説明

コヒーレント光受信器およびその制御方法

【課題】偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式においては、コヒーレント光受信器の始動時における動作が安定しない。
【解決手段】本発明のコヒーレント光受信器において、偏光ビームスプリッタは、直交する二つの偏波光を独立の情報信号でそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる偏波多重光信号を入力し、第1および第2の受信偏波光信号に分離して出力し、90°ハイブリッド回路は第1および第2の受信偏波光信号を局所光とそれぞれ干渉させて複数の光信号を出力し、光電変換器は光信号を検波して検波電気信号を出力し、アナログ−デジタル変換器は検波電気信号をデジタル化してデジタル受信信号を出力し、デジタル信号処理部が備える偏波分離部と位相補償部は、デジタル受信信号を入力として偏波分離処理を行なった結果を位相補償部に出力し、情報信号として同一の初期信号を用いたときに得られる位相偏差量を初期値として位相補償処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光受信器およびその制御方法に関し、特に、偏波多重光信号をコヒーレント検波とデジタル信号処理により受信するコヒーレント光受信器およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の光通信システムにおいては、増大する通信需要に応えるため更なる大容量化が求められている。これまでの光通信システムでは変調方式として光強度変調(On Off Keying)が広く用いられてきた。しかしビットレートが40Gbpsを超えると、波長分散および偏波モード分散の影響が顕著になり、伝送速度が制限されるという問題が生じる。このような分散による特性制限は、信号のシンボルレートが2倍になると4倍悪化する関係にある。そのため、特性の改善には帯域利用効率を向上させてシンボルレートを抑制することが効果的である。
【0003】
帯域利用効率を改善する手法の一つに搬送波の位相に情報を載せて通信する方法があり、携帯電話などの無線ネットワークシステムでは幅広く使われている。しかし光通信ではCATV(Cable Television)用システムなどの一部のシステムでしか使われてこなかった。その理由は光の周波数が非常に高い(約193.1THz)ため、電子回路で直接制御することが困難だからである。そのため、光の周波数をダウンコンバージョンする様々な方法が開発されてきた。
【0004】
このような方法の一つにサブキャリア多重方式(Sub Carrier Multiplexing:SCM)がある。これは光に電気の搬送波を重畳し、その上に情報を載せる手法である。サブキャリア多重方式(SCM)によれば、無線通信や同軸線伝送路の送受信回路を転用することができるため、CATV光伝送システム等で実用化されている。しかしこの手法では最大帯域が電子回路の性能に依存するため、10Gbps以上の伝送速度を実現するのは現状では困難である。
【0005】
光の周波数をダウンコンバージョンする別の方法に光コヒーレント受信方式がある。これは信号光と局部発振(Local Oscillator:LO)光とを合波することによってダウンコンバージョンする方式であり、原理的には無線通信で広く使われるコヒーレント受信方式とほぼ同一である。光コヒーレント受信方式では、局部発振(LO)光と信号光の周波数および位相を電子回路で制御できる範囲まで一致させる必要があり、無線通信で用いられている手法を応用した様々な手法が提案されている。
【0006】
このような周波数および位相の変動を補償することとしたコヒーレント光通信装置の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1の関連する光通信装置においては、送信側で正弦波信号である基準信号を情報信号に加算し、この加算信号で光信号を変調する。受信側の光通信装置は、光信号生成部と、光ハイブリッドと、光電気変換部と、局発光変動補償部と、復調部とを備えている。光ハイブリッドは、送信側の光通信装置から受信する変調光信号と、光信号生成部が生成する局発光を結合して出力する。光電気変換部は、光ハイブリッドが出力する光信号をヘテロダイン検波し検波電気信号を出力する。局発光変動補償部は検波電気信号から抽出した基準信号の変動を検出し、このときの変動量を示す信号に基づき、検波電気信号の周波数変動を補償する。このような構成により、受信する変調光信号に対する局発光の変動を補償することとしている。
【0007】
また、特許文献2には、信号光と局発光を合成した後に、直交する偏波成分に分離して検波する偏波ダイバーシティ光受信方式の一つが開示されている。この偏波ダイバーシティ光受信方式に用いられる関連する光通信装置は、検波して得られるそれぞれの電気信号の二乗値となるように重み付けを行う中間周波数安定化手段と、中間周波数安定化手段の出力を合成する加算手段を有する。そして、加算手段の出力である電気信号の二乗値の和を制御信号として局部発振用レーザを制御する。これにより、信号光の偏波状態に依存することなく、局部発振用レーザの周波数を安定化することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−271527号公報(段落「0012」〜「0030」)
【特許文献2】特開平01−114832号公報(3頁〜4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように光コヒーレント受信方式においては、局部発振(LO)光と信号光の波長の相違等から発生する位相偏差(ずれ)を補償する必要がある。
【0010】
一方、光通信システムではさらなる大容量化を図るために、直交する二つの偏波光にそれぞれ独立に情報を乗せた偏波多重光信号を伝送する光偏波多重方式が用いられるようになっている。ここで、光偏波多重通信システムにおいては、局部発振(LO)光と信号光の偏波軸が一致していない場合には、二つの光が合波されないため信号を適切に伝えることができない。このため、偏波スタビライザー等を用いて信号光の偏波をロックするなどの方策がとられてきたが、この手法では制御手段が複雑化してしまう。それに対して、CMA(Constant Modulus Algorithm)法を用いて、多重化された2つの偏波光に乗せられた信号を2つの信号に分離する処理方式が提案されており、この技術を用いた光偏波多重通信システムの研究が行われている。
【0011】
このように偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式においては、コヒーレント光受信器において位相補償処理と偏波分離処理を共に行う必要がある。このとき、上述した位相補償処理を行うこととしても、関連するコヒーレント光受信器の始動時において位相補償処理と偏波分離処理のいずれもが正常に動作していないと、受信信号を取り出すことができず、安定して始動させることができない。
【0012】
このように、偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式においては、コヒーレント光受信器の始動時における動作が安定しない、という問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上述した課題である、偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式においては、コヒーレント光受信器の始動時における動作が安定しない、という課題を解決するコヒーレント光受信器およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のコヒーレント光受信器は、偏光ビームスプリッタと、90°ハイブリッド回路と、局部発振器と、光電変換器と、アナログ−デジタル変換器と、デジタル信号処理部を有し、偏光ビームスプリッタは、直交する二つの偏波光を独立の情報信号でそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる偏波多重光信号を入力し、第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離して出力し、90°ハイブリッド回路は、第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号を局部発振器からの局所光とそれぞれ干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、光電変換器は、光信号を検波して検波電気信号を出力し、アナログ−デジタル変換器は、検波電気信号をデジタル化してデジタル受信信号を出力し、デジタル信号処理部は、偏波分離部と、位相補償部とを備え、偏波分離部は、デジタル受信信号を入力として偏波分離処理を行なった結果を位相補償部に出力し、位相補償部は、情報信号として同一の初期信号を用いたときに得られる位相偏差量を初期値として位相補償処理を行う。
【0015】
本発明のコヒーレント光受信器の制御方法は、直交する二つの偏波光を同一の初期信号を用いてそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる第1の偏波多重光信号を入力し、第1の偏波多重光信号を第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離し、コヒーレント検波することによって得られる第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号を、それぞれ自乗して加算した結果から位相偏差量を算出し、位相偏差量を初期値として位相補償処理を行い、その後に、偏波分離処理を始動する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコヒーレント光受信器およびその制御方法によれば、偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式に用いる場合であっても、安定した起動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器の制御方法を示すフローチャートおよび対応するコンスタレーション波形図である。
【図3】本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器の制御方法における各ステップに対応するコンスタレーション波形図である。
【図4】本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるデジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器100の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信器100は、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS)110、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120、局部発振器(LO)130、光電変換器(O/E)140、アナログ−デジタル変換器(ADC)150、およびデジタル信号処理部(DSP)160を有する。
【0020】
偏光ビームスプリッタ110は、偏波多重光信号(Signal)を入力し、第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離して出力する。ここで偏波多重光信号は送信側で、直交する第1の送信偏波光(X偏波光)と第2の送信偏波光(Y偏波光)を独立の情報信号でそれぞれ変調し、これらの偏波光を多重化することにより得られる。
【0021】
90°ハイブリッド回路120は、第1の受信偏波光信号および第2の受信偏波光信号を局部発振器(LO)130からの局所光とそれぞれ干渉させ、複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力する。本実施形態では、偏波多重4相位相変調(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying:DP−QPSK)方式を用いた場合について説明する。したがって90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120からは、2偏波についてそれぞれ同相成分および直交成分からなる4チャンネルの信号成分をそれぞれ有する4波の光信号が出力される。
【0022】
光電変換器(O/E)140は、光信号をコヒーレント検波して検波電気信号を出力する。アナログ−デジタル変換器(ADC)150は検波電気信号をデジタル化し、第1の受信偏波光信号に対応する第1のデジタル受信信号と第2の受信偏波光信号に対応する第2のデジタル受信信号をそれぞれ出力する。
【0023】
デジタル信号処理部(DSP)160は、偏波分離部161と、位相補償部162とを備える。偏波分離部161は、デジタル受信信号を入力として偏波分離処理を行なった結果を位相補償部162に出力する。位相補償部162は、情報信号として同一の初期信号を用いたときに得られる位相偏差(ずれ)量を初期値として位相補償処理を行う。ここで情報信号として同一の初期信号を用いた場合には、偏波分離部161は取得した第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号をそれぞれ自乗して加算した結果を出力する。なお、本実施形態のデジタル信号処理部(DSP)160においては、各デジタル受信信号は、各受信偏波光信号の同相成分と直交成分とから構成される複素信号として処理することとした。
【0024】
上記説明ではデジタル信号処理部(DSP)160は、偏波分離部161と位相補償部162とを備えるとしたが、他の構成、例えば波長分散補償処理を行う波長分散補償部などをさらに備えることとしてもよい。
【0025】
このような構成を採用したことにより、本実施形態に係るコヒーレント光受信器100では、始動時において偏波分離部161による処理と位相補償部162による処理を独立して起動することが可能となる。
【0026】
すなわち、起動直後においては、コヒーレント光受信器100は二つの送信偏波光を変調する情報信号として同一のデータ信号を用いた第1の偏波多重光信号を受信する。このときデジタル信号処理部(DSP)160の偏波分離部161では、二つの受信偏波光信号から得られるデジタル受信信号の自乗和をそれぞれ位相補償部162に出力する。位相補償部162は偏波分離部161からの入力信号を用いて位相偏差(ずれ)量を算出し、このときの位相偏差(ずれ)量を初期値として位相補償処理を行う。その後に偏波分離部161において偏波分離処理を起動し実行する。これにより、偏波分離部161における偏波分離処理と位相補償部162における位相補償処理を独立して起動することができる。その結果、本実施形態によるコヒーレント光受信器100によれば、偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式に用いる場合であっても、安定した起動が可能となる。
【0027】
次に、本実施形態によるコヒーレント光受信器100の動作について、図1に加えて図2から図4を用いてさらに詳細に説明する。図2は本実施形態に係るコヒーレント光受信器の制御方法を示すフローチャート、図3は本実施形態に係るコヒーレント光受信器の制御方法における各ステップに対応するコンスタレーション波形図、図4は本実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるデジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
【0028】
コヒーレント光受信器100は送信器側からの偏波多重光信号を受信する。送信器側では送信器からの光出力をオン(ON)状態とし(図2のステップS11)、光出力における2つの偏波光(X偏波光、Y偏波光)を情報(データ)信号でそれぞれ変調する。そして、これらの変調された光信号を多重化し偏波多重光信号として送出する。
【0029】
図1に示すようにコヒーレント光受信器100において、入力された偏波多重光信号は偏光ビームスプリッタ(PBS)110によって二つの偏波光に分離され、二つの90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120にそれぞれ入力される。
【0030】
ここで初期動作時には、送信器側では二つの偏波光に対して同一の初期信号を印加する。例えば、第1の送信偏波光(X偏波光)に対してデータ信号〔010011〕を入力した場合は、第2の送信偏波光(Y偏波光)に対してもデータ信号〔010011〕を入力する(図2のステップS12、図3(a))。
【0031】
各送信偏波光に同一のデータ信号を印加された偏波多重送信光は、光ファイバーを伝搬する間に偏波角がランダムに変化してコヒーレント光受信器100に到着する。そのため、局部発振器(LO)130からの局部発振(LO)光の偏波とは必ずしも一致しない。局部発振(LO)光と信号光の偏波角が一致していない場合、それぞれの90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120が受信する光パワーは、局部発振(LO)光と信号光の偏波角の差を「θ」とすると、cosθだけ変動してしまう。このため受信特性に変動が生じ、CMAアルゴリズムなどを用いた処理によって偏波角の差分をロックできていない場合には、後段の位相制御処理などを行うことが困難になる。
【0032】
定常状態の動作時においては、図4(a)に示すように、受信した光信号のうち第1の送信偏波光(X偏波光)の信号成分xと第2の送信偏波光(Y偏波光)の信号成分yとを分離した後に後段の位相補償部162に送出する必要がある。
【0033】
このときX偏波光の信号成分xとY偏波光の信号成分yとが混合している場合は、それぞれの位相が異なっているため、一の局部発振(LO)光で二つの位相を合わせることは出来ない。また二個の局部発振器を備えることとした場合には、二個の局部発振(LO)光の間で位相を適合させることが困難であるため、適切に受信することが出来なくなる。
【0034】
一方、受信光と局部発振(LO)光の偏波を一致させるために、受信光の偏波角を読み出し、偏波スタビライザーで強制的に偏波角を局部発振(LO)光と一致させる方法が知られている。しかし、この場合はシステムが複雑になり実施が困難である。
【0035】
これに対して本実施形態のコヒーレント光受信器およびその制御方法によれば、上述したようにこれらの問題を解決することができる。以下にさらに詳細に説明する。
【0036】
図4(b)に示すように、デジタル信号処理部(DSP)160の2つの入力ポートAおよびBには、第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号がそれぞれ入力される。このときコヒーレント光受信器100には、送信器側において同一のデータ信号αでそれぞれ変調された二つの送信偏波光を多重化した第1の偏波多重光信号が入力される。ここで、信号光と局部発振(LO)光との間の位相偏差(ずれ)量を「φ」、偏波角の差を「θ」とすると、入力ポートAにおける第1のデジタル受信信号成分xおよび入力ポートBにおける第2のデジタル受信信号成分x’は以下の式で表わされる。
x =α(cosφ+jsinφ)cosθ (1)
x’=α(cosφ+jsinφ)sinθ (2)
偏波分離部161では、第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号をI−Q平面上で足し合わせる(図2のステップS13、図3(b))。すなわち、式(1)(2)で表わされるデジタル受信信号成分をそれぞれ自乗して加算した結果を出力する。このとき、三角関数の公式
cosθ+sinθ=1
を用いると、以下に示すように偏波角の変動による光出力の変動を除去することができる。
+x’
=α(cosφ+jsinφ)(cosθ+sinθ)
=α(cosφ+jsinφ)
=α(1−2sinφ+2jcosφsinφ)
=α(cos2φ+jsin2φ) (3)
式(3)に示されるように、偏波角による変動はキャンセルされ、受信偏波光信号における偏波依存性が除去される(図3(b))。一方、位相情報は2倍の角度周波数に変換される。このことから信号光と局部発振(LO)光との間の偏波角の差に依存することなく、位相偏差(ずれ)量のみを検出することが可能になることがわかる。すなわち、偏波分離処理を実行する前に、局部発振(LO)光と信号光の波長の相違等から発生する位相偏差(ずれ)を補償する位相補償処理を事前に実施することが可能となる。
【0037】
このとき、図4(b)に示すように、偏波分離部161は入力ポートAおよびBから入力されたデジタル受信信号xおよびx’の自乗和「x+x’」を出力する。その後、位相補償部162は位相偏差(ずれ)量である「2φ」を算出し、このときの「φ」を補正処理の初期値とする(図2のステップS14、図3(c))。位相補償部162はこの位相差「φ」を事前に補正する。
【0038】
次に、送信器側において異なるデータ信号でそれぞれ変調された二つの送信偏波光を多重した第2の偏波多重光信号を送出し、コヒーレント光受信器100は第2の偏波多重光信号を受信する(図2のステップS15、図3(d))。
【0039】
偏光ビームスプリッタ110は、第2の偏波多重光信号を第3の受信偏波光信号と第4の受信偏波光信号に分離して出力する。
90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120と光電変換器(O/E)140では、第3の受信偏波光信号と第4の受信偏波光信号を局所光とそれぞれ干渉させた後に検波する。アナログ−デジタル変換器(ADC)150は検波した信号をそれぞれデジタル化した第3のデジタル受信信号と第4のデジタル受信信号を出力する。
【0040】
このとき、デジタル信号処理部(DSP)160の偏波分離部161は第3のデジタル受信信号および第4のデジタル受信信号について偏波分離処理を開始し、2つの偏波光(X偏波光、Y偏波光)に基づく信号成分(x、y)に分離する(図2のステップS16、図3(e))。以後、偏波分離部161および位相補償部162は定常の偏波分離および位相補償の処理動作を継続する(図2のステップS17、図3(f))。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によるコヒーレント光受信器およびその制御方法によれば、偏波分離部と位相補償部を独立に起動することができる。そのため、偏波多重光信号を用いた光コヒーレント受信方式に用いる場合であっても、安定した起動が可能となる。
【0042】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
100 コヒーレント光受信器
110 偏光ビームスプリッタ(PBS)
120 90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)
130 局部発振器(LO)
140 光電変換器(O/E)
150 アナログ−デジタル変換器(ADC)
160 デジタル信号処理部(DSP)
161 偏波分離部
162 位相補償部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光ビームスプリッタと、90°ハイブリッド回路と、局部発振器と、光電変換器と、アナログ−デジタル変換器と、デジタル信号処理部を有し、
前記偏光ビームスプリッタは、直交する二つの偏波光を独立の情報信号でそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる偏波多重光信号を入力し、第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離して出力し、
前記90°ハイブリッド回路は、前記第1の受信偏波光信号と前記第2の受信偏波光信号を前記局部発振器からの局所光とそれぞれ干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、
前記光電変換器は、前記光信号を検波して検波電気信号を出力し、
前記アナログ−デジタル変換器は、前記検波電気信号をデジタル化してデジタル受信信号を出力し、
前記デジタル信号処理部は、偏波分離部と、位相補償部とを備え、
前記偏波分離部は、前記デジタル受信信号を入力として偏波分離処理を行なった結果を前記位相補償部に出力し、
前記位相補償部は、前記情報信号として同一の初期信号を用いたときに得られる位相偏差量を初期値として位相補償処理を行う
コヒーレント光受信器。
【請求項2】
前記偏波分離部は、前記情報信号として同一の初期信号を用いたときに得られる前記デジタル受信信号を、それぞれ自乗して加算した結果を出力する
請求項1に記載したコヒーレント光受信器。
【請求項3】
直交する二つの偏波光を同一の初期信号を用いてそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる第1の偏波多重光信号を入力し、
前記第1の偏波多重光信号を第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離し、コヒーレント検波することによって得られる第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号を、それぞれ自乗して加算した結果から位相偏差量を算出し、
前記位相偏差量を初期値として位相補償処理を行い、
その後に、偏波分離処理を始動する
コヒーレント光受信器の制御方法。
【請求項4】
直交する二つの偏波光を同一の初期信号を用いてそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる第1の偏波多重光信号を入力し、
前記第1の偏波多重光信号を第1の受信偏波光信号と第2の受信偏波光信号に分離し、
前記第1の受信偏波光信号と前記第2の受信偏波光信号を局所光とそれぞれ干渉させた後に検波し、検波した信号をそれぞれデジタル化した第1のデジタル受信信号と第2のデジタル受信信号を出力し、
前記第1のデジタル受信信号と前記第2のデジタル受信信号を、それぞれ自乗して加算した結果から位相偏差量を算出し、
前記位相偏差量を初期値として位相補償処理を行う
コヒーレント光受信器の制御方法。
【請求項5】
前記位相偏差量を初期値として位相補償処理を行った後に、
直交する二つの偏波光を異なる情報信号を用いてそれぞれ変調した光信号を多重化して得られる第2の偏波多重光信号を入力し、
前記第2の偏波多重光信号を第3の受信偏波光信号と第4の受信偏波光信号に分離し、
前記第3の受信偏波光信号と前記第4の受信偏波光信号を局所光とそれぞれ干渉させた後に検波し、検波した信号をそれぞれデジタル化した第3のデジタル受信信号と第4のデジタル受信信号を出力し、
前記第3のデジタル受信信号と前記第4のデジタル受信信号についてそれぞれ偏波分離処理、および位相補償処理を行う
請求項4に記載したコヒーレント光受信器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−70051(P2012−70051A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210729(P2010−210729)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】