説明

コンクリート用化粧型枠部材、及びそれを構成する合成樹脂シートの製造方法

【課題】 コンクリートの打設時に型枠として機能し、施工や撤去が容易であり、リサイクルが可能であり、曲面の壁体にも適用でき、さらに打設コンクリートの表面に途切れのない目地様意匠を施すことができるコンクリート用化粧型枠部材を提供する
【解決手段】
コンクリート用化粧型枠部材1は、型枠本体2と、当該型枠本体の表面に配設された合成樹脂シート3とを備えてなり、合成樹脂シートには、前記型枠本体側とは反対側に膨出する凸形状が付形され、凸形状の内部には、合成樹脂製圧潰防止部材8が装填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設時に型枠の一部として機能し、施工や撤去が容易であり、リサイクルが可能であり、曲面の壁体面に途切れのない目地様意匠を施すことができるコンクリート用化粧型枠部材、および、たとえばロールから繰り出された合成樹脂シート材に複数の意匠を容易に付与できる前記コンクリート用化粧型枠部材を構成する合成樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの建築物のコンクリート壁体面に縦溝又は横溝の意匠を形成するために、発泡ポリスチレンや発泡ポリプロピレンなどの合成樹脂発泡体からなるコンクリート用化粧型枠部材(以下、「化粧型枠部材」とも言う)を使用する技術が知られている。
この技術を用いて、たとえば縦目地様意匠(図書館や博物館等によく見られる縦溝が繰り返し配列されて目地のように見える意匠(図7参照))を壁体面に形成する場合、縦目地様意匠の凹凸形状やピッチ(コンクリート表面に設けられる溝と溝の間隔)が変わるたびに、金型を新たに製作して、化粧型枠部材を製造することになる。このため、現実にはコストの面から、少量多品種な意匠変化の要望に応じられないことが多い。
【0003】
このようなことから、現在では、合板表面に面木(押出成形や熱線カット等で製造されたスチレンなど)を取り付け、これを化粧型枠部材として用いる方法(「合板に面木を取り付ける方法」と言う)が採用されている。
ところが、この「合板に面木を取り付ける方法」では、現場で職人が前記ピッチなどの寸法を測って合板表面に面木を接着して作成されるため、寸法のずれが生じ易い。従って、現場における職人の手間がかかるとともに、工期が長くなる。
【0004】
また、スチレン製面木は、種々の形状に加工しやすく、同一形状を楽に成形できるというメリットがあるが、スチレン製面木を合板表面に取り付けた場合には、スチレンのセルの形状や凹凸がコンクリートに転写され、外観品質に劣る場合があるうえ、スチレン製面木とコンクリートとが剥離しにくいといった不都合がある。
【0005】
また、前述の合成樹脂発泡体からなる化粧型枠部材を使用した場合には、使用済みとなったスチレン製面木が欠け易いし合板から取り外しにくい等の理由から反復して使用することは現実的でない。さらに、スチレンの廃棄処理には、コストがかかるという問題もある。
【0006】
目地様意匠に重要なことは、コンクリート打設後の溝の繰り返しに途切れがないこと(一定の溝が上下又は左右等につながっていること)であるが、上記のような合板上に面木を接着した型枠では、合板と隣の合板とのつなぎ目にはどうしても隙間が生じてしまう。このため、上記隙間に打設されたコンクリートのノロがしみ出すことが多く、できあがりの壁体面の目地様意匠に合板同士のつなぎ目の線が太く生じ、溝の繰り返しに途切れが生じてしまう。従って、この途切れをなくすためには、後加工(切削等の処理)が必要となり、さらに工期が長くなる。
【特許文献1】特開2001−277227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、熱可塑性樹脂からなるカバーシート(例えば、特開2001−277227参照)が、先提案技術として知られている。
この先提案の技術では、熱可塑性の合成樹脂シート(カバーシート)を予め型枠本体の意匠形状に合わせて成形した後、型枠本体の意匠面などを被覆することにより、打設後のコンクリートから化粧型枠を容易に剥離できるようにしている。
【0008】
この合成樹脂シートで化粧型枠部材を被覆する着想を、前述した従来の合板に面木を取り付ける方法に応用した場合、スチレンのセルの形状や凹凸がコンクリートに転写され外観品質が劣るといった問題や、スチレンとコンクリートとの剥離がしにくいといった問題は改善できるが、凸形状のピッチが変わるだけで新しい圧潰防止部材を作成しなくてはならないという問題は解消されない。さらに、溝のつながりに途切れをなくすための後加工(切削等の処理)に起因して工期が長くなるという問題も解消されない。
【0009】
本発明は、このような手間と時間のかかる面木を用いずに、凸形状を付形した合成樹脂シートを合板に配設して施工する方法である。しかし、一度にどれくらいの高さのコンクリートを打設するのか、凸形状の大きさはどれくらいかによって、コンクリートの打設圧により凸形状が潰れることも考えられる。この場合は、目地様意匠形成部分(コンクリート表面に設けられる溝の部分、すなわち合成樹脂シートの凸形状の部分)と合板との間の空洞に圧潰防止部材を装填することにより凸形状の圧潰を回避することができる。
【0010】
本発明は、コンクリートの打設時に型枠として機能し、施工や撤去が容易であり、リサイクルが可能であり、曲面の壁体にも適用でき、さらに打設コンクリートの表面に途切れのない目地様意匠を施すことができるコンクリート用化粧型枠部材を提供することを課題とする。
【0011】
本発明は、たとえばロールから繰り出された合成樹脂シート材に、目地様意匠形成用の凸形状を自在に付形できる、前記コンクリート用化粧型枠部材を構成する合成樹脂シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前述した従来の合成樹脂発泡体からなる化粧型枠部材や、面木を取り付けた合板に代えて、化粧型枠部材を以下のように構成することで、本発明の「コンクリート用化粧型枠部材」をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明の化粧型枠部材は、複数が連接されて使用される、型枠本体と当該型枠本体の表面に配設された合成樹脂シートとを備えてなる化粧型枠部材であって、この合成樹脂シートには、型枠本体側とは反対側に膨出する凸形状(溝形成部)が付形されていることを特徴とする。また、凸形状の内部に合成樹脂製の圧潰防止部材を装填することもできる。
【0014】
本発明の化粧型枠部材では、型枠本体側とは反対側の面に、セメントを主材とする無機塗料を塗付することができる。
【0015】
本発明の化粧型枠部材では、合成樹脂シートは、隣接する他のコンクリート用化粧型枠部材を構成する合成樹脂シートとのつなぎ目が、型枠本体と当該他のコンクリート用化粧型枠部材を構成する型枠本体とのつなぎ目に合致しない位置で、型枠本体の表面に配設することができる。
【0016】
また、本発明者等は、本発明の化粧型枠部材を安価に製造する方法について検討を重ねた結果、特殊な真空成形方法により、形状やピッチなどが異なる種々の凸形状が付形された合成樹脂シート材が得られるとの結論を得て、本発明をなすに至った。
【0017】
すなわち、本発明の合成樹脂シートの製造方法は、上述したコンクリート用化粧型枠部材を構成するもので、真空成形機本体の真空引き面上に、複数の凸形状付形用型部材を着脱自在に取り付け、凸形状付形用型部材の上から、凸形状が付形されていない合成樹脂シート材を被せて真空引きを行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の合成樹脂シートの製造方法では、合成樹脂シート材を、真空成形機本体上に被せて真空引きを行う際に、凸形状付形用型部材を真空引き面上で適宜移動させることにより、合成樹脂シート材に付形される凸形状間の間隔(ピッチ)を調整できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化粧型枠部材を用いることで、途切れのない高品質の目地様意匠を容易に形成することができ、また、円柱などの曲面にも簡単に縦目地様意匠等の目地様意匠を形成することができる。そのうえ、本発明の化粧型枠部材は、脱型作業も容易なので工期の短縮化をもたらし、また、両面接着テープ等で型枠本体と合成樹脂シート、必要に応じて圧潰防止部材を結合できるので、使用後は剥離して再利用することができ処理コストも削減できる。
【0020】
また、本発明の合成樹脂シートの製造方法によれば、凸形状付形用型部材の形状や凸形状付形用型部材間の間隔(ピッチ)を変更することによって、種々の目地様意匠に対応することができ、様々な要望の意匠に応じた化粧型枠部材を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、目地様意匠形成用の本発明の化粧型枠部材の実施形態を図面により説明する。なお、本実施形態では縦目地様意匠を例に説明するが、横目地様意匠等についても適用できる。
図1は、化粧型枠部材の説明図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)における矢視A−Aの切断面である。なお、(A)では、説明の便宜上、(B)において示したコンクリート200および向かい合うもう一方の型枠300の図示は省略してある。また、図1はコンクリートの片面のみに目地様意匠を設ける場合を示している。
【0022】
図1(A),(B)に示すように、化粧型枠部材1は、型枠本体2と、型枠本体2の表面に配設された合成樹脂シート3と圧潰防止部材4とからなる。合成樹脂シート3には、型枠本体2側とは反対側に膨出する凸形状(溝形成部)が付形されている。また、合成樹脂製の圧潰防止部材4は、棒状の発泡体からなるもので、細長い凸形状の内部に装填されている。
また、合成樹脂シート3の表面3aと向かい合うもう一方の型枠300(図1(B)参照)との間に、コンクリート200が打設される。
【0023】
このような構成により、合成樹脂シート3における溝形成部以外の平滑面は、型枠本体2に直に接触するので、当該接触面の平滑性は保持され得る。また、コンクリート固化後の、合成樹脂シート3の脱型の際には、合成樹脂シート3とコンクリート200との剥離性は良好であり、脱型作業が容易である。
【0024】
本実施形態では、型枠本体2は、合板を使用している。型枠本体2は、適宜サイズ(たとえば、1800mm×900mm、900mm×900mm等)とすることができる。
【0025】
合成樹脂シート3は、たとえばロール(非図示)から繰り出される熱可塑性の合成樹脂シート材に、真空成形により凸形状を付形してなるもので、該凸形状により打設したコンクリート表面に所望の溝が形成され、全体として目地様意匠となる。
合成樹脂シート3に使用される合成樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。本実施形態では、薄く軽量でかつ安価なポリスチレンを使用している。
【0026】
合成樹脂シート3には、後述する真空成形方法によって凸形状が付形されている。合成樹脂シート3は、コンクリート200表面に所望の目地様意匠を形成できればよく、また円柱などの曲面にも対応することを考慮すると、厚さは0.3〜1.5mm程度が好ましいが、使用状態等で異なる。
例えば、円柱などの曲面状態で、あるいは、圧潰防止部材と用いる場合には、厚さ0.3〜0.7mm程度、引張強度200〜600kgf/cm2、伸び率が2〜50%好ましくは15〜50%程度の物性が要求される。
また、リブのピッチが30mm程度で、リブの高さが20mm程度の場合は、厚さ1mm程度、引張強度200kgf/cm2あれば、コンクリート圧力4.0t/m2にも耐えることができ、圧潰防止部材を必要としない場合もある。
【0027】
本実施形態では、合成樹脂シート3の表面3a上に、セメントを主材とする無機塗料(コンクリートとの馴染み性がよい塗料)5が塗付されている。
この場合、合成樹脂シート3に付形された凸形状により、打設されたコンクリート200に目地様意匠が形成されると同時に、合成樹脂シート3の表面3a上に形成されている塗布層(セメントを主体とする無機塗料の層)5がコンクリート200側に転写される。
【0028】
この無機塗料には、コンクリートへの接着性、コンクリートへの転写性を損なわない範囲で、天然石より細かい破砕細石やセラミックス粒などを配合することもでき、これらを配合する場合は、セメント100重量部に対し、0.1〜20重量部とするのが好ましい。
【0029】
圧潰防止部材4は、コンクリート200の打設圧による合成樹脂シート3の凸形状の潰れを回避するために、凸形状の内部に装填され、バックアップ材として機能する。従って、圧潰防止部材4は、合成樹脂シート3の凸形状(溝形成部)に合致した形状に成形されていることが好ましい。
圧潰防止部材4の長さは、化粧型枠部材1の縦寸法であり、幅については、特に限定されないが、通常300〜2000mm程度とすることができる。
【0030】
この圧潰防止部材4は、硬質ウレタン発泡体、発泡ポリスチレン、ポリスチレンと他の樹脂、およびゴム成分などの共重合体の発泡体などにより構成することができる。本実施形態では、軽量で低価格な発泡ポリスチレンを使用している。目地様意匠は比較的幾何学模様が多いため、容易に裁断加工しやすい点からも発泡ポリスチレンが適している。圧潰防止部材4として発泡ポリスチレンを用いる場合には、その密度は、10〜16kg/m3とすることが好ましい。
【0031】
図2は、向かい合うもう一方の型枠300側(合成樹脂シート3の表面3a側:図1(B)参照)から化粧型枠部材1を見た図である。
図2において、太破線Lが型枠本体2(以下「合板2」とも言う)のつなぎ合わせ部を示し、実線Mが合成樹脂シート3のつなぎ合わせ部を示している。
【0032】
このように、本実施形態では、型枠本体2と合成樹脂シート3とが互いのつなぎ目において合致しない位置で配置された構造とすることによって、打設コンクリート200によるノロが、型枠本体2の表面側にしみ出すのを防ぐことができる。従って、できあがりの壁体につなぎ目の線が太く発生することなく、途切れのない溝が繰り返される目地様意匠が形成でき、この結果、切削等の後加工処理の必要は生じないし、工期も短縮化できる。
【0033】
本発明の化粧型枠部材を用いれば、予め複数の異なる凸形状を有する合成樹脂シートを作成して化粧型枠部材に用いることで、打設されたコンクリート表面に複数の異なる形状の溝を形成することができる。
また、それぞれ異なる凸形状のみを有する複数種類の合成樹脂シートを作成して、これらを組み合わせて化粧型枠部材に用いることで、打設されたコンクリート表面に複数の異なる形状の溝を形成することもできる。
【0034】
また、打設コンクリートによるノロが、各シート間のつなぎ合わせ部分Mからシートと合板との間隙に入り込まないように、両面接着テープ(例えば、10mm幅程度)などで、各シートのつなぎ目部分Mを合板2と仮接着しておいてもよい。
両面接着テープなどで仮固定するだけなので、コンクリートの打設高さが高く、養生、固化後に化粧型枠部材の移動が考えられる場合などに、そのまま再使用できるうえ、釘やネジで化粧型枠部材(合板、合成樹脂製の圧潰防止部材、シート)に穴をあけることがないので、別の現場での再利用も可能である。
【0035】
図3は、本発明による化粧型枠部材の他の実施態様を示す断面図である。図3において、化粧型枠部材21は、曲面の型枠本体22と、合成樹脂シート23と、圧潰防止部材24とから構成されている。図3に示されるように、合成樹脂シート23は、ある程度自由に曲げられることから、図1に示されるような平滑な型枠本体のみでなく、曲面の型枠本体(合板等)22に積層することも可能である。従って、円柱をはじめとした、様々な局部的曲面意匠にも対応することもできる。
【0036】
以上説明した化粧型枠部材1(図3では21)は、実際の施行に際して、たとえば、
(a)現場にて、複数の合板2(図3では22)を壁面状に配置してから、合板2(22)と合成樹脂シート3(図3では23)とを互いのつなぎ目をずらした位置で仮固定した後、合成樹脂シート3(23)の凸形状に合わせて作られた棒状の圧潰防止部材4(図3では24)を凸形状の内部に1本ずつ装填してもよいし、あるいは、
(b)予め圧潰防止部材4(24)を合成樹脂シート3(23)の凸形状の内部に充填しておき、これを、現場に搬入し、壁面状に配置された複数の合板合板2(22)上に、当該合板2(22)と合成樹脂シート3(23)とのつなぎ目をずらした位置で仮固定してもよい。
【0037】
圧潰防止部材4の原料としては、これまで面木として使用されていた木材や発泡ポリスチレン等の合成樹脂が使用できるが、上記(b)の場合には、圧潰防止部材4(24)の原料として、発泡剤を含む塩化ビニルペースト(ゲル化できる低発泡性の塩化ビニル)、などを用いることが好ましい。ペースト状(ゲル状)の塩化ビニルを真空成形後の合成樹脂シート3(23)の凸部に流し込むことで、圧潰防止部材4(24)で凸形状部分が充填された合成樹脂シート3(23)を容易に作成することができる。
【0038】
次に、本発明の合成樹脂シートの製造方法の一実施形態を説明する。
図4は、ロール等から繰り出される合成樹脂シート材に凸形状を付形する合成樹脂シートの製造に使用される真空成形機の説明図である。
図4に示すように、真空成形機6は、ベースとなる箱状の真空成形機本体7と、複数の棒状の凸形状付形用型部材8とを備えて構成されている。凸形状付形用型部材8は、各々取り付け部9をその両端に有し、真空成形機本体7の真空引き面10上に着脱自在に取り付けられる。また、真空引き面10には真空引き用スリット12が形成されている。
【0039】
真空成形機本体7は、たとえば、2000mm×1200mm程度の寸法とされ、アルミニウム、セラミック、鋼などにより構成することができ、一般的な真空成形機同様、真空ポンプ(非図示)に接続されている。
また、この真空成形機本体7の相対する両端には、取り付け部9を移動及び固定する補助部(非図示)を設けることができる。
【0040】
図5(A)、(B)は、真空成形機本体7における真空引き面101,102の平面図である。これらの真空引き面101,102は、アルミニウム、セラミック、鋼などで構成される。
【0041】
図5(A)の真空引き面101では、真空引き用の孔が形成されており、この径が0.5mm以上だと、真空成形後に合成樹脂シートの当該孔部分に跡が残ることがある。このようなおそれがあるときは、図5(A)に例示される真空引き面101として、ポーラス構造の板を用いることができるし、たとえば鋼板などの全面に5mmピッチで0.5mm以内の微細孔11を多数設けることもできる。
【0042】
図5(B)の真空引き面102では、複数の板13が、連続的に隙間(この隙間が図4の真空引き用スリット12に対応する)をあけて並べられる。すなわち、各板13の隙間(スリット)から真空引きが行われる。各板13の間隔は、必要とされる真空孔の大きさに応じて自由に設置可能であるが、0.5mm以下が好ましく、通常は、真空成形される合成樹脂シートが薄くなるほど狭くする必要がある。一般に、0.5mm以上の間隔とすると、その隙間がシートに転写形成され、それが最終的にコンクリート打設後の表面に意匠となるおそれがある。板13は、30〜60mm、好ましくは40〜60mm幅とすることができる。
なお、図4に示した真空成形機6の真空引き面10として、より安価で、真空孔のサイズを自由に変えられる点から、図5(B)に示した真空引き面102が採用されている。
【0043】
図4において、真空成形機本体7の真空引き面10上には、すでに説明したように、凸形状付形用型部材8が着脱自在に載置される。凸形状付形用型部材8は、図4に示すように、真空引き面10の真空引き用スリット12の方向と90°に交わる方向に載置することが好ましい。真空引き用スリット12と同方向に載置すると、凸形状付形用型部材8の幅や所望されるピッチによっては、真空引き用スリット12がふさがることがあり、真空成形する際に美麗な凸形状を形成できないおそれがあるためである。
【0044】
凸形状付形用型部材8は、種々の意匠に対応して、半円形、楕円形、台形、あるいはその表面に機械加工された部材なども用いることができる。凸形状付形用型部材8は、アルミニウムなどの金属や、木材、耐熱樹脂など、真空引き圧に耐えられる頑丈なものにより形成できる。
【0045】
さらに、凸形状付形用型部材8は、取り付け部9をその両端に有することで、真空成形機本体7に着脱自在に取り付けることが可能となる。
これによって、合成樹脂シートに付形される凸形状の形やピッチを変更する場合、凸形状付形用型部材8を対応する形の部材と変更したり、あるいは、その載置位置をずらすだけで、適宜真空成形を行うことができるので、安価に種々多様な凸形状が付形された合成樹脂シートを作成することが可能となる。その際、真空成形機本体側面等に目盛りを付けておくと、凸形状付形用型部材の間隔を設置する際に、毎回測定しなくて良いため便利である。
従って、図6に例示するように、異種の意匠や様々なピッチの凸形状が、自由に組合わせて付形された合成樹脂シート33を作成することが容易である。
【0046】
図4において、たとえば、凸形状付形用型部材8が、真空成形機本体7の近くに敷設されたガイドレール14上を、取り付け部9に設けたローラー15により移動するようにしてもよい。あるいは、凸形状付形用型部材8が、取り付け部9に設けた磁石により真空成形機本体7に取り付けられるようにしてもよい。また、取り付け部9をネジなどで真空成形機本体7に固定するようにしてもよい。
【0047】
図4の真空成形機6では、ロール(非図示)に巻き取られた凸形状が付形されていない合成樹脂シート材の長さ方向に連続して同一の凸形状を繰り返して付形することができる。
また、ロール状の合成樹脂シート材ではなく、予め一定の寸法に裁断された合成樹脂シート材を1枚ずつ真空成形することも可能である。
【0048】
また、このようにして得られた真空成形後の合成樹脂シートを、所望のサイズに裁断する際には、端部を重ねて熱線でカットすることで、安価に同一の位置で精度良く裁断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の化粧型枠部材の一実施態様を概略的に示す図であり、(A)は一部分を切断して示す斜視図、(B)は(A)のA−Aの矢視断面である。
【図2】図1に示した化粧型枠部材をコンクリートが打設される側から見た図である。
【図3】本発明の化粧型枠部材の他の実施態様を示す断面図である。
【図4】合成樹脂シート材に凸形状を付形する真空成形機を説明するための図である。
【図5】(A)、(B)は、真空成形機に使用される真空引き面の2つの態様を示す図である。
【図6】図4の真空成形機により製造された合成樹脂シートを概略的に示す断面図である。
【図7】縦目地様意匠の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1,21 化粧型枠部材
2,22 型枠本体
3,23,33 合成樹脂シート
3a 合成樹脂シートの意匠面表面
4,24 合成樹脂製圧潰防止部材
5 塗布層
6 真空成形機
7 真空成形機本体
8 凸形状付形用型部材
9 取り付け部
10,101,102 真空引き面
11,12 真空孔
13 板
14 ガイドレール
15 ローラー
200 コンクリート
300 向かい合うもう一方の型枠
L 型枠本体のつなぎ目
M 合成樹脂シートのつなぎ目
P ピッチ
Q 目地模様間の溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数が連接されて使用される、型枠本体と当該型枠本体の表面に配設された合成樹脂シートとを備えてなるコンクリート用化粧型枠部材であって、
前記合成樹脂シートには、前記型枠本体側とは反対側に膨出する凸形状が付形されていることを特徴とするコンクリート用化粧型枠部材。
【請求項2】
前記凸形状の内部には、合成樹脂製の圧潰防止部材が装填されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリート様化粧型枠部材。
【請求項3】
前記合成樹脂シートの、前記型枠本体側とは反対側の表面に、セメントを主材とする無機塗料が塗付されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート用化粧型枠部材。
【請求項4】
前記合成樹脂シートは、
隣接する他のコンクリート用化粧型枠部材を構成する合成樹脂シートとのつなぎ目が、前記型枠本体と当該他のコンクリート用化粧型枠部材を構成する型枠本体とのつなぎ目に合致しない位置で、前記型枠本体の表面に配設されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート用化粧型枠部材。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載のコンクリート用化粧型枠部材を構成する合成樹脂シートの製造方法において、
真空成形機本体の真空引き面上に、複数の凸形状付形用型部材を着脱自在に取り付け、
前記凸形状付形用型部材の上から、前記凸形状が付形されていない合成樹脂シート材を被せて真空引きを行う、
ことを特徴とする合成樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記合成樹脂シート材を、前記真空成形機本体上に順次繰り出して真空引きを行う合成樹脂シートの製造方法であって、
前記真空成形機本体の真空引き面上に設けた凸形状付形用型部材が、レール上を移動することで、凸形状付形用型部材間の間隔を調整でき、複数種の合成樹脂シートが製造可能であることを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−16912(P2006−16912A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197825(P2004−197825)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】