説明

コンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造、及び、鋼管の接合方法

【課題】施工性及び接合の品質に優れたコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造等を提供する。
【解決手段】上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記複数の鋼管のうちの上下に配置されて突き合わされた2本の前記鋼管は各々、互いの内周面に内側に向かって突出する突出部を有し、前記2本の鋼管内には、各々の前記鋼管の長手方向において前記突出部が設けられている領域にわたって、棒状をなす継手部材が埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造及び鋼管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造としては、例えば、突き合わされた2本の鋼管内に両鋼管にわたるように補強用鉄筋が設けられ、2本の鋼管の接合部が溶接されてコンクリートが充填された鋼管の接合構造が知られている。また、このように鋼管を接合する接合方法としては、たとえば、まず、接合される2本の鋼管の一方の内部に、長手方に向沿って補強用鉄筋を、当該一方の鋼管から突出させた状態で、その内周面に仮止め溶接しておく。そして、一方の鋼管から突出させた補強用鉄筋を、他方の鋼管内の無配筋部分に入り込ませるとともに一方の鋼管と他方の鋼管との接合端面を当面させて溶接し、その後接合された鋼管内にコンクリートを打設することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―242366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造及び鋼管の接合方法は、鋼管同士を接合すべく鋼管の接合端面の溶接を施工現場にて行わなければならないため、溶接の品質管理が難しい。特に、近年の鋼管は高強度化され、溶接の品質管理が更に難しくなり、施工性が悪く、施工費用が嵩むという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工性及び接合の品質に優れたコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造、及び、鋼管の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造は、上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記複数の鋼管のうちの上下に配置されて突き合わされた2本の前記鋼管は各々、互いの内周面に、内側に向かって突出する突出部を有し、前記2本の鋼管内には、各々の前記鋼管の長手方向において前記突出部が設けられている領域にわたって、棒状をなす継手部材が埋設されていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造である。
【0007】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、上下に配置されて突き合わされた2本の鋼管は各々、内周面に突出部が内側に向かって突出しており、また2本の鋼管内には、長手方向において突出部が設けられている領域にわたって、棒状をなす継手部材が埋設されている。このため、コンクリート充填鋼管柱に長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管と下側の鋼管とが互いに離れる方向に力が作用した場合には、上側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から上方向の支圧力が作用し、下側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から下方向の支圧力が作用する。このとき、上方向の支圧力はコンクリートにより伝達され継手部材との付着力により継手部材に下方向の引張力を生じさせ、下方向の支圧力はコンクリートにより伝達され継手部材との付着力により継手部材に上方向の引張力を生じさせる。すなわち、2本の鋼管に作用した上下方向の引張力をコンクリートにより継手部材に伝達させることにより、鋼管同士を直接溶接することなく、強固に接合することが可能である。また、鋼管が突き合わされた接合部を溶接していないので、施工現場では鋼管を溶接しなくともよい。このため、安定した接合強度を備え、かつ、施工性に優れた鋼管の接合構造を提供することが可能である。
【0008】
また、コンクリート充填鋼管柱の長手方向に引張力が作用してコンクリートにひび割れが発生する場合には、上側の鋼管側では継手部材から鋼管側に向かって低くなる方向にひび割れが発生し、下側の鋼管側では継手部材から鋼管側に向かって高くなる方向にひび割れが発生する。
【0009】
ひび割れが発生した後にコンクリート充填鋼管柱に長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管と下側の鋼管とが互いに離れる方向に力が作用した場合には、上側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から上方向の支圧力が作用する一方で、コンクリートには内部の圧縮力がひび割れた方向に作用する。このコンクリートの圧縮力は、コンクリートと継手部材との間の付着力により継手部材に伝達され、継手部材の下方向の引張力と、鋼管を押し広げようとする力(以下、フープテンションという)として作用する。このとき、継手部材に伝達された下方向の引張力は継手部材に軸方向耐力を負担させることにより、フープテンションは鋼管の剛性による拘束する力により抑えられることにより、力のバランスが保たれる。
【0010】
一方、下側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から下方向への支圧力が作用する一方で、コンクリートには内部の圧縮力がひび割れた方向に作用する。このコンクリートの圧縮力は、コンクリートと継手部材との間の付着力により継手部材に伝達され、継手部材の上方向の引張力と、鋼管を押し広げようとするフープテンションとして作用する。このとき、継手部材に伝達された上方向の引張力は継手部材に軸方向耐力を負担させることにより、フープテンションは鋼管の剛性による拘束する力により抑えられることにより、力のバランスが保たれる。このため、コンクリートにひび割れが発生しても、鋼管同士を溶接することなく、強固に接合された状態を維持することが可能である。このため、施工性及び接合の品質に優れた鋼管の接合構造を提供することが可能である。
【0011】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記突出部は、前記鋼管が突き合わされる端の側に位置させて、前記長手方向に沿う方向において互いに間隔を隔てて複数設けられていることが望ましい。
【0012】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、突出部が、鋼管の突き合わされる端の側に設けられているので、突き合わされる2本の鋼管にわたって設けられる継手部材の長さを短くしてコストを抑えるとともに、取り回しし易いので施工性に優れた鋼管の接合構造を実現することが可能である。また、突出部は鋼管の長手方向において互いに間隔を隔てて複数設けられているので、突出部とコンクリートとの間にて、より大きな支圧力を作用させることができる。このため、より強固に鋼管を接合することが可能である。
【0013】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、各々の前記鋼管に設けられた複数の前記突出部のうち、最も前記端の側に位置する前記突出部は、前記鋼管の前記端より前記長手方向における中央側に離れた位置に配置されていることが望ましい。
【0014】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、鋼管が突き合わされている端には突出部が設けられていない。このため、鋼管の端の近傍のコンクリートには支圧力が直接作用しないためひび割れが生じ難い。すなわち、鋼管同士が接合されている部位近傍にひび割れが生じ難いので、より強固に接合することが可能である。
【0015】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記突出部は、前記鋼管の前記内周面に、当該鋼管とは別の部材が溶接されて形成されており、前記鋼管において前記突き合わされる前記端からの距離が当該鋼管の直径より短い領域内に配置されていることが望ましい。
【0016】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、突出部は鋼管とは別の部材が溶接されて設けられているので、既製の鋼管を用いることが可能である。このため、安価な鋼管の接合構造を実現することが可能である。また、突出部が溶接される部位は、鋼管が突き合わされる端からの距離が鋼管の直径より短い領域なので、鋼管の直径に応じた位置に突出部が配置される。すなわち、鋼管の直径が小さい場合には、鋼管の奥側には溶接し難いので鋼管の端に近い位置に突出部を設け、鋼管の直径が大きい場合には、鋼管の端から離れた位置も溶接し易いので、鋼管の端から離れた位置に突出部を設けることが可能である。このため、突出部が溶接される部位を、鋼管の端からの距離が鋼管の直径より短い領域とすることにより、突出部を形成する部材を溶接し易い位置にて確実に溶接することが可能であり、製造性及び接合の品質に優れた鋼管の接合構造を提供することが可能である。
【0017】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記突出部の前記内側への突出量は、前記長手方向における当該突出部の幅の半分以下であることが望ましい。
【0018】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、突出部の突出量は、鋼管の長手方向における突出部の幅の半分以下なので、コンクリートに支圧力が作用する際に、突出部が受ける反力を小さく抑えることが可能であり、この反力により鋼管に作用するにモーメントも小さく抑えることが可能である。このため、突出部が受ける反力により鋼管に作用する負荷を小さく抑えることが可能である。
【0019】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記継手部材の前記長手方向における端は、前記鋼管の長手方向において前記鋼管の端から最も離れた中央側に設けられている前記突出部より前記中央側に離れていることが望ましい。
【0020】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、鋼管の長手方向において鋼管の端から最も離れた中央側に設けられている突出部によりコンクリートに作用する支圧力を、より確実に継手部材に伝達して2本の鋼管をより大きな力にて接合することが可能である。
【0021】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記継手部材は、複数設けられるとともに環状をなすフープ材に取り付けられていることが望ましい。
【0022】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、複数設けられる継手部材をフープ材に取り付けることにより継手部材を鋼管内にバランス良く配置することが可能であり、強度のムラが生じ難いので、より強固に鋼管を接合することが可能である。
【0023】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記突出部は、フラットプレートであることが望ましい。
【0024】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、突出部を構成する部材はフラットプレートなので、複数種類の厚みの部材が汎用品として存在するので、施工が容易であるとともに、施工コストを下げることが可能である。
【0025】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、前記継手部材は、異形棒鋼であることが望ましい。
【0026】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造によれば、継手部材が異形棒鋼なので、表面の凹凸による、コンクリートとの大きな付着力により、鋼管をより強固に接合することが可能である。
【0027】
また、上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、前記複数の鋼管のうちの上下に配置されて突き合わされる2本の前記鋼管の内周面に、内側に向かって突出する突出部を形成する突出部形成工程と、前記2本の鋼管のうちの一方の前記鋼管にて前記突出部が形成されている部位の内側に棒状の継手部材を配置するとともに、当該一方の鋼管の他方の前記鋼管が突き合わされる端から突出させる継手部材配置工程と、前記一方の鋼管から突出された前記継手部材を前記他方の鋼管に形成された前記突出部の内側に配置するとともに前記他方の鋼管の端を前記一方の鋼管の端と突き合わせる鋼管突合工程と、互いに突き合わされた前記2本の鋼管内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を有することを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法である。
【0028】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法によれば、上下に配置されて突き合わされる2本の鋼管に形成される突出部は、予め鋼管内に設けておくので、例えば工場等にて鋼管内に設けておくことが可能である。このため、鋼管の内周面に強固にかつ容易に突出部を設けることが可能である。そして、突出部が設けられた一方の鋼管内に棒状の継手部材を配置して鋼管の端から突出させ、突出させた継手部材を他方の鋼管に形成された突出部の内側に配置して他方の鋼管の端を一方の鋼管の端と突き合わせて、その内部にコンクリートを打設するだけで、容易に2本の鋼管を接合することが可能である。
【0029】
また、突き合わせた鋼管の端同士を溶接しないので、品質管理が難しい現場での溶接作業を必要としない。このため、より施工性及び接合の品質に優れた鋼管の接合方法を提供することが可能である。
【0030】
この鋼管の接合方法にて施工されたコンクリート充填鋼管柱は、長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管と下側の鋼管とが互いに離れる方向に力が作用した場合には、上側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から上方向の支圧力が作用し、下側の鋼管とコンクリートとの間では、コンクリートに突出部から下方向の支圧力が作用する。このとき、上方向の支圧力はコンクリートにより伝達され継手部材との付着力により継手部材に下方向の引張力を生じさせ、下方向の支圧力は、コンクリートにより伝達され継手部材との付着力により継手部材に上方向の引張力を生じさせる。すなわち、2本の鋼管に作用した上下方向の引張力をコンクリートにより継手部材に伝達させることにより、鋼管同士を直接溶接することなく、強固に接合することが可能である。このため、2本の鋼管が強固に接合されたコンクリート充填鋼管柱を容易に施工することが可能である。
【0031】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、複数本の前記継手部材を、環状をなすフープ材に取り付け、前記フープ材を、前記鋼管内を横切るように前記突出部に架け渡された複数の架渡部材に支持させて、前記継手部材を前記一方の鋼管内に配置することが望ましい。
【0032】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法によれば、複数本の継手部材を、環状をなすフープ材に取り付けるので、複数本の継手部材をバランス良くは安定した状態で配置することが可能である。また、フープ材を、鋼管内を横切るように突出部に架け渡した複数の架渡部材に支持させて、継手部材を一方の鋼管内に配置するので、一方の鋼管内に安定した状態で複数本の継手部材を容易に配置することが可能である。
【0033】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、前記一方の鋼管は、下側に配置される前記鋼管であることが望ましい。
【0034】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法によれば、上下に配置される2本の鋼管のうちの下側の鋼管の上端から継手部材を突出させ、突出された継手部材が挿入されるように上方から上側の鋼管を下側の鋼管に突き合わせ、突き合わされた鋼管内にコンクリートを打設するだけで、より強固に接合されたコンクリート充填鋼管柱を施工することが可能である。
【0035】
かかるコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、前記一方の鋼管は、上側に配置される前記鋼管であることが望ましい。
【0036】
このようなコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法によれば、上下に配置される2本の鋼管のうちの上側の鋼管の下端から継手部材を突出させ、突出された継手部材を下側の鋼管に挿入しつつ上方から下側の鋼管に突き合わせ、突き合わされた鋼管内にコンクリートを打設するだけで、より強固に接合されたコンクリート充填鋼管柱を施工することが可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、施工性及び接合の品質に優れたコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造、及び、鋼管の接合方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る鋼管の接合構造の一例をなすコンクリート充填鋼管柱の接合部を示す縦断面図である。
【図2】鋼管の内周面に設けられるコッターを説明するための斜視図である。
【図3】下側の鋼管に設けられたコッターに架け渡された簪筋及び棒鋼ユニットを示す平面図である。
【図4】本発明に係る鋼管の接合方法を説明するためのフロー図である。
【図5】本発明に係る鋼管の接合方法を説明するための縦断面図であり、図5(a)は、継手部材配置工程を示す縦断面図、図5(b)は、鋼管突合工程を示す縦断面図であり、図5(c)は、コンクリート打設工程を示す縦断面図である。
【図6】コンクリート充填鋼管柱に長手方向に引張力が作用したときの効果を説明するための縦断面図である。
【図7】ひび割れが生じたコンクリート充填鋼管柱に長手方向に引張力が作用したときの効果を説明するための縦断面図である。
【図8】本発明に係る鋼管の接合方法の変形例を説明するための縦断面図であり、図8(a)は、継手部材配置工程を示す縦断面図、図8(b)は、鋼管突合工程を示す縦断面図であり、図8(c)は、コンクリート打設工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0040】
本発明に係る鋼管の接合構造にて接合された本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1は、例えば、複数の階床を有する建物の柱に用いられる。
本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1は、建物の階高に合わせた長さを有する複数の鋼管10が、上下方向に連ねて配置されており、上下に隣り合う鋼管10同士の接合構造は同様なので、以下の説明では、上下に配置されて突き合わされて接合されている2本の鋼管11、12の接合部にて接合構造を説明する。
【0041】
図1は、本発明に係る鋼管の接合構造の一例をなすコンクリート充填鋼管柱の接合部を示す縦断面図である。
本実施形態の鋼管11、12の接合構造は、図1に示すように、2本の鋼管11、12と、2本の鋼管11、12にわたって埋設される棒状をなす継手部材としての複数の異形棒鋼14と、複数の異形棒鋼14を互いに間隔を隔ててまとめるためのフープ材としてのフープ筋16と、フープ筋16によりまとめられた異形棒鋼14を鋼管11、12内の所定の位置に保持するための架渡部材としての簪筋18と、を有し、鋼管11、12内にはコンクリート20が打設されている。ここで、2本の鋼管11、12は、既製の部材であり断面が円形状をなしている。
【0042】
図2は、鋼管の内周面に設けられるコッターを説明するための斜視図である。
各々の鋼管11、12の内周面には、接合される端11a、12a側に、内側に向かって突出するコッター13設けられている。ここで、各々の鋼管11、12の接合される端11a、12aは、上側の鋼管11の下端11aと下側の鋼管12の上端12aである。
【0043】
コッター13は、それぞれ既製の部材であるフラットプレートが、図2に示すように、鋼管11、12の内周に沿うように屈曲されて隅肉溶接されている。ここで、鋼管11、12の内周面に溶接されて設けられたフラットプレートでなるコッター13が、鋼管11、12の内側に向かって突出する突出部の一例である。
【0044】
本実施形態のコッター13は、フラットプレートが鋼管11、12に溶接された際に鋼管11、12の内側に向かって突出するフラットプレートの厚みtが、鋼管11、12に溶接された際に鋼管11、12の長手方向をなる、フラットプレートの幅wの半分以下になるように構成されている。
【0045】
本実施形態の例では、コンクリート充填鋼管柱1を構成する複数の鋼管10のうちの最も上に位置する鋼管10の上端側と、最も下に位置する鋼管10の下端側とを除いて、各鋼管10の両端側に、ほぼ環状に屈曲されたフラットプレートでなるコッター13が3本ずつ設けられている。3本のコッター13は、各鋼管10の端より内側に離れた位置に1本目のコッター13が設けられており、各鋼管10の端から2本目及び3本目のコッター13は、各鋼管10の長手方向に互いに間隔を隔てて設けられている。すなわち、接合される2本の鋼管11、12にも、互いに突き合わされる端11a、12aより内側に離れた位置に1本目のコッター13が設けられ、3本のコッター13は、各鋼管11、12の長手方向に互いに間隔を隔てて設けられている。また、各鋼管11、12に設けられた3本のコッター13はいずれも、互いに突き合わされる鋼管11、12の端11a、12aからの距離が、鋼管11、12の直径Dより短い領域内、すなわち、鋼管11、12の端11a、12aからの距離がLの領域内に設けられている。
【0046】
2本の鋼管11、12にわたって配置される複数の異形棒鋼14は、本実施形態では8本設けられており、2本の鋼管11、12の内側に、周方向においてほぼ等間隔に配置されて環状に配置される。このとき、異形棒鋼14は、鋼管11、12の内周面及びコッター13から十分に間隔を隔てて配置されている。また、複数の異形棒鋼14の外周側にはフープ筋16が設けられている。フープ筋16には、隣り合う各異形棒鋼14同士が、互いに間隔を隔てた状態が維持されるように、図示しないワイヤー等により異形棒鋼14が仮止め状態にて一体に取り付けられ、異形棒鋼14とフープ筋16とで棒鋼ユニット15をなしている。
【0047】
図3は、下側の鋼管に設けられたコッターに架け渡された簪筋及び棒鋼ユニットを示す平面図である。
簪筋18は、下側の鋼管12の最も上端側に設けられたコッター13の上に2本配置されている。2本の簪筋18は、図3に示すように、鋼管12の直径方向とほぼ平行に配置され、鋼管12の水平断面において鋼管12を横切るように、ほぼ環状をなすコッター13上の2箇所にそれぞれ架け渡されている。
【0048】
そして、コッター13上に架け渡された2本の簪筋18には、フープ筋16と複数の異形棒鋼14とが一体化された棒鋼ユニット15が引っ掛けられている。より具体的には、周方向にほぼ等間隔に配置された8本の異形棒鋼14のうち直径の方向に並べられた2本の異形棒鋼14が2本の簪筋18の間に位置するように、フープ筋16が簪筋18の上に載置されて棒鋼ユニット15が配置されている。このとき、簪筋18に支持された棒鋼ユニット15の異形棒鋼14の長手方向における端14a、14bは、鋼管11、12の長手方向において鋼管11、12の端11a、12aから最も離れた中央側に設けられているコッター13より中央側に離れている。より具体的には、簪筋18に支持された棒鋼ユニット15の異形棒鋼14の上端14aは、上側の鋼管11の下端11a側に設けられた3本のコッター13のうちの、下端11aから最も離れた位置、すなわち最も上に設けられたコッター13より高い位置に位置している。また、簪筋18に支持された棒鋼ユニット15の異形棒鋼14の下端14bは、下側の鋼管12の上端12a側に設けられた3本のコッター13のうちの、上端12aから最も離れた位置、すなわち最も下に設けられたコッター13より低い位置に位置している。
【0049】
このように簪筋18及び棒鋼ユニット15が配置された状態で、簪筋18及び棒鋼ユニット15の外周側には2本の鋼管11、12が互いの端11a、12aを突き合わせた状態で配置され、その内部にコンクリート20が充填されている。
【0050】
図4は、本発明に係る鋼管の接合方法を説明するためのフロー図である。
本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1における鋼管10の接合方法は、図4に示すように、まず、接合する既製の部材でなる鋼管10を階高に合わせて切断し、内周面にコッター13を形成する。具体的には、切断した鋼管10の各端部の内周側にフラットプレートを環状に屈曲させて配置し、鋼管10の端部側から各フラットプレートにおいて鋼管10の端に近い側の縁を隅肉溶接して固定し、鋼管10の内側に突出するコッター13を形成する(突出部形成工程S1)。このとき、1本のコンクリート充填鋼管柱1を構成する複数の鋼管10のうち、最も上に位置する鋼管10の上端側と、最も下に位置する鋼管10の下端側を除き、フラットプレートを溶接してコッター13を形成する。
【0051】
次に、フラットプレートを溶接してコッター13を設けた複数の鋼管10のうち最下に配置される鋼管10を施工現場に建て込む。ここでは、建て込んだ鋼管10を接合する2本の鋼管11、12のうちの下側の鋼管12とする。
次に、建て込んだ鋼管12の最も上側に位置するコッター13上に2本の簪筋18を架け渡して配置する。
【0052】
一方、鋼管10へのコッター13の形成とは別工程にて棒鋼ユニット15を形成しておく。具体的には、まず、適宜長さに切断した複数の異形棒鋼14を、フープ筋16の内側にてフープ筋16に沿って周方向に互いにほぼ等間隔になるように配置してワイヤーにてフープ筋16と各異形棒鋼14とを仮止めして棒鋼ユニット15を形成しておく。このとき、異形棒鋼14に対するフープ筋16の位置は、鋼管10、12内に棒鋼ユニット15を配置した際に、棒鋼ユニット15の異形棒鋼14の上端14aが、上側の鋼管11の下端11a側に設けられた3本のコッター13より高い位置に位置し、棒鋼ユニット15の異形棒鋼14の下端14bが、下側の鋼管12の上端12a側に設けられた3本のコッター13より低い位置に位置するように配置する。また、フープ筋16の数は、異形棒鋼14の長さや、鋼管11、12内にて異形棒鋼14を配置する位置に応じて、増やしても良い。
【0053】
図5は、本発明に係る鋼管の接合方法を説明するための縦断面図であり、図5(a)は、継手部材配置工程を示す縦断面図、図5(b)は、鋼管突合工程を示す縦断面図であり、図5(c)は、コンクリート打設工程を示す縦断面図である。
【0054】
次に、図3及び図5(a)に示すように、簪筋18が配置された鋼管12内に、棒鋼ユニット15のフープ筋16が引っ掛かるように棒鋼ユニット15を吊り下げる(継手部材配置工程S2)。このとき、棒鋼ユニット15の各異形棒鋼14は、下側の鋼管12の上端12aから上方に突出している。
その後、図5(b)に示すように、異形棒鋼14が上方に突出している下側の鋼管12上に、互いの端11a、12aが突き合わされるように上側の鋼管11を配置する(鋼管突合工程S3)。
上下の鋼管11、12を突き合わせて配置した後に、図5(c)に示すように、上側の鋼管11の上端側から鋼管11、12内にコンクリート20を打設する(コンクリート打設工程S4)。
【0055】
図6は、コンクリート充填鋼管柱に長手方向に引張力が作用したときの効果を説明するための縦断面図である。図7は、ひび割れが生じたコンクリート充填鋼管柱に長手方向に引張力が作用したときの効果を説明するための縦断面図である。
【0056】
本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1における鋼管10の接合構造によれば、上下に配置されて突き合わされた2本の鋼管11、12は各々、内周面にコッター13が内側に向かって突出するように設けられており、また鋼管11、12内には、長手方向においてコッター13が設けられている領域にわたって、棒状をなす異形棒鋼14が埋設されている。このため、例えば地震等の揺れによりコンクリート充填鋼管柱1に長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管11と下側の鋼管12とが互いに離れる方向に力が作用した場合には、図6に示すように、上側の鋼管11とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から上方向の支圧力F1が作用し、下側の鋼管12とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から下方向の支圧力F1が作用する。このとき、上方向の支圧力F1はコンクリート20により伝達され異形棒鋼14との付着力F2により異形棒鋼14に下方向の引張力を生じさせる。また、下方向の支圧力F1はコンクリート20により伝達され異形棒鋼14との付着力F2により異形棒鋼14に上方向の引張力を生じさせる。すなわち、鋼管11、12に作用した上下方向の引張力をコンクリート20により異形棒鋼14に伝達させることにより、鋼管11、12同士を直接溶接することなく、強固に接合することが可能である。特に、本実施形態では継手部材として表面に凹凸が設けられている異形棒鋼14を用いたので、コンクリート20との間において、より大きな付着力が作用する。このため、鋼管11、12をより強固に接合することが可能である。
【0057】
また、鋼管11、12同士を溶接しないので、品質管理が難しい施工現場での溶接は必要がない。このため、施工性に優れたコンクリート充填鋼管柱1における鋼管10の接合構造を提供することが可能である。
【0058】
また、コンクリート充填鋼管柱1の長手方向に引張力が作用してコンクリート20にひび割れが発生する場合には、図7に示すように、上側の鋼管11側では異形棒鋼14から鋼管11側に向かって低い方向にひび割れが発生し、下側の鋼管12側では異形棒鋼14から鋼管12側に向かって高い方向にひび割れが発生する。
【0059】
ひび割れが発生した後にコンクリート充填鋼管柱1に長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管11と下側の鋼管12とが互いに離れる方向に力が作用した場合には、上側の鋼管11とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から上方向の支圧力F1が作用する一方で、コンクリート20には内部の圧縮力F3がひび割れた方向に作用する。このコンクリート20の圧縮力F3は、コンクリート20と異形棒鋼14との間の付着力F2により異形棒鋼14に伝達され、異形棒鋼14の下方への引張力と、鋼管11を押し広げようとするフープテンションF4として作用する。このとき、異形棒鋼14に伝達された下方向の引張力は異形棒鋼14に軸方向耐力を負担させることにより、フープテンションF4は鋼管11の剛性による拘束する力により抑えられることにより、力のバランスが保たれる。
【0060】
一方、下側の鋼管12とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から下方向の支圧力F1が作用する一方で、コンクリート20には内部の圧縮力F3がひび割れた方向に作用する。このコンクリート20の圧縮力F3は、コンクリート20と異形棒鋼14との間の付着力F2により異形棒鋼14に伝達され、異形棒鋼14の上方への引張力と、鋼管10を押し広げようとするフープテンションF4として作用する。このとき、異形棒鋼14に伝達された下方向の引張力は異形棒鋼14に軸方向耐力を負担させることにより、フープテンションF4は鋼管11の剛性による拘束する力により抑えられることにより、力のバランスが保たれる。このため、コンクリート20にひび割れが発生しても、鋼管11、12同士を溶接することなく、強固に接合された状態を維持することが可能である。このため、施工性及び接合の品質に優れた鋼管の接合構造を提供することが可能である。
【0061】
また、コッター13が、各々鋼管11、12の突き合わされる端11a、12a側に設けられているので、突き合わされる2本の鋼管11、12にわたって設けられる異形棒鋼14の長さを短くしてコストを抑えるとともに、異形棒鋼14の取り回しがし易いので施工性に優れた鋼管11、12の接合構造を実現することが可能である。また、コッター13は鋼管11、12の長手方向において互いに間隔を隔てて複数設けられているので、コッター13とコンクリート20との間にて、より大きな支圧力F1を作用させることができる。このため、より強固に鋼管11、12を接合することが可能である。
【0062】
また、コッター13は、鋼管11、12が突き合わされている端11a、12aから間隔を隔てて設けられており、鋼管11、12の端11a、12aには設けられていないので、鋼管11、12の端11a、12a近傍のコンクリート20には支圧力F1が直接作用せず、ひび割れが生じ難い。このため、鋼管11、12同士が接合されている部位近傍にひび割れが生じ難いので、より強固に接合することが可能である。
【0063】
また、コッター13は鋼管11、12とは別の部材であるフラットプレートが溶接されて設けられているので、既製の鋼管11、12を用いることが可能である。このため、安価な鋼管の接合構造を実現することが可能である。また、コッター13が溶接される部位は、鋼管11、12が突き合わされる端11a、12aからの距離が鋼管11、12の直径Dより短い領域なので、鋼管11、12の直径Dに応じた位置にコッター13が配置される。すなわち、鋼管11、12の直径Dが小さい場合には、鋼管11、12の長手方向にける中央側には溶接し難いので鋼管11、12の端11a、12aに近い位置にコッター13を設け、鋼管11、12の直径Dが大きい場合には、鋼管11、12の端11a、12aから離れた位置にも溶接し易いので容易にコッター13を設けることが可能である。このため、コッター13が溶接される部位を、鋼管11、12の端11a、12aからの距離が鋼管11、12の直径Dより短い領域とすることにより、コッター13を形成するフラットプレートを溶接し易い位置にて強固にかつ容易に溶接することが可能であり、製造性及び接合の品質に優れた鋼管11、12の接合構造を提供することが可能である。
【0064】
また、コッター13の突出量は、鋼管11、12の長手方向におけるコッター13の幅の半分以下なので、コンクリート20に支圧力F1が作用する際に、コッター13が受ける反力を小さく抑えることが可能であり、この反力により鋼管11,12に作用するにモーメントも小さく抑えることが可能である。このため、コッター13が受ける反力により鋼管11、12に作用する負荷を小さく抑えることが可能である。また、コッター13の鋼管11、12内への突出量が小さいので、鋼管11、12内に打設したコンクリート20の流動の障害となることを避けることが可能である。
【0065】
また、異形棒鋼14の上端14aは、上側の鋼管11の下端11a側に設けられた3本のコッター13のうちの最上に位置するコッター13より鋼管11の中央側、すなわち上側に位置し、異形棒鋼14の下端14bは、下側の鋼管12の上端12a側に設けられた3本のコッター13のうちの最下に位置するコッター13より鋼管12の中央側、すなわち下側に位置している。このため、全てのコッター13によりコンクリート20に作用する支圧力F1を、より確実に異形棒鋼14に伝達して2本の鋼管11、12をより大きな力にて接合することが可能である。
【0066】
また、複数設けられる異形棒鋼14をフープ筋16に取り付けることにより異形棒鋼14を鋼管11、12内にバランス良く配置することが可能であり、強度のムラが生じ難いので、より強固に鋼管11、12を接合することが可能である。
【0067】
また、コッター13を構成するフラットプレートも異形棒鋼14も既製の部材なので、鋼管11、12を強固に、かつ安価に接合することが可能である。
【0068】
また、本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1における鋼管10の接合方法によれば、上下に配置されて突き合わされる2本の鋼管11、12に形成されるコッター13は、予め鋼管11、12内に設けておくので、例えば工場等にて鋼管11、12内に設けておくことが可能である。このため、鋼管11、12の内周面に精度良く容易にコッター13を設けることが可能である。本実施形態では、既製の部材であるフラットプレートを鋼管11、12の内周面に溶接してコッター13を設けることとしたが、施工現場等では管理が難しい溶接であっても、工場にて予め溶接しておくことにより精度良くかつ十分な強度を備えたコッター13を鋼管11、12の内周面に容易に設けることが可能である。
【0069】
そして、コッター13が設けられた下側の鋼管12内に異形棒鋼14を配置して下側の鋼管12の端12aから上方に突出させ異形棒鋼14を上側の鋼管11に形成されたコッター13の内側に配置して上側の鋼管11の端11aを下側の鋼管12の端12aと突き合わせ、その内部にコンクリート20を打設するだけで、容易に2本の鋼管11、12を接合することが可能である。
【0070】
また、突き合わせた鋼管11、12の端部11a、12a同士を溶接しないので、品質管理が難しい現場での溶接作業を必要としない。このため、より施工性及び接合の品質に優れた鋼管11、12の接合方法を提供することが可能である。
【0071】
そして、本鋼管11、12の接合方法を用いて生成されたコンクリート充填鋼管柱1は、地震等により長手方向の引張力が作用して、上側の鋼管11と下側の鋼管12とが互いに離れる方向に力が作用すると、上側の鋼管11とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から上方向の支圧力F1が作用し、下側の鋼管12とコンクリート20との間では、コンクリート20にコッター13から下方向の支圧力F1が作用する。このとき、上方向の支圧力F1はコンクリート20により伝達され異形棒鋼14との付着力F2により異形棒鋼14に下方向の引張力を生じさせる。また、下方向の支圧力F1はコンクリート20により伝達され異形棒鋼14との付着力F2により異形棒鋼14に上方向の引張力を生じさせる。すなわち、鋼管11、12に作用した上下方向の引張力をコンクリート20により異形棒鋼14に伝達させることにより、鋼管11、12同士を直接溶接することなく、強固に接合することが可能である。このため、2本の鋼管11、12が強固に接合されたコンクリート充填鋼管柱1を容易に施工することが可能である。
【0072】
また、8本の異形棒鋼14を、環状をなすフープ筋16に取り付けて棒鋼ユニット15を形成するので、8本の異形棒鋼14をバランス良くは安定した状態で配置することが可能である。また、棒鋼ユニット15のフープ筋16を、鋼管12内を横切るようにコッター13に架け渡した簪筋18に支持させて、異形棒鋼14を下側の鋼管12内に配置するので、下側の鋼管12内に安定した状態で8本の異形棒鋼14を配置することが可能である。このとき、鋼管12内を横切るように架け渡す簪筋18を2本としたので、棒鋼ユニット15を下側の鋼管12に容易に安定させて配置することが可能である。ここで、鋼管11、12内に設ける異形棒鋼14は、8本に限らず、鋼管11、12の直径や要求される接合強度等に応じて適宜設定される。また、簪筋18の本数も2本に限るものではない。
【0073】
図8は、本発明に係る鋼管の接合方法の変形例を説明するための縦断面図であり、図8(a)は、継手部材配置工程を示す縦断面図、図8(b)は、鋼管突合工程を示す縦断面図であり、図8(c)は、コンクリート打設工程を示す縦断面図である。
【0074】
本実施形態においては、下側の鋼管12に異形棒鋼14を突出させ、上方から上側の鋼管11を突き合わせて接合する鋼管11、12の接合方法について説明したが、これに限らず、図8に示すように、上側の鋼管11の下端11aから異形棒鋼14を下方に突出させ、予め建て込んでおいた下側の鋼管12に上側の鋼管11を上方から突き合わせても良い。この場合には、鋼管11、12にコッター13を設けた後(突出部形成工程S1)、まず、コンクリート充填鋼管柱1を立設する場所とは異なる位置にて、図8(a)に示すように、上側の鋼管11を下端11aが上方に位置するように配置して、最も上側のコッター13に簪筋18を掛け渡して、コッター13と簪筋18とを溶接する。
【0075】
溶接した簪筋18上に棒鋼ユニット15のフープ筋16が引っ掛かるように棒鋼ユニット15を吊り下げる(継手部材配置工程S2)。そして、ワイヤー等によりフープ筋16を簪筋18に取り付け、上側の鋼管11の下端11aから異形棒鋼14が突出した状態にて棒鋼ユニット15を上側の鋼管11に取り付ける。
【0076】
その後、コンクリート充填鋼管柱1を立設する場所に下側の鋼管12を建て込み、図8(b)に示すように、棒鋼ユニット15が取り付けられた上側の鋼管11を上方から、建て込まれた下側の鋼管12上に、互いの端11a、12aが突き合わされるように上側の鋼管11を配置する(鋼管突合工程S3)。
【0077】
上下の鋼管11、12を突き合わせて配置した後に、図8(c)に示すように、上側の鋼管11の上端側から鋼管11、12内にコンクリート20を打設する(コンクリート打設工程S4)。
【0078】
本実施形態のコンクリート充填鋼管柱1における鋼管11、12の接合方法によれば、上下に配置される2本の鋼管11、12のうちの上側の鋼管11の下端11aから異形棒鋼14を突出させ、突出された異形棒鋼14を下側の鋼管12に挿入しつつ上方から下側の鋼管12に突き合わせ、突き合わされた鋼管11、12内にコンクリート20を打設するだけで、より強固に接合されたコンクリート充填鋼管柱1を提供することが可能である。
【0079】
上記実施形態においては、鋼管の断面形状を円形状としたが、これに限らず、矩形状等であっても構わない。
【0080】
上記実施形態においては、鋼管11、12の上方からコンクリート20を打設する例について説明したが、コンクリートは鋼管の下側から圧入してもよい。この場合には、コッターに架け渡す簪筋をスポット溶接等にて仮止めしておくことが望ましい。
【0081】
上記実施形態のおいては、各鋼管10の端側に設けるコッター13の数を3本としたが、これに限るものではない。このとき、接合される上下の鋼管11、12にほぼ同様に力を作用させるために、各鋼管11、12に設けるコッター13の数を同数としておくことが望ましい。
【0082】
また、上記実施形態では、コッター13を環状としたが、環状に限らず、内側に突出させて周方向に複数設けられていてもよい。また、コッター13をフラットプレートにて形成する例について説明したが、フラットプレートに限らず、例えば異形棒鋼等であっても構わない。
【0083】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 充填鋼管柱
10 鋼管
11 上側の鋼管
11a 上側の鋼管の下端
12 下側の鋼管
12a 下側の鋼管の上端
13 コッター
14 異形棒鋼
14a 異形棒鋼の上端
14b 異形棒鋼の下端
15 棒鋼ユニット
16 フープ筋
18 簪筋
20 コンクリート
D 鋼管の直径
w フラットプレートの幅
t フラットプレートの厚み
F1 支圧力
F2 付着力
F3 圧縮力
F4 フープテンション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記複数の鋼管のうちの上下に配置されて突き合わされた2本の前記鋼管は各々、互いの内周面に、内側に向かって突出する突出部を有し、
前記2本の鋼管内には、各々の前記鋼管の長手方向において前記突出部が設けられている領域にわたって、棒状をなす継手部材が埋設されていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記突出部は、前記鋼管が突き合わされる端の側に位置させて、前記長手方向に沿う方向において互いに間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
各々の前記鋼管に設けられた複数の前記突出部のうち、最も前記端の側に位置する前記突出部は、前記鋼管の前記端より前記長手方向における中央側に離れた位置に配置されていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記突出部は、前記鋼管の前記内周面に、当該鋼管とは別の部材が溶接されて形成されており、
前記鋼管において前記突き合わされる前記端からの距離が当該鋼管の直径より短い領域内に配置されていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記突出部の前記内側への突出量は、前記長手方向における当該突出部の幅の半分以下であることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記継手部材の前記長手方向における端は、前記鋼管の長手方向において前記鋼管の端から最も離れた中央側に設けられている前記突出部より前記中央側に離れていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記継手部材は、複数設けられるとともに環状をなすフープ材に取り付けられていることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記突出部は、フラットプレートであることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造であって、
前記継手部材は、異形棒鋼であることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合構造。
【請求項10】
上下方向に連ねて配置された複数の鋼管内にコンクリートが充填されているコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、
前記複数の鋼管のうちの上下に配置されて突き合わされる2本の前記鋼管の内周面に、内側に向かって突出する突出部を形成する突出部形成工程と、
前記2本の鋼管のうちの一方の前記鋼管にて前記突出部が形成されている部位の内側に棒状の継手部材を配置するとともに、当該一方の鋼管の他方の前記鋼管が突き合わされる端から突出させる継手部材配置工程と、
前記一方の鋼管から突出された前記継手部材を前記他方の鋼管に形成された前記突出部の内側に配置するとともに前記他方の鋼管の端を前記一方の鋼管の端と突き合わせる鋼管突合工程と、
互いに突き合わされた前記2本の鋼管内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
を有することを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法。
【請求項11】
請求項10に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、
複数本の前記継手部材を、環状をなすフープ材に取り付け、
前記フープ材を、前記鋼管内を横切るように前記突出部に架け渡された複数の架渡部材に支持させて、前記継手部材を前記一方の鋼管内に配置することを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、
前記一方の鋼管は、下側に配置される前記鋼管であることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載のコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法であって、
前記一方の鋼管は、上側に配置される前記鋼管であることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱における鋼管の接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−2054(P2013−2054A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131436(P2011−131436)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】