コンクリート中で煙道ガス水銀を封鎖するための組成物および方法
燃焼ガスから活性化カーボンにより吸着される水銀が空気連行性混和物を含有するコンクリート中に封鎖可能である。この活性化カーボンは、酸素の欠如した環境中で揮発分を除去し、炭化された無煙炭または低揮発性瀝青炭から製造されるカーボンチャーを用意し、このチャーをスチームの存在において活性化して、カーボン1グラム当り約30ミリグラム未満のアシッドブルー80インデックスを持つ活性化カーボンをもたらすことにより製造され得る。この活性化カーボンは、また、酸素の欠如した環境中で揮発分を除去し、炭化されたカーボンチャーを用意し、このチャーを酸素の存在において活性化して、活性化カーボンをもたらすことによっても製造され得る。このカーボンは、フライアッシュと水銀を含有する燃焼ガス流の中に注入され、次に、フライアッシュと共にガス流から取り出され得る。生成する組成物は、空気連行コンクリート中のセメントの部分的な代用品として使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、あたかもこの明細書中に完全に述べられているように参照によりこの明細書中に組み込まれている、「コンクリート中で煙道ガス水銀を封鎖するための組成物および方法」と題する、2006年11月22日出願の米国暫定出願No.60/860,563の優先権を主張する。
【連邦政府により援助された研究または開発に関する記述】
【0002】
本発明は、米国国立科学財団助成番号DMI−0232735およびDMI−0349752の下で授与された、協力協定下の米国政府からの援助により行われた。米国政府は、本発明に対してしかるべき権利を保有し得る。
【技術分野】
【0003】
本発明は、セメント質およびポゾラン質用途のための新規な組成物に関する。特に、本発明は、凍結融解サイクルを受けた場合に破壊せず、崩壊しない、コンクリートの内部でカーボン水銀吸着剤により封鎖される、石炭火力煙道ガスからの捕捉水銀を含有する、新規なセメント質およびポゾラン質組成物に関する。本発明は、また、セメント質組成物内でカーボン質水銀吸着剤を製造するための方法と、この組成物から硬化した空気連行(air−entrained)構造物を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
石炭の燃焼から生じるフライアッシュは、コンクリートおよびモルタル中でのセメントの部分的な置換物としてしばしば使用される。石炭の燃焼からの流出ガスは水銀を含有する。この汚染物は、煙道ガス流の中に注入され、粒子除去装置中でフライアッシュと共に捕集される、粉末化された活性化カーボン(PAC)により吸着され得る。例えば、水銀吸着用に製造される臭素化PACは、内容が参照によりこの明細書中に組み込まれている、本発明者らの1人により米国特許第6,953,494号により提供される。しかしながら、水銀排出コントロールに使用される先行技術のPAC吸着剤を石炭火力発電プラントからのフライアッシュと混合する場合、このアッシュは、コンクリート中のセメントの置換物としてその最高価値の使用には販売不能である。これは、水銀捕捉に使用される高吸着性PACがコンクリート作業性と凍結融解能力のために必要とされる空気泡を生成させるのにコンクリートスラリーに後から添加される空気連行性混和物(AEA)薬品も吸着するためである。
【0005】
米国の発電プラントにより生じる、年間15百万トン以上のフライアッシュの20%以上が埋め立て廃棄ではなくコンクリートおよびモルタルの使用に現在販売されている。この量を増加させるために今努力が行われている。このフライアッシュは、コンクリートもしくはモルタルミックス中でのコストをかけて製造されるポルトランドセメントの一部に置き換わる。このコンクリートの大部分は、人への影響から離れた道路建設および構造物で使用される。
【0006】
コンクリート中でセメントの一部を置き換えるのにフライアッシュを使用する経済的なメリットは、アッシュの販売からの収益の増加、フライアッシュ廃棄のコストの低下、および高コストのセメントの代わりにアッシュを使用することによる節約を含む。コンクリート性能のメリットは、耐薬品性の増加、強度の増加、および作業性の改善を含む。環境的なメリットは、温室効果ガス排出の低減、地上投棄の低減、およびバージン資源使用の低減を含む。フライアッシュ組成物が先行技術の水銀吸着剤を僅少なレベル以上に含有すると、これらのメリットはすべて失われる。このことは、フライアッシュがメリットのあ
る形で使用されずに、廃棄されなければならないことのみならず、コンクリートで固めることにより、放出および環境との相互作用から物理的および化学的に水銀を封鎖するための機会が失われることのために、二重にマイナスとなる。
【0007】
2005年、米国環境庁は、石炭火力発電プラントが水銀排出を低下させることを要求するクリーンエア水銀規定を最初に発布した。更には、多数の州は、迅速で高度の水銀低減レベルを既に要求した。例えば、ほぼ50個所の大きな石炭火力発電用ボイラーを持つイリノイ州は、2009年中までに90%の水銀低減を事実上要求した。ペンシルバニア州は2010年に始まる80%の除去を要求した。
【0008】
これらの石炭火力発電プラント、二酸化イオウ湿式スクラバーを持たないプラントの多くに対して、新しい水銀排出低減の要求に適合する最低コストの最有力候補の技術は、プラントの現存の粒子コントロールの前に、煙道ガスの中にPACを注入することである。しかしながら、この方法においては、PACがプラントの捕集フライアッシュと混合される。通常のPACの表面積が高く、吸着能力が高いために、最少量でもフライアッシュと混合されると、フライアッシュはコンクリート中でもはや使用不能である。このPACは、コンクリートスラリーに後で添加される空気連行性混和物(AEA)薬品を吸着する。これらの界面活性剤は、コンクリートの作業性と凍結融解能力に必要とされるエアボイドを作り出すのに必要な正確な量の空気泡を生じる。本来ならばコンクリート用にアッシュを販売できるが、今では廃棄しなければならないプラントにとっては、これは大きな経済的な損失である。米国エネルギー省国立エネルギー技術研究所の分析は、この有害な副生成物の影響が一部のプラントでの水銀低減のコストを効果的に増大させるということを示す。
【0009】
セメントキルンからの水銀排出も問題として漸増的に認識されている。同様に、PACがこれらの排気ガスの中に注入可能であり、排気ガスからセメントキルンダストを分離する粒子除去装置中で捕集可能である。しかしながら、捕集されたセメントキルンダストは、AEA吸着性PACを含有するために、空気連行コンクリート用のセメントとしてもはや販売不能である。
【0010】
先行技術は、カーボン水銀吸着剤を更にコンクリートに利するように(concrete−friendly)するか、もしくはこれらの水銀性能を改善する努力を含むものである。
【0011】
(特許文献1)においては、本発明者の1人は、既に製造された粉末化された活性化カーボンを充分に大量のオゾンによる後処理がAEAの吸着度を減少させるのに充分なメリットのある影響を吸着剤の表面に及ぼして、これらを組み込んだフライアッシュをコンクリート中で使用することができるということを教示した。残念ながら、発電プラントの水銀コントロールに必要な活性化カーボンの表面積が大きいために、必要とされるオゾンの量が多量かつ高価過ぎ、この経路が実際的に有用でないということも判った。例えば、上記の開示においては、AEA妨害を充分に低下させるために、Nelsonは、カーボン1キログラム当り1キログラムのオーダーのオゾンが必要とされるということを教示した。(特許文献2)の最近の特許の図10および11は同じことを示す。
【0012】
(特許文献3)は、石炭の直接燃焼からの未燃焼カーボン粒子が酸素リッチのガスまたはオゾンまたは硝酸により後処理されて、改善された水銀吸着剤を作り出すフライアッシュから分離され、次にフライアッシュ含有ガス流の中に戻し注入されて、水銀を除去することができるということを教示する。しかしながら、これは、商業的に製造された粉末化された活性化カーボンと比較して最小の水銀吸着能力を有する未燃焼のカーボン粒子を分離するために、大量のフライアッシュを処理すること、および別の後処理段階を伴う。更
には、Hwangは、コンクリート中のフライアッシュにより吸着性水銀を封鎖しないが、代わりにフライアッシュからカーボンを分離する。
【0013】
Nelson、Chen、およびHwangのようにカーボンを後処理せずに、粉末化された活性化カーボン質材料を直接に製造する他の方法が最近提案された。Boolは、(特許文献4)においてバーナーからの極めて高温で高反応性の酸素富化したガス流を磨砕もしくは粉砕したカーボン質フィード原料と直接に急速に混合して、水銀吸着剤として使用可能な粉末化された活性化チャーを迅速かつ直接に製造する。高酸素濃度、急速かつ強力な混合、微細な粒子サイズ、および高い温度は、カーボン質フィード原料の揮発分除去/炭化率を著しく増加させる。これは、揮発分除去/炭化段階がロータリーキルン中で粗顆粒状もしくはペレット化されたフィード原料について行われるか、もしくは酸素富化環境ではなく不活性な環境中多段炉床式炉の頂部レベルにおいて低い温度で徐々にかつ別々に行われる、活性化カーボンを製造する在来の極めて遅い方法と対比的である。発電プラントフライアッシュのコンクリートの構成成分としての販売を可能とするために、Boolは、カーボンをフライアッシュと混合しないが、フライアッシュを第1の粒子捕集装置中で既に捕集した後でカーボンを注入することを教示している。残念なことには、Boolの吸着剤製造方法は、ユニークな装置と方法を必要とし、在来の商用装置もしくは現存の活性化カーボン製造ラインでは使用不能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願No.2003/0206843、Nelson
【特許文献2】米国特許第6,890,507号、Chen
【特許文献3】米国特許第6,027,551号、Hwang
【特許文献4】米国特許出願No.2006/0204430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、空気連行コンクリート中でセメントの部分的な置換物として使用される、ガス流中に存在するフライアッシュの能力を損なうことなく、ガス流中で水銀吸着に使用され得る水銀吸着剤材料に対する必要性がなお存在する。
【0016】
本発明の1つの局面は、コンクリート中で使用される空気連行性混和物に適合性のある廃ガス流からの捕捉水銀を封鎖する組成物を作り出すことである。
【0017】
本発明の更なる局面は、気相から水銀を吸着するが、逆説的に言えば、同時にコンクリートスラリー中での空気連行性混和物化合物の劣った吸着剤である組成物を作り出すことである。
【0018】
本発明の更なる局面は、オゾン、硝酸または他の強酸化剤により別々に後処理する必要無しでこのような組成物を作り出すことである。
【0019】
本発明の更なる局面は、現存の活性化カーボン製造装置に当てはまる在来の商用タイプの装置および方法を用いて、このような組成物を製造し得るとことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
事実、カーボン吸着剤がしかるべき性質を有するような方法でカーボン吸着剤を製造するならば、活性化カーボン水銀吸着剤を含有する、石炭火力発電プラントからのフライアッシュ組成物を空気連行コンクリート中で使用することができるということが見出された。これらの性質は、新しい評価尺度のアシッドブルー80インデックスもしくはABIに
より最もよい要約が可能である。ABIは、カーボン材料が標準溶液から吸着する、特定の染料のアシッドブルー80(CAS 4474−24−2)の量の相対的な尺度である。これは、標準のUV−可視光分光光度法の分析方法を用いて、定量可能である。通常の空気連行コンクリート中での水銀封鎖の使用を可能とするためには、充分に低いABIの、少なくとも30mg/g未満の、好ましくは15mg/g未満の活性化カーボンを作り出さなければならない。
【0021】
本発明者らは、製造工程時に通常のスチームまたは二酸化炭素の代わりに空気によりカーボンを少なくとも部分的に活性化することにより、低ABIのカーボン水銀吸着剤を製造することができるということを見出した。既使用の活性化カーボンがフィード原料である場合には、再活性化雰囲気は空気とその酸素を含有する。低ABIのカーボン水銀吸着剤は、無煙炭フィード原料または低揮発性瀝青炭から出発し、ならびにメソ多孔性を作り過ぎないように活性化を注意深く制御するならば、在来のスチーム活性化を使用しても製造可能である。最低のABIと、添加されるAEAに及ぼす最低の影響を示すカーボンを製造するためには、無煙炭フィード原料と、遊離酸素を含む環境中での活性化の両方の組み合わせが推奨され得る。
【0022】
本発明の一つの態様においては、標準の活性化カーボン製造装置が使用可能であり、活性化カーボンの後処理加工は必要とされない。本発明のもう一つの態様においては、石炭フィード原料は、細かく磨砕され、揮発分除去/炭化および活性化段階の前に結合剤によりペレット化される。本発明の一つの態様においては、カーボンフィード原料の揮発分除去と炭化を酸素の欠如した環境中で行って、生成物の過剰な燃焼が防止され得る。本発明のもう一つの態様においては、カーボンの水銀捕捉有効性を増大させるための先行技術の臭素添加が吸着剤製造工程に一体化可能である。活性化カーボンを有効量のオゾンまたは硝酸により後処理して、AEA吸着を低下させることは、不必要である。
【0023】
捕捉水銀を強固で耐久性のある空気連行コンクリート中にうまく閉じ込めることができる組成物を製造するために、発電プラントでの水銀除去工程時に新規な低ABIのPACとフライアッシュを緊密に混合することができる。これは、PACをフライアッシュを含んだ煙道ガスの中に注入し、粒子除去装置中でこれらを一緒に捕集することにより実施可能である。コンクリート中での使用にセメントキルンダストと共に捕集するために、低ABIのPACをセメントキルンの水銀含有排気ガスの中にも注入することができる。
【0024】
低ABIのPACとフライアッシュを含む組成物をAEA、水、セメント、および砂と合体して、捕捉水銀をモルタル中に、ならびに粗骨材と共にコンクリートの中に封鎖することができる。同様に、低ABIのPACとセメントキルンダストを含有する組成物をこれらの材料と合体して、捕捉水銀をモルタルまたはコンクリートの中に封鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面を参照すれば最もよく理解されるであろう。
【図1】先行技術のPACと本発明のPACのメソ細孔表面積を対比する棒グラフである。
【図2】先行技術のPACと本発明のPACのメソ細孔およびマクロ細孔容積を対比する棒グラフである。
【図3】先行技術のPACと本発明のPACのpH電荷ゼロ点を対比する棒グラフである。
【図4】水銀吸着剤を発電プラントでのフライアッシュと混合して、コンクリート中でのセメント代用品として使用可能な組成物を製造することができる方法を示す図である。
【図5】カーボン質水銀吸着剤の製造において使用されるカーボン質フィード原料の相対的なランクを示すブロックダイグラムである。
【図6】先行技術のPACと本発明のPACのアシッドブルーインデックスを対比する棒グラフである。
【図7】本発明のPACにより製造される湿潤コンクリートと、プレーンコンクリートおよび先行技術のPACを含有するコンクリートの中に連行されるエアボイドの容積を対比する棒グラフである。
【図8】0、1、および3重量パーセントのコンクリートに利するPACを含有して製造されるコンクリート試料の圧縮強度を示す棒グラフである。
【図9】Crawford Station of Midwest Generationにおいて本発明の水銀吸着剤を煙道ガスの中に種々の率で注入することにより得られる注入率および水銀排出低減の度合いと、21日にわたるC−PAC注入のグラフである。
【図10】Crawford Stationにおいて種々のホッパーフライアッシュ試料に対して21日間にわたって測定されたVinsol(登録商標)樹脂フォームインデックス値をプロットしたグラフである。
【図11】吸着剤注入前およびコンクリートに利するPACの注入期間時のフォームインデックス値の相対的な分布を示す棒グラフである。
【図12】3つのコンクリート配合物に対して、湿潤連行空気およびスランプについてのコンクリートデータを添加AEAの量と一緒に示す棒グラフである。
【図13】ベースラインフライアッシュと、本発明のPACを含有するフライアッシュを入れたコンクリートに対する静的および動的空気安定性データを示すグラフである。
【図14】ベースラインコンクリートと、本発明のPACを含有するコンクリートに対して凝結時間データをプロットしたグラフである。
【図15】本発明のPACを添加および添加せずに製造されるコンクリート試料の圧縮強度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
低アシッドブルー80インデックス値を持つカーボン質水銀吸着剤と石炭燃焼フライアッシュを合体した新規な組成物は、強固で耐久性のある不透過性の空気連行コンクリート中で環境から水銀を有利に封鎖することができる。両方の材料がこの目的にとって重要である。
【0027】
低ABIのカーボンは、適当な量のAEAが適当な量のコンクリートエアボイド中に出現することを可能とさせるために重要である。AEA作用が妨げられ、過少の泡しか生じない場合には、間隙水が凍結、膨張すると、コンクリートは破壊する。AEA添加が過剰に補償し、過多の泡が生じる場合には、もしくは泡が過大である場合には、コンクリートは強度不足により破壊する。しかしながら、PACがAEAの最小の吸着しか示さない場合には、これらの比率のいかなる自然の変動も小さく、AEA作用の意図した度合いと、コンクリートボイドが得られる。
【0028】
高カルシウムタイプCフライアッシュは、ポゾラン質の性質を有するために、包含されるフライアッシュも重要である。ポゾランは、それ自身では殆ど、もしくは全くセメンティング性を持たないが、微粉砕された形では、ならびに水分の存在においてはセメントの硬化により放出される水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント質の性質を持つ化合物を更に形成する、シリカ質またはシリカ質且つアルミナ質の材料である。コンクリート中のセメントの一部に対してポゾラン質フライアッシュを部分的に置き換えることによって、増大した密度と、長期のポゾラン質の作用が生じ、これが遊離石灰と結合し、ブリードチャンネルの減少とコンクリート透過性の減少をもたらす。更には、緻密な生成コンクリートは、攻撃的な化合物を表面に保つのを助け、破壊的な作用が減じられる。ポゾラン質フライアッシュを組み込んだコンクリートは、硫酸塩、弱酸、軟水、および海水によ
る攻撃に対しても抵抗性を示す。正味の効果は、コンクリート中に含有されたPAC中での捕捉水銀の封鎖の増大と、環境への暴露の著しい減少である。
【0029】
理論により限定されるのを望まないが、空気連行コンクリート中でフライアッシュと一緒に使用可能なカーボン質水銀吸着剤を作り出す鍵が1)PACメソ多孔性の最少化および/または2)適当なカーボン表面化学的性質であると本発明者らは考える。発電プラントの水銀低減にこれまで使用されている活性化カーボンは、必要とされる性質を必要とされる程度までは持たない。この性質は、カーボンのアシッドブルーインデックスまたはABIと称される新しい評価尺度による特徴付けが可能である。充分に低いABIは、コンクリートスラリー中での空気連行性混和薬品の低吸着度に必要な最少のメソ多孔性と、適当な表面の化学的性質の必要とされる組み合わせを示す。充分に低いABIの活性化カーボンは、石炭火力発電用ボイラーにおける水銀排出の低減にはこれまで使用されなかった。
【0030】
メソ多孔性は、PAC粒子の大きな開口をその微細構造の高表面積に結び付ける中間サイズの細孔およびチャンネルを含んでなる。国際純正応用化学連合のガイダンス「Reporting Physiosorption Data for Gas/Solid
Systems(1985)」によれば、2nm未満の幅の活性化カーボン細孔はミクロ細孔と考えられる。2および50nmの間の幅の細孔はメソ細孔と考えられ、50nmを超える幅の細孔はマクロ細孔と考えられる。
【0031】
活性化カーボンは、通常、高メソ多孔性を含めて所定の製造コストに対して最大表面積を持つように製造される。このようにして、水銀または他の目標吸着物は、メソ細孔とマクロ細孔中で封鎖部位を見付けることにおいて最少の障害を有する。他方、コンクリートに利するカーボン質水銀吸着剤を作り出すためには、適当な反応性のミクロ細孔性を維持する一方で、カーボンのメソ多孔性を最少化しなければならない。AEA化合物は、1から3ナノメーター長のオーダーの比較的大きな分子である。理論により限定されるように望むものではないが、AEA分子を嵌入もしくは輸送することができる細孔数を最少とすることにより、コンクリートスラリーからの有害な吸着の可能性のあるAEA量も最少化することができる。
【0032】
図1は、先行技術の水銀PACのメソ細孔表面積を本発明のそれと対比する。本発明の水銀PACは、すべて200m2/gを超すミクロ細孔性のブルナウア・エメット・テラー(BET)表面積を有する一方で、40m2/g未満のメソ細孔表面積を有する。先行技術の水銀PACは、100m2/gをゆうに超すBETメソ細孔性表面積を有する。図2は、同様に、このようなPACの計算されたメソ細孔およびマクロ細孔性容積を対比する。無煙炭からスチーム活性化により製造される試料と、瀝青炭から空気活性化により製造される試料が含まれる。「C−PAC」と称される試料は、実施例4で詳述される大規模な商用装置により無煙炭から製造される、本発明のコンクリートに利するPACである。
【0033】
理論により束縛されるように望むのではないが、本発明者らは、カーボン質水銀吸着剤の特定の表面の化学的性質がPAC上でのAEA吸着度の決定において重要であると考える。PACの表面上の特定の酸素官能基の存在と、表面の正味電荷は、AEAの結合を促進もしくは妨害することができる。空気活性化時に作り出される酸素含有官能基は、pHpzc以上のpHでAEA分子の親水性頭部を反撥することができる、酸性で親水性の性格をカーボン表面に付与する。PACの親水性を増大させることにより、例えばAEAの吸着は遅延され得、気相での水銀吸着に殆ど悪影響を及ぼさない。
【0034】
図3は、先行技術のPACのpH電荷ゼロ点、すなわちpHpzcを本発明の例と対比
する。在来のPACのpHpzcはかなり高く、これらの表面がより塩基性であり、より疎水性であり、低極性であるということを示す。これらの表面は、AEAの親水性頭部を反撥する、少数の負に帯電した部位を有する。他方、空気活性化されたPACのpHpzcは酸性もしくは中性であり、より酸性でより親水性の極性部位が存在し、コンクリートスラリーの高pH環境中でAEA頭部を反撥する、多数の負に帯電した部位を表面上に生成するということを示す。
【0035】
米国では、在来のバルク活性化カーボンは、木材および木材廃棄物、低ランクリグナイト、および瀝青炭から商業的に製造される。世界では、活性化カーボンは、ココナッツ殻および他のナッツ殻またはトウモロコシの皮、ピート、亜瀝青炭、および無煙炭などの植物からも商業的に製造される。バルク活性化カーボンを製造するために、固定カーボンのパーセント基準でカーボン質フィード原料の天然のランクの順序を示す、図5を参照のこと。
【0036】
驚くべきことには、本発明者らは、最初のフィード原料材料として無煙炭を特に使用することにより、空気連行コンクリートにおける使用に好適な低ABIのカーボンを製造することができるということを見出した。極高ランクのカーボン源の無煙炭はミクロ構造を有し、過度に厳しくないならばスチーム活性化によってさえ、煙道ガス流から著しい水銀を除去する、低ABIの材料を生成することができる。高ランクの低揮発性瀝青炭も使用し得るが、結果は通常無煙炭よりも良好でない。無煙炭はその固定カーボンレベルにより規定される。ASTM D 388−05は、「Standard Classification of Coals by Rank」を提示する。その中で、無煙炭は、メタ無煙炭、無煙炭、および半無煙炭を含み、乾燥した鉱物質を含まない基準で86%より上の固定カーボンを含有する。この明細書中で使用される時、用語「無煙炭」はすべてのこのような無煙炭を含むものとする。低揮発性瀝青炭も使用し得るが、少なくとも78%の固定カーボンを含有する。
【0037】
コンクリートに利するカーボン質水銀吸着剤を製造するには、カーボン質フィード原料は最初に予備処理されなければならない。少なくとも、石炭の場合には、石炭は、顆粒の形まで破砕されなければならないが、好ましくは磨砕され、結合剤と共に押し出されて、処理用にペレットを形成する。一部の石炭については、ケーキ化を防止するために、表面を予備酸化することが必要である。
【0038】
バルクの商用の活性化カーボンは、通常、二段法で製造される。第1に、カーボン含有原材料を酸素の欠如した環境(21パーセント未満の酸素)中で熱により揮発分除去し、揮発性化合物を追い出し、材料を炭化する。結果は大きな内部表面積を持たないチャーである。
【0039】
第2に、このチャーは、スチーム、二酸化炭素または脱水薬品により残存するカーボンの大きな区分を侵食して、高多孔性の高表面積構造を残すことにより活性化される。これらの2つの操作は、別々の装置中、もしくは多段炉床式炉の場合のように1つのユニットの異なる区分中で実施可能である。活性化後、このカーボンは、煙道ガス流中での流動化に充分微細な粉末まで磨砕されなければならない。粒子の大部分は米国ふるい寸法で約325メッシュ未満である。この方法で製造される先行技術のカーボン質水銀吸着剤は、水銀捕捉で有効であることができるが、通常、50から150mg/gのABIを有する。これによって、これらはAEA使用と不適合性となる。
【0040】
本発明者らは、空気中での、もしくはスチームまたは二酸化炭素でなく遊離酸素を含む環境中での炭化チャーの活性化が生成するPACのABIを著しく低下させることができるということを見出した。酸素によるこのような活性化は、AEA吸着を妨害する酸素含
有官能基をPAC表面上に付与する。このように、生成するPACはAEA使用と適合性であり得る。
【0041】
最低のABIと、添加AEAに及ぼす最低の影響を示すカーボンを製造するためには、無煙炭フィード原料と、少なくとも部分的に遊離酸素を含む環境中での活性化の両方の組み合わせを使用することができる。
【0042】
水銀捕捉性能を増大させるために、低ABIのカーボンも臭素、臭素塩または他の添加物により後処理され得る。例は米国特許第6,953,494号に見られる。このような水銀性能増強剤の使用を本発明と組み合わせて、PACの水銀捕捉を増大することができる。
【0043】
在来の活性化カーボン製造装置を大きく改変せずに使用して、所望ならばコンクリートに利するPACを製造することができる。無煙炭フィード原料が低ランクのフィード原料に置き換わる範囲で補償することを除いて、活性化カーボン製造における第1の揮発分除去/炭化段階への変更は予期されない。揮発分除去/炭化段階は、生成する炭化チャーの過剰な燃焼を防止するために酸素の欠如した環境中で行われることがなお予期される。
【0044】
活性化剤を空気に変更するならば、一部の変更が第2の活性化段階において必要とされる。空気活性化は、スチームと二酸化炭素による吸熱的活性化と比較して極めて発熱的であり、暴走燃焼を防止するためにはきっちりと制御されなければならない。しかしながら、注意深く行われるならば、装置と手順に対する若干の変更のみが必要であり得る。
【0045】
AEAとの相互作用を低下させるために、粉末化された活性化カーボンの後処理工程は必要とされない。AEA吸着の中性化はPAC製造方法それ自身において固有なものである。PACをオゾンまたは硝酸または他の強力な酸化剤により処理して、その表面を変えることは不必要である。PACを充分に低いABIで製造する場合には、このような更なる処理は、その使用を本発明の意図の範囲の外に置かない。
【0046】
捕捉水銀を強固で耐久性のあるコンクリート中にうまく閉じ込めることができる組成物を製造するためには、低ABIのPACとフライアッシュを緊密に混合しなければならない。これは発電プラントでの水銀除去工程において実施可能である。
【0047】
図4は、吸着剤を燃焼ガス流に添加し、布フィルター(バッグハウス)またはコールドサイド静電気沈降装置(ESP)などの粒子捕集装置を使用して、燃焼時に生成するフライアッシュを捕集する方法を概略的に示す。石炭またはリグナイトはボイラー11中で燃焼され、水銀含有煙道ガスを生成し、煙道ガスはスチーム管とエコノマイザー21により冷却される。このガスは、通常、ダクト61から空気予熱器22に流れ、これによってガス温度は空気予熱器を出るダクト62中で約300−400℃から約150−200℃まで低下する。このような配置においては、ビン71などの容器中に貯蔵された低ABIの水銀吸着剤は、注入ライン72からダクト62にフィードされ、多数のランスから注入されて、高温燃焼煙道ガス中で広く分散される。煙道ガスと混合する間に、PACは単体水銀と酸化された水銀種を吸着する。吸着剤は煙道ガスと共に粒子捕集装置31まで流れ、そこで布フィルターのフィルターバッグまたはESPの捕集板の上に堆積する。煙道ガスは、水銀内容物と粒子を浄化されて、布フィルターからダクト63、煙突51、次に雰囲気へと排出される。布フィルターバッグまたはESP捕集板のクリーニング時、低ABIのPACとライアッシュはホッパーの中に落下し、最終的に粒子捕集装置81から排出され、可能ならば、空気連行コンクリート中のセメントの代用品として貯蔵され、使用される。PAC水銀吸着剤は、微粉化された石炭発電プラント用途においては、概ね、捕集粒子の1から3重量%のオーダーを占める。
【0048】
類似の適用は、セメントキルンをボイラー11に置き換え、水銀含有の排気ガスをフィルター31として示されているものと類似した布フィルターにフィードする場合である。同様に、ビン71からのコンクリートに利するPACを流動ガス62の中に注入して、布フィルター中で微細連行セメントキルンダスト粒子と共に捕集することができる。この組み合わせ物を捕集装置81から排出し、モルタルおよび空気連行コンクリート中での使用に販売することができる。
【0049】
この開示は、粉末化された活性化カーボンおよびPACを対象のカーボン質水銀吸着剤としばしば呼ぶ。当業者ならば、活性コーク、活性化チャー、および類似のカーボン質水銀吸着剤も本発明の方法により製造可能であること、およびこれらの材料および類似の材料が特許請求の範囲により網羅されるように意図されているということを認識するであろう。
【0050】
新規な組成物は、時々新規な評価尺度を必要とする。例えば、触媒カーボンは、特別な評価尺度の、Matviyaへの米国特許第5,356,849号においてこのようなカーボンを規定するt−3/4測定により同定可能である。同様に、本発明者らは、新しい評価尺度、すなわちアシッドブルー80インデックス、すなわちABIの要求が充たされるならば、コンクリートに利するカーボンを作り出すことができるということを見出した。ABIはアシッドブルー80標準染料(CAS No.4474−24−2)の相対的な吸着を表す。通常の空気連行コンクリート中での水銀封鎖の使用を可能とするためには、充分に低いABIの活性化カーボンを作り出さなければならない。アシッドブルーブルー80は、コンクリートスラリー中のAEAに関連する分子的な性質を有するということが見出された。アシッドブルー80は、許容し得るコンクリート空気連行に対するカーボン表面の化学的性質とメソ細孔の要求を一体化する。低ABIのカーボン質水銀吸着剤と石炭燃焼フライアッシュを合体した新規な組成物は、強固で、耐久性のある空気連行コンクリート中での水銀封鎖に好成績で使用される能力を持つ。
【0051】
このカーボンが生成するコンクリートのボイド空間に小さい影響を及ぼす場合には、異なるフライアッシュ出荷品中に含有される自然変動量の吸着剤が生コンクリートプラントに送られる時の影響における変動は小さい。このようにして、過少のボイド空間がコンクリート中で生成し、凍結時にクラック発生または崩壊を生じるという恐れ、または過多のボイド空間が作られ、結果として必要とされるコンクリート強度を喪失するという恐れを持たずに、標準のAEA添加量を使用することができる。
【0052】
最初に、アシッドブルー80インデックスの詳細な説明が必要とされる。カーボン質水銀吸着剤のABIは、これを組み込んだフライアッシュが捕捉水銀を封鎖する、空気連行コンクリート中での使用に好適であるかどうかを示す。下記に述べるようにカーボンのABIを求め得る。
【0053】
A.標準の最初のアシッドブルー80(AB−80)溶液の作製
最初に、0.1000gのAB−80(CAS 4474−24−2、例えばAcros Organics)を少量の脱イオン水に溶解する。この溶液を1.0リットルの定容フラスコの中に移し、1.0リットルに希釈する。次に、溶液濃度C0を
C0=W*1000
と求める。
ここで、
C0=最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
W=AB−80の重量(g)である。
【0054】
B.AB−80溶液に対する作業曲線の導出
上記の最初のAB−80溶液の0、1、3、5、8、12、16、20、および25mlをそれぞれ25mlの定容フラスコの中にピペットで採取し、脱イオン水を用いて25mlに希釈する。各フラスコ中の溶液の濃度は
CS=C0*VS/25
である。
ここで、
CS=希釈されたAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;
C0=最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
VS=ピペット採取されたAB−80溶液の容積(ml)である。
【0055】
次に、分光光度計を用いて、上記の溶液の吸光度を626nmの波長で求める。次に、この溶液の吸光度を濃度に対してプロットする。
【0056】
得られるデータに直線最小二乗回帰を適用することにより、直線の作業曲線を得る。
【0057】
C.試料試験方法(ガイダンスには、ASTM D 3860−98「Standard
Practice for Determination of Adsorptive Capacity of Activated Carbon by Aqueous Phase Isotherm Technique」を参照のこと)
次に、標準のAB−80溶液を活性化カーボンと接触させることにより、活性化カーボンのAB−80吸着能力を求める。活性化カーボンとの接触前後のAB−80溶液の吸光度の差異により除去されたAB−80の相対量を求め、フロイントリッヒ等温プロットから吸着能力を計算する。
【0058】
PACが試験の前に例えば臭素または臭素塩により化学的に処理されたものであれば、試料は、このような薬品を検出することができなくなるまで最初に脱イオンまたは蒸留水により洗浄もしくは抽出されなければならない。例えば、5グラムの臭素化PACを500mlの水により洗浄し、濾過し、次に1リットルの水により更にリンスすることができる。このPAC試料は、通常、AB−80吸光度測定の前に150℃で3時間オーブン乾燥しなければならない。
【0059】
AB−80溶液と上述の作製段階に対する作業曲線を求めた後で、次の手順を使用することにより、カーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスを求め得る。
【0060】
種々の量のPAC試料を200mlの予めきれいにした栓付フラスコの中に秤取する。例えば、4つの異なる添加量を使用し得る。活性化カーボンの吸着能力に依って、粉末化された活性化カーボンの試料重量を調整しなければならないこともあり得る。一つのガイドラインは、活性化カーボンと接触後のAB−80溶液の濃度がAB−80作業曲線の直線の範囲に収まらなければならないということである。
【0061】
50mlのAB−80標準溶液を各フラスコの中にピペットで採取する。
【0062】
この溶液を25℃で30分間振盪および攪拌する。
【0063】
試料を0.20μmのメンブランフィルターにより直ちに濾過し、最初に各濾液の5mlを捨てる。
【0064】
626nm波長で測定する分光光度計を用いて濾液を直ちに分析し、前もって導出された作業曲線と吸光度を比較することにより、AB−80濾液溶液の濃度を計算する。
【0065】
濾液中のAB−80の濃度を対応するカーボン重量と一緒に記録する。
【0066】
吸着されたAB−80のX
X=V(C0−C)
を計算する。
ここで、
X=吸着されたAB−80の量(mg)であり;
C0=PACとの接触前の最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;
C=PACとの接触後のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
V=添加されたAB−80溶液の容積、すなわち0.05Lである。
【0067】
PACの単位重量当りの吸着されたAB−80の量のX/M
X/M=(C0V−CV)/M
を求める。
ここで、
X/M=カーボン1グラム当りの吸着されたAB−80(mg/g)であり;
M=PACの重量(g)である。
【0068】
C、すなわちPAC接触後のAB−80溶液の濃度(mg/L)の対数と、log(X/M)、すなわちカーボン1グラム当りの吸着されたAB−80(mg/g)の対数を計算する。横軸にlogCおよび縦軸にlog(X/M)をプロットし、直線最小二乗回帰を用いて、データを相関させる。相関係数の二乗のR2が0.90未満である場合には、更に良好な相関が得られるまで段階1−9を繰り返す。
【0069】
直線のトレンドラインをlogC0、すなわち最初のAB−80濃度のlogに外挿し、C0でのlog(X/M)から対応するX/Mを計算する。直線のlogC vs.log(X/M)トレンドライン中のC0でのX/Mがカーボン吸着剤試料のAB−80アシッドブルーインデックスまたはABIである。
【実施例】
【0070】
比較例1:先行技術の水銀吸着剤
本格規模の発電プラントの水銀コントロール試験において使用される粉末化された活性化カーボン(PAC)を主要な商用カーボン供給メーカーから購入した。これらのPACのアシッドブルー80インデックスを本発明の方法により求めた。これらの値を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
これらの先行技術の水銀吸着剤は極めて高いABIを有し、AEAの高吸着により僅少のレベル以上では空気連行コンクリート中でフライアッシュと共に使用不能である。
【0073】
実施例1:新規なコンクリートに利するカーボン
慣用の二段階の揮発分除去/炭化および活性化のシーケンスを用いて、本発明の組成物のための低ABIの粉末化された活性化カーボン水銀吸着剤を実験室で製造した。これらをキルンまたは炉でなく実験室の流動床反応器で製造したが、当業者ならば適切な装置温度、滞留時間、および他の関連する工程パラメーターを改変することにより、類似の材料をキルンと炉または多段炉床式炉で製造することができるということを認識するであろう。種々の石炭フィード原料は石炭供給者およびペンシルバニア州立大学の石炭試料バンクから入手したものであった。後者の試料はPSOCと表される。
【0074】
最初に、異なる石炭フィード原料試料を全部破砕し、サイズ別けした。次に、50メッシュサイズと100メッシュサイズ(米国標準篩)の間の材料を流動床反応器中で高温の不活性雰囲気(N2)において徐々に揮発分除去し、炭化した。約100℃/時で150℃まで、次に約250℃/時で150℃から550℃まで、最終的に約300℃/時で550℃から850℃まで加熱することにより、概ね揮発分除去および炭化段階を行った。ケーキ化を防止するために、揮発分除去前に低揮発性瀝青炭試料を約2.5L/分のO2により300℃で2時間予備酸化した。リグナイト試料を850℃まで他の場合の約半分の率で長時間にわたって揮発分除去し、炭化した。
【0075】
各石炭ランクから製造される炭化チャーを20.9%の酸素を含む空気中で活性化した。無煙炭から製造される更なるチャーもスチームを含む不活性環境中で活性化した。空気中で活性化を受けるPACを原石炭フィード1kg当りほぼ2.5L/分のO2の空気流下で450℃で約3時間活性化した。スチーム活性化を受けるPACを原石炭フィード1kg当り約0.20kgのスチームにより850℃で活性化した。両方の環境中で活性化を受けるPACを各条件で約半分の時間で活性化した。
【0076】
活性化後、この材料を不活性ガス雰囲気下で外周温度まで冷却した。次に、生成する活性化カーボンを325メッシュ未満のサイズまで磨砕し、これらのアシッドブルー80インデックス値を求めた。
【0077】
最初に米国特許第6,953,494号により提示されている方法にしたがって5重量%まで臭素化した後で、生成するPACの水銀除去能力も確認した。次に、生成する臭素化PACの水銀捕捉性能をシミュレーションされた石炭火力の煙道ガス流が流れる85m3/時(50−acfm)のパイロットダクト注入系中で試験した。この系中での水銀の連行吸着剤への物質移動と吸着反応速度は、本格規模の石炭火力発電所用途におけるそれに類似していた。使用された充分に計装されたダクト注入試験系は、高温煙道ガスを生成するためのメタンバーナーユニット;ガスに適切な度合いの水分を添加するための加湿ドラム;単体水銀または塩化水銀透過管付の水銀スパイキングサブシステム;SO2、NOX、およびHClに対するマスフローコントローラー付の煙道ガススパイキングサブシステム;吸着剤のパルス注入を減少させるための小型吸着剤フィーダーおよび流動化注入サブシステム;天井を巡る10メートルの断熱された10cm直径のダクト;熱電対、約2500m2/kNm3(500ft2/Kacf)の有効比捕集面積(SCA)の静電気フィルター;バックアップ布フィルター;安全フィルター;流れを測定するためのオリフィス板;および可変速誘導ドラフトファンを含むものであった。注入におけるガス温度は約175℃であり、ESPにおけるガス温度は約145℃であった。スパイクされた煙道ガス濃度はほぼ10μg/Nm3Hg、600ppmSO2、300ppmNOx、および5ppmHClであり、これは石炭火力発電プラントにおける煙道ガスに対する通常の値である。連続冷却蒸気原子吸光(CVAA)水銀分析器、Ohio Lumex Model 915を用いて、吸着剤注入前後の水銀測定値を採取した。使用される吸着剤注入速度は約90mg/Nm3(4lb/MMacf)であった。
【0078】
すべてのPACは許容し得る水銀除去能力を呈し、許容し得る収率で製造された。リグナイトは、固有水分と揮発分が高いために、当然低収率を有する。
【0079】
次に、これらの材料のアシッドブルー80インデックスを求め、表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
本発明の組成物に対する水銀吸着剤のこれらの実施例は、すべて、40mg/g以上のABIを有する、比較例1における先行技術の水銀吸着剤よりもはるかに低い、21mg/g以下のABIを有する。このように、これらの表面の化学的性質および/または細孔構造によって、これらをフライアッシュと混合して、空気連行コンクリートとモルタル中の捕捉水銀を封鎖することが可能となる。
【0082】
PAC1および2は空気中で通常とは異なって活性化されたものである。PAC3および4はスチームを用いて普通に活性化されたが、無煙炭から製造されたものである。
【0083】
最低のABIを達成し、空気連行性混和物に最小の悪影響を及ぼすために、PAC5は、無煙炭の使用と空気中での活性化の両方の方法を組み合わせたものである。PAC6および7も無煙炭と部分的な空気活性化を使用することにより、優れた結果を得た。
【0084】
図6は、これらの水銀吸着剤PACのABIを比較例1からの先行技術のそれと対比する。
【0085】
実施例2.先行技術のPACと新規なPACを含む空気連行コンクリート
これらの相対的な生成空気連行を試験するために、先行技術の水銀吸着剤PACまたは本発明のPACのいずれかを含むフライアッシュ含有コンクリートを製造した。ほぼ120のABIを持つ先行技術の吸着剤のNorit Darco(登録商標)Hgを実施例1からのPAC2、7のABIを持つ空気活性化カーボンと比較した。
【0086】
4つの異なる組成物のコンクリート試料を製造した。各々は、ポルトランドセメント、セメントの20%を置き換えるフライアッシュ、砂、骨材、水、および標準量の共通の空気連行性混和物、Darex(登録商標)II(W.R.Grace,Cambridge,MA)を含有するものであった。このフライアッシュは、代表的な石炭火力発電所の水銀コントロールサイトのWeEnergies’Pleasant Prairieの発電プラントから入手したものであった。
【0087】
コンクリート配合物の1つは水銀PACを含有しないものであった。この組成物のもう一つは、フライアッシュに対して1.0重量パーセント、発電プラントでの中程度の水銀吸着剤注入率を表すレベルで混入されたDarco(登録商標)Hgを含有するものであ
った。残りの2つの組成物は、フライアッシュと1.0重量%と3.0重量%の両方で混合された実施例1からのPAC2を含有するものであったが、後者は極めて高い吸着剤注入率と、結果として吸着剤がコンクリート使用と不適合である場合には、更に高い可能なAEA妨害の度合いを表す。
【0088】
このコンクリート試料をASTM C192「Standard Practice for Making and Curing Concrete Test Specimens in the Laboratory」にしたがって作製した。ASTM C231「Standard Test Method for Air Content of Freshly Mixed Concrete by the Pressure Method」にしたがって、各バッチからの多数の試料を湿潤空気の連行について試験し、これらの値を平均した。
【0089】
コンクリートに対する空気連行の仕様は、通常、4から7容積パーセントの範囲内の点で選択される。規定される空気連行が高い程、多量のAEAがこのブレンドに添加される。これらの試験においては、6容積パーセントの連行空気を目標とした。各試料は、DarexII(登録商標)AEAをセメントとフライアッシュ100kg当り52mlの添加量で含むものであった。結果を図7に示す。
【0090】
AEA無添加(図示せず)では、標準方法のコンクリートは、当然、2容積パーセント未満の連行空気を有し、これがAEAを添加する理由である。図7に示すように、PAC無添加であるが、適当な量のAEA添加では、このコンクリート試料は、目標とした6容積パーセントの連行空気(「0(コントロール)」と表示した一番左の黒色のバー)を達成した。
【0091】
1重量パーセントのみの高ABIのPACのNoritのDarcoHg(登録商標)をフライアッシュ部分に添加する場合には、ミックス中のAEA剤は役に立たない(短い灰色のバー)。このAEAはこのPACにより吸着され、空気連行の得られる度合いは自然のレベル、すなわちいかなるAEA薬品も添加しない空気連行のレベルとほぼ同一である。しかしながら、1重量パーセントまたは3重量パーセントもの本発明の低ABIのPACを水銀吸着剤として使用する場合には、適当な量の空気がコンクリート中に連行され、このような吸着剤を含有するフライアッシュがセメント代用品としての商品販売に好適である。
【0092】
図8に示すように、7、14、および28日間キュアした、ASTM C192にしたがって製造される図7のコンクリートの種々の試料についてコンクリート圧縮強度試験を行った。ASTM C39「Standard Test Method for Compressive Strength of Cylindrical Concrete Specimens」にしたがって試験する場合には、PAC2をフライアッシュに対して1および3重量パーセントで添加したコンクリートは、フライアッシュ中に存在する水銀吸着剤を持たないコントロール試料のそれに同等の圧縮強度を呈した。
【0093】
実施例3.更なるPAC
実施例1の方法にしたがって更なるPACをすべてスチーム活性化により製造した。関連するパラメーターと結果を下記の表3に示す。
【0094】
多数の異なる無煙炭を使用して、在来のスチーム活性化によるコンクリートに利する水銀吸着剤を製造することができる。例えば、実施例1からのPAC3および4に対するフィード原料は異なる源からのものであった。前者はJedo Coal Companyから、ならびに後者はペンシルバニア州立大学石炭試料バンクから入手したものであった
。
【0095】
【表3】
【0096】
フィード原料が充分に低い揮発性を有するならば、空気活性化を使用する必要無しでコンクリート適合性の水銀吸着剤を瀝青炭から製造することも可能である。PAC8は極めて低いABIを有したが、これは充分に活性化されず、水銀除去率は低かった。やや多い活性化は、収率を低下させ、水銀除去率を上昇させたと想定される。これはそのABIを増加させたであろうが、それはなお許容し得るほどに低いレベルまでであった。他方、高揮発性瀝青炭からのPAC9は80のABIを有し、したがってコンクリート適合性の水銀吸着剤でなかった。
【0097】
実施例4.コンクリートに利する水銀吸着剤の本格規模製造および注入
普通の本格規模の活性化カーボン製造ライン装置を用いて、本発明の組成物に対する水銀吸着剤を製造した。最初に、無煙炭フィード原料を結合剤と共に磨砕し、ペレット化し、次にロータリーキルン中酸素の欠如した環境においてゆっくりと揮発分除去し、炭化し、活性化炉中でスチームにより活性化し、次に磨砕した。無煙炭フィード原料によって、適当に製造すれば、コンクリートに利する水銀吸着剤の製造が可能となる一方で、低ABIのPACが自動的に製造されない。温度、滞留時間、スチーム率、および他の工程パラメーターを反復的に選択して、充分に低いABIの材料を製造した。本発明者らの指示の下に、この明細書中では「C−PAC」と表示される、合計50メートルトン(110,000lbs)の表4に示す特性のこのような無煙炭PACを3つの異なるプラントから製造した。
【0098】
【表4】
【0099】
次に、米国特許第6,953,494号の気相臭素化法を用いて、これらのコンクリートに利する材料を5重量%の臭素まで臭素化した。次に、この吸着剤の多くをChicago,Illinois Crawford Station of Midwest Generation EWEに出荷して、水銀除去能力、ならびに空気連行コンクリート中での使用にこれらを組み込むフライアッシュの許容性を試験した。
【0100】
ほぼ1ヶ月間、これらの3つのPACをこのプラントの234メガワットのユニット7の半分の煙道ガスの中に約110mg/Nm3・ガス(100万実立方フィートのガス当
り4.6ポンドのPAC)の平均注入率で注入した。この材料によって、プラントでの水銀排出がこの期間にわたって80%を若干超える平均値に低下した。図9を参照のこと。
【0101】
ダクトの中に注入した後、吸着剤粒子を高温煙道ガス流中に既に連行されたフライアッシュ粒子と緊密に混合し、この2つの材料をプラントの粒子捕集装置中で一緒に捕集した。この場合には、粒子捕集装置は普通の多極コールドサイド静電気沈降装置(ESP)であった。
【0102】
フライアッシュとPAC材料の大部分をフロントESPホッパー中で捕集し、小部分、PACの富化された区分をリアホッパー中で捕集した。フロントホッパーからのフライアッシュのカーボン含量は平均約2.5%(LOI、灼熱減量)であり、リアホッパーのそれは約4.4%(LOI)であった。
【0103】
水銀吸着剤注入の最初の3週間にわたってホッパーからのフライアッシュ試料を採取した。フォームインデックス測定をこれらのフライアッシュ試料について行い、これらを図10に示す。フォームインデックスは、特定のフライアッシュが水との混合物中で特定のAEAを吸着する度合いの相対的な尺度である。AEAの液滴、この場合にはVinsol(登録商標)樹脂(CAS No.8050−09−7)の1重量%溶液をフライアッシュ中のカーボンがAEAで飽和し、攪拌後安定なフォームが形成されるまで、フライアッシュ/水混合物(70mlの水中の30gフライアッシュ)の中に滴定した。AEA溶液の滴数がフォームインデックス値を示した。このプラントでは、フライアッシュが100滴以下のVinsol(登録商標)樹脂フォームインデックスを有する場合には、フライアッシュは、コンクリート中のセメントの代用品として販売可能であった。40滴以下のフォームインデックスならば、プレミアムコンクリートに販売可能であった。本発明の水銀吸着剤を組み込んだすべてのフライアッシュ試料のフォームインデックスは、100滴以下のフォームインデックスを有し、フロントホッパーからのそれはほぼ40滴であった。
【0104】
PAC注入時、生成フライアッシュのフォームインデックス値の分布は適当に狭く、予備注入ベースライン期間と比較して改善すらされていた。図11は、両方の期間に対するフロントホッパーフォームインデックスの分布データを示す。フライアッシュ中に当然見られる種々の未燃焼のカーボンレベルにより、生コンクリートプラントに販売される予備PAC注入フライアッシュバッチのフォームインデックス値は不規則に変動し、普通に行われているように、一定量のAEAを各バッチに添加すると、一部のコンクリートは過少のエアボイドを含み、一部のコンクリートは過多のエアボイドを含むという結果を生じた。コンクリートに利するPACを含有するフライアッシュについては中程度に高いAEA添加率が必要とされるが、フォームインデックス値の分布は更に均一であり、種々の未燃焼のカーボンの悪影響を減じるものであった。
【0105】
空気連行コンクリートを本発明のCrawford Stationフライアッシュ組成物により製造して、セメントの代用品としてこれらが好適であることを確認した。湿潤コンクリート中の6容量%のエアボイドを目標として、フライアッシュ、PAC無添加のベースラインフライアッシュ、および注入吸着剤を含有するフライアッシュを含有しない標準試料を作製した。この実施例の残りのPAC含有コンクリート中で使用されるフライアッシュ試料中の特定のPACは、ABI8の無煙炭由来のReference 12C−PAC材料であった。このフライアッシュは、2.8重量%のカーボン(灼熱減量)を含有し、セメントとフライアッシュ100kg当り79.6mlのDarex(登録商標)IIAEAを必要とし、フライアッシュが20%のセメントを置き換えるものであった。他方、ベースラインフライアッシュ添加かつPAC無添加の試料は、0.4重量%のフライアッシュカーボン含量(LOI)を有し、41.2ml/100kgのAEAを必要
とし、フライアッシュ置換比が20%のものであった。
【0106】
このコンクリート試料をASTM C192にしたがって作製した。図12に示すように、C−PACを組み込んだコンクリートミックスと、C−PAC無添加のものの多数の試料の平均スランプ値は、すべて、ほぼ15センチメートル(6インチ)であり、許容可能なものであった。湿潤エアボイド含量をASTM C231にしたがって測定した。各試料は約6容量%のボイドを呈するものであり、許容可能なものであった。C−PACの存在は湿潤空気連行にマイナスの影響を及ぼさなかった
静的および動的設定(例えば、コンクリートトラックの回転ドラム)で経時的なエアボイドの安定性も測定した。エアボイド安定性データを図13に示す。PACを含まないコンクリートとC−PACを組み込んだコンクリートに間に連行エアボイドの安定性の統計的な差異はなかった。
【0107】
このコンクリートの凝結時間プロフィールも評価した。このデータを図14に示す。初期および最終のコンクリートの凝結時間は、このコンクリートがC−PACを含有していても、含有していなくても同一であることが判明した。
【0108】
生成する硬化コンクリートの平均強度を多数の試料に対して求めた。7、14、28、および90日のキュアに対して平均値を図15に示した。C−PACを含有するアッシュ添加のコンクリートは、少なくとも無添加のコンクリート程度の高い強度を呈した。
【0109】
硬化コンクリート試料を顕微鏡的エアボイド分析(ASTM C457)のために商用のコンクリート試験ラボラトリー(Concrete Research & Testing LLC,Columbus,Ohio)に送った。下記の表5に示す測定値が報告された。
【0110】
【表5】
【0111】
C−PACを含有するコンクリートの微視的なエアボイドと、水銀吸着剤無添加のコンクリートのそれは、実質的には同一であり、両方とも許容し得る範囲内の値を呈した。
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、あたかもこの明細書中に完全に述べられているように参照によりこの明細書中に組み込まれている、「コンクリート中で煙道ガス水銀を封鎖するための組成物および方法」と題する、2006年11月22日出願の米国暫定出願No.60/860,563の優先権を主張する。
【連邦政府により援助された研究または開発に関する記述】
【0002】
本発明は、米国国立科学財団助成番号DMI−0232735およびDMI−0349752の下で授与された、協力協定下の米国政府からの援助により行われた。米国政府は、本発明に対してしかるべき権利を保有し得る。
【技術分野】
【0003】
本発明は、セメント質およびポゾラン質用途のための新規な組成物に関する。特に、本発明は、凍結融解サイクルを受けた場合に破壊せず、崩壊しない、コンクリートの内部でカーボン水銀吸着剤により封鎖される、石炭火力煙道ガスからの捕捉水銀を含有する、新規なセメント質およびポゾラン質組成物に関する。本発明は、また、セメント質組成物内でカーボン質水銀吸着剤を製造するための方法と、この組成物から硬化した空気連行(air−entrained)構造物を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
石炭の燃焼から生じるフライアッシュは、コンクリートおよびモルタル中でのセメントの部分的な置換物としてしばしば使用される。石炭の燃焼からの流出ガスは水銀を含有する。この汚染物は、煙道ガス流の中に注入され、粒子除去装置中でフライアッシュと共に捕集される、粉末化された活性化カーボン(PAC)により吸着され得る。例えば、水銀吸着用に製造される臭素化PACは、内容が参照によりこの明細書中に組み込まれている、本発明者らの1人により米国特許第6,953,494号により提供される。しかしながら、水銀排出コントロールに使用される先行技術のPAC吸着剤を石炭火力発電プラントからのフライアッシュと混合する場合、このアッシュは、コンクリート中のセメントの置換物としてその最高価値の使用には販売不能である。これは、水銀捕捉に使用される高吸着性PACがコンクリート作業性と凍結融解能力のために必要とされる空気泡を生成させるのにコンクリートスラリーに後から添加される空気連行性混和物(AEA)薬品も吸着するためである。
【0005】
米国の発電プラントにより生じる、年間15百万トン以上のフライアッシュの20%以上が埋め立て廃棄ではなくコンクリートおよびモルタルの使用に現在販売されている。この量を増加させるために今努力が行われている。このフライアッシュは、コンクリートもしくはモルタルミックス中でのコストをかけて製造されるポルトランドセメントの一部に置き換わる。このコンクリートの大部分は、人への影響から離れた道路建設および構造物で使用される。
【0006】
コンクリート中でセメントの一部を置き換えるのにフライアッシュを使用する経済的なメリットは、アッシュの販売からの収益の増加、フライアッシュ廃棄のコストの低下、および高コストのセメントの代わりにアッシュを使用することによる節約を含む。コンクリート性能のメリットは、耐薬品性の増加、強度の増加、および作業性の改善を含む。環境的なメリットは、温室効果ガス排出の低減、地上投棄の低減、およびバージン資源使用の低減を含む。フライアッシュ組成物が先行技術の水銀吸着剤を僅少なレベル以上に含有すると、これらのメリットはすべて失われる。このことは、フライアッシュがメリットのあ
る形で使用されずに、廃棄されなければならないことのみならず、コンクリートで固めることにより、放出および環境との相互作用から物理的および化学的に水銀を封鎖するための機会が失われることのために、二重にマイナスとなる。
【0007】
2005年、米国環境庁は、石炭火力発電プラントが水銀排出を低下させることを要求するクリーンエア水銀規定を最初に発布した。更には、多数の州は、迅速で高度の水銀低減レベルを既に要求した。例えば、ほぼ50個所の大きな石炭火力発電用ボイラーを持つイリノイ州は、2009年中までに90%の水銀低減を事実上要求した。ペンシルバニア州は2010年に始まる80%の除去を要求した。
【0008】
これらの石炭火力発電プラント、二酸化イオウ湿式スクラバーを持たないプラントの多くに対して、新しい水銀排出低減の要求に適合する最低コストの最有力候補の技術は、プラントの現存の粒子コントロールの前に、煙道ガスの中にPACを注入することである。しかしながら、この方法においては、PACがプラントの捕集フライアッシュと混合される。通常のPACの表面積が高く、吸着能力が高いために、最少量でもフライアッシュと混合されると、フライアッシュはコンクリート中でもはや使用不能である。このPACは、コンクリートスラリーに後で添加される空気連行性混和物(AEA)薬品を吸着する。これらの界面活性剤は、コンクリートの作業性と凍結融解能力に必要とされるエアボイドを作り出すのに必要な正確な量の空気泡を生じる。本来ならばコンクリート用にアッシュを販売できるが、今では廃棄しなければならないプラントにとっては、これは大きな経済的な損失である。米国エネルギー省国立エネルギー技術研究所の分析は、この有害な副生成物の影響が一部のプラントでの水銀低減のコストを効果的に増大させるということを示す。
【0009】
セメントキルンからの水銀排出も問題として漸増的に認識されている。同様に、PACがこれらの排気ガスの中に注入可能であり、排気ガスからセメントキルンダストを分離する粒子除去装置中で捕集可能である。しかしながら、捕集されたセメントキルンダストは、AEA吸着性PACを含有するために、空気連行コンクリート用のセメントとしてもはや販売不能である。
【0010】
先行技術は、カーボン水銀吸着剤を更にコンクリートに利するように(concrete−friendly)するか、もしくはこれらの水銀性能を改善する努力を含むものである。
【0011】
(特許文献1)においては、本発明者の1人は、既に製造された粉末化された活性化カーボンを充分に大量のオゾンによる後処理がAEAの吸着度を減少させるのに充分なメリットのある影響を吸着剤の表面に及ぼして、これらを組み込んだフライアッシュをコンクリート中で使用することができるということを教示した。残念ながら、発電プラントの水銀コントロールに必要な活性化カーボンの表面積が大きいために、必要とされるオゾンの量が多量かつ高価過ぎ、この経路が実際的に有用でないということも判った。例えば、上記の開示においては、AEA妨害を充分に低下させるために、Nelsonは、カーボン1キログラム当り1キログラムのオーダーのオゾンが必要とされるということを教示した。(特許文献2)の最近の特許の図10および11は同じことを示す。
【0012】
(特許文献3)は、石炭の直接燃焼からの未燃焼カーボン粒子が酸素リッチのガスまたはオゾンまたは硝酸により後処理されて、改善された水銀吸着剤を作り出すフライアッシュから分離され、次にフライアッシュ含有ガス流の中に戻し注入されて、水銀を除去することができるということを教示する。しかしながら、これは、商業的に製造された粉末化された活性化カーボンと比較して最小の水銀吸着能力を有する未燃焼のカーボン粒子を分離するために、大量のフライアッシュを処理すること、および別の後処理段階を伴う。更
には、Hwangは、コンクリート中のフライアッシュにより吸着性水銀を封鎖しないが、代わりにフライアッシュからカーボンを分離する。
【0013】
Nelson、Chen、およびHwangのようにカーボンを後処理せずに、粉末化された活性化カーボン質材料を直接に製造する他の方法が最近提案された。Boolは、(特許文献4)においてバーナーからの極めて高温で高反応性の酸素富化したガス流を磨砕もしくは粉砕したカーボン質フィード原料と直接に急速に混合して、水銀吸着剤として使用可能な粉末化された活性化チャーを迅速かつ直接に製造する。高酸素濃度、急速かつ強力な混合、微細な粒子サイズ、および高い温度は、カーボン質フィード原料の揮発分除去/炭化率を著しく増加させる。これは、揮発分除去/炭化段階がロータリーキルン中で粗顆粒状もしくはペレット化されたフィード原料について行われるか、もしくは酸素富化環境ではなく不活性な環境中多段炉床式炉の頂部レベルにおいて低い温度で徐々にかつ別々に行われる、活性化カーボンを製造する在来の極めて遅い方法と対比的である。発電プラントフライアッシュのコンクリートの構成成分としての販売を可能とするために、Boolは、カーボンをフライアッシュと混合しないが、フライアッシュを第1の粒子捕集装置中で既に捕集した後でカーボンを注入することを教示している。残念なことには、Boolの吸着剤製造方法は、ユニークな装置と方法を必要とし、在来の商用装置もしくは現存の活性化カーボン製造ラインでは使用不能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願No.2003/0206843、Nelson
【特許文献2】米国特許第6,890,507号、Chen
【特許文献3】米国特許第6,027,551号、Hwang
【特許文献4】米国特許出願No.2006/0204430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、空気連行コンクリート中でセメントの部分的な置換物として使用される、ガス流中に存在するフライアッシュの能力を損なうことなく、ガス流中で水銀吸着に使用され得る水銀吸着剤材料に対する必要性がなお存在する。
【0016】
本発明の1つの局面は、コンクリート中で使用される空気連行性混和物に適合性のある廃ガス流からの捕捉水銀を封鎖する組成物を作り出すことである。
【0017】
本発明の更なる局面は、気相から水銀を吸着するが、逆説的に言えば、同時にコンクリートスラリー中での空気連行性混和物化合物の劣った吸着剤である組成物を作り出すことである。
【0018】
本発明の更なる局面は、オゾン、硝酸または他の強酸化剤により別々に後処理する必要無しでこのような組成物を作り出すことである。
【0019】
本発明の更なる局面は、現存の活性化カーボン製造装置に当てはまる在来の商用タイプの装置および方法を用いて、このような組成物を製造し得るとことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
事実、カーボン吸着剤がしかるべき性質を有するような方法でカーボン吸着剤を製造するならば、活性化カーボン水銀吸着剤を含有する、石炭火力発電プラントからのフライアッシュ組成物を空気連行コンクリート中で使用することができるということが見出された。これらの性質は、新しい評価尺度のアシッドブルー80インデックスもしくはABIに
より最もよい要約が可能である。ABIは、カーボン材料が標準溶液から吸着する、特定の染料のアシッドブルー80(CAS 4474−24−2)の量の相対的な尺度である。これは、標準のUV−可視光分光光度法の分析方法を用いて、定量可能である。通常の空気連行コンクリート中での水銀封鎖の使用を可能とするためには、充分に低いABIの、少なくとも30mg/g未満の、好ましくは15mg/g未満の活性化カーボンを作り出さなければならない。
【0021】
本発明者らは、製造工程時に通常のスチームまたは二酸化炭素の代わりに空気によりカーボンを少なくとも部分的に活性化することにより、低ABIのカーボン水銀吸着剤を製造することができるということを見出した。既使用の活性化カーボンがフィード原料である場合には、再活性化雰囲気は空気とその酸素を含有する。低ABIのカーボン水銀吸着剤は、無煙炭フィード原料または低揮発性瀝青炭から出発し、ならびにメソ多孔性を作り過ぎないように活性化を注意深く制御するならば、在来のスチーム活性化を使用しても製造可能である。最低のABIと、添加されるAEAに及ぼす最低の影響を示すカーボンを製造するためには、無煙炭フィード原料と、遊離酸素を含む環境中での活性化の両方の組み合わせが推奨され得る。
【0022】
本発明の一つの態様においては、標準の活性化カーボン製造装置が使用可能であり、活性化カーボンの後処理加工は必要とされない。本発明のもう一つの態様においては、石炭フィード原料は、細かく磨砕され、揮発分除去/炭化および活性化段階の前に結合剤によりペレット化される。本発明の一つの態様においては、カーボンフィード原料の揮発分除去と炭化を酸素の欠如した環境中で行って、生成物の過剰な燃焼が防止され得る。本発明のもう一つの態様においては、カーボンの水銀捕捉有効性を増大させるための先行技術の臭素添加が吸着剤製造工程に一体化可能である。活性化カーボンを有効量のオゾンまたは硝酸により後処理して、AEA吸着を低下させることは、不必要である。
【0023】
捕捉水銀を強固で耐久性のある空気連行コンクリート中にうまく閉じ込めることができる組成物を製造するために、発電プラントでの水銀除去工程時に新規な低ABIのPACとフライアッシュを緊密に混合することができる。これは、PACをフライアッシュを含んだ煙道ガスの中に注入し、粒子除去装置中でこれらを一緒に捕集することにより実施可能である。コンクリート中での使用にセメントキルンダストと共に捕集するために、低ABIのPACをセメントキルンの水銀含有排気ガスの中にも注入することができる。
【0024】
低ABIのPACとフライアッシュを含む組成物をAEA、水、セメント、および砂と合体して、捕捉水銀をモルタル中に、ならびに粗骨材と共にコンクリートの中に封鎖することができる。同様に、低ABIのPACとセメントキルンダストを含有する組成物をこれらの材料と合体して、捕捉水銀をモルタルまたはコンクリートの中に封鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面を参照すれば最もよく理解されるであろう。
【図1】先行技術のPACと本発明のPACのメソ細孔表面積を対比する棒グラフである。
【図2】先行技術のPACと本発明のPACのメソ細孔およびマクロ細孔容積を対比する棒グラフである。
【図3】先行技術のPACと本発明のPACのpH電荷ゼロ点を対比する棒グラフである。
【図4】水銀吸着剤を発電プラントでのフライアッシュと混合して、コンクリート中でのセメント代用品として使用可能な組成物を製造することができる方法を示す図である。
【図5】カーボン質水銀吸着剤の製造において使用されるカーボン質フィード原料の相対的なランクを示すブロックダイグラムである。
【図6】先行技術のPACと本発明のPACのアシッドブルーインデックスを対比する棒グラフである。
【図7】本発明のPACにより製造される湿潤コンクリートと、プレーンコンクリートおよび先行技術のPACを含有するコンクリートの中に連行されるエアボイドの容積を対比する棒グラフである。
【図8】0、1、および3重量パーセントのコンクリートに利するPACを含有して製造されるコンクリート試料の圧縮強度を示す棒グラフである。
【図9】Crawford Station of Midwest Generationにおいて本発明の水銀吸着剤を煙道ガスの中に種々の率で注入することにより得られる注入率および水銀排出低減の度合いと、21日にわたるC−PAC注入のグラフである。
【図10】Crawford Stationにおいて種々のホッパーフライアッシュ試料に対して21日間にわたって測定されたVinsol(登録商標)樹脂フォームインデックス値をプロットしたグラフである。
【図11】吸着剤注入前およびコンクリートに利するPACの注入期間時のフォームインデックス値の相対的な分布を示す棒グラフである。
【図12】3つのコンクリート配合物に対して、湿潤連行空気およびスランプについてのコンクリートデータを添加AEAの量と一緒に示す棒グラフである。
【図13】ベースラインフライアッシュと、本発明のPACを含有するフライアッシュを入れたコンクリートに対する静的および動的空気安定性データを示すグラフである。
【図14】ベースラインコンクリートと、本発明のPACを含有するコンクリートに対して凝結時間データをプロットしたグラフである。
【図15】本発明のPACを添加および添加せずに製造されるコンクリート試料の圧縮強度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
低アシッドブルー80インデックス値を持つカーボン質水銀吸着剤と石炭燃焼フライアッシュを合体した新規な組成物は、強固で耐久性のある不透過性の空気連行コンクリート中で環境から水銀を有利に封鎖することができる。両方の材料がこの目的にとって重要である。
【0027】
低ABIのカーボンは、適当な量のAEAが適当な量のコンクリートエアボイド中に出現することを可能とさせるために重要である。AEA作用が妨げられ、過少の泡しか生じない場合には、間隙水が凍結、膨張すると、コンクリートは破壊する。AEA添加が過剰に補償し、過多の泡が生じる場合には、もしくは泡が過大である場合には、コンクリートは強度不足により破壊する。しかしながら、PACがAEAの最小の吸着しか示さない場合には、これらの比率のいかなる自然の変動も小さく、AEA作用の意図した度合いと、コンクリートボイドが得られる。
【0028】
高カルシウムタイプCフライアッシュは、ポゾラン質の性質を有するために、包含されるフライアッシュも重要である。ポゾランは、それ自身では殆ど、もしくは全くセメンティング性を持たないが、微粉砕された形では、ならびに水分の存在においてはセメントの硬化により放出される水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント質の性質を持つ化合物を更に形成する、シリカ質またはシリカ質且つアルミナ質の材料である。コンクリート中のセメントの一部に対してポゾラン質フライアッシュを部分的に置き換えることによって、増大した密度と、長期のポゾラン質の作用が生じ、これが遊離石灰と結合し、ブリードチャンネルの減少とコンクリート透過性の減少をもたらす。更には、緻密な生成コンクリートは、攻撃的な化合物を表面に保つのを助け、破壊的な作用が減じられる。ポゾラン質フライアッシュを組み込んだコンクリートは、硫酸塩、弱酸、軟水、および海水によ
る攻撃に対しても抵抗性を示す。正味の効果は、コンクリート中に含有されたPAC中での捕捉水銀の封鎖の増大と、環境への暴露の著しい減少である。
【0029】
理論により限定されるのを望まないが、空気連行コンクリート中でフライアッシュと一緒に使用可能なカーボン質水銀吸着剤を作り出す鍵が1)PACメソ多孔性の最少化および/または2)適当なカーボン表面化学的性質であると本発明者らは考える。発電プラントの水銀低減にこれまで使用されている活性化カーボンは、必要とされる性質を必要とされる程度までは持たない。この性質は、カーボンのアシッドブルーインデックスまたはABIと称される新しい評価尺度による特徴付けが可能である。充分に低いABIは、コンクリートスラリー中での空気連行性混和薬品の低吸着度に必要な最少のメソ多孔性と、適当な表面の化学的性質の必要とされる組み合わせを示す。充分に低いABIの活性化カーボンは、石炭火力発電用ボイラーにおける水銀排出の低減にはこれまで使用されなかった。
【0030】
メソ多孔性は、PAC粒子の大きな開口をその微細構造の高表面積に結び付ける中間サイズの細孔およびチャンネルを含んでなる。国際純正応用化学連合のガイダンス「Reporting Physiosorption Data for Gas/Solid
Systems(1985)」によれば、2nm未満の幅の活性化カーボン細孔はミクロ細孔と考えられる。2および50nmの間の幅の細孔はメソ細孔と考えられ、50nmを超える幅の細孔はマクロ細孔と考えられる。
【0031】
活性化カーボンは、通常、高メソ多孔性を含めて所定の製造コストに対して最大表面積を持つように製造される。このようにして、水銀または他の目標吸着物は、メソ細孔とマクロ細孔中で封鎖部位を見付けることにおいて最少の障害を有する。他方、コンクリートに利するカーボン質水銀吸着剤を作り出すためには、適当な反応性のミクロ細孔性を維持する一方で、カーボンのメソ多孔性を最少化しなければならない。AEA化合物は、1から3ナノメーター長のオーダーの比較的大きな分子である。理論により限定されるように望むものではないが、AEA分子を嵌入もしくは輸送することができる細孔数を最少とすることにより、コンクリートスラリーからの有害な吸着の可能性のあるAEA量も最少化することができる。
【0032】
図1は、先行技術の水銀PACのメソ細孔表面積を本発明のそれと対比する。本発明の水銀PACは、すべて200m2/gを超すミクロ細孔性のブルナウア・エメット・テラー(BET)表面積を有する一方で、40m2/g未満のメソ細孔表面積を有する。先行技術の水銀PACは、100m2/gをゆうに超すBETメソ細孔性表面積を有する。図2は、同様に、このようなPACの計算されたメソ細孔およびマクロ細孔性容積を対比する。無煙炭からスチーム活性化により製造される試料と、瀝青炭から空気活性化により製造される試料が含まれる。「C−PAC」と称される試料は、実施例4で詳述される大規模な商用装置により無煙炭から製造される、本発明のコンクリートに利するPACである。
【0033】
理論により束縛されるように望むのではないが、本発明者らは、カーボン質水銀吸着剤の特定の表面の化学的性質がPAC上でのAEA吸着度の決定において重要であると考える。PACの表面上の特定の酸素官能基の存在と、表面の正味電荷は、AEAの結合を促進もしくは妨害することができる。空気活性化時に作り出される酸素含有官能基は、pHpzc以上のpHでAEA分子の親水性頭部を反撥することができる、酸性で親水性の性格をカーボン表面に付与する。PACの親水性を増大させることにより、例えばAEAの吸着は遅延され得、気相での水銀吸着に殆ど悪影響を及ぼさない。
【0034】
図3は、先行技術のPACのpH電荷ゼロ点、すなわちpHpzcを本発明の例と対比
する。在来のPACのpHpzcはかなり高く、これらの表面がより塩基性であり、より疎水性であり、低極性であるということを示す。これらの表面は、AEAの親水性頭部を反撥する、少数の負に帯電した部位を有する。他方、空気活性化されたPACのpHpzcは酸性もしくは中性であり、より酸性でより親水性の極性部位が存在し、コンクリートスラリーの高pH環境中でAEA頭部を反撥する、多数の負に帯電した部位を表面上に生成するということを示す。
【0035】
米国では、在来のバルク活性化カーボンは、木材および木材廃棄物、低ランクリグナイト、および瀝青炭から商業的に製造される。世界では、活性化カーボンは、ココナッツ殻および他のナッツ殻またはトウモロコシの皮、ピート、亜瀝青炭、および無煙炭などの植物からも商業的に製造される。バルク活性化カーボンを製造するために、固定カーボンのパーセント基準でカーボン質フィード原料の天然のランクの順序を示す、図5を参照のこと。
【0036】
驚くべきことには、本発明者らは、最初のフィード原料材料として無煙炭を特に使用することにより、空気連行コンクリートにおける使用に好適な低ABIのカーボンを製造することができるということを見出した。極高ランクのカーボン源の無煙炭はミクロ構造を有し、過度に厳しくないならばスチーム活性化によってさえ、煙道ガス流から著しい水銀を除去する、低ABIの材料を生成することができる。高ランクの低揮発性瀝青炭も使用し得るが、結果は通常無煙炭よりも良好でない。無煙炭はその固定カーボンレベルにより規定される。ASTM D 388−05は、「Standard Classification of Coals by Rank」を提示する。その中で、無煙炭は、メタ無煙炭、無煙炭、および半無煙炭を含み、乾燥した鉱物質を含まない基準で86%より上の固定カーボンを含有する。この明細書中で使用される時、用語「無煙炭」はすべてのこのような無煙炭を含むものとする。低揮発性瀝青炭も使用し得るが、少なくとも78%の固定カーボンを含有する。
【0037】
コンクリートに利するカーボン質水銀吸着剤を製造するには、カーボン質フィード原料は最初に予備処理されなければならない。少なくとも、石炭の場合には、石炭は、顆粒の形まで破砕されなければならないが、好ましくは磨砕され、結合剤と共に押し出されて、処理用にペレットを形成する。一部の石炭については、ケーキ化を防止するために、表面を予備酸化することが必要である。
【0038】
バルクの商用の活性化カーボンは、通常、二段法で製造される。第1に、カーボン含有原材料を酸素の欠如した環境(21パーセント未満の酸素)中で熱により揮発分除去し、揮発性化合物を追い出し、材料を炭化する。結果は大きな内部表面積を持たないチャーである。
【0039】
第2に、このチャーは、スチーム、二酸化炭素または脱水薬品により残存するカーボンの大きな区分を侵食して、高多孔性の高表面積構造を残すことにより活性化される。これらの2つの操作は、別々の装置中、もしくは多段炉床式炉の場合のように1つのユニットの異なる区分中で実施可能である。活性化後、このカーボンは、煙道ガス流中での流動化に充分微細な粉末まで磨砕されなければならない。粒子の大部分は米国ふるい寸法で約325メッシュ未満である。この方法で製造される先行技術のカーボン質水銀吸着剤は、水銀捕捉で有効であることができるが、通常、50から150mg/gのABIを有する。これによって、これらはAEA使用と不適合性となる。
【0040】
本発明者らは、空気中での、もしくはスチームまたは二酸化炭素でなく遊離酸素を含む環境中での炭化チャーの活性化が生成するPACのABIを著しく低下させることができるということを見出した。酸素によるこのような活性化は、AEA吸着を妨害する酸素含
有官能基をPAC表面上に付与する。このように、生成するPACはAEA使用と適合性であり得る。
【0041】
最低のABIと、添加AEAに及ぼす最低の影響を示すカーボンを製造するためには、無煙炭フィード原料と、少なくとも部分的に遊離酸素を含む環境中での活性化の両方の組み合わせを使用することができる。
【0042】
水銀捕捉性能を増大させるために、低ABIのカーボンも臭素、臭素塩または他の添加物により後処理され得る。例は米国特許第6,953,494号に見られる。このような水銀性能増強剤の使用を本発明と組み合わせて、PACの水銀捕捉を増大することができる。
【0043】
在来の活性化カーボン製造装置を大きく改変せずに使用して、所望ならばコンクリートに利するPACを製造することができる。無煙炭フィード原料が低ランクのフィード原料に置き換わる範囲で補償することを除いて、活性化カーボン製造における第1の揮発分除去/炭化段階への変更は予期されない。揮発分除去/炭化段階は、生成する炭化チャーの過剰な燃焼を防止するために酸素の欠如した環境中で行われることがなお予期される。
【0044】
活性化剤を空気に変更するならば、一部の変更が第2の活性化段階において必要とされる。空気活性化は、スチームと二酸化炭素による吸熱的活性化と比較して極めて発熱的であり、暴走燃焼を防止するためにはきっちりと制御されなければならない。しかしながら、注意深く行われるならば、装置と手順に対する若干の変更のみが必要であり得る。
【0045】
AEAとの相互作用を低下させるために、粉末化された活性化カーボンの後処理工程は必要とされない。AEA吸着の中性化はPAC製造方法それ自身において固有なものである。PACをオゾンまたは硝酸または他の強力な酸化剤により処理して、その表面を変えることは不必要である。PACを充分に低いABIで製造する場合には、このような更なる処理は、その使用を本発明の意図の範囲の外に置かない。
【0046】
捕捉水銀を強固で耐久性のあるコンクリート中にうまく閉じ込めることができる組成物を製造するためには、低ABIのPACとフライアッシュを緊密に混合しなければならない。これは発電プラントでの水銀除去工程において実施可能である。
【0047】
図4は、吸着剤を燃焼ガス流に添加し、布フィルター(バッグハウス)またはコールドサイド静電気沈降装置(ESP)などの粒子捕集装置を使用して、燃焼時に生成するフライアッシュを捕集する方法を概略的に示す。石炭またはリグナイトはボイラー11中で燃焼され、水銀含有煙道ガスを生成し、煙道ガスはスチーム管とエコノマイザー21により冷却される。このガスは、通常、ダクト61から空気予熱器22に流れ、これによってガス温度は空気予熱器を出るダクト62中で約300−400℃から約150−200℃まで低下する。このような配置においては、ビン71などの容器中に貯蔵された低ABIの水銀吸着剤は、注入ライン72からダクト62にフィードされ、多数のランスから注入されて、高温燃焼煙道ガス中で広く分散される。煙道ガスと混合する間に、PACは単体水銀と酸化された水銀種を吸着する。吸着剤は煙道ガスと共に粒子捕集装置31まで流れ、そこで布フィルターのフィルターバッグまたはESPの捕集板の上に堆積する。煙道ガスは、水銀内容物と粒子を浄化されて、布フィルターからダクト63、煙突51、次に雰囲気へと排出される。布フィルターバッグまたはESP捕集板のクリーニング時、低ABIのPACとライアッシュはホッパーの中に落下し、最終的に粒子捕集装置81から排出され、可能ならば、空気連行コンクリート中のセメントの代用品として貯蔵され、使用される。PAC水銀吸着剤は、微粉化された石炭発電プラント用途においては、概ね、捕集粒子の1から3重量%のオーダーを占める。
【0048】
類似の適用は、セメントキルンをボイラー11に置き換え、水銀含有の排気ガスをフィルター31として示されているものと類似した布フィルターにフィードする場合である。同様に、ビン71からのコンクリートに利するPACを流動ガス62の中に注入して、布フィルター中で微細連行セメントキルンダスト粒子と共に捕集することができる。この組み合わせ物を捕集装置81から排出し、モルタルおよび空気連行コンクリート中での使用に販売することができる。
【0049】
この開示は、粉末化された活性化カーボンおよびPACを対象のカーボン質水銀吸着剤としばしば呼ぶ。当業者ならば、活性コーク、活性化チャー、および類似のカーボン質水銀吸着剤も本発明の方法により製造可能であること、およびこれらの材料および類似の材料が特許請求の範囲により網羅されるように意図されているということを認識するであろう。
【0050】
新規な組成物は、時々新規な評価尺度を必要とする。例えば、触媒カーボンは、特別な評価尺度の、Matviyaへの米国特許第5,356,849号においてこのようなカーボンを規定するt−3/4測定により同定可能である。同様に、本発明者らは、新しい評価尺度、すなわちアシッドブルー80インデックス、すなわちABIの要求が充たされるならば、コンクリートに利するカーボンを作り出すことができるということを見出した。ABIはアシッドブルー80標準染料(CAS No.4474−24−2)の相対的な吸着を表す。通常の空気連行コンクリート中での水銀封鎖の使用を可能とするためには、充分に低いABIの活性化カーボンを作り出さなければならない。アシッドブルーブルー80は、コンクリートスラリー中のAEAに関連する分子的な性質を有するということが見出された。アシッドブルー80は、許容し得るコンクリート空気連行に対するカーボン表面の化学的性質とメソ細孔の要求を一体化する。低ABIのカーボン質水銀吸着剤と石炭燃焼フライアッシュを合体した新規な組成物は、強固で、耐久性のある空気連行コンクリート中での水銀封鎖に好成績で使用される能力を持つ。
【0051】
このカーボンが生成するコンクリートのボイド空間に小さい影響を及ぼす場合には、異なるフライアッシュ出荷品中に含有される自然変動量の吸着剤が生コンクリートプラントに送られる時の影響における変動は小さい。このようにして、過少のボイド空間がコンクリート中で生成し、凍結時にクラック発生または崩壊を生じるという恐れ、または過多のボイド空間が作られ、結果として必要とされるコンクリート強度を喪失するという恐れを持たずに、標準のAEA添加量を使用することができる。
【0052】
最初に、アシッドブルー80インデックスの詳細な説明が必要とされる。カーボン質水銀吸着剤のABIは、これを組み込んだフライアッシュが捕捉水銀を封鎖する、空気連行コンクリート中での使用に好適であるかどうかを示す。下記に述べるようにカーボンのABIを求め得る。
【0053】
A.標準の最初のアシッドブルー80(AB−80)溶液の作製
最初に、0.1000gのAB−80(CAS 4474−24−2、例えばAcros Organics)を少量の脱イオン水に溶解する。この溶液を1.0リットルの定容フラスコの中に移し、1.0リットルに希釈する。次に、溶液濃度C0を
C0=W*1000
と求める。
ここで、
C0=最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
W=AB−80の重量(g)である。
【0054】
B.AB−80溶液に対する作業曲線の導出
上記の最初のAB−80溶液の0、1、3、5、8、12、16、20、および25mlをそれぞれ25mlの定容フラスコの中にピペットで採取し、脱イオン水を用いて25mlに希釈する。各フラスコ中の溶液の濃度は
CS=C0*VS/25
である。
ここで、
CS=希釈されたAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;
C0=最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
VS=ピペット採取されたAB−80溶液の容積(ml)である。
【0055】
次に、分光光度計を用いて、上記の溶液の吸光度を626nmの波長で求める。次に、この溶液の吸光度を濃度に対してプロットする。
【0056】
得られるデータに直線最小二乗回帰を適用することにより、直線の作業曲線を得る。
【0057】
C.試料試験方法(ガイダンスには、ASTM D 3860−98「Standard
Practice for Determination of Adsorptive Capacity of Activated Carbon by Aqueous Phase Isotherm Technique」を参照のこと)
次に、標準のAB−80溶液を活性化カーボンと接触させることにより、活性化カーボンのAB−80吸着能力を求める。活性化カーボンとの接触前後のAB−80溶液の吸光度の差異により除去されたAB−80の相対量を求め、フロイントリッヒ等温プロットから吸着能力を計算する。
【0058】
PACが試験の前に例えば臭素または臭素塩により化学的に処理されたものであれば、試料は、このような薬品を検出することができなくなるまで最初に脱イオンまたは蒸留水により洗浄もしくは抽出されなければならない。例えば、5グラムの臭素化PACを500mlの水により洗浄し、濾過し、次に1リットルの水により更にリンスすることができる。このPAC試料は、通常、AB−80吸光度測定の前に150℃で3時間オーブン乾燥しなければならない。
【0059】
AB−80溶液と上述の作製段階に対する作業曲線を求めた後で、次の手順を使用することにより、カーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスを求め得る。
【0060】
種々の量のPAC試料を200mlの予めきれいにした栓付フラスコの中に秤取する。例えば、4つの異なる添加量を使用し得る。活性化カーボンの吸着能力に依って、粉末化された活性化カーボンの試料重量を調整しなければならないこともあり得る。一つのガイドラインは、活性化カーボンと接触後のAB−80溶液の濃度がAB−80作業曲線の直線の範囲に収まらなければならないということである。
【0061】
50mlのAB−80標準溶液を各フラスコの中にピペットで採取する。
【0062】
この溶液を25℃で30分間振盪および攪拌する。
【0063】
試料を0.20μmのメンブランフィルターにより直ちに濾過し、最初に各濾液の5mlを捨てる。
【0064】
626nm波長で測定する分光光度計を用いて濾液を直ちに分析し、前もって導出された作業曲線と吸光度を比較することにより、AB−80濾液溶液の濃度を計算する。
【0065】
濾液中のAB−80の濃度を対応するカーボン重量と一緒に記録する。
【0066】
吸着されたAB−80のX
X=V(C0−C)
を計算する。
ここで、
X=吸着されたAB−80の量(mg)であり;
C0=PACとの接触前の最初のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;
C=PACとの接触後のAB−80溶液の濃度(mg/L)であり;ならびに
V=添加されたAB−80溶液の容積、すなわち0.05Lである。
【0067】
PACの単位重量当りの吸着されたAB−80の量のX/M
X/M=(C0V−CV)/M
を求める。
ここで、
X/M=カーボン1グラム当りの吸着されたAB−80(mg/g)であり;
M=PACの重量(g)である。
【0068】
C、すなわちPAC接触後のAB−80溶液の濃度(mg/L)の対数と、log(X/M)、すなわちカーボン1グラム当りの吸着されたAB−80(mg/g)の対数を計算する。横軸にlogCおよび縦軸にlog(X/M)をプロットし、直線最小二乗回帰を用いて、データを相関させる。相関係数の二乗のR2が0.90未満である場合には、更に良好な相関が得られるまで段階1−9を繰り返す。
【0069】
直線のトレンドラインをlogC0、すなわち最初のAB−80濃度のlogに外挿し、C0でのlog(X/M)から対応するX/Mを計算する。直線のlogC vs.log(X/M)トレンドライン中のC0でのX/Mがカーボン吸着剤試料のAB−80アシッドブルーインデックスまたはABIである。
【実施例】
【0070】
比較例1:先行技術の水銀吸着剤
本格規模の発電プラントの水銀コントロール試験において使用される粉末化された活性化カーボン(PAC)を主要な商用カーボン供給メーカーから購入した。これらのPACのアシッドブルー80インデックスを本発明の方法により求めた。これらの値を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
これらの先行技術の水銀吸着剤は極めて高いABIを有し、AEAの高吸着により僅少のレベル以上では空気連行コンクリート中でフライアッシュと共に使用不能である。
【0073】
実施例1:新規なコンクリートに利するカーボン
慣用の二段階の揮発分除去/炭化および活性化のシーケンスを用いて、本発明の組成物のための低ABIの粉末化された活性化カーボン水銀吸着剤を実験室で製造した。これらをキルンまたは炉でなく実験室の流動床反応器で製造したが、当業者ならば適切な装置温度、滞留時間、および他の関連する工程パラメーターを改変することにより、類似の材料をキルンと炉または多段炉床式炉で製造することができるということを認識するであろう。種々の石炭フィード原料は石炭供給者およびペンシルバニア州立大学の石炭試料バンクから入手したものであった。後者の試料はPSOCと表される。
【0074】
最初に、異なる石炭フィード原料試料を全部破砕し、サイズ別けした。次に、50メッシュサイズと100メッシュサイズ(米国標準篩)の間の材料を流動床反応器中で高温の不活性雰囲気(N2)において徐々に揮発分除去し、炭化した。約100℃/時で150℃まで、次に約250℃/時で150℃から550℃まで、最終的に約300℃/時で550℃から850℃まで加熱することにより、概ね揮発分除去および炭化段階を行った。ケーキ化を防止するために、揮発分除去前に低揮発性瀝青炭試料を約2.5L/分のO2により300℃で2時間予備酸化した。リグナイト試料を850℃まで他の場合の約半分の率で長時間にわたって揮発分除去し、炭化した。
【0075】
各石炭ランクから製造される炭化チャーを20.9%の酸素を含む空気中で活性化した。無煙炭から製造される更なるチャーもスチームを含む不活性環境中で活性化した。空気中で活性化を受けるPACを原石炭フィード1kg当りほぼ2.5L/分のO2の空気流下で450℃で約3時間活性化した。スチーム活性化を受けるPACを原石炭フィード1kg当り約0.20kgのスチームにより850℃で活性化した。両方の環境中で活性化を受けるPACを各条件で約半分の時間で活性化した。
【0076】
活性化後、この材料を不活性ガス雰囲気下で外周温度まで冷却した。次に、生成する活性化カーボンを325メッシュ未満のサイズまで磨砕し、これらのアシッドブルー80インデックス値を求めた。
【0077】
最初に米国特許第6,953,494号により提示されている方法にしたがって5重量%まで臭素化した後で、生成するPACの水銀除去能力も確認した。次に、生成する臭素化PACの水銀捕捉性能をシミュレーションされた石炭火力の煙道ガス流が流れる85m3/時(50−acfm)のパイロットダクト注入系中で試験した。この系中での水銀の連行吸着剤への物質移動と吸着反応速度は、本格規模の石炭火力発電所用途におけるそれに類似していた。使用された充分に計装されたダクト注入試験系は、高温煙道ガスを生成するためのメタンバーナーユニット;ガスに適切な度合いの水分を添加するための加湿ドラム;単体水銀または塩化水銀透過管付の水銀スパイキングサブシステム;SO2、NOX、およびHClに対するマスフローコントローラー付の煙道ガススパイキングサブシステム;吸着剤のパルス注入を減少させるための小型吸着剤フィーダーおよび流動化注入サブシステム;天井を巡る10メートルの断熱された10cm直径のダクト;熱電対、約2500m2/kNm3(500ft2/Kacf)の有効比捕集面積(SCA)の静電気フィルター;バックアップ布フィルター;安全フィルター;流れを測定するためのオリフィス板;および可変速誘導ドラフトファンを含むものであった。注入におけるガス温度は約175℃であり、ESPにおけるガス温度は約145℃であった。スパイクされた煙道ガス濃度はほぼ10μg/Nm3Hg、600ppmSO2、300ppmNOx、および5ppmHClであり、これは石炭火力発電プラントにおける煙道ガスに対する通常の値である。連続冷却蒸気原子吸光(CVAA)水銀分析器、Ohio Lumex Model 915を用いて、吸着剤注入前後の水銀測定値を採取した。使用される吸着剤注入速度は約90mg/Nm3(4lb/MMacf)であった。
【0078】
すべてのPACは許容し得る水銀除去能力を呈し、許容し得る収率で製造された。リグナイトは、固有水分と揮発分が高いために、当然低収率を有する。
【0079】
次に、これらの材料のアシッドブルー80インデックスを求め、表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
本発明の組成物に対する水銀吸着剤のこれらの実施例は、すべて、40mg/g以上のABIを有する、比較例1における先行技術の水銀吸着剤よりもはるかに低い、21mg/g以下のABIを有する。このように、これらの表面の化学的性質および/または細孔構造によって、これらをフライアッシュと混合して、空気連行コンクリートとモルタル中の捕捉水銀を封鎖することが可能となる。
【0082】
PAC1および2は空気中で通常とは異なって活性化されたものである。PAC3および4はスチームを用いて普通に活性化されたが、無煙炭から製造されたものである。
【0083】
最低のABIを達成し、空気連行性混和物に最小の悪影響を及ぼすために、PAC5は、無煙炭の使用と空気中での活性化の両方の方法を組み合わせたものである。PAC6および7も無煙炭と部分的な空気活性化を使用することにより、優れた結果を得た。
【0084】
図6は、これらの水銀吸着剤PACのABIを比較例1からの先行技術のそれと対比する。
【0085】
実施例2.先行技術のPACと新規なPACを含む空気連行コンクリート
これらの相対的な生成空気連行を試験するために、先行技術の水銀吸着剤PACまたは本発明のPACのいずれかを含むフライアッシュ含有コンクリートを製造した。ほぼ120のABIを持つ先行技術の吸着剤のNorit Darco(登録商標)Hgを実施例1からのPAC2、7のABIを持つ空気活性化カーボンと比較した。
【0086】
4つの異なる組成物のコンクリート試料を製造した。各々は、ポルトランドセメント、セメントの20%を置き換えるフライアッシュ、砂、骨材、水、および標準量の共通の空気連行性混和物、Darex(登録商標)II(W.R.Grace,Cambridge,MA)を含有するものであった。このフライアッシュは、代表的な石炭火力発電所の水銀コントロールサイトのWeEnergies’Pleasant Prairieの発電プラントから入手したものであった。
【0087】
コンクリート配合物の1つは水銀PACを含有しないものであった。この組成物のもう一つは、フライアッシュに対して1.0重量パーセント、発電プラントでの中程度の水銀吸着剤注入率を表すレベルで混入されたDarco(登録商標)Hgを含有するものであ
った。残りの2つの組成物は、フライアッシュと1.0重量%と3.0重量%の両方で混合された実施例1からのPAC2を含有するものであったが、後者は極めて高い吸着剤注入率と、結果として吸着剤がコンクリート使用と不適合である場合には、更に高い可能なAEA妨害の度合いを表す。
【0088】
このコンクリート試料をASTM C192「Standard Practice for Making and Curing Concrete Test Specimens in the Laboratory」にしたがって作製した。ASTM C231「Standard Test Method for Air Content of Freshly Mixed Concrete by the Pressure Method」にしたがって、各バッチからの多数の試料を湿潤空気の連行について試験し、これらの値を平均した。
【0089】
コンクリートに対する空気連行の仕様は、通常、4から7容積パーセントの範囲内の点で選択される。規定される空気連行が高い程、多量のAEAがこのブレンドに添加される。これらの試験においては、6容積パーセントの連行空気を目標とした。各試料は、DarexII(登録商標)AEAをセメントとフライアッシュ100kg当り52mlの添加量で含むものであった。結果を図7に示す。
【0090】
AEA無添加(図示せず)では、標準方法のコンクリートは、当然、2容積パーセント未満の連行空気を有し、これがAEAを添加する理由である。図7に示すように、PAC無添加であるが、適当な量のAEA添加では、このコンクリート試料は、目標とした6容積パーセントの連行空気(「0(コントロール)」と表示した一番左の黒色のバー)を達成した。
【0091】
1重量パーセントのみの高ABIのPACのNoritのDarcoHg(登録商標)をフライアッシュ部分に添加する場合には、ミックス中のAEA剤は役に立たない(短い灰色のバー)。このAEAはこのPACにより吸着され、空気連行の得られる度合いは自然のレベル、すなわちいかなるAEA薬品も添加しない空気連行のレベルとほぼ同一である。しかしながら、1重量パーセントまたは3重量パーセントもの本発明の低ABIのPACを水銀吸着剤として使用する場合には、適当な量の空気がコンクリート中に連行され、このような吸着剤を含有するフライアッシュがセメント代用品としての商品販売に好適である。
【0092】
図8に示すように、7、14、および28日間キュアした、ASTM C192にしたがって製造される図7のコンクリートの種々の試料についてコンクリート圧縮強度試験を行った。ASTM C39「Standard Test Method for Compressive Strength of Cylindrical Concrete Specimens」にしたがって試験する場合には、PAC2をフライアッシュに対して1および3重量パーセントで添加したコンクリートは、フライアッシュ中に存在する水銀吸着剤を持たないコントロール試料のそれに同等の圧縮強度を呈した。
【0093】
実施例3.更なるPAC
実施例1の方法にしたがって更なるPACをすべてスチーム活性化により製造した。関連するパラメーターと結果を下記の表3に示す。
【0094】
多数の異なる無煙炭を使用して、在来のスチーム活性化によるコンクリートに利する水銀吸着剤を製造することができる。例えば、実施例1からのPAC3および4に対するフィード原料は異なる源からのものであった。前者はJedo Coal Companyから、ならびに後者はペンシルバニア州立大学石炭試料バンクから入手したものであった
。
【0095】
【表3】
【0096】
フィード原料が充分に低い揮発性を有するならば、空気活性化を使用する必要無しでコンクリート適合性の水銀吸着剤を瀝青炭から製造することも可能である。PAC8は極めて低いABIを有したが、これは充分に活性化されず、水銀除去率は低かった。やや多い活性化は、収率を低下させ、水銀除去率を上昇させたと想定される。これはそのABIを増加させたであろうが、それはなお許容し得るほどに低いレベルまでであった。他方、高揮発性瀝青炭からのPAC9は80のABIを有し、したがってコンクリート適合性の水銀吸着剤でなかった。
【0097】
実施例4.コンクリートに利する水銀吸着剤の本格規模製造および注入
普通の本格規模の活性化カーボン製造ライン装置を用いて、本発明の組成物に対する水銀吸着剤を製造した。最初に、無煙炭フィード原料を結合剤と共に磨砕し、ペレット化し、次にロータリーキルン中酸素の欠如した環境においてゆっくりと揮発分除去し、炭化し、活性化炉中でスチームにより活性化し、次に磨砕した。無煙炭フィード原料によって、適当に製造すれば、コンクリートに利する水銀吸着剤の製造が可能となる一方で、低ABIのPACが自動的に製造されない。温度、滞留時間、スチーム率、および他の工程パラメーターを反復的に選択して、充分に低いABIの材料を製造した。本発明者らの指示の下に、この明細書中では「C−PAC」と表示される、合計50メートルトン(110,000lbs)の表4に示す特性のこのような無煙炭PACを3つの異なるプラントから製造した。
【0098】
【表4】
【0099】
次に、米国特許第6,953,494号の気相臭素化法を用いて、これらのコンクリートに利する材料を5重量%の臭素まで臭素化した。次に、この吸着剤の多くをChicago,Illinois Crawford Station of Midwest Generation EWEに出荷して、水銀除去能力、ならびに空気連行コンクリート中での使用にこれらを組み込むフライアッシュの許容性を試験した。
【0100】
ほぼ1ヶ月間、これらの3つのPACをこのプラントの234メガワットのユニット7の半分の煙道ガスの中に約110mg/Nm3・ガス(100万実立方フィートのガス当
り4.6ポンドのPAC)の平均注入率で注入した。この材料によって、プラントでの水銀排出がこの期間にわたって80%を若干超える平均値に低下した。図9を参照のこと。
【0101】
ダクトの中に注入した後、吸着剤粒子を高温煙道ガス流中に既に連行されたフライアッシュ粒子と緊密に混合し、この2つの材料をプラントの粒子捕集装置中で一緒に捕集した。この場合には、粒子捕集装置は普通の多極コールドサイド静電気沈降装置(ESP)であった。
【0102】
フライアッシュとPAC材料の大部分をフロントESPホッパー中で捕集し、小部分、PACの富化された区分をリアホッパー中で捕集した。フロントホッパーからのフライアッシュのカーボン含量は平均約2.5%(LOI、灼熱減量)であり、リアホッパーのそれは約4.4%(LOI)であった。
【0103】
水銀吸着剤注入の最初の3週間にわたってホッパーからのフライアッシュ試料を採取した。フォームインデックス測定をこれらのフライアッシュ試料について行い、これらを図10に示す。フォームインデックスは、特定のフライアッシュが水との混合物中で特定のAEAを吸着する度合いの相対的な尺度である。AEAの液滴、この場合にはVinsol(登録商標)樹脂(CAS No.8050−09−7)の1重量%溶液をフライアッシュ中のカーボンがAEAで飽和し、攪拌後安定なフォームが形成されるまで、フライアッシュ/水混合物(70mlの水中の30gフライアッシュ)の中に滴定した。AEA溶液の滴数がフォームインデックス値を示した。このプラントでは、フライアッシュが100滴以下のVinsol(登録商標)樹脂フォームインデックスを有する場合には、フライアッシュは、コンクリート中のセメントの代用品として販売可能であった。40滴以下のフォームインデックスならば、プレミアムコンクリートに販売可能であった。本発明の水銀吸着剤を組み込んだすべてのフライアッシュ試料のフォームインデックスは、100滴以下のフォームインデックスを有し、フロントホッパーからのそれはほぼ40滴であった。
【0104】
PAC注入時、生成フライアッシュのフォームインデックス値の分布は適当に狭く、予備注入ベースライン期間と比較して改善すらされていた。図11は、両方の期間に対するフロントホッパーフォームインデックスの分布データを示す。フライアッシュ中に当然見られる種々の未燃焼のカーボンレベルにより、生コンクリートプラントに販売される予備PAC注入フライアッシュバッチのフォームインデックス値は不規則に変動し、普通に行われているように、一定量のAEAを各バッチに添加すると、一部のコンクリートは過少のエアボイドを含み、一部のコンクリートは過多のエアボイドを含むという結果を生じた。コンクリートに利するPACを含有するフライアッシュについては中程度に高いAEA添加率が必要とされるが、フォームインデックス値の分布は更に均一であり、種々の未燃焼のカーボンの悪影響を減じるものであった。
【0105】
空気連行コンクリートを本発明のCrawford Stationフライアッシュ組成物により製造して、セメントの代用品としてこれらが好適であることを確認した。湿潤コンクリート中の6容量%のエアボイドを目標として、フライアッシュ、PAC無添加のベースラインフライアッシュ、および注入吸着剤を含有するフライアッシュを含有しない標準試料を作製した。この実施例の残りのPAC含有コンクリート中で使用されるフライアッシュ試料中の特定のPACは、ABI8の無煙炭由来のReference 12C−PAC材料であった。このフライアッシュは、2.8重量%のカーボン(灼熱減量)を含有し、セメントとフライアッシュ100kg当り79.6mlのDarex(登録商標)IIAEAを必要とし、フライアッシュが20%のセメントを置き換えるものであった。他方、ベースラインフライアッシュ添加かつPAC無添加の試料は、0.4重量%のフライアッシュカーボン含量(LOI)を有し、41.2ml/100kgのAEAを必要
とし、フライアッシュ置換比が20%のものであった。
【0106】
このコンクリート試料をASTM C192にしたがって作製した。図12に示すように、C−PACを組み込んだコンクリートミックスと、C−PAC無添加のものの多数の試料の平均スランプ値は、すべて、ほぼ15センチメートル(6インチ)であり、許容可能なものであった。湿潤エアボイド含量をASTM C231にしたがって測定した。各試料は約6容量%のボイドを呈するものであり、許容可能なものであった。C−PACの存在は湿潤空気連行にマイナスの影響を及ぼさなかった
静的および動的設定(例えば、コンクリートトラックの回転ドラム)で経時的なエアボイドの安定性も測定した。エアボイド安定性データを図13に示す。PACを含まないコンクリートとC−PACを組み込んだコンクリートに間に連行エアボイドの安定性の統計的な差異はなかった。
【0107】
このコンクリートの凝結時間プロフィールも評価した。このデータを図14に示す。初期および最終のコンクリートの凝結時間は、このコンクリートがC−PACを含有していても、含有していなくても同一であることが判明した。
【0108】
生成する硬化コンクリートの平均強度を多数の試料に対して求めた。7、14、28、および90日のキュアに対して平均値を図15に示した。C−PACを含有するアッシュ添加のコンクリートは、少なくとも無添加のコンクリート程度の高い強度を呈した。
【0109】
硬化コンクリート試料を顕微鏡的エアボイド分析(ASTM C457)のために商用のコンクリート試験ラボラトリー(Concrete Research & Testing LLC,Columbus,Ohio)に送った。下記の表5に示す測定値が報告された。
【0110】
【表5】
【0111】
C−PACを含有するコンクリートの微視的なエアボイドと、水銀吸着剤無添加のコンクリートのそれは、実質的には同一であり、両方とも許容し得る範囲内の値を呈した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン質水銀吸着剤前駆体を用意すること;
スチームによる活性化、遊離酸素を含有する環境中での活性化、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって水銀吸着剤前駆体を活性化もしくは再活性化して、活性化カーボン質水銀吸着剤をもたらすこと、ここで、活性化されたカーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り30mgを超えないように、活性化温度と時間を限定し;
活性化または再活性化後に活性化カーボン質水銀吸着剤を約325メッシュ未満の平均粒子サイズまで磨砕すること;
水銀、水銀含有化合物またはこれらの組み合わせ物、およびフライアッシュ、セメントキルンダストまたはフライアッシュとセメントキルンダストの組み合わせ物を含有するガス流の中に活性化カーボン質水銀吸着剤を注入し、活性化カーボン質水銀吸着剤を水銀または水銀含有化合物と接触させて、吸着水銀を含む水銀吸着剤を作り出すこと;および
吸着水銀を含む水銀吸着剤を、フライアッシュ、セメントキルンダストと一緒に、粒子制御装置中でガス流から取り出すこと
を含んでなる、セメント質もしくはポゾラン質組成物を製造する方法。
【請求項2】
フライアッシュ、セメントキルンダストまたはこの両方のいずれかと共に吸着水銀を含む水銀吸着剤を、水、セメント、および空気連行性混和物に添加して、セメント質もしくはポゾラン質組成物をもたらすことを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
砂と粗骨材を添加することを更に含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水銀吸着剤前駆体の活性化がスチームによる活性化を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭または低揮発性瀝青炭からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
水銀吸着剤前駆体の活性化が遊離酸素を含有する環境中での活性化を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水銀吸着剤前駆体の活性化がロータリーキルン、活性化炉または多段炉床式炉を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのハロゲンまたはハロゲン化合物を活性化カーボン質水銀吸着剤に添加して、約0.1から約15重量パーセントのハロゲンを含有するハロゲン化活性化カーボン質水銀吸着剤を作り出すことを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
活性化カーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り15mgを超えないように、活性化を温度と時間において更に限定する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
吸着水銀を含む水銀吸着剤をフライアッシュ、セメントキルンダストまたはこの両方のいずれかと共に、水、セメント、および空気連行性混和物に添加して、セメント質もしく
はポゾラン質組成物をもたらすことを更に含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水銀吸着剤前駆体の活性化がスチームによる活性化を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭または低揮発性瀝青炭からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水銀吸着剤前駆体の活性化が遊離酸素を含有する環境中での活性化を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水銀吸着剤前駆体の活性化がロータリーキルン、活性化炉または多段炉床式炉を用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのハロゲンまたはハロゲン化合物を活性化カーボン質水銀吸着剤に添加して、約0.1から約15重量パーセントのハロゲンを含有するハロゲン化活性化カーボン質水銀吸着剤を作り出すことを更に含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
オゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に吸着剤1グラム当り約30ミリグラム未満のアシッドブルー80インデックスを有し、ならびにこの上に吸着された水銀または水銀含有化合物を有する粉末化された活性化カーボン;
フライアッシュ、セメントキルンダストまたはこれらの組み合わせ物のいずれか;およびセメント、空気連行性混和物、砂、および水
を含んでなる組成物。
【請求項21】
粗骨材を更に含んでなる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭と低揮発性瀝青炭からなる群から選択されるカーボン源から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が、カーボン質水銀吸着剤前駆体であって、オゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に活性化されたカーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り30mgを超えないように、遊離酸素を含有する環境中で活性化もしくは再活性化されるカーボン質水銀吸着剤前駆体から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
粉末化された活性化カーボンがオゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に吸着剤1グラム当り約15ミリグラム未満のアシッドブルー80インデックスを有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
粗骨材を更に含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭と低揮発性瀝青炭からなる群から選択されるカーボン源から製造される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が遊離酸素を含有する環境中で活性化もしくは再活性化されるカーボン質水銀吸着剤前駆体から製造される、請求項27に記載の組成物。
【請求項1】
カーボン質水銀吸着剤前駆体を用意すること;
スチームによる活性化、遊離酸素を含有する環境中での活性化、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって水銀吸着剤前駆体を活性化もしくは再活性化して、活性化カーボン質水銀吸着剤をもたらすこと、ここで、活性化されたカーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り30mgを超えないように、活性化温度と時間を限定し;
活性化または再活性化後に活性化カーボン質水銀吸着剤を約325メッシュ未満の平均粒子サイズまで磨砕すること;
水銀、水銀含有化合物またはこれらの組み合わせ物、およびフライアッシュ、セメントキルンダストまたはフライアッシュとセメントキルンダストの組み合わせ物を含有するガス流の中に活性化カーボン質水銀吸着剤を注入し、活性化カーボン質水銀吸着剤を水銀または水銀含有化合物と接触させて、吸着水銀を含む水銀吸着剤を作り出すこと;および
吸着水銀を含む水銀吸着剤を、フライアッシュ、セメントキルンダストと一緒に、粒子制御装置中でガス流から取り出すこと
を含んでなる、セメント質もしくはポゾラン質組成物を製造する方法。
【請求項2】
フライアッシュ、セメントキルンダストまたはこの両方のいずれかと共に吸着水銀を含む水銀吸着剤を、水、セメント、および空気連行性混和物に添加して、セメント質もしくはポゾラン質組成物をもたらすことを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
砂と粗骨材を添加することを更に含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水銀吸着剤前駆体の活性化がスチームによる活性化を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭または低揮発性瀝青炭からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
水銀吸着剤前駆体の活性化が遊離酸素を含有する環境中での活性化を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水銀吸着剤前駆体の活性化がロータリーキルン、活性化炉または多段炉床式炉を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのハロゲンまたはハロゲン化合物を活性化カーボン質水銀吸着剤に添加して、約0.1から約15重量パーセントのハロゲンを含有するハロゲン化活性化カーボン質水銀吸着剤を作り出すことを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
活性化カーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り15mgを超えないように、活性化を温度と時間において更に限定する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
吸着水銀を含む水銀吸着剤をフライアッシュ、セメントキルンダストまたはこの両方のいずれかと共に、水、セメント、および空気連行性混和物に添加して、セメント質もしく
はポゾラン質組成物をもたらすことを更に含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水銀吸着剤前駆体の活性化がスチームによる活性化を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭または低揮発性瀝青炭からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水銀吸着剤前駆体の活性化が遊離酸素を含有する環境中での活性化を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
カーボン質水銀吸着剤前駆体が無煙炭からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水銀吸着剤前駆体の活性化がロータリーキルン、活性化炉または多段炉床式炉を用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのハロゲンまたはハロゲン化合物を活性化カーボン質水銀吸着剤に添加して、約0.1から約15重量パーセントのハロゲンを含有するハロゲン化活性化カーボン質水銀吸着剤を作り出すことを更に含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
オゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に吸着剤1グラム当り約30ミリグラム未満のアシッドブルー80インデックスを有し、ならびにこの上に吸着された水銀または水銀含有化合物を有する粉末化された活性化カーボン;
フライアッシュ、セメントキルンダストまたはこれらの組み合わせ物のいずれか;およびセメント、空気連行性混和物、砂、および水
を含んでなる組成物。
【請求項21】
粗骨材を更に含んでなる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭と低揮発性瀝青炭からなる群から選択されるカーボン源から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が、カーボン質水銀吸着剤前駆体であって、オゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に活性化されたカーボン質水銀吸着剤のアシッドブルー80インデックスが吸着剤1グラム当り30mgを超えないように、遊離酸素を含有する環境中で活性化もしくは再活性化されるカーボン質水銀吸着剤前駆体から製造される、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
粉末化された活性化カーボンがオゾンまたは硝酸によるなんらかの随意の後処理の前に吸着剤1グラム当り約15ミリグラム未満のアシッドブルー80インデックスを有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
粗骨材を更に含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭と低揮発性瀝青炭からなる群から選択されるカーボン源から製造される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が無煙炭から製造される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
粉末化された活性化カーボン質水銀吸着剤が遊離酸素を含有する環境中で活性化もしくは再活性化されるカーボン質水銀吸着剤前駆体から製造される、請求項27に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−510169(P2010−510169A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538526(P2009−538526)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/085474
【国際公開番号】WO2008/064360
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/085474
【国際公開番号】WO2008/064360
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】
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