説明

コミュニケーション検出システム及びコミュニケーション検出装置

【課題】複数名の人間のコミュニケーション状態を定量的に取得し、可視化表示を行う。
【解決手段】所定の移動可能領域を移動可能な複数の移動局T1〜T4と、複数の移動局T1〜T4に対し無線通信により情報送受信を行う基地局R1〜R4とを有し、複数の移動局T1〜T4をそれぞれ所持する複数の社員P1〜P4のコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出システム1であって、複数の移動局T1〜T4のアンテナ32から送信された電波信号に基づき複数の移動局T1〜T4それぞれの位置検出を行い、その検出結果に基づき各移動局Tの社員Pに係わるコミュニケーション要素を記録し、その記録内容に基づき各社員P同士のコミュニケーション活発度を算出し、その算出結果に基づき対応するコミュニケーション状態を表示部24に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被検出者のコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出システム、及びコミュニケーション検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、対象となるユーザの行動を予測する行動予測システムとして、特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、人物が所持する携帯端末装置が所定のタイミングで無線通信により位置登録信号を送信し、基地局がその受信した位置登録信号をサーバへ出力し、サーバが携帯端末装置の現在位置情報を算出する。算出された現在位置情報に基づきサーバが当該ユーザの行動パターン情報を形成し、現在のユーザの行動予測を行う。
【特許文献1】特開2000−293506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、複数の人物からなる組織の管理者にとって、組織の各構成員同士のコミュニケーション状態がどのようなものであるか(誰と誰が意思の疎通が良好で、誰と誰は意志の疎通が良好でないか、等)を知ることは、指揮系統の観点、情報伝達の観点、労務管理の観点、その他各種管理の観点から、非常に重要である。例えば、居室内においてある社員と別の社員とが会話をしており、それを管理者が自己のデスクから視認している場合、管理者はそれら二人の社員の間では概ねコミュニケーションが活発に行われており、日頃から意思の疎通が比較的良好であると推測するのが、一般的である。
【0004】
しかしながら、管理者は社員を一日中観察しているわけではない。このため、その時点ではたまたま上記二人の社員が何らかの会話をしていたが、実際は普段あまり会話をしていない可能性もありうる。この場合、管理者は、実際はそれら当該二人の社員のコミュニケーション状態は日頃はあまり高くないにもかかわらず、上記の視認時の印象で当該二人の社員のコミュニケーション状態は日頃から高いであろうという誤解や先入観をもつことになる。逆に、管理者がデスクに着席した視認時においてたまたま会話をしていなかった他の社員同士であっても、日頃からコミュニケーション状態が高い場合もあり得る。
【0005】
ここで、上記従来技術では、人物の現在位置情報と対応する時刻情報とを対応付けて行動履歴として蓄積し、これを用いて当該人物の行動パターン情報を形成し、行動傾向の分析や行動予測を行うことができる。しかしながら、上記のような複数の人物同士のコミュニケーション状態を検出することまでは配慮されておらず、コミュニケーション状態を定量的に検出したり、さらにそれを可視化することはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、複数名の人間のコミュニケーション状態を定量的に取得し、可視化表示を行うことができるコミュニケーション検出システム及びコミュニケーション検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、情報を記憶する記憶部と情報を送受信する第1アンテナ手段とを備え、所定の移動可能領域を移動可能な複数の移動局と、前記複数の移動局に対し無線通信により情報送受信を行う第2アンテナ手段を備えた基地局とを有し、前記複数の移動局をそれぞれ所持する複数の被検出者のコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出システムであって、前記複数の移動局の前記第1アンテナ手段から送信され前記基地局の前記第2アンテナ手段で受信した電波信号に基づき、前記複数の移動局それぞれの位置検出を行う位置検出手段と、前記位置検出手段の検出結果に基づき、各移動局の前記被検出者に係わるコミュニケーション要素を記録するコミュニケーション要素記録手段と、前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、前記複数の被検出者を構成する各被検出者同士のコミュニケーション活発度を算出するコミュニケーション活発度算出手段と、前記コミュニケーション活発度算出手段でのコミュニケーション活発度の算出結果に基づき、対応するコミュニケーション状態の表示を行うコミュニケーション表示手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明は、検出対象となる複数の被検出者におけるコミュニケーション状態を検出するものである。各被検出者は移動局を所持しており、移動局の第1アンテナ手段からの電波信号が基地局の第2アンテナ手段で受信される。第2アンテナ手段で受信された電波信号に基づき、位置検出手段が、各移動局(言い換えれば各被検出者。以下同様)の位置検出を行う。
【0009】
こうして検出された位置検出結果に基づき、各被検出者のコミュニケーション要素がコミュニケーション要素記録手段によって記録され、その記録内容に基づき、コミュニケーション活発度算出手段が、各被検出者同士のコミュニケーション状態を表す指標となるコミュニケーション活発度を算出する。そして、こうして算出されたコミュニケーション活発度に基づき、コミュニケーション表示手段が、対応するコミュニケーション状態の表示を行う。
【0010】
以上のようにして、被検出者それぞれに移動局を所持させて位置検出を行い、それに基づくコミュニケーション要素を用いてコミュニケーション状態をコミュニケーション活発度として指標化して表示する。これにより、通常では困難な複数名の人間のコミュニケーション状態を定量的に表して取得することができ、さらに例えばそれら複数名の人間の管理者に対し可視化して表示することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記コミュニケーション要素記録手段は、前記コミュニケーション要素として、時刻ごとの各移動局の位置を記録し、前記コミュニケーション活発度算出手段は、複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内である時間の長さに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出することを特徴とする。
【0012】
人間同士がコミュニケーションする場合、お互いに比較的近接した距離に位置するとともに、会話中はその近接状態が継続するのが通例である。そこ本願第2発明においては、コミュニケーション活発度算出手段が、移動局同士の距離が所定範囲内である時間の長さに応じ、コミュニケーション活発度を算出する。これにより、会話している状態を精度よく反映させた形で、指標化を行うことができる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記移動局は、周囲の音声を検出する音声検出手段と、前記音声検出手段での検出結果に基づき、対応する前記被検出者の会話状態を検出する会話検出手段とを備えており、前記コミュニケーション活発度算出手段は、複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内であるかどうかと、それら移動局に関する前記会話検出手段の検出結果とに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出することを特徴とする。
【0014】
移動局にマイク等の音声検出手段を設けて音声を検出し、その検出結果に基づき会話検出手段で会話状態を検出する。このようにして移動局側で会話状態を直接検出し、コミュニケーション活発度算出手段がその検出結果を加味してコミュニケーション活発度を算出する。これにより、会話している状態をより確実に反映させた形で、指標化を行うことができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記移動局の前記会話検出手段は、前記音声検出手段での検出結果に基づき、前記被検出者が会話をしているかどうかを判定する会話判定手段と、前記会話判定手段で前記被検出者が会話をしていると判定された場合、対応する会話信号を生成し、前記第1アンテナ手段を介して前記基地局へ送信する会話信号送信手段とを備えており、前記コミュニケーション要素記録手段は、前記コミュニケーション要素として、時刻ごとの、各移動局の位置と前記会話信号の有無とを記録し、前記コミュニケーション活発度算出手段は、複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内であるかどうかと、それら移動局の前記会話信号が存在するかどうかとに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出することを特徴とする。
【0016】
本願第4発明においては、音声検出手段で継続的に例えば音声レベルとして検出される検出結果に基づき、会話判定手段が会話か非会話かを判定し、会話状態である場合には会話信号送信手段が対応する信号(会話信号)の形に変換して基地局へ送信する。このような信号化を行うことにより、コミュニケーション要素記録手段は当該会話信号の有無の形で時刻ごとに確実に記録することができ、コミュニケーション活発度算出手段は、その会話信号の有無を加味した形で演算を行うことができる。すなわち、音声検出結果を会話の有無に変換することで、演算内容に組み込んだ形で容易かつ確実に指標化を行うことができる。
【0017】
第5発明は、上記第2乃至第4発明のいずれかにおいて、前記移動可能領域の地図情報と前記位置検出手段での位置検出結果とに基づき、前記コミュニケーション活発度算出手段で前記コミュニケーション活発度を算出された前記被検出者同士が前記移動可能領域のどの領域に存在するかに応じて、当該コミュニケーション活発度を補正する第1補正手段を有することを特徴とする。
【0018】
複数の人間同士で会話を行っている場合に、会話をしている場所が、その会話の濃密さや会話内容と一定の相関関係がある場合がある。例えばデスクに着座していれば仕事の話であり、休憩室であれば雑談であり、会議室であればミーティングである可能性が高い。そこで本願第5発明においては、コミュニケーション活発度算出手段がコミュニケーション活発度を算出した後、第1補正手段が、対応する被検出者同士がどの領域にいるのかに応じて、コミュニケーション活発度を補正するこれにより、上記のような、場所による会話の性質の違いに対応して、さらにきめ細やかな指標化を行うことができ、利便性が向上する。
【0019】
第6発明は、上記第2乃至第4発明のいずれかにおいて、前記移動可能領域における所定の部品の配置情報を含む地図情報と前記位置検出手段での位置検出結果とに基づき、前記コミュニケーション活発度算出手段で前記コミュニケーション活発度を算出された前記被検出者同士が前記備品の近傍に存在するかに応じて、当該コミュニケーション活発度を補正する第2補正手段を有することを特徴とする。
【0020】
複数の人間同士で会話を行っている場合に、備品の種類によっては、その備品の近くで会話していることがその会話の濃密さや会話内容と一定の相関関係をもつ場合がある。例えばデスクに近ければ仕事の話であり、ソファに近ければ雑談であり、ホワイトボードやプロジェクタに近ければミーティングである可能性が高い。そこで本願第6発明においては、コミュニケーション活発度算出手段がコミュニケーション活発度を算出した後、第2補正手段が、対応する被検出者同士がどの備品近くにいるのかに応じて、コミュニケーション活発度を補正する。これにより、上記のような、備品種類に基づく会話の性質の違いに対応して、さらにきめ細やかな指標化を行うことができ、利便性が向上する。
【0021】
第7発明は、上記第5又は第6発明において、前記補正手段は、前記被検出者同士が、前記移動可能領域のうち予め定められた所定領域に存在した場合、又は、前記備品の近傍に存在した場合は、対応する前記コミュニケーション活発度に対し、対応する重み係数を乗じて前記補正を行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、場所や備品の種類に基づく会話の性質の違いを、重み係数の値の違いで数値化して特徴づけ、確実に指標化することができる。
【0023】
第8発明は、上記第2乃至第7発明のいずれかにおいて、前記コミュニケーション表示手段は、前記コミュニケーション活発度算出手段で算出した前記コミュニケーション活発度が大きい被検出者同士のコミュニケーション表示が、それ以外の被検出者同士のコミュニケーション表示よりも強調されるような態様で、前記コミュニケーション状態の表示を行うことを特徴とする。
【0024】
これにより、複数の被検出者同士でそれぞれ存在しうるコミュニケーション状態において、特にコミュニケーションが盛んな関係(間柄)を、それ以外の関係よりも視覚的に目立つようにすることができる。この結果、例えば管理者に対し、そのような状態を明確に認識させることができる。
【0025】
第9発明は、上記第8発明において、前記コミュニケーション表示手段は、特定の被検出者を基準として、当該被検出者と他の複数の被検出者それぞれとのコミュニケーション活発度の大小に応じた表示態様で、前記コミュニケーション状態の表示を行うことを特徴とする。
【0026】
これにより、例えば管理者に対し、特定の人物を基準としたコミュニケーション関係をわかりやすく確実に認識させることができる。
【0027】
上記目的を達成するために、第10発明は、複数の被検出者によるコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出装置であって、前記複数の被検出者の位置に基づき、各被検出者に係わるコミュニケーション要素を記録するコミュニケーション要素記録手段と、前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、前記複数の被検出者を構成する各被検出者同士のコミュニケーション活発度を算出するコミュニケーション活発度算出手段と、前記コミュニケーション活発度算出手段でのコミュニケーション活発度の算出結果に基づき、対応するコミュニケーション状態の表示を行うコミュニケーション表示手段とを有することを特徴とする。
【0028】
本願第10発明のコミュニケーション検出装置においては、検出対象となる複数の被検出者の位置に基づき、各被検出者のコミュニケーション要素がコミュニケーション要素記録手段によって記録され、その記録内容に基づき、コミュニケーション活発度算出手段が、各被検出者同士のコミュニケーション状態を表す指標となるコミュニケーション活発度を算出する。そして、こうして算出されたコミュニケーション活発度に基づき、コミュニケーション表示手段が、対応するコミュニケーション状態の表示を行う。
【0029】
以上のようにして、被検出者それぞれの位置に基づくコミュニケーション要素を用いてコミュニケーション状態をコミュニケーション活発度として指標化して表示する。これにより、通常では困難な複数名の人間のコミュニケーション状態を定量的に表して取得することができ、さらに例えばそれら複数名の人間の管理者に対し可視化して表示することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数名の人間のコミュニケーション状態を定量的に取得し、可視化表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(A)システム基本構成
図1は、本発明のコミュニケーション検出システム1の一実施形態の全体構成を概略的に示す説明図である。
【0033】
図1において、この例では、本実施形態のコミュニケーション検出システム1を、建造物(この例では所定の会社の社屋)の1フロア全体に適用した場合を示している。当該フロアには、実験室Z1と、居室Z2と、トイレZ3と、ミーティングスペースMと、それら複数の部屋Z1〜Z3,M(以下適宜、ミーティングスペースMを含めこのように「部屋Z1〜Z3,M」と称する)を連絡する廊下Bとが備えられ、これらが測位可能領域(所定の移動可能領域)となっている。
【0034】
居室Z2は、1つのデスクDK1(後述する管理者K用)及び4つのデスクDK2(後述する社員P用)と、1つの椅子CH1(管理者K用)及び4つの椅子CH2(社員P用)とが設けられている。ミーティングスペースMは、この例では壁WAを介して2つの領域Ma,Mbに仕切られている。各領域Ma,Mbのそれぞれには、1つのテーブルTTと、4つの椅子CH3と、1つのホワイトボードWBとが設けられている。
【0035】
本実施形態のコミュニケーション検出システム1は、複数名(図示の例では4名)の会社の社員P1,P2,P3,P4(被検出者)がそれぞれ所持する(又は所持品に設ける等、別途の態様で付随させてもよい)移動局T1,T2,T3,T4と、フロア内にそれぞれ設置された複数(図示の例では4つ)の基地局R1,R2,R3,R4と、居室Z2内に設置されて上記各基地局R1〜R4と通信ネットワークNWを介して接続されている管理サーバS(コミュニケーション検出装置)とを有している。
【0036】
各基地局R1,R2,R3,R4は、フロアの例えば壁面に設置され、協働してフロア内の全域を通信範囲としている。そして、社員P1,P2,P3,P4(以下適宜、総称して「社員P」という)とともに移動する移動局T1,T2,T3,T4(以下適宜、総称して単に「移動局T」という)に対し無線通信を介した情報送受信を行い、その結果によってフロア内の社員Pの位置を管理サーバSにて検出できるようになっている(詳しくは後述する)。
【0037】
管理サーバSは、当該フロアの地図情報を記憶している。この管理サーバSは、各基地局R1〜R4にそれぞれ検出させた移動局Tまでの距離に基づく、移動局Tのフロア内存在位置(つまり社員Pの存在位置)の監視を行う(詳しくは後述する)。なお、上記フロアには例えば平面座標系が設定され、予め、フロアが占有する座標領域、各基地局R1〜R4の設置位置、各デスクDK1,DK2の配置位置及び占有領域、各椅子CH1,CH2,CH3の配置位置及び占有領域、各テーブルTTの配置位置及び占有領域、壁WAの配置位置及び占有領域,各ホワイトボードWBの配置位置及び占有領域が、図1に示すような地図情報として管理サーバSに記憶されている。
【0038】
また、管理サーバSは、各基地局R1〜R4にそれぞれ検出させた移動局Tまでの距離に基づく、移動局Tのフロア内存在位置(つまり社員Pの存在位置)の検出を行う。また管理サーバSは上記社員Pの存在位置の検出結果と上記地図情報とに応じて、ある社員Pに関わる移動局Tから他の社員Pに関わる移動局Tまでの距離を算出し、その算出距離に基づき、その社員同士の間のコミュニケーション活発度を算出する(詳しくは後述する)。
【0039】
図2は、本実施形態のコミュニケーション検出システム1の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0040】
図2において、コミュニケーション検出システム1は、前述したように、社員P1〜P4がそれぞれ所持する上記移動局T1〜T4と、それら移動局Tと無線通信を行う上記基地局R1〜R4と、これら基地局R1〜R4に適宜の通信ネットワークNWでそれぞれ接続された上記管理サーバSとを有している。
【0041】
例えば管理者K(管理担当の操作者。この例では社員P1〜P4の上司)が管理サーバSを操作することにより、通信ネットワークNWを介し管理サーバSから各基地局R1〜R4へと制御信号が出力され、各移動局Tの位置検出結果を含む信号が管理サーバSへと出力される。
【0042】
基地局R1〜R4(以下、単体を指す場合は単に「基地局R」と称する)は、本体部11と、アンテナ12(第2アンテナ手段)とを有している。
【0043】
本体部11は、無線部16と、RSSI部17と、ネットワーク通信制御部18と、時計部19Aと、到来時刻検出部19と、制御部20とを有する。
【0044】
無線部16は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ12を用いて電波の送受信を行う。無線部16は、移動局Tの作動を制御する指令を含む電波を送信する。また、無線部16は、移動局Tによって送信される電波を受信し、その内容を必要に応じて後述する到来時刻検出部19などに出力し、処理を実行させる。すなわち、無線部16は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて上記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行う変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有し、また、アンテナ12によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行う復調器などによって実現される。このとき、無線部16が行う無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、無線部16はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0045】
アンテナ12は、上述したように、無線部16が電波の送受信を行う際に用いられる。移動局Tの位置に関わらず電波が良好に受信できるように、アンテナ12には無指向性アンテナが好適に使用される。
【0046】
到来時刻検出部19は、移動局Tから送信される電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する。具体的には、予め移動局Tが送信する拡散符号と同一のレプリカ符号を到来時刻検出部19が有しておき、そのレプリカ符号と、受信された移動局Tからの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とをマッチドフィルタに入力することにより、両者の相関値を得ることができる。この相関値のピークを示す時刻が電波の受信時刻となる。したがって相関値のピークを示す時刻を後述の時計19Aより得ることにより受信時刻が検出される。
【0047】
RSSI部17は、受信信号の信号強度を検出する。
【0048】
ネットワーク通信制御部18は、上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSとの制御信号及び情報信号の授受の制御を行う。時計部19Aは、現在時刻(時刻情報)を出力する機能を備えている。各基地局R1〜R4は各々の時計を有しており、それらの時刻は予め基地局間通信を行うことにより同期されている。なお、本実施形態では、通信ネットワークNWにケーブル等を使用した有線ネットワークを想定しているが、これに限らず、無線ネットワークを用いてもよい。
【0049】
制御部20は、上記無線部16、RSSI部17、ネットワーク通信制御部18、到来時刻検出部19、及び時計部19Aを含む基地局R全体の動作を制御する。すなわち、制御部20は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。具体的には、制御部20は、管理サーバSからの位置検出処理の実行命令の入力を受け付け、アンテナ12を介した無線通信により移動局Tへの送信指令、及び移動局Tからの送信信号の検出処理を行い、その検出結果を上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSへ出力する。
【0050】
また、移動局T1〜T4は、例えば図3に示すように、カードの形でポケットに入れたり、あるいは首からぶら下げたり等の適宜の手法で、前述したように対応する社員Pにより所持又は付随されている。この移動局Tは、IC回路部31(記憶部)と、アンテナ32(第1アンテナ手段)とを有している(時計部35については後述)
【0051】
IC回路部31は、電波信号を送受信するための変調、復調、増幅などの無線機能を実現する無線部33と、この無線部33を含む移動局T全体の動作を制御する制御部34とを有する。
【0052】
無線部33は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて上記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、上記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有する。さらに、無線部33は、アンテナ32によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。このとき、無線部33が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、無線部33はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0053】
制御部34は無線部33に対して送信又は受信の切り替え、搬送波周波数の設定、送信アンプにおける出力の設定を行なう。また、無線部33で復調された、基地局R1〜R4からの電波の内容より、移動局Tの制御作動に関する指令を解析する。また制御部34は、移動局Tが電波によって送信する拡散符号を、図示しない記憶手段から記憶された拡散符号を読み出すことにより、あるいは所定の生成方法、例えば予め定められた原始多項式に基づいて生成することにより決定する。
【0054】
なお、この例で用いる移動局Tは、その内部に独自に備えた電源(特に図示せず)により駆動するアクティブタグである。この結果、移動局Tは、自ら電波を発信することができ、距離の離れた基地局と通信することが可能となっている。
【0055】
また、管理サーバSは、CPU(中央演算装置)21と、メモリ22と、操作部23と、表示部24(コミュニケーション表示手段)と、大容量記憶装置25と、ネットワーク通信制御部26とを備えている。
【0056】
メモリ22は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部23には、管理者Kからの指示や情報が入力される。表示部24では、各種情報やメッセージを表示される。大容量記憶装置25は、ハードディスク装置からなり、フロアの地図情報や社員Pなどに関する各種情報を記憶するデータベースとして機能する(詳細は後述)。ネットワーク通信制御部26は、上記通信ネットワークNWを介し各基地局R1〜R4への信号授受の制御を行う。
【0057】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、各社員Pに係る移動局Tの検出位置に応じて、各社員同士のコミュニケーション状態(会話をしているかしていないか、会話が活発かそうでないか)を検出し、その検出結果を定量的に可視化して表示することにある。以下、その詳細を順次説明する。
【0058】
(B)移動局の位置検出の手法原理
図4は、本実施形態のコミュニケーション検出システム1において移動局Tの位置を検出する方法の原理を説明する図である。なお、図4中においては、図示の煩雑を避けるために3つの基地局R1〜R3によって一つの移動局Tの位置を検出する例を示している。
【0059】
図4において、社員Pが所持する移動局Tは上述したように平面座標系が設定されているフロア内を自由な座標位置に移動できるのに対し、3つの基地局R1〜R3は同じフロア内でそれぞれ既知の設置位置に固定的に配置されている。そして各基地局R1〜R3は通信ネットワークNWを介して一つの管理サーバSに情報を送受可能に接続されている。
【0060】
この構成において、各基地局R1〜R3での移動局Tからの電波信号の受信時刻差に基づき、管理サーバSは、各基地局R1〜R3から移動局Tまでの距離をそれぞれ測定検出する。つまり、各基地局R1〜R3の少なくとも1つが移動局Tに対し所定の送信要求信号を送信し、それに対応して移動局Tが電波信号(距離検出用の電波信号)を各基地局R1〜R3に向けて送信する。このとき、移動局Tが距離検出用の電波信号が送信してから基地局Rにおいて受信されるまでの時間(到来時間)は、基地局Rと移動局Tとの空間的な距離に比例する。各基地局Rから移動局Tまでの距離が異なる場合には、上記到来時間は、各基地局Rにより異なる値となって時間差が生じる。管理サーバSは、その時間差に基づいて移動局Tの位置を算出することができる。
【0061】
基地局R1、R2、R3の座標をそれぞれ、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)とする。そして、第1基地局R1、第2基地局R2、第3基地局R3それぞれにおいて、移動局Tから時刻T0で送信された距離検出用の電波信号を受信した受信時刻をT1,T2,T3とする。
【0062】
以上のような条件においては、図4において、
c×(T1−T0)=√{(x−x1)+(y−y1)} ・・(1A)
c×(T2−T0)=√{(x−x2)+(y−y2)} ・・(1B)
c×(T3−T0)=√{(x−x3)+(y−y3)} ・・(1C)
が成り立つ。
【0063】
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
√{(x−x1)+(y−y1)}−√{(x−x2)+(y−y2)}=c×(T1-T2) …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
√{(x−x1)+(y−y1)}−√{(x−x3)+(y−y3)}=c×(T1-T3) …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速:約3.0×108[m/s])である。
【0064】
このとき、(受信時刻T1,T2,T3は測定値として既知であり)変数はx、yの2つのみであるから、上記(1D)(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、移動局Tの位置のx,y座標(x,y)を特定することができる。なお、本実施形態のように4つの基地局R1〜R4を設けることで、さらに精度のよい位置検出を行うことができる。
【0065】
なお、上記の例では、各基地局R1〜R3は電波信号の受信時刻を検出し管理サーバSに送信するのみであり、測位処理(基地局R1〜R3から移動局Tまでの距離の算出)は管理サーバSが行うが、これに限られない。すなわち、各基地局R1〜R3のうちの1つの制御部20が他の受信時刻情報を収集し、測位するようにしてもよい。
【0066】
(C)社員間のコミュニケーション
(この例において)上司である管理者Kにとって、部下の社員P1,P2,P3,P4の日頃のコミュニケーション状態がどのようなものであるか(誰と誰が意思の疎通が良好で、誰と誰は意志の疎通が良好でないか、等)を知ることは、指揮系統の観点、情報伝達の観点、労務管理の観点、その他各種管理の観点から、非常に重要である。
【0067】
例えば図5に示すように、居室Z2で社員P1と社員P2と社員P3とが会話をしており、それを管理者Kが視認している場合、管理者Kは社員P1,P2,P3の間では概ねコミュニケーションが活発に行われており、日頃から意思の疎通が比較的良好であると推測するのが、一般的である。
【0068】
しかしながら、管理者Kは社員P1〜P3を一日中観察しているわけではない。このため、図5に示したその時点ではたまたま社員P1〜P3で何らかの会話をしていたが、実際は普段あまり会話をしていない可能性もありうる。この場合、管理者Kは、実際は社員P1〜P3のコミュニケーション状態は日頃はあまり高くないにもかかわらず、上記の視認時の印象で社員P1〜P3のコミュニケーション状態は日頃から高いであろうという誤解や先入観をもつことになる。逆に、管理者KがデスクDK1に着席した視認時においてたまたま会話をしていなかった社員P同士であっても、日頃からコミュニケーション状態が高い場合もあり得る。
【0069】
また、居室Z2のうち管理者KのデスクDK1からは視認できない所での会話や、さらには居室Z2外の他の部屋や廊下Bなどでの会話は、管理者Kはなかなか認識することはできない。なお、各社員P同士の正確なコミュニケーション状態を知るために、会社の全部屋をビデオカメラ等により監視したり、各社員Pの音声録音による会話履歴を確認したりすることも考えられなくはない。しかしながらこのような手法は多大な手間が掛かり、また各社員Pのプライバシーを侵害するおそれがあることを考えると現実的ではない。
【0070】
以上のように、管理者Kは、各社員P同士のコミュニケーション状態を正確に把握することは非常に難しかった。
【0071】
(D)コミュニケーション状態の検出
(D−1)地図情報のデータベース
【0072】
次に、上記地図情報の詳細について説明する。地図情報は、図6に概念的に示すように、平面座標系において、各部屋(実験室Z1、居室Z2、トイレZ3、ミーティングスペースM、廊下B)が占有する座標領域、各基地局R1〜R4の設置位置等を含んでおり、以下に説明する部屋データベースから構成される。
【0073】
図7は、管理サーバSの大容量記憶装置25に記憶されている、各部屋の名称、ID、x座標y座標の範囲の関係を含む部屋データベースの主要部を表す図である。図7において、ミーティングスペースMの座標範囲はx座標がXca<x<Xcbかつy座標がYcb<y<Yccの範囲であり、実験室Z1の座標範囲はx座標が0<x<Xcaかつy座標がYcb<y<Yccの範囲であり、居室Z2の座標範囲はx座標がXca<x<Xcbかつy座標が0<y<Ycaの範囲であり、トイレZ3の座標範囲はx座標が0<x<Xcaかつy座標が0<y<Ycaの範囲であり、廊下Bの座標範囲はx座標が0<x<Xcbかつy座標がYca<y<Ycbの範囲である。したがって、検出された移動局Tの座標と上記した各部屋の座標範囲データとを比較することで、移動局Tが実験室Z1、居室Z2、トイレZ3、ミーティングスペースM、廊下Bのうちどこにいるのか判定できるようになっている。
【0074】
図8は、管理サーバSの大容量記憶装置25に記憶されている上記部屋データベースの詳細部の一例を構成する、上記居室Z2に係わる居室データベースを表す図である。図8に示すように、この居室データベースは、上記図7と同様、居室内の備品(この例では各社員P及び管理者Kのデスク)の名称、ID、x座標y座標の範囲の関係を含んでいる。図9はその内容を概念的に表した図であり、上記図6に対応する図である。図8及び図9において、社員P1のデスク、DK2−P1の座標範囲はx座標が14<x<16かつy座標が2.5<y<4の範囲であり、社員P2のデスク、DK2−P2の座標範囲はx座標が16<x<18かつy座標が2.5<y<4の範囲であり、社員P3のデスク、DK2−P3の座標範囲はx座標が14<x<16かつy座標が1<y<2.5<の範囲であり、社員P4のデスク、DK2−P4の座標範囲はx座標が16<x<18かつy座標が1<y<2.5の範囲である。
【0075】
(D−2)会話検出
図10〜図13を用いて、本実施形態で実行する前述の社員P1〜社員P4のコミュニケーション状態の検出の手法について説明する。コミュニケーションとは、互いに意思、感情、思考等を伝達し合う(=意志疎通)ことであり、手段として会話によって行われるのが一般的である。したがって、通常は、会話する両者は比較的近接した位置に存在する。そこで本実施形態では、複数名の社員Pそれぞれの位置が所定の近接範囲内(この例では同一の座標)である場合に、それら複数名の社員P同士で互いに会話を行っているとみなす(会話検出)。そのために、管理サーバSは、上記測位処理によって検出した各移動局T1,T2,T3,T4の位置(言い換えれば、各社員P1,P2,P3,P4の位置)を所定の間隔で検出し、大容量記憶装置25にデータベース(社員位置データベース)として格納する。
【0076】
図10は、上記社員位置データベースを表す図である。図10において、この社員位置データベースでは、所定間隔(この例では1秒間隔)の各検出時刻における移動局T1,T2,T3,T4の位置(x座標、y座標;コミュニケーション要素)が、記憶されている。管理サーバSは、このデータベースにより移動局T1〜T4の位置履歴を取得することができる。
【0077】
図10に示す例では、移動局T1(言い換えれば社員P1)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間、居室Z2での社員P1の席の位置(図9参照)である、座標(15,4)に位置している。
【0078】
移動局T2(言い換えれば社員P2)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時23分48秒までの3秒間、社員P2の席の位置(図9参照)である、座標(17,4)に位置している。その後移動し、11時23分50秒から11時24分00秒までの10秒間、社員P1の席の位置である上記座標(15,4)に位置している。その後さらに移動し、11時24分07秒から11時24分15秒までの8秒間、社員P4の席の位置(図9参照)である座標(17,1)に位置している。
【0079】
移動局T3(言い換えれば社員P3)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分09秒までの24秒間、社員P3の席の位置(図9参照)である、座標(15,1)に位置している。その後移動し、11時24分11秒から11時24分15秒までの4秒間、社員P4の席の位置である上記座標(17,1)に位置している。
【0080】
移動局T4(言い換えれば社員P4)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間、社員P4の席の位置である上記座標(17,1)に位置している。
【0081】
以上により、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間の区間では、以下のようなコミュニケーション状態を検出することができる。すなわち、11時23分45秒から11時23分48秒までの3秒間、社員P1、社員P2、社員P3、社員P4がそれぞれ自分の席に位置し、誰も互いに会話していない状態である(前述の図9に示した状態)。その後、社員P2の移動により、11時23分50秒から11時24分00秒までの10秒間、社員P1及び社員P2が、社員P1の席(座標(15,4))に位置し、この2名での会話状態となる(図11参照)。そしてさらに、社員P2の移動により、11時24分07秒から11時24分10秒までの3秒間、社員P2及び社員P4が社員P4の席(座標(17,1))に位置し、この2名での会話状態となる(図12参照)。その後さらに、社員P3の移動により、11時24分11秒から11時24分15秒までの4秒間、社員P2、社員P3、及び社員P4が社員P4の席(座標(17,1))に位置し、この3名での会話状態となる(図13参照)。なお、上記の結果、社員P2と社員P4とで見ると、11時24分07秒から11時24分15秒までの8秒間、会話状態となる。
【0082】
(D−3)コミュニケーション活発度によるコミュニケーション状態の定量化
本実施形態では、上記のような手法で検出するコミュニケーション(会話)状態について、その意思疎通の程度を数値として定量化するために、コミュニケーション活発度を定義して用いる。このコミュニケーション活発度は、上記のようにして各移動局Tの位置が刻々と検出されるときの、所定の時刻範囲(区間)における、複数の移動局Tが同じ座標に位置している時間範囲の累積値(この例では秒の累積値)で表される。
【0083】
図14は、上記コミュニケーション活発度の算出例として、上記図10の例(すなわち、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間の区間)における、コミュニケーション活発度を表す図である。
【0084】
図14において、前述したように社員P1と社員P2とは、11時23分50秒から11時24分00秒までの10秒間、会話状態であるから、上記30秒間の区間における社員P1と社員P2とのコミュニケーション活発度は10である。同様に、社員P2と社員P3とは、11時24分11秒から11時24分15秒までの4秒間、会話状態であるから、コミュニケーション活発度は4である。また、社員P2と社員P4とは、11時24分07秒から11時24分15秒までの8秒間、会話状態であるから、コミュニケーション活発度は8である。また、社員P3と社員P4とは、11時24分11秒から11時24分15秒までの4秒間、会話状態であるから、コミュニケーション活発度は4である。
【0085】
なお、上記以外、すなわち、社員P1と社員P3との組みあわせ、及び、社員P1と社員P4との組みあわせ、については、上記30秒間の区間では会話状態にないことから、いずれもコミュニケーション活発度は0となる。
【0086】
(D−4)コミュニケーション状態の可視化
本実施形態では、上記(D−3)のようにして算出した所定の時間範囲(区間)におけるコミュニケーション活発度を用いて、例えば管理サーバSの上記表示部24において、コミュニケーション状態の可視化表示を行う。以下、その詳細を図15及び図16により説明する。
【0087】
可視化の一例としては、ある特定の社員P(以下の例では社員P1)に着目し、その社員P1を基準とした他の社員P2,P3,P4とのコミュニケーション活発度の値に応じた可視化を行う。図15(a)は、上記(D−3)で上述した方法で算出した、別の時間範囲(例えば1時間、すなわち3600秒)におけるコミュニケーション活発度の例を示しており、特に、社員P1と他の社員P2,P3,P4それぞれとのコミュニケーション活発度の値を示している。
【0088】
図15(a)に示すように、この例では、上記区間における社員P1と社員P2とのコミュニケーション活発度は250(会話をしていた時間の累計が250秒)である。同様に、社員P1と社員P3とのコミュニケーション活発度は200(会話をしていた時間の累計が200秒)であり、社員P1と社員P4とのコミュニケーション活発度は150(会話をしていた時間の累計が150秒)である。
【0089】
次に、上記3つのコミュニケーション活発度の最小値(上記の例では150)を、3つのコミュニケーション活発度のそれぞれで除し、無次元化する。図15(b)はこの無次元化した値の例を示しており、社員P1と社員P2との組みあわせでは0.6(=150/250)となり、社員P1と社員P3との組みあわせでは0.75(=150/200)となり、社員P1と社員P4との組みあわせでは1.0(=150/150)となる。これにより、コミュニケーション活発度が高いほど(=意思疎通が良好なほど)上記無次元化した値は小さくなり、コミュニケーション活発度が低いほど(=意思疎通が悪いほど)上記無次元化した値は大きくなる。
【0090】
そして、最後に、上記のようにして無次元化した値を半径とした同心円を描画することで、社員P1と社員P2,P3,P4とのコミュニケーション状態を可視化する。図16は、このような同心円による描画の例を示しており、同心円の中心に社員P1の図像を表示している。そして、上記の無次元化した値に応じて、社員P2の図像を中心から半径0.6rの円上に表示し、社員P3の図像を半径0.75rの円上に表示し、社員P4の図像を半径rの円上に表示している。これにより、社員P1が最も活発にコミュニケーションをとれる相手が(最も距離が近いことで他よりも強調して表示される)社員P2であり、社員P1があまりコミュニケーションをとれない相手が(最も距離が遠く表示される)社員P4であり、その中間が社員P3であることを、管理者Kは感覚的に容易に理解することができる。
【0091】
なお、上記の例では、上述の方法により無次元化した値を半径とした同心円を描画することでコミュニケーション活発度を可視化表示したが、これに限られない。すなわち、例えば各社員Pの図像を一定間隔で配置してそれぞれの間を直線で結び、コミュニケーション活発度に大きさに応じて、コミュニケーション活発度が高い社員P同士の間の直線を他よりも太くしたり、色が目立つようにして強調する等でもよい(図示せず)。
【0092】
(E)制御シーケンス
図17は、本実施形態において、管理サーバS、基地局R1〜R4、移動局T1〜T4の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。図17において、基本的に図中上側から下側に向かっての時系列変化で各手順を表している。上述したように、管理サーバSと基地局R1〜R4との間は通信ネットワークNWを介した信号の送受である。また、基地局R1〜R4と移動局T1〜T4との間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
【0093】
まず最初に、ステップSS10において、管理サーバSのCPU21がネットワーク通信制御部26を介し、各基地局R1〜R4(あるいは特定の1つの基地局Rでもよい)に対し、移動局T1〜T4への距離検出用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR10で、各基地局R1〜R4(又は特定の1つの基地局R)の無線部16がアンテナ12を介し移動局T1〜T4に向けて電波送信要求信号を送信する。
【0094】
そして、この送信要求信号を受信した移動局Tの無線部33が、ステップST10においてアンテナ32を介し対応する距離検出用の電波信号を送信する。各基地局R1〜R4の無線部16は、ステップSR20で、アンテナ12を介しそれぞれの距離検出用の電波信号を受信する。そして、到来時刻検出部19がそのときの受信時刻情報を検出し、制御部20がその受信時刻情報をネットワーク通信制御部18を介して管理サーバSに出力する。
【0095】
そして管理サーバSのCPU21が、ステップSS20において、各基地局R1〜R4から入力した受信時刻の差(=到来時刻の差)に基づき、移動局T1〜T4の位置座標を、図4を用いて上述した手法により算出する(位置検出手段)。
【0096】
なお、上記ステップSS10における管理サーバSから基地局Rに対する移動局Tへの距離検出用の電波送信要求を送信するよう指示信号の出力は、所定の時間間隔で常時行われる(例えば1秒間隔)。この結果、上記移動局Tの位置検出も、リアルタイムで常時行われることとなっている。また、このような基地局R1〜R4(又は特定の基地局R)からの送信要求に応じて移動局Tからの距離検出用電波信号を送信するようにしたが、これに限られない。すなわち、移動局Tが一定時間間隔で自発的に電波信号を発信し続け、各基地局Rがその発信し続ける電波信号を受信し、これに基づき管理サーバSで距離検出を行うようにしてもよい。この場合も、移動局Tの位置検出はリアルタイムで常時行われる。
【0097】
次にステップSS30で、管理サーバSのCPU21は、上記ステップSS20で算出した、コミュニケーション要素としての各移動局Tの位置座標及び位置検出時刻を管理サーバSの大容量記憶装置25に記憶されている上述の社員位置データベースに書き込み(コミュニケーション要素記録手段)、上記各移動局Tの位置履歴を更新し、ステップSS40に移る。
【0098】
ステップSS40では、管理サーバSのCPU21は、上述した管理者Kから上述したコミュニケーション活発度の算出の指示入力があったかどうかを判定する。この判定は、例えば、管理者Kが管理サーバSの操作部23によりコミュニケーション活発度の算出の指示入力(例えば、あるプログラムを起動するとコミュニケーション活発度の算出を開始するように作成されているプログラムを起動する)があったかどうかを判定するようにすればよい。管理者Kからコミュニケーション活発度の算出の指示入力がなされていない場合は、判定が満たされず、ステップSS10に戻って同様の手順を繰り返し、コミュニケーション活発度の算出の指示入力が行われたらステップSS40の判定が満たされ、ステップSS50に移る。
【0099】
ステップSS50では、管理サーバSのCPU21は、表示信号を生成して管理サーバSの表示部24に出力し、上記コミュニケーション活発度を算出して表示するための各種の算出・表示条件、すなわち算出する時刻範囲(例えば、○○年△月×日9時から○○年△月×日17時まで)、対象とする社員P(例えば、社員P1〜社員P4間に限る)、表示時に基準とする社員P(上記図16参照。例えば社員P1を基準として表示する等)などの指示入力を管理者Kに対し促す、所定の表示(図示省略)を行わせる。なお、この際、算出対象とするフロア(例えば、居室Z2内に限る)等の指示入力を併せて促すようにしてもよい。また、予め設定した項目から管理者Kに選択入力させるようにしてもよい。
【0100】
そして、ステップSS60に移り、上記ステップSS50の表示に対応して、管理者Kにより操作部23を介し上記の算出・表示条件の入力がされたかどうかを判定する。管理者Kが算出・表示条件を入力するまで判定が満たされずステップSS50に戻って同様の手順を繰り返し、算出・表示条件の入力があったら判定が満たされてステップSS70に移る。
【0101】
ステップSS70では、ステップSS60で管理者Kが入力した条件(算出条件)に応じて、管理サーバSのCPU21は、上記ステップSS30で更新された各移動局T(言い換えれば、各社員P)の位置履歴データベースに基づき、上述した算出方法でコミュニケーション活発度を算出する(コミュニケーション活発度算出手段)。
【0102】
そして、ステップSS80に移り、管理サーバSのCPU21は、上記ステップSS60で管理者Kが入力した条件(表示条件)に応じ、表示信号を生成して管理サーバSの表示部24に出力し、上記算出したコミュニケーション活発度を表示部24において可視化表示させる(上述の図16参照)。なお、ステップSS80が終了した後、管理サーバSは、ステップSS10に戻り同様の手順を繰り返す。
【0103】
以上説明したように、本実施形態のコミュニケーション検出システム1においては、各移動局Tから距離検出用の電波信号が送信されると、その電波信号が各基地局Rの無線部16にて受信され、このときの電波信号の受信時刻が到来時刻検出部19で検出される。これにより、管理サーバSが、各基地局Rの受信時刻差に基づき各移動局の位置検出をリアルタイムで行う(ステップSS20)。この位置検出結果に基づき、管理サーバSが、各社員Pに係る各移動局Tの位置履歴を更新し(ステップSS30)、さらにその位置履歴に基づき各社員P同士のコミュニケーション状態を表す指標となるコミュニケーション活発度を算出する(ステップSS70)。そして、こうして算出されたコミュニケーション活発度に基づき、表示部24で、対応するコミュニケーション状態の可視化表示を行う(ステップSS80)。
【0104】
以上のようにして、各社員Pそれぞれに移動局Tを所持させて位置検出を行い、その位置検出結果に応じて各社員P間のコミュニケーション状態をコミュニケーション活発度として指標化して表示する。これにより、通常では困難な各社員P同士のコミュニケーション状態をサーバS側において定量的に表して取得することができ、管理者Kに対し可視化表示することができる。この結果、管理者Kは各社員P間のコミュニケーション状態を誤認や先入観をもつことなく明確に把握することができる。
【0105】
また、人間同士がコミュニケーションする場合、お互いに比較的近接した距離に位置するとともに、会話中はその近接状態が継続するのが通例である。そこで、本実施形態では特に、移動局T同士の距離が所定範囲内(この例では同一座標。なお、隣接座標等、近傍の所定距離範囲内としてもよい)である時間の長さに応じ、コミュニケーション活発度を算出する。これにより、各社員P同士で会話している状態を精度よく反映させた形で、指標化を行うことができる。
【0106】
また、本実施形態では特に、コミュニケーション活発度の表示の際、コミュニケーション活発度が大きい社員P同士のコミュニケーション表示が、それ以外の社員P同士のコミュニケーション表示よりも強調されるような態様(前述の例では円中心からの距離が近い表示)で表示する。これにより、複数の社員P同士でそれぞれ存在しうるコミュニケーション状態において、特にコミュニケーションが盛んな関係(間柄)を、それ以外の関係よりも視覚的に目立つようにすることができる。この結果、管理者Kに対し、そのような状態を明確に認識させることができる。
【0107】
また特に、上記表示の際、特定の社員P(図16の例では社員P1)を基準として、他の社員Pとのコミュニケーション活発度の大小に応じた態様(図16の例では表示位置同士の距離を変化)で表示を行う。これにより、管理者Kに対し、特定の社員Pを基準としたコミュニケーション関係をわかりやすく確実に認識させることができる。したがって、例えばコミュニケーション状態が低い社員P間に対してはグループ編成の見直しなどの対策を行うことが可能であり、組織(この例では、会社)内のコミュニケーションを活発化することができる。この結果、社員P同士の間での情報の共有化を促進し、組織を活性化することができる。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0109】
(1)会話音声を検出する場合
上記実施形態においては、各移動局T間の距離が所定の範囲(前述の例では同一座標)である状態をコミュニケーション状態(会話状態)とみなし、コミュニケーション活発度を算出していたが、これに限られない。すなわち、会話の音声をマイク等で直接検出するようにしてもよい。
【0110】
図18は、このような変形例によるコミュニケーション検出システム1の機能的構成を表す機能ブロック図であり、上記実施形態の図2に対応する図である。図2と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0111】
図18において、本変形例においては、移動局T1〜T4が、IC回路部31に加え、対応する社員Pの周囲の音声を検出するマイク36(音声検出手段)を新たに備えている。このマイク36で検出した音声信号は、制御部34に入力され、会話であるかどうかが判定される(詳細は後述)。
【0112】
図19は、本変形例における管理サーバS、基地局R、移動局Tの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図であり、上記実施形態の図17に対応する図である。図17と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0113】
図19では、移動局Tに関しステップST2、ステップST5、ステップST20を新たに設け、管理サーバSに関してステップSS30、ステップSS70に代えてステップSS30′、ステップSS70′を設けた点が図17と異なる。
【0114】
すなわち、移動局Tは、ステップSR10において基地局Rから送信された送信要求信号を無線部33で受信した後、新たに設けたステップST2において、マイク36で検出した音声信号を制御部34に入力する。制御部34は、その後のステップST5において、ステップST2で検出した音声信号の出力レベルに基づき、この例では所定のしきい値を超えているかどうかにより(あるいはさらに周波数や持続性等を考慮してもよい)検出した音声が会話であるかどうかを判定する(会話判定手段)。出力レベルがしきい値未満である場合はステップST5の判定が満たされず、図17と同様のステップST10に移り、前述と同様、移動局Tの無線部33が、アンテナ32を介し対応する距離検出用の電波信号を送信する。一方、出力レベルがしきい値以上であった場合はステップST5の判定が満たされ、新たに設けたステップST20に移る。ステップST20では、会話検出に対応した会話信号を生成し、無線部33がその会話信号を含む距離検出用の電波信号をアンテナ32を介して上記基地局Rへ送信する(会話信号送信手段)。なお、ステップST5及びステップST20が、各請求項記載の会話検出手段を構成する。
【0115】
上記ステップST10又はステップST20において移動局Tから送信された距離検出用の電波信号は、上記実施形態と同様、各基地局R1〜R4の無線部16で、ステップSR20においてアンテナ12を介し受信される。その後、上記同様、到来時刻検出部19がそのときの受信時刻情報(会話信号がある場合は会話信号を含む)を管理サーバSに出力し、管理サーバSのCPU21はステップSS20において、各基地局R1〜R4から入力した受信時刻の差に基づき、移動局T1〜T4の位置座標を算出する(位置検出手段)。
【0116】
その後、新たに設けたステップSS30′において、上記ステップSS30と同様、管理サーバSのCPU21が、上記ステップSS20で算出した、コミュニケーション要素としての各移動局Tの位置座標及び位置検出時刻を管理サーバSの上記社員位置データベースに書き込んで(コミュニケーション要素記録手段)各移動局Tの位置履歴を更新する。このとき、基地局Rから入力した距離検出用の電波信号に会話信号が含まれていた場合(ステップST20参照)は、その会話信号があった旨(後述の図20に示すフラグ「1」参照)をコミュニケーション要素として社員位置データベースの対応する上記位置座標及び位置検出時刻と併せて書き込む。基地局Rから入力した距離検出用の電波信号に会話信号が含まれていない場合(ステップST10参照)は、会話信号がなかった旨(後述の図20に示すフラグ「0」参照)をコミュニケーション要素として社員位置データベースの対応する上記位置座標及び位置検出時刻と併せて書き込む。
【0117】
その後のステップSS40、ステップSS50、ステップSS60は、図17と同様であり、管理者Kからコミュニケーション活発度の算出の指示入力があったら、表示部24でコミュニケーション活発度の算出・表示条件の指示入力を促し、入力がされたら新たに設けたステップSS70′へ移る
【0118】
ステップSS70′では、上記ステップSS70と同様、ステップSS60で管理者Kが入力した算出条件に応じて、管理サーバSのCPU21が、上記ステップSS30′で更新された各移動局Tの位置履歴データベースに基づき、上述した算出方法でコミュニケーション活発度を算出する(コミュニケーション活発度算出手段)。このとき、上記実施形態の(D−3)と異なり、本変形例では、複数の移動局T同士が所定範囲内(この例では同じ座標)に位置し、かつ、上記フラグが「1」である場合に限り、移動局T1〜T4を会話状態であると認識する。そして、所定の時刻範囲(区間)における、複数の移動局Tが同じ座標に位置しかつフラグが「1」である時間範囲の累積値(この例では秒の累積値)をコミュニケーション活発度として算出する。
【0119】
その後のステップSS80での表示及びその表示態様は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0120】
図20は、本変形例における上記社員位置データベースを表す図であり、上記図10に対応する図である。図20において、この社員位置データベースでは、前述したように、1秒間隔の各検出時刻における移動局T1,T2,T3,T4の位置に加え、及び移動局T1,T2,T3,T4の会話信号の有無(会話信号あり:フラグ「1」、会話信号なし:フラグ「0」)がコミュニケーション要素として記憶されている。管理サーバSは、このデータベースにより移動局T1〜T4の位置履歴と会話信号履歴とを取得することができ、上述したように、複数の移動局Tの位置が同じ座標に位置し、かつ、フラグが「1」である移動局T1〜T4を会話状態であると認識する。
【0121】
図20に示す例では、移動局T1(言い換えれば社員P1)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時23分57秒までの12秒間、居室Z2での社員P1の席の位置(後述の図21参照)である座標(15,4)に位置し、フラグは「0」である。その後、11時23分58秒から11時24分08秒までの10秒間、同じ座標(15,4)に位置し、フラグは「1」である。さらにその後、11時24分09秒から11時24分15秒までの6秒間、同じ座標(15,4)に位置し、フラグは「0」である。
【0122】
移動局T2(言い換えれば社員P2)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時23分48秒までの3秒間、社員P2の席の位置(後述の図21参照)である座標(17,4)に位置し、フラグは「0」である。その後、11時23分50秒から11時23分57秒までの7秒間、社員P1の席の位置である上記座標(15,4)に位置し、フラグは「0」である。さらにその後、11時23分58秒から11時24分08秒までの10秒間、社員P1の席の位置である上記座標(15,4)に位置し、フラグは「1」である。そして、11時24分10秒から11時24分15秒までの5秒間、社員P2の席の位置である上記座標(17,4)に位置し、フラグは「0」である。
【0123】
移動局T3(言い換えれば社員P3)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間、社員P3の席の位置(後述の図21参照)である座標(15,1)に位置し、フラグは「0」である。
【0124】
移動局T4(言い換えれば社員P4)は、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間、社員P4の席の位置(後述の図21参照)である座標(17,1)に位置し、フラグは「0」である。
【0125】
以上により、○○年△月×日11時23分45秒から11時24分15秒までの30秒間の区間では、以下のような会話状態を検出することができる。すなわち、11時23分45秒から11時23分48秒までの3秒間、社員P1、社員P2、社員P3、社員P4がそれぞれ自分の席に位置し、誰も互いに会話していない状態である(図21参照)。その後、社員P2の移動により、11時23分50秒から11時23分57秒までの7秒間、社員P1及び社員P2が、社員P1の席(座標(15,4))に位置しているが、フラグは「0」であるので、会話していない状態(例えば、社員P1の手が空くのを社員P2が待っている、等)である。(図22参照)そして、11時23分58秒から11時24分08秒までの10秒間、社員P1及び社員P2が、社員P1の席(座標(15,4))に位置し、フラグは「1」であるので、この2名での会話状態となる(図23参照)。
【0126】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。またこれに加え、本変形例では、上述したように、移動局Tにマイク36を設けて音声を検出し、その検出結果に基づき会話状態を検出する。このようにして移動局T側で会話状態を直接検出し、管理サーバSでその検出結果を加味してコミュニケーション活発度を算出する。これにより、会話している状態をより確実に反映させた形で、指標化を行うことができる。
【0127】
このとき特に、マイク36で継続的に音声レベルとして検出される検出結果に基づき移動局Tにおいて会話か非会話かを判定し、会話状態である場合には対応する会話信号の形に変換して基地局Rへ送信する。このような信号化を行うことにより、管理サーバSが当該会話信号の有無の形で時刻ごとに確実に記録することができ(ステップSS30′参照)、コミュニケーション活発度を、その会話信号の有無を加味した形で算出することができる。すなわち、音声検出結果を会話の有無に変換することで、演算内容に組み込んだ形で容易かつ確実に指標化を行うことができる。
【0128】
(2)場所に応じコミュニケーション活発度を補正する場合
本変形例は、会話をしている場所が、その会話の濃密さや会話内容と一定の相関関係がある場合に対応するものである。すなわち、本変形例では、社員P同士が上記部屋Z1〜Z3,Mや廊下Bのうちどの領域に存在するかに応じて、コミュニケーション活発度を補正する場合である。
【0129】
例えば図24に示すように、社員P1と社員P2とがミーティングスペースMaにおいて会話している場合と、例えば図25に示すように、社員P1と社員P2とがトイレZ3において会話している場合とでは、会話の性質(会話の濃密さや会話内容等)は一般的には異なる。ミーティングスペースMaにおける会話であれば、会議(濃密な会話)である可能性が高く、トイレZ3における会話であれば、雑談である可能性が高い。すなわち、各社員Pの存在する領域により、コミュニケーション(会話)の性質が異なるので、それを加味した形でコミュニケーション活発度を補正することができる。
【0130】
図26は、本変形例における管理サーバS、基地局R、移動局Tの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図であり、上記図17及び図19に対応する図である。図17と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0131】
図26では、管理サーバSに関してステップSS70とステップSS80との間に、新たにステップSS75を設けた点が図17と異なる。上記ステップSS70において前述の手法によりコミュニケーション活発度を算出した後、ステップSS75に移る。
【0132】
ステップSS75では、ステップSS20での位置検出結果に基づき、ステップSS70でコミュニケーション活発度を算出された社員P同士が上記部屋Z1〜Z3,Mや廊下Bのうちどの領域に存在するかに応じ、コミュニケーション活発度を補正する(第1補正手段)。この例では、ステップSS70で算出したコミュニケーション活発度に、重み係数を乗じる(詳細は後述)。
【0133】
図27は、上記補正を行うときの、重み係数の一例を表す図である。図示のように、この例では、ミーティングスペースMは重み係数3、居室Z2は重み係数2、廊下Bは重み係数1、トイレZ3は重み係数0.5となっている。
【0134】
本変形例によれば、場所による会話の性質の違いに対応して、さらにきめ細やかな指標化を行うことができ、利便性が向上する。特に、会話の性質の違いを、重み係数の値の違いで数値化して特徴づけ、確実に指標化することができる。
【0135】
なお、上記変形例において、例えばトイレZ3や廊下B等を非算出領域(例えば管理者Kが設定する)として重み係数を0に設定し、コミュニケーション活発度を算出しないようにしてもよい。この場合、雑談を除外した仕事の話等、必要のない場所でのコミュニケーション活発度を算出しない(言い換えれば必要な場所でのみ算出する)ようにすることができる。
【0136】
(3)備品に応じコミュニケーション活発度を補正する場合
上記(2)のようにコミュニケーション活発度の補正を行う際、社員P同士が上記部屋Z1〜Z3,Mのどの備品の近傍に存在するかに応じて、コミュニケーション活発度を補正するようにしてもよい。
【0137】
例えば図28に示すように、社員P1と社員P2とがミーティングスペースMbのホワイトボードWBの近傍において会話している場合は会議(濃密な会話)である可能性が高く、例えば図29に示すように社員P1と社員P2とが廊下Bにおいて会話している場合は雑談である可能性が高く、例えば図30に示すように、社員P1と社員P2とが居室Z2のデスクDK2の近傍において会話している場合とは、仕事の話である可能性が高い。このような点に着目すれば、上記(2)の変形例と同様の重み係数(各社員Pがどの備品の近傍に存在するかに対応して設定される)を用い、図26のステップSS75(第2補正手段を構成する)で対応する重み係数を乗じることでコミュニケーション活発度を補正することができる。
【0138】
図31は、上記補正を行うときの、重み係数の一例を表す図である。図示のように、この例では、ホワイトボードWBが設置してある領域では重み係数3、デスクDK2がある領域では重み係数2、同じくソファSF(図示せず)では重み係数0.5等となっている。
【0139】
本変形例によれば、上記(2)の変形例と同様、備品種類に基づく会話の性質の違いに対応して、さらにきめ細やかな指標化を行うことができ、利便性が向上する。
【0140】
(4)TOA方式
なお、以上においては、移動局Tからの距離検出用の電波信号に対する各基地局Rの受信時刻差により測距処理を行う、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、RSSI(受信信号強度)を用いる方式やTOA(Time of Arrival)方式を用いて測距処理を行うようにしてもよい。TOA方式の場合は移動局T1〜T4に前述の時計35を設けるともに移動局T1〜T4と基地局R1〜R4との時計合わせを行う。そして、移動局T1〜T4での送信時刻と基地局R1〜R4での受信時刻とにより、移動局T1〜T4から基地局R1〜R4までの到来時間(伝搬時間)を算出し、これに基づき、各移動局T1〜T4で位置検出処理を行うことができる。
【0141】
本変形例によっても、上記実施形態や各変形例と同様の効果を得る。
【0142】
なお、以上において、図2、図18等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0143】
また、図17、図19、図26に示すシーケンスは本発明を図示する手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0144】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0145】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の一実施形態であるコミュニケーション検出システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】コミュニケーション検出システムの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】移動局の所持の態様を表す図である。
【図4】移動局の位置検出の手法原理を説明するための説明図である。
【図5】社員の会話を管理者が眺めている様子を表す説明図である。
【図6】地図情報の概略を概念的に表した図である。
【図7】部屋データベースの主要部を表す図である。
【図8】居室データベースを表す図である。
【図9】居室における地図情報の概略を概念的に表した図である。
【図10】社員位置データベースを表す図である。
【図11】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図12】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図13】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図14】コミュニケーション活発度の算出例を表す図である。
【図15】コミュニケーション状態の可視化のための処理を説明する説明図である。
【図16】コミュニケーション状態の可視化表示の一例を表す図である。
【図17】管理サーバ、基地局、移動局の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。
【図18】会話音声の検出を行う変形例の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図19】管理サーバ、基地局、移動局の間で送受される各種信号の送受と制御動作を表すシーケンス図である。
【図20】社員位置データベースを表す図である。
【図21】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図22】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図23】コミュニケーション状態の例を説明する説明図である。
【図24】場所に応じコミュニケーション活発度を補正する変形例を説明する説明図である。
【図25】場所に応じコミュニケーション活発度を補正する変形例を説明する説明図である。
【図26】管理サーバ、基地局、移動局の間で送受される各種信号の送受と制御動作を表すシーケンス図である。
【図27】重み係数の一例を表す図である。
【図28】備品に応じコミュニケーション活発度を補正する変形例を説明する説明図である。
【図29】備品に応じコミュニケーション活発度を補正する変形例を説明する説明図である。
【図30】備品に応じコミュニケーション活発度を補正する変形例を説明する説明図である。
【図31】重み係数の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0147】
1 コミュニケーション検出システム
12 アンテナ(第2アンテナ手段)
24 表示部(コミュニケーション表示手段)
31 IC回路部(記憶部)
32 アンテナ(第1アンテナ手段)
36 マイク(音声検出手段)
P1〜P4 社員(被検出者)
R1〜R4 基地局
T1〜T4 移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する記憶部と情報を送受信する第1アンテナ手段とを備え、所定の移動可能領域を移動可能な複数の移動局と、
前記複数の移動局に対し無線通信により情報送受信を行う第2アンテナ手段を備えた基地局と
を有し、
前記複数の移動局をそれぞれ所持する複数の被検出者のコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出システムであって、
前記複数の移動局の前記第1アンテナ手段から送信され前記基地局の前記第2アンテナ手段で受信した電波信号に基づき、前記複数の移動局それぞれの位置
検出を行う位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づき、各移動局の前記被検出者に係わるコミュニケーション要素を記録するコミュニケーション要素記録手段と、
前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、前記複数の被検出者を構成する各被検出者同士のコミュニケーション活発度を算出するコミュニケーション活発度算出手段と、
前記コミュニケーション活発度算出手段でのコミュニケーション活発度の算出結果に基づき、対応するコミュニケーション状態の表示を行うコミュニケーション表示手段と
を有することを特徴とするコミュニケーション検出システム。
【請求項2】
前記コミュニケーション要素記録手段は、
前記コミュニケーション要素として、時刻ごとの各移動局の位置を記録し、
前記コミュニケーション活発度算出手段は、
複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内である時間の長さに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項3】
前記移動局は、
周囲の音声を検出する音声検出手段と、
前記音声検出手段での検出結果に基づき、対応する前記被検出者の会話状態を検出する会話検出手段と
を備えており、
前記コミュニケーション活発度算出手段は、
複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内であるかどうかと、それら移動局に関する前記会話検出手段の検出結果とに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出する
ことを特徴とする請求項2記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項4】
前記移動局の前記会話検出手段は、
前記音声検出手段での検出結果に基づき、前記被検出者が会話をしているかどうかを判定する会話判定手段と、
前記会話判定手段で前記被検出者が会話をしていると判定された場合、対応する会話信号を生成し、前記第1アンテナ手段を介して前記基地局へ送信する会話信号送信手段と
を備えており、
前記コミュニケーション要素記録手段は、
前記コミュニケーション要素として、時刻ごとの、各移動局の位置と前記会話信号の有無とを記録し、
前記コミュニケーション活発度算出手段は、
複数の前記移動局に係わる前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、移動局同士の距離が所定範囲内であるかどうかと、それら移動局の前記会話信号が存在するかどうかとに応じて、前記コミュニケーション活発度を算出する
ことを特徴とする請求項3記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項5】
前記移動可能領域の地図情報と前記位置検出手段での位置検出結果とに基づき、前記コミュニケーション活発度算出手段で前記コミュニケーション活発度を算出された前記被検出者同士が前記移動可能領域のどの領域に存在するかに応じて、当該コミュニケーション活発度を補正する第1補正手段を有する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項6】
前記移動可能領域における所定の部品の配置情報を含む地図情報と前記位置検出手段での位置検出結果とに基づき、前記コミュニケーション活発度算出手段で前記コミュニケーション活発度を算出された前記被検出者同士が前記備品の近傍に存在するかに応じて、当該コミュニケーション活発度を補正する第2補正手段を有する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記被検出者同士が、前記移動可能領域のうち予め定められた所定領域に存在した場合、又は、前記備品の近傍に存在した場合は、対応する前記コミュニケーション活発度に対し、対応する重み係数を乗じて前記補正を行う
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項8】
前記コミュニケーション表示手段は、
前記コミュニケーション活発度算出手段で算出した前記コミュニケーション活発度が大きい被検出者同士のコミュニケーション表示が、それ以外の被検出者同士のコミュニケーション表示よりも強調されるような態様で、前記コミュニケーション状態の表示を行う
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項9】
前記コミュニケーション表示手段は、
特定の被検出者を基準として、当該被検出者と他の複数の被検出者それぞれとのコミュニケーション活発度の大小に応じた表示態様で、前記コミュニケーション状態の表示を行う
ことを特徴とする請求項8記載のコミュニケーション検出システム。
【請求項10】
複数の被検出者によるコミュニケーション状態を検出するコミュニケーション検出装置であって、
前記複数の被検出者の位置に基づき、各被検出者に係わるコミュニケーション要素を記録するコミュニケーション要素記録手段と、
前記コミュニケーション要素記録手段の記録内容に基づき、前記複数の被検出者を構成する各被検出者同士のコミュニケーション活発度を算出するコミュニケーション活発度算出手段と、
前記コミュニケーション活発度算出手段でのコミュニケーション活発度の算出結果に基づき、対応するコミュニケーション状態の表示を行うコミュニケーション表示手段と
を有することを特徴とするコミュニケーション検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2010−21700(P2010−21700A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179037(P2008−179037)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】