説明

コヒーレント光源および光学装置

【課題】波長変換素子は位相整合波長許容度が狭いため、安定した出力を得るには、光学系の波長安定化および波長変換素子の温度制御により出力安定化を図る必要があった。
【解決手段】レーザ媒質と波長変換素子からなるコヒーレント光源において、レーザ媒質からの基本波を波長変換素子により高調波に変換した後、反射体により反射した基本波をレーザ媒質に帰還することで、レーザ媒質の発振波長を帰還光の波長に固定する。これにより、レーザ媒質の発振波長を波長変換素子の位相整合波長に自動的に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長変換素子を用いたコヒーレント光源およびこれを利用した光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非線形光学効果を用いた波長変換素子は小型高出力化が可能であり、コヒーレント光の波長変換を利用することで短波長化が可能となる。一方、波長変換素子が高効率で波長変換するための波長許容度は一般的に非常に狭いため、出力を安定させるには光源波長を波長変換素子の許容度内に固定する技術が重要となる。
【0003】
この問題を解決する方法として、固体レーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ等のレーザ媒質に光帰還をかける方法が提案されている。レーザ媒質の発振波長は外部からの光帰還により制御可能であり、レーザの発振波長を波長変換素子の位相整合波長に制御可能である。たとえば、非特許文献1に示したように狭帯域の波長選択フィルターやファイバーグレーティングで半導体レーザの出射光を波長選択した後、半導体レーザの共振器内に帰還することで、半導体レーザの発振波長を固定できる。非特許文献2に示したように、外部グレーティングにより外部から光を返すことで、半導体レーザの発振波長を制御する方法が提案されている。図16は、従来のコヒーレント光源の例を示したもので、バンドパスフィルターを用いて、半導体レーザに光フィードバックをかけて、バンドパスフィルターの透過波長に半導体レーザの発振波長を固定しているものである。ダイクロイックミラーは高調波を全反射、基本波を透過する特性を有し、バンドパスフィルター504は基本波の選択された波長のみを透過する構成となっている。半導体レーザ501から出た基本波は集光光学系502で集光され波長変換素子503に入射する。波長変換素子により基本波の一部は高調波に変換されコリメートレンズを通った高調波はダイクロイックミラー505により波長分離され、高調波として外部に取り出される。一方、波長変換素子から出射した基本波は、コリメートレンズ510を通った後、ダイクロイックミラー505を通過しバンドパスフィルター504により特定波長に選択される。その後、基本波は、ミラー513により反射されて、同じ経路を逆行して半導体レーザ501の活性層内に帰還する。半導体レーザの活性層内では、帰還波長のパワーが増大するため、共振器内における帰還波長の光のロスが見かけ上低減するため、発振波長が帰還波長に固定される。バンドパスフィルターの角度を調整することで、透過波長を制御することができるため、半導体レーザの発振波長を波長変換素子の位相整合波長に調整して、高効率の波長変換が可能となる。
【特許文献1】特開平10−186427号公報
【特許文献2】特開平06−102552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ媒質の発振波長は光フィードバックによって制御可能である。しかしながら、波長変換素子の位相整合波長の許容度が一般的に狭いため、正確に制御するのが非常に難しい。さらに、外部環境の変化により波長変換素子に位相整合波長や、外部フィードバックの光の波長が変動することで、従来の方法として、波長変換素子から出射された光をダイクロイックミラーで基本波と分離し、基本波をバンドパスフィルターまたはグレーティング素子により波長選択した後半導体レーザに帰還する方法が提案されている。しかしながら、従来の方法では、外部環境の変化による出力変動は避けられず、安定出力を得るには、外部環境の変化をフィードバックして出力を安定化させる必要があった。また使用可能な温度範囲が限られるという問題があった。
【0005】
さらに、従来の構成では波長変換素子の精密な温度制御が必要であった。波長変換素子の位相整合波長は温度によって変化する。このため、安定な出力を得るには、波長変換素子の温度を精密にコントロールして、フィードバック波長からずれない状態に保つ必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコヒーレント光源は、レーザ媒質と、波長変換素子と、反射体と、を備えたコヒーレント光源において、前記レーザ媒質から出射された基本波は前記波長変換素子により高調波に変換され、前記基本波は、前記反射体に反射された後、前記レーザ媒質に入射し、前記基本波により前記レーザ媒質の発振波長が固定されているコヒーレント光源である。
【0007】
また、本発明の請求項6に係るコヒーレント光源は、レーザ媒質と、波長変換素子と、反射体と、を備えたコヒーレント光源において、前記レーザ媒質から出射された基本波は前記波長変換素子により高調波に変換され、前記高調波は前記反射体により反射された後、前記波長変換素子に再度入射することによって再び基本波に変換され、前記変換された基本波が、前記レーザ媒質に入射しているコヒーレント光源である。
【0008】
また、本発明の請求項7に係るコヒーレント光源は、レーザ媒質と、波長変換素子と、波長選択ミラーと、を備えたコヒーレント光源において、前記レーザ媒質から出射した第1の基本波は前記波長変換素子に入射し、前記第1の基本波の一部が前記波長変換素子により高調波に波長変換され、前記波長変換素子から出射された第1の基本波と高調波は前記波長選択ミラーにより分離された後、前記高調波のみが前記波長変換素子に再度入射し、前記高調波の一部は、前記波長変換素子により第2の基本波に変換された後、前記レーザ媒質に入射し、前記レーザ媒質の発振波長が、入射した第2の基本波の波長に固定されているコヒーレント光源である。
【0009】
また、本発明の請求項8に係るコヒーレント光源は、レーザ媒質と、波長変換素子と、共振器と、を備えたコヒーレント光源において、前記波長変換素子を前記共振器内に設置し、前記レーザ媒質からの第1の基本波の一部は前記波長変換素子により高調波に変換され、前記共振器は、前記高調波に対して共振条件を満足し、前記共振器内で、前記第1の基本波と前記高調波の差周波発生により第2の基本波が発生し、前記第2の基本波が前記レーザ媒質に入射し、前記レーザ媒質の発振波長が、入射した第2の基本波の波長に固定されているコヒーレント光源である。
【0010】
また、本発明の請求項25に係るコヒーレント光源は、上記何れかのコヒーレント光源と画像変換光学系とを有し、前記コヒーレント光源からの光を前記光学系により2次元画像に変換する光学装置である。
【発明の効果】
【0011】
レーザ媒質から発振された基本波を波長変換素子の位相整合波長に自動的に固定し、外部の温度変化等対しても安定な出力が得られるコヒーレント光源を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、レーザ媒質からのコヒーレント光源を波長変換素子で変換する構成において、波長変換素子の位相整合波長と前記コヒーレント光源の発振波長を自動的に一致させ、コヒーレント光源の出力安定化の機構を提案するものである。
【0013】
レーザ媒質は、外部から特定波長のコヒーレント光を媒質内に帰還することで、発振波長を帰還光の波長に固定することが可能である。外部からの帰還波長を波長変換素子の位相整合波長と一致させることで、レーザ媒質の発振波長を波長変換素子に位相整合波長に固定することが可能となる。
【0014】
レーザ媒質への帰還波長を波長変換素子の位相整合波長とを物理的に相関させるには、いくつかの方法がある。
【0015】
第1は、位相整合の波長依存性を変調することで、基本波の特定波長における帰還光量を増大させて、レーザ媒質の発振波長を固定する方法である。
【0016】
第2の方法は、非線形光学効果において、波長変換素子による高調波発生とさらに発生した高調波を再び基本波に変換する逆過程を利用し、逆過程により発生した基本波を選択的にレーザ媒質に帰還することで、その発振波長を帰還した基本波に固定する構成である。帰還する基本波の強度は波長変換された高調波の強度に依存するため、高調波発生が最大となる状態でレーザ媒質への帰還光強度が最大となる。これによって、高調波出力が最大となる状態にレーザ媒質の発振波長が固定される。これを利用することで、レーザ媒質の発振波長を自動的に高調波発生の最適波長に固定することが可能となる。この現象を利用すれば、レーザ媒質の発振波長が自動的に波長変換素子の変換の最適波長に固定され安定したコヒーレント光源が実現できる。外部の温度等の変化が生じても、常に高調波出力が最大となる波長にレーザ媒質の発振波長が調整されるため、安定した出力が得られる。
【0017】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明のコヒーレント光源の構成図である。レーザ媒質1として半導体増幅器を用いる。レーザ媒質1の片端面は反射膜が形成され、出射側は反射防止膜が形成されている。レーザ媒質1から出た基本波2はレンズ6により波長変換素子3内に集光され、その一部は波長変換により高調波4に変換される。波長変換素子3から出た基本波2と高調波4はレンズ7により波長選択ミラー5の表面に集光される。波長選択ミラー5は基本波を反射し、高調波4を透過する。波長選択ミラー5により選択的に反射された基本波2は同じ経路を通って、レーザ媒質1に帰還する。レーザ媒質1内では、帰還波長の光の強度が強くなるため、レーザ媒質1は帰還光の波長に固定される。本発明の特長は、レーザ媒質1の発振波長が波長変換素子3の位相整合波長(変換波長)の最適な状態に固定される点である。波長変換素子3での高調波出力が最大となる状態にレーザの発振波長が固定される。この結果、本発明のコヒーレント光源は、レーザ媒質1の発振波長を調整することなく、自動的に波長変換素子3の位相整合波長に固定される。
【0018】
本発明の方式としては、変換効率の波長依存性を図1(b)に示すように、波長変換素子3の位相整合特性を変換効率が最大となる近傍で2ピークを有するように設計する。高調波4と基本波2はエネルギー保存の法則が成立するので、変換効率が低くなり高調波成分が減少すると基本波成分は増大する。従って、変換効率の最大値近傍での波長と高調波出力、基本波出力の関係は図1(b)に示すようになり、基本波2の出力は、変換効率の最大値近傍でピークを有する。この基本波2を反射してレーザ媒質1に帰還すると、変換効率が最大となるピーク近傍でレーザ発振が固定される。従って、外部の温度変化等により位相整合波長が変動しても自動的に、基本波2のフィードバックが最大となる点。即ち、基本波2のピーク位置でレーザ媒質1の発振波長が固定されているため、安定した出力が得られた。実験では、外部温度の変化10℃から80℃に変化した場合、波長変換素子3のみの温度が変化した場合、レーザ媒質1のみの温度が変化した場合等について測定したが、高調波出力の変動は最大±5%以下に抑えられ、温度変化に対して非常に安定な特性を示した。
【0019】
図1(b)に示す位相整合特性を有する波長変換素子3を設計するのは、周期状の分極反転構造からなる波長変換素子3では比較的容易である。通常の分極反転構造は、単一周期構造であり、この場合、位相整合特性はシングルピークの変換効率特性となる。位相整合特性を制御する場合、この周期構造を伝搬方向に渡り変調することで位相整合特性を設計できる。図1(b)の設計では、伝搬方向に分極反転の周期構造を7分割し、伝搬方向に渡り、周期が異なる部分を作製することで、実現している。分極反転の領域を分割し、それぞれ異なる周期構造を作りつけることでも任意の位相整合特性が実現できる。また、バルクの結晶の場合は、2つ以上に結晶を僅かに位相整合条件が異なる状態で張り合わせ、かつ結晶間に位相制御部分を設けることで位相整合特性を設計できる。
【0020】
なお、位相整合特性としては、最大値近傍で複数のピークを有する設計でも利用可能である。ピーク間で出力安定化を図ることができる。ただし、変換効率のロスを考えると2ピークの位相整合特性が最も高効率の波長変換が行えるので好ましい。
【0021】
また、初期条件として位相整合特性の2ピーク間に位相整合波長を調整する必要がある。最初の調整後は、自動的にピーク間に波長は固定されるが、初期状態としての調整作業が必要となる。この方法としては、実施の形態4で説明するが、グレーティングや狭帯域フィルター等を用いて、外部から選択波長をフィードバックすることで、レーザの発振波長を制御する。これによって、位相整合波長を2つのピーク波長の中間に持ってくることで、位相整合の初期条件を満足することが可能となる。
【0022】
(実施の形態2)
図2を用いて、本発明の他の方法について説明する。
【0023】
レーザ媒質1の片端面は反射膜が形成され、出射側は反射防止膜が形成されている。レーザ媒質1から出た基本波2はレンズ6により波長変換素子3内に集光され、その一部は波長変換により高調波4に変換される。波長変換素子3から出た基本波2と高調波4は反射体21に入射する。反射体は非線形光学材料からなり、基本波2と高調波4の和周波として、反対方向に伝搬する第2の基本波22を発生する。第2の基本波22は同じ経路を通って、レーザ媒質1に帰還する。レーザ媒質1内では、帰還波長の光の強度が強くなるため、レーザ媒質1は第2の基本波22の波長に固定される。本発明の特長は、レーザ媒質1の発振波長が波長変換素子3の位相整合波長(変換波長)の最適な状態に固定される点である。波長変換素子3での高調波出力が最大となる状態にレーザの発振波長が固定される。この結果、本発明のコヒーレント光源は、レーザ媒質1の発振波長を調整することなく、自動的に波長変換素子3の位相整合波長に固定される。
【0024】
反射体21は、進行方向の基本波2と高調波4の和周波として、逆方向に伝搬する基本波2を発生する非線形材料である。位相の不整合量は4πn/λであり、大きな位相不整合を補償する必要がある。例えば、周期状の分極反転構造で位相不整合を補償するばあい。基本波2の波長を1.064μm、非線形光学結晶をMgO:LiNbO3、とすると1次の周期構造で0.24μm程度の周期が必要となる。5次の周期構造ならば1.2μm程度であり周期構造の形成は可能である。変換効率は1/25程度になるが、数Wの基本波2および高調波4の入力で数10mW程度の第2の高調波発生が可能となる。この反射方式によりレーザ媒質1の発振波長を高調波4の位相整合波長に固定することが可能となった。
【0025】
なお、波長変換素子3と反射体21をモノリシックに形成することも可能である。それぞれの光に位相整合する非線形光学結晶を接合することでモノリシック化が可能である。また周期状の分極反転構造の場合、分極反転周期を場所によって変えることで、対応できる。
【0026】
(実施の形態3)
図3は本発明のコヒーレント光源の構成図である。レーザ媒質101として半導体増幅器を用いる。レーザ媒質101の片端面は反射膜が形成され、出射側は反射防止膜が形成されている。レーザ媒質101から出た第1の基本波102はレンズ91により波長変換素子103内に集光され、その一部は波長変換により高調波104に変換される。波長変換素子103から出た第1の基本波102と高調波104はレンズ92により波長選択ミラー105の表面に集光される。波長選択ミラー105は基本波102をほぼ100%透過し、高調波104を反射する。高調波104の反射率については後述するが、使用目的、構成により異なる。波長選択ミラー105により選択的に反射された高調波104はレンズ92を通って波長変換素子103内に再び入射し、波長変換素子103により第2の基本波106に変換される。第2の基本波106はレーザ媒質101に帰還し、レーザ媒質101を励起するため、レーザ媒質101は帰還光の波長に固定される。本発明の特長は、レーザ媒質101の発振波長が波長変換素子103の位相整合波長(変換波長)の最適な状態に固定される点である。波長変換素子103での高調波出力が最大となる状態にレーザの発振波長が固定される。この結果、本発明のコヒーレント光源は、レーザ媒質101の発振波長を調整することなく、自動的に波長変換素子103の位相整合波長に固定される。
【0027】
次に、本発明のコヒーレント光源の詳細について説明する。
【0028】
最初にレーザ媒質101について述べる。レーザ媒質101には、広い発振波長域に渡るゲインが必要である。波長変換素子103の位相整合波長が変化した場合や、波長変換素子103の固体バラツキが生じても、レーザ媒質101の発振波長域が広ければ、位相整合条件に合った波長で発振するからである。この様な広い波長範囲に渡って利得を有するレーザ媒質101としては、半導体増幅器、ファイバーレーザ等がある。半導体増幅器は電流によって励起し、ファイバーレーザはポンプ光源によって励起される。Ybドープのファイバーレーザは特に広い波長域に渡って発振利得を有する。レーザ媒質101に求められる広帯域の利得特性であるが、あまりに広い場合には問題が生じる。レーザ媒質101から出射された第1の基本波102は波長変換素子103により高調波104に変換され、高調波104はさらに第2の基本波106に変換される。非線形光学効果を利用した高調波発生は、低パワーの光に対して変換効率は低くなる。レーザ媒質101からの第1の基本波102の発振スペクトルが広がっている場合には、高調波104への変換効率が小さくなり、帰還する第2の基本波106への変換効率はさらに低下する。このため、レーザ媒質101へ帰還する第2の基本波106の強度が十分とれなくなりレーザ媒質101の発振波長を光フィードバックにより固定するのが難しくなる。スペクトルが広がることで発生するもう一つの問題は、発生する高調波104のモードが複数存在することである。バルクの空間モードとして基本モード以外に高次のモードが存在する。このため、変換される高調波104が波長の異なる複数のモードとして存在する。複数の異なる波長の高調波104が発生するとレーザ媒質101に帰還する第2の基本波106が複数の異なる波長で存在するため、レーザ媒質101が安定した発振が出来なくなる。この様な問題を解決するには、レーザ媒質101の利得波長領域としては1nm〜10nm程度が好ましい。10nm以上に広がると変換効率の低下や複数の高調波モードの発生が生じる。2nm以上にすれば、波長変換素子103の温度を±10℃程度の範囲に安定化させることで出力安定化が図れる。±10℃は非常に緩い温度制御であり、簡易な温度制御機能で安定化が可能となる。
【0029】
一方、レーザ媒質101の利得波長領域を限定する方法としては、レーザ媒質101内にDBRグレーティングを形成し、グレーティングの反射波長をグレーティング構造により調整することで実現できる。その他、多層膜フィルター等でも実現できる。レーザ媒質101の片端面に形成する反射膜の反射波長域を調整することでレーザ媒質の発振波長域を限定できる。
【0030】
波長変換素子103の位相整合波長の許容度は変換効率特性に影響を与える。レーザ媒質101の発振波長へ波長変換素子103の位相整合波長に固定されるが、発振波長のスペクトル幅は波長変換素子103の位相整合許容幅に狭帯域化される。発振波長スペクトルが狭帯域化するとスペクトルのピーク強度が強くなるため、波長変換素子103の変換効率が増大する。その結果高出力変換が可能となる。一般的な波長変換素子の使われ方は安定出力を得るために波長許容度の広い波長変換素子が好まれる。これに対して、本発明の構成では、出力安定化は自動的に図られるため、本発明の構成において高効率変換が可能な狭帯域の位相整合許容度が好まれる。具体的には、波長許容度として1nm以下が望ましく。さらに望ましくは0.2nm以下の波長許容度が好ましい。その理由は、本発明の構成では、レーザ媒質101の発振波長は最終的には波長変換素子103の位相整合許容度内に限定される。レーザ媒質101が波長変換素子103の変換波長でフィードバックを受けるからである。波長変換素子103の変換効率はレーザ媒質101からの基本波のピークパワーに依存する。このため波長変換素子103の位相整合波長が狭いほど、基本波の発振スペクトルが狭帯域化し位相整合許容度内のピークパワーが増大する。このため、波長変換素子103の位相整合許容度を狭帯域化することで波長変換素子103に高効率化が図れ、コヒーレント光源の高効率化が可能となる。位相整合波長の許容度としては、少なくとも1nm以下が好ましい。さらに好ましくは0.2nm以下が望ましい。0.2nm以下にすることで、高効率の波長変換が可能となる。また、発振する高調波104のスペクトルが狭帯域化することで光のコヒーレンスが良くなるという利点も有する。1nm以上になると、変換効率の低下が顕著になる。このためには、擬似位相整合型の波長変換素子103としては、素子長5mm以上が必要となる。望ましくは10mm以上の素子長で、狭帯域特性と高効率特性を実現することがより好ましい。
【0031】
また、波長変換素子103の高調波104の変換効率は高効率特性が必要となる。前述したように、基本波を高調波104に変換し、さらに基本波に逆変換した光をレーザ媒質101に帰還することで、レーザ媒質101の発振波長を固定する。このためには、高効率の波長変換素子103が必要となる。変換効率が低い素子では十分な光フィードバックが得られないため、安定した出力が得られない。変換効率としては10%以上が必要となる。10%以上の変換効率でも帰還する光は0.1%以下となる。このため、高効率の波長変換が必要である。また、波長λの基本波を波長λ/2の高調波104に変換する波長変換素子103を用いて、その逆変換により高調波104を基本波に変換する場合、パラメトリック効果を利用した波長変換を行う。パラメトリック変換の場合λ/2の光をλ+Δλとλ―Δλのアイドラー光とシグナル光に変換する。λをλ/2の第2高調波に変換する波長変換素子103を用いて、λ/2の光をλの光に変換する場合のパラメトリック変換のアイドラー光、シグナル光は縮退しており、位相整合条件が成立する波長範囲が非常に広くなる。このため、パラメトリック変換により発生する第2の基本波106は広い波長スペクトルを有し、かつ非常に低い変換効率となる。しかしながら、本発明の構成で、従来と異なるのは同じ光軸において第1の基本波102が存在する点である。進行方向で第1の基本波102(波長λ)の光を高調波104(波長λ/2)に変換し、後進行方向で高調波104(波長λ/2)の光を第2の基本波106(波長λ)に変換する。2つの変換は同軸で行われ、同軸方向に第1の基本波λが高いパワー密度で存在する状態で後進方向の第2の基本波106を発生させる。このため第1の基本波102の微量な反射と高調波104の相互作用で効率よくパラメトリック変換が行われ、第2の基本波106を効率よく発生することが可能となる。さらに、周期的な分極反転構造を用いた波長変換素子103を用いるとさらに高効率化が可能となる。分極反転周期においては、高い非線形光学定数が利用できることと、分極の境界部分に僅かな屈折率差が存在するため、基本波の微少な反射が存在し、より高効率な第2の基本波106の発生が可能となる。
【0032】
高効率変換と狭帯域の位相整合特性が実現可能な波長変換素子としては、周期的な分極反転構造を利用した擬似位相整合型の波長変換素子がある。擬似位相整合型の波長変換素子はウォークオフが無いため、素子長の増大による高効率化が可能であり、素子長の増大により波長許容度を狭帯域化できる。また高い非線形定数を有するLiNbO、LiTaO、KTiOPO材料、MgをドープLiNbO、LiTaO材料、ストイキオメトリック構造のこれらの材料が利用できるため、高効率変換が可能である。本構成においては、擬似位相整合型の波長変換素子が好ましい。
【0033】
波長選択ミラー105とレーザ媒質101の出射端は共にレンズの集光点となっており、共焦点関係にある。このため、波長変換素子103により再変換された基本波は高効率でレーザ媒質へ帰還する。レーザ媒質101への帰還が高効率で行われることで、レーザ媒質101の発振波長を波長変換素子103の変換波長に効率よく固定することが可能となる。
【0034】
本発明の構成として、バルク型の波長変換素子103を用いているが、バルク型の波長変換素子103の変換効率は、基本波のビーム品質に依存する。ビーム品質はM表されるが、Mが1の場合に理想的なガウシアンビームである。Mが増大すると共にビーム品質が劣化し、ビームを集光光学系で集光したときに良好な集光特性が得られなくなるため、波長変換素子103の変換効率が劣化する。高効率の波長変換を得るためにはM<2が望ましい。M2が2以上になると波長変換素子103の変換効率は半分以下になる。高効率化にはM<2のビーム品質が必要であり、そのためには、レーザ媒質101が重要となる。レーザ媒質101としてはドープファイバーを用いれば、高出力化と高いビーム品質が実現できる。その他のレーザ媒質101としては、半導体アンプがある。半導体アンプは半導体レーザ媒質の端面反射率を0に近くして光アンプとして利用するものである。半導体アンプを用いる場合はM2を低減するために横モードをシングルモードに近い状態で発振させる必要がある。
【0035】
(実施の形態4)
本発明のもう一つのポイントは、ファイバーレーザを利用する点にある。
【0036】
波長変換素子の変換効率は基本波の入射パワーに比例する。一般的に非線形効果を利用した波長変換素子の変換効率はW以下の基本波に対しては、低い変換効率しか得られない。このため、高効率の波長変換を必要とする本発明の構成においては、高出力のレーザ媒質が必要となる。さらに、波長変換素子の高効率化には、レーザ光源のビーム品質が重要となる。回折限界に近い集光が可能なビーム品質の光源により高効率変換が可能となる。これらの特性を満足するレーザ媒質として、ドープファイバーによるファイバーレーザがある。ファイバーレーザは横モードシングルであるMが1に近い理想的なビーム品質を実現できる。さらに高出力化として数100Wの出力が得られている。さらに利得波長領域も数10nmある。最近、高出力のファイバーレーザとして注目されているのがYbドープのファイバーである。Ybドープファイバーは、吸収波長域が広く、ポンプ光源の波長変動に対しても安定した出力が得られる。さらに、出力利得が得られる波長域が広いため、外部フィードバックにより広い波長域に渡る波長出力が可能である。本発明の構成ではレーザ媒質の発振波長を波長変換素子の変換波長に自動的にチューニングすることを目的としているため、外部温度の変化や個体ばらつきにより波長変換素子の位相整合波長が変化または、ばらついた場合でも、位相整合波長を十分カバーできる利得波長域を有するレーザ媒質が必要となる。この問題に対してYbドープのファイバーは適している。高出力化が可能な理由として、ファイバー構造によるものも大きい。高出力化が容易なファイバーレーザの構成としては、クラッド励起のファイバー構成がある、ファイバーの励起光をファイバークラッドを導入することで、マルチストライプレーザとの結合を容易にする。Ybがドープされているのはファイバーのコア部分で、クラッド部で励起光を吸収してレーザ発振する。クラッドファイバーを利用することで励起光との高効率結合が可能となる。さらにコア部分の断面積を大きくするために、フォトニック構造が利用されている。エアクラッド構造をとることで、強い閉じ込めを実現できる。波長変換素子の高効率化には、ファイバーに偏光特性を持たせる必要がある。通常の波長変換素子は非線形光学結晶を利用するため、変換効率は結晶軸依存性をもち、単一偏光の光に対して高効率変換が得られる。単一偏光にするには、ファイバーに偏光依存性を持たせる必要がある。ファイバー内で偏光方向が変化すると、波長変換素子の変換効率が変化し出力が不安定になるからである。偏波保存ファイバーを用いて単一偏光にすることで、波長変換素子の出力安定化が図れる。さらに、本発明の構成に偏波保存ファイバーを用いることで高効率化が図れる。偏波保存ファイバーは、偏光方向が2つ存在するため、レーザ媒質にした場合には2つの偏光方向がそれぞれ発振する。波長変換素子は単一偏光のみ波長変換可能なので、他の偏光の光は変換できず、変換効率が低下する。そこで、偏波保持ファイバーの一方の偏光軸と波長変換素子の波長変換が可能な偏光軸が一致するように固定する。波長変換素子により変換された基本波は再変換された後、同じ偏光方向でファイバーに入射する。ファイバーでは帰還のある光のパワー密度が増大するので、帰還した偏光の光が選択的に励振される。結果的に、高効率変換が可能な偏光軸の光が選択的に励振されるようになる。本発明の構成を用いれば、レーザ媒質の波長および偏光方向を波長変換素子が高効率変換できる状態に自動的に調整することが可能となる。
【0037】
なお、ファイバーにドープする金属としては、Yb、Pr、Cr、Er、Nd、Ti、V、Hoイオン、またはこれらの混合がよい。特にYbと混合することで吸収波長領域が拡大できるためポンプ光の波長許容度がひろがり安定した励起が可能となる。さらに、Ti、CrイオンまたはYbとの混合イオンをドープすることで900nm前後での発振が可能となる。900nm程度の光を波長変換することで青色光発生が可能となるためさらに有効である。
【0038】
(実施の形態5)
上記構成において、実施の形態1、2の構成で波長変換素子の位相整合条件にレーザ媒質の発振波長を自動的に固定する方法について説明した。ここでは、高調波を効率よく取り出す方法について述べる。図3の構成でも高調波104を取り出すことは、可能である。図3において、波長選択ミラー105における高調波104の反射率を100%以下にすると、波長選択ミラー105を透過した高調波104を外部に取り出せる。また、ファイバーに入射した高調波104をレーザ媒質101の反対側の端面より取り出すことも可能である。この場合、ファイバーの端面に基本波を反射し、高調波104を透過する誘電体多層膜を形成する必要がある。
【0039】
その他の取り出し方法として、図4に示す構成を提案する。図4においては、レーザ媒質101から出た第1の基本波102をレンズ系によって波長変換素子103に集光するが、この集光光学系に第2の波長選択ミラー107を挿入する。第2の波長選択ミラー107は基本波を透過し、高調波104を反射するように設計する。その他の構成は図3の構成と同じである。波長変換素子103により再変換された第2の基本波106と高調波104は、波長選択ミラー107で分離され、高調波104は効率よく外部に取り出される。
【0040】
図5は、波長分離フィルターの代わりに、偏光分離プリズム108とλ/2板109を用いた構成である。レーザ媒質101から出た光は、偏光プリズム108でP偏光とS偏光に分離され、S偏光のみプリズム108を透過する。λ/2板109を通った基本波はP偏光になり、波長変換素子103(P偏光の光を変換するように設定)によりその一部がP偏光の高調波104に変換される。波長選択ミラー105によって反射された高調波104は波長変換素子103により第2の基本波106に変換される。ここでは、第2の基本波106、高調波104はP偏光である。2つの光がλ/2板109を透過すると基本波はS偏光に、高調波104は波長が基本波の半分なので、P偏光に変換される。このため、偏光プリズム108によって、高調波104は反射されて外部に取り出され、基本波は偏光プリズム108を透過してレーザ媒質101に入射する。偏光を利用することで、光の透過ロスを低減できる。また、レーザ媒質101への再入射する基本波の偏光の分離比を高めることができるため、より効率の高い変換が可能となる。
【0041】
次に、本発明の構成における波長変換素子の変換効率と、取り出し出力の関係について述べる。最初に図3の構成において高調波出力を安定に取り出す条件について図7を用いて説明する。図3の構成において高調波を取り出す方法としては、2通りある。第1の方法は、図7(a)に示すように、波長選択ミラー105において、高調波104の透過率を上げることで、発生した高調波104を取り出せる。第2の方法は、レーザ媒質101の出射面と反対側の端面において、高調波104の反射率を下げることで取り出すことができる。この場合は、波長選択ミラー105の高調波104の反射率は100%近い特性が望ましい。ここでは、第1の方法について詳しく説明する。図7(a)は図3と同じ構成であり、SHGおよび基本波の流れを示している。レーザ媒質101から出力した第1の基本波102はP1のパワーを有する。P1は波長変換素子103によりパワーSHG1の高調波104に変換される。波長変換素子103の変換効率はSHG1/P1である。波長選択ミラー105は基本波をほぼ100%透過、高調波104を特定の反射率で反射する。波長選択ミラー105を透過した高調波104は外部に取り出され、パワーSHG2を有する。反射された高調波104は波長変換素子103により第2の基本波106に変換される。変換された基本波はパワーP2をする。ここでは高調波104として第2高調波(以下SHG)について説明する。波長選択ミラー105におけるSHGの透過率を調整すれば、第2高調波を取り出すことができる。この場合、本発明のコヒーレント光源が機能するためには、レーザ媒質101に帰還する基本波の効率が重要である。レーザ媒質101に帰還する第2の基本波106により発振波長が固定されるには、出射した光に対する帰還した光の割合であるフィードバック効率(P2/P1)が1%以上なければならない。さらに、安定した出力を得るにはフィードバック効率の値が5%以上必要である。
【0042】
図7(a)の構成において、波長選択ミラー105における高調波104の反射率に対する、SHGの変換効率(SHG1/P1)の関係をフィードバック効率(P2/P1)が1%、5%に対してそれぞれ計算したのが図7(b)である。反射率が低いほど、SHG光の取り出し効率が高くなるが、図7(b)から分かるように、反射率を低くするとSHG素子に要求される変換効率が大幅に増大する。反射率が10%以下の反射率ではフィードバックが十分かからなくなる。フィードバックの最低値である1%以上の値を得るには反射率は10%以上、安定した出力を得る5%のフィードバック効率を得るには20%以上の反射率が必要となる。実際には、波長変換素子103の変換効率は100%を得るのは難しく、再現性よく、安定な波長変換が行える変換効率としては60%程度である。このため、最小のフィードバック効率1%を得るためには約20%以上の反射率が必要であり、安定した出力を得るには約40%以上の反射率が必要となる。一方、図7(a)の構成において取り出せるSHG出力の効率:出力効率(SHG2/P1)の値は、波長選択フィルターの透過率によって限定される。出力効率を高めるには波長選択ミラー105における高調波104の透過率をできるだけ高く設定するのが好ましい(反射率は出来るだけ低く)。反射率が80%以上になると取り出し効率は20%以下に低下する。従って、波長選択ミラー105の高調波104の反射率は20%以上、80%以下が好ましく、さらに出力安定化を実現するには、40%以上80%以下が好ましい。高効率と安定性を両立するには、40%〜50%の範囲で使用するのが良い。
【0043】
図8(a)は高調波104の反射率が40%の波長選択ミラー105を用いた場合の出力効率(SHG2/P1)、フィードバック効率(P2/P1)と変換効率(SHG1/P1)の関係を求めたものである。フィードバック効率としては最低でも1%、安定した出力を得るには5%必要である。5%のフィードバック効率を得るには、変換効率は60%以上が必要である。このときの出力効率は約36%である。
【0044】
図8(b)は、実際の波長変換素子103の特性と比較したものである。高効率変換が可能なMgドープLiNbOを用いた周期分極反転構造により波長変換素子103を実現した。位相整合波長1060nm程度であり、SHGとして530nmの緑色光を得る場合、SHG素子の変換効率は素子長10mmの場合で3.5%/W程度である。この素子を用いた場合の基本波入力とSHG出力、フィードバック効率の関係を求めたのが図8(b)である。基本波入力が30Wの時、SHG出力は約10W、フィードバック効率5%が得られる。フィードバック効率を得るためには30W以上の基本波で利用する必要がある。さらなるフィードバック効率の向上を実現するには、波長変換素子103の高効率化が必要である。波長変換素子103の変換効率を向上するには素子長の増大が必要であり、図7(a)の構成では素子長を10mm以上として利用するのが、望ましい。図7(b)に示したように、この構成においては、高効率の波長変換素子103が必要である。高効率化を実現するのは、波長変換素子103の変換効率と基本波のパワーである。SHGの変換効率は基本波パワーに依存するため基本波パワーの増大とともに、変換効率が増大する。素子長をL(mm)、基本波出力をP1(W)としたときに、P1×L>350となる条件を満足する必要がある。
【0045】
次に図4の構成でレーザ媒質101に基本波をフィードバックして波長安定化を図る構成について、図9を用いて説明する。図9(a)は図2と同じ構成であり、SHGおよび基本波の流れを示している。レーザ媒質101から出力した第1の基本波102はP1のパワーを有する。P1は波長変換素子103によりパワーSHG1の高調波104に変換される。波長変換素子103の変換効率はSHG1/P1である。波長選択ミラー105は基本波をほぼ100%透過、高調波104を100%反射する。反射された高調波104の一部は波長変換素子103により第2の基本波106に変換される。変換された基本波はパワーP2を有し、変換されなかった高調波104(パワーSHG2)は第2の波長選択ミラー107によって外部に出射される。図7の構成と異なる点は、大きなフィードバック効率が得られる点である。比較的低パワーの構成において有効である。しかしながら、出力効率は最適値があり、最大でも35%程度しか得られない。図9(b)は出力効率、フィードバック効率と変換効率の関係を表したものである。変換効率が50%程度となるところで、出力効率の最大値35%が得られる。このときのフィードバック効率は15%程度であり、安定した出力が得られるのに十分な値である。変換効率の値では35%以上の変換効率に対してフィードバック効率5%以上が得られる。フィードバック効率5%以上、出力効率30%を共に満足して、安定した高効率変換を実現するために、変換効率(SHG1/P1)を35%〜70%の範囲で利用するのが好ましい。さらに高効率化を実現するためには、40%〜60%の変換効率で使用するのがよい。70%以上の変換効率は、図9(b)から分かるように、変換効率が高すぎてフィードバック効率が高まり、出力効率(SHG2/P1)が低下してしまう。
【0046】
図9(c)は、実際の波長変換素子103の特性と比較したものである。高効率変換が可能なMgドープLiNbOを用いた周期分極反転構造により波長変換素子103を実現した。位相整合波長1060nm程度であり、SHGとして530nmの緑色光を得る場合、SHG素子の変換効率は素子長10mmの場合で3.5%/W程度である。この素子を用いた場合の基本波入力とSHG出力、フィードバック効率の関係を求めたのが図9(c)である。基本波のパワーP1が25W近傍で最大の出力効率35%程度が得られている。P1>13Wで5%以上のフィードバック効率が得られた。波長変換素子103の変換効率は素子長に比例するため、素子長をL(mm)、基本波パワーをP1(W)とすると、5%以上のフィードバック効率が得られる値としては、L×P1>130を満足する必要がある。また30%以上の出力効率と5%以上のフィードバック効率を実現し、安定した高効率特性を実現するためには、130<L×P1<400の条件を満足する必要がある。
【0047】
次に高出力特性を実現する場合について図10を用いて説明する。図9で説明したように、出力効率が最大となるのは、変換効率が50%程度のときである。変換効率が高すぎると出力効率は低下する。出力効率が最大(35%程度)となる場合の素子長とSHG出力の関係を求めたのが図8である。素子の規格化変換効率は3.5%/W・cmであり、MgO:LiNbO周期状分極反転を用いた。図から分かるように、高出力特性を高効率で実現するには、素子長Lを限定する必要がある。5W以上の出力を得るには、素子長を15mm以下にするのが好ましい。素子長を短くすることで、変換効率が50%となる基本波パワーを増大させ、高出力化が図れる。高出力化には素子長を短くして変換効率を低下するのが有効である。
【0048】
なお、上記式で用いた、Lの値は素子の規格化変換効率が3.5%/Wの場合である。素子特性が理想的な周期構造からずれていた場合や、MgO:LiNbO以外の材料、例えばLiTaO、KTiOPO、を用いた場合は異なってくる。用いた素子の規格化変換効率η(%/W・cm)に対してL=素子長*η/3.5の値を用いればいよい。ただし、実際の設計において、素子特性の劣化や、光学系の損失、素子内部の吸収散乱損失、アライメントのミスマッチ、光学系の設計等によりこれらの値は異なることがある。
【0049】
なお、高調波は第2高調波に限らず、第3高調波、第4高調波、和周波等でも同様の構成で、安定出力が取り出せる。
【0050】
なお、図9の構成で基本波のフィードバック効率を上げることで、レーザ媒質内での基本波のパワーを増大させることができるため、さらに高効率な波長変換が可能となる。そのためには、フィードバック効率を10%以上にするのがよい。
【0051】
なお、今回、説明した波長変換素子の変換効率はバルク型の波長変換素子であり、集光光学系を変換効率が最適になるように設計した場合である。具体的には、波長変換素子長をL、レーザ光の波長をλ、波長変換素子の屈折率を、素子内の集光スポットの半径をω0とした場合に、L=2.84×(2π*n*ω0^2/λ)の関係を満足するように、レンズ系を設計している。素子の変換効率は、レンズのNAを変える、レンズの収差、レーザ光の波面精度の劣化、等で低下するので、その場合は、補正が必要となる。補正はその系で得られた波長変換素子の規格化変換効率ηを用いて、前述したように、L=素子長*η/3.5の関係を満足するように、素子長を増大させればよい。
【0052】
さらに波長変換素子としては、シングルパスでの高効率変換が可能で、かつ基本波と高調波の波面が一致するノンクリティカルな条件での位相整合をとる必要がある。そのためには周期分極反転構造を利用した擬似位相整合素子が好ましい。擬似位相整合型の波長変換素子の中でも、高効率化が可能なのものとしては、LiNbO、KTiOPO、LiTaOが好ましい。なかでもMgをドープしたLiNbOは、高い非線形定数と高出力耐性に優れ、10Wの基本波に対して20〜30%の変換効率が得られるため、本発明の構成には非常に有効である。その他の非線形材料を用いた波長変換素子では数100W以上の基本波を必要とし、非常に大型の大出力光源の応用に限られる。また、高効率変換が可能であるという観点より高調波としては第2高調波が望ましい。第3高調波は変換効率が低いため、非常に高出力のレーザ媒質が必要となる。
【0053】
一方、レーザ媒質であるドープファイバーに帰還した第2の基本波でレーザ媒質の発振波長を固定するには、ファイバーの入射側の端面で基本波を反射させて、レーザ共振器を構成する必要がある。図6(a)に示すように、入射側の端面に誘電体反射膜402を形成して基本波を反射することで、レーザの発振効率を高め、波長変換素子の変換波長にレーザの発振波長を合わせることが可能となる。反射としては、図6(b)に示すように周期的なグレーティング構造によるブラッググレーティング403を用いることも可能である。ブラッググレーティングとしては、波長変換素子の位相整合波長の変動を考慮して数nm程度の広い波長で反射するように設計するのが好ましい。また図6(c)に示したように、ファイバーカップルによって複数のファイバーをドープファイバーにカップリングさせて、高出力の励起光を利用することで、高出力化が可能である。
【0054】
ファイバーのドープ材料としてはYbが好ましい。Ybドープファイバーは広い吸収波長域と、広い発振波長域を有しており、安定した出力特性が得られる。その他、Nd、Er、Cr、Tiイオンやこれらの混合ドープも有効である。
【0055】
なお、本実施の形態では、連続光(CW)の発生について説明したが、CW光の代わりにパルス光を利用することもできる。連続パルスを用いれば平均パワーに対してパルスのピークパワーを上げることが可能となるため、波長変換素子の変換効率を大幅に向上させることができる。ただし、連続パルス光を用いる場合は、レーザ媒質に入射する第2の基本波と、レーザ媒質から出力する第1の基本波の伝搬が一致するモードロック条件にレーザ媒質の共振器長を調整する必要がある。
【0056】
(実施の形態6)
ここでは、フィードバックによりレーザ媒質の発振波長を固定するフィードバックの初期条件について説明する。
【0057】
本発明の構成によりレーザ媒質を波長変換素子の位相整合条件に固定できる。しかしながら、レーザ媒質の発振波長が波長変換素子の位相整合波長に固定される、初期状態において十分な光帰還を得られない場合がある。初期状態においてレーザ媒質の発振波長を固定するフィードバックがかからないと、レーザ媒質が波長変換素子の位相整合波長に固定されないため、高出力な波長変換が実現しない。レーザ媒質の初期状態においては、その発振波長がフィードバックによる限定を受けないため、広いスペクトル領域に分布している。このため、波長変換素子の位相整合波長領域に存在するレーザ光は非常に微弱であり変換される高調波は非常に弱くなるため、十分なフィードバック効率が得られない。また、レーザ媒質の発振利得の波長域が広いほど変換される光は小さくなる。このような初期状態では、フィードバック効率が得られず、フィードバックが十分かかる安定状態に達しない。初期状態でフィードバックが僅かでもかかるとレーザ媒質の発振が固定され、さらに帰還する光の強度が増加し、強いフィードバックがかかる正のフィードバック帰還が実現する。しかし、初期状態で僅かでもフィードバックがかかる状態を実現するための、フィードバック効率が得られない可能性がある。この問題を解決するには、初期のフィードバック効率を高める必要がある。
【0058】
一つの方法は、レーザ媒質を位相整合波長近傍で発振波長領域狭帯域化し、初期状態でのパワー密度を上げて、フィードバック効率を向上させる方法である。レーザ媒質にブラッググレーティング等を形成し、レーザ発振の発振波長を数nm以下に限定することで、レーザスペクトルの広がりを限定して、初期のフィードバック条件を実現できる。波長変換素子の位相整合波長の温度特性は0.1nm/℃程度なので、±10℃の温度範囲での位相整合条件を満足するには2nm程度のレーザの利得波長領域を得られれば十分カバーできる。ファイバーレーザの場合、利得波長領域は40〜50nm程度存在する、図4に示すように、ファイバーグレーティングを付加することでレーザの発振波長領域を制御できる。2nm程度の利得領域はグレーティング構造を調整することで容易に実現できる。さらにグレーティングファイバーの材質を調整することでその温度特性を調整できる。波長変換素子の温度特性と整合させることで外部の温度変化が発生した場合でも位相整合波長とレーザ媒質の利得波長領域を一致させることが可能となる。その結果、2nm以上の発振利得波長領域があれば、±20℃程度の温度変化に対しても安定した出力が得られるため、温調フリーでも安定した出力が得られる。ファイバーグレーティングの反射波長領域を2nm程度に限定することで発振波長領域を2nm程度に限定し、フィードバックの初期状態を実現するフィードバック強度を実現できる。この場合、波長変換素子の位相整合波長領域をλ(SHG)、ブラッグ反射器の反射波長領域をλ(BR)とするとλ(SHG)<λ(BR)の関係を満足する必要がある。
【0059】
レーザ媒質の初期状態におけるフィードバック効率を向上させる他の方法として、図11に示す外部からのフィードバック方法を提案する。図11の構成は、図3の構成に波長選択機構を取り付けた構成である。
【0060】
波長選択ミラー105を透過した第1の基本波102は狭帯域フィルター701を透過した後ミラー702で反射され、狭帯域フィルター701を透過し、レーザ媒質101に帰還する。狭帯域フィルター701の透過波長を波長変換素子103の位相整合波長に調整することで、レーザ媒質101の発振波長を波長変換素子103の位相整合波長に固定することができる。これによって、波長変換素子103の変換効率が高まり、初期状態のフィードバック効率が満足されれば、フィードバック光の強度がさらに強くなる正のフィードバック帰還がかかり、レーザ媒質101の発振波長が波長変換素子103に位相整合波長に固定できる。
【0061】
波長変換素子103による変換光によるフードバックが十分レーザ媒質101に帰還していない初期状態では、波長変換素子103により波長変換される高調波104は非常に小さい、そのため、レーザ媒質101から出射される第1の基本波102はほとんど波長選択ミラー105を透過する。この様な状態では、レーザ媒質101への帰還光が微弱なためフィードバックがかからない。これを解決するのが、本構成である。波長選択ミラー105を透過した第1の基本波102を狭帯域フィルター701により波長選択した後、再び、レーザ媒質101に帰還することで、狭帯域フィルター701の透過波長にレーザ媒質の発振波長を限定できる。狭帯域フィルター701の透過波長はフィルターの角度で調整できる。レーザ媒質101の発振波長を波長変換素子103の位相整合波長に調整することで、波長変換素子103の変換効率が向上し、高調波出力が増大するため、フィードバックの初期条件が満足され、レーザ媒質101の発振波長が波長変換素子103の位相整合波長に固定され、さらに、レーザの発振状態が波長変換素子103の位相整合条件に整合するフィードバックがかかる。フィードバック効率が高くなれば、より強い波長変換が行われ、フィードバック光の強度が増大する正のフィードバックがかかるため、安定したフィードバック状態となり、出力が安定する。フィードバックがかかった後、波長選択機構は必要なくなるため、波長選択機構からの光の帰還を除去することも可能である。波長選択機構からの帰還が無くなれば、レーザ媒質101の発振は波長変換素子103のみにより限定されるため、波長変換素子103の位相整合状態が安定する。
【0062】
なお、本実施の形態では狭帯域フィルター701を用いて説明したが、その他、グレーティングや、ブラッググレーティングを用いた狭帯域な反射ミラー、ホログラムを利用したノッチフィルターも同様に利用できる。反射型の狭帯域な波長選択ミラーを用いて、選択した光をレーザ媒質に帰還することで、レーザの発振波長領域を限定しレーザ発振の初期条件を満足することができる。この場合は反射型フィルターの反射波長領域Δλ(BR)の条件としては、透過型フィルターと同様であり、波長変換素子の位相整合波長許容度Δλ(SHG)に対して、Δλ(BR)>Δλ(SHG)の関係を満足する必要がある。波長変換素子の許容度より広い波長領域でレーザ発振波長を限定することで、温度変化等による位相整合波長の変動に対しても安定した波長変換が可能となり出力が安定化する。
【0063】
なお、本実施の形態では図3の構成を用いて、波長選択機構の働きを説明したが、図1、図4、図5で示した、本発明の他の構成においても同様に利用できる。波長選択機構は、レーザ媒質の発振を波長変換素子の位相整合条件に一致させるフィードバックを実現するための、初期条件を満足するためのトリガーの役割を果たす。
【0064】
(実施の形態7)
ここでは、共振器構造を利用した構成について図12を用いて説明する。レーザ媒質201から出射された第1の基本波202はレンズ210によって集光される。波長変換素子203の端面には反射多層膜211が堆積されている反射多層膜211は基本波の透過率がほぼ100%で、高調波204の反射率がほぼ100%である。波長選択ミラー205は基本波の反射率を0.01%〜10%程度に、高調波204の反射率が90%以上に設計している。第1の基本波202は波長変換素子203に入射すると高調波204に変換される。波長変換素子は203反射多層膜211と波長選択ミラー205に挟まれており、高調波204に対して共振構造をとっているため、高調波204のパワー密度は共振器内で増大する。非線形材料にロスが内場合、90%の反射ミラーを用いれば、内部パワーは10倍に、99%の反射ミラーを用いれば、内部パワーは100倍に増大する。高調波204の一部は波長選択ミラー205を透過して外部に取り出される。共振器構造内でλ/2のパワー密度が増大した状態で、波長選択ミラー205で僅かに反射した第1の基本波202が存在すると高調波204との差周波発生により波長λの第2の基本波206が発生する。第2の基本波206は反射多層膜211を透過してレーザ媒質201に帰還する。これによってレーザ発振の波長を第2の基本波の波長に固定することが可能となる。共振器構造内での高調波のパワー密度が最大となるとき第2の基本波のパワーも最大となる。このため、レーザ媒質201の発振波長が波長変換素子203の変換波長に固定される。共振器構造を利用することで、第2の基本波202を効率よく発生することが可能となり、安定した出力が得られた。
【0065】
図13に示した構成でも共振器構造を利用した構成が実現できる。図13において、レーザ媒質301から出た第1の基本波302は波長変換素子303の端面に集光される。波長変換素子303には反射多層膜308が堆積されている。また反射多層膜308と波長選択ミラー305は、波長変換素子303を内部にもつ共振器構造となっている。反射多層膜308は基本波の透過率がほぼ100%、高調波304の反射率は90%以上に設計している。波長選択ミラー305は基本波の透過率が0.01%〜10%程度、高調波304の反射率がほぼ100%になっている。第1の基本波302の一部は波長変換素子303により高調波304に変換される。共振器構造により高調波304が共振状態になっており、共振器構造内で高調波304は高いパワー密度となっている。基本波は波長選択ミラー305で僅かに反射される。反射された基本波と共振器内の高調波304による差周波発生で、波長λの第2の基本波が306発生する。第2の基本波306は第2の波長選択ミラー307を透過してレーザ媒質301に帰還し、レーザ媒質301の発振波長を固定する。反射多層膜308は高調波304を僅かに透過するため、透過した高調波304は第2の波長選択ミラー307によって反射されて外部に取り出される。共振器構造により高効率で第2の基本波306を発生することが可能となり、安定した高調波出力が得られた。
【0066】
また、第2の基本波306を効率よくレーザ媒質301に機関するには、波長変換素子303を内部にもつ共振器構造としては、図12に示したように、入射部を平面、出射部を曲面ミラーの非対称な共振器構成が望ましい。レーザ媒質201からの第1の基本波202をレンズ210によって集光し、反射多層膜211面に集光すれば、レーザ媒質201と共振器の入射面が共焦点構造となる。このため、発生する第2の基本206を効率よくレーザ媒質201に入射することが可能となった。
【0067】
(実施の形態8)
ここでは、本発明のコヒーレント光源を用いた光学装置としてレーザディスプレイについて説明する。RGBレーザを用いれば、色再現性の高いディスプレイが実現できる。しかしながら、レーザ光源としては、赤色半導体レーザは高出力のものが開発されているが、青色に関しては高出力化が実現しておらず。緑色に関しては半導体レーザの形成が難しい。そこで波長変換を利用した緑および青色光源が必要となる。本発明のコヒーレント光源は外部の温度変化に影響されず安定した出力が得られるため、波長変換素子と組み合わせて高出力の青、緑色光が実現できる。青色出力としては900nm近傍の半導体レーザまたはファイバーレーザを波長変換して、450nm近傍の青色光を、緑色光としては1060〜1100nmの半導体レーザまたはファイバーレーザを波長変換して530〜550nmの緑色光を実現できる。図14においては、これらの光源を一体化し、2次元スイッチである液晶パネルにより画像変換して、スクリーン上に映像を投影するレーザディスプレイである。コヒーレント光源801から出射された光はコリメート光学系802、インテグレータ光学系803を通って、拡散板804を通過した後、液晶パネル805により画像変換され、投影レンズ807によりスクリーン806に投影される。拡散板は揺動機構により位置変動しており、スクリーン806上で発生するスペックルノイズを低減している。本発明のコヒーレント光源801は外部の温度変化に対しても安定した出力が得られるため、高出力で安定な映像が実現できた。また、高いビーム品質のため、光学系の設計を容易にし、小型化、簡素化が可能となった。
【0068】
なお、2次元スイッチとしては、液晶パネル以外にも、反射型液晶スイッチ、DMDミラー等の利用も可能である。
【0069】
レーザディスプレイ装置としては図15に示す方式も有効である。レーザ光904はミラー902、903で走査することによりスクリーン905上に2次元的な画像を描く。この場合にはレーザ光源に高速なスイッチ機能が必要である。本発明のコヒーレント光源は、高出力化が可能であり、出力安定化に優れる。温度制御素子なし、または簡易な温度制御によって、安定した出力が得られる。またビーム品質が高いため、走査光学系の小型化、簡素化が可能である。またビーム走査光学系としてはMEMSを利用した小型走査装置も利用できる。高いビーム品質は集光特性、コリメート特性に優れ、MEMS等の小型ミラーも利用可能となる。これによって、走査型のレーザディスプレイが実現できた。
【0070】
また、光学装置としては、レーザディスプレイについて説明したが、その他、光ディスク装置や、計測装置にも有効である。光ディスク装置では、書き込み速度の高速化によりレーザ出力の向上が求められている。さらに、レーザ光904には回折限界の集光特性が求められるため、シングルモード化は必須である。本発明の光源は高出力かつ、高いコヒーレンスを有するため、光ディスク等への応用にも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上述べたように、本発明のコヒーレント光源は、広い発振利得波長を有するレーザ媒質と波長変換素子を用い、波長変換素子により変換した高調波を、再度基本波に変換して、レーザ媒質内に帰還することで、波長変換素子の変換波長にレーザ媒質の発振波長を固定することができる。これによって、レーザ媒質の発振波長が自動的に波長変換素子の最適な変換状態に調整できるため、外部の変動に強い安定した高調波出力が得られるため、その実用効果は大きい。
【0072】
また、ファイバーレーザを用いた構成により高出力、高安定特性を実現できる。高いビーム品質の短波長光源が実現できるため、集光特性に優れ、コヒーレンスが高く、回折限界までの集光が可能となり、光ディスクやレーザ加工、光の回折を利用した計測装置、またシングルモード導波路を利用した各種光デバイスへの応用が可能となる。さらに、本発明の高出力レーザを波長変換素子と共に用いると、高出力特性を利用した高効率、高出力の短波長光源が実現できるため、その実用効果は大きい。
【0073】
さらに、このコヒーレント光源を用いれば、高出力の小型RGB光源が実現できるためレーザディスプレイをはじめ、光ディスク装置等各種の光学装置への応用が可能となり、その実用効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図5】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図6】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源に用いるレーザ媒質の一例を示す図
【図7】(a)本発明のコヒーレント光源の構成図(b)本発明のコヒーレント光源の特性要因図
【図8】本発明のコヒーレント光源の特性要因図
【図9】(a)本発明のコヒーレント光源の構成図(b)、(c)本発明のコヒーレント光源の特性要因図
【図10】本発明のコヒーレント光源の特性要因図
【図11】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図12】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図13】本発明の実施形態に係る他のコヒーレント光源の構成図の一例を示す図
【図14】本発明の実施形態に係る光学装置の構成図の一例を示す図
【図15】本発明の実施形態に係る光学装置の構成図の他の一例を示す図
【図16】従来のコヒーレント光源の構成図を示す図
【符号の説明】
【0075】
1 レーザ媒質
2 基本波
3 波長変換素子
4 高調波
5 波長選択ミラー
6 レンズ
7 レンズ
21 反射体
22 第2の基本波
91 レンズ
92 レンズ
101 レーザ媒質
102 第1の基本波
103 波長変換素子
104 高調波
105 波長選択ミラー
106 第2の基本波
107 第2の波長選択ミラー
108 偏光分離プリズム
109 λ/2板
201 レーザ媒質
202 第1の基本波
203 波長変換素子
204 高調波
205 波長選択ミラー
206 第2の基本波
210 レンズ
211 反射多層膜
301 レーザ媒質
302 第1の基本波
303 波長変換素子
304 高調波
305 波長選択ミラー
306 第2の基本波
307 第2の波長選択ミラー
308 反射多層膜
309 レンズ
401 ドープファイバー
402 誘電体反射膜
403 ブラッググレーティング
404 ファイバーカップル
501 半導体レーザ
502 集光光学系
503 波長変換素子
504 バンドパスフィルター
505 ダイクロイックミラー
510 コリメートレンズ
511 集光レンズ
512 高調波
513 ミラー
801 コヒーレント光源
802 コリメート光学系
803 インテグレータ光学系
804 拡散板
805 液晶パネル
806 スクリーン
807 投影レンズ
901 コヒーレント光源
902 ミラー
903 ミラー
904 レーザ光
905 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ媒質と、
波長変換素子と、
反射体と、を備えたコヒーレント光源において、
前記レーザ媒質から出射された基本波は前記波長変換素子により一部高調波に変換され、
前記波長変換素子を通過した基本波は、前記反射体に反射された後、
前記レーザ媒質に入射し、
前記基本波により前記レーザ媒質の発振波長が固定されているコヒーレント光源。
【請求項2】
前記波長変換素子における変換効率の波長依存性が、最大値近傍で2つ以上のピークを有しており、前記レーザ媒質の発振波長が、いずれかのピーク間の波長に固定されている請求項1記載のコヒーレント光源。
【請求項3】
前記反射体が、非線形光学結晶からなり、
前記反射体に入射した前記基本波と、前記高調波の和周波により、前記基本波と同じ波長で、かつ前記基本波と進行方向が逆の第2の基本波を発生し、
前記第2の基本波が前記レーザ媒質に入射している請求項1記載のコヒーレント光源。
【請求項4】
前記波長変換素子が周期状の分極反転構造を有し、前記分極反転構造が前記基本波の伝搬方向に渡って少なくとも一部の周期構造が変調されている請求項2または3記載のコヒーレント光源。
【請求項5】
前記波長変換素子が2つ以上のバルク結晶から構成されている請求項2または3記載のコヒーレント光源。
【請求項6】
レーザ媒質と、
波長変換素子と、
波長選択ミラーと、を備えたコヒーレント光源において、
前記レーザ媒質から出射された基本波は前記波長変換素子により高調波に変換され、
前記高調波は反射体により反射された後、前記波長変換素子に再度入射することによって再び基本波に変換され、
前記変換された基本波が、前記レーザ媒質に入射しているコヒーレント光源。
【請求項7】
レーザ媒質と、
波長変換素子と、
波長選択ミラーと、を備えたコヒーレント光源において、
前記レーザ媒質から出射した第1の基本波は前記波長変換素子に入射し、
前記第1の基本波の一部が前記波長変換素子により高調波に波長変換され、
前記波長変換素子から出射された第1の基本波と高調波は前記波長選択ミラーにより分離された後、前記高調波のみが前記波長変換素子に再度入射し、
前記高調波の一部は、前記波長変換素子により第2の基本波に変換された後、前記レーザ媒質に入射し、
前記レーザ媒質の発振波長が、入射した第2の基本波の波長に固定されているコヒーレント光源。
【請求項8】
レーザ媒質と、
波長変換素子と、
共振器と、を備えたコヒーレント光源において、
前記波長変換素子を前記共振器内に設置し、
前記レーザ媒質からの第1の基本波の一部は前記波長変換素子により高調波に変換され、
前記共振器は、前記高調波に対して共振条件を満足し、
前記共振器内で、前記第1の基本波と前記高調波の差周波発生により第2の基本波が発生し、前記第2の基本波が前記レーザ媒質に入射し、
前記レーザ媒質の発振波長が、入射した第2の基本波の波長に固定されているコヒーレント光源。
【請求項9】
さらに集光光学系を備え、
前記レーザ媒質の出射端面と前記波長選択ミラーが共焦点関係になっている請求項7記載のコヒーレント光源。
【請求項10】
さらに第2の波長選択ミラーを備え、
前記第2の波長選択ミラーは前記レーザ媒質と前記波長変換素子の間に設置され、
前記波長変換素子から出射した高調波と第2の基本波は前記第2の波長選択ミラーにより分離された後、前記第2の基本波が選択的に前記レーザ媒質に再入射している請求項7記載のコヒーレント光源。
【請求項11】
さらに偏光分離プリズムと基本波波長に対するλ/2板を備え、
前記レーザ媒質から出射した第1の基本波は、前記偏光分離プリズムを通った後、前記λ/2板を通過し、その後前記波長変換素子に入射し、
前記第1の基本波の一部が前記波長変換素子により高調波に波長変換され、
前記波長変換素子から出射された第1の基本波と高調波は前記波長選択ミラーにより分離された後、前記高調波のみが前記波長変換素子に再度入射し、
前記高調波の一部は、前記波長変換素子により第2の基本波に変換され、
前記第2の基本波と高調波は前記λ/2を通った後、前記偏光分離プリズムにより基本波と高調波に分離され、
前記基本波は、前記レーザ媒質に再度入射し、
前記レーザ媒質の発振波長が、入射した第2の基本波の波長に固定されている請求項7記載のコヒーレント光源。
【請求項12】
前記レーザ媒質の発振利得の波長範囲が2nm以上である請求項1〜11いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項13】
前記波長変換素子の変換波長の許容幅が1nm以下である請求項1〜12いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項14】
前記レーザ媒質から出射された基本波のビーム品質がM<2の関係を満足する請求項1〜13いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項15】
前記波長変換素子が偏向特性を有し、前記レーザ媒質の発振利得の波長範囲において一方の偏向の光に対する変換効率が他方の偏向の光に対する変換効率の10倍以上である請求項1〜3いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項16】
前記レーザ媒質が偏向特性を有する請求項1〜15いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項17】
前記レーザ媒質が偏向特性を有するドープファイバーである請求項1〜16いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項18】
前記波長変換素子の変換効率が10%以上である請求項6〜8いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項19】
前記レーザ媒質が連続パルス発振しており、前記レーザ媒質内のパルス光と、前記レーザ媒質内に入射した第2の基本波パルス光の位相が、前記レーザ媒質内で一致している請求項1〜18いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項20】
さらに透過型の狭帯域波長フィルターを備え、
前記波長変換素子の変換波長域Δλ(SHG)は、前記狭帯域波長フィルターの透過波長域Δλ(BR)内に存在し、
Δλ(SHG)< Δλ(BR)の関係を満足し、
前記狭帯域波長フィルターの透過光をレーザ媒質に帰還することで、前記レーザ媒質の発振波長が前記狭帯域波長フィルターの透過波長に固定されている請求項1〜19いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項21】
さらにブラッグ反射器を備え、
前記波長変換素子の変換波長域Δλ(SHG)は、前記ブラッグ反射器の反射波長域Δλ(BR)内に存在し、
Δλ(SHG)< Δλ(BR)の関係を満足し、
前記ブラッグ反射器の反射光を前記レーザ媒質に帰還することで、前記レーザ媒質の発振波長が前記ブラッグ反射器の反射波長に固定されている請求項1〜20いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項22】
さらにノッチフィルターを備え、
前記波長変換素子の変換波長域Δλ(SHG)は、前記ノッチフィルターの反射波長域Δλ(BR)内に存在し、
Δλ(SHG)< Δλ(BR)の関係を満足し、
前記ノッチフィルターの反射光を前記レーザ媒質に帰還することで、前記レーザ媒質の発振波長が前記ノッチフィルターの反射波長に固定されている請求項1〜21いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項23】
前記レーザ媒質が半導体材料からなる請求項1〜22いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項24】
前記レーザ媒質がYb、Pr、Nd、Er、Cr、Ti、V、Hoイオンの少なくともいずれかを添加したファイバーである請求項1〜23いずれか記載のコヒーレント光源。
【請求項25】
請求項1〜24記載の何れかのコヒーレント光源と画像変換光学系とを有し、前記コヒーレント光源からの光を前記光学系により2次元画像に変換する光学装置。
【請求項26】
前記画像変換光学系が2次元のビーム走査光学系からなる請求項25記載の光学装置。
【請求項27】
前記画像変換光学系が2次元スイッチからなる請求項25記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−19603(P2006−19603A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197568(P2004−197568)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】