説明

コンクリート素地調整材

【課題】 従来のコンクリート素地調整材では、コンクリート素地の水分量が多いときや、凹凸が多い場合には、膨れ、ピンホール、割れ等が生じたり、また、珪砂等の無機材が大量に含まれる場合は、コテ塗りなどの作業が非常に重労働となっていたことから、優れた作業性とコンクリート素地調整機能を兼ね備えた素地調整材、およびそれを用いたコンクリート素地調整方法を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂、アミン硬化剤、シリコーン整泡剤およびチクソ化剤を含有してなる樹脂組成物と気泡からなることを特徴とするコンクリート素地調整材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート素地調整材に関する。さらに詳しくは、作業性とコンクリート被覆性に優れるコンクリート素地調整材、およびそれを用いたコンクリート素地調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道施設や一般建築物などのコンクリート構造物では、その腐食防止を目的としてライニング工法やシートライニング工法などによる防食処理が施される。例えば、ライニング工法では、コンクリートの前処理、表面処理、素地調整処理(または、素地調整処理およびプライマー処理)および防食被覆層処理という工程で施工される。ここにおいて、素地調整とは、防食被覆を施すコンクリート表面(素地)を平坦かつ緻密にして、コンクリートからの水分の移動を遮断することを基本としてコンクリート表面を改質処理することを意味する。該素地調整により、上層の防食被覆層を均一厚みにすると同時に、防食被覆層における気泡、ピンホール等の欠損発生を防止し、さらに、コンクリートと防食被覆層の劣化による損傷を防止し、防食被覆層の接着安定性(耐久性)を確保することができる。該素地調整に使用する素地調整材としては、浸透性珪酸粉末を含有する2液型エポキシ樹脂組成物や、珪砂等を含有するポリマーセメントモルタル等が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−59051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記素地調整材を用いた場合は、コンクリート素地の水分量が多いときや、素地の凹凸が多い場合には、膨れ、ピンホールさらには割れが生じてしまい、実質的に素地調整の目的が果たせていない場合があった。また、珪砂等の無機材が大量に含まれるため、コテ塗りなどの作業が非常に重労働となることから、優れた作業性とコンクリート素地調整機能を兼ね備えた素地調整材が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)、シリコーン整泡剤(C)およびチクソ化剤(D)を含有してなる樹脂組成物と気泡からなることを特徴とするコンクリート素地調整材;該素地調整材を硬化させてなる硬化物;および、該素地調整材をコンクリート上に塗布し、常温もしくは加熱により硬化させてコンクリートの素地を調整することを特徴とするコンクリート素地調整方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコンクリート素地調整材、それを用いた素地調整方法、及び硬化物は下記の効果を奏する。
(1)該素地調整材は、素地の水分量が多いときや、素地の凹凸が多い場合でも接着性に優れ、かつピンホールが発生せず、素地調整機能に優れる。
(2)該素地調整材は、気泡を含有してなるムース状であるため、塗布作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるエポキシ樹脂(A)は、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシドであり、(A)には下記の(A1)〜(A6)およびこれらの混合物が含まれる。
(A1)グリシジルエーテル
(A11)多価(2価〜6価またはそれ以上)フェノールのポリ(2〜6価またはそれ以上)グリシジルエーテル
2価フェノール[炭素数(以下、Cと略記)6〜30]のジグリシジルエーテル、例えば単環フェノール(カテコール、レゾルシノール等)および多環フェノール[縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−F等)、ハロゲン化ビスフェノール(ジクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA等)、ビフェニル(テトラメチルビフェニル等)等]のジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロルヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル;および、3価〜6価またはそれ以上の多価フェノール〔C6〜数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]5,000〕のポリグリシジルエーテル、例えば3価フェノール[ピロガロール、ジヒドロキシナフチルクレゾール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等]のトリグリシジルエーテル、4価フェノール[テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等]のテトラグリシジルエーテル、6価またはそれ以上の多価フェノール[フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂(Mn200〜5,000)、レゾルシンとアセトンの縮合反応で得られる多価フェノール(Mn400〜5,000)等]のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0008】
(A12)ポリ(2価〜8価またはそれ以上)オールのポリ(2価〜8価またはそれ以上)グリシジルエーテル
低分子ポリオール(250未満のOH当量を有する)、高分子ポリオール(250以上のOH当量を有する)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる、2価〜8価またはそれ以上のポリオールのポリ(2価〜8価またはそれ以上)グリシジルエーテルが挙げられる。
該低分子ポリオールには、多価アルコール、並びに低分子OH末端ポリマー [ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリウレタンポリオール(以下PTポリオール、PSポリオールおよびPUポリオールと略記)]が含まれる。
【0009】
多価アルコールには、2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1 ,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等];C6〜20の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、前記多価フェノールの水添物等];C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2 ,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えば蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)]が含まれる。
【0010】
低分子OH末端ポリマーには、例えば低重合度のアルキレンオキシド(以下、AOと略記)開環重合物および活性水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(以下それぞれPEG、PPG、PTMGと略記)等、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールAのEO2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合ポリエステルポリオールおよび多価アルコールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のPUポリオール[ポリイソシアネートと過剰(イソシアネート基1個当り1モル)の多価アルコールとの反応生成物(例えばTDI 1モルとEG2モルとの反応生成物)]が含まれる。
【0011】
高分子ポリオールは、通常250〜3,000またはそれ以上のOH当量(OH価に基づく、OH当りの分子量)を有する。該ポリオールは、通常500 〜5,000またはそれ以上、好ましくは700〜4,500のMnを有し、好ましくは500〜6,000、とくに700〜4,000の重量平均分子量 (以下、Mwと略記。測定はGPC法による。)を有する。その例には、OH末端のポリマー[PT、PS、ポリアミド、PU、ビニル系ポリマー(以下VPと略記)およびポリマーポリオール(以下P/Pと略記)]、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0012】
(A2)グリシジルエステル
2価〜6価またはそれ以上の、芳香族(C6〜20またはそれ以上)、脂肪族(C4〜20またはそれ以上)および脂環式ポリカルボン酸(C6〜50またはそれ以上)のポリ(2価〜6価またはそれ以上)グリシジルエステル等、具体的には下記のものが挙げられる。
(A21)芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル
オルト−、イソ−およびテレフタル酸ジグリシジルエステル等;
(A22)脂肪族もしくは脂環式ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル
ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体、重合脂肪酸(C8〜30)のポリグリシジルエステル等;
【0013】
(A3)グリシジルアミン
2価〜10価またはそれ以上の、芳香族(C6〜20またはそれ以上)および脂肪族アミン(C2〜20またはそれ以上)のポリ(2価〜10価またはそれ以上)グリシジルアミン等、具体的には下記のものが挙げられる。
(A31)芳香族アミンのポリグリシジルアミン
N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジル−p−アルキルアミノフェノール等;
(A32)脂肪族アミンのポリグリシジルアミン
N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水添化合物、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、トリスグリシジルメラミン等;
【0014】
(A4)その他の鎖状脂肪族ポリエポキシド
エポキシ化(2〜4価)ポリブタジエン(Mn3,000〜10,000)、エポキシ化(2〜4価)大豆油(Mn300〜5,000)等;
(A5)その他の脂環式ポリエポキシド
脂環式ポリ[2〜4価またはそれ以上]エポキシド(Mn90〜2,500)、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル、3’、4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等;
(A6)ウレタン変性エポキシド
末端イソシアネート基のポリエーテルウレタンオリゴマー(Mn1,000〜10,000)とグリシドールの反応物等。
【0015】
上記(A)のうち、素地調整材の塗布作業性の観点から好ましいのは(A1)、耐薬品性および機械的強度の観点からさらに好ましいのは(A11)、とくに好ましいのはビスフェノール(ビスフェノールA、−F等)のジグリシジルエーテルである。
【0016】
(A)中のエポキシ基の数は、下限は硬化物の機械的強度、耐薬品性の観点から、上限は素地調整材の塗布作業性の観点から好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜6個である。
また、(A)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりのMn)は、下限は硬化物の接着強度(とくに内部応力)の観点から、上限は硬化物の機械的強度、耐薬品性の観点から好ましくは112〜500、さらに好ましくは136〜300である。
【0017】
本発明におけるアミン硬化剤(B)には次の(B1)〜(B6)およびこれらの混合物が含まれる。
(B1)脂肪族ポリ(2〜10)アミン(C2〜C36)
アルキレン(C2〜6)ジアミン(エチレンジアミン、1,2−および1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、ポリ(2〜6)アルキレン(C2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等];これらのアルキレンポリアミンのアルキル(C1〜4)またはヒドロキシアルキル(C2〜4)置換体[ジアルキル(C1〜4)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等];脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン(C6〜15)〔1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等〕;芳香環含有脂肪族ポリアミン(C8 〜15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン等)等;
(B2)脂環式ポリ(2〜6)アミン(C4〜15)
1,3−および1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等;
(B3)複素環式ポリ(2〜6)アミン(C4〜15)
ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン等;
【0018】
(B4)ポリアミドポリアミン(Mn200〜2,000)
ジカルボン酸(C24〜44、例えばダイマー酸)と過剰(ジカルボン酸1モル当り2モル以上)のポリアミン[上記(B1)、(B2)、(B3)等]との縮合反応で得られる低分子量ポリアミドポリアミン等;
(B5)ポリエーテルポリアミン(Mn200〜1,000)
ポリエーテルポリオール[PEG、PPG、PTMG等]の両末端をシアノエチル化したものの水素化物等;
(B6)シアノエチル化ポリアミン(C2〜36)
アクリロニトリルとポリアミン[上記(B1)、(B2)、(B3)等]との付加反応により得られるシアノエチル化ポリアミン(ビスシアノエチルジエチレントリアミン等)等。
【0019】
上記(B)のうち、作業性および硬化性の観点から好ましいのは(B1)、(B4)、(B5)および(B6)、接着性の観点からさらに好ましいのは(B4)、とくに好ましいのはMn200〜1,000のポリアミドポリアミンである。
【0020】
本発明における(C)は、エポキシ基および/またはアミノ基と反応する、ケイ素原子に直結しない非加水分解性官能基[カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、(メタ)アクリロイル基等]を有する整泡剤であり、次の一般式(1)で表されるカルボキシル変性、アミノ変性、エポキシ変性、チオール変性および(メタ)アクリロイル変性オルガノポリシロキサン、一般式(2)で表されるエポキシ/ポリエーテルもしくはアミノ/ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、並びにこれらの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
【0021】
【化1】

【0022】
[式(1)中、Xは、−R2COOHで表されるカルボキシル基、−R2NH2もしくは−R2NHR2NH2で表されるアミノ基、−R2SHで表されるチオール基、上記一般式(3)で表されるエポキシ基、または上記一般式(4)で表される(メタ)アクリロイル基;式(2)中、Zは、上記アミノ基もしくはエポキシ基;Qは、−R2O(C24O)r−(C36O)s3で表されるポリエーテル鎖;R1はC1〜4のアルキル基、R2はC1〜4のアルキレン基、R3はH 、C1〜4のアルキル基もしくはアセチル基、Meはメチル基;a、bおよびcはそれぞれ0または1で、a=1、b=1のときはc=0;xおよびyは、(x+y)が10〜200で、y/(x+y)が0.01〜0.5を満足する数;rおよびsは、r+s=2〜100(r=0またはs=0を含む)を満足する数、pおよびqは、p+q=y、p/(p+q)が0.01〜0.5を満足する数を表す。]
【0023】
一般式(1)で表される変性オルガノポリシロキサンの市販品としては、例えば、SF−8417(アミノ変性)、BY−16−849(アミノ変性)、SF8411(エポキシ変性)、SF8418(カルボキシル変性)[以上、いずれも商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]、X−22−164C(メタクリル変性)、KF−2001(メルカプト変性)、X−22−3710(カルボキシル変性)[以上、いずれも商品名、信越化学工業(株)製]が挙げられ、一般式(2)で表される変性オルガノポリシロキサンの市販品としては、例えば、SF−8421(エポキシ/ポリエーテル変性)[商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]、X−22−3667(エポキシ/ポリエーテル変性)、X−22−3939A(アミノ/ポリエーテル変性)[以上、いずれも商品名、信越化学工業(株)製]が挙げられる。
【0024】
上記(C)のうち、整泡性の観点から好ましいのは一般式(2)で表されるアミノ/ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、およびさらに好ましいのはエポキシ/ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンである。一般式(2)で表される前記オルガノポリシロキサンは、25℃で(A)および/または(B)と相溶するため、少量で整泡効果を示すとともに、エポキシ基および/またはアミノ基と反応する官能基を有するため、硬化途中、および硬化後に硬化物中からブリードアウトすることがなく本発明の素地調整材における整泡剤として好ましい。
【0025】
(C)の、エポキシ基および/またはアミノ基と反応する官能基1個当たりのMnは、下限は硬化物の機械的強度の観点から、上限は耐ブリードアウトの観点から好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは1,500〜15,000である。
また、(C)の25℃における粘度は通常1〜500Pa・s、塗布作業性の観点から好ましくは1〜100Pa・s、さらに好ましくは1〜60Pa・sである。
【0026】
本発明におけるチクソ化剤(D)には、次の(D1)、(D2)およびこれらの混合物が含まれる。
(D1)無機チクソ化剤
ベントナイト、微粉シリカ等が挙げられ、市販品としては、例えば、NEW D ORBEN[商品名、白石工業(株)製]、アエロジル200[商品名、日本アエロジル(株)製]が挙げられる。
(D2)有機チクソ化剤
水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、市販品としては、例えば、SNシックナー4020、SNシックナー4040[いずれも商品名、サンノプコ(株)製]が挙げられる。
【0027】
(A)〜(D)の合計重量に基づく各成分の割合は、本発明の素地調整材の塗布作業性、接着性、およびピンホール被覆性、並びに硬化物の機械的強度の観点から、(A)は好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%、(B)は好ましくは5〜60%、さらに好ましくは10〜40%、(C)は好ましくは0.5〜15%、さらに好ましくは1〜10%、および(D)は好ましくは0.5〜15%、さらに好ましくは1〜10%である。
【0028】
本発明の素地調整材には、硬化速度の調整のために、さらに硬化促進剤(E)を加えてもよい。(E)としては、フェノール化合物〔C6〜20、例えば前記多価フェノール、[アルキル(C2〜12)]フェノール、およびサリチル酸〕、酸エステル(C1〜15、例えばp−トルエンスルホン酸−メチル、−エチルおよび−プロピル)、3級アミン[C3〜15、例えばトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミンおよび1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン]、イミダゾール化合物(C4〜20、例えば2−メチル−、2−エチル−4−メチル−および2−フェニル−イミダゾール)、ジチオカーボネート化合物[2−エチルヘキシルジチオカーボネート等]等が挙げられる。これらのうち硬化促進の観点から好ましいのは、フェノール化合物、酸エステル、3級アミン、ジチオカーボネート化合物、さらに好ましいのは酸エステルおよびジチオカーボネート化合物である。
(E)の使用量は、本発明の素地調整材の全重量に基づいて通常20%以下、接着性の観点から好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.3〜5%である。
【0029】
また、本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、酸化防止剤(F1)、充填材(F2)、沈降防止剤(F3)および希釈剤(F4)からなる群から選ばれる少なくとも1種のその他の添加剤(F)をさらに加えてもよい。
【0030】
(F1)としては、ヒンダードアミン[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]、ヒンダードフェノール[オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等]、硫黄含有化合物[4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール等]等が挙げられる。
(F2)としては、無機充填材(アルミナ、ガラスビーズ、フォラストナイト、酸性白土、酸化鉄、シリカ、クロム酸鉛、ニッケルスラグ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、ケイソウ土等)、有機充填材[コールタール、ポリエチレン粉末、粉末繊維(炭素繊維、アラミド繊維等)、塩化ビニルペーストレジン、塩化ビニリデン樹脂バルーン等]が挙げられる。
【0031】
(F3)としては、無機化合物(ケイ酸マグネシウム等)および有機化合物[ポリカルボン酸(Mn1,000〜100,000、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸)のアルカリ金属(Na、K等)およびアンモニウム塩等]が挙げられる。
(F4)としては、非反応性希釈剤[芳香族樹脂(Mn100〜500、例えばキシレン樹脂等)、(芳香)脂肪族アルコール(C4〜12、例えばイソブチルアルコール、ベンジルアルコール)、高沸点炭化水素(ミネラルスピリッツ等)等]および反応性希釈剤〔脂肪族アルコール(C2〜16)モノグリシジルエーテル[グリシジルエチルエーテル、グリシジルブチルエーテル等]、高級(C12〜18)脂肪酸モノグリシジルエステル(グリシジルラウレート、グリシジルオレート等)等]が挙げられる。
(F1)〜(F4)の使用量は、本発明の素地調整材の全重量に基づいて(F1)は通常5%以下、好ましくは0.5〜3%、(F2)は通常20%以下、好ましくは1〜10%、(F3)は通常5%以下、好ましくは0.1〜3%、(F4)は通常20%以下、好ましくは1〜10%である。
【0032】
本発明の素地調整材は、万能混合機等の通常の混合機を使用して、(A)〜(D)、および必要により(E)、(F)を配合することにより製造できるが、通常(A)、(C)、および(D)を主成分とする主剤、および(B)、(D)を主成分とする硬化剤に分けて別々に製造される。必要により加える(E)、(F)は、主剤および/または硬化剤にあらかじめ添加配合しておくか、第3成分として、主剤/硬化剤の混合時にこれらを添加混合することができる。
【0033】
このようにして製造された素地調整材は、主剤と硬化剤、または主剤、硬化剤および必要に応じて加える第3成分からなる、2液または3液で保管され、使用直前に配合される。これらの素地調整材の各成分を混合する方法としては、人力混合および機械混合が挙げられるが、混合時に気泡(空気)を含有させるとの観点から機械混合が好ましく、施工現場での使用のしやすさ、および効率的に気泡を含有させるとの観点から、高速ハンドミキサー、電動泡立て器による混合がさらに好ましい。混合時間は、撹拌機の種類、撹拌羽根の形状、混合量等により異なるが、通常1〜15分、好ましくは3〜10分である。
【0034】
本発明の素地調整材の混合直後(混合終了後約1分経過時)25℃での粘度は、下限は垂れ性の観点から、上限は塗布作業性の観点から、好ましくは0.5〜500Pa・s、さらに好ましくは1〜100Pa・s、とくに好ましくは20〜80Pa・sである。
また、本発明の素地調整材の気泡含有率(全体積に占める泡の体積の割合)は、泡を混入させない状態で混合(例えば、真空脱法混合機による混合)した場合の混合物の比重(X1)と泡を物理的に含有させた場合の比重(X2)から、気泡含有率は下記の計算式から求めることができる。

気泡含有率(%)=100×[(X1)−(X2)]/(X1)

本発明の素地調整材の気泡含有率は、下限は塗布作業性、垂れ性の観点から、上限はピンホール被覆性の観点から、好ましくは5〜2,000%、さらに好ましくは10〜1,000%、とくに好ましくは20〜300%である。また、気泡径(μm)は、下限はピンホール被覆性の観点から、上限は気泡安定性の観点から、好ましくは0.1〜3,000、さらに好ましくは1〜1,000、とくに好ましくは10〜500である。
【0035】
本発明の素地調整材は、シリコーン整泡剤(D)を含むため、土木現場で常用されるハンドミキサーを用いることで独立気泡を効率的に含有させることができ、かつ硬化が完了するまで安定である。さらに、泡を含有する本発明の素地調整材はムース状となるため、コテ塗り等の塗布時にかかる腕への抵抗が非常に少なく塗布が容易であるとともに、あらゆる角度の塗布面に対しても非常に垂れにくいことから作業性に極めて優れている。
【0036】
本発明の素地調整材は、通常グラインダー等で表面を前処理したコンクリート表面に塗布し、硬化させて使用される。塗布方法としては特に限定されることはないが、塗布厚の均一性、調整の容易さ観点からこて塗り、スプレー塗布が好ましい。
塗布厚み(硬化後)は、通常0.01〜20mm、下限は防食性の観点から、上限は経済性および塗膜強度の観点から好ましくは0.1〜10mmであり、1回もしくは数回重ね塗りして所定の厚みに仕上げられる。硬化方法としては、室温(5〜35℃)で0.5〜7日間養生する方法、加熱(50〜100℃)条件下、3時間〜24時間養生する方法等が挙げられるが、土木現場で施工する場合は、通常、室温(5〜35℃)で0.5〜2日間養生した後、防食被覆が施される。
【0037】
本発明における樹脂組成物と気泡からなる本発明の素地調整材をコンクリート素地に塗布した場合は、コンクリート素地の温度や水分量に依存せずに素地調整面にピンホールを発生させることなく、かつ、素地の凹凸を平坦にすることができる。
本発明の素地調整材は、前述のような優れた塗布作業性、ピンホール被覆性を有するとともに、コンクリート素地との接着性、耐酸性を初めとする耐薬品性にも優れるため、コンクリート素地調整材、さらには防食被覆材として非常に有効である。
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお表中の部は重量部を表す。
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す配合比(重量比)で各成分をハンドミキサー[リョウービ(株)製、PM−1103]に投入し、25〜80℃で十分撹拌して素地調整材を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
エピコート807 [商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールF
型エポキシ樹脂]
SF−8421 [商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、エポキシ /ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン]
ポリマイドL−4051[商品名、三洋化成工業(株)製、ポリアミドアミン、活性水素 当量105]
アエロジル200 [商品名、日本アエロジル工業(株)製、微粉シリカ]
SNシックナー4020[商品名、サンノプコ(株)製、水添ひまし油系増粘剤]
アンカミンK−54 [商品名、エアープロダクツ(株)製、トリス(ジメチルアミノ メチル)フェノール]
ネオクイックDTC [商品名、三洋化成工業(株)製、2−エチルヘキシルジチオ カーボネート、分子量262]
珪砂特8号 [商品名、三河珪砂(株)製]
【0041】
実施例1〜4および比較例1〜3の素地調整材について、気泡含有率、混合粘度、垂れ性、可使時間、指触乾燥時間、ピンホール被覆性、および付着強さを以下に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[気泡含有率]
表1の組成物を真空混合脱泡機[シンキー(株)製]により25℃で3分間混合した配合物の比重(X1)、および電動泡立て器[テスコム(株)製、以下同じ。]により3分間混合した配合物の比重(X2)をそれぞれ比重カップ[JIS K−6833(接着剤の一般試験方法)に記載の比重カップ]を用いて測定し、前記の式に従って気泡含有率を算出する。
[粘度]
25℃、B型回転粘度計にて混合直後(混合終了後約1分経過時)の素地調整材の粘度を測定する。
[垂れ性]
電動泡立て器により混合した素地調整材を、塗布面が地面に垂直となるように立て掛けた30×30×5cmのコンクリート板の上半分素地に1mm厚み(硬化後)で塗布し、25℃で1日養生する。養生後の素地調整材の垂れについて下記の基準で評価する。
○ 塗布位置からの垂れが1cm未満
× 塗布位置からの垂れが1cm以上
[可使時間]
25℃、B型回転粘度計にて混合直後(混合終了後約1分経過時)から経時的に粘度を測定し、素地調整材の粘度が混合直後の粘度の2倍に達したときの時間(可使時間)を測定する。
[指触乾燥時間]
表1の組成物を気泡含有率測定の場合と同様に電動泡立て器を用いて混合後、コンクリート板(30×30×5cm、以下同じ。)に1mm厚(硬化後)で塗布し、25℃にて養生する。JIS K 5400に準じ、指で塗膜に触れても塗布物が指に付着しなくなる時間(指触乾燥時間)を測定する。
[ピンホール被覆性]
素地調整材を含水率7%、材令1カ月のコンクリート板上に約1mm厚み(硬化後)で塗布し、25℃で1日養生した。養生後、塗布表面を観察し、下記の基準で評価する。
○ 膨れ、ピンホールがない。
△ ピンホールはないが膨れがある。
× ピンホールがある。
[付着強さ]
素地調整材を含水率7%、材令1カ月のコンクリート板上に約1mm厚み(硬化後)で塗布し、25℃で7日間養生した後、JIS K 5400に準じ、建研式引張り試験機を用いてコンクリート板に対する付着強さを測定し、下記の基準で評価する。
○ コンクリート板破壊
× コンクリート板と素地調整材間の界面剥離
【0043】
表1に示す結果から、本発明の素地調整材は、作業性、垂れ性に優れると共に、ピンホール被覆性、コンクリートとの接着性も優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の素地調整材は、垂れ性、ピンホール被覆性およびコンクリートとの接着性等、コンクリート素地調整機能に優れ、また作業性にも優れることから、下水道、道路等で使用されているコンクリート建造物の素地調整材、あるいは防食被覆材として幅広く用いられ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)、シリコーン整泡剤(C)およびチクソ化剤(D)を含有してなる樹脂組成物と気泡からなることを特徴とするコンクリート素地調整材。
【請求項2】
気泡が、樹脂組成物に物理的に含有させたものである請求項1記載の素地調整材。
【請求項3】
(C)が、エポキシ基および/またはアミノ基と反応する官能基を有するシリコーン整泡剤である請求項1または2記載の素地調整材。
【請求項4】
(A)〜(D)の合計重量に基づく割合が、(A)が30〜90%、(B)が8〜50%、(C)が1〜10%および(D)が1〜10%である請求項1〜3のいずれか記載の素地調整材。
【請求項5】
素地調整材が、5〜2,000%の気泡含有率を有する請求項1〜4のいずれか記載の素地調整材。
【請求項6】
素地調整材が、25℃において0.5〜500Pa・sの粘度を有する請求項1〜5のいずれか記載の素地調整材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の素地調整材を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか記載の素地調整材をコンクリート上に塗布し、常温もしくは加熱により硬化させてコンクリートの素地を調整することを特徴とするコンクリート素地調整方法。

【公開番号】特開2006−274196(P2006−274196A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99632(P2005−99632)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】