ導かれるので、小端部内側で潤滑に関与するオイル量が増し、潤滑特性を向上させることができる。また、凸部又は凹部からピストン半径方向へ溝を延設しておけば、この溝が、ピストン裏面に付着したオイルの伝導路となって、凸部又は凹部にオイルを導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1には、凸部を含んだコンロッド潤滑構造の実施形態を示している。
想像線で示すコンロッド1のピストンピン連結部である小端部1aには、その頭頂部分に油孔1bが貫通形成されている。図示の油孔1bは、油滴を受けやすいように漏斗状とされ、当該油孔1bに入ってきたオイルを小端部1aの内側へ導く。この油孔1bを形成した小端部1aの内面には、上記特許文献1にあるような油溝を形成しておいてもよい。
【0008】
ピストン2の裏面2a(燃焼室側を表とした場合のクランクケース側)には、油滴を油孔1b内へ滴らせることができるように、油孔1bと対向する位置、つまり、裏面2aの略中央に、凸部3が形成されている。凸部3は、裏面2aから滑らかに盛り上がった円錐状に形成されており、裏面2aに付着したオイルが先端部分へ伝わって、該先端部分からオイルの油滴を滴下できるように加工されている。
【0009】
オイルジェット等でピストン2の裏面2aへ向け噴射されるオイルは、膨張・吸気行程で裏面2aに押し付けられて付着する。そして、ピストン2の速度が弱まり、下死点を超えて圧縮・排気行程に移っていくと、付着したオイルが裏面2aに形成されている凸部3へ集まっていって滴が形成され、凸部3の先端部分から油滴となって油孔1bへ滴下する。すなわち、凸部3が、ピストン2の裏面2aに付着したオイルを集約する核となり、その先端部分から滴となって油孔1bへオイルが滴下される。このように、慣性により、ピストン2の裏面2aに付着するオイルが凸部3を通して油孔1bへ導かれるので、小端部1aの内側で潤滑に関与するオイル量が増すことになる。
【0010】
凸部3へオイルがより伝わりやすくなるように、溝を形成した例を図2に示す。すなわち、ピストン2の裏面2aにおいて、凸部3を中心としてピストン半径方向へ、2本の溝4が放射状に延設されている。この溝4が、裏面2aに付着したオイルの伝導路となって、凸部3へオイルが導かれていく。なお、溝4は2本に限らず、より多数の溝を放射状に形成してもよい。
【0011】
図3には、凹部を含んだコンロッド潤滑構造の実施形態を示している。
コンロッド1は、上記図1の実施形態と同様のもので、小端部1aの頭頂部分に漏斗状の油孔1bが貫通形成され、入ってきたオイルを小端部1aの内側へ導いている。
ピストン10の裏面10aには、油滴を油孔1b内へ滴らせることができるように、油孔1bと対向する位置、つまり、裏面10aの略中央に、オイルの油滴を溜める凹部11が穿たれている。凹部11は、裏面2aから掘り下げた窪みとして形成されており、裏面2aに付着したオイルがその中へ伝わっていけるように加工されている。
【0012】
上述同様にオイルは、ピストン10の膨張・吸気行程で、裏面10aに押し付けられて付着すると共に裏面10aに形成されている凹部11へ溜まっていく。そして、ピストン10の速度が弱まり、下死点を超えて圧縮・排気行程に移っていくと、凹部11に溜まったオイルが油滴となって油孔1bへ滴下する。すなわち、凹部11が、ピストン10の裏面10aに付着したオイルを集約する核となり、ここに溜まったオイルが滴となって油孔1bへ滴下される。このように、慣性により、ピストン10の裏面10aに付着するオイルが凹部11を通して油孔1bへ導かれるので、小端部1aの内側で潤滑に関与するオイル量が増すことになる。
【0013】
この凹部11の場合も、凹部11へオイルがより伝わりやすくなるように、ピストン10の裏面10aにおいて、凹部11を中心としてピストン半径方向へ放射状に延設した溝を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】凸部を含んだ潤滑構造の実施形態を示すピストンの要部断面図。
【図2】凸部につながる溝を形成した実施形態を示すピストンの要部断面図。
【図3】凹部を含んだ潤滑構造の実施形態を示すピストンの要部断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 コンロッド
1a 小端部
1b 油孔
2,10 ピストン
2a,10a 裏面
3 凸部
4 溝
11 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクティングロッドにおける小端部の頭頂部分に貫通形成された油孔と、
ピストン裏面の略中央に突出させた凸部と、
を含んで構成されることを特徴とするコネクティングロッドの潤滑構造。
【請求項2】
前記凸部からピストン半径方向へ前記ピストン裏面に延設した溝を含むことを特徴とする請求項1記載のコネクティングロッドの潤滑構造。
【請求項3】
コネクティングロッドにおける小端部の頭頂部分に貫通形成された油孔と、
ピストン裏面の略中央に穿たれた凹部と、
を含んで構成されることを特徴とするコネクティングロッドの潤滑構造。
【請求項4】
前記凹部からピストン半径方向へ前記ピストン裏面に延設した溝を含むことを特徴とする請求項3記載のコネクティングロッドの潤滑構造。
【請求項5】
前記油孔が漏斗状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクティングロッドの潤滑構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−223796(P2008−223796A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58975(P2007−58975)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】