説明

コラーゲンパウダー及び化粧料等

【課題】表皮下への浸透が可能であり、また、副作用を伴うことなくコラーゲン線維の形成が可能なパウダーコラーゲンを提供すること。また、それを含む化粧料などを提供すること。
【解決手段】粒径が30nm〜900nmであり、三次元的に(長径/短径)が1.6以下であるコラーゲン粒子を10重量%以上含むコラーゲンパウダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンパウダー及び化粧料等に係る。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】韓国特許0360303号公報
【0003】
コラーゲンは、細胞で構成されている全ての生物つまり植物、魚や哺乳類その他の動物の真皮などの結合組織、骨、歯、靱帯、筋膜などを構成する繊維状蛋白質であり、保湿性のある性質を利用して整肌用の基礎化粧品に使用される。
【0004】
コラーゲンは、それが皮膚、結合組織、ならびに骨および歯中に存在する有機物質の主構成要素であるために高等脊椎動物における最も豊富な線維タンパク質であり、そして、人体中のタンパク質の総量のおよそ1/3に相当する。
【0005】
コラーゲン蛋白質のペプチド鎖を構成するアミノ酸は、(グリシン)−(アミノ酸X)−(アミノ酸Y)−とグリシンが3残基ごとに繰り返す一次構造を有する。多くの型のコラーゲンでは、このペプチド鎖が3本集まり、縄をなうようにお互いに巻きついて、らせん構造を形成する。これがコラーゲンの構成単位であり、トロポコラーゲンと呼ばれる。
【0006】
トロポコラーゲンが、少しずつづれてたくさん集まり、より太く長い線維を作る。これはコラーゲン細線維(collagen fibril)と呼ばれる。例えば、骨や軟骨の中のコラーゲンは、このコラーゲン細線維をつくっており骨基質、軟骨基質に詰まっている。
【0007】
コラーゲン細線維は、更に多くが寄り集まって、結合組織内で強大な線維を形成する。これがコラーゲン線維(collagen fiber)である。コラーゲン線維の太さは数μm〜数十μm程度で、コラーゲン線維は皮膚の真皮や腱などにつまっている。
年齢を重ねると血行が悪くなり、細胞に栄養が行き渡らないため、表皮を支えているコラーゲン線維の形成力が弱くなる。また、紫外線を浴びて肌に炎症が起きたり、ストレスなどで活性酸素が発生すると、コラーゲン線維が破壊される。
【0008】
血行不良、栄養不足などで、コラーゲン線維の形成が困難となる一方、コラーゲン線維が破壊されるためコラーゲン線維は減少していく。コラーゲン線維が破壊されると、その部分は陥没し、表皮もそれとともに陥没する。そのため、小じわが発生する。
【0009】
コラーゲン線維を再生させるために、コラーゲン線維の原料となるコラーゲンを外部から供給する試みがなされている。
【0010】
例えば、皮膚外用剤にコラーゲンを含有させ、その皮膚外用剤を表皮の表面に塗布している。コラーゲンは保湿作用を有するため表皮の表面に、コラーゲンを含有する皮膚外用剤を塗布すると、表面における保湿効果は生じる。しかし、コラーゲンは表皮下までは浸透することはなく、コラーゲン線維の再生はなされない。
【0011】
また、外部からコラーゲンを供給するために、表皮下へのコラーゲンの注射が行われる。しかし、注入されたコラーゲンはしばらく間は保持されるが、コラーゲン線維へ変換されることなく、しばらく後には分解されたり、体外から排出されてしまう。
【0012】
また、コラーゲンを経口により投与した場合にもコラーゲン線維へ変換されることなく体外に排出されてしまう確率が高い。
【0013】
これは、コラーゲンを異物として認識しているためではなかと推測される。
【0014】
一方、粉末の微粉化技術として、特許文献1に記載されている機械的手法(ドライプロセス)により微粉化する技術が知られている。
この技術は、ドライプロセスによる微粉化技術であり、20〜900nmの粒子の製造が可能となる。ドライプロセスであるため不純物成分の混入が少なくてすむ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、表皮下への浸透が可能であり、また、体内においてコラーゲン細維の形成が可能なパウダーコラーゲンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、粒径が900nm以下であり、三次元的に(長径/短径)が1.6以下であるコラーゲン粒子を10重量%以上含むコラーゲンパウダーである。
【0017】
請求項2に係る発明は、粒径が300nm以下である請求項1記載のコラーゲンパウダーである。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記コラーゲン粒子を30重量%以上含む請求項1又は2記載のコラーゲンパウダーである。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記コラーゲンパウダーは始発コラーゲンをドライプロセスにおいて粉砕して粒子化したものである請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーである。
【0020】
請求項5に係る発明は、不純物濃度が1000重量ppm以下である請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーである。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記不純物はゼラチンである請求項5記載のコラーゲンパウダーである。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを含む化粧料である。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記化粧料は、栄養クリーム、化粧水、クレンジング、エッセンスなどである請求項4記載の化粧料である。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを含む健康食品である。
【0025】
請求項11に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを溶解させたドリンク剤である。
請求項12に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを溶解させた清涼飲料水である。
請求項13に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを賦形した錠剤である。
【0026】
本発明のコラーゲンパウダーを用いた場合には、体内において異物として認識されないものと推測される。異物として認識されることなく体内のコラーゲン細維形成の原料として作用し、体内においてコラーゲン線維が形成される。
【0027】
また、コラーゲン線維形成のための原料が供給されると形成する細胞が活性化され、さらにコラーゲン線維産生促進及び免疫力が高まる。
また、コラーゲンは、皮膚外用剤として用いた場合には、表皮下まで到達する。
また、注射などにより注入した場合にも、異物として分解や排出されることなくコラーゲン線維形成のための原料となる。これは、外部からの異物であるにもかかわらず、異物とは認識されないためであると考えられる。
【発明の効果】
【0028】
表皮下への浸透が可能であり、また、体内において副作用を伴うことなくコラーゲン線維の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(始発材料)
本発明のコラーゲンパウダーを作成するための始発材料としては固形コラーゲンが好ましい。特に、塊状のコラーゲンでもよいが、パウダー状のコラーゲンが好ましい。
パウダー状のコラーゲンを用いることにより、特許文献1記載の装置により、本発明のコラーゲンパウダーを容易に作成することが可能となる。
【0030】
由来には限定されない。動物由来でも魚介類由来でもいい。
【0031】
魚介類に由来するコラーゲンとしては、通常公知の水産動物から得られるコラーゲンであればよく、特に限定はされないが、動物由来、魚類由来、植物由来のどちらでもよい。具体的には、例えば、魚類、貝類、軟体水産動物、節足水産動物、棘皮水産動物のほか、クラゲやホヤ等(以下、原料魚介類と称することがある。原料魚介類としては、魚鱗も含むとする。)から得られるコラーゲンなどが挙げられる。
なかでも、魚類における魚鱗から得られるコラーゲンが無色無臭であるという点で好ましい。これらコラーゲンは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。上記魚鱗としては、各種魚類から採取された鱗を用いることができる。具体的には、例えば、タイ科やマダイ亜科のマダイを用いることができ、その他にも、同科種のチダイ、ヒレコダイ、ヘダイ亜科のクロダイ、キチヌ、ヘダイ、キダイ亜科のキダイ等を用いることができる。
【0032】
原料魚介類からコラーゲンを抽出する方法としては、特に限定されるわけではなく、例えば、魚鱗を脱灰した後に酵素処理によってコラーゲンを抽出するといった方法を用いればよい。
(粒子化)
粒子化の方法としては、ドライプロセスにより行うことが好ましい。
ウエットプロセスにおいては処理液などが不純物として残留してしまう。特に化学反応により粒子状のコラーゲンを作成する際に混入する不純物は除去が困難である。特に、真空雰囲気中においてドライプロセスにより粒子化を行うことが好ましい。これにより不純物の含有量を大幅に(1重量%以下)に減少させることができる。
【0033】
さらに、粒径の大きさに応じて粉砕力を加減して粉砕することが好ましい。すなわち、粒径の大小にかかわりなく一定の粉砕力で粉砕を続けると、小さな粒径のものには必要以上の力が加わるため、余分なエネルギーは熱エネルギーとなって発熱する。粉砕チャンバ全体を外部的からマクロ的に強制冷却を行ったとしても、瞬間的かつミクロ的には発熱を伴うため、局部的には35℃を超えて、コラーゲンの一部は微少なゼラチンに変化してしまう。一旦ゼラチンに変化すると、外部冷却により冷却されたとしても元には戻らない。
【0034】
それに対して、この方法では、粒径に応じて加える粉砕力を加減(小さな粒径に対しては小さな粉砕力、大きな粒径に対しては大きな粉砕力)しているため局部的にも発熱を伴うことなく粉砕している。局部的にもゼラチン化しない温度以下となるような粉砕力で粉砕する。従って、ミクロ的にもゼラチンの発生を防いでいる。トータルの不純物料を1000ppm以下、さらには100ppm以下に低下させることが可能となる。
【0035】
また、この方法により粒子化するとμm以下まで微細化されるとともに、真球化も達成される。すなわち、突起状の部分は削られて球状化する。また、多角形状の角部も削られて球状化する。真球度として、三次元的に、長径(粒子の最も長い部分の径)/短径(粒子の最も短い部分の径)(=γ)は1.6以下と容易にすることができ、1.2以下とすることも可能となる。
【0036】
なお、γをより小さくしたい場合は、より長時間の粉砕を行えばよい。
(粒径)
本発明では、粒径は、900nm以下とする。900nm以下とすることにより体内へ投与した場合においてコラーゲン線維の形成が良好に行われる。特に300nm以下とすることによりコラーゲン線維の形成がより良好に行われる。製造の容易性を考えると下限としては20nmが好ましい。なお、全ての粒子が同じ粒径となる必要はなく、900nm以下の粒径を有していれば、異なった粒径の粒子の集合体であればよい。
【0037】
また、形状は、塊状より球状が好まし。頂点の突出が少ない形状が好ましい。前述した粉砕方法例においては粉砕時間を長くするほど頂点の突出は削られる。
【0038】
γが1.6を境界としてコラーゲン線維の形成性は大きく異なってくる。1.6以下とすることにより、コラーゲン線維の形成が急激に良好となる。1.2以下とすることによりさらに良好となる。
【0039】
粒径が900nm以下であり、γが1.6以下の粒子は全パウダー中10重量以上含まれていればよい。10重量%以上含む場合、コラーゲン線維の形成効果が生じる。30重量%以上とすることによりコラーゲン線維形成効果がより一層向上する。上限は100重量%であるが、50重量%以上においては効果が飽和するため30〜50重量%とすることが好ましい。
(不純物)
全パウダー中における不純物は1000重量ppm以下が好ましい。100ppm以下がより好ましい。ゼラチンも不純物として認識される。
(化粧品)
本発明に係るコラーゲンパウダーは、化粧品の成分として用いることができる。
例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジング水、パック、エッセンスなどに添加することが可能である。
(栄養剤)
各種ビタミン剤、鉄剤、カルシウム剤その他各種の栄養剤に含有させることも可能である。
(ドリンク剤等)
従来コラーゲンパウダーは水に対して不溶性と水溶性があるとされていた。本発明に係るコラーゲンパウダーは、粒子が小さくなることで、親水性が向上されることによって水溶性である。従って、水を有する物に対して溶解させて提供することができる。例えば、飲料水、ドリンク剤に溶解させることができる。医薬品系、非医薬品系の各種飲料水、ドリンク剤に用いることができる。
(錠剤)
本発明に係るコラーゲンは、賦形剤を用いて賦形することにより錠剤と経口投与することもできる。
ヒアルロン酸と併存させることも好ましい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
始発材料として、パウダー状のマリンコラーゲン(マグロのコラーゲン)を用意した。始発材料のTEM観察結果を図1に示す。
【0041】
この始発材料を、真空雰囲気中において粉砕して粒子化した。その際、局部的にも温度上昇が生じないように、小さい径のものには小さな粉砕力がかかるようにして粉砕を行った。粉砕後におけるパウダーのTEM観察結果を図2に示す。
【0042】
作成されたコラーゲンパウダーは、全て900nm以下であり、また、真球度γは1.6以下である。900nm以下でγが1.6以下の粒子が全体に占める割合は90重量%以上であった。また、ゼラチンは100ppm以下であった。
【0043】
このコラーゲンパウダーを水に溶解させた。
【0044】
コラーゲンパウダー溶解水を小じわが生じた表皮に塗布し、表皮部の弾力及び小じわの様子を観察した。その結果、弾力の増加が認められ、また、小じわは消失していた。
(比較例)
本例では、真球度γを1.6より大きくして試験を行った。
他の点は実施例1と同様とした。
【0045】
本例では、一時的な弾力の増加は認められたがすぐに弾力性のない状態に戻った。また、小じわの消失は認められなかった。
(従来例)
本例では、通常のマリンコラーゲンを用いて試験を行った。従来のマリンコラーゲンは、粒径は1μm以上である。
本例では、一時的な弾力の増加もなく、また、小じわの消失も認められなかった。
(実施例2)
本例では、不純物の量を1000ppm以上とした。
【0046】
他の点は実施例1と同様とした。
【0047】
本例では、弾力の増加、小じわの消失は認められたがその程度は実施例1の方が優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1における始発材料のTEM写真である。
【図2】実施例1におけるコラーゲンのTEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が900nm以下であり、三次元的に(長径/短径)が1.6以下であるコラーゲン粒子を10重量%以上含むコラーゲンパウダー。
【請求項2】
粒径が300nm以下である請求項1記載のコラーゲンパウダー。
【請求項3】
前記コラーゲン粒子を30重量%以上含む請求項1又は2記載のコラーゲンパウダー。
【請求項4】
前記コラーゲンパウダーは始発コラーゲンをドライプロセスにおいて粉砕して粒子化したものである請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダー。
【請求項5】
不純物濃度が1000重量ppm以下である請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダー。
【請求項6】
前記不純物はゼラチンである請求項5記載のコラーゲンパウダー。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを含む化粧料。
【請求項8】
前記化粧料は、栄養クリーム、化粧水、クレンジング、エッセンスである請求項4記載の化粧料。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを含む健康食品。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを含むビタミン剤その他の栄養剤。
【請求項11】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを溶解させたドリンク剤。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを溶解させた清涼飲料水
【請求項13】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のコラーゲンパウダーを賦形した錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108010(P2009−108010A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284597(P2007−284597)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(506204748)
【Fターム(参考)】