説明

コンクリートパネル型枠

【課題】 壁式構造のコンクリート住宅の躯体築造において、工場製作するコンクリートパネル型枠及び断熱材を付加したコンクリートパネル型枠を使用することによって、現場において必要な型枠施工日数を大幅に減少させ、完成までの工期短縮を図ると共に、断熱材である発泡ウレタンフォームの火災時燃焼の危険性、現場からの多量の産業廃棄物の発生、コンクリート外壁表面の乾燥ひび割れの発生等、従来工法が持つ問題を一挙に解決する型枠と断熱の施工法を提供する。
【解決手段】 工場製作したコンクリートパネル型枠(K1〜K11)を、現場に搬入し、壁躯体の両側、もしくは、床・屋根スラブの下側位置に、クレーンにて据え付ける。据え付け完了後、躯体コンクリートを打設する。これを基礎部から順次段階的に、屋根スラブまで 上方へと進めて施工する。コンクリートパネル型枠は躯体と一体化して緊結されるため、撤去不要であり、そのまま外壁・内壁、床・屋根スラブの表面材となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁式構造である鉄筋コンクリート建築物の壁及び2階床・屋根スラブの各躯体コンクリート打設において使用するコンクリートパネル型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
壁式構造の鉄筋コンクリート建築物の築造、とりわけ、躯体となる壁のコンクリート打設においては、耐力上必要な量の鉄筋を配筋した上で、通常、合板で構成された厚さ12mmの型枠を設計された躯体の厚さを確保して躯体の両側に設置する。躯体の設計厚さを保持し、打設したコンクリートの自重による圧力に型枠が耐えるようにするため、金属製のセパレーターを必要間隔に型枠に配置し、これらを両面の型枠外側に設置した単管、端角材、桟木等にフォームタイによって取り付けて、型枠を強固に固定する。
【0003】
コンクリートの打設完了後には、1週間程度の養生期間をおいて、型枠等を解体する。解体した型枠は、次の工事に転用して利用可能であるが、概ね4回以上転用して利用した場合は、それ以上の利用は困難となるため廃棄物として処分する。
【0004】
2階床スラブ及び屋根スラブのコンクリート打設においては、通常、合板で構成された厚さ12mmの型枠を所定高さに水平に敷き並べ、この上に耐力上必要な量の鉄筋を配筋する。この場合、型枠の下面に根太パイプ、大引材、パイプサポートから成る支保工を下方の強度がある床面等から立ち上げて型枠を所定の高さに強固に保持する。これによって、コンクリートの打設時の作業員荷重とコンクリート死荷重を受けても移動、変形しないよう強固に固定する。
【0005】
スラブコンクリート打設完了後には、必要な養生期間経過後に支保工及び型枠等を解体 する。解体した型枠の転用及び廃棄物処分については、段落「0003」に記載のとおりである。パイプサポートについては鋼製であるため耐久性が高く、長期間かつ数回の使用に耐え得る。
【0006】
建築物全体の躯体の完成後、外断熱工法の場合は外壁の外側に、または、内断熱工法の場合は外壁の内側・室内側に断熱材を施工する。断熱材はポリスチレン系の板状の製品を一面に張り合わせて接着したり、発泡する断熱材を吹き付けたりして施工する。
【0007】
内断熱工法で断熱材に発砲ウレタンフォームを使用する場合は、設計上の断熱材厚さを確保するため、厚さ管理のための目安材を壁に一定間隔で設置した後、一様に発砲ウレタンフォームを吹き付ける。この場合、厚さの出来形不足を防ぐため、厚さが設計厚より多少上回るように吹き付けるのが通例である。これによって設計厚さより過大厚となった凸状となった部分については、その後、これを透き取ることによって設計値どおりの一様な厚さとする。この透き取りの結果、透き取られた発泡ウレタンフォームの硬化材は集められて、産業廃棄物として処理される。
【0008】
外断熱工法の場合は、型枠解体後に、通常、壁躯体に桟木を打ち付け、この桟木を介して板状の断熱材を張り合わせ施工し、さらに、その上に耐火性を有する外壁化粧仕上げ材を張って完成させる。もしくは、耐火性を有する外壁化粧仕上げ材と必要な厚さを持つ断熱材とを一体成型した製品を壁躯体に張り付けたりして施工する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の工法では、建築現場における型枠の設置、これを固定するセパレーター、フォームタイ、単管、端角材、桟木の設置作業に相当の期間が必要とされる。また、型枠等の解体にも数日の必要日数が不可欠である。一般に、鉄筋コンクリート構造の建築物においては、木造軸組み建築物と比較して長期間の施工日数が必要とされる。この要因としては、コンクリートの養生期間が必要とされる他に、この型枠に関する施工日数が比較的大きく必要とされることが挙げられる。
【0010】
解体されたコンクリート型枠は、その転用する使用回数が概ね4回以上となったものは、セパレーターを通すために開けられた孔の数が無視できないほど多くなるため、相応の孔閉鎖の補修処理をした場合でも、それ以上の使用が困難となる。このため、これらは産業廃棄物として処分される。資源の有効利用の観点からいって、産業廃棄物を生じさせない施工方法が求められる。
【0011】
建築物全体の躯体完成後に実施する断熱材の施工は、外断熱工法または内断熱工法のいずれの場合においても、建築物の規模にも左右されるが、概ね、ポリスチレン系製品の張り合わせ接着の場合は1週間程度、発泡断熱材の吹き付けの場合は数日間程度の施工日数を必要とする。
【0012】
内断熱工法の場合、設計厚さより過大に施工された断熱材、硬化した発砲ウレタンフォームは、透き取られて集められ、産業廃棄物として処分される。資源の有効利用、地球環境保全という観点から、このような施工方法の改善が求められる。
【0013】
断熱材は、基本的に可燃性である。建物内外における火災発生時には、直接的な火に接したり、400〜500度の発火点以上の高温となったりすると燃焼する。隣家火災による延焼の恐れがある場合、外断熱工法による壁躯体の外側の断熱材は、耐火性を有する外壁仕上げ材で覆うため、断熱材が熱によって変形したり燃焼したりする危険性は少ない。これに対して、内断熱工法の場合は、通常、断熱材に接して室内側に耐火性を有する内壁仕上げ材を覆うことはしないため、室内火災よって断熱材が燃焼する危険性が大きい。発泡ウレタンフォームは、その高い断熱性機能が評価されて、木造住宅、コンクリート住宅を問わず、現在では、幅広く断熱材として使用されているが、この場合、火災発生時の断熱材の燃焼によって発生するガスが住居人の人体に悪影響を与えて、迅速な避難を不可能にする危険性がある。断熱材の燃焼危険性を回避する施工法が必要とされる。
【0014】
コンクリート造による建築物においては、コンクリート打設後、セメントの水和作用による硬化を良好に進行させるため十分な養生を行う。これによって、コンクリートの表面に発生する乾燥ひび割れを極力少なくさせる。一方、完全にこの発生を防ぐことは困難であるため、誘導的にひび割れを発生させる部分を誘発目地として一定間隔で設けることを行う。また、この誘発目地において発生する乾燥ひび割れが、構造設計上必要な壁躯体の厚さ内部にまで及ぶことを防ぐため、コンクリートの打設厚さは、通常20mm程度大きくする。これを増打(ふかし)と呼んでいる。コンクリート造による建築物においては、このような乾燥ひび割れ対策は、必要不可欠な重要事項であり、これをなくすことはできない現状となっている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、壁式構造のコンクリート建築物・壁躯体の築造に使用する型枠であり、コンクリート製のパネル状の本体(1)から成り、本体の上面に設けられた吊り金具(2)にクレーンの吊りワイヤーを緊結して本体を吊り上げ、壁躯体の室内側の据え付け面に先行して設置されたアンカーボルトを本体の底版部に設けられたアンカー孔(3)に挿入して据え下ろす、又、壁躯体中心位置に組み立てられた鉄筋を挟んだ屋外側に同様に据え付けられたコンクリートパネル型枠とは、本体の上面に設けられた保持バー設置孔(4)と、対面するコンクリートパネル型枠に設けられた保持バー設置孔の双方に保持バー(5)を挿入して水平に固定する、さらに、この後、両コンクリートパネル型枠に挟まれた内部空間に打設され養生・硬化したコンクリートの壁躯体とは、壁躯体側の本体の側面に設けられた緊結バー(6)によって強固かつ一体的に結合され、撤去することなくそのまま壁の表面材となる型枠であり、本体の底版に前記記載のアンカー孔(3)を有することを特徴とするコンクリートパネル型枠(K1)である。
【0016】
また、上記目的を達成するため、請求項2記載の発明は、請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、本体の高さ寸法は、本体の上面を1階床スラブ仕上げ高さと同一とするため、基礎梁躯体を挟んだ反対側に据え付けられたコンクリートパネル型枠(K1)と比較して大きい、このため、保持バー設置孔(4)は、本体の上面ではなく壁面部に設けて保持バー(5)の水平な設置を可能とする、さらに、基礎梁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させ、基礎部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K2) である。
【0017】
また、上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、当型枠の下側位置に先行して据え付けられたコンクリートパネル型枠の本体の上面に設けられた吊り金具(2)を本体の底面から本体に挿入して固定するため、アンカー孔(3)に替えて吊り金具挿入孔(9)を底版部に設け、また、壁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させ、各階下段部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K3) である。
【0018】
また、上記目的を達成するために、請求項4記載の発明は、請求項3記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、本体の高さ寸法は、本体の上面を2階床スラブ仕上げ高さと同一とするため、壁躯体を挟んだ反対側に据え付けられたコンクリートパネル型枠(K5)と比較して大きい、このため、保持バー設置孔(4)は、本体の上面ではなく壁面部に設けて保持バー(5)の水平な設置を可能とし、また、1階上段部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K4) である。
【0019】
また、上記目的を達成するために、請求項5記載の発明は、請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、各階室内側において下段部に先行して据え付けられたコンクリートパネル型枠(K1)の上側に使用するものであり、このため、コンクリートパネル型枠(K1)の本体の上面に設けられた吊り金具(2)を本体の底面から本体に挿入して固定するため、アンカー孔(3)に替えて吊り金具挿入孔(9)を底版部に設け、また、各階最上部壁の室内側において、2階スラブもしくは屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル桁型枠を据え付けることを可能とするため、コンクリートパネル型枠の本体の上面高さに水平なパネル受け面を壁躯体と一体構造として設けることを可能とし、各階上段部の室内側の梁間方向に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K5)である。
【0020】
また、上記目的を達成するために、請求項6記載の発明は、請求項5記載のコンクリートパネル型枠と同じ構造及び仕様の建築用型枠であって、2階最上部において桁行方向に据え付けて屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠 (K11)を据え付け可能とするため、本体の上面が本体の幅方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を有し、2階上段部の室内側の桁行方向の壁面に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K6)である。
【0021】
また、上記目的を達成するために、請求項7記載の発明は、請求項1記載のコンクリートパネル型枠であって、2階上段部の壁躯体と屋根庇部躯体との一体的な築造を可能とするため、壁躯体築造のための壁型枠となる鉛直部分は、本体の上面に吊り金具(2)、室内側の側面に保持バー設置孔(4)と緊結バー(6)、下面に吊り金具挿入孔(9) を持ち、又、壁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を一定の厚さで吹き付け一体化させたコンクリートパネル型枠(K4)と同様の構造及び仕様を有し、この屋外側上部に片持構造の庇桁受部(12、13、14)を設け、外壁の外断熱用型枠として、また、庇部躯体の一体的築造のための型枠として、2階上段部の屋外側の梁間方向に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K7)である。
【0022】
また、上記目的を達成するために、請求項8記載の発明は、請求項7記載のコンクリートパネル型枠と同じ構造及び仕様の建築用型枠であって、2階最上部において桁行方向に据え付けて屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠(K11)
を据え付け可能とするため、本体の上面及び片持構造の庇桁受部(12、13、14)が本体の幅方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配となる形状を有し、2階上段部の室内側の桁行方向の壁面に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K8)である。
【0023】
また、上記目的を達成するために、請求項9記載の発明は、請求項1記載のコンクリートパネル型枠であって、高さ方向である長辺の長さを大きくし、かつ、水平な横使いにして、2階床スラブコンリートを打設するための型枠として使用する、これを可能とするため、パネル本体(15)の下側の面には長辺方向に、構造耐力上必要な高さをもつ縦リブ(16)を設け、引張側となる縦リブ(16)の下側内部には引張鉄筋を(17)を配置し、また、据え付け作業用にパネル本体の上面に吊り上げ鉄筋(18)を設け、長辺方向の端部に設けたスラブアンカー孔(19)に、先行作業によって設置された壁躯体の水平なパネル受け面のアンカーを挿入しながら据え下す、並びに、据え下し後には、隣接するコンクリートパネル型枠どうしを側面側の縦リブ内に設けられたボルト挿入孔(20)に所定のボルトを通して締め付け、本体どうしを堅固に緊結し、1階最上部の室内全面にて使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K9)である。
【0024】
また、上記目的を達成するために、請求項10記載の発明は、請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K9) を使用した建築用型枠であって、屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠であり、パネル本体(15)の長辺方向の端部底版に水平なパネル受け面(21)及びこれと直行して鉛直となる端部面(22)を設けて、本体の長辺方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を持たせた据え付けを可能とし、かつ、パネル本体の上面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させて断熱性能を持たせたものであり、2階最上部において梁間方向に据え付け、室内全面に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K10)である。
【0025】
また、上記目的を達成するために、請求項11記載の発明は、請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K9) を使用した建築用型枠であって、屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠であり、パネル本体(15)の短辺方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を持たせ、また、パネル本体(15)の短辺方向の側面、及び、パネル本体の長辺方向の端部の底版部に設けられたアンカー孔(17)を鉛直として、屋根勾配に合う据え付けを可能とする、かつ、本体の上面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させて断熱性能を持たせたものであり、2階最上部において桁行方向に据え付け、室内全面に使用することを特徴とする、コンクリートパネル型枠(K11) である。
【0026】
以上記載した、これらの発明のコンクリートパネル型枠は、通常一般にあるコンクリート製品製作工場にて製作することが可能である。住宅の建築現場における土工事、基礎工事の着工と同時期に工場製作に着手することによって、基礎工事の完了と同時に、コンクリートパネル型枠の、工場からの搬入・現場での据え付け工事の着手を行うことが可能である。1個当たりの製品重量は、最大のもので500Kg程度であるため、躯体の外周に接近が可能である場合などは、汎用のユニッククレーンによって据え付けが出来る。所定の据え付けマニュアルに基づき、正確な位置に水平かつ鉛直に据え付けていく。これによって、従来の合板から成る型枠の現場における施工方法と比較して、大幅な施工日数の短縮が可能となる。
【0027】
また、さらに、この発明の断熱コンクリートパネル型枠は、撤去することなく、そのまま内外壁の表面材として恒久使用をするものである。従来のコンクリート型枠の脱型作業を不要とし、これに必要な作業日数をゼロとすることができる。これによって、この分、さらに、施工日数の短縮を可能とする。
【0028】
この発明のコンクリートパネル型枠は、工場において製作した型枠材を現場に搬入して据え付けるものであるとともに、コンクリート打設完了による建築躯体完成後は、そのまま表面材として残置して恒久使用する。現場において型枠を設置する従来工法では、施工中に少なからずの型枠の端材が発生するともに、建築躯体完成後に撤去した型枠の内、転用可能な使用回数以上となった型枠を産業廃棄物として処分することとなる。この発明のコンクリートパネル型枠を使用する場合は、これらの事態が一切発生しない。
【0029】
この発明のコンクリートパネル型枠は、工場において製作した断熱材一体型の製品を現場に搬入して据え付けるものであるため、従来工法で行う型枠解体後の現場における断熱材の吹き付け工事等の施工は必要がない。このため、現場における断熱材施工の作業日数を必要としない。このため、この分、施工日数の短縮を可能とする。
【0030】
前記記載のとおり、現場における断熱材施工がないため、断熱材に発泡ウレタンフォームを使用した場合に生じる設計厚さを超えた過剰の硬化した発泡ウレタンフォームを透きとって集め、これを産業廃棄物として処分する事態が一切発生しない。
【0031】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用した場合、躯体の完成後、型枠の一面に一様に密着成形された発泡ウレタンフォーム硬化材は、このコンクリートパネル型枠と現場で打設され硬化した躯体コンクリートとによってサンドイッチされるため、全体がコンクリート材によって内包される。これによって、火災発生時には、このコンクリートパネル型枠の発泡ウレタンフォーム硬化材は直接火炎に接することはなく、耐火材であるコンクリートが介在することによって燃焼することはない。燃焼危険リスクのない断熱施工方法である。
【0032】
この発明のコンクリートパネル型枠は、工場において製作するものであるため、製作型枠内へのコンクリート打設後は、工場内で十分な湿潤養生を行うことができる。このため、製作型枠の脱型後のコンクリート表面は、きわめて密実・堅牢で、また乾燥ひび割れのない仕上げとすることができる。このような工場製作部材を現場躯体コンクリート打設用の型枠として使用し、また、そのまま残置し躯体の恒久的な表面材とすることから、現場にて打設する場合に発生するコンクリートの表面乾燥の問題が生じない。従来工法において発生していた建築物躯体表面のコンクリートに発生するひび割れは、当コンクリートパネル型枠を使用した建築物においては発生しない。同時に、従来工法において施工していた誘発目地、そして、これを設置するために必要となっていた躯体厚さの増打ち(ふかし)の双方を共に不要とする。
【発明の効果】
【0033】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、現場での型枠工事は基本的には不要となり、このことによって、大幅な工期短縮が可能となる。また、この発明のコンクリートパネル型枠はコンクリート打設・養生後の撤去が不要であるため、従来の型枠の脱型作業日数をゼロとすることができる。これによって、一般的には、さらに概ね約1週間程度の工期短縮ができる。また、断熱材一体型の部材であるため、現場における断熱材の吹き付け等の施工の工期が全くゼロとなる。これらを合わせると、標準的な一般の戸建住宅では、概括的に言えば概ね1箇月程度の工期短縮が可能となる。
【0034】
この発明のスラブ用コンクリートパネル桁型枠及び屋根用コンクリートパネル桁型枠の使用は、支保工及びパイプサポートの使用を不要とするため、当桁型枠の設置完了直後から、下階室内空間での内装及び設備工事等の作業を可能とする。2階スラブもしくは屋根スラブの配筋、コンクリート打設、養生等の施工期間中にも、これと同時進行で前記作業の施工を進めることができる。従来工法では、打設したスラブコンクリートの硬化・養生による所定強度発揮後のパイプサポートを含む支保工及び型枠の撤去完了まで、下階室内空間での作業が不能であったが、これが解消される。標準的な一般の戸建住宅では、従来工法と比較して、概ね1箇月程度の工期短縮が可能となる。
【0035】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、従来工法において、現場での型枠加工時に発生していた型枠端材、耐用回数まで転用した後の再使用不可能となった型枠、および、現場吹き付けの結果、設計厚さ以上に硬化したため透き取られた発泡ウレタンフォーム硬化材などの産廃処分物が一切発生しない。
【0036】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用した場合、断熱材として使用する発泡ウレタンフォーム硬化材は、耐火材料であるコンクリートに全面的に被覆される構造となることによって、火災発生時でも直接火炎に接することはなく、断熱材の燃焼危険リスクが全くなくなる。人体に悪影響を与える可能性がある燃焼ガス発生の危険性がなく、安全安心である断熱性抜群住宅の建築を可能とする。
【0037】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用してコンクリート打ち放し仕上げとする場合、外壁仕上げの表面はきわめて密実・堅牢となり、また乾燥ひび割れが発生しない外壁を持つコンクリート住宅を可能とする。
【0038】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、従来工法において施工したコンクリート住宅においては、仕上げ表面には、型枠設置時に使用したPコン跡が残り、この孔を防水モルタル埋めするものの、一定の間隔で仕上げ表面に丸いモルタル処理跡が残る。これを一切なくした綺麗な仕上げ表面とすることができる。
【0039】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、従来工法において施工していた誘発目地、そして、これを設置するために必要となっていた躯体厚さの増打ち(ふかし)の双方を共に不要とする。
【0040】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、従来工法において現場にて施工している型枠工事、支保工工事(双方とも設置・撤去共)、及び、断熱工事をなくすことができる、また、ひび割れ防止対策として施工していた誘発目地を不要とすることができることによって、必要となっていた躯体厚さの増打ち(ふかし)に関する工事費を削減できる。これらを合計すると、相応のコスト縮減を図ることができる。
【0041】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用し外断熱工法とした場合、建物の周辺地盤に接する部分の断熱材は、当コンクリートパネル型枠のコンクリートパネル部分と壁の基礎梁躯体のコンクリートとの間にサンドイッチされるため、地盤の土の部分には全く接することがない。また、当コンクリートパネル型枠どうしの水平な、または鉛直な突き合わせ部は、面タッチの構造となっており、当コンクリートパネル型枠の立て込み施工時に、この面に接着剤を塗布することによって、隙間の発生は全く生じない。このことによって、地中に生息する白ありは断熱材には寄りつくことができない。この工法そのものが、白あり対策を全く不要とする。
【0042】
この発明のコンクリートパネル型枠を使用することにより、従来工法では施工不可能であった隣地境界線からの至近距離における外壁の施工が可能となる。従来工法では、外壁の屋外側には、型枠材の固定のために桟木、単管等端角材、フォームタイを施工する。また、この施工のために、外壁外周には足場を設置しなければならない。これらの設置幅を確保するため、最低でも、外壁仕上げ面は隣地境界線から60〜70cm程度は離す必要がある。この発明のコンクリートパネル型枠を使用する場合は、当型枠を吊り上げ、据え下ろすクレーンの設置位置を確保しなければならないが、この確保を行えば、隣地境界線から10cm程度の至近距離における外壁の施工を可能とする。ただし、室内側には、コンクリートパネル型枠上面での保持バーの設置、コンクリートパネル型枠室内側上部に設置されたインサートへの仮設材の取り付け、躯体コンクリート打設時における打ち止め面の均し仕上げ等を行うために、最低でも脚立使用による水平足場は必要である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】コンクリートパネル型枠の使用箇所図
【図2】コンクリートパネル型枠立て込み図
【図3】2階床スラブコンクリート打設用に使用するコンクリートパネル型枠立て込み図
【図4】コンクリートパネル型枠K1の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図5】コンクリートパネル型枠K2の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図6】コンクリートパネル型枠K3の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図7】コンクリートパネル型枠K4の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図8】コンクリートパネル型枠K5の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図9】コンクリートパネル型枠K6 (K11使用対応部材)の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図10】コンクリートパネル型枠K7の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図11】コンクリートパネル型枠K7の斜視図
【図12】コンクリートパネル型枠K8 (K11使用対応部材)の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図13】2階スラブ用コンクリートパネル型枠K9の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図14】屋根用コンクリートパネル型枠(梁間方向使用)K10の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図15】屋根用コンクリートパネル型枠K11(桁行方向使用部材)の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)
【図16】パネル保持バー設置孔・斜視図 (A)、(B)、(C)
【図17】壁延長方向に使用するセッティングツールの平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)、壁直角方向に使用するセッティングツールの平面図(D)、正面図(E)、側面図(F)
【図18】セッティングツールの使用斜視図
【図19】パネル保持バー概要図
【図20】コンクリートパネル型枠の製作型枠の例示概要図
【図21】発泡ウレタンフォーム付加型枠の頂版(A)、側底版(B)、注入蓋(C)の各例示概要図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0045】
この発明のコンクリートパネル型枠は、工場にて製作したパネル状のコンクリート製の型枠を外壁部の室内側に、また、断熱材を付加したコンクリートパネル型枠を外断熱工法として外壁部の屋外側に、もしくは、内断熱工法とする場合は断熱材を付加したコンクリートパネル型枠を同じく外壁部の室内側に、それぞれ現場搬入して、クレーンにて所定位置に据え付けていく。据え付け後、水平・垂直に堅固に固定してから、壁躯体コンクリートを打設する。また、同じくパネル状のコンクリート製の型枠を、2階・屋根スラブの下面に接する高さに設置し、鉄筋を組み立てた後、スラブコンクリートを打設する。これらは、順次、基礎部から始めて、据え付け→固定→躯体コンクリート打設→養生を繰り返しながら、屋根スラブ打設まで段階的に行う。打設した躯体コンクリートの硬化後は、これらのコンクリートパネル型枠は、躯体コンクリートに一体的に緊結されるため、撤去を要することなくそのまま表面仕上げ材となる。
【0046】
図1に、各部位ごとに使用するそれぞれのコンクリートパネル型枠(K1)〜(K10)の使用箇所を示す。図2には、1階壁築造におけるコンクリートパネル型枠の、図3には、2階床スラブ築造におけるコンクリートパネル型枠の、それぞれの立て込み概要図を示す。図4〜図10には、コンクリートパネル型枠(K1)〜(K7)、及び、図12〜図15にはコンクリートパネル型枠(K8)〜(K11)の各平面図・正面図・側面図を示す。
【0047】
また、図16には、壁躯体の設計厚さを正確に確保して、対面するコンクリートパネル型枠どうしを強固に固定するためのパネル保持バーの設置孔の斜視図を、図19には、パネル保持バーを示す。図16の内、(A)はコンクリートパネル型枠K1、K5に、(B)はコンクリートパネル型枠K3に、(C)はコンクリートパネル型枠K2、K4、K7、K8に、それぞれ設けられる。さらに、図20には、工場にて製作するコンクリートパネル型枠(K1)の製作型枠の例示図を示す。図21には、同じく、コンクリートパネル型枠の側面一面に発泡ウレタンフォーム断熱材を吹き付け、これと一体化成形されたコンクリートパネル型枠(K3)を製作する製作型枠の例示図を示す。
【0048】
例示として示す図20の製作型枠においては、所定の配合・強度を有する生コンクリートを流し込み、所定の打設、上面の鏝均し仕上げ、緊結バーの所定位置への埋め込み設置、及び、湿潤養生を十分に行った後に、側面型枠(30)の脱型を行う。使用する部位ごと、また、断熱材使用の有無ごとに寸法及び仕様を変えたコンクリートパネル型枠(K1)〜(K8)を製作する。
【0049】
断熱材付加のコンクリートパネル型枠は、前記によって製作したコンクリートパネル型枠に、図21に例示として示す製作型枠を使用して製作する。前記に記載した側面型枠(30)を外したコンクリートパネル型枠に、発泡ウレタンフォーム付加用の側面型枠(31)を取り付け、所定のウレタンフォーム充填マニュアルに従って、取り付けた頂版型枠(32)の注入溝(33)から発泡ウレタンフォームを吹き付け注入し、充填後直ちに注入溝(33)の蓋(34)をする。頂版型枠(32)に設けられた注入溝(33)の全てには、図21(C)に示す注入溝(33)を設ける。これを端部の注入溝(33)から順次行い、全ての注入溝(33)での充填を完了させる。この固定された吹き付け用型板内部にて、発泡ウレタンフォームは周囲が固定されている拘束の中で、型板内部容積を上回る発泡分を圧縮して固化する。この固化後、側面型枠(31)、頂版型枠(32)を取り外す。この圧縮によって、周辺拘束がない状態で固化する場合のものより、発泡ウレタンフォームの密度は大きくなり、また、整形された硬い素材となる。以上の作業によって、コンクリートパネル型枠(K2)〜(K4)が完成する。これらは、図1に示すように、外壁部において屋外側にて外断熱用に使用する。
【0050】
コンクリートパネル型枠(K1)、(K5)を、壁躯体側すなわち緊結バーの設けられた本体の側面の一面に、図21に例示として示す製作型枠を同様に使用して発泡ウレタンフォーム断熱材を吹き付け、断熱材を一体化成形したコンクリートパネル型枠は、外壁部の室内側に設置して内断熱用に使用することが可能である。この場合、設けられるパネル保持バー設置孔は図16の(B)となる。
【0051】
コンクリートパネル型枠の現場における施工精度は、まず第一に、基礎部分への据え付け精度によって左右される。これを完全とすることが重要不可欠である。地盤基礎部、1階スラブ、2階スラブ桁受部、屋根桁受部のコンクリート打設後、打設面天端の鏝均し時に、図17及び図18に示すセッティングツールを使用して、必要な場合の据え付けモルタルの均し施工を合わせて行いながら、所定位置に水平な据え付け面を造る。図17の(A)は壁延長方向に使用するセッティングツール(23)の平面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は壁直角方向に使用するセッティングツール(24)の平面図、(E)は正面図、(F)は側面図、図18はそれらの使用状況の斜視図である。
【0052】
壁長さの延長方向の水平は、丁張杭等に設定した水平な水糸に合わせセッティングツール(23)を置きながら、また、当セッティングツールと同時に使用する水準器(25)を確認しながら、正確に水平な据え付け面を造る。また、壁配筋を真ん中に挟んだ両サイドの当パネル型枠の据え付け面について、壁直角方向に使用するセッティングツール(24)と水準器(25)によって、壁直角方向の水平レベルを正確に水平とする。以上の作業によって、壁延長方向、壁直角方向の双方に、共に正確かつ水平な据え付け面が出来上がったことを確認する。この確認後に、当セッティングツールのアンカー設置孔(26)または(27)に、別に加工されたアンカーを必要本数埋め込む。前記のアンカー設置孔(26)は壁築造に使用するコンクリートパネル型枠設置用、アンカー設置孔(27)は床・屋根スラブ築造のために使用するコンクリートパネル型枠設置用である。アンカー埋め込み後、アンカーに力を加えないように静かに当セッティングツールを取り外す。そしてその後、3日程度の基礎コンクリートと据え付けモルタルの養生を行う。
【0053】
現場搬入されたコンクリートパネル型枠を、クレーンのフックに掛けたワイヤーを本体の上面の吊り金具(2)に通して緊結し、これによって吊り上げ、コンクリート据え付け面に設置されているアンカーを当型枠の底板に設けられたアンカー孔(3)に挿入しながら据え降ろす。もしくは、下側にすでに施工されたコンクリートパネル型枠の上面にある吊り金具(2)を当コンクリートパネル型枠下面の吊り金具挿入孔(9)に挿入しながら据え降ろす。当作業は、まず室内側のコンクリートパネル型枠を、壁延長方向に繰り返して、必要な全体個数を据え付け、完了させる。
【0054】
室内側において、据え付けされたコンクリートパネル型枠を、当型枠本体の室内側である側面上部に埋め込まれているインサート(7)へと挿入ボルトをねじ込み、これを使用して、数個の型枠を水平に設置した端角材等によって固定し、また、単管等を使用して床に仮固定し、ほぼ鉛直とする。その後、屋外側のコンクリートパネル型枠を、上記室内側コンクリートパネル型枠と同様に、クレーンによって据え付け面に据え付ける。この据え付け時には、あらかじめ設計値どおりに加工されたパネル保持バー(5)を対面するコンクリートパネル型枠双方のパネル保持バー設置孔(4)に取り付ける。これによって屋外側コンクリートパネル型枠は、室内側のコンクリートパネル型枠と連結され堅固に保持される。
【0055】
壁の両サイドに設置された2つのコンクリートパネル型枠は、本体下面のアンカー孔(3)もしくは吊り金具挿入孔(9)への、アンカーもしくは吊り金具それぞれの挿入と、本体上面のパネル保持バー(5)、そして、室内側インサート(7)を使用して床に固定された仮設材によって、鉛直に仮固定されている。この状態において、コンクリートパネル型枠本体の側面を、トランシットもしくは下げ降り等を使用して観測し、仮設材である単管等の緊結調整を行い、コンクリートパネル型枠を正確に鉛直にして堅固に床に固定する。
【0056】
前記記載の作業の後、パネル保持バー(5)を挿入したパネル保持バー設置孔(4)の中のバー周辺の隙間にはモルタルを圧入・挿入して固定する。当作業を、すべてのコンクリートパネル型枠において行う。また同時に、パネル保持バー設置孔(4)の発泡ウレタンフォームの欠損部には全て、現場発泡のウレタンフォームを補充・充填する。また、壁躯体側の側面に設けられた緊結バーは、据え下ろし作業時においては配筋された壁鉄筋にひっかからないようにパネル側面から30mmの突出として製作されているが、据え下ろし後には、上方へと曲げ上げて、躯体コンクリートの打設完了によって、コンクリートパネル型枠を壁躯体に強固に固定する機能を持たせる。
【0057】
以上の作業は、基礎部におけるコンクリートパネル型枠(K1)及び(K2)の据え付け、設置から始め、順次、上方に向けて施工する。まずは、基礎地盤掘削、基礎礫施工後の、敷モルタル施工時において、段落「0051」、「0052」に記載した据え付け面の整備とアンカー埋め込みを行う。敷モルタルの十分な硬化後、室内側に設置するコンクリートパネル型枠(K1)、外側に設置するコンクリートパネル型枠(K2)を段落「0053」〜段落「0056」に記載の方法により固定して設置する。この後、室内側に設置したコンクリートパネル型枠(K1)の上面高さを仕上げとするようコンクリート打設を行う。
【0058】
養生完了後、1階床スラブである耐圧版(a)の基礎地盤(b)を造成する。現場にて発生した流用土の他、現場に搬入した良質土、砕石・礫等を投入し、敷き均し、十分に撒き出し転厚して強固な地盤とする。この後、防湿シート敷き等の必要な下地処理、また、スラブ配筋を行い、この後、床スラブコンクリートの打設を行う。
【0059】
この床スラブコンクリートの打設時において、室内側下段のコンクリートパネル型枠(K1)を設置するために、段落「0051」、「0052」に記載の方法により、据え付け面の整備とアン カー埋め込みを行う。床スラブコンクリートの十分な硬化後、1階壁下段の室内側及び屋外側、両サイド全部のコンクリートパネル型枠(K1)及び(K3)を、段落「0053」〜段落「0056」に記載の方法により固定して設置する。この後のコンクリート打設の打ち止め面は、室内側のコンクリートパネル型枠(K1)上端面から50mm下げた位置とする。つまり、次回上段の壁コンクリートとの打ち継ぎ面を、この位置とする。
【0060】
打設した1階壁下段の壁コンクリートの十分な養生を行い、これによる強度発揮後、引き続いて、1階壁上段のコンクリートパネル型枠を据え付ける。室内側に使用する当コンクリートパネル型枠は、2階床のスラブ用コンクリートパネル型枠(K9)を据え付け可能とするため、壁躯体上端に水平なパネル据え付け面を設けるコンクリートパネル型枠(K5)である。また、屋外側に使用する当コンクリートパネル型枠は、当型枠の上面高さを2階コンクリートスラブ計画高さとする、1階上段に使用するコンクリートパネル型枠(K4)である。施工の手順・要領は、上記段落「0053」〜段落「0056」に記載の方法による。コンクリート打設完了の打ち止め面は、室内側コンクリートパネル型枠(K5)上面高さとする。
【0061】
コンクリート打設完了時に、室内側において、コンクリートパネル型枠(K9)の据え付け面を、段落「0051」、「0052」に記載した方法で行い、また、アンカーを埋め込む。
【0062】
コンクリート打設後の十分な養生によって、壁躯体上端・水平なパネル据え付け面の必要強度が出た後(概ね1週間)、図13に示す2階スラブコンクリート打設用に使用するコンクリートパネル型枠(K9)を据え付ける。工場製作したコンクリートパネル型枠(K9)を、本体の上面に設けられた吊り上げ鉄筋(18)に吊上げワイヤーを通して緊結し、クレーンにて、前記の水平なパネル据え付け面に設置されているアンカーを当型枠下面のスラブアンカー孔(19)に通しながら、所定位置に据え付ける。すべてのコンクリート型枠(K9)の据え付けが完了してから、当型枠側面にあるボルト挿入孔(20)に所定のボルトを通して、当型枠同士の横緊結を行い一面の剛な版とする。
【0063】
上記作業完了後、2階床スラブの配筋を行い、その後、コンクリート打設を行う。壁躯体部のコンクリート打設面も、2階床スラブの計画高さまでと同一高さで仕上げる。上記コンクリート打設完了時に、2階下段部の室内側に設置するコンクリートパネル型枠(K1)の据え付け面の整備を、段落「0051」、「0052」に記載した方法で行い、また、アンカーを埋め込む。コンクリートの強度発揮まで概ね1週間の養生を十分に行う。
【0064】
2階壁下段のコンクリートパネル型枠(K1)及び(K3)を、段落「0053」〜段落「0056」記載の方法により設置する。その後、コンクリート打設する。打設止め面は、これら両型枠本体の上端面から50mm下がりとする。
【0065】
打設した2階壁下段の壁コンクリートの十分な養生を行い、これによる概ね1週間経過後の強度発揮後、引き続いて、2階壁上段に使用するコンクリートパネル型枠の設置を行う。室内側にはコンクリートパネル型枠(K5)、屋外側には庇一体型であるコンクリートパネル型枠(K7)を段落「0053」〜段落「0056」記載の要領と同様にして据え付け固定する。コンクリートパネル型枠(K7)においては、その据え付け後、直ちに、庇片持部引張鉄筋 (11)を片持部(12)の上面に配置し仮固定する。その後、壁躯体部と片持部(12)の空洞部の双方に同時にコンクリート打設する。打設止め面は、コンクリートパネル型枠(K5)の上端面とする。
【0066】
コンクリート打設完了時に、屋根スラブコンクリート打設用に使用するコンクリートパネル型枠(K10)の据え付け面を、段落「0050」、「0051」に記載した方法で行い、また、アンカーを埋め込む。なお、外壁ではない室内壁の全てにおいては、段落「0053」〜段落「0056」に記載する方法と同様に、コンクリートパネル型枠(K1)及び(K5)を、外壁と同時進行で、施工し、立ち上げていく。
【0067】
2階上段の外壁及び室内壁の全ての壁躯体のコンクリートが十分な養生によって必要強度が出た後(概ね1週間)、室内側・上端に形成された水平なパネル据え付け面に、屋根スラブコンクリート打設用に使用するコンクリートパネル型枠(K10)を段落「0062」記載の要領と同様にして据え付け、固定し、また、一面の剛な版とする。
【0068】
前記記載の作業は、外壁と内壁とによって構成される部屋となる1区画において、梁間方向または桁行方向の内、より小さいスパン長となる方向に、図14に示すコンクリートパネル型枠(K10)、もしくは、図15に示すコンクリートパネル型枠(K11)のいずれかを選択して使用して行う。図15に示す桁行方向に使用するコンクリートパネル型枠(K11)を選択して使用する場合は、段落「0065」に記載した2階壁上段に使用するコンクリートパネル型枠は、室内側には図9に示すコンクリートパネル型枠(K6)を、及び、外壁の屋外側には図12に示すコンクリートパネル型枠(K8)を使用する。
【0069】
前記記載までの作業によって、据え付けられたコンクリートパネル型枠(K10)もしくはコンクリートパネル型枠(K11)どうしが横緊結され、一面の剛な版が形成されたのを確認する。その後、屋根スラブ、庇部スラブの全部の配筋を行い、コンクリートを一体的に打設する。所定の十分な養生期間経過後には、従来の型枠脱型及び支保工撤去の作業を要することなく、そのままで躯体が完成する。
【符号の説明】
【0070】
K1・・・基礎及び各階下段の室内側に使用するコンクリートパネル型枠
K2・・・基礎の屋外側に使用するコンクリートパネル型枠(外断熱)
K3・・・各階下段の屋外側に使用するコンクリートパネル型枠(外断熱)
K4・・・1階上段の屋外側に使用するコンクリートパネル型枠(外断熱)
K5・・・各階上段の室内側に使用するコンクリートパネル型枠
K6・・・2階上段の室内側に使用するコンクリートパネル型枠(桁行方向使用)
K7・・・2階上段の屋外側に使用する庇部を持ったコンクリートパネル型枠(外断熱)
K8・・・2階上段の屋外側に使用する庇部を持ったコンクリートパネル型枠(外断熱・桁行方向使用)
K9・・・2階スラブ用コンクリートパネル型枠(梁間及び桁行方向使用両用)
K10・・・屋根用の断熱性を持つコンクリートパネル型枠(梁間方向使用)
K11・・・屋根用の断熱性を持つコンクリートパネル型枠(桁行方向使用)
1・・・・本体
2・・・・吊り金具
3・・・・アンカー孔
4・・・・保持バー設置孔
5・・・・保持バー
6・・・・緊結バー
7・・・・インサート
8・・・・発泡ウレタンフォーム断熱材
9・・・・吊り金具挿入孔
10・・・・庇片持部緊結用鉄筋
11・・・・庇片持部引張鉄筋
12・・・・庇片持部袖
13・・・・庇片持部鼻隠し
14・・・・庇片持部袖スラブ
15・・・・パネル本体
16・・・・縦リブ
17・・・・引張鉄筋
18・・・・吊り上げ鉄筋
19・・・・スラブアンカー孔
20・・・・ボルト挿入孔
21・・・・水平なパネル受け面
22・・・・端部面
23・・・・壁延長方向に使用するセッティングツール
24・・・・壁直角方向に使用するセッティングツール
25・・・・水準器
26・・・・セッティングツール・アンカー設置孔(壁築造のパネル型枠用)
27・・・・セッティングツール・アンカー設置孔(床・屋根築造のパネル型枠用)
28・・・・アルミ平角管
29・・・・堅木
30・・・・側面型枠
31・・・・ウレタン付加用の側面型枠
32・・・・頂版
33・・・・注入溝
34・・・・注入溝の蓋
a・・・・耐圧版(1階床スラブ)
b・・・・耐圧版の基礎地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁式構造のコンクリート建築物・壁躯体の築造に使用する型枠であり、コンクリート製のパネル状の本体(1)から成り、本体の上面に設けられた吊り金具(2)にクレーンの吊りワイヤーを緊結して本体を吊り上げ、壁躯体の室内側の据え付け面に先行して設置されたアンカーボルトを本体の底版部に設けられたアンカー孔(3)に挿入して据え下ろす、又、壁躯体中心位置に組み立てられた鉄筋を挟んだ屋外側に同様に据え付けられたコンクリートパネル型枠とは、本体の上面に設けられた保持バー設置孔(4)と、対面するコンクリートパネル型枠に設けられた保持バー設置孔の双方に保持バー(5)を挿入して水平に固定する、さらに、この後、両コンクリートパネル型枠に挟まれた内部空間に打設され養生・硬化したコンクリートの壁躯体とは、壁躯体側の本体の側面に設けられた緊結バー(6)によって強固かつ一体的に結合され、撤去することなくそのまま壁の表面材となる型枠であり、本体の底版に前記記載のアンカー孔(3)を有することを特徴とするコンクリートパネル型枠(K1)。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、本体の高さ寸法は、本体の上面を1階床スラブ仕上げ高さと同一とするため、基礎梁躯体を挟んだ反対側に据え付けられたコンクリートパネル型枠(K1)と比較して大きい、このため、保持バー設置孔(4)は、本体の上面ではなく壁面部に設けて保持バー(5)の水平な設置を可能とする、さらに、基礎梁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させ、基礎部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、請求項1記載のコンクリートパネル型枠(K2)。
【請求項3】
請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、当型枠の下側位置に先行して据え付けられたコンクリートパネル型枠の本体の上面に設けられた吊り金具(2)を本体の底面から本体に挿入して固定するため、アンカー孔(3)に替えて吊り金具挿入孔(9)を底版部に設け、また、壁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させ、各階下段部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、請求項1記載のコンクリートパネル型枠(K3)。
【請求項4】
前記請求項3記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、本体の高さ寸法は、本体の上面を2階床スラブ仕上げ高さと同一とするため、壁躯体を挟んだ反対側に据え付けられたコンクリートパネル型枠(K5)と比較して大きい、このため、保持バー設置孔(4)は、本体の上面ではなく壁面部に設けて保持バー(5)の水平な設置を可能とし、また、1階上段部の屋外側に外断熱用として使用することを特徴とする、請求項3記載のコンクリートパネル型枠(K4)。
【請求項5】
請求項1記載のコンクリートパネル型枠を使用した建築用型枠であって、各階室内側において下段部に先行して据え付けられたコンクリートパネル型枠(K1)の上側に使用するものであり、このため、コンクリートパネル型枠(K1)の本体の上面に設けられた吊り金具(2)を本体の底面から本体に挿入して固定するため、アンカー孔(3)に替えて吊り金具挿入孔(9)を底版部に設け、また、各階最上部壁の室内側において、2階スラブもしくは屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠を据え付けることを可能とするため、コンクリートパネル型枠の本体の上面高さに水平なパネル受け面を壁躯体と一体構造として設けることを可能とし、各階上段部の室内側の梁間方向に使用することを特徴とする、請求項1記載のコンクリートパネル型枠(K5)。
【請求項6】
前記請求項5記載のコンクリートパネル型枠と同じ構造及び仕様の建築用型枠であって、2階最上部において桁行方向に据え付けて屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠 (K11)の据え付けを可能とするため、本体の上面が本体の幅方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を有し、2階上段部の室内側の桁行方向の壁面に使用することを特徴とする、請求項5記載のコンクリートパネル型枠(K6)。
【請求項7】
請求項1記載のコンクリートパネル型枠であって、2階上段部の壁躯体と屋根庇部躯体との一体的な築造を可能とするため、壁躯体築造のための壁型枠となる鉛直部分は、本体の上面に吊り金具(2)、室内側の側面に保持バー設置孔(4)と緊結バー(6)、下面に吊り金具挿入孔(9) を持ち、又、壁躯体側となる本体の側面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を一定の厚さで吹き付け一体化させたコンクリートパネル型枠(K4)と同様の構造及び仕様を有し、さらに、この屋外側上部に片持構造の庇桁受部(12、13、14)を設け、外壁の外断熱用型枠として、また、庇部躯体の一体的築造のための型枠として、2階上段部の屋外側の梁間方向に使用することを特徴とする、請求項1記載のコンクリートパネル型枠(K7)。
【請求項8】
前記請求項7記載のコンクリートパネル型枠と同じ構造及び仕様の建築用型枠であって、2階最上部において桁行方向に据え付けて屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠(K11)を据え付け可能とするため、本体の上面、及び、片持構造の庇桁受部(12、13、14)が本体の幅方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配となる形状を有し、2階上段部の室内側の桁行方向の壁面に使用することを特徴とする、請求項7記載のコンクリートパネル型枠(K8)。
【請求項9】
請求項1記載のコンクリートパネル型枠であって、高さ方向である長辺の長さを大きくし、かつ、水平な横使いにして、2階床スラブコンリートを打設するための型枠として使用する、これを可能とするため、パネル本体(15)の下側の面には長辺方向に、構造耐力上必要な高さをもつ縦リブ(16)を設け、引張側となる縦リブ(16)の下側内部には引張鉄筋(17)を配置し、また、据え付け作業用にパネル本体の上面に吊り上げ鉄筋(18)を設け、長辺方向の端部に設けたスラブアンカー孔(19)に、先行作業によって設置された壁躯体の水平なパネル受け面のアンカーを挿入しながら据え下す、並びに、据え下し後には、隣接するコンクリートパネル型枠どうしを側面側の縦リブ内に設けられたボルト挿入孔(20)に所定のボルトを通して締め付け、本体どうしを堅固に緊結し、1階最上部の室内全面にて使用することを特徴とする、請求項1記載のコンクリートパネル型枠(K9)。
【請求項10】
前記請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K9) を使用した建築用型枠であって、屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠であり、パネル本体(15)の長辺方向の端部底版に水平なパネル受け面(21)及びこれと直行して鉛直となる端部面(22)を設けて、本体の長辺方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を持たせた据え付けを可能とし、かつ、パネル本体の上面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させて断熱性能を持たせたものであり、2階最上部において梁間方向に据え付け、室内全面に使用することを特徴とする、請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K10)。
【請求項11】
請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K9) を使用した建築用型枠であって、屋根スラブコンクリートを打設するために使用するコンクリートパネル型枠であり、パネル本体(15)の短辺方向に屋根勾配の設計値と同一の勾配を持たせ、また、パネル本体(15)の短辺方向の側面、及び、パネル本体の長辺方向の端部の底版部に設けられたスラブアンカー孔(19)を鉛直として、屋根勾配に合う据え付けを可能とする、かつ、本体の上面の一面に断熱材である発泡ウレタンフォーム(8)を、所定の断熱性能を持たせて一定の厚さで吹き付け一体化させて断熱性能を持たせたものであり、2階最上部において桁行方向に据え付け、室内全面に使用することを特徴とする、請求項9記載のコンクリートパネル型枠(K11)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2011−69151(P2011−69151A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222522(P2009−222522)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(709005692)
【Fターム(参考)】