説明

コンクリート壁の間隔保持部材、コンクリート壁の施工構造、及びその施工方法

【課題】コンクリート型枠工法によるコンクリート壁の施工に際し、使用する部材を繰り返し利用でき、且つ断熱性能にも優れたコンクリート壁を施工できるコンクリート壁の間隔保持部材、コンクリート壁の施工構造、及びその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の間隔保持部材1は、一方側の型枠パネル2を貫通する埋設用棒状材11と、該埋設用棒状材11と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間5内に位置する少なくとも一部が筒状部材13で包囲される棒状部材12とからなり、コンクリート打設後に前記棒状部材12を抜き出し可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーを打ち込む作業を必要とせず、使用する部材を繰り返し利用でき、且つ断熱性能にも優れたコンクリート壁を施工できるコンクリート壁の間隔保持部材、コンクリート壁の施工構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート型枠工法(断熱層を形成したものを含む)は、合板等で型枠を形成してコンクリート打設空間を形成するものであり、この打設空間を維持するために、各種の間隔保持部材が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1は、型枠の対向面に貫通孔を対向状に複数設けて保持部材(コーン)を配置し、この保持部材の前面と後面に異なる径の螺子孔を設け、その内側には間隔保持部材(セパレータ)を、その外側にはボルト材(押さえ具)を配した状態でコンクリートを打設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3063628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1などでは、打設後のコンクリート内に埋設される間隔保持部材(ボルト等)は、一本のボルト部材がそのままコンクリートを貫通した状態で埋設されているため、これらの支持箇所を一般的に数箇所/m設けることにより、前記ボルト部材が無駄になるという問題があった。
また、前記ボルトは、コンクリート壁に埋設されるため、ヒートブリッジ又はクールブリッジとして働き、断熱性能が損なわれる問題をも引き起こしていた。
さらに、構築されたコンクリート躯体(断熱層)の表面を下地として、例えば何等かの外装材を施工する場合には、養生させて硬化したコンクリート躯体にアンカーを打ち込む必要があるが、アンカーを打ち込む作業は、墨出しを行わなければならないため、作業性が悪いという問題があった。
そこで、本発明は、アンカーを打ち込む作業を必要とせず、使用する部材を繰り返し利用でき、且つ断熱性能にも優れたコンクリート壁を施工できるコンクリート壁の間隔保持部材、コンクリート壁の施工構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、一方側及び他方側の型枠間の間隔を保持してコンクリート壁を施工するための間隔保持部材であって、前記間隔保持部材は、一方側の型枠パネルを貫通する埋設用棒状材と、該埋設用棒状材と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間内に位置する少なくとも一部が筒状部材で包囲される棒状部材とからなり、コンクリート打設後に前記棒状部材を抜き出し可能であることを特徴とする間隔保持部材に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記間隔保持部材において、コンクリート打設空間内での回転を防止する機構が少なくとも1箇所以上に設けられていることを特徴とする間隔保持部材をも提案する。
【0008】
また、本発明は、一方側及び他方側の型枠間に前記構成の間隔保持部材を配して施工したコンクリート壁の施工構造であって、前記型枠間に、前記間隔保持部材を配してコンクリートを打設し、該コンクリートから棒状部材を抜き取ったことを特徴とするコンクリート壁の施工構造をも提案する。
【0009】
さらに、本発明は、一方側及び他方側の型枠間に前記構成の間隔保持部材を取り付けてコンクリートを打設してコンクリート壁を施工するコンクリート壁の施工方法であって、前記型枠間に間隔保持部材を取り付ける第1の工程と、コンクリートを打設する第2の工程と、コンクリートの硬化後に、棒状部材を抜き出す第3の工程と、からなることを特徴とするコンクリート壁の施工方法をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の間隔保持部材は、一方側に配される埋設用棒状材が一方側の型枠パネルを貫通して配されているので、この埋設用棒状材が、コンクリート壁を構築した後のアンカー材となり、従来技術のように面倒な墨出しの後にアンカーを打ち込む作業が不要となり、該アンカー材に例えば外装材を取り付ける等の施工を容易に行うことができる。
また、他方側に配される棒状部材は、筒状部材で包囲したので、コンクリートと接触することなく配され、コンクリートの打設、硬化後に容易に抜き出すことができ、得られたコンクリート壁は、一方側の埋設棒状材をつたって冷熱が他方側へ伝熱されても、それ以上の冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されて断熱性能が高い。
さらに、他方側に配設される棒状部材を抜き出して形成された貫通孔に、固定用棒状部材(アンカーボルト)を挿着することができ、一方側の壁面ばかりでなく、他方側の壁面にもアンカー材を容易に取り付けることができ、施工するコンクリート壁の両面に容易に外壁材や内壁材などを取り付けることができる。
【0011】
また、コンクリート打設空間内での回転を防止する機構が少なくとも1箇所以上に設けられている場合、埋設用棒状材に螺合された部材(例えば棒状部材)を外すときに埋設用棒状材が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止する(供回りを防ぐ)ことができる。
【0012】
また、本発明のコンクリート壁の施工構造は、前記構成の間隔保持部材を用いて施工したものであって、一方面にアンカー材としての埋設用棒状材が配され、他方面に棒状部材を抜き出して形成される貫通孔が配される構成となり、断熱性能にも優れたものである。
【0013】
さらに、本発明のコンクリート壁の施工方法は、前記間隔保持部材を取り付けてコンクリート打設空間を形成する第1の工程も、コンクリートを打設する第2の工程も、棒状部材を抜き出す第3の工程も、それぞれ極めて容易に実施できるので、施工性に優れた方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の間隔保持部材の一実施例(第1実施例)を用いたコンクリート壁の施工方法における第1の工程の状態を示す断面図、(b)他の一実施例(第2実施例)を用いたコンクリート壁の第1の工程を示す断面図である。
【図2】(a)第1実施例の間隔保持部材を用いたコンクリート壁の施工方法における第2の工程の状態を示す断面図、(b)第3の工程の状態(施工されたコンクリート壁)を示す断面図である。
【図3】(a)第1実施例の間隔保持部材を示す正面図、(b)より大きな厚みのコンクリート壁を施工する場合に用いる間隔保持部材を示す正面図である。
【図4】(a)第1実施例の間隔保持部材を構成する埋設用棒状材を示す正面図、(b)その拡大正面図、(c)その拡大右側面図、(d)A−A線における拡大断面図、(e)B−B線における拡大断面図(回転防止構成2を模式的に示す態様)、(f)B−B線における拡大断面図(回転防止構成1を模式的に示す態様)、(g)フランジを回転防止構成2とした場合の拡大断面図である。
【図5】(a)第1実施例の間隔保持部材を構成する棒状部材を示す正面図、(b)左側面図、(c)右側面図、(d)より大きな厚みのコンクリート壁を施工する場合に用いる間隔保持部材を構成する棒状部材を示す正面図、(e)左側面図、(f)右側面図、(g)樹脂製成形材である鍔部の正面図、(h)その左側面図、(i)その右側面図である。
【図6】(a)第1実施例の間隔保持部材を構成する筒状部材を示す正面図、(b)その左側面図、(c)より大きな厚みのコンクリート壁を施工する場合に用いる間隔保持部材を構成する筒状部材の正面図、(d)その左側面図である。
【図7】(a)本発明の間隔保持部材の他の一実施例(第3実施例)を用いたコンクリート壁の施工方法における第1の工程の状態を示す断面図、(b)第3実施例の間隔保持部材を構成する埋設用棒状材のボルトを示す断面図、(c)筒状部材を示す断面図、(d)六角ナットを示す断面図、(e)異径ナットを示す断面図である。
【図8】(a)第3実施例の間隔保持部材を用いたコンクリート壁の施工方法における第2の工程の状態を示す断面図、(b)第3の工程の状態(施工されたコンクリート壁)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の間隔保持部材は、コンクリート型枠工法において、コンクリート打設空間の間隔を保持するセパレータと称される部材であり、言い換えれば施工するコンクリート壁の厚みを確保ずるための保持部材である。
そして、一方側の型枠パネルを貫通する埋設用棒状材と、該埋設用棒状材と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間内に位置する少なくとも一部が筒状部材で包囲される棒状部材とからなる。即ち筒状部材で包囲することにより、棒状部材はコンクリートを接触することなく配され、コンクリートの打設、硬化後に容易に抜き出すことができる。
【0016】
前述のように本発明の間隔保持部材は、埋設用棒状材と棒状部材とからなるが、棒状部材については、単一部材からなる構成でも、コンクリート打設空間内にて分離可能(連結可能)な複数部材からなる構成でもよい。そして、単一部材にて構成される場合には、その長さ範囲全てで筒状部材で包囲すればよく、複数部材にて構成される場合には、最他方側の棒状部材のみが筒状部材で包囲されていればよく、コンクリートの打設、硬化後に棒状部材を他方側から抜き出すことができる。
【0017】
また、前記筒状部材は、中空状の管材(パイプ状)であればよい。即ちこの筒状部材の中空部分は、前記棒状部材をコンクリートの打設、硬化後に抜き出した後、貫通孔となるため、他面側からアンカー材等を打ち込むことができる取付孔として利用できる。
【0018】
さらに、前記間隔保持部材は、コンクリート打設空間内での回転を防止する機構が少なくとも1箇所以上に設けられていることが望ましい。この回転防止機構としては、打設したコンクリート自体により回転方向の抵抗となる構成を設けることにより、回転が防止されて埋設用棒状材に螺合された部材(例えば棒状部材)を外すときに埋設用棒状材が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止する(供回りを防ぐ)ことができる。
より具体的には、この回転防止機構としては、コンクリート打設空間内に位置して打設するコンクリートと接触する部分(接触部分)に突状部を形成した構成(=回転防止構成1)、前記接触部分を非円形状にプレス加工する構成(=回転防止構成2)、前記接触部分に六角ナット等の非円形状の部材を用いる構成(=回転防止構成3)などがあり、適宜に組み合わせて適用してもよい。
【0019】
一方側の型枠パネルは、前述のように埋設用棒状材が貫通して一体的に取り付けられている捨て型枠であり、この埋設用棒状材は、コンクリートの打設後もアンカー材として機能する。また、この型枠パネルとしては、単層に限定されるものではなく、後述する図示実施例(図1(b))のように複層以上からなるものでもよい。
他方側の型枠としては、上記の一方側の型枠と同様に捨て型枠を用いてもよいし、コンクリートの打設、硬化後に前記棒状部材と共に取り外すものを用いてもよく、後者の場合には合板(木質)、FRP等の強化プラスチックボードなどが用いられることが多く、コンクリート打設後に取り外して再利用してもよい。
【0020】
そして、本発明の間隔保持部材を構成する埋設用棒状材と棒状部材とは螺合手段にて接続されるが、何れか一方の端部に雌螺子部を形成し、他方の端部に雄螺子部を形成して直接的に接続してもよいし、例えば六角ナット、高ナット、異径ナット等のナット類、或いはボルト等の頭部に雌ねじを切った特殊ボルトなどを介して間接的に接続してもよい。これらのうち六角ナット等は後述する図示実施例(図7,8に示す第3実施例)に示すように前記「回転防止構成3」の役割をも果たす。
このように埋設用棒状材と棒状部材とは、螺合手段にて接続する構成であるため、コンクリートの打設以前には、容易に回転させて直列棒状に連結することができる。コンクリートの打設、硬化後には、他方側の型枠の外側から容易に逆回転させれば、螺合部分が分離して棒状部材を他方側から取り出すことができる。
【0021】
本発明の前記構成の間隔保持部材を用いたコンクリート壁の施工方法は、以下の3つの工程からなる。
第1の工程として、型枠間に前記構成の間隔保持部材を取り付けてコンクリート打設空間を形成する。
この工程では、一方側の型枠に予め埋設用棒状材が貫通して埋設されているので、所定の位置に一方側の型枠を配し、該型枠に一体的に取り付けられた埋設用棒状材の端部に、前記棒状部材を螺合させて前記構成の間隔保持部材を形成してもよいし、型枠の配設以前に、埋設用棒状材に前記棒状部材を螺合させて接続(連結)した状態で型枠を所定位置に配設してもよい。その後は定法に準じて所定位置に他方側の型枠を配すると共に間隔保持部材の端部をフォームタイ(R)等の押さえ部材(ボルト材)と連結し、型枠の外側には縦バタ、横バタ等を配し、前記押さえ部材にて締め付け固定してコンクリート打設空間を形成する。そして、形成されたコンクリート打設空間において、間隔保持部材は、一方側の型枠と他方側の型枠間に架け渡して配設されている。
第2の工程として、前記コンクリート打設空間にコンクリートを打設する。
コンクリートは、前記間隔保持部材の周囲を埋め尽くすように充填されるが、前述のように棒状部材は筒状部材にて包囲されているため、直接的に接触しない。
第3の工程として、コンクリートの硬化後に、棒状部材を抜き出す。
前記第2の工程にて説明したように、棒状部材はコンクリートと直接的に接触していないので、特別な治具や特に強い力を必要とすることなく他方側の型枠の外側から回転させて螺合を切り離すことができ、容易に抜き出すことができる。より具体的には、他方側の型枠の外側に配したバタ(縦、横)等の押さえ具を取り外し、型枠を撤去した後、棒状部材を抜き出す。筒状部材は、棒状部材を抜き出した後もそのままコンクリート内に埋設される。
【0022】
このように、本発明のコンクリート壁の施工方法(埋設方法)では、第1〜第3の工程がそれぞれ極めて容易に実施できるので、施工性に優れ、一方側に配される埋設用棒状材が一方側の型枠パネルを貫通して配されているので、この埋設用棒状材が、コンクリート壁を構築した後のアンカー材となり、従来技術のように面倒な墨出しの後にアンカーを打ち込む作業が不要となり、該アンカー材に例えば外装材を取り付ける等の施工を容易に行うことができる。
そして、施工されるコンクリート壁は、一方面にはアンカー材としての埋設用棒状材が配され、他方面に棒状部材を抜き出して形成される貫通孔が配される構成となり、断熱性能にも優れたものである。
【実施例1】
【0023】
図1(a)に示す本発明の第1実施例は、一方側の型枠パネル2を貫通する埋設用棒状材11と、該埋設用棒状材11と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間5内に位置する少なくとも一部が筒状部材13で包囲される棒状部材12とからなる間隔保持部材1をコンクリート壁の施工に用いようとするものであって、その第1の工程の状態を示している。
図1(a)における一方(図では左側)側の型枠2は、単層の断熱材を兼ねる型枠パネル21からなり、図1(b)における一方側の型枠2Bは、複層の型枠パネル21,22からなり、それぞれの型枠2,2Bを貫通して一体的に埋設される埋設用棒状材11,11bは、型枠2,2Bの厚み分だけ長さが異なるだけで、間隔保持部材1,1Bの他の部分は長さも形状も全く同一である。
【0024】
前記第1実施例に用いられた間隔保持部材1は、図3(a)に示す連結状態にてコンクリート打設空間5に配設され、この間隔保持部材1の一方側(図では左側)を構成する埋設用棒状材11は図4に示し、他方側(図では右側)を構成する棒状部材12は図5(a)に示し、その棒状部材12を包囲する筒状部材13は図6(a)に示した。
なお、図3(b)に示す間隔保持部材1Cは、より厚みの大きなコンクリート壁の施工に用いるものであって、より厚いコンクリート壁に応じて棒状部材11C及び筒状部材13Cが長いものを用いればよい。
【0025】
前記埋設用棒状材11は、図4(a),(b)に示すように一方端(図では左端)にナット112を取り付ける雄ねじ部111が形成され、他方側(図では右方側)には板ナット113を介して端部に回転防止部115が設けられた雌ねじ部114が一体的に固定されている。
なお、前記回転防止部115は、図4(f)に示すように前記「回転防止構成1」に相当する複数の突状部を形成した構成115Yでもよいし、図4(e)に示すように前記「回転防止構成2」に相当するプレス等の機械で非円形状になるように加工した構成115Xでもよく、何れもコンクリート5"を打設した際に、コンクリート5"自体により回転方向の抵抗となるため、埋設用棒状材11に螺合された棒状部材12を外すときに埋設用棒状材11が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止することができる。
また、雌ねじ部114の他方側の端部のフランジ116にも、図4(g)に示すように前記「回転防止構成2」に相当するプレス加工して非円形状に形成した構成116Xとしてもよい。
【0026】
前記棒状部材12は、図5(a)に示すように他方側(図では右側)の端部付近に略円形状の鍔部121が取り付けられ、一方端(図では左端)には前記埋設用棒状材11の雌ねじ部114に螺合する雄ねじ部122が形成されている。
前記鍔部121は、図5(g)に示すように棒状部材12が貫通する樹脂製成形材であり、図1(a)より明らかなように他方側の型枠3に当接状に配される。
より厚みの大きなコンクリート壁の施工に用いる場合には、図5(d)に示す長い棒状部材12Dを用いればよく、前述の鍔部121や雄ねじ部122等は全く同様に形成したものである。
【0027】
前記筒状部材13は、図6(a)に示すように中空状の管材(パイプ状)である。
図6(b)に示す筒状部材13Cは、前記図3(b)に示す間隔保持部材1Cを構成するものであって、長い以外は前記筒状部材13と全く同様に形成したものである。
【0028】
また、他方側に配する型枠(型枠兼用パネル)3は、FRP製の強化プラスチックボードであって、前記間隔保持部材1の他方側の端部を型枠3の外側へ突出させて配置し、型枠3の外側に押さえ部材4を配置させてコンクリートの打設応力に抗するように配置されている。
【0029】
前記一方側の型枠2を貫通するように一体的に埋設された埋設用棒状材11の雌ねじ部114に、前記筒状部材13にて包囲した前記棒状部材12の一方側の端部を螺合して接続し、間隔保持部材2が形成されている。
そして、前記筒状部材13にて包囲された棒状部材12の他方側の端部を、前記鍔部121の貫通孔に貫通させ、更に他方側の型枠3の外側に配された押さえ部材4と連結して締め付けることにより、筒状部材13が鍔部121を型枠3に圧接させた状態でコンクリート打設空間5が形成される。
【0030】
そして、これらの各部材を用いた第1実施例の第1の工程として、予め埋設用棒状材11が貫通して埋設されている一方側の型枠2を所定位置に配し、該型枠2に一体的に取り付けられた埋設用棒状材11の端部に、前記筒状部材13にて包囲した棒状部材12を螺合させて間隔保持部材1を形成する。
その後、前記間隔保持部材1の端部を突出させつつ所定位置に他方側の型枠3を配し、間隔保持部材1の端部をフォームタイ(R)等の押さえ部材(ボルト材)4と連結し、型枠3の外側には図示しない縦バタ、横バタ等を配し、前記押さえ部材4にて間隔保持部材1を締め付け固定してコンクリート打設空間5を形成する。
そして、形成されたコンクリート打設空間5において、間隔保持部材1は、一方側の型枠2と他方側の型枠3との間に架け渡されて配設されている。
【0031】
次に、第2の工程として、前記コンクリート打設空間5に図2(a)に示すようにコンクリートを打設する。その際、前述のように間隔保持部材1は、一方側の型枠2と他方側の型枠3との間に架け渡されて配設されているため、コンクリートの打設圧力などにより、ズレ動くことがなく、所定の位置に保持される。
【0032】
そして、第3の工程として、バタ(縦、横)を取り外し(撤去する)、押さえ部材(ボルト材)4を取り外し、他方側の型枠3を取り外した後、前記間隔保持部材1の棒状部材12を抜き出し、図2(b)に示す埋設構造(コンクリート壁5")を得る。前記構成の間隔保持部材1の埋設用棒状材11、及び筒状部材13は、コンクリート5"に埋設される。
【0033】
このように、本発明は、一方側に配される埋設用棒状材11が一方側の型枠パネル2を貫通して配されているので、この埋設用棒状材11が、コンクリート壁を構築した後のアンカー材となり、従来技術のように面倒な墨出しの後にアンカーを打ち込む作業が不要となり、該アンカー材に例えば外装材を取り付ける等の施工を容易に行うことができる。
また、他方側に配される棒状部材12は、筒状部材13で包囲したので、コンクリート5"と接触することなく配され、コンクリート5"の打設、硬化後に容易に抜き出すことができ、得られたコンクリート壁は、一方側の埋設棒状材11をつたって冷熱が他方側へ伝熱されても、それ以上の冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されて断熱性能が高い。
【0034】
さらに、他方側に配設される棒状部材12を抜き出して形成された貫通孔に、図示しない固定用棒状部材(アンカーボルト)を挿着することができ、一方側の壁面ばかりでなく、他方側の壁面にもアンカー材を容易に取り付けることができ、施工するコンクリート壁の両面に容易に外壁材や内壁材などを取り付けることができる。
また、この実施例では、コンクリート打設空間5内での回転を防止する機構として回転防止部115を設けたので、埋設用棒状材11に螺合された棒状部材12を外すときに埋設用棒状材11が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止できる。
【0035】
図7及び図8に示す本発明の第3実施例は、一方側の型枠パネル2Eが金属板23,25の間に樹脂発泡材24を挟んで一体化してなる構成であって、該型枠パネル2Eを貫通する埋設用棒状材15は、図7(b)〜(e)に示す一方側に頭部151を有するボルト15a、他方側の係止フランジ152を有する筒状部材15b、六角ナット15c、異径ナット15dを連結してなる構成である。
この実施例における型枠パネル2Eは、その作成法を限定するものではなく、2枚の金属板23,25の間に樹脂(24)を注入発泡させて形成したものでもよく、ボード状の樹脂材24の両面に金属板23,25を接着して形成してもよい。
また、埋設用棒状材15の一体化についても、予め形成した貫通孔に他方側から図7(c)に示す樹脂製の筒状部材15bを挿着してもよいし、樹脂(24)の注入発泡以前に筒状部材15bを配した状態で、注入発泡して一体化させてもよい。そして、筒状部材15bを貫通するように一方側から図7(b)に示すボルト15aを挿入し、他端から図7(d)に示す六角ナット15cを取り付けて締め付け固定し、型枠パネル2Eとこの埋設用棒状材15を一体的に固定することができる。
なお、ボルト15aの他端には、図7(e)に示す高ナット15dを螺合手段として取り付け、該螺合手段にて他方側の棒状部材12eや筒状部材13eを接続している。この異径ナット15dや前記六角ナット15cは、非円形状の部材であるから、前記「回転防止構成3」に相当する。
それ以外の構成は、前記実施例と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
この第3実施例における間隔保持部材1Eは、前記構成の型枠パネル2Eを貫通する前記構成の埋設用棒状材15を備えているので、前記実施例と同様に埋設用棒状材15が、コンクリート壁を構築した後のアンカー材となり、従来技術のように面倒な墨出しの後にアンカーを打ち込む作業が不要となり、該アンカー材に例えば外装材を取り付ける等の施工を容易に行うことができる。
また、他方側に配される棒状部材12eが筒状部材13eで包囲される構成も同様であるため、コンクリート5"の打設、硬化後の抜き出しが容易になり、冷熱橋が遮断されて断熱性能が高いという効果も同様であるが、一方側についてもボルト15aの周囲を樹脂製の筒状部材15bで包囲する構成としたため、型枠パネル2Eを構成する金属板23,25は熱が伝わることがない。
また、この実施例では、六角ナット15cや異径ナット15dがコンクリート5"内での回転を防止する機構として作用するので、埋設用棒状材15に螺合された棒状部材12eを外すときに埋設用棒状材15が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 間隔保持部材
11 埋設用棒状材
111 雄ねじ部
112 ナット
113 板ナット
114 雌ねじ部
115 回転防止部
12,12e 棒状部材
121 鍔部
122 雄ねじ部
13,13e 筒状部材
15 埋設用棒状材
15a ボルト
15b 筒状部材
15c 六角ナット
15d 異径ナット
2,2E (一方側の)型枠
21,22 断熱材
23,25 金属板
24 樹脂発泡材
3 (他方側の)型枠
4 押さえ部材
5 コンクリート打設空間
5" コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側及び他方側の型枠間の間隔を保持してコンクリート壁を施工するための間隔保持部材であって、
前記間隔保持部材は、一方側の型枠パネルを貫通する埋設用棒状材と、該埋設用棒状材と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間内に位置する少なくとも一部が筒状部材で包囲される棒状部材とからなり、コンクリート打設後に前記棒状部材を抜き出し可能であることを特徴とする間隔保持部材。
【請求項2】
コンクリート打設空間内での回転を防止する機構が少なくとも1箇所以上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項3】
一方側及び他方側の型枠間に請求項1又は2に記載の間隔保持部材を配して施工したコンクリート壁の施工構造であって、
前記型枠間に、前記間隔保持部材を配してコンクリートを打設し、該コンクリートから棒状部材を抜き取ったことを特徴とするコンクリート壁の施工構造。
【請求項4】
一方側及び他方側の型枠間に請求項1又は2に記載の間隔保持部材を取り付けてコンクリートを打設してコンクリート壁を施工するコンクリート壁の施工方法であって、
前記型枠間に間隔保持部材を取り付ける第1の工程と、コンクリートを打設する第2の工程と、コンクリートの硬化後に、棒状部材を抜き出す第3の工程と、からなることを特徴とするコンクリート壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31688(P2012−31688A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173751(P2010−173751)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000253400)舩木商事有限会社 (16)
【Fターム(参考)】