説明

コンクリート表面凝結遅延剤を用いた化粧コンクリート形成技術に関し、コンクリート表面凝結遅延剤をインキ素材として用いて、フィルム等シートに印刷する工法。

【課題】コンクリート表面凝結遅延剤を用いた化粧コンクリート形成技術に関し、コンクリート表面凝結遅延剤をインキ素材として用いて、図形や写真等絵柄をフィルム等シートに印刷し、型枠に張り付ける工法においては、従来のコンクリート表面凝結遅延剤の多くが水溶性で、かつ接着力が弱いため、何らかの加工をして印刷をせざるを得ず、かつ、緻密なエッジングが困難であることなどが指摘されているが、これらの弱点を改善し、化粧コンクリート形成に最適な、コンクリート表面凝結遅延剤をインキ素材としてフィルム等シートへ印刷する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】非水溶性かつ対アルカリ可溶性で、インクとしての強固な接着力性および乾燥性を兼ね備えているコンクリート表面凝結遅延剤を適用し、かつ印刷手法としてスクリーン印刷を採用することで、該印刷手法の特徴である、厚めで微細な、化粧コンクリート形成に最適な塗膜を印刷できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート表面凝結遅延剤1をインキ素材として用いてフィルム等シート2へ印刷する技術に係わり、該フィルム等シート2を使用することによって、コンクリート面3への図形のエッジング4、またはコンクリート面3への写真等画像の転写等に益する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
型枠にコンクリートを打設、適宜養生期間を置いた後、脱型し、凝結遅延剤1により脆弱となった部分を高圧水で洗い流し、露出させた平滑面と凹面部分で図形のエッジング4、または写真等画像の転写をなす転写技術では、凝結遅延剤1を型枠5に塗布する工法が知られているが(特願昭61−179295、特願2006−347250、特願平9−969)、型枠5に直接に当該遅延剤1を塗布する方法とフィルム等シート2に塗布し型枠5に貼り付ける方法が開示されている。フィルム等シート2に塗布し型枠5に貼り付ける方法では、凝結遅延剤1をインキ素材として使用し、フィルム等シート2に印刷する方法が提供されている(特願昭61−179295)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在提供されている、凝結遅延剤1をインキ素材として使用し、フィルム等シート2に印刷する技術では、従来の凝結遅延剤1の主成分の多くがグルコン酸、グルコヘプトン酸等のオキシカルボン酸またはこれらの塩、ケト酸またはこれらの塩、糖類、アルコール類、リグニンスルホン酸塩、ケイフッ化物、リン酸塩、硼酸塩、または紫外線硬化型樹脂等であり、これらの多くが接着性において、あるいは乾燥性等において、フィルム等シート2にそのままでは塗布する素材として適しておらず、何らかの手当て(たとえばコロナ放電処理、高田水銀灯処理、粘着剤を付与等)が必要なことが指摘されている。また、多くが水溶性であるため、コンクリートを打設する際の水湿しにおける問題が指摘されている。更に、現在提供されている凝結遅延剤1のエッジング4性能は、やはり水溶性であるため、塗布部位からの自然露出によるエッジング4の不明確な形成の可能性が指摘される。また、エッジング4の深さの制御にも難があることも指摘されている。
【0004】
例えば、特願昭61−179295には、フィルム等シート2として、発泡性樹脂層を設けたメカニカルな手法によりエンボス加工を施したものを開示しているが、その加工コストの問題点が指摘されるし、紫外線硬化型インキを用いてグラビア印刷やオフセット印刷系統の印刷手法を採用しているため、厚みのある凝結遅延剤1の塗布には適さないし、したがってエッジング4の制御には難があるとされる。さらに、エッジング4の浅さをカバーするため、コンクリートの表面に図柄の濃淡を強調するコーティング塗料の塗布を推奨していることも含めると、化粧コンクリートを形成するには、作業が煩雑であり、コンクリート製品の生産性を低下させることが指摘される。また、特願平9−276782には、厚みが50〜200μm程度と非常に薄い凝結遅延用フィルムが開示されているが、型枠5に張り付けるにはしわが入ったりして、コンクリートの打ち継ぎ目の目あらしには適してはいるが、より緻密な図柄や写真の転写には難があるとされる。また、特願2006−347250で開示されたセメント凝結遅延用無機系塗料は、水溶性であり、上記解説のとおり、塗布部位からの自然露出によるエッジング4の不明確な形成の可能性が指摘され、目あらしが行われては不都合な個所との境目や、図形または写真または画像を転写する際の解像度に難があるなどの問題があるとされる。
【0005】
そこで本発明は、従来技術のコスト高への誘因でもある煩雑な作業性の解消と、コンクリート面への緻密な図柄や写真の転写に益する、フィルム等シート2への凝結遅延剤1の印刷技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、コンクリート表面凝結遅延剤1でフィルム等シート2上に図形や写真等絵柄を描画するための手段として、スクリーン印刷技術を提供した。
請求項2の発明は、スクリーン印刷の工程に、図柄や写真等絵柄をドット化6処理する(網点化する)工程と、凝結遅延剤1をインク素材として用いる工程とを提供した。
請求項3の発明は、スクリーン印刷のインキとして適度な接着性と乾燥性を備えている凝結遅延剤1を提供した。
請求項4の発明は、飽和樹脂酸炭化水素を主成分とし、複数の環構造を有した飽和、不飽和炭化水素にカルボン酸が結合した化合物を有し、水に不溶性でアルカリ液に接触後水溶性に変化する特性を持ち、粘着性の高い性質をもった凝結遅延剤1を提供した。
【発明の効果】
【0007】
コンクリート表面凝結遅延剤1でフィルム等シート2上に図形や写真等絵柄を描画するための手段として、グラビア印刷やオフセット印刷等でなく、スクリーン印刷を採用した結果、▲1▼適度な厚みを持った印刷が可能な印刷技術であるので、凝結遅延剤の効果を確実なものにできる。▲2▼スクリーン印刷におけるスクリーンメッシュのメッシュ数の変更や、インクの塗り重ねの回数によって、印刷塗膜の厚みの操作ができ、したがってエッジング4の深さの制御も可能になる。
【0008】
さらに、スクリーン印刷の工程に、図柄や写真等絵柄をドット化6処理する(網点化する)工程と、凝結遅延剤1をインク素材として用いる工程とを提供した結果、図柄や写真等絵柄をドット化6処理する(網点化する)ことで、いわゆる新聞写真的な処理を成すことによって、コンクリート面での図柄や写真等絵柄の転写をしやすくし、かつ、凝結遅延剤1を、スクリーン印刷でそのドット(網点)の上に塗布する(印刷する)ことが容易になる。
【0009】
さらに、強固な接着性と乾燥性を備えている凝結遅延剤1を提供した。このことにより、該凝結遅延剤1を、そのままインク素材として、フィルム等シート2上に印刷に使用することが可能となり、従来工法でのコロナ放電処理や、高圧水銀灯等の印刷下処理を必要としなくなった結果、煩雑な作業性の解消が図れるようになり、かつ、そのまま重ね塗りもできるのでコンクリート面3へのエッジング4の深さの制御も可能になる。
【0010】
さらに、飽和樹脂酸炭化水素を主成分とし、複数の環構造を有した飽和、不飽和炭化水素にカルボン酸が結合した化合物を有し、水に不溶性でアルカリ液に接触後水溶性に変化する特性を持ち、粘着性の高い性質をもった凝結遅延剤1を提供できた結果、以下の諸点が改善される。▲1▼コンクリートを打設する際の水湿しにおける問題が解決される。▲2▼型枠5に張り付ける際の塗膜の剥がれにも強いことで、フィルム等シート2に直接印刷するスクリーン印刷を採用することも可能になる。▲3▼図柄や写真等絵柄をドット化6処理した(網点化した)部分への塗膜の微細な印刷が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実地の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の,コンクリート表面凝結遅延剤1を用いた化粧コンクリート形成技術に関し、コンクリート表面凝結遅延剤1をインキ素材として用いて、フィルム等シート2に印刷する工法は、ドット化6(網点化)した写真等図柄、非水溶性コンクリート表面凝結遅延剤1、スクリーン印原版、フィルム等シート2、から構成される。すなわち、▲1▼図柄や写真等絵柄をするドット化6(網点化)する工程、▲2▼該ドット化6(網点化)処理したデータを透明フィルムに転写する工程、▲3▼該透明フィルムでスクリーン印刷原版を製作する工程、▲4▼該原版で凝結遅延剤1をインク素材として用い、スクリーン印刷する工程からなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実地の形態に係わる、コンクリート表面凝結遅延剤1をインクとして用いてスクリーン印刷したフィルム等シート2と、打設したコンクリートを示す図である。
【図2】本発明の実地の形態に係わる、ドット化6(網点化)した図柄を示す図である。
【図3】本発明の実地の形態に係わる、コンクリート面3にエッジング4ができたところを示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 コンクリート表面凝結遅延剤
2 フィルム等シート
3 コンクリート面
4 エッジング
5 型枠
6 ドット化(網点化)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面凝結遅延剤(以下凝結遅延剤と称す)を用いて、フィルム等シート上に図形や写真等絵柄を描画し、該フィルム等シートを型枠に張り付け、コンクリートを打設後、未硬化の脆弱部分を洗い出し、露出したコンクリート面の平滑面と凹面とで、図形や写真等絵柄を転写する化粧コンクリート形成技術において、該描画技術に関し、スクリーン印刷技術を用いることを特徴とした、コンクリート表面凝結遅延剤をインク素材として用い、フィルム等シート上に印刷する工法。
【請求項2】
図柄や写真等絵柄をドット化処理する(網点化する)工程と、該ドット化処理した(網点化した)データを透明フィルムに転写する工程と、該透明フィルムでスクリーン印刷の原版を製作する工程と、該原版で凝結遅延剤をインク素材として用い、スクリーン印刷する工程からなることを特徴とする、請求項1にあるような、コンクリート表面凝結遅延剤をインク素材として用い、フィルム等シート上に印刷する工法。
【請求項3】
接着力、乾燥時間ともインキ素材として適切な性能を兼ね備えており、かつコンクリート面へのエッジングの深さの制御も可能な性能を有しており、かつコロナ放電処理や、高圧水銀灯等の印刷下処理を必要とせず、かつスクリーン印刷のような簡易な印刷方式が可能である凝結遅延剤を使用することを特徴とした、請求項1にあるような、コンクリート表面凝結遅延剤をインク素材として用い、フィルム等シート上に印刷する工法。
【請求項4】
飽和樹脂酸炭化水素を主成分とし、複数の環構造を有した飽和、不飽和炭化水素にカルボン酸が結合した化合物を有し、かつ、水に対して不溶性で、アルカリ液に接触後水溶性に変化する特性を持つ凝結遅延剤を使用することを特徴とした、請求項1にあるような、コンクリート表面凝結遅延剤をインク素材として用い、フィルム等シート上に印刷する工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148406(P2012−148406A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184414(P2010−184414)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(505216771)
【出願人】(510225993)株式会社アーク (2)
【Fターム(参考)】