説明

コンクリートポンプ車

【課題】 輸送管や多段式ブームの劣化や破損を防止すると共に輸送管からの漏れを防止し、先行モルタルの使用量が少量で済むコンクリートポンプ車を提供する
【解決手段】多段式ブーム(4)によって屈伸される輸送管(5)は、直管(11b)、ベンド管(11a)等の色々な形状の複数本のユニット管(11)から接続されている。多段式ブーム(4)の関節の近傍において接続されている円の4分の1の円弧状を呈する一対のベンド管(11a)については相対的に軸回転可能に接続する。そして他のユニット管(11)同士の接続、つまり各ブーム(7A、7B、…)に沿って接続されている直管(11b)同士、または直管(11b)とベンド管(11a)の接続は固定的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを圧送するコンクリートポンプ車に関するものであり、コンクリートポンプと、複数本のブームから屈伸自在に連結されている多段式ブームと、該多段式ブームに支持されている輸送管とを備え、コンクリートポンプから圧送されたコンクリートが輸送管によって所望の打設場所に輸送されるようになっているコンクリートポンプ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、バッチャープラントにおいてセメント、砂利、骨材等から製造され、ミキサ車に積載されて建設現場に搬送される。建設現場には、コンクリートポンプ車が待機しており、ミキサ車から荷下ろしされたコンクリートはコンクリートポンプ車によって所望の打設場所に圧送される。コンクリートポンプ車は従来周知のように、自走式の自動車と、この自動車に設けられている各装置、すなわちコンクリートが投入されるホッパ、コンクリートポンプ、多段式ブーム、このブームに支持されている輸送管等からなる。ホッパは自動車のシャーシの後方に設けられ、ミキサ車から荷下ろしされるコンクリートが投入されるようになっている。コンクリートポンプはシャーシ上に設けられ、例えば並列式の一対のピストンポンプから構成されている。従って一対のピストンポンプを交互に駆動すると、ホッパからのコンクリートを連続的に圧送できるようになっている。多段式ブームは、互いに連結された複数本のブームから構成され、一本のブームの端部が自動車のシャーシに連結されている。これらブームの連結部は関節になっており、関節に設けられている油圧式のピストンシリンダユニットによって屈伸するようになっている。従って各関節のピストンシリンダユニットを適切に駆動すると、多段式ブームの先端部を任意の場所に移動させることができる。輸送管は、互いに接続された複数本の金属製のユニット管から構成され、多段式ブームの複数箇所に設けられているステーによって支持されている。輸送管の一方の端部はコンクリートポンプに接続され、他方の端部は多段式ブームの先端部に支持され、この他方の端部には、所定の長さのゴム製のデリバリーホースが接続されている。コンクリートポンプ車はこのように構成されているので、ホッパにコンクリートを投入し、そして多段式ブームを駆動してデリバリホースの先端部がコンクリートの打設場所に位置するようにし、コンクリートポンプを駆動すると、コンクリートは輸送管内を圧送され、デリバリホースから該打設場所に供給されることになる。
【0003】
前記したように輸送管は金属製の複数本のユニット管から構成されている。多段式ブームの屈伸に合わせて接続部分において屈伸できるようにするためであり、さらに輸送管が劣化したときに、劣化したユニット管だけを交換できるようにするためでもある。ユニット管には、直線状を呈する直管、円周の略4分の1の円弧状を呈するベンド管、等色々な形状の管があり、輸送管はこれらのユニット管から次のように接続されている。すなわち輸送管のうち、各ブームに並行している部分においては、複数本の直管が接続されており、関節に対応する部分においては、2本のベンド管が接続されている。このような直管の端部とベンド管の端部も接続されている。これらの各ユニット管の接続部分は、次に説明するように所定の接続方法によって連結されており、ユニット管同士が相対的に軸方向に回転できるようになっている。従って、多段式ブームが屈伸するときに、ベンド管の接続部分が滑らかに回転して輸送管が屈伸することになる。
【0004】
多段式ブームの輸送管を詳しく説明すると、ユニット管同士は全て特許文献1に記載されている接続方法、すなわち図5の(A)に示されている接続方法で接続されている。すなわちユニット管51、51には、両端部においてその外周面に段部あるいはフランジ部52、52が、鋳造あるいは溶接によって一体的に形成されている。このような端部同士を所定の隙間53だけ空けて2本のユニット管51、51が突き合わせられている。このような2本のユニット管51、51のフランジ部52、52の外周面に密着するようにリング状を呈する1本のゴムパッキング55が設けられている。ゴムパッキング55は、略中空に形成されている。すなわちゴムパッキング55のの内周面に円周方向の溝が形成され、溝の奥に凹部56が形成されている。ゴムパッキング55が2本のユニット管51、51のフランジ部52、52に設けられると、ユニット管51、51の端部の隙間53と凹部56が整合することになる。このようなゴムパッキング55の外側には金属製のカップリング部材58が設けられている。カップリング部材58は一対の半円状の部材からなり、接続部分を外側から挟み込むようにして組み立てると環状に形成される。そうするとカップリング部材58の内側にゴムパッキング55が収納されると共に、カップリング部材58によってユニット管51、51、のフランジ部52、52が係合される。ユニット管51、51はこのように接続されているので、液密が維持された状態で、一方のユニット管51に対して他方のユニット管51を軸方向に回転でき、また隙間53の分だけわずかに屈曲できることになる。従って、多段式ブームに設けられている輸送管は、多段式ブームの屈伸に合わせて滑らかに屈伸することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2007−115632号公報
【特許文献2】ドイツ特許第4318831号公報
【0006】
特許文献2には、ユニット管同士を接続する他の接続方法が記載されている。図5の(B)に示されているように、このようなユニット管61、61にもその端部に所定のフランジ部62、63が形成されているが、それぞれのフランジ部62、63は同じ形状ではない。すなわち一方のフランジ部63の方だけに、ユニット管61の端面において円周溝64が設けられている。この円周溝64にゴム製のOリング66が収納されている。2本のユニット管61、61は、その端面同士が当接されて隙間が実質的にゼロになっており、Oリング66によって液密が維持されることになる。このようなフランジ部62、63を係合するように金属製のカップリング部材67が設けられている。このように接続すると2本のユニット管61、61は強固に固定され、相対的に回転したり屈曲することはない。特許文献2に記載の接続方法は、主として高圧力でコンクリートを圧送する高圧輸送管に対して適用されている。高圧輸送管は構造物に固定されていて屈曲させたり回転させる必要がないし、確実に液密が維持される必要があるからである。特許文献2に記載の接続方法は、このようにユニット管同士が回転したり屈曲できないので、従来コンクリートポンプ車の多段式ブームの輸送管には適用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のコンクリートポンプ車に関して、基本的な機能、すなわちコンクリートを打設場所まで圧送する点については格別に問題ない。しかしながら他の点において若干の問題が見受けられる。具体的には、例えば多段式ブームや輸送管の劣化の問題を挙げることができる。コンクリートを圧送するコンクリートポンプは一対のピストンポンプからなるが、一対のピストンポンプを交互に駆動すると脈動が発生する。この脈動によってコンクリートの流れ方向の圧力が変動し、輸送管を構成している各ユニット管51、51に作用する力が変動する。そうすると、各ユニット管51、51の接続部分に形成されている隙間53が変化して、輸送管が周期的に伸縮することになる。そうするとまず、ユニット管51、51の接続部分、具体的にはフランジ部52、52が摩耗しやすいという問題がある。また、1個の接続部分におけるユニット管51、51同士の隙間53は1〜2mmであるが、輸送管全体では接続部分が20〜30個あるので、輸送管は全体として20〜50mm伸縮することになる。そうすると、輸送管だけでなく、ステーによって輸送管を支持している多段式ブームにも繰り返し加重が作用して、これらが疲労により破損し易いという問題もある。輸送管や多段式ブームが破損して落下すると人命に関わる重大な事故につながる。多くの国においては、デリバリホースを空中にぶら下げた状態でコンクリートを打設する、いわゆる吊打ちが実施されているので、デリバリホースからの反力は作用せず、輸送管や多段式ブームに作用する繰り返し荷重は比較的小さい。しかしながら日本においてはデリバリホースの一部を地面に寝かせてコンクリートを打設する、いわゆるグラウディングが実施されている。そうするとデリバリホースが地面に固定されてしまい、デリバリホースからの反力も受けて、輸送管や多段式ブームに作用する繰り返し荷重は大きくなる。そうすると輸送管や多段式ブームが破損する危険は大きい。
【0008】
他の問題も見受けられる。コンクリートポンプ車においては、輸送管内でコンクリートが閉塞しないように、コンクリートの圧送に先だって所定量のモルタルを圧送して輸送管内を湿潤させる。このようなモルタルは先行モルタルと呼ばれ、輸送管内を湿潤させた後に廃棄されることになる。従来のコンクリートポンプ車においては、各ユニット管51、51の接続部分に隙間53が形成されており、さらにゴムパッキング55には凹部56が形成されており、これらの隙間53や凹部56に先行モルタルが入り込む。そうすると接続部分の個数だけ先行モルタルが消費されてしまうので、大量の先行モルタルが必要になる。そうすると先行モルタルを搬送するだけのためにミキサ車が1台必要になり費用が嵩む。また、先行モルタルの廃棄量が大量になり処理費用も嵩む。他の問題として接続部分から漏れが生じやすいという問題もある。接続部分にはゴムパッキング55が設けられているが、これはフランジ部52、52の外側に設けられており、ゴムパッキング55が劣化すると液密が維持されにくいという欠点がある。従来のコンクリートポンプ車の輸送管においては、ユニット管の全ての接続部分がこのような接続方法によって接続されているので、接続部分からコンクリート中の水分が漏れ出す箇所が多く、環境を汚染する問題がある。
【0009】
したがって本発明は、輸送管が劣化しにくく、そして輸送管や多段式ブームが破損しにくく、先行モルタルの使用量が少量で済み、輸送管からの漏れが発生しにくいコンクリートポンプ車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、コンクリートポンプと、複数本のブームから互いに連結されて連結部分のそれぞれが関節になって屈伸される多段式ブームと、多段式ブームに支持されて多段式ブームに合わせて屈伸される輸送管とを備え、コンクリートポンプから圧送されるコンクリートを輸送管によって打設場所に輸送するコンクリートポンプ車であって、輸送管の接続方法に特徴を有するコンクリートポンプ車として構成する。具体的には、輸送管は、多段式ブームに沿って接続された複数本の金属製のユニット管から構成されているが、多段式ブームの各関節の近傍において、円の4分の1の円弧状に形成された一対のユニット管が接続されている。輸送管は、この部分において屈伸されるようになっている。このような輸送管においてユニット管同士の接続部分のうち、一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は相対的に軸回転可能に接続する。そして他の接続部分については固定的に接続する。また、コンクリートポンプ車に設けられ、コンクリートポンプにコンクリートを供給するようになっているホッパには、セメントミルク製造装置が着脱自在に設けられるように構成する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、コンクリートポンプと、複数本のブームから互いに連結されて連結部分のそれぞれが関節になって屈伸される多段式ブームと、前記多段式ブームに支持されて前記多段式ブームに合わせて屈伸される輸送管とを備え、前記コンクリートポンプから圧送されるコンクリートを前記輸送管によって打設場所に輸送するコンクリートポンプ車であって、前記輸送管は、前記多段式ブームに沿って接続された複数本の金属製のユニット管から構成され、各関節の近傍において、円の4分の1の円弧状に形成された一対のユニット管が接続されてこの部分において屈伸されるようになっており、前記ユニット管同士の接続部分のうち、前記一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は相対的に軸回転可能に接続され、他の接続部分については固定的に接続されていることを特徴とするコンクリートポンプ車として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンクリートポンプ車において、前記ユニット管には両端部に外径方向に拡径したフランジ部が形成され、前記一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は、前記一対の円弧状のユニット管が所定の隙間を空けて突き合わされ、環状のゴムパッキングがこれらのユニット管のフランジ部に被せられ、金属製の第1のカップリング部材が前記ゴムパッキングの外側から設けられ、前記第1のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されており、前記他の接続部分は、隣り合うユニット管の一方のユニット管の端面に円形溝が形成され、該円形溝にゴム製のOリングが設けられ、前記隣り合うユニット管の端面同士が当接され、そして金属製の第2のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されていることを特徴とするコンクリートポンプ車として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のコンクリートポンプ車において、前記コンクリートポンプ車に設けられ前記コンクリートポンプにコンクリートを供給するようになっているホッパには、セメントミルク製造装置が着脱自在に設けられるようになっており、前記セメントミルク製造装置は、所定のメッシュの篩と、該篩を振動させるバイブレータと、前記篩に水を供給する水供給装置とから構成されていることを特徴とするコンクリートポンプ車として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載のコンクリートポンプ車において、前記輸送管の先端には、流れ方向に向かって管径が縮径している金属製のレジューサー管が固定的に接続され、該レジューサー管の先端にゴム製のデリバリーホースが固定的にされていることを特徴とするコンクリートポンプ車として構成される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によると、コンクリートポンプ車は、コンクリートポンプと、複数本のブームから互いに連結されて連結部分のそれぞれが関節になって屈伸される多段式ブームと、多段式ブームに支持され多段式ブームに合わせて屈伸される輸送管とを備えて、コンクリートポンプから圧送されるコンクリートを輸送管によって打設場所に輸送するようになっている。そしてこの輸送管は多段式ブームに沿って接続された複数本の金属製のユニット管から構成され、各関節の近傍において、円の4分の1の円弧状に形成された一対のユニット管が接続されてこの部分において屈伸されるようになっている。本発明はこのような輸送管において、ユニット管同士の接続部分のうち、一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は相対的に軸回転可能に接続され、他の接続部分については固定的に接続されるように構成されている。そうするとユニット管同士の接続部分のうち、輸送管が屈伸するのに必要な接続部分だけ相対的に軸回転可能に接続され、屈伸の必要がない他の接続部分については固定的に接続されることになる。固定的に接続されている接続部分は、ユニット管同士が相対的に動かないので輸送管が劣化し難いし、コンクリートポンプによる脈動の影響を受けて伸縮することもない。一般に輸送管には接続部分が20〜30箇所存在するが、屈伸する必要のある接続部分は数カ所に限られ、大部分は屈伸の必要の無い接続部分である。これらの大部分の接続部分が固定的に接続されているので、脈動による輸送管の伸縮はほとんどなく、輸送管や多段式ブームには繰り返し荷重がほとんど作用しない。従って輸送管や多段式ブームの破損を抑制することができる。また他の発明によると、ユニット管には両端部に外径方向に拡径したフランジ部が形成され、一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は、一対の円弧状のユニット管が所定の隙間を空けて突き合わされ、環状のゴムパッキングがこれらのユニット管のフランジ部に被せられ、金属製の第1のカップリング部材がゴムパッキングの外側から設けられ、第1のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されている。つまり軸回転可能に接続されている一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は、ゴムパッキングによってシールされているので、液密が維持される。そしてこの発明によると、他の接続部分は、隣り合うユニット管の一方のユニット管の端面に円形溝が形成され、該円形溝にゴム製のOリングが設けられ、隣り合うユニット管の端面同士が当接され、そして金属製の第2のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されている。つまり固定的に接続されている接続部分は、隣り合うユニット管同士が実質的に隙間無く接続されることになる。そうすると先行モルタルを圧送するときに、先行モルタルが無駄に消費されることもない。またこの接続部分にはOリングが設けられ、双方のフランジ部によって押し付けられることになる。従って高い液密性が維持され、Oリングが若干劣化しても輸送管からの漏れを防止することができる。さらに他の発明によると、コンクリートポンプ車に設けられコンクリートポンプにコンクリートを供給するようになっているホッパには、セメントミルク製造装置が着脱自在に設けられるようになっており、セメントミルク製造装置は、所定のメッシュの篩と、該篩を振動させるバイブレータと、篩に水を供給する水供給装置とから構成されている。このセメントミルク製造装置によって、少量のコンクリートからモルタルを製造することができ、このモルタルを先行モルタルとして使用することができる。そうすると、コンクリートの一部を利用すればモルタルが得られるので、格別にミキサ車を手配して先行モルタル用のモルタルを搬送する必要がなくコストが安くなる。さらに他の発明によると、輸送管の先端には、流れ方向に向かって管径が縮径している金属製のレジューサー管が固定的に接続され、該レジューサー管の先端にゴム製のデリバリーホースが固定的にされているので、レジューサー管とデリバリーホースもコンクリートポンプによる脈動の影響を受けにくいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンクリートポンプ車を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコンクリートポンプ車の輸送管を模式的に示す図で、その(A)は、輸送管の一部を示す平面図、その(B)、(C)は輸送管を構成している各ユニット管の接続部分を示す平面断面図である。ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコンクリートポンプ車の輸送管に接続されるレジューサー管を示す平面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るコンクリートポンプ車に設けられるセメントミルク製造装置を示す斜視図である。
【図5】従来のコンクリートの輸送管の接続方法を説明する図で、(A)はコンクリートポンプ車の輸送管を構成しているユニット管の接続部分を示す平面断面図で、(B)は構造物に固定的に設置される輸送管の接続部分を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係るコンクリートポンプ車1も、図1に示されているように、外観は従来のコンクリートポンプ車と同様に構成されている。すなわちエンジンにより自走する自動車A、この自動車Aのシャーシの後部に固定されコンクリートが投入されるようになっているホッパ2、ホッパ2からのコンクリートを圧送するコンクリートポンプ、その端部が自動車Aの前方寄りに連結されている多段式ブーム4、この多段式ブーム4に支持されていてコンクリートポンプに接続されている輸送管5、等から構成されている。図1にはコンクリートポンプは示されていないが、コンクリートポンプは一対のシリンダポンプから構成され、これらのシリンダポンプが相互に駆動されるとコンクリートは若干の脈動を伴って圧送されるようになっている。
【0015】
多段式ブーム4は、複数本のブーム7A、7B、…から構成され、本実施の形態においては4本のブーム、すなわち第1〜4のブーム7A、7B、7C、7Dからなる。自動車Aのシャーシには前方寄りに水平面内において回転自在な支柱8が設けられており、第1のブーム7Aはその端部がこの支柱8に連結されている。この連結部分には油圧で駆動されるピストンシリンダユニット9Aが設けられ、連結部分はピストンシリンダユニット9Aによって屈伸される関節になっている。第2のブーム7Bは、その一方の端部が第1のブーム7Aの他方の端部に連結され、同様に設けられているピストンシリンダユニット9Bによって、この連結部分も屈伸可能な関節になっている。同様に第3のブーム7Cは、その一方の端部が第2のブームの他方の端部に、そして第4のブーム7Dは、その一方の端部が第3のブーム7Cの他方の端部に、それぞれ連結され、それぞれの連結部分に設けられているピストンシリンダユニット9C、9Dによって連結部分が屈伸されるようになっている。従って支柱8を任意の回転位置に駆動し、そして各ピストンシリンダユニット9C、…、9Dを駆動して多段式ブーム4を屈伸させると、多段式ブーム4の先端部、すなわち第4のブーム7Dの端部を任意の場所に移動させることができる。
【0016】
輸送管5は、複数本の金属製のユニット管11、11、…から構成され、多段式ブーム4に略相似した形状に接続されている。そして輸送管5は、多段式ブーム4に固定されている複数本のステー13、13、…によって支持されている。ユニット管11、11、…には色々な形状のものがある。例えば、各ブーム7A、7B、…に沿う直線部分においては直線状のユニット管11、11、…すなわち直管が接続され、多段式ブーム4の関節に対応する部分においては、湾曲したユニット管11、11、…すなわちベンド管が接続されている。各関節の近傍において接続されている一対のベンド管は、円の4分の1の円弧状に湾曲している。次に詳しく説明するように、各ユニット管11、11、…同士の接続部分のうち、この一対のベンド管の接続部分だけが相対的に軸回転可能に接続されている。従って多段式ブーム4が各関節において屈伸するとき、その近傍の一対のベンド管が相対的に回転して輸送管5が屈伸することになる。このような輸送管5の一方の端部はコンクリートポンプに接続され、他方の端部は第4のブーム7Dの先端部近傍に位置している。この他方の端部には、コンクリートの流れ方向に管径が縮径している金属製のレジューサー管14が接続され、レジューサー管14の先端部には、ゴム製のデリバリホース15が接続されている。
【0017】
本実施の形態において、輸送管5における各ユニット管11、11、…の接続部分は、2種類の異なる接続方法によって接続されている。具体的に説明すると、図2の(A)に輸送管5の一部が示されているように、ベンド管11a、11a同士の接続部分については第1の接続方法J1によって接続され、他の接続部分つまり直管11b、11b同士の接続部分や直管11bとベンド管11a同士の接続部分については第2の接続方法J2によって接続されている。
【0018】
第1の接続方法J1について説明する。図2の(B)に第1の接続方法J1によって接続された接続部分が模式的に示されているが、一対のユニット管11、11すなわちベンド管11a、11aには、端部に外径が拡径したフランジ部17、17が形成されている。これらのベンド管11a、11aは端面同士が所定の隙間18を空けて突き合わせられている。これらのベンド管11a、11aのフランジ部17、17にまたがって、ゴムパッキング19が嵌められている。ゴムパッキング19は所定幅の環状を呈し中空に形成されている。すなわち内部に凹部21が形成されている。そしてゴムパッキング19の内周面には凹部21に連通する溝が形成されている。ゴムパッキング19は、この溝と凹部21がベンド管11a、11aの端面の隙間18に整合するように設けられている。接続部分には、このようなゴムパッキング19の外側から、第1のカップリング部材22が嵌合している。第1のカップリング部材22は、半円形を呈する一対の金属製の部材からなり、半円同士が組み立てられると環状に形成される。環状に形成されたときに、内側にゴムパッキング19が収納される凹部が形成される。この凹部に収納されたゴムパッキング19は、外径方向への膨張が規制される。第1のカップリング部材22は爪部23、23が形成されており、第1のカップリング部材22が接続部分に設けられると、爪部23、23がフランジ部17、17を係合し、これによってベンド管11a、11a同士が抜けないようになっている。第1の接続方法J1においてはユニット管11、11が隙間18を介して接続されているので、輸送管5内にコンクリートが圧送されていないとき、すなわち内圧が作用していないとき、ユニット管11、11は相対的に軸回転することができる。そしてコンクリートが圧送されるとき、コンクリートの圧力が凹部21に作用してゴムパッキング19が膨張しようとする。このときゴムパッキング19は前記したように外径方向に膨張できないのでフランジ部17、17に強く密着する。すなわち輸送管5の液密が維持されることになる。
【0019】
第2の接続方法J2による接続部分が、図2の(C)に模式的に示されている。接続されるユニット管11、11同士の端部には第1の接続方法J1と同様にフランジ部24、25が形成されているが、これらのフランジ部24、25は形状が異なっており雌型フランジ部24と雄型フランジ部25とになっている。すなわち雌型フランジ部24は端面に円形溝26が形成されていると共に、所定の厚さの外周部分が端面より前方に突き出ている。すなわち環状突起28が形成されている。そして雄型フランジ部25は端面近傍において所定の幅で外径が小さくなっており、雄型フランジ部25の環状突起28が嵌合するようになっている。雌型フランジ部24の円形溝26には、ゴム製のOリング29が設けられている。Oリング29の幅は円形溝26の深さよりわずかに大きい。このようなユニット管11、11が隙間無く接続されて、Oリング29がユニット管11の端面に押し付けられている。このような接続部分に第2のカップリング部材31が設けられている。第2のカップリング部材31も半円形を呈する一対の金属製の部材からなり、半円同士が組み立てられると環状に形成される。そして雄雌フランジ部24、25は第2のカップリング部材31の爪部32、32によって係合され、ユニット管11、11の端面同士が強く押し付けられる。第2の接続方法J2によって接続されているユニット管11、11同士は相互に固定され、相対的に伸縮したり回転しない。そしてOリング29によって確実に液密が維持されることになる。さらにユニット管11、11には実質的に隙間が形成されないので、先行モルタルやコンクリートが隙間に浸入することがない。
【0020】
本実施の形態においては、輸送管5とレジューサー管14の接続部分についても、第2の接続方法J2によって接続されている。すなわち図3に示されているように、レジューサー管14にもその端部に雌型フランジ部24’が形成され、円形溝26’にOリング29’が設けられている。この雌型フランジ部24’が輸送管5の最後尾のユニット管11の雄型フランジ部25に当接され、第2のカップリング部材31がこれらの雄雌フランジ部24’、25を係合している。さらに本実施の形態においては、レジューサー管14とデリバリホース15の接続部分も第2の接続方法J2によって接続されている。ただしデリバリホース15は、アダプタ33を介してレジューサー管14に接続されている。この接続部分において、レジューサー管14の端部に雄型フランジ部25’が形成されている。そしてアダプタ33には雌型フランジ部24”が形成され、Oリング29”が設けられている。これらが当接され第2のカップリング部材29”が設けられている。輸送管5とレジューサー管14、そしてレジューサー管14とデリバリホース15は、第2の接続方法J2で接続されているので、相互に固定され、相対的に伸縮したり回転しないようになっている。
【0021】
次に本実施の形態に係るセメントミルク製造装置35について説明する。セメントミルク製造装置35は、本実施の形態に係るコンクリートポンプ車1のホッパ2に着脱可能に設けられ、所定量のコンクリートから先行モルタルを製造する装置である。図4に示されているように、セメントミルク製造装置35は、所定のメッシュの篩36が張られた篩体37と、この篩体37を振動させるバイブレータ39と、篩体37内に水を供給する水供給装置41とから構成されている。従って、篩体37をホッパ2にセットして、篩体37に所定量のコンクリートを投入し、バイブレータ39によって篩体37を振動させながら水供給装置41によって水を供給すると、粗骨材が篩36に残り、主としてセメントと砂が水と共にホッパ2内に落下する。すなわちモルタルがホッパ2内に投入されることになる。
【0022】
本実施の形態に係るコンクリートポンプ車1の作用を説明する。図1に示されているように、自動車Aに設けられているアウトリガー43、43、…を広げて地面に設置し、コンクリートポンプ車1の転倒を防止する。ホッパ2にセメントミルク製造装置35の篩体37を載せる。篩体37に所定量のコンクリートを入れ、バイブレータ39を駆動して水供給装置41から所定量の水を篩体37内に供給する。そうするとセメントと砂と水とからなる混合物、すなわちモルタルが篩体37から落下してホッパー2内に投入される。十分な量のモルタルがホッパ2内に溜まったら、バイブレータ39と水供給装置41を停止してセメントミルク製造装置35をホッパ2から外す。コンクリートポンプを駆動する。ホッパー2内のモルタルが先行モルタルとしてコンクリートポンプにより圧送され、輸送管5内を送られて管内が湿潤される。輸送管5を構成している各ユニット管11、11、…の接続部分は大部分が第2の接続方法J2によって接続されているので、接続部分に入り込むモルタル量は少量で済む。すなわち少量の先行モルタルによって、輸送管5内を十分に湿潤させることができる。輸送管5内が湿潤されたらコンクリートポンプを停止し、先行モルタルを廃棄する。多段式ブーム4を屈伸させて、デリバリホース15が打設場所に位置するようにする。このとき輸送管5は、第1の接続方法J1によって接続されている接続部分が滑らかに回転して、多段式ブーム4の屈伸に合わせて屈伸することになる。ホッパ2にコンクリートを投入し、コンクリートポンプを駆動する。ホッパ2内のコンクリートはコンクリートポンプによって圧送され輸送管5内を流れる。輸送管5内を流れるコンクリートは脈動を伴っているが、ユニット管11、11、…は大部分が第2の接続方法J2によって接続されているので相互に伸縮せず、脈動の影響を受けない。従って輸送管5も多段式ブーム4に作用する繰り返し荷重が小さく、劣化したり破損し難い。同様に輸送管5とレジューサー管14、レジューサー管14とデリバリホース15も第2の接続方法J2によって接続されているので、コンクリートの脈動の影響を受けない。従って安全にコンクリートを打設することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 コンクリートポンプ車 2 ホッパ
4 多段式ブーム 5 輸送管
7A、7B、7C、7D 第1〜4のブーム
8 支柱
9A、9B、9C、9D ピストンシリンダユニット
11 ユニット管 13 ステー
14 レジューサー管 15 デリバリホース
17 フランジ部 18 隙間
19 ゴムパッキング 21 凹部21
22 第1のカップリング部材 23 爪部
24 雌型フランジ部 25 雄型フランジ部
26 円形溝 29 Oリング
31 第2のカップリング部材 35 セメントミルク製造装置
36 篩 37 篩体
39 バイブレータ 41 水供給装置
A 自動車
J1 第1の接続方法による接続部分
J2 第2の接続方法による接続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプと、複数本のブームから互いに連結されて連結部分のそれぞれが関節になって屈伸される多段式ブームと、前記多段式ブームに支持されて前記多段式ブームに合わせて屈伸される輸送管とを備え、前記コンクリートポンプから圧送されるコンクリートを前記輸送管によって打設場所に輸送するコンクリートポンプ車であって、
前記輸送管は、前記多段式ブームに沿って接続された複数本の金属製のユニット管から構成され、各関節の近傍において、円の4分の1の円弧状に形成された一対のユニット管が接続されてこの部分において屈伸されるようになっており、
前記ユニット管同士の接続部分のうち、前記一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は相対的に軸回転可能に接続され、他の接続部分については固定的に接続されていることを特徴とするコンクリートポンプ車。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートポンプ車において、前記ユニット管には両端部に外径方向に拡径したフランジ部が形成され、
前記一対の円弧状のユニット管同士の接続部分は、前記一対の円弧状のユニット管が所定の隙間を空けて突き合わされ、環状のゴムパッキングがこれらのユニット管のフランジ部に被せられ、金属製の第1のカップリング部材が前記ゴムパッキングの外側から設けられ、前記第1のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されており、
前記他の接続部分は、隣り合うユニット管の一方のユニット管の端面に円形溝が形成され、該円形溝にゴム製のOリングが設けられ、前記隣り合うユニット管の端面同士が当接され、そして金属製の第2のカップリング部材によってそれぞれのフランジ部が係合されていることを特徴とするコンクリートポンプ車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリートポンプ車において、前記コンクリートポンプ車に設けられ前記コンクリートポンプにコンクリートを供給するようになっているホッパには、セメントミルク製造装置が着脱自在に設けられるようになっており、
前記セメントミルク製造装置は、所定のメッシュの篩と、該篩を振動させるバイブレータと、前記篩に水を供給する水供給装置とから構成されていることを特徴とするコンクリートポンプ車。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のコンクリートポンプ車において、前記輸送管の先端には、流れ方向に向かって管径が縮径している金属製のレジューサー管が固定的に接続され、該レジューサー管の先端にゴム製のデリバリーホースが固定的にされていることを特徴とするコンクリートポンプ車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32641(P2013−32641A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169139(P2011−169139)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(507155498)
【出願人】(507340854)
【出願人】(507155764)
【Fターム(参考)】