説明

コンクリート桝製品の成形装置

【課題】 板材単体のコーナが内枠の対角方向外側に膨らみ難くして、内枠の突張りがほとんど生じないようにしコンクリート桝製品にヒビが入る事態を防止してコンクリート桝製品の歩留まりを向上させる。
【解決手段】 多角形筒状の側壁2を有したコンクリート桝製品Mを成形する成形装置S1であって、側壁2の開口端面を成形する端面型を有した基台10と、側壁2の外側面4を成形する外枠11と、基台10に支持され側壁2の内側面5を成形する側面成形型21を備えた内枠20とを備え、側面成形型21を、複数の内側面5に対応した板材単体22を連設して横断面多角形状の筒状に形成し、板材単体22を内側に撓んで曲がることが可能な可撓性材料で形成し、互いに隣接する板材単体22のコーナ部22aであって板材単体22間に架設部材26を架設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水桝等と言われる底付あるいは底なしのコンクリート桝製品の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンクリート桝製品の成形装置としては、例えば、特許文献1(特開平11−221816号公報)に記載されたものが知られている。
【0003】
図7及び図8に示すように、この成形装置Saが成形するコンクリート桝製品Mは、底付のもので、四角形状の底壁1及び底壁1に立設された4つの側壁2からなる。
成形装置Saは、側壁2の開口端面3を成形する矩形枠状の端面型14を備えた基台10と、基台10に支持され側壁2の外側面4を成形する外枠11と、基台10に支持され底壁1の内側面6及び側壁2の内側面5を成形する内枠20とを備え、底壁1を上にしてコンクリート桝製品Mを成形するものである。
外枠11は、4つの側壁2を夫々成形する複数(実施の形態では4つ)の外枠単体12を有し、各外枠単体12の全部もしくは一部を成形位置とこの成形位置から外側に離間した脱型位置との2位置に移動可能に、開閉できるようにしている。
【0004】
内枠20は、側壁2の内側面5を成形する側面成形型21と、底壁1の内側面6を成形する底面成形型30とからなる。側面成形型21は、矩形の4枚の板材単体22を接合して横断面矩形状の筒状に形成されている。板材単体22は、内側に撓んで曲がることが可能な可撓性板材で形成されている。各板材単体22には、上下方向に延びる複数の長方形状の縦リブ23が付設されている。そして、板材単体22は、中央の縦リブ23が後述の撓曲機構40によって内側に引張られることによって、内側に撓んで曲げられ、いわば上下方向に延びる樋状に湾曲させられる。
底面成形型30は、側面成形型21の可撓性板材に連設され可撓性板材が内側へ撓んで曲がることによって収縮可能な弾性部材で構成されている。そして、底面成形型30は、上記の側面成形型21の4枚の板材単体22の内側上部に嵌挿されている。
【0005】
撓曲機構40は、基台10であって内枠20の側面成形型21の内側に回転可能に立設される回転軸41と、回転軸41と側面成形型21との間に連係され回転軸41の回転によって側面成形型21を引張って内側に撓ませて曲げる引張り機構45とを備えて構成されている。
引張り機構45は、上記回転軸41に形成された雄ネジ部46(図7中上側が左ネジ,下側が右ネジになっている)と、雄ネジ部46に螺合する雌ネジ部47aが形成され回転軸41の正逆回転によって上下に進退動する移動体47と、この移動体47と側面成形型21の板材単体22に設けた中央の縦リブ23とに連係され移動体47の移動によって伸長または縮小するリンク体48とを備えて構成されている。移動体47は、上下に一対設けられており、リンク体48は各移動体47に等角度(90度)関係で4組設けられている。そして、回転軸41がいずれか一方に回転させられたとき、移動体47を介してリンク体48が縮小して側面成形型21を引張って側面成形型21が内側に撓ませて曲げられ、回転軸41がいずれか他方に回転させられたとき、移動体47を介してリンク体48が伸長して側面成形型21が成形位置に位置させられる。
【0006】
また、内枠20の底面成形型30を内側に凹曲させる凹曲機構49が設けられている。この凹曲機構49は、上記の撓曲機構40によって駆動されるもので、引張り機構45の上側の各リンク体48と底面成形型30の補強板との間に架設され、リンク体48が縮小するとき補強板を引張って底面成形型30を内側に凹曲させ、リンク体48が伸長したとき底面成形型30を押して底面成形型30を成形位置に位置決めする連結リンク体49aを備えて構成されている。
【0007】
そして、この成形装置Saによって、コンクリート桝製品Mを成形するときは、回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を伸長させ、内枠20の側面成形型21及び底面成形型30を成形位置に位置させておく。次に、外枠11を成形位置に位置決めする。この状態で、流動コンクリートを上から流し込む。そして、所要時間養生したならば、脱型する。脱型するときは、回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を縮小させる。これにより、リンク体48が側面成形型21の板材単体22を引張るので、板材単体22が内側に撓ませて曲げられ、側面成形型21が製品Mの内側面5から剥離させられる。また、このとき、底面成形型30の弾性部材が側面成形型21の可撓性板材に連設されているので可撓性板材が内側へ撓んで曲がることによって収縮することになるとともに、リンク体48が縮小するとき連結リンク体49aが補強板を引張るので、底面成形型30が内側に凹曲させられる。そのため、底面成形型30が製品Mの底面から剥離させられる。
【0008】
その後、外枠11を製品Mから離間させ、この状態で、製品Mをクレーン等で引き上げる。この場合、内枠20において、側壁2の内側面5からは側面成形型21が剥離させられており、底壁1からは底面成形型30が剥離させられて、内枠20が縮小しているので、内枠20と製品Mとが製品Mの移動によって摩擦接触する事態がほとんどなくなることから、脱型が無理なく行なわれ、製品Mが容易に取出され、製造効率の向上が図られる。
【0009】
【特許文献1】特開平11−221816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような従来のコンクリート桝製品Mの成形装置Saにあっては、コンクリート桝製品Mの脱型の際であって、引張り機構45のリンク体48で板材単体22を引張った瞬間において、図8に示すように、各板材単体22に生じた引張りに対する抗力の一部が板材単体22のコーナに集中して板材単体22のコーナが内枠20の対角方向外側に膨らむので、内枠20がコンクリート桝製品Mの内側の対角方向に突張るようになる。そのため、最悪の場合には、突張った内枠20により、コンクリート桝製品Mにヒビが入ることがあり、歩留まりが悪くなる虞があるという問題があった。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、板材単体のコーナが内枠の対角方向外側に膨らみ難くして内枠の突張りがほとんど生じないようにしコンクリート桝製品にヒビが入る事態を防止してコンクリート桝製品の歩留まりを向上させたコンクリート桝製品の成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するための本発明のコンクリート桝製品の成形装置は、多角形筒状の側壁を有したコンクリート桝製品を成形する成形装置であって、上記側壁の開口端面を成形する端面型を有した基台と、上記側壁の外側面を成形する外枠と、上記基台に支持され上記側壁の内側面を成形する内枠とを備えたコンクリート桝製品の成形装置において、上記内枠を、上記側壁を構成する複数の内側面を成形する側面成形型を備えて構成し、上記側面成形型を、上記複数の内側面に対応した板材単体を連設して横断面多角形状の筒状に形成し、該板材単体を内側に撓んで曲がることが可能な可撓性材料で形成し、互いに隣接する板材単体のコーナ部であって該板材単体間に架設部材を架設している。
【0013】
この構成の成形装置によって、コンクリート桝製品を成形するときは、先ず、外枠及び内枠を成形位置に位置決めし、外枠と内枠の間に流動コンクリートを上から流し込む。そして、所要時間養生したならば、脱型する。脱型するときは、内枠の側面成形型の可撓性板材を引張って内側に撓ませて曲げれば、側面成形型が製品の側面から剥離させられる。この際、側面成形型の面方向に生じた板材単体の引張りに対する抗力が生じるが、板材単体のコーナ部に設けた架設部材により板材単体のコーナ部の撓曲が制限され、板材単体のコーナ部にかかろうとする抗力が分散させられるようになるので、板材単体を引張った瞬間において、従来に比較して内枠のコーナに板材単体の抗力が集中し難くなり、板材単体のコーナが外側に膨らみ難くなる。そのため、板材単体のコーナの突張りが生じにくくなり、コンクリート桝製品にヒビが入る事態が防止され、コンクリート桝製品の歩留まりを向上させることができる。
そして、内枠と外枠の間のコンクリート桝製品を、例えば、クレーンでつり上げて成形装置から取出す。この場合、板材単体が撓曲させられて、内枠と製品とが製品の移動によって摩擦接触する事態がほとんどなくなることから、脱型が無理なく行なわれ、製品が容易に取出される。また、内枠と製品とが製品の移動によって摩擦接触する事態がほとんどなくなることから、内枠によって製品に損傷を与える事態が防止される。
【0014】
また、必要に応じ、上記側面成形型の板材単体に、該板材単体の中央側が内側に撓んで曲がることを妨げない補強用リブを付設している。
補強用リブがあることから、側面成形型の成形時の強度が確保される。
【0015】
更に、必要に応じ、上記板材単体の中央に上下に亘る切れ目を形成している。
板材単体を引張って板材単体を撓曲させた際に、板材単体に切れ目が形成されているので、板材単体が切れ目で折れ曲がり易いことから、各板材単体にかかる抗力が切れ目にかかるようになり、引張りに対する抗力が板材単体のコーナに集中する事態が防止され、この点においてもほとんど板材単体のコーナが外側に膨らまなくなり、内枠が確実に縮小し、コンクリート桝製品にヒビが入る事態を防止でき、コンクリート桝製品の歩留まりを向上させることができる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、上記板材単体の切れ目の内側に弾性部材を付設している。
コンクリートを内枠と外枠の間に流し入れる際、板材単体の切れ目の内側に付設された弾性部材により切れ目付近が補強され切れ目にかかるコンクリートの圧力が吸収されるので、切れ目が変形してここからコンクリートが内枠の内部に流入する事態が防止される。
【0017】
また、必要に応じ、上記板材単体の中央に上下方向に亘る切除部を形成し、該切除部に外側を型面とする弾性部材を介装している。
板材単体を引張って板材単体を撓曲させた際に、板材単体の切除部に外側を型面とする弾性部材を介装しているので、この切除部に介装された弾性部材で撓曲し易く、引張りに対する抗力が弾性部材にかかるようになり、抗力が板材単体のコーナ部に集中する事態が防止され、この点においてもほとんど板材単体のコーナが外側に膨らまなくなり、内枠が確実に縮小し、コンクリート桝製品にヒビが入る事態が防止でき、コンクリート桝製品の歩留まりを向上させることができる。
【0018】
そしてまた、必要に応じ、上記内枠の側面成形型を内側に撓ませて曲げる撓曲機構を備えている。
撓曲機構により板材単体を撓ませて曲げるので、板材単体とコンクリート桝製品との剥離を容易に行なわせることができる。
【0019】
また、必要に応じ、上記撓曲機構を、上記基台であって内枠の側面成形型の内側に回転可能に立設される回転軸と、該回転軸と側面成形型との間に連係され該回転軸の回転によって該側面成形型を引張って内側に撓ませて曲げる引張り機構とを備えて構成している。
簡易な機構で剥離を行なうことができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコンクリート桝製品の成形装置によれば、互いに隣接する板材単体のコーナ部であって板材単体間に架設部材を架設したので、板材単体を撓曲させる瞬間に、側面成形型の面方向の引張りに対する抗力が生じても、架設部材によりコーナ部の撓曲がある程度制限されてこのコーナ部にかかろうとする抗力が分散させられるようになり、そのため、コンクリート製品に無理な力が作用しにくくなり、コンクリート桝製品にヒビが入る事態を防止でき、コンクリート桝製品の歩留まりを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置について詳細に説明する。尚、上記従来の成形装置と同様のものには同一の符号を付している。
【0022】
図1乃至図4には、本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品Mの成形装置S1を示している。
この成形装置S1で成形されるコンクリート桝製品Mは、底付のものであり四角形状の底壁1及び底壁1に立設された4つの側壁2からなり、開口端面3から底壁1にかけて側壁2の厚さが一定に設定されている。
実施の形態に係る成形装置S1の基本的構成は、図2に示すように、側壁2の開口端面3を成形する端面型14を有した基台10と、側壁2の外側面4を成形する外枠11と、基台10に支持され側壁2の内側面5を成形する内枠20とを備えてなる。成形装置S1は、コンクリート桝製品Mの底壁1を上にしてコンクリート桝製品Mを成形する。
外枠11は、図1乃至図3に示すように、4つの側壁2を夫々成形する複数(実施の形態では4つ)の外枠単体12を有し、各外枠単体12の全部もしくは一部を成形位置とこの成形位置から外側に離間した脱型位置との2位置に移動可能に、ヒンジ13を介する等して開閉できるようにしている。
【0023】
内枠20は、図1乃至図4に示すように、側壁2を構成する複数の内側面5を成形する側面成形型21を備えてなる。側面成形型21は、複数の内側面5に対応した板材単体22を連設して横断面多角形状の筒状に形成されている。板材単体22は、内側に撓んで曲がることが可能な可撓性材料で形成されている。可撓性材料としては、例えば、ステンレス等の可撓性金属板が用いられる。
各板材単体22には、上下方向に延び、所定間隔で溶接され板材単体22が内側に撓んで曲がることを妨げない補強用の複数(実施の形態では4枚)の長方形状の縦リブ23が左右対称に付設されている。縦リブ23は、板材単体22の内側に溶接して設けられている。また、中央側の2枚の各縦リブ23,コーナ側の縦リブ23間には、横リブ24が溶接固定されている。そして、板材単体22は、後述の撓曲機構40によって内側に引張られることによって、内側に撓んで曲げられ、いわば上下方向に延びる樋状に湾曲させられる。
【0024】
また、互いに隣接する板材単体22のコーナ部22aであって板材単体22間には、架設部材26が架設されている。架設部材26は、板状に形成され上下方向に延びるとともに、板材単体22の内側に溶接して設けられている。
また、内枠20は、コンクリート桝製品Mの底壁1の内側面6を成形する底面成形型30を備えて構成されている。底面成形型30は、図1乃至図3に示すように、側面成形型21の板材単体22に連設され、矩形の可撓性板材で構成されている。詳しくは、底面成形型30は、矩形板状に形成されている。また、底面成形型30は、内枠20の内部に設けた、上下方向に延びる複数(実施の形態では4本)の支持柱27及び側面成形型21の4枚の板材単体22の上端縁に載置されるとともに、支持柱27の上側に設けた雌ネジに底面成形型30側からボルトをネジ込んで固着されている。また、底面成形型30の外周縁には、面取りが施されている。支持柱27は、板状の金属により中空の四角柱に形成されている。
【0025】
更に、内枠20の側面成形型21を内側に撓ませて曲げる撓曲機構40が備えられている。撓曲機構40は、図1及び図3に示すように、基台10であって内枠20の側面成形型21の内側に回転可能に立設される回転軸41と、回転軸41と側面成形型21との間に連係され回転軸41の回転によって側面成形型21を引張って内側に撓ませて曲げる引張り機構45とを備えて構成されている。回転軸41は、図3に示すように、基台10の中央に設けた下軸受42と、底面成形型30に垂下した上軸受43との間に回転可能に架設されている。また、撓曲機構40は、下軸受42の下に回転軸41に同軸に設けられるプーリ35と、外枠11の外部の基台10に設けられるハンドル36と、基台10の内部にハンドル36の回動軸37に同軸に設けられるプーリ38と、回転軸41のプーリ35及び回動軸37のプーリ38に架け渡されるベルト39とを備えた構成とし、回動軸37はハンドル36の回動操作により正逆回転させられる。
【0026】
引張り機構45は、回転軸41に形成された雄ネジ部46(図3中上側が左ネジ,下側が右ネジになっている)と、雄ネジ部46に螺合する雌ネジ部47aが形成され回転軸41の正逆回転によって上下方向に進退動する移動体47と、側面成形型21の板材単体22の中央に突設される取付片29に連係され移動体47の移動によって伸長または縮小するリンク体48とを備えて構成されている。移動体47は、上下に一対設けられている。各移動体47には、リンク体48を取付けるための一対の突設片32が等角度(90度)関係で4組設けられている。リンク体48の突設片32の取付けは、突設片32間にリンク体48を位置させ、このリンク体48及び突設片32にピン33を挿通してなされる。取付片29は、板材単体22の内側に一対設けられている。また、この取付片29へのリンク体48の取付けは、取付片29間にリンク体48を位置させ、このリンク体48とともに取付片29にピン34を連通してなされる。
そして、ハンドル36がいずれか一方に回動させられたとき、回転軸41がいずれか一方に回転させられ、移動体47を介してリンク体48が縮小して側面成形型21を引張って内側に撓ませて曲げ、回動軸37がいずれか他方に回動させられたとき、回転軸41がいずれか他方に回転させられ、移動体47を介してリンク体48が伸長して側面成形型21を成形位置に位置させる。
【0027】
従って、本発明の実施の形態に係る成形装置S1によって、コンクリート桝製品Mを成形するときは、以下のようにして行なう。先ず、図1,図3及び図4(a)に示すように、ハンドル36を回して回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を伸長させ、側面成形型21を成形位置に位置させておく。次に、外枠11を成形位置に位置決めする。この状態で、外枠11と内枠20の間に、必要であれば鉄筋を内装して、流動コンクリートを上から流し込む。この場合、側面成形型21は、補強用の縦リブ23と中央側と側端側の縦リブ23間に架け渡される横リブ24で押えられているので、成形時の強度が確保される。更に、底面成形型30は、支持柱27で支持されているのでこの底面成形型30も成形時の強度が確保される。
【0028】
そして、この状態で、所要時間養生し、その後、脱型する。
脱型するときは、図3及び図4(b)に示すように、ハンドル36を回して回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を縮小させる。これにより、リンク体48が側面成形型21の板材単体22を引張るので、板材単体22が内側に撓ませて曲げられ、側面成形型21が製品Mの内側面5から剥離させられる。この際、側面成形型21の面方向に生じた板材単体22の引張りに対する抗力が生じるが、板材単体22のコーナ部22aに設けた架設部材26により板材単体22のコーナ部22aの撓曲が制限され、板材単体22のコーナにかかろうとする抗力が分散させられるようになる。これにより、板材単体22を引張った瞬間において、従来に比較して抗力が内枠20のコーナに集中し難くなり、コーナが内枠20の対角方向外側に膨らみ難くなる。そのため、板材単体22のコーナの突張りが生じ難くなり、コンクリート桝製品Mにヒビが入る事態が防止され、コンクリート桝製品Mの歩留まりを向上させることができる。
【0029】
その後、図2及び図3に示すように、外枠11を製品から離間させ、この状態で、製品Mをクレーン等で引き上げる。この場合、内枠20において、内枠20が縮小して側壁2の内側面5からは側面成形型21が剥離させられているので、内枠20と製品Mとが製品Mの移動によって摩擦接触する事態がほとんどなくなり、脱型が無理なく行なわれ、製品Mが容易に取出される。また、内枠20とコンクリート桝製品Mとが製品Mの移動によって摩擦接触する事態がほとんどなくなることから、内枠20によって製品Mに損傷を与える事態が防止される。
【0030】
図5には、別の実施の形態に係る成形装置S2を示している。この成形装置S2は、板材単体22の中央に切れ目25が形成されている。また、切れ目25の内側には、弾性部材50が付設されている。弾性部材50は、保持部材54により覆われて保持されている。また、引張り機構45のリンク体48の取付けは、上記のものと異なり、リンク体48の取付片29にボルト51を挿通し、このボルト51にナット52をネジ止めして取付けられている。また、ボルト51には、ボルト頭と取付片29間及びナット52と取付片29間に、夫々コイルスプリング53が挿通されている。コイルスプリング53は、取付片29同士を近接する方向に付勢している。その他の構成は上記と同様である。
【0031】
従って、この実施の形態に係る成形装置S2によって、コンクリート桝製品Mを成形するときは、上記の実施の形態の成形装置S1と同様に、ハンドル36を回して回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を伸長させ、側面成形型21を成形位置に位置させておく。この際、コイルスプリング53は、取付片29同士を近接する方向に付勢しているので、板材単体22の切れ目25が閉じるようになる。
そして、流動コンクリートを内枠20と外枠11の間に流し入れる。この際、板材単体22の切れ目25の内側に弾性部材50が付設されていることから、弾性部材50により切れ目25付近が補強され切れ目25に係るコンクリートの圧力を弾性部材50が吸収するので、板材単体22の切れ目25が変形してここから流動コンクリートが内枠20の内部に流入する事態が防止される。そして、この状態で、所要時間養生し、その後、回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を縮小させ板材単体22を引張る。この場合、板材単体22に切れ目25が形成されているので、板材単体22が切れ目25で折れ曲がり易いことから、各板材単体22にかかる引張りに対する抗力が切れ目25にかかるようになり、抗力が板材単体22のコーナに集中する事態が防止され、この点においてもほとんど板材単体22のコーナが外側に膨らまなくなり、内枠20が確実に縮小し、コンクリート桝製品Mにヒビが入る事態を防止でき、コンクリート桝製品Mの歩留まりを良くすることができる。
その後、外枠11をコンクリート桝製品Mから離間させ、この状態で、製品Mをクレーン等で引き上げる。
その他の作用効果は、上記実施の形態のものと同様である。
【0032】
また、図6には、更に別の実施の形態に係る成形装置の板材単体22の中央を示している。この成形装置は、板材単体22の中央に上下に亘る切除部55を形成し、切除部55に外側を型面とする弾性部材56を介装している。この弾性部材56の内側には、上下方向に延びるロッド57が設けられている。また、縦リブ23には、縦リブ23に平行に設けられる平面状の基端部58及びこの基端部58に立設されるとともに弾性部材56に埋設されて弾性部材56を補強する埋設部59を有した断面L字状の補強部材60が設けられている。補強部材60は、その基端部58が縦リブ23にボルト及びナットで締め付けられて設けられている。
リンク体48は、板材単体22の中央の2つの縦リブ23と移動体47に連係されている。リンク体48の縦リブ23への取付けは、板材単体22の中央の2つの縦リブ23の間にリンク体48を位置させ、縦リブ23及び補強部材60の基端部58とともにリンク体48にピン61を連通してなされる。また、リンク体48の先端はロッド57に当接し、ロッド57を支持している。ピン61には、リンク体48と各縦リブ23間に、コイルスプリング62が挿通されている。コイルスプリング62は、縦リブ23同士を近接させる方向に付勢している。
その他の構成は上記の実施の形態のものと同様である。
【0033】
この実施の形態に係る成形装置を用いてコンクリート桝製品Mを成形するときは、上記の実施の形態の成形装置と同様に、先ず、ハンドル36を回して回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を伸長させ、側面成形型21を成形位置に位置させておく。そして、流動コンクリートを内枠20と外枠11の間に流し入れる。そして、この状態で、所要時間養生し、その後、回転軸41を適宜回転させ、移動体47を介してリンク体48を縮小させ、板材単体22を引張る。この際、板材単体22の切除部55に外側を型面とする弾性部材56を介装しているので、板材単体22は切除部55に介装された弾性部材56で撓曲し易く、引張りに対する抗力が弾性部材56にかかるようになり、抗力が板材単体22のコーナ部22aに集中する事態が防止され、この点においてもほとんど板材単体22のコーナが外側に膨らまなくなり、内枠20が確実に縮小し、コンクリート桝製品Mにヒビが入る事態が防止され、コンクリート桝製品Mの歩留まりを向上させることができる。その後、外枠11を製品Mから離間させ、この状態で、製品Mをクレーン等で引き上げる。
その他の作用,効果は上記実施の形態のものと同様である。
【0034】
尚、上記実施の形態において、撓曲機構40の構成は、上述した機構に限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。
尚また、上記実施の形態においては、本発明を、断面四角形状のコンクリート桝製品Mの成形装置に適用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、断面が六角形や八角形等の多角形状のコンクリート桝製品を成形する成形装置にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置を示す横断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置を、この成形装置が成型するコンクリート桝製品とともに示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置の内枠の作用を示す横断面図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置を示す横断面図である。
【図6】本発明の更に別の実施の形態に係るコンクリート桝製品の成形装置の要部を示す横断面図である。
【図7】従来のコンクリート桝製品の成形装置の一例を示す図である。
【図8】従来のコンクリート桝製品の成形装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
S1,S2 成形装置
M コンクリート桝製品
10 基台
11 外枠
12 外枠単体
13 ヒンジ
14 端面型
20 内枠
21 側面成形型
22 板材単体
22a コーナ部
23 縦リブ
24 横リブ
25 切れ目
26 架設部材
27 支持柱
29 取付片
30 底面成形型
32 突設片
33,34,61 ピン
35,38 プーリ
36 ハンドル
37 回動軸
39 ベルト
40 撓曲機構
41 回転軸
42 下軸受
43 上軸受
45 引張り機構
46 雄ネジ部
47 移動体
47a 雌ネジ部
48 リンク体
50,56 弾性部材
51 ボルト
52 ナット
53,62 コイルスプリング
54 保持部材
55 切除部
57 ロッド
58 基端部
59 埋設部
60 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形筒状の側壁を有したコンクリート桝製品を成形する成形装置であって、上記側壁の開口端面を成形する端面型を有した基台と、上記側壁の外側面を成形する外枠と、上記基台に支持され上記側壁の内側面を成形する内枠とを備えたコンクリート桝製品の成形装置において、
上記内枠を、上記側壁を構成する複数の内側面を成形する側面成形型を備えて構成し、
上記側面成形型を、上記複数の内側面に対応した板材単体を連設して横断面多角形状の筒状に形成し、該板材単体を内側に撓んで曲がることが可能な可撓性材料で形成し、互いに隣接する板材単体のコーナ部であって該板材単体間に架設部材を架設したことを特徴とするコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項2】
上記側面成形型の板材単体に、該板材単体の中央側が内側に撓んで曲がることを妨げない補強用リブを付設したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項3】
上記板材単体の中央に上下に亘る切れ目を形成したことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項4】
上記板材単体の切れ目の内側に弾性部材を付設したことを特徴とする請求項3記載のコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項5】
上記板材単体の中央に上下方向に亘る切除部を形成し、該切除部に外側を型面とする弾性部材を介装したことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項6】
上記内枠の側面成形型を内側に撓ませて曲げる撓曲機構を備えたことを特徴とする請求項1,2,3または4記載のコンクリート桝製品の成形装置。
【請求項7】
上記撓曲機構を、上記基台であって内枠の側面成形型の内側に回転可能に立設される回転軸と、該回転軸と側面成形型との間に連係され該回転軸の回転によって該側面成形型を引張って内側に撓ませて曲げる引張り機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のコンクリート桝製品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−15599(P2006−15599A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195486(P2004−195486)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000154495)株式会社福井鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】