説明

コンクリート壁体の構築方法、及びその構築方法に用いる型枠保持金具、並びにその構築方法によって形成されるコンクリート壁体構造

【課題】軽量で可搬性に優れる型枠保持具を用いて、壁体構築後の壁面にコンクリート色の異なる円形模様が生じることが無く、美観の可及的な向上が図れるコンクリート壁体の構築方法、及びコンクリート壁体構造を提供する。
【解決手段】一対の型枠板22をセパレータ24と型枠保持具20とによって所定の間隔に固定してコンクリート打設空間を区画し、該打設空間内にコンクリートを充填してコンクリート壁を構築するに際し、該型枠保持具には、該セパレータの軸端部に螺合接続される雌ねじ筒26と、該雌ねじ筒に螺合接続される軸足28と、該軸足の外周部に装着されて該雌ねじ筒と型枠板との間に介在される凹部形成用リング30と、該軸足に螺合されて該型枠板を該凹部形成用リングとの間に挟持して固定するフォームタイ32とからなるものを使用し、雌ねじ筒には截頭円錐台状のコーン本体を一体形成せずに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設空間を区画形成する2つの型枠用合板を、相互に所定の間隔に維持して固定保持するための型枠保持金具およびその型枠保持方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート壁体を構築するにあたっては、2つの型枠板をセパレータで相互に所定の間隔に固定保持してコンクリートの打設空間を区画形成し、当該コンクリート打設空間内に生コンクリートを打設するようにしているが、このようなコンクリート壁体の構築方法として、特開2001−173232号公報にて開示されている技術が知られている。
【0003】
即ち、当該公報には、図10(a)〜(c)に示すように、型枠支持用コーン1と、軸足2と、フォームタイ3とによってセパレータ4の両端に一対の型枠板5を固定保持して型枠6を組み立て、当該型枠6内のコンクリート打設空間にコンクリート7を打設してコンクリート7が固化した後、軸足2を取り外して、型枠板5を撤去するようにしたコンクリート壁構築方法の技術が示されている。
【0004】
上記型枠支持用コーン1は、截頭円錐状に形成されて小径側端部が外側、大径側端部が内側に位置するように配置されるコーン本体1aと、このコーン本体1aの中心部に同軸に埋設された金属製の雌ねじ筒1bとからなり、コーン本体1aは、モルタルにアクリル系樹脂エマルジョンを混和させたものが加圧成型されて形成されている。また、図10(b)に示すように、雌ねじ筒1bの外側端面はコーン本体1aの外側端面より内方へ没入されて空洞部8が形成されている。
【0005】
コンクリート壁体の構築に際しては、先ず、型枠支持用コーン1の雌ねじ筒1bの内端側にセパレータ4の端部をねじ込むとともに、当該雌ねじ筒1bの外端側には軸足2の内端部をねじ込む。そして当該軸足2の外端部に型枠板5を係止してからフォームタイ3を螺着して、型枠支持用コーン1とフォームタイ3との間に型枠板5を挟んでコンクリート型枠6を組み立てて固定保持する。そして、この型枠6内にコンクリートを7打設し、当該コンクリート7が固化した後、軸足2を取り外して型枠6を解体する。そして、コーン本体1aの空洞部8には、これを埋める合成樹脂またはゴム製の栓体9を充填して覆う。
【特許文献1】特開2001−173232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の型枠支持用コーン1を用いたコンクリート壁体の構築方法では、以下のような問題点があった。即ち、上記の型枠支持用コーン1は雌ねじ筒1bの外周に裁頭円錐形状をなしたコンクリート製のコーン本体1aを一体化させて設けているので、当該型枠支持用コーン1を部品として箱詰めすると、箱体の重量が嵩んで重くなるばかりか容積も嵩張り、現場への搬入時等における可搬性に難点があった。また、その搬入時の振動等によって箱詰めした型枠支持用コーン同士がぶつかり合うと、コンクリート製のコーン本体1a部分に割れ等の損傷を来すこともあった。
【0007】
さらに、型枠6を解体して型枠板5を撤去すると、コンクリート製のコーン本体1aの外端面が壁体の外表面に円形に露出することになるが、コーン本体1aのコンクリートの色と打設された壁体のコンクリート7の色とを実際上同一にすることはできないため、構築された壁面の全体に多数の円形模様が生じてしまい、美観を損ねてしまうという課題もあった。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量で可搬性に優れ、壁体構築後の壁面にコンクリート色の異なる円形模様が生じることが無く、美観の可及的な向上が図れるコンクリート壁体の構築方法、及びその構築方法に用いる型枠保持具、並びにその構築方法によって形成されるコンクリート壁体構造を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、型枠の解体を簡易に行いうる壁体の構築方法及びこの構築方法に用いる型枠保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るコンクリート壁体の構築方法は、一対の型枠板をセパレータと型枠保持具とによって所定の間隔に固定してコンクリート打設空間を区画形成し、該コンクリート打設空間内にコンクリートを充填して構築するコンクリート壁体の構築方法であって、該型枠保持具が、該セパレータの軸端部に螺合接続される雌ねじ筒と、該雌ねじ筒に螺合接続される軸足と、該軸足の外周部に装着されて該雌ねじ筒と型枠板との間に介在される凹部形成用リングと、該軸足に螺合されて該型枠板を該凹部形成用リングとの間に挟持して固定するフォームタイとからなり、該コンクリート壁体の構築に際して、該セパレータの両軸端部に形成されている雄ねじ部に、それぞれ該雌ねじ筒を螺合させる工程と、該各雌ねじ筒に軸足を螺合させて継ぎ足す工程と、該各軸足に凹部形成用リングを装着してから該型枠板を係止させる工程と、該各軸足にフォームタイを螺合させて該型枠板を締結固定し、一対の該型枠板を所定間隔に保持する工程と、一対の該型枠板間に形成されるコンクリート打設空間内にコンクリートを打設する工程と、該コンクリートの硬化後に該フォームタイと該軸足と該型枠板と該凹部形成用リングとを取り外して型枠を解体する工程と、該凹部形成用リングによって形成された壁体表面の凹部に、該雌ねじ筒を覆って隠すための栓体を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る型枠保持具は、コンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板をセパレータを用いて所定の間隔に固定して保持する型枠保持具であって、セパレータの軸端部に螺合接続される雌ねじ筒と、該雌ねじ筒の他端側に螺合接続される軸足と、該軸足の外周部に装着されて該雌ねじ筒と型枠板との間に介在される凹部形成用リングと、該軸足に螺合されて該型枠板を該凹部形成用リングとの間に挟持して固定するフォームタイとを備えていることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記軸足には径方向外方に突出する係止片が設けられており、該係止片が前記型枠板の内面側に当接されて組み付けられる構成となし得る。
【0013】
あるいは、前記軸足には径方向外方に突出する係止片が設けられており、該軸足は該係止片が前記凹部形成用リングの内面側に当接されて組み付けられる構成となし得る。
【0014】
また、上記構築方法によって形成される本発明に係るコンクリート壁体構造は、一対の型枠板をセパレータと型枠保持具とによって所定の間隔に固定してコンクリート打設空間を区画形成し、該コンクリート打設空間内にコンクリートを充填して構築されるコンクリート壁体構造であって、打設形成されたコンクリート壁体中には、該セパレータの両軸端部に形成された雄ねじ部に螺合接続された該型枠保持具の雌ねじ筒が、該セパレートと一体化されて埋設されているとともに、該雌ねじ筒の外側端面は該コンクリート壁の表面よりも内方に位置して、該コンクリート壁の表面には、該雌ねじ筒の外側端面を露出させる凹部が形成されており、該凹部には、該雌ねじ筒の外側端面を被覆する栓体が充填装着されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成に係る本発明のコンクリート壁体の構築方法、及び型枠保持具によれば、型枠保持具の雌ねじ筒がコンクリート製のコーン部を有していないので、当該雌ねじ筒の重量の軽減化と小型化とが図れ、もって当該雌ねじ筒を部品として箱詰め梱包した場合にも、その総重量の可及的な軽減化と箱体の縮小化とが図れて現場への搬入時等における可搬性を向上させることができる。また、その搬入時の振動等によって型枠保持具同士がぶつかり合っても損傷を来すことがない。
【0016】
また、軸足に径方向外方に突出する係止片を設けて、当該係止片を前記型枠板の内面側に、或いは、当該係止片を前記凹部形成用リングの内面側に当接させるようにすれば、打設コンクリートの硬化後に型枠板を解体する時に、雌ねじ筒に螺号している軸足を取り外すと、当該軸足と一緒に型板枠及び凹部形成用リングをも同時に壁面から離脱させることができ、型枠板の解体作業の効率が可及的に向上する。
【0017】
さらに、本発明のコンクリート壁体の構築方法、及び型枠保持具、並びにコンクリート壁体構造によれば、セパレータとこれに螺合された雌ねじ筒の周囲には打設したコンクリートが回り込んで定着し一体化するので、構築後のコンクリート壁体の外表面にコンクリート色の異なる円形模様が壁面の全体に多数生じてしまうことがなく、美観の向上を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るコンクリート壁体の構築方法、及びその構築方法にいる型枠保持具の最良の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
《第1実施形態》
図1〜図5Cは本発明の第1実施形態に係るコンクリート壁体の構築方法及びその構築方法にいる型枠保持具を示すものである。ここで、図1はコンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板の一方を本発明の型枠保持具を用いて固定保持した状態を示す断面図であり、図5A〜図5Cは当該型枠保持金具を用いてコンクリート壁体を構築する手順を示した工程図である。
【0020】
図1及び図5A〜図5Cに示すように、型枠保持具20は、コンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板22をセパレータ24を介して所定の間隔に固定して保持するものであって、当該型枠保持具20はセパレータ24の両軸端部にそれぞれ設けられるようになっている。即ち、型枠保持具20は、セパレータ24の軸端部に形成された雄ねじ部24aに一端側が螺合される雌ねじ筒26と、型枠板22に形成された挿通孔23に挿通されて上記雌ねじ筒26の他端側にその一端側が螺合される軸足28と、この軸足28の外周部に装着されて当該型枠板22と雌ねじ筒26との間に介設される環状の凹部形成用リング30と、その軸足28の他端側に螺合されて型枠板22を雌ねじ筒26に向けて圧接させて挟持するフォームタイ32とを備えている。
【0021】
図2は上記雌ねじ筒26を示すものであり、(a)はその軸長方向の断面図、(b)は軸長方向から見た側面図である。図示するように、雌ねじ筒26は鉄やアルミニウム等の金属製でなり、円筒体をなしてその内面の全長に亘って雌ねじ部26aが形成されている。そして、その雌ねじ部26aの軸長方向のほぼ中央部にはその内部空間を左右に仕切る隔壁26bが設けられている。ここで、この隔壁26bはアルミニウム等の金属球を雌ねじ筒26内に挿入して、この金属球を左右からロッド等で挟んで押し潰して塑性変形させることで形成されるようになっている。また、雌ねじ筒26の外周部にはその一端側に近接して、径方向外方に突出するリング26cが溶着等によって一体的に設けられており、当該リング26cは打設されるコンクリートとの定着性の確保に寄与すべく設けられる。
【0022】
図3は上記雌ねじ筒26に螺合される軸足28を示す側面図である。図示するように、この軸足28には、その両端部に雄ねじ部28a,28bが形成されており、その一端側の雄ねじ部28aは他端側の雄ねじ部28bよりもその有効ねじ長が短くなっていて、当該有効ねじ長の短い一端側の雄ねじ部28aが雌ねじ筒26に螺合される様になっている。また、両雄ねじ部28a,28b間には非ねじ部28cが設けられていて、この非ねじ部28cには図示していないがスパナ等のレンチを係合させるための一対の平行面が形成されている。
【0023】
図4は上記凹部形成用リング30を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。図示するように、この凹部形成用リング30は円形の板の中心部に上記軸足28の径よりやや大きな挿通孔30aが空けられて環状に形成されている。そして、その一側面の外径D2は上記雌ねじ筒26の外径にほぼ等しい円形をなす一方、他側面の外径D1はその一側面の外径よりも一回り大きい円形をなしている。即ち、凹部形成用リング30の周面はテーパー状に傾斜して、その外形形状は円錐台状になっている。また、当該凹部形成用リング30は樹脂で形成され、その樹脂中には炭素繊維等の補強繊維を混合して、その剛性を高めて潰れ難くしてある。ここで、この凹部形成用リング30は雌ねじ筒26の外側端面を型枠板22から離間させることで、図5Bの(VII)に示すように、構築される壁体36の表面から当該雌ねじ筒26の外側端面を窪ませて凹部38を形成し、図5Cの(IIX),(IX)に示すように、この凹部38内に雌ねじ筒26の外端面を被覆するための栓体40を装着すべく設けられるものである。
【0024】
そして、コンクリート壁体36の構築に際しては、図5A〜図5Cに示す作業工程の手順によって型枠板22の組み立て、及びコンクリートの打設、型枠板22の解体を行う。即ち、先ず図5Aの(I)に示す工程では、セパレータ24の両軸端部に形成されている雄ねじ部24aに、それぞれ雌ねじ筒26を螺合させる(雌ねじ筒螺合工程)。爾後、同図の(II)に示す工程では、雌ねじ筒26に軸足28を螺合させて継ぎ足す(軸足28螺合工程)。
【0025】
次に、同図の(III)及び(IV)に示す工程では、左右の各軸足28の外周部に凹部形成用リング30をそれぞれ装着する。ここで、上記凹部形成用リング30は、小径に形成されている一側面側を雌ねじ筒26に向けて装着する。その後、当該両軸足28のそれぞれに型枠板22の挿通孔23を嵌め込んで当該型板枠22を係止させる(型枠板係止工程)。
【0026】
次に、図5Bの(V)に示す工程では、各型枠板22から外方に突出する各軸足28の雄ねじ部28bの突出端にフォームタイ32を螺合させて、当該フォームタイ32と雌ねじ筒26との間に型枠板22と凹部形成用リング30とを締め付けて圧着固定し、一対の型枠板22,22を所定の間隔で並行に支持する(型枠板保持工程)。
【0027】
そして、同様にして当該型枠板22に形成されている各所の挿通孔部に設けた全ての型枠保持具20を締め付けて型枠の組み立てが完了したならば、図5Bの(VI)の工程に示すように、当該型枠の両型枠板22間に区画形成されたコンクリート打設空間にコンクリート42を流し込んで打設する(コンクリート打設工程)。
【0028】
そして、当該コンクリート42が硬化した後に、両型枠板22の外側のフォームタイ32 を緩めて軸足28 から離脱させ、硬化したコンクリート42の表面から一対の型枠板22及び凹部形成用リング30をそれぞれ取り外すとともに、一対の軸足28を緩めて雌ねじ筒26から離脱させて型枠を解体する(型枠解体工程)。
【0029】
以上の工程により図5B(VII)に示すように、コンクリート42の内部にセパレータ24と雌ねじ筒26とが埋設されているコンクリート壁体36が構築される。また、このコンクリート壁体36の表面には、上記凹部形成用リング30によって、内部に埋設されている雌ねじ筒26の外側端面を露出させる凹部38が形成される。
【0030】
そして、図5Cの(IIX)と(IX)の工程とに示すように、その凹部形成用リング30によって形成された壁体表面の凹部38には、栓体40を嵌め込んで充填し、当該凹部38を栓体40で埋めて雌ねじ筒26の外側端面を覆って隠す(栓体充填工程)。
【0031】
即ち、上述のようにして打設形成されるコンクリート壁体36の内部には、セパレータ24に形成された雄ねじ部24aの両軸端部に螺合接続された型枠保持具20の雌ねじ筒26が、セパレータ24と一体化されて埋設されているとともに、雌ねじ筒26の外側端面はコンクリート壁体36の表面よりも内方に位置して、当該コンクリート壁体36の表面には、雌ねじ筒26の外側端面を露出させる凹部38が形成されて、当該凹部38には、雌ねじ筒26の外側端面を被覆する栓体40が充填装着されている構造となっている。
【0032】
従って、上述の如く構成されるコンクリート壁体36の構造にあっては、型枠保持具20の雌ねじ筒26は従来のようなコンクリート製のコーン部を有しておらず、セパレータ24とこれに螺合された雌ねじ筒26の周囲には打設したコンクリート42が回り込んで定着し一体化するので、構築後のコンクリート壁体36の外表面にはコーン部によるコンクリート色の異なる円形模様がその壁面の全体に多数生じてしまうことがなく、美観の向上を図ることができるようになる。
【0033】
また、雌ねじ筒26にコンクリート製のコーン部を設けないので、当該雌ねじ筒26の重量の軽減化と小型化とが図れ、もって当該雌ねじ筒26を部品として箱詰め梱包した場合にも、その総重量の可及的な軽減化と箱体の縮小化とが図れて、現場への搬入時等における可搬性を向上させることができる。さらに、その搬入時の振動等によって型枠保持具の雌ねじ筒26同士がぶつかり合っても、従来のようにコンクリート製コーン部の角に亀裂や割れが生じるような事が無く、雌ねじ筒26を損傷させてしまう虞がない。
【0034】
《第2実施形態》
図6〜図8は本発明に係るコンクリート壁体の構築方法、及びその構築方法に用いる型枠保持具の第2実施形態を示すものである。ここで、当該第2実施形態の主たる構成は前述した第1実施形態とほぼ同一であり、その相違する部分は軸足28と凹部形成用リング30とにあり、その他の点では第1実施形態と一致する。よって、以下には当該相違点に付いて詳述し、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0035】
図7は第2実施形態にて用いられる軸足28を示しており、(a)は軸長方向から見た側面図、(b)はその正面図である。同図に示すように、軸足28にはその軸長方向のほぼ中央部に形成されている非ネジ部28cの外周部に、径方向外方に向けて突出する係止片28dが一体的に設けられている。ここで当該係止片28dの径方向外方への突出量は、型枠板22に尖設形成されている軸足用の挿通孔23の開口周縁に当接する大きさに設定されている。この図示例では、当該係止片28dは軸足28の外周に沿って環状に一体形成されており、その外径寸法は軸足用の挿通孔23の内径よりも若干大きくなっていて、雌ねじ筒26に螺合される有効ねじ長の短い一端側の雄ねじ部28aに隣接して設けられている。また、この軸足28には、フォームタイ32を螺合させるための有効ねじ長の長い他端側の雄ねじ部28bの先端外周部に、当該軸足28を雌ねじ筒26に脱着させる際に使用するレンチを係合させるための平行面28eが窪まされて形成されている。
【0036】
一方、図8に示すように、凹部形成用リング30には上記軸足28の係止片28dを収納するための凹部30bが大径側の端面に形成されている。
【0037】
そして、当該第2実施形態の場合にあっても、そのコンクリート壁体の構築に際しては、図5A〜図5Cに示した前述の第1実施形態と同様の作業工程の手順によって型枠板22の組み立て、及びコンクリート42の打設、型枠板22の解体を行う。ここで、図6は第2実施形態における型枠保持具20を用いて、一対の型枠板22の一方を固定保持した状態を示す断面図であるが、同図に示すように、軸足28の係止片28dは型枠板22の軸足用の挿通孔23の内面側開口の周縁部に当接される。また、このとき当該係止片28dは凹部形成用リング30に形成された係止片用の凹部30b内に収容される。このため、凹部形成用リング30は型枠板22と雌ねじ筒26との間に圧接されて挟持され、型枠板22と離間してしまうことがない。
【0038】
そして、打設したコンクリートの硬化後に型枠板22を解体撤去するに際しては、タイフォーム32の取り外し後に、雌ねじ筒26に螺合している軸足28を緩めて取り外していくと、係止片28dが型枠板22に当接しているので、軸足と共に型枠板も一緒になって同時にコンクリート壁体36から離脱されていくことになる。このため、型枠の解体撤去作業が効率的に行えるようになる。
【0039】
図9は第2実施形態の変形例を示すものである。即ち、当該変形例では、凹部形成用リング30を軸足28の係止片28dと型枠板22との間に挟んで挟持するように、軸足28の外周に装着しており、係止片28dが凹部形成用リング30の内面側に当接させて組み付けている。
【0040】
このように組み付ければ、型枠板22を解体撤去するに際し、雌ねじ筒26に螺合している軸足28を緩めて取り外していくと、係止片28dが凹部形成用リング30に当接しているので、軸足と共に凹部形成用リング30と型枠板22とが一緒になって同時にコンクリート壁体36から離脱されていくことになる。このため、型枠の解体撤去作業が更に効率的に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、型枠保持具を用いてコンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板の一方を固定保持した状態を示す断面図である。
【図2】図1中の雌ねじ筒を示すものであり、(a)はその軸長方向の断面図、(b)は軸長方向から見た側面図である。
【図3】雌ねじ筒に螺合される軸足を示す側面図である。
【図4】凹部形成用リングを示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図5A】本発明に係る型枠保持金具を用いてコンクリート壁体を構築する際の作業手順を示す工程図である。
【図5B】図5Aに続く手順を示した工程図である。
【図5C】図5Bに続く手順を示した工程図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示すもので、型枠保持具を用いてコンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板の一方を固定保持した状態を示す断面図である。
【図7】第2実施形態にて用いられる軸足を示し、(a)は軸長方向から見た側面図、(b)はその正面図である。
【図8】第2実施形態にて用いられる凹部形成用リングを示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図9】第2実施形態の変形例を示すもので、型枠保持具を用いて型枠板の一方を固定保持した状態を示す断面図である。
【図10】従来の型枠保持金具を用いてコンクリート壁体を構築する際の作業手順を示す工程図である。
【符号の説明】
【0042】
20 型枠保持具
22 型枠板
24 セパレータ
24a 雄ねじ部
26 雌ねじ筒
26a 雌ねじ部
28 軸足
28a,28b 雄ねじ部
28d 係止片
30 凹部形成用リング
32 フォームタイ
36 コンクリート壁体
38 凹部
40 栓体
42 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の型枠板をセパレータと型枠保持具とによって所定の間隔に固定して、コンクリート打設空間を区画形成し、該コンクリート打設空間内にコンクリートを充填して構築するコンクリート壁体の構築方法であって、
該型枠保持具が、
セパレータの軸端部に螺合接続される雌ねじ筒と、
該雌ねじ筒の他端側に螺合接続される軸足と、
該軸足の外周部に装着されて該雌ねじ筒と型枠板との間に介在される凹部形成用リングと、
該軸足に螺合されて該型枠板を該凹部形成用リングとの間に挟持して固定するフォームタイとからなり、
該コンクリート壁体の構築に際して、
該セパレータの両軸端部に形成されている雄ねじ部に、それぞれ該雌ねじ筒を螺合させる工程と、
該各雌ねじ筒に軸足を螺合させて継ぎ足す工程と、
該各軸足に凹部形成用リングを装着してから該型枠板を係止させる工程と、
該各軸足にフォームタイを螺合させて該型枠板を締結固定し、一対の該型枠板を所定間隔に保持する工程と、
一対の該型枠板間に形成されるコンクリート打設空間内にコンクリートを打設する工程と、
該コンクリートの硬化後に該フォームタイと該軸足と該型枠板と該凹部形成用リングとを取り外して型枠を解体する工程と、
該凹部形成用リングによって形成された壁体表面の凹部に、該雌ねじ筒を覆って隠すための栓体を充填する工程と、
を有することを特徴とするコンクリート壁体の構築方法。
【請求項2】
前記軸足に径方向外方に突出する係止片が設けられており、該係止片が前記型枠板の内面側に当接されて組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁体の構築方法。
【請求項3】
前記軸足に径方向外方に突出する係止片が設けられており、該係止片が前記凹部形成用リングの内面側に当接されて組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁体の構築方法。
【請求項4】
コンクリート打設空間を区画形成する一対の型枠板をセパレータを用いて所定の間隔に固定して保持する型枠保持具であって、
セパレータの軸端部に形成された雄ねじ部に螺合される雌ねじ筒と、
型枠板に形成された挿通孔に挿通されて該雌ねじ筒に螺合される軸足と、
該軸足に装着されて該型枠用合板と該雌ねじ筒との間に介設され、該雌ねじ筒の端面を該型枠板の内側面から内方に凹ませて位置させる環状の凹部形成用リングと、
該接続用ボルトに螺合されて該型枠板を該雌ねじ筒に向けて圧接させて挟持するフォームタイと、
を備えていることを特徴とする型枠保持具。
【請求項5】
前記軸足に径方向外方に突出する係止片が設けられており、該係止片が前記型枠板の内面側に当接されて組み付けられることを特徴とする請求項4に記載の型枠保持具。
【請求項6】
前記軸足に径方向外方に突出する係止片が設けられており、該係止片が前記凹部形成用リングの内面側に当接されて組み付けられることを特徴とする請求項4に記載の型枠保持具。
【請求項7】
一対の型枠板をセパレータと型枠保持具とによって所定の間隔に固定してコンクリート打設空間を区画形成し、該コンクリート打設空間内にコンクリートを充填して構築されるコンクリート壁体構造であって、
打設形成されたコンクリート壁体中には、該セパレータの両軸端部に形成された雄ねじ部に螺合接続された該型枠保持具の雌ねじ筒が、該セパレートと一体化されて埋設されているとともに、該雌ねじ筒の外側端面は該コンクリート壁の表面よりも内方に位置して、該コンクリート壁の表面には、該雌ねじ筒の外側端面を露出させる凹部が形成されており、該凹部には、該雌ねじ筒の外側端面を被覆する栓体が充填装着されている、
ことを特徴とするコンクリート壁体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−222792(P2010−222792A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68549(P2009−68549)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(509080406)
【Fターム(参考)】