説明

コンクリート部材の製造及び管理システム

【課題】コンクリート床板の所在および状況を的確かつ効率的に把握し、生コン量管理、仮置場管理、架設場管理、および効率的なメンテナンスを行う。
【解決手段】埋め込んだコンクリート部材管理ICタグ12により複数のコンクリート部材11を管理するコンクリート部材11の製造及び管理システムであって、コンクリート部材管理ICタグ12に、コンクリート部材11を配置する仮置場2での位置情報である仮置位置予定情報を記憶させるICタグ書き込み手段14と、入力されたコンクリート部材11の仮置位置情報と仮置位置予定情報とが一致するかを検出し、コンクリート部材11の仮置位置が予定通りか否かの判定結果を出力する仮置位置チェック手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のコンクリート部材にそれぞれ部材管理ICタグを埋設し、この部材管理ICタグから情報を読み書きすることによって上記コンクリート部材を管理するコンクリート部材管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材の製造から架設工程、および架設後の管理においては、そのコンクリート部材の個体識別の方法として、それぞれにペンキ等で識別情報を記入し、これを目視することによって個体識別を行っていた。しかしながら、この方法では記入者によって記入箇所や字体等に個人差がでること、また確認者の確認方法にも個人差がでることから信頼性が十分でなかった。実際に、特に大量のコンクリート部材を扱う作業工程の中では、コンクリート部材個体の原材料の配合比や強度などの特性は凝固した後は判別できないことや、搬送時や架設時に予定通りの場所にコンクリート部材が搬送されていないことなどがあった。また、そのコンクリート部材の製造過程、製造日、架設日等の情報は、架設後には失われることがあった。
【0003】
近年では、RFID技術の普及に伴って、コンクリート部材にICタグを埋設し、このICタグと通信を行うことによってコンクリート部材の情報を管理する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−183257号公報
【特許文献2】特開2006−243918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献は、コンクリート部材またはコンクリート部材の個体の圧縮強度、品質等の情報を管理することを目的とするもので、大量のコンクリート部材の在庫状況や搬送状況を管理するものではなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、コンクリート部材情報を部材管理ICタグに記憶させ、対応するコンクリート部材にこの部材管理ICタグを埋設することで、コンクリート部材の所在および状況を的確かつ効率的に把握し、仮置場管理、架設場管理、および効率的なメンテナンスを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、埋め込んだコンクリート部材管理ICタグにより複数のコンクリート部材を管理するコンクリート部材の製造及び管理システムであって、コンクリート部材管理ICタグに、コンクリート部材を配置する仮置場での位置情報である仮置位置予定情報を記憶させるICタグ書き込み手段と、入力されたコンクリート部材の仮置位置情報と仮置位置予定情報とが一致するかを検出し、コンクリート部材の仮置位置が予定通りか否かの判定結果を出力する仮置位置チェック手段とを備えることを特徴とするコンクリート部材の製造及び管理システム。
【0007】
請求項2記載の発明は、埋め込んだコンクリート部材管理ICタグにより複数のコンクリート部材を管理するコンクリート部材の製造及び管理システムであって、コンクリート部材管理ICタグに、コンクリート部材を配置する架設場での位置情報である架設位置予定情報を記憶させるICタグ書き込み手段と、入力されたコンクリート部材の架設位置情報と架設位置予定情報とが一致するかを検出し、コンクリート部材の架設位置が予定通りか否かの判定結果を出力する架設位置チェック手段とを備えることを特徴とするコンクリート部材の製造及び管理システム。
【0008】
請求項3記載の発明は、各々のコンクリート部材を製造するために必要となる生コン量を示す数値情報である必要生コン量情報を、コンクリート部材管理ICタグにさらに記憶させるICタグ書き込み手段と、複数のコンクリート部材管理ICタグから必要生コン量情報を読み出し、複数の必要生コン量情報を加算して必要生コン量の総量を算出する必要生コン総量算出手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンクリート部材の製造及び管理システム。
【0009】
請求項4記載の発明は、コンクリート部材管理ICタグに、少なくともメンテナンス日情報と、メンテナンス状況情報とをさらに記憶させるICタグ書き込み手段を備えることをさらに特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート部材の製造及び管理システム。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリート部材情報を部材管理ICタグに記憶させ、対応するコンクリート部材にこの部材管理ICタグを埋設して管理するようにしたので、コンクリート部材の所在および状況を的確かつ効率的に把握し、生コン量管理、仮置場管理、架設場管理、または効率的なメンテナンスを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるシステムの構成と処理動作の流れを示す概念図である。
本実施形態例では、コンクリート部材はコンクリート床板であることを想定するが、部材管理ICタグを埋め込んで管理するのはコンクリート部材であればよく、床板でなくとも良い。
【0012】
工場1は、コンクリート床板製造工場である。コンクリート床板(スラブ、床スラブ。以下、床板11)とは、鉛直方向の面荷重を受ける板状のセメント部材で、本実施形態ではプレストレストコンクリートの床板を想定する。プレストレストコンクリートとは、圧縮力には強いが引張力に弱いコンクリートの性質を克服するために、エポキシ被覆やニッケル鋼等から成るPC(プレストレストコンクリート)鋼材を緊張・定着させて、あらかじめ圧縮力(プレストレス)を与えたコンクリートである。このため、荷重による引張力が生じても、この圧縮力が引張力を打ち消すことで、大きな荷重に耐えることが出来る。
【0013】
仮置場2は、製造された床板11を保管しておく場所であり、図4に示すように、仮置場2は格子状に床板11が配置される場所が区画分けされ、それぞれの区画をシマとして、「A12」、「A13」、「B12」、「B13」等のシマ識別情報が付与される。また、このシマ識別情報が記憶されたシマICタグ23がそれぞれの対応するシマ区画に設置される。それぞれのシマには、床板11を形状(型種類)など一定の規則のもとに構築物設計者がシマ区画分けした一または複数の床板11が仮置きされる。
【0014】
架設仮置場5は、例えば架設場3に近接した、架設する床板11を仮置きする場所である。
架設場3は、床板11を架設する場所であり、図5に示すように、床板11を架設する場所を格子状に区分けして、区画のそれぞれをジャケットと呼び、「ジャケット(ア)」「ジャケット(イ)」などとして管理する。さらに、各ジャケット内は列ごとに「X」、「Y」、行ごとに「a」、「b」などの名称をつけて管理し、例えば「ジャケット(ア)−Xa」などとすると場所が一意に定まるようになっており、これをもって各床板11を架設すべき場所を定める。本実施形態において、架設場3は海上高架橋であることを想定するが、海上高架橋である必要性はない。
【0015】
床板11は、工場1で製造されるコンクリート床板である。工場1では複数の床板11が製造され、本実施形態では、例えば計10、000枚程度の床板11が製造されることを想定する。それぞれの床板11には、部材管理ICタグ12が埋設される。
部材管理ICタグ12は、各床板11に埋設させる小型の情報チップで、RFID(Radio frequency identification)の一種である。また、部材管理ICタグ12は、メモリである床板情報記憶部13を有する。
【0016】
床板情報記憶部13は、対応する床板11の情報を記憶する。記憶させる情報の例を図2に示す。例えば、床板情報記憶部13は、図7に示すように、部材管理タグID情報と、仮置場予定情報と、架設位置予定情報と、プレテンション日情報と、打設日情報と、ポストテンション日情報と、製造日情報と、仮置場実績情報と、払出日情報と、架設位置実績情報と、メンテナンス日情報と、メンテナンス内容情報との床板履歴情報を記憶する。
【0017】
部材管理タグID情報は、部材管理ICタグを一意に特定する識別情報である。部材管理タグID情報は、部材管理ICタグ12の製造時に予め記憶されているものとする。
仮置場予定情報は、床板11を製造後、仮置する場所における区画の識別情報であり、仮置場2のシマ区画の識別情報である「A12」、「A13」などの情報とする。仮置場予定情報は、床板11の製造時に記憶される。
【0018】
架設位置予定情報は、床板11を架設する場所における区画の識別情報であり、「ジャケット(ア)−Xa」などの文字列とする。架設位置予定情報は、床板11の製造時に記憶される。
プレテンション日情報は、プレテンションを行った日付の情報であり、プレテンションとは、PC鋼材を緊張させる作業を打設する前に行うことである。
【0019】
打設日情報は、形成した型枠にコンクリートを流し込んだ日付の情報である。
ポストテンション日情報は、ポストテンションを行った日付の情報であり、ポストテンションとは、打設した後にPC鋼材を緊張させる作業を行うことである。
製造日情報は、床板11を製造し、例えば出荷可能となった日付の情報である。
【0020】
仮置場実績情報は、床板11を実際に仮置きしたシマ区画の位置を示す識別情報であり、「A12」「A13」などの情報である。例えば、なんらかの都合により仮置場予定情報に記憶されたシマ区画ではない場所に仮置きを行う場合は、先に上記仮置場予定情報の書き換えを行い、その後に仮置場実績情報を入力する。よってこの場合、正しく設置された床板11に対応する仮置場予定情報と仮置場実績情報とは一致するため、構築物設計者は、仮置場予定情報と仮置場実績情報とが不一致であるデータが存在する場合は製造工程になんらかの不備があったとみなすことができる。
【0021】
払出日情報は、仮置場2から床板11が搬出された日付の情報である。
架設位置実績情報は、床板11を実際に架設した位置の識別情報であり、「ジャケット(ア)−Xa」などの文字列とする。また、架設位置実績情報は、仮置場実績情報と同様に、例えば、なんらかの都合により架設場予定情報に記憶された区画ではない場所に架設を行う場合は、先に上記架設場予定情報の書き換えを行い、その後に架設場実績情報を入力する。よってこの場合、正しく設置された床板11に対応する架設場予定情報と架設場実績情報とは一致するため、構築物設計者は、架設場予定情報と架設場実績情報とが不一致であるデータが存在する場合は製造工程になんらかの不備があったとみなすことができる。
【0022】
メンテナンス日情報は、架設後に、ひび割れの点検や補強などのメンテナンスを行った日付の情報である。
メンテナンス内容情報は、メンテナンス日情報に対応する情報であり、メンテナンス日情報が示す日付に行ったメンテナンス内容を説明する文字情報である。
これらのメンテナンス日情報とメンテナンス内容情報とは、それぞれ複数設けて、複数回のメンテナンス内容を記憶させる構成としても良く、本実施形態では、メンテナンス2回分を記憶させることとし、第1のメンテナンス日情報、第1のメンテナンス内容情報、第2のメンテナンス日情報、第2のメンテナンス内容情報を設けることとする。
【0023】
ハンディR/W(リーダ/ライタ)14は、部材管理ICタグ12およびシマICタグ23と通信を行うハンディタイプのRFIDリーダ/ライタであり、床板情報記憶部13に情報の読み書きを行う。ハンディR/W14は、例えば、文字情報の入力可能な複数のボタン(図3の53)と、数十文字程度の情報を表示可能なディスプレイ(図3の52)とを有することとする。本実施形態では、ハンディR/W14として上記のようなものを想定するが、ICタグとの通信が可能で、かつ文字情報の入力が可能なモバイル端末であれば、R/Wモジュールを組み込んだPDA(Personal Digital Assistants)などでも良い。
【0024】
データ収集装置15は、ハンディR/W14と通信を行い、ハンディR/W14が部材管理ICタグ12から読み取った床板履歴情報、またはシマICタグ23から読み取ったシマ識別情報を取得する。
ハンディR/W14とデータ収集装置15は、工場1と、仮置場2と、架設仮置場5と、架設場3との各ロケーションにそれぞれ設置しても良く、あるいは同じものを持ち歩いて利用しても良い。本実施形態では、これら各ロケーションにそれぞれハンディR/W14とデータ収集装置15を設置することとする。
【0025】
事務所4は、コンクリート床板の状況を管理する事務所であり、管理者端末20と、システム制御サーバ22とを有する。
管理者端末20は、本システムの管理者が利用する端末であり、本実施形態ではいわゆるPC(Personal Computer)を想定し、キーボードやマウスなどの入力デバイスと、液晶ディスプレイなどの表示装置と、演算装置、記憶装置等を備えるPC本体部とを備えることとする。
【0026】
システム制御サーバ22は、本システムを制御する装置であり、本実施形態ではいわゆるPCサーバを想定し、キーボードやマウスなどの入力デバイスと、液晶ディスプレイなどの表示装置と、演算装置、記憶装置等を備えるPC本体部とを備えることとする。システム制御サーバ22は、生コン量計算部21と、DBサーバ16とを備える。
生コン量計算部21は、ハンディR/W14が複数の部材管理ICタグ12から読み込んだ部材管理タグID情報を受信して、床板マスタテーブル17からそれぞれの部材管理タグID情報に対応する必要生コン量を生コン種類ごとに検出し、合算して、受信した複数の部材管理タグID情報に対応する床板11の必要生コン量の合計量を算出する。
【0027】
DB(データベース)サーバ16は、本システムを運用するために必要な情報を記憶するデータベースであり、床板マスタテーブル17と、床板履歴テーブル18と、ロケーションテーブル19とを有する。
床板マスタテーブル17は、製造計画情報を記憶する。床板マスタテーブル17は、図6に示すように、品番情報と、これに対応させて、部材管理タグID情報と、必要生コン量情報と、生コン種類情報と、仮置場予定情報と、架設位置予定情報と、大きさ情報と、型種類情報などを記憶する。
品番情報とは、製造するそれぞれの床板11に付与する製造番号であり、床板11を一意に特定する識別情報である。
【0028】
部材管理タグID情報とは、床板11に埋設した部材管理ICタグを一意に特定する識別情報である。
必要生コン量情報とは、対応する床板11を製造するために必要な生コン量の情報であり、例えば立方メートル、リットルまたはグラムを単位とする数値情報である。
生コン種類情報とは、対応する床板11を製造するために必要な生コンの種類を示す情報であり、生コンの種類は、コンクリートの配合(水と砂利とセメントとの配合比など)や添加剤などによって区別される。例えば、生コン種類情報は、それらの種類を表す文字列情報でも良いし、生コン種類識別情報を記憶して、別に生コン種類識別情報と対応する生コン種類情報を記憶したテーブルを設ける構成としても良い。
大きさ情報とは、製造する床板11の寸法などの情報であり、例えば単位をメートルとする。
型種類情報は、床板11を形状や構成材料比等によりグループ化した種類の名称等の情報である。
【0029】
床板履歴テーブル18は、床板11に埋め込まれた部材管理ICタグ12の部材管理タグID情報を記憶し、各々の部材管理タグID情報に対応させて、床板履歴情報を記憶する。データ構成は床板情報記憶部13(図7)と同様であるが、床板情報記憶部13はそれぞれの床板11に対応する1件の情報を記憶しているのに対し、床板履歴テーブル18は全床板11の情報を蓄積している。
ロケーションテーブル19は、工場1、仮置場2などのロケーションごとに識別情報を設けて、これに対応付けて一または複数の床板11の搬入時と搬出時との情報の履歴を記憶する。例えば、ロケーションテーブル19は、ロケーションID情報、部材管理タグID情報、受払情報、更新日情報の情報を記憶する。
【0030】
ロケーションID情報は、本実施形態では、「工場」、「仮置場」、「架設仮置場」、「架設場」、「事務所」のいずれかのロケーションの情報であり、これらの文字列でも良いし、これらに対応した識別情報としても良い。
部材管理タグID情報とは、任意のロケーションに搬入または搬出された床板11が有する部材管理ICタグ12の部材管理タグIDである。
受払情報とは、任意のロケーションに任意の床板11が搬入されたかまたは搬出されたかを示す情報であり、これらの文字列でも良いし、これらを「0」「1」などに置き換えた識別情報としても良い。
【0031】
更新日情報は、床板11が搬入または搬出された日付を示す情報とする。
生コン工場6は、生コンを製造する工場であり、生コン工場PC端末24を備える。生コン工場PC端末24は、ネットワークを介してシステム制御サーバ22と接続されており、システム制御サーバ22にアクセスすることができる。また、生コン工場PC端末24は、キーボードやマウスなどの入力デバイスと、液晶ディスプレイなどの表示装置と、演算装置、記憶装置等を備えるPC本体部とを備えることとする。
【0032】
次に、本実施の形態にかかるコンクリート部材管理システムを図面を参照して説明する。図2は、本実施の形態にかかるコンクリート部材管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
本実施形態では、10、000枚程度のコンクリート床板を用いて海上高架橋を建設することを想定し、まず工場1で床板11を製造し、仮置場2に仮置きし、架設場3近くの架設仮置場5へ搬送して仮置きし、架設場3へ架設した後、メンテナンスを行うまでの流れを説明する。
【0033】
本実施形態例中の構築物設計者は、床板11の製造から架設、その後のメンテナンスを設計する人物であり、監督者である。本実施形態では、本システムの管理者を兼ねることとするが、構築物設計者とシステム管理者は別人であっても良い。本実施形態例中の床板製造者は、工場や架設現場にて床板11の製造、架設、メンテナンスを行う人物である。
【0034】
まず、構築物設計者は、架設する床板11の数、大きさ、生コン量、仮置場、架設場等の床板マスタ情報を設計・製造計画し、それぞれの床板11に対応する品番(識別情報)を決定する。構築物設計者が、上記で設計した床板マスタ情報を管理者端末20に入力すると、管理者端末20は、床板マスタ情報を床板マスタテーブル17に記憶させる(ステップS101)。マスタ情報の設計には、管理者端末20にインストールしたなんらかの設計用アプリケーションソフトウェアを利用しても良いし、そのアプリケーションソフトが床板マスタテーブル17に床板マスタ情報を記憶させる構成としても良い。
【0035】
本実施形態では、床板11は10、000枚程度であることを想定するので、一度に全ての床板11を打設することはできない。床板11は、複数回に分けて製造される。管理者端末20は、構築物設計者の床板マスタ情報表示要求を受付けて、床板マスタテーブル17に記憶された情報を読み出し、ディスプレイに表示する。構築物設計者は、床板11と同数(10、000個程度)の部材管理ICタグ12を用意し、ディスプレイに表示された情報から今回製造する任意の複数の床板11を選択し、この床板11に対応する部材管理ICタグ12を決定する。
【0036】
構築物設計者が、決定した部材管理ICタグ12の部材管理タグID情報を管理者端末20に入力すると、管理者端末20は、対応する床板マスタテーブル17の品番情報に対応させて、床板マスタテーブル17に部材管理タグID情報を記憶させる。これで、床板マスタテーブル17に記憶されたそれぞれの床板マスタ情報とそれぞれの部材管理ICタグ12の対応付けが行われる。この際、床板マスタ情報を、床板情報記憶部13に記憶させておくこととしても良い。
また、構築物設計者は、ハンディR/W14を利用して、それぞれの部材管理ICタグ12に、対応する仮置場予定情報と、架設位置予定情報とを記憶させる。図9の(c)は、設計後の床板情報記憶部13の情報内容の例である。
【0037】
次に、工場1にて、床板製造者が床板マスタテーブル17に記憶された設計情報を確認する(ステップS102)。床板製造者が設計情報を確認する方法は、構築物設計者が紙などの媒体に印刷した設計図からでも良いし、構築物設計者が設計情報をイントラネットなどのWEBページ上に公開して、床板製造者がこのイントラネット上のWEBページを参照することによっても良い。
床板マスタテーブル17の設計情報を確認すると、床板製造者は、コンクリート打設の前準備として床板11に対応する複数の鉄筋を組立て、対応した部材管理ICタグ12を鉄筋に固定させる。
【0038】
コンクリート打設の際には、ハンディR/W14が、工場1に配置された複数の鉄筋にそれぞれ固定された部材管理ICタグ12と通信を行い、部材管理タグID情報を読み込み、部材管理タグID情報をデータ収集装置15に送信する。データ収集装置15は、複数の部材管理タグID情報を受信し、一度に製造する全ての部材管理タグID情報を受信すると、それらの部材管理タグID情報をシステム制御サーバ22に送信する。
【0039】
システム制御サーバ22が複数の部材管理タグID情報を受信すると、生コン量計算部21は、受信した複数の部材管理タグID情報のすべてに対応する必要生コン量情報を床板マスタテーブル17から読み出す。生コン量計算部21は、読み出した必要生コン量情報である数値情報を合算し、合計必要生コン量を算出する。生コン工場6での生コン製造者は、生コン工場PC端末24を利用してシステム制御サーバ22にアクセスし、上記合計生コン量を問い合わせることで、床板11を製造するために必要な合計生コン量を正確に早く知ることができる。生コン製造者は、上記合計生コン量を確認すると、対応する生コンを製造し、工場1に搬送する。
【0040】
床板製造者は、上記で搬送された生コンを受け取り、この生コンを使用して床板11を製造する(ステップS103)。部材管理ICタグ12を埋め込んだ箇所には、ペンキを塗るなどして、外部から目視して埋め込み箇所が認識できるようにする。またこの際、ハンディR/W14は、床板製造者が入力するプリテンション日情報と、打設日情報と、ポストテンション日情報と、製造日情報等の情報入力を受付け、部材管理ICタグ12と通信して、床板情報記憶部13に記憶させる。図9の(d)は、床板11製造時の床板情報記憶部13の情報内容の例である。
【0041】
床板製造者は、仮置場2のシマ区画に、予めシマ識別情報を記憶させたシマICタグ23を設置しておく。
床板製造者は、上記で製造した床板11を、仮置場2に搬送する(ステップS104)。この際、構築物設計者の設計に従って、仮置場2のシマ区画に対応する情報を仮置場予定情報に記憶した部材管理ICタグ12を有する床板11が搬送される。床板11が仮置場2に搬送され、仮置きされると、床板製造者は、ハンディR/W14を任意のシマ区画に設置されたシマICタグ23に近接させる。ハンディR/W14は、シマICタグ23と通信し、シマICタグ23が記憶するシマ識別情報を取得する。
【0042】
そして、床板製造者が上記の任意のシマ区画内に仮置きされた全ての床板11の部材管理ICタグチェックを行う。部材管理ICタグチェックでは、まず、部材管理ICタグ12にハンディR/W14を近接させ、床板情報記憶部13から部材管理タグID情報と仮置場予定情報とを取得する。ハンディR/W14は、仮置場予定情報と、上記で取得したシマ識別情報とを比較し、これが一致していなければ、搬送誤りであるとエラー判定して、ハンディR/W14が有する画面にエラーメッセージを表示させる。また、ハンディR/W14にスピーカ等を備えておき、エラー判定が発生したときは警告音等を発することとしても良い(ステップS105)。
【0043】
このように、仮置場での位置チェックは、構造物設計者が仮置場を任意に区画分けし、それぞれの区画に、その区画に対応するシマ識別情報を記憶したシマICタグを設置する。また、床板製造者は、ハンディR/W14に、任意の区画に設置されたシマICタグと、任意の区画に仮置するそれぞれの床板11が備える部材管理ICタグとの情報を読み込ませる。そして、ハンディR/W14は、シマICタグに記憶されたシマ識別情報と部材管理ICタグに記憶された仮置場位置予定情報とが一致しているかを検出することで、床板11が予定通りの位置に設置されているか否かを判定する。
【0044】
この部材管理ICタグチェックによって、床板製造者は、仮置きした設置場所が設計・予定通りであるかどうか知ることができる。床板製造者は、搬送誤りであると判定された床板11があった場合には、ハンディR/W14を利用して、床板11に対応する部材管理ICタグ12から仮置場予定情報を読み出し、この仮置場予定情報が示す場所に床板11を搬送する。ハンディR/W14は、部材管理ICタグチェックを行った際に読み込んだ部材管理タグID情報と判定結果とをハンディR/W14の記憶部に記憶する。
またこの際、状況により仮置場予定が変更した場合は、床板製造者は、ハンディR/W14を利用して部材管理ICタグ12の仮置場予定情報の書き換えを行い、その後、床板11を設置するようにしても良い。
【0045】
任意の区画の全床板11の部材管理ICタグチェックが完了すると、データ収集装置15は、ハンディR/W14と通信を行い、ハンディR/W14が記憶した部材管理タグID情報と判定結果とを取得する。データ収集装置15は、取得した部材管理タグID情報と判定結果とをシステム制御サーバ22に送信する。システム制御サーバ22は、受信した部材管理タグID情報と判定結果とを床板履歴テーブル18とロケーションテーブル19とに記憶させる。このように、床板製造者が、床板11がロケーションを移動する際に、ハンディR/W14を利用して搬入と搬出の記録を行うことを、以下、受払記録という。
【0046】
次に、床板製造者は、構築物設計者から任意のシマ区画に置かれた床板11の搬送指示を受けると、搬送指示に対応するシマ区画に仮置きされた床板11を、架設仮置場5に搬送する(ステップS106)。この際、床板製造者は、DBサーバ16が床板履歴テーブル18に記憶された仮置場実績情報を検出することで、任意の床板11が置かれたシマ区画を確認することができる。搬送手段は、トラックでも船等でも良いし、その双方でも良い。搬出時には、床板製造者は区画内の各床板11にハンディR/W14を近接させ、ハンディR/W14は、部材管理ICタグ12と通信を行い、床板情報記憶部13に払出日情報を記憶させる。図10の(e)は、仮置場2を搬出した後の床板情報記憶部13の情報内容の例である。
またこの際、状況により仮置場予定が変更した場合は、床板製造者は、ハンディR/W14を利用して部材管理ICタグ12の仮置場予定情報の書き換えを行い、その後、床板11を設置するようにしても良い。
【0047】
また、シマ区画のすべての床板11が有する部材管理ICタグ12に払出日情報を記憶させると、データ収集装置15にハンディR/W14を近接させる。データ収集装置15は払出情報を取得し、上記と同様に結果情報をシステム制御サーバ22に送信し、システム制御サーバ22は結果情報を床板履歴テーブル18およびロケーションテーブル19とに記憶させる。
【0048】
床板製造者は、搬送した床板11を架設仮置場5に仮置きする(ステップS107)。この際、上記と同様に、床板製造者は、ハンディR/W14を利用して受払記録を行う。
床板製造者は、構築物設計者から架設指示を受けると、ハンディR/W14を利用して床板11に埋め込まれた部材管理ICタグ12から架設位置予定情報を読み出し、架設仮置場5に仮置きされた床板11を、構造物設計者が予め定めた架設場3の所定の場所に搬送する(ステップS108)。この際、床板製造者は受払記録を行う。
【0049】
床板製造者は、床板11の架設を行う(ステップS109)。架設の際は、床板製造者が架設位置情報をハンディR/W14に入力し、対応する架設位置に配置された床板11が備えるそれぞれの部材管理ICタグ12から架設位置予定情報を読み出す。上記架設位置情報と、架設位置予定情報とが一致しない場合、ハンディR/W14は配置エラーと判定し、架設位置チェックを行う。
【0050】
また、架設時は、部材管理ICタグの埋設された面を下に向けるように行い、上面はアスファルト舗装する。アスファルト舗装後は、下面からハンディR/W14を近接することで部材管理ICタグ12と通信を行う。図10の(f)は、架設後の床板情報記憶部13の情報内容の例である。
架設後、ひび割れなどのメンテナンスを行う場合は、作業者は、ハンディR/W14を利用して床板11の下面から部材管理ICタグ12と通信を行い、床板情報記憶部13にメンテナンス状況を記憶させる。図11の(g)は、メンテナンス後の床板情報記憶部13の情報内容の例である。また、床板11に埋め込まれた部材管理ICタグ12が床板11の製造からの履歴情報を記憶しているので、床板製造者は、メンテナンス対象である床板11の履歴情報をサーバなどに問い合わせることなく、作業現地にて的確・迅速に把握できる。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリート床板情報を部材管理ICタグに記憶させ、対応するコンクリート床板にこの部材管理ICタグを埋設して管理するようにしたので、コンクリート床板の所在および状況を的確かつ効率的に把握し、生コン量管理、仮置場管理、架設場管理、または効率的なメンテナンスを行うことができる。
【0052】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンクリート部材管理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0053】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すシーケンス図である。
【図3】ハンディR/Wの例である。
【図4】仮置場の区画分け例を示す図である。
【図5】架設場の区画分け例を示す図である。
【図6】床板マスタテーブルのデータ構造例である。
【図7】床板履歴テーブルのデータ構造例である。
【図8】ロケーションテーブルのデータ構造例である。
【図9】床板情報記憶部のデータ記憶例である。
【図10】床板情報記憶部のデータ記憶例である。
【図11】床板情報記憶部のデータ記憶例である。
【符号の説明】
【0055】
1 工場
2 仮置場
3 架設場
4 事務所
5 架設仮置場
6 生コン工場
11 床板
12 部材管理ICタグ
13 床板情報記憶部
14 ハンディR/W
15 データ収集装置
16 DBサーバ
17 床板マスタテーブル
18 床板履歴テーブル
19 ロケーションテーブル
20 管理者端末
21 生コン量計算部
22 システム制御サーバ
23 シマICタグ
24 生コン工場PC端末
52 ハンディR/Wディスプレイ
53 ハンディR/W入力ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込んだコンクリート部材管理ICタグにより複数のコンクリート部材を管理するコンクリート部材の製造及び管理システムであって、
前記コンクリート部材管理ICタグに、前記コンクリート部材を配置する仮置場での位置情報である仮置位置予定情報を記憶させるICタグ書き込み手段と、
入力されたコンクリート部材の仮置位置情報と前記仮置位置予定情報とが一致するかを検出し、コンクリート部材の仮置位置が予定通りか否かの判定結果を出力する仮置位置チェック手段と
を備えることを特徴とするコンクリート部材の製造及び管理システム。
【請求項2】
埋め込んだコンクリート部材管理ICタグにより複数のコンクリート部材を管理するコンクリート部材の製造及び管理システムであって、
前記コンクリート部材管理ICタグに、前記コンクリート部材を配置する架設場での位置情報である架設位置予定情報を記憶させるICタグ書き込み手段と、
入力されたコンクリート部材の架設位置情報と前記架設位置予定情報とが一致するかを検出し、コンクリート部材の架設位置が予定通りか否かの判定結果を出力する架設位置チェック手段と
を備えることを特徴とするコンクリート部材の製造及び管理システム。
【請求項3】
各々の前記コンクリート部材を製造するために必要となる生コン種類情報と生コン量を示す数値情報である必要生コン量情報とを、前記コンクリート部材管理ICタグにさらに記憶させるICタグ書き込み手段と、
複数の前記コンクリート部材管理ICタグから前記生コン種類情報ごとに前記必要生コン量情報を読み出し、複数の前記必要生コン量情報を加算して必要生コン量の総量を算出する必要生コン総量算出手段と
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンクリート部材の製造及び管理システム。
【請求項4】
前記コンクリート部材管理ICタグに、少なくともメンテナンス日情報と、メンテナンス状況情報とをさらに記憶させるICタグ書き込み手段
を備えることをさらに特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート部材の製造及び管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−162726(P2008−162726A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352070(P2006−352070)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】