説明

コンクリート用再生骨材製造方法及び装置

【課題】加熱処理、及び浸水処理を要することなく粗骨材を製造することができるコンクリート用再生骨材製造方法及び装置の提供。
【解決手段】コンクリート塊から粗骨材を再生するコンクリート用再生骨材製造方法において、コンクリート塊を破砕するステップS1の1次破砕処理と、この1次破砕処理で破砕された第1破砕物を篩にかけ、粗骨材用素材を得るステップS2の1次篩処理と、この1次篩処理で得られた粗骨材用素材を、この粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度に保持された冷却媒体、例えば−200℃に保持された液体窒素中に浸すステップS6の冷却処理と、この冷却処理によって冷却された上記粗骨材用素材を破砕するステップS7の2次破砕処理と、この2次破砕処理で破砕された第2破砕物を篩にかけ、粗骨材を得るステップS8の2次篩処理とを含むようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の壁の破壊等によって生じるコンクリート塊から、コンクリートを作る材料となり得る砂利、すなわち粗骨材を再生するコンクリート用再生骨材製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の解体によって発生するコンクリート塊は、例えば破砕機による破砕処理がなされ、この破砕処理によって生じた破砕物は比較的付加価値が低い道路舗装用路盤材等に活用される。今後は、高度成長期に建造されたコンクリート構造物が一斉に寿命を迎えることから、上述したように解体によって発生するコンクリート塊は年々増加するものと予測される。このような状況から、従来、コンクリート塊からコンクリートを作る材料となり得る砂利、すなわち粗骨材を再生する技術が、特許文献1に提案されている。
【0003】
この特許文献1に示される従来技術は、既存のコンクリート構造物の解体によって発生したコンクリート塊を、まず加熱乾燥機で約200℃〜400℃に加熱し、この加熱乾燥機によって乾燥させたコンクリート塊を、水を蓄えた浸水装置に投入する処理が行われる。その後、取り出されて凍結装置に入れられて凍結する処理が行われる。このようにして組織が脆弱化したコンクリート塊は、分離粉砕装置に投入されて粉砕され、さらに分別処理機にかけられる。
【0004】
この分別処理機によって、コンクリート塊が、砂利すなわち粗骨材と、砂及びセメント粉を含むモルタル分とに分別される。上述のように製造された粗骨材は、コンクリートを作るための材料として再利用が可能となる。
【特許文献1】特開2000−483公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、コンクリート塊を加熱する加熱処理と、加熱乾燥したコンクリート塊を水に浸す浸水処理とを必要としていることから、粗骨材の製造工数が増加し、これによって製作費が高くなる懸念がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、加熱処理、及び浸水処理を要することなく粗骨材を製造することができるコンクリート用再生骨材製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、コンクリート塊から粗骨材を再生するコンクリート用再生骨材製造方法において、上記コンクリート塊を破砕する1次破砕処理と、この1次破砕処理で破砕された第1破砕物を篩にかけ、粗骨材用素材を得る1次篩処理と、この1次篩処理で得られた粗骨材用素材を、この粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度に保持された冷却媒体中に浸す冷却処理と、この冷却処理によって冷却された上記粗骨材用素材を破砕する2次破砕処理と、この2次破砕処理で破砕された第2破砕物を篩にかけ、粗骨材を得る2次篩処理とを含むことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明のコンクリート用再生骨材製造方法は、1次破砕処理、1次篩処理を経て得られた粗骨材用素材が、冷却処理によって脆化され、2次破砕処理によって破砕される。この2次破砕処理で得られた第2破砕物が、さらに2次篩処理で篩にかけられ、砂、セメント粉を含むモルタル分が除かれて所望の粗骨材を得ることができる。すなわち、加熱処理、及び浸水処理を要することなく、粗骨材を製造でき、この粗骨材の製造工数を少なく抑えることができる。
【0009】
また、本発明のコンクリート用再生骨材製造方法は、上記発明において、上記冷却処理の上記冷却媒体が液体窒素であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のコンクリート用再生骨材製造方法は、上記発明において、上記1次篩処理が、第1段篩にかけた際にこの第1段篩上に残された第1破砕物を除く第1段篩処理と、この第1段篩処理において第1段篩を通過した第1破砕物を、上記第1段篩よりも目の細かい第2段篩にかけた際に、この第2段篩を通過した第1破砕物を除く第2段篩処理とから成り、上記第2段篩処理において上記第2段篩上に残された第1破砕物を上記粗骨材用素材とすることを特徴としている。
【0011】
また、本発明のコンクリート用再生骨材製造方法は、上記発明において、上記粗骨材用素材は、2.5mmより大きく、上記コンクリート塊に用いられている粗骨材の最大粒径+5mm以下の大きさであることを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、コンクリート塊を破砕する破砕機と、この破砕機で破砕された破砕物から粗骨材を得る篩とを備えたコンクリート用再生骨材製造装置において、上記コンクリート塊を破砕する第1破砕機と、この第1破砕機で破砕された第1破砕物から粗骨材用素材を得る1次篩と、この1次篩で得られる粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度の冷却媒体が収容され、上記1次篩で得られた粗骨材用素材が浸される冷却槽と、この冷却槽によって冷却された上記粗骨材用素材を破砕する第2破砕機と、この第2破砕機で破砕された第2破砕物から粗骨材を得る2次篩とを備えたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明のコンクリート用再生骨材製造装置は、第1破砕機、1次篩による処理を経て得られた粗骨材用素材が、冷却槽において脆化され、第2破砕機によって破砕する。この第2破砕機で得られた第2破砕物が、さらに2次篩にかけられ、砂、セメント粉を含むモルタル分が除かれて所望の粗骨材を得ることができる。すなわち、加熱処理、及び浸水処理を要することなく、粗骨材を製造でき、この粗骨材の製造工数を少なく抑えることができる。
【0014】
また、本発明のコンクリート用再生骨材製造装置は、上記発明において、上記冷却槽に収容される上記冷却媒体が液体窒素であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明のコンクリート用再生骨材製造装置は、上記発明において、上記1次篩が、第1段篩と、この第1段篩よりも目の細かい第2段篩とから成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンクリート用再生骨材製造方法及び装置は、1次破砕処理、1次篩処理を経て得られた粗骨材素材を冷却媒体中に浸す冷却処理により脆化させ、この脆化させた粗骨材素材に2次破砕処理、2次篩処理を施して砂利、すなわち粗骨材を製造するようにしてあることから、加熱処理、及び浸水処理を要することなく粗骨材を製造でき、従来に比べて粗骨材の製造工数を少なく抑えることができ、これに伴って粗骨材の製造費を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明に係るコンクリート用再生骨材製造方法、及び装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係るコンクリート用再生骨材製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0019】
この図1に示すように、本実施形態に係るコンクリート用再生骨材製造方法は、はじめに、ジョークラッシャやインパクトクラッシャ等の第1破砕機を用いてコンクリート塊を破砕するステップS1の1次破砕処理を実施する。
【0020】
次にステップS2に移り、1次破砕処理で破砕されて得られた第1破砕物を篩にかけ、粗骨材を得る1次篩処理を実施する。この1次篩処理は、第1段篩にかけた際にこの第1段篩上に残された第1破砕物を除く第1段篩処理と、この第1段篩処理において第1段篩を通過した第1破砕物を、上記第1段篩よりも目の細かい第2段篩にかけた際に、この第2段篩を通過した第1破砕物を除く第2段篩処理とから成っている。
【0021】
すなわち、ステップS3に示すように、第1破砕物を例えば25mmの目の第1段篩にかけた際に、第1段篩上に残された25mmより大きい第1破砕物は、ステップS1に戻されて再びこのステップS1の1次破砕処理が実施される。なお、上述した第1段篩の25mmの目は、コンクリート塊に用いられている粗骨材の最大粒径が20mmの場合に、その最大粒径20mm+5mmとして設定したものである。第1段篩を通過した第1破砕物は、ステップS4に示すように、第1段篩よりも目の細かい、例えば、2.5mmの目の第2段篩にかけられる。このステップS4の第2段篩を通過した2.5mm以下の第1破砕物は、ステップS5に示すように、微粒粉として集められる。この微粒粉は、細骨材を形成する砂と、セメント粉、すなわちモルタル分で構成されている粉粒体である。また、ステップS4の第2段篩上に残された第1破砕物は、粗骨材用素材として集められる。この粗骨材用素材は、2.5mmより大きく、25mm以下の大きさである。
【0022】
次に、ステップS6に示すように、この粗骨材用素材を冷却媒体が収容された冷却槽に投入し、粗骨材用素材の表面を速やかに冷却する冷却処理が実施される。冷却槽に収容される冷却媒体は、上述した第2段篩で得られる2.5mmより大きく、25mm以下の粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度のもの、例えば約−200℃に保持された液体窒素である。
【0023】
粗骨材用素材の表面が冷却槽の液体窒素で冷却されると、この粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し、微細なクラックが発生する。つまり、この粗骨材用素材が脆化する。
【0024】
次に、ステップS7に示すように、このように脆化した粗骨材用素材を、ボールミル、ロッドミル、一軸スクリュー磨砕機、ロールクラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、ジョークラッシャ等の第2破砕機を用いて破砕する2次破砕処理が実施される。
【0025】
次に、ステップS8に示すように、2次破砕処理によって得られた第2破砕物を、例えば目が2.5mmの篩にかける2次篩処理が実施される。すなわち、ステップS9に示すように、篩にかけた際に、篩を通過した2.5mm以下の第2破砕物は、ステップS5に示すように、微粒粉として集められる。微粒粉については上述のとおりである。また、篩上に残された第2破砕物が、粗骨材、すなわちモルタル分の多くが取り除かれた砂利となる。このようにして得られる粗骨材は、2.5mmよりも大きく、25mm以下の大きさであり、再びコンクリートを作る材料として活用可能である。
【0026】
なお、本実施形態に係るコンクリート用再生骨材製造方法に使用される装置は、図示しないが、上述したようにステップS1の1次破砕処理を実施する第1破砕機と、ステップS2の1次篩処理を実施する25mmの目の第1段篩、及び2.5mmの目の第2段篩と、ステップS6の冷却処理で用いられる冷却媒体、例えば−200℃の液体窒素が収容される冷却槽と、ステップS7の2次破砕処理を実施する第2破砕機と、ステップS8の2次篩処理に用いられる例えば2.5mmの篩とによって構成されている。
【0027】
このように構成した本実施形態に係るコンクリート用再生骨材製造方法、及び装置によれば、上述したようにステップS1の1次破砕処理、ステップS2の1次篩処理を経て得られた2.5mmよりも大きく、25mm以下の大きさの粗骨材用素材が、ステップS6の冷却処理によって脆化され、ステップS7の2次破砕処理で破砕される。この2次破砕処理で得られた第2破砕物が、さらにステップS8の2次篩処理で篩にかけられ、砂、セメント粉を含むモルタル分が除かれて所望の2.5mmよりも大きく、25mm以下の再生用の粗骨材を得ることができる。すなわち、コンクリート塊、あるいはこのコンクリート塊から生成された第1破砕物、粗骨材用素材、第2破砕物を加熱する加熱処理、水に浸す浸水処理を要することなく粗骨材を製造でき、この粗骨材の製造工数を少なく抑えることができる。これに伴って製造費を安くすることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、上記したステップS2に示すように、1次篩処理において、目が25mmの第1段篩と、目が2.5mmの第2段篩とを用いたが、このステップS2の1次篩処理を目が25mmの篩のみを用いて行ってもよく、また、目が2.5mmの篩のみを用いて行ってもよい。すなわち、1つの篩のみによる処理としてもよい。さらに、目が25mmの篩と、目が2.5mmの篩の他に、目が2.5mmと25mmの間の大きさとなる別の篩も用いた3段篩処理としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るコンクリート用再生骨材製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート塊から粗骨材を再生するコンクリート用再生骨材製造方法において、
上記コンクリート塊を破砕する1次破砕処理と、
この1次破砕処理で破砕された第1破砕物を篩にかけ、粗骨材用素材を得る1次篩処理と、
この1次篩処理で得られた粗骨材用素材を、この粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度に保持された冷却媒体中に浸す冷却処理と、
この冷却処理によって冷却された上記粗骨材用素材を破砕する2次破砕処理と、
この2次破砕処理で破砕された第2破砕物を篩にかけ、粗骨材を得る2次篩処理とを含むことを特徴とするコンクリート用再生骨材製造方法。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記冷却処理の上記冷却媒体が液体窒素であることを特徴とするコンクリート用再生骨材製造方法。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の発明において、
上記1次篩処理が、
第1段篩にかけた際にこの第1段篩上に残された第1破砕物を除く第1段篩処理と、
この第1段篩処理において第1段篩を通過した第1破砕物を、上記第1段篩よりも目の細かい第2段篩にかけた際に、この第2段篩を通過した第1破砕物を除く第2段篩処理とから成り、
上記第2段篩処理において上記第2段篩上に残された第1破砕物を上記粗骨材用素材とすることを特徴とするコンクリート用再生骨材製造方法。
【請求項4】
上記請求項3記載の発明において、
上記粗骨材用素材は、2.5mmより大きく、上記コンクリート塊に用いられている粗骨材の最大粒径+5mm以下の大きさであることを特徴とするコンクリート用再生骨材製造方法。
【請求項5】
コンクリート塊を破砕する破砕機と、この破砕機で破砕された破砕物から粗骨材を得る篩とを備えたコンクリート用再生骨材製造装置において、
上記コンクリート塊を破砕する第1破砕機と、
この第1破砕機で破砕された第1破砕物から粗骨材用素材を得る1次篩と、
この1次篩で得られる粗骨材用素材に含まれる水分が凍結し得る温度に保持された冷却媒体が収容され、上記1次篩で得られた粗骨材用素材が浸される冷却槽と、
この冷却槽によって冷却された上記粗骨材用素材を破砕する第2破砕機と、
この第2破砕機で破砕された第2破砕物から粗骨材を得る2次篩とを備えたことを特徴とするコンクリート用再生骨材製造装置。
【請求項6】
上記請求項5記載の発明において、
上記冷却槽に収容される上記冷却媒体が液体窒素であることを特徴とするコンクリート用再生骨材製造装置。
【請求項7】
上記請求項5または6記載の発明において、
上記1次篩が、第1段篩と、この第1段篩よりも目の細かい第2段篩とから成ることを特徴とするコンクリート用再生骨材製造装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−186393(P2007−186393A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7512(P2006−7512)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】