説明

コンクリート製管体および推進工法

【課題】一対の半割り状のコンクリートセグメントを接合して形成される管体を用いる推進工法により構築された管渠において、他の管路を容易に接続できるようにする。
【解決手段】一対の半割り状のコンクリートセグメント12,13を接合した管体のうちの他の管路が接続される管体10に、周面に他の管路を接続するために内外を連通する開口部1が予め形成されている。開口部1には、当該開口部1の周縁部を形成する鋼製枠体が取り付けられている。鋼製枠体に開口部1を閉塞する鋼製蓋セグメントが着脱自在に取り付けられている。前記管渠を構築した後に、前記開口部を有するコンクリート製管体10において、鋼製蓋セグメントを外し他の管路を接続する。また、一対のコンクリートセグメント12,13は、鋼製枠体に接続された周方向に沿うPC緊張材で締め付けて接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に管渠を構築する際に用いられるコンクリート製管体および地中に管渠を構築する推進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に管渠を構築する方法として、地中に立設した立坑から、推進菅を横方向に地中に押し込みながら掘削していく推進工法が知られている。これは、工場で所定長さに製造されたコンクリート製の管体を、先に押し込まれた推進管の後方端に接続しながら押し込んでいくことにより、必要な長さの管渠を構築していくものである。
【0003】
このような推進工法によって構築されている管渠は、従来、径が約3m以下のものがほとんどである。これは、工場で構築され、現場へ輸送される管体の径が3mを超えると輸送が困難になることに起因している。しかし、都市部における共同溝の普及等にともない、大口径の管渠を推進工法で構築することが求められるようになっている。そこで、管体を周方向に2つに分割した形状のコンクリートセグメントを形成し、これら2つの半割り状のコンクリートセグメントを組み立てて管体とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように分割されたコンクリートセグメントは、口径が大きなものであっても、トレーラー等で搬送することができる。
【0004】
また、地中に構築される管渠においては、管渠の途中から他の管路を接続する必要がある場合が多いが、管渠に直接他の管路を接続することが困難なので、例えば、人孔(立孔)等の地下構造物を設け、この地下構造物を解して推進管による管渠と他の管路との接続を行うことになる。
従って、管渠と他の管路との接続には、接続用に地下構造物を設け、この地下構造物を介して接続することで、特に大口径の推進管により鋼製される管渠においては、長い施工期間と、高いコストを要するものとなっていた。
【0005】
そこで、周面に開口を設けた管体を作成し、開口に着脱自在に蓋を取り付けた管体が管渠の分岐部分に配置されるように、施工中の推進管の後端に開口を有する管体を接続して管渠を構築する。次いで、開口を有する管体の開口の径に対応した狭い範囲を掘削し、蓋を露出させた状態で蓋を取り外して前記開口の部分に他の管路を接続することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、掘削は必要であるが、地下構築物を介さずに管渠に直接他の管路を接続可能となり、施工期間の短縮およびコストの低減を図ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−183289号公報
【特許文献2】特開2004−019435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、施工中の管体には、後方側から前方に押圧するため大きな力がかかることになるが、管体に大きな径の開口を設けた場合に、管体の強度が不足する可能性が高く、特許文献2に開示されるような工法を小口径の推進管ではなく、上述のような大口径の推進管に適用することは極めて困難である。
【0008】
さらに、上述のように大口径の管体を複数のコンクリートセグメントから構築する場合に、管状に接続されたコンクリートセグメントの内部に周方向に沿ってPC鋼材(PC緊張材)を配置して締め付けることによりコンクリートセグメント同士を強固に接続することが知られている。また、PC緊張材は、予めコンクリートセグメント内に周方向に沿って配置された管状のシース内に挿入される。また、シースおよびPC緊張材は、軸方向に互いに間隔をあけて複数本配置されることになるが、強度を向上するために、比較的短い間隔で配置されている。
このような管体に開口を設けると、開口内にPC緊張材が挿入されるシースが露出した状態となってしまい、開口を形成することができないか、もしくは、PC緊張材を用いた接合が困難になる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、大口径の推進管においても開口部を有するコンクリート製管体を用いることを可能とし、さらに、一対の半割り状のコンクリートセグメントを接合したコンクリート製管体においても開口を形成することを可能とし、推進管への他の管路の接続を容易とするコンクリート製管体および推進工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のコンクリート製管体は、推進管を横方向に地中に押し込み、押し込まれた推進管の後方端に管体を接続して押し込む動作を繰り返すことにより、必要な長さの管渠を構築する推進工法に用いられるコンクリート製管体であって、
周面に他の管路を接続するために内外を連通する開口部が形成され、
前記開口部には、当該開口部の周縁部を形成する鋼製枠体が取り付けられ、
前記鋼製枠体に前記開口部を閉塞する鋼製蓋セグメントが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項1記載の発明においては、コンクリート製管体に開口部を設けるものとしても、開口部に十分な強度を有する鋼製枠体を取り付けることで、開口部の形成に基づくコンクリート製管体の強度の低下を補うことができる。これにより大口径の推進管においても、予め開口部が形成された管体を用いて管体に他の管路を直接接続できることで、施工期間の短縮とコストの低減を図ることができる。
また、開口部を塞ぐ蓋も鋼製蓋セグメントとすることで、鋼製枠体に容易に着脱可能となるとともに、開口部内における強度も確保することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンクリート製管体において、一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に合わせた状態で、一対の前記コンクリートセグメント内を周方向に沿うと共に、軸方向に間隔をあけて並べて配置された複数のPC緊張材で締め付けることにより、一対の前記コンクリートセグメント同士を接合して形成され、
一対の前記コンクリートセグメントのうちの一方のコンクリートセグメントに前記開口部が形成され、
前記PC緊張材のうちの前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材は、前記開口部で周方向に開口部に対応する間隔をあけて離れた状態に配置され、
前記鋼製枠体には、前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材の開口部側端部を定着させる定着部が開口部を挟む位置にそれぞれ設けられ、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材は、前記鋼製枠体の開口部を挟んだ二箇所の定着部で前記鋼製枠体の定着部に定着された状態で一対の前記コンクリートセグメントの開口部を除く部分を周方向に沿って配置されて一対の前記コンクリートセグメントを締め付けていることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明においては、コンクリート製管体が半割状の一対のコンクリートセグメントをPC緊張材で接合するものとなっていても、開口部が形成可能となるとともに、鋼製枠体の強度に基づいて十分な強度でコンクリートセグメント同士を接合することができる。
すなわち、開口部を通る位置に配置されるPC緊張材においては、開口部の位置で切断した状態とするとともに、開口部側端部を鋼製枠体の定着部に定着することで、開口部でPC緊張材が無い状態となっていても、鋼製枠体を介して二つのコンクリートセグメントがPC緊張材に締め付けられることになり、鋼製枠体が十分な強度を有するものならば、十分な強度でコンクリートセグメント同士を接合できるとともに、開口部内にPC緊張材やそのシースが配置されることもない。
【0014】
請求項3に記載の推進工法は、推進管を横方向に地中に押し込み、押し込まれた推進管の後方端に管体を接続して押し込む動作を繰り返すことにより、必要な長さの管渠を構築する推進工法であって、
前記管体のうちの他の管路が接続される管体に、周面に他の管路を接続するために内外を連通する開口部が形成され、前記開口部には、当該開口部の周縁部を形成する鋼製枠体が取り付けられ、前記鋼製枠体に前記開口部を閉塞する鋼製蓋セグメントが着脱自在に取り付けられているコンクリート製管体を用い、
前記管渠を構築した後に、前記開口部を有するコンクリート製管体において、前記鋼製蓋セグメントを外し他の管路を接続することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明においては、請求項1記載の発明と同様に、大口径の推進管においても、予め開口部が形成された管体を用いて管体に直接他の管路を接続できることで、施工期間の短縮とコストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の推進工法において、前記管体として、一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に接合したコンクリート製管体を用い、
前記コンクリート製管体のうちの少なくとも一つのコンクリート製管体を構成する前記コンクリートセグメントの一つに、前記鋼製枠体を備えた前記開口部が形成され、
一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に合わせた状態で、一対の前記コンクリートセグメント内を周方向に沿うと共に、軸方向に間隔をあけて並べて配置された複数のPC緊張材で締め付けることにより、一対の前記コンクリートセグメント同士を接合してコンクリート製管体を形成する際に、
前記PC緊張材のうちの前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材は、前記開口部で周方向に前記開口部に対応する間隔をあけて離れた状態に配置されるものとし、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材の前記開口部を挟むように配置される二つの前記開口部側端部を、前記鋼製枠体の開口部を挟んだ二箇所にそれぞれ定着することにより、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材を、前記鋼製枠体に定着された状態で一対の前記コンクリートセグメントの開口部を除く部分を周方向に沿って配置し、前記コンクリートセグメントを締め付けることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明においては、請求項2記載の発明と同様に、コンクリート製管体が半割状の一対のコンクリートセグメントをPC緊張材で接合するものとなっていても、開口部を形成可能となるとともに、鋼製枠体の強度に基づいて十分な強度でコンクリートセグメント同士を接合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンクリート製管体および推進工法によれば、大口径の推進管により構築された管渠に、容易に他の管路を直接接続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る推進工法に用いられるコンクリート製管体を説明する。
この推進管用のコンクリート製管体(以下、単に「管体」ともいう。)10は、一対の半割り状のコンクリートセグメント12,13を接合することによって構成されているが、推進工法において使用する方法は、コンクリートによって一体に成形された管体と同様である。すなわち、管体(推進管)10は、クレーンにより吊り上げて、地中に立設した立坑の底部に搬入され、その後横方向に押し込まれた推進管の後端に順次継ぎ足される。そして、継ぎ足された管体10の後端をさらにジャッキ等によって押して、推進管を押し込み、これを順次延長して管渠を構築する。
【0020】
なお、この例で説明する管体10には、その周面に、構築された管渠に別の管路を接続するために内外に貫通する開口部1が形成されているが、通常は、開口部1および開口部1に関連する構成が設けられていない以外は、上記管体10と同様の構成を有する管体が用いられ、上述のように管渠を構築した際に、他の管路が接続される部分にだけ開口部1を有する管体10が用いられる。なお、本発明に係る開口部1に関連する構成は、後述するものとし、先に管体10の通常の管体と同様の構成について説明する。
【0021】
この管体10には、その後端側(ジャッキ等によって押される側、図2において左側)に、端部を取り囲むカラー(鋼帯)14が、コンクリート製の本体10aより所定長さだけ突きだして設けられている。一方、先端側(推進管に継ぎ足される側、図1において右側)は、外径が他より小さい小径部16が、カラー14の突き出し長さとほぼ同じ長さだけ形成されている。推進管の後端に管体10を継ぎ足す際には、前側の管体10の小径部16と後側の管体10のカラー14とを嵌め合わせ、その間の隙間に充填材(グラウト材等)を充填する。
【0022】
一対の半割り状のコンクリートセグメント12,13には、以下に説明するように、接合して管体10を構成するための構造が設けられている。
図1および図4に示すように、コンクリートセグメント12,13には、周方向に延び、周方向端面(接合面18,18)に開口する環状孔20がシース22によって形成されている。これにより、一対のコンクリートセグメント12,13を接合したときに、対応する環状孔20が連通して、管体10中を挿通する周回孔24が、この例では軸方向に間隔をあけて並んだ状態で5つ形成される。周回孔24の一部はコンクリートセグメント13の内周面の凹部26に開口しており、この凹部26には、アンカー28が設けられている。
【0023】
なお、凹部26およびアンカー28は、開口部1が設けられていないほうのコンクリートセグメント13に全て設けられるとともに、凹部26およびアンカー28の位置は、コンクリートセグメント13の周方向に沿った左右の中央部から左右何れかに僅かにずらされた位置に配置されるとともに、隣り合う周回孔24毎に前記左右の中央部から右か左か異なる配置となっている。
【0024】
そして、コンクリートセグメント12,13の接合面18,18を合わせた後に、凹部26から周回孔24(環状孔20)にPC鋼材等のPC緊張材30を挿通し、ジャッキ等によって締め付けた後、アンカー28に固定することによって、2つのコンクリートセグメント12,13の接合面18,18間、および周方向への緊張を与える。
したがって、PC緊張材30は、シース22により形成された周回孔24の配置に基づいて、軸方向に間隔をあけて並べて配置されることになる。
また、PC緊張材30を挿通して締め付けた後に、PC緊張材30が挿通されたシース22内に充填材を充填する。
【0025】
なお、後述するように、シース22のうちのコンクリートセグメント12の開口部1を通る配置のものについては、開口部1の周縁部でシース22が途切れた状態となっており、シース22によって構成される環状孔20(周回孔24)も開口部1の内周縁部で途切れた状態となり、後述するように開口部1の右側および左側の内周面には環状孔20の開口部1側端部が開口した状態となっており、シース22内に挿入されたPC緊張材の端部を開口部1の内周面から露出させることができるようになっている。
【0026】
また、PC緊張材30も開口部1の内周縁部で途切れるようになっており、開口部1の左側の周縁部のPC緊張材30の端部と、開口部1の右側の周縁部のPC緊張材の端部とが後述の鋼製枠体40に接続され、鋼製枠体40を介して開口部1で途切れた状態のPC緊張材間でコンクリートセグメント12,13同士を締め付け可能となっている。
すなわち、開口部1を通る位置に配置されたPC緊張材30は、鋼製枠体40の開口部1を挟んだ二箇所に定着された状態で一対の前記コンクリートセグメント12,13の開口部1を除く部分を周方向に沿って配置されて一対の前記コンクリートセグメント12,13を締め付けるようになっている。
【0027】
カラー14は、カラー14に溶接した鉄筋をコンクリート中に埋設することによって各コンクリートセグメント12,13の半周を覆うように固着されている。その周方向端部はコンクリートセグメント12,13に凹部が設けられており、この凹部に裏当て材を配置して、カラー14の端部を溶接することによって、カラー14どうしが連結される。
【0028】
コンクリートセグメント12,13の対向する接合面18には、図2に示すように、剪断キー32を収容する凹所34がそれぞれ設けられ、これらの凹所34に共通の剪断キー32と接着剤とが装着されている。これらの剪断キー32の主な目的は、管体10を地中に推進する際に、コンクリートセグメント12,13の接合面18間に作用する剪断力を負荷することであり、剪断キー32は、強度の高い素材、例えば、鋼等の金属、樹脂、セラミックス等によって、両端が先細の円錐台状のピン状に構成されている。剪断キー32は、同時に、コンクリートセグメント12,13を接合する際の位置合わせにも用いられるので、先細の円錐台状とすることによって剪断キー32が凹所34に入りやすくなっている。
【0029】
また、各コンクリートセグメント12,13には、左右の接合面18,18から45度の位置で、かつ、前後二箇所にそれぞれ内外に貫通する注入孔が設けられ、推進管の圧入が終了した状態で、推進管(管体10)内部から推進管と地盤との間に充填材(裏込め材)を注入するための注入孔が形成されている。
【0030】
そして、図1において下側となる開口部1が形成されていないコンクリートセグメント13は、全てのPC緊張材30のアンカー28が形成されている以外は、基本的に他の管路が接続されることがない通常の管体のコンクリートセグメントと同様の構成となっている。
一方、図1において上側となる開口部1が形成されたコンクリートセグメント12は、PC緊張材30のアンカー28が形成されていないことと、次に説明する開口部1および開口部1に係る部材が設けられていることを除いて、通常の管体のコンクリートセグメントと同様の構成となっている。
【0031】
以下に、コンクリートセグメント12に形成された開口部1および開口部1にかかわる部材について説明する。
コンクリートセグメント12には、成型時にコンクリートセグメント12(管体10)の周方向にそった左右の中央部で、かつ、軸方向に反った前後の中央部に、他の管路を接続するために内外を連通する矩形状の開口部1が形成されている。また、開口部1は、コンクリートセグメント12の軸方向に沿った2辺と、周方向に沿った2辺から構成されている。また、開口部1の周方向に沿った長さ(湾曲した長さ)は、例えば、コンクリートセグメント12の周方向に沿った長さの1/3程度かそれより僅かに短い長さで、開口部1の軸方向に沿った長さは、例えば、コンクリートセグメント12の軸方向に沿った長さの1/2かそれより僅かに長い長さとなっている。
【0032】
開口部1の周縁部には、開口部1を構成する鋼製枠体40がコンクリートセグメント12の成型時に取り付けられている。なお、図1には鋼製枠体40の図示を省略している。
鋼製枠体40は、開口部1の上述の軸方向に沿った2辺を構成する左右の側壁41,41と、周方向に沿った2辺を構成する前後の側壁42,42とを有し、これら左右の側壁41,41と前後の側壁42,42とが矩形枠状に組まれて開口部1の内周面を構成している。なお、左右の側壁41,41は、管体10の半径方向に沿うものとなっており、互いに非平行となっているのに対して前後の側壁42,42は、軸方向に直角となるように配置されており、互いに平行となっている。
【0033】
また、鋼製枠体40は、左右の側壁41,41および前後の側壁42,42の上端部および下端部から開口部1に対してそれぞれ外側に延出するようにコンクリートセグメント12の外周面および内周面に沿って延出する上枠板部43、下枠板部44が設けられている。上枠板部43(下枠板部44)は、その内周側が開口部1の上端部内周(下端部内周)を構成する矩形状の開口となっており、この開口の周囲を囲み、かつ、円筒の外周面(内周面)に沿った額縁状に形成されている。また、上枠板部43および下枠板部44の4つの角部は面取りされている。
【0034】
また、上枠板部43および下枠板部44は、基本的にコンクリートセグメント12にその厚み分だけ埋め込まれた状態となっており、カラー14と同様に、コンクリートセグメント12の表面となるコンクリート露出面との間に段差がほとんど無い状態となっている。
また、鋼製枠体40の各片を構成する部分の断面は、側壁41,41もしくは側壁42,42と、上枠板部43および下枠板部44とからコ字状(チャネル状)となっている。また、側壁41,41もしくは側壁42,42と、上枠板部43および下枠板部44とからコ字状に囲まれる部分には、上辺が上枠板部43に接合され、下辺が下枠板部44に接合され、開口部1側の辺が側壁41,41もしくは側壁42,42に接続されるとともに、コンクリートセグメント12(管体10)の半径方向に沿う複数の補強リブ45が側壁41,41もしくは側壁42,42の長さ方向に沿って間隔をあけて並べて配置されている。
【0035】
また、補強リブ45は、側壁41,41もしくは側壁42,42と上枠板部43もしくは下枠板部44とが接合された状態となる角部に1/4円状の切欠部が形成され、コンクリートセグメント12の成型時にコンクリートが角部まで十分に回り込むようになっている。
【0036】
また、軸方向に沿った側壁41,41には、それぞれ前記PC緊張材30のうちの開口部1を通る位置に配置されるPC緊張材30の開口部1側端部が定着具(図示略)により定着される複数の定着部47が配置される。前記PC緊張材30は、この例では5本軸方向に並べて配置されるが、そのうちの最も前および最も後ろに配置されるPC緊張材30は、開口部1の前と後ろとを通るように配置され、残りの前後のPC緊張材30より内側の3本のPC緊張材30が開口部1を通るように配置される。
【0037】
なお、PC緊張材30は、開口部1で途切れた状態に配置されるので、実際に開口部1を通ることはない。また、左右の側壁41,41にそれぞれ定着部47,47が設けられることで、定着部47,47は開口部1を間に挟む位置に配置される。また、開口部1で途切れた状態となるPC緊張材30の開口部1側の二つの端部は、開口部1を挟む位置に配置された二つの定着部47,47にそれぞれ定着される。
【0038】
そして、環状孔20(周回孔24)を形成するシース22は、上述のPC緊張材30の配置に対応して配置されることになる。そして、コンクリートセグメント12の開口部1の部分の軸方向に沿った断面図である図4に示すように、左右の軸方向に沿った側壁41,41には、シース22の配置に対応して、軸方向に互いに間隔をあけて三つの定着部47が配置される。定着部47は、側壁41,41の開口部1側の側面に開口し、かつ、断面略正方形で、開口側が広くなる角錐台状の凹部として形成されるものである。そして、定着部47は、側壁41,41の開口部1側側面より奥側に配置された正方形状の底板47aと、底板47aの4辺のそれぞれから開口側に向かって広がるように配置された4つの台形の側板47bとから四角いカップ状に形成されている。
【0039】
また、底板47aには、シース22が溶接等により接続されるとともにシース22内の環状孔20に連通する穴が形成され、鋼製枠体40の側壁41,41の定着部47で環状孔20が開口した状態となっている。この定着部47の底板47aの開口から上述のようにシース22内に挿入されたPC緊張材の端部を露出させることにより、図示しない定着具でPC緊張材を鋼製枠体40に定着させることができる。
また、鋼製枠体40の側壁41,41および側壁42,42には、図5に示す鋼製蓋セグメント50をボルトで固定するためのねじ孔(図示略)が周方向に間隔あけて複数設けられている。
【0040】
なお、鋼製枠体40を構成する上述の部材は、例えば、溶接により接合されるとともに、このように鋼製された鋼製枠体40がコンクリートセグメント12内に配筋される鉄筋に溶接により接合されている。
このような鋼製枠体40は、推進管を圧入するための圧縮力や、後述のように鋼製枠体40に定着されたPC緊張材30を締め付ける際の引っ張り力に十分に対応可能な強度を有するように設計さており、開口部1を有することにより強度が低下したコンクリートセグメント12(管体10)を十分に補強可能なものとなっている。
【0041】
前記鋼製蓋セグメント50は、前記コンクリートセグメント12に設けられた開口部1を閉塞させるためのもので、開口部1に対応した形状として全体が円弧板状となっている。
前記鋼製蓋セグメント50は、矩形状でかつ円弧状に湾曲し、開口部1を閉塞した際に、コンクリートセグメント12の外周面に沿った状態となる表板51と、表板51の軸方向に沿った左右の側縁からそれぞれ円弧(コンクリートセグメント12)の半径方向にそって裏面側に延出する側板52,52と、表板51の周方向に沿った前後の側縁からそれぞれ軸方向と直交する方向に延出する前後の側板53,53と、表板51の裏面に軸方向に沿うとともに前記半径方向に沿って複数配置される補強リブ54と、表板51の裏面に周方向に沿うとともに軸方向に直交する方向に沿って複数配置される補強リブ55とを備えている。
【0042】
そして、鋼製蓋セグメント50を開口部1に設置した場合に、鋼製枠体40の軸方向に沿う左右の側壁41,41と、鋼製蓋セグメント50の軸方向に沿う左右の側板52,52とが略左右に重なって当接した状態となり、鋼製枠体40の周方向に沿う前後の側壁42,42と、鋼製蓋セグメント50の周方向に沿う前後の側板53,53とが略前後に重なって当接した状態となる。
また、開口部1において、軸方向に沿うとともに半径方向に沿う左右の側壁41,41同士の間隔がコンクリートセグメント12の内側(半径方向に沿って中心側)に向かうにつれて狭くなる鋼製となっているとともに、鋼製蓋セグメント50の左右の側壁42,42同士の間隔も同様に内側に向かうにつれて狭くなっている。よって、鋼製蓋セグメント50をコンクリートセグメント12(管体10)の開口部1に管体10の外側から設置した場合に、鋼製枠体40の左右の側壁41,41に鋼製蓋セグメント50の左右の側壁42,42が当接することで、鋼製蓋セグメント50がそれ以上内側には移動できない状態となり、管体10の開口部1に鋼製蓋セグメント50がセットされた状態となる。
【0043】
また、鋼製蓋セグメント50の左右の側板52,52と前後の側板53,53とには、管体10の開口部1に上述のように鋼製蓋セグメント50をセットした状態で、鋼製枠体40の左右の側壁41,41と、前後の側壁42,42とに形成された複数のねじ孔と重なる位置にそれぞれボルト孔56が形成されており、鋼製蓋セグメント50の左右の側板52,52と前後の側板53,53とを締結できるとともに、鋼製枠体40の左右の側壁41,41と、前後の側壁42,42とを締結できるようになっている。
【0044】
また、鋼製蓋セグメント50は、上述の構成に基づいて、左右の側板52,52と前後の側板53,53とに形成されたボルト孔56が内側に露出した状態となるので、上述の締結は、管体10の内側から行うことができる。
また、鋼製蓋セグメント50を管体10の開口部1に設置した状態では、管体10の外周面と鋼製蓋セグメント50の表板51の外周面とが略連続した円弧面となる。
また、鋼製蓋セグメント50が上述の補強リブ54,55等により十分な強度を有する構造となっていることから、鋼製枠体40の内周側に鋼製蓋セグメント50が配置されて開口部1を塞ぐことにより、上述の鋼製枠体40による補強に加えて、管体10の強度をさらに補強することができる。
【0045】
次に、このコンクリート製管体10を用いた推進工法を説明する。
まず、管体10を構成する半割り状のコンクリートセグメント12,13を、工場で製作し、トレーラー等で現場まで搬送する。
次に、管体10を搬入する立坑の近くに架台を設置し、この架台上に半割り状のコンクリートセグメント12,13のうちの開口部1が形成されていないの一方のコンクリートセグメント13を、凹側を上に向けて戴置する。
【0046】
次いで、管体10を構成する他方の開口部1を有するコンクリートセグメント12を、凹側を下に向けた状態で吊り上げて先に戴置された一方のコンクリートセグメント12に、その上方から載せて、両コンクリートセグメント12,13の接合面18,18を合わせる。
次いで、コンクリートセグメント12,13の周方向にPC鋼材等のPC緊張材30を挿通する。
この際に、上述のように前後の開口部1より端側に配置されるPC緊張材30は、コンクリートセグメント12,13からなる管体10を一周するように設置し、開口部1の周縁より内側に配置されるPC緊張材30は、それぞれ左右2本に分割された状態とされ、これら左右のPC緊張材30がそれぞれアンカー28が設けられた凹部26の左右の周回孔24の開口から上述の鋼製枠体40の開口部1を挟む左右の定着部47の開口まで挿通させられる。
【0047】
そして、鋼製枠体40の定着部47の開口から露出したPC緊張材30の開口部1側端部を鋼製枠体40の定着部47に配置する。すなわち、開口部1を通って管体10を一周するように配置されるPC緊張材30は、開口部1で途切れた構成となることで、2本となり、それぞれの開口部1側端部が、開口部1を間に挟んだ位置で、鋼製枠体40に定着させられる。
そして、定着部47にPC緊張材30の端部を定着する定着具およびPC緊張材30は、凹部である定着部47内に収納された状態となり、鋼製枠体40の内周面側に突出しないようになっている。
【0048】
次いで、PC緊張材30をジャッキ等によって締め付けた後、アンカー28に固定することによって、2つのコンクリートセグメント12,13を強固に一体化する。次いで、PC緊張材30が挿通されたシース22内に充填材を充填するとともに、凹部である定着部47内にも充填材を充填し、定着部47内の定着具およびPC緊張材30の端部を定着部47内に埋めた状態とする。
次に、鋼製蓋セグメント50を凹側を下にした状態で吊り上げて、上述のようにコンクリートセグメント12,13同士を接合して形成された管体10の上側を向いた開口部1内に設置する。この際には、上述の構成により鋼製蓋セグメント50が開口部1から管体10内部に落ちることはなく、開口部1に設置された状態となる。
【0049】
次に、管体10の内側から鋼製蓋セグメント50と鋼製枠体40とをボルトにより締結する。
これにより、開口部1を有し、開口部1が鋼製蓋セグメント50で閉塞された管体10が組み立てられたことになる。なお、このコンクリートセグメント12,13の接合時には、剪断キーの装着やカラー14の連結等も行われる。
【0050】
次いで、この管体10をクレーンにより吊り上げて、地中に立設した立坑の底部に搬入する。
次いで、管体(推進管)10を、先に押し込まれた管体10の後方端に接続しながら地中に押し込んでいく。この際には、管体10が管渠の他の管路が接続される位置に配置されるように、管体10の前後に開口部1が形成されていない通常の管体を配置することになる。
なお、管体10は、立坑の支圧壁(反力壁)と搬入した管体10との間に設けられたジャッキにより、地中に押し込まれるが、この際に管体10に作用する力に対して、管体10に開口部1が形成されていても鋼製枠体40により補強されることで、十分に対応可能となっている。
【0051】
また、二つのコンクリートセグメント12,13を複数のPC緊張材で締め付けて接合するものとしても、開口部1からシース22やPC緊張材が露出することがなく、かつ、十分な強度で二つのコンクリートセグメント12,13同士を接合することができる。
そして、前記開口部1を有する管体10を含む推進管による管渠を構築した後に、前記開口部1を有する管体10の部分を地上もしくは他の地下構築物から掘削し、前記開口部1の部分を露出させ、管体10を備える管渠内から鋼製蓋セグメント50のボルトの締結を解除する。そして、鋼製蓋セグメント50を取り外した後に、他の管路を管渠の開口部1部分に直接接続する。
【0052】
これにより、他の管路の接続部に人孔等の管渠と他の管路との接続用の地下構築物を設け、該地下構築物を介して管渠と他の管路とを接続するようなことがなく、直接管渠に他の管路を接続することが可能となり、管渠に他の管路を接続する際に施工期間の短縮およびコストの低減を図ることができる。
なお、この実施形態は一例であり、管体10に対する開口部1の大きさ等は、強度的に許される範囲ないで変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る推進工法に用いるコンクリート製管体の軸方向に直交する断面図である。
【図2】前記コンクリート製管体の側面図である。
【図3】前記コンクリート製管体の平面図である。
【図4】前記コンクリート製管体を構成する開口部を備えたコンクリートセグメントの軸方向に沿った断面図である。
【図5】前記開口部を閉塞する鋼製蓋セグメントである。
【符号の説明】
【0054】
1 開口部
10 コンクリート製管体
12 半割状コンクリートセグメント
13 半割状コンクリートセグメント
30 PC緊張材
40 鋼製枠体
47 定着部
50 鋼製蓋セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進管を横方向に地中に押し込み、押し込まれた推進管の後方端に管体を接続して押し込む動作を繰り返すことにより、必要な長さの管渠を構築する推進工法に用いられるコンクリート製管体であって、
周面に他の管路を接続するために内外を連通する開口部が形成され、
前記開口部には、当該開口部の周縁部を形成する鋼製枠体が取り付けられ、
前記鋼製枠体に前記開口部を閉塞する鋼製蓋セグメントが着脱自在に取り付けられていることを特徴とするコンクリート製管体。
【請求項2】
一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に合わせた状態で、一対の前記コンクリートセグメント内を周方向に沿うと共に、軸方向に間隔をあけて並べて配置された複数のPC緊張材で締め付けることにより、一対の前記コンクリートセグメント同士を接合して形成され、
一対の前記コンクリートセグメントのうちの一方のコンクリートセグメントに前記開口部が形成され、
前記PC緊張材のうちの前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材は、前記開口部で周方向に開口部に対応する間隔をあけて離れた状態に配置され、
前記鋼製枠体には、前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材の開口部側端部を定着させる定着部が開口部を挟む位置にそれぞれ設けられ、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材は、前記鋼製枠体の開口部を挟んだ二箇所の定着部で前記鋼製枠体の定着部に定着された状態で一対の前記コンクリートセグメントの開口部を除く部分を周方向に沿って配置されて一対の前記コンクリートセグメントを締め付けていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製管体。
【請求項3】
推進管を横方向に地中に押し込み、押し込まれた推進管の後方端に管体を接続して押し込む動作を繰り返すことにより、必要な長さの管渠を構築する推進工法であって、
前記管体のうちの他の管路が接続される管体に、周面に他の管路を接続するために内外を連通する開口部が形成され、前記開口部には、当該開口部の周縁部を形成する鋼製枠体が取り付けられ、前記鋼製枠体に前記開口部を閉塞する鋼製蓋セグメントが着脱自在に取り付けられているコンクリート製管体を用い、
前記管渠を構築した後に、前記開口部を有するコンクリート製管体において、前記鋼製蓋セグメントを外し他の管路を接続することを特徴とする推進工法。
【請求項4】
前記管体として、一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に接合したコンクリート製管体を用い、
一対の半割状のコンクリートセグメントを管状に合わせた状態で、一対の前記コンクリートセグメント内を周方向に沿うと共に、軸方向に間隔をあけて並べて配置された複数のPC緊張材で締め付けることにより、一対の前記コンクリートセグメント同士を接合してコンクリート製管体を形成する際に、
前記コンクリート製管体のうちの少なくとも一つのコンクリート製管体を構成する前記コンクリートセグメントの一つに、前記鋼製枠体を備えた前記開口部が形成され、
前記PC緊張材のうちの前記開口部を通る位置に配置されるPC緊張材は、前記開口部で周方向に前記開口部に対応する間隔をあけて離れた状態に配置されるものとし、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材の前記開口部を挟むように配置される二つの前記開口部側端部を、前記鋼製枠体の開口部を挟んだ二箇所にそれぞれ定着することにより、
前記開口部を通る位置に配置されたPC緊張材を、前記鋼製枠体に定着された状態で一対の前記コンクリートセグメントの開口部を除く部分を周方向に沿って配置し、前記コンクリートセグメントを締め付けることを特徴とする請求項3に記載の推進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138502(P2007−138502A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332429(P2005−332429)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(593012402)SMCコンクリート株式会社 (16)
【Fターム(参考)】