説明

コンタクトレンズを製造する方法

向上した品質及び向上した収率を有するコンタクトレンズを製造するための方法及び流体組成物。本発明の方法は、レンズ形成材料を含む流体組成物に、リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質を添加することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズを製造する方法に関する。特に、本発明は、リン脂質を型離型剤として使用するコンタクトレンズの注型成形方法において、型の分離及び型からのレンズの取り外しを容易にし、それにより、製造されるコンタクトレンズの品質及び収率を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、使い捨ての型が関与する従来の注型成形方法(例えば、参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれるPCT公開特許出願第WO/87/04390号、EP−A0367513号、米国特許第5,894,002号)によって、又は再利用可能な型及び化学線照射の空間的制限下での硬化が関与する、改良された注型成形方法(米国特許第5,508,317号、第5,583,163号、第5,789,464号、第5,849,810号)によって、大量生産において経済的に製造することができる。型を用いるレンズの製造における重要な工程は、型を開き、レンズを損傷することなく型からレンズを取り外す工程である。コンタクトレンズ成形プロセスの完了後、重合されたレンズは型に強く付着しやすい。型を開き、型からコンタクトレンズを外す間、レンズにヒビ、キズ及び/又は裂けが生じる虞があり、また最悪の場合は、コンタクトレンズが完全に破損することさえある。このような欠陥のあるコンタクトレンズは廃棄しなければならず、全体の生産収率を低下させる。
【0003】
幾つかの方法が開発又は提案されている。レンズの取り外しに関する1つの方法は、レンズを水和させる方法、すなわち、型を分離した後のレンズ−イン−型(レンズが入った状態の型)のアセンブリを、水を満たした水和タンクに入れる方法である。水和だけでは、レンズは型から外れないことが多い。水和後、レンズを型から手でそっと外す必要がある。このように手を使ってレンズを外す方法は、レンズを損傷する可能性を高める。米国特許第5,264,161号は、型からレンズを外すための改良された方法を開示している。ここでは、型からレンズを外し易くするため、水和浴に界面活性剤を加えている。しかし、水和浴中に界面活性剤を使用しても、型の分離が容易にはならない。レンズを水和する方法では、型を分離する際に生じるレンズの損傷を最小限にすることは不可能であろう。
【0004】
レンズを取り外すためのもう1つの方法は、米国特許第4,159,292号に例証されるような、界面活性剤を内部離型剤として型自体に組み込む方法である。型に内部離型剤を組み込むことで、レンズと型との間の付着力を低減することはできる。しかし、型を繰り返し使用すると、内部離型剤としての界面活性剤が滲出して消尽する可能性がある。
【0005】
レンズを取り外すための更なる方法は、薄膜又はコーティングの形態の外部離型剤(例えば、界面活性剤)を、型の成型面に塗布する方法(例えば、米国特許第4,929,707号及び第5,542,978号に開示されている方法)である。外部離型剤を使用すると、型の成型面を処理するために使用されるその薬剤の一部が、重合されたレンズの表面及び内部へ流動する虞がある。
【0006】
レンズを取り外すためのまた更なる方法は、コンタクトレンズを製造するためのレンズ形成用組成物に内部離型剤を組み込む方法である。内部離型剤は、界面活性剤(米国特許第4,534,916号、第4,929,707号、第4,946,923号、第5,013,496号、第5,021,503号、第5,126,388号、第5,594,088号、第5,753,730号)又は非重合性ポリマー(米国特許第6,849,210号)であってよい。内部離型剤をレンズ形成組成物(すなわち、レンズ配合物)に組み込むことにより、型とレンズとの間の付着力が低減し得るので、比較的小さな力で型を分離することができ、また、レンズをより容易に型から外すことができる。型とレンズとの間の付着力を低減するのに有効であるためには、内部離型剤の一部が、重合されたレンズの表面に移動する必要がある。高い精度、正確度及び再現性を有しかつ低コストである、ヒドロゲルコンタクトレンズを注型成形する技術を開発するために、これまで大変な努力が払われてきた。このような製造技術の一つが、米国特許第5,508,317号、第5,583,463号、第5,789,464号、及び第5,849,810号に記載されるような、実質的にモノマーを含まず、エチレン性不飽和基を有する実質的に純粋なプレポリマーを含むレンズ形成用組成物、再利用可能な型、及び空間的制限下の化学線(例えば、UV)での硬化が関与する、いわゆるLightstream Technology(登録商標)(CIBA Vision)である。
【0007】
しかしながら、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造における当該技術の優れた潜在的可能性すべての実現には、それを阻む現実的な制約が存在する。例えば、共有の米国特許第7,091,283号、第7,268,189号及び第7,238,750号に開示されているシリコーン含有プレポリマーを、シリコーンヒドロゲルレンズ配合物の調製に使用する場合、そのプレポリマーを可溶化するのに、通常、有機溶媒が必要となる。このようなレンズ配合物を、Lightstream Technology(登録商標)によるシリコーンヒドロゲルの製造に使用すると、UV架橋後の型内の硬化したレンズが、有機溶媒が水と交換される前に、溶媒中で膨張し続ける。このようなレンズは、開型及び離型プロセスに耐えることができない虞がある。硬化したレンズは、有機溶媒中で膨張した状態にあり、剛性及び靱性が不適当(例えば、低すぎる)であるためである。このため、生産収率が低くなる虞があり、開型及び離型プロセスで生じるレンズの欠陥に起因して、生産収率が低くなり、生産コストが高くなりうる。しかし、従来の離型剤は、シリコーン含有プレポリマーからコンタクトレンズを製造する上で、開型及び離型プロセスで生じるレンズ欠陥を低減するのに有効ではない。型を分離する際に生じる欠陥は、Lightstream Technology(登録商標)によるシリコーン含有プレポリマーを用いてコンタクトレンズを製造する上で、大きな問題となりうる。
【0008】
したがって、新規な離型剤をコンタクトレンズの成形に使用する方法が求められている。また、新規な離型剤をシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの成形に使用する方法も求められている。さらに、Lightstream Technology(登録商標)でのシリコーン含有プレポリマーコンタクトレンズの成型に新規な離型剤を使用することによって、型分離力及びレンズ−型間の付着力を低減させ、それにより達成される向上した品質及び向上した収率でコンタクトレンズを注型成形する方法も求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1つの態様において、比較的高い品質及び比較的高い収率を有するコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、(1)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料及びリン脂質を含み、レンズ形成材料は化学線で架橋及び/又は重合可能である);(2)型内のレンズ形成材料を架橋/重合して、ポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程;及び(3)型を分離する工程(ここで、リン脂質を含まないものと比較して、型の平均離型力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質が存在する)を含む。
【0010】
本発明は、もう1つの態様において、比較的高い品質及び比較的高い収率を有するコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、(1)コンタクトレンズの型を用意する工程、(2)型の成型面の少なくとも一部にリン脂質溶液の層を適用する工程、(3)前記層を少なくとも部分的に乾燥させる工程、(4)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料を含み、レンズ形成材料は、化学線で架橋及び/又は重合可能である);(5)型内のレンズ形成材料を架橋/重合して、ポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程;及び(6)型を分離する工程(ここで、リン脂質又はその誘導体を含まないものと比較して、型の平均離型力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質が存在する)を含む。
【0011】
好ましい実施態様の詳細な説明
ここで、詳細に本発明の実施態様に言及する。本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本発明において種々の変更及び改変がなされうることはことは当業者に明らかであろう。例えば、一つの実施態様の一部として説明又は記載されている特徴を、別の実施態様に用いて、さらに別の実施態様を得ることができる。したがって、本発明はこのような変更及び改変を、添付請求項の範囲及びそれらの均等物に含むものである。本発明の他の目的、特徴及び態様は、次の詳細な説明に開示されているか、又はそれから明らかである。本議論は例示の実施態様だけの記載であり、本発明のより広い態様を限定するものではないことは当業者によって理解されるべきである。
【0012】
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で用いる命名法及び実験方法は、当技術分野において周知であり、一般に使用されているものである。例えば当技術分野において及び種々の一般的な参考文献で提供された従来の方法が、これらの方法で用いられる。用語が単数形で示されている場合、文脈で明確に別段の定めをした場合を除き、その用語の複数形も包含する。よって、例えば、リン脂質への言及は、単数のリン脂質及び2つ以上のリン脂質を包含する。本明細書で用いる命名法及び後述する実験方法は、当技術分野において周知であり、一般に使用されているものである。開示全体で用いられている以下の用語は、他に断りがない限り、以下の意義を有すると理解されるべきである。
【0013】
本明細書で用いる「眼用デバイス」は、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、眼の上若しくは眼の回り又は眼の付近で用いられる他の眼用デバイス(例えば、ステント、緑内障シャントなど)を指す。
【0014】
「コンタクトレンズ」は、装着者の眼の上又は眼内に置くことができる構造物を指す。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善、又は変えることができるが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当技術分野において公知の又は後に開発される任意の適切な材料から作ることができ、ソフトレンズでも、ハードレンズでも、又はハイブリッドレンズでもよい。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。
【0015】
本明細書で用いる、コンタクトレンズの「フロント面又は前面」は、装着中、眼から離れた方を向くレンズの面を指す。典型的には、実質的に凸状である前面は、レンズのフロント・カーブと呼んでもよい。
【0016】
本明細書で用いる、コンタクトレンズの「リア面又は後面」は、装着中、眼に面するレンズの表面を指す。典型的には、実質的に凹状であるリア面は、レンズのベース・カーブと呼んでもよい。
【0017】
「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」は、完全に水和した場合、少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマー材料を指す。
【0018】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー又は少なくとも1種のシリコーン含有マクロマー又は少なくとも1種の架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物を共重合することによって得られるシリコーン含有ヒドロゲルを指す。
【0019】
本明細書で用いる「親水性」は、脂質とよりも水と容易に会合する材料又はその部分を表す。
【0020】
「モノマー」は、重合することができ、1種以上の化学線架橋性基を含む低分子量化合物を意味する。低分子量は、通常、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0021】
「化学線架橋性基」は、化学線照射により、同種又は異なる種の他の基と反応して、共有結合を形成することができる基を意味する。化学線架橋性基の例は、非限定的に、アクリル基、チオール基、エン含有基を含む。アクリル基は、化学線照射によりフリーラジカル連鎖反応を起こし得る。チオール基(−SH)及びエン含有基は、2006年12月13日出願の共有の同時係属US米国特許出願番号60/869,812号(発明の名称:「光誘導ステップ成長重合に基づく眼科用装置の製造」、参照により全文が本明細書に組み込まれる)に記載のとおり、チオール−エン逐次ラジカル重合に関与することができる。
【0022】
「アクリル基」は、下記式:
【0023】
【化1】


(但し、カルボニルは、O又はNに結合している)を有する有機基である。
【0024】
「エン含有基」は、カルボニル基(−CO−)、窒素原子、又は酸素原子に直接結合していない炭素−炭素の二重結合を含有し、式(I)〜(III)のいずれか1つにより定義される一価又は二価の基である。
【0025】
【化2】


[式中、Rは水素、又はC〜C10アルキルであり;R及びRは、互いに独立して水素、C〜C10アルケン二価基、C〜C10アルキル、又は−(R18−(X−R19であり、ここでR18は、C〜C10アルケン二価基、Xは、エーテル結合(−O−)、ウレタン結合(−N)、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、又はカルボニルであり、R19は、水素、単結合、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、C〜C12アミノアルキル基、C〜C18アルキルアミノアルキル基、C〜C18カルボキシアルキル基、C〜C18ヒドロキシアルキル基、C〜C18アルキルアルコキシ基、C〜C12アミノアルコキシ基、C〜C18アルキルアミノアルコキシ基、C〜C18カルボキシアルコキシ基、又はC〜C18ヒドロキシアルコキシ基であり、a及びbは、互いに独立して、0又は1であるが、但しRとRのうちの1つだけが、二価基であり;R〜Rは、互いに独立して、水素、C〜C10アルケン二価基、C〜C10アルキル、又は−(R18−(X−R19であるが、但し、R〜Rのうちの1つ又は2つだけが二価基であり;n及びmは、互いに独立して、0〜9の整数であるが、但し、nとmの合計は、2〜9の整数であり;R10〜R17は、互いに独立して、水素、C〜C10アルケン二価基、C〜C10アルキル、又は−(R18−(X−R19であるが、但し、R10〜R17のうちの1つ又は2つだけが二価基である。]
【0026】
本明細書において、「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、化学線又は熱により重合することができるモノマーを意味する。
【0027】
用語「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」は、本明細書で広義に使用し、1個の>C=C<基を含有する任意の基を包含することを意図する。エチレン性不飽和基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、又は他のC=C含有基が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書において、重合性の組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合に関連して「化学線により」とは、硬化(例えば、架橋及び/又は重合される)が、例えばUV照射、電離放射線(例えば、ガンマ線又はX線照射)、電磁波照射等のような、化学線照射により行われることを意味する。熱硬化又は化学線硬化の方法は、当業者に周知である。
【0029】
「親水性モノマー」は、水溶性であるか、少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマーを重合により形成することができるモノマーを指す。
【0030】
本明細書で用いる「疎水性モノマー」は、水に不溶性であり、10重量%未満の水しか吸収できないポリマーを重合により形成することができるモノマーを指す。
【0031】
「マクロマー」は、重合/架橋可能であり、1個以上の化学線架橋性基を含む、中及び高分子量化合物を指す。典型的には、中及び高分子量は、平均分子量が700ダルトンより高いことを指す。
【0032】
「プレポリマー」は、化学線架橋性基を含有し、化学線により硬化(例えば、架橋される)し、出発ポリマーよりもはるかに高い分子量を有する架橋されたポリマーを得ることができる、出発ポリマーを指す。
【0033】
「シリコーン含有プレポリマー」は、シリコーンを含有し、化学線により硬化して出発ポリマーよりもはるかに高い分子量を有する架橋されたポリマーを得ることができる、プレポリマーを指す。
【0034】
本明細書で用いるポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を包含する)の「分子量」は、他に特記しない限り、又は他に試験条件を示さない限り、数平均分子量を指す。
【0035】
「ポリマー」は、1種以上のモノマーを重合することによって形成される材料を意味する。
【0036】
本明細書で用いる用語「多数の(multiple)」は、3以上を指す。
【0037】
「光開始剤」は、光の使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。適切な光開始剤には、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプ、及びIrgacure(登録商標)タイプが挙げられるが、これらに限定されず、Darocure(登録商標)1173、及びIrgacure(登録商標)2959が好ましい。
【0038】
「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。適切な熱開始剤の例には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイルなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、熱開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0039】
「化学線照射の空間的制限」は、明確な周辺境界線を有する領域に、空間的に制限された方法で、光線の形態でのエネルギー放射が、例えば、マスク又はスクリーン又はそれらの組み合わせの手段によって導かれて作用する動き又はプロセスを意味する。例えば、紫外線照射の空間的制限は、(全文が参照により本明細書に組み込まれる)米国特許第6,627,124号の図1〜9に概略的に示されるように、紫外線不透過領域(マスクされた領域)に囲まれた、透明又は開口された領域(マスクされていない領域)を有するマスク又はスクリーンを使用することにより達成することができる。マスクされていない領域は、マスクされている領域と明確な周辺境界線を有する。
【0040】
レンズに関する「可視性ティント」は、使用者が、レンズ貯蔵、消毒又は洗浄容器内の透明溶液の中でレンズを容易に見つけることができるようにするための、レンズの染色(又は着色)を意味する。染料及び/又は顔料をレンズの可視性ティントに使用できることは当技術分野において周知である。
【0041】
「染料」は、溶媒に可溶で、色を付与するために使用する物質を意味する。染料は、典型的には半透明であり、光を吸収するが散乱させない。任意の適切な生体適合性の染料を、本発明に使用できる。
【0042】
「顔料」は、それが不溶性である液体に懸濁する粉末物質を意味する。顔料は、蛍光顔料、リン光顔料、真珠箔顔料、又は従来の顔料とすることができる。任意の適切な顔料を使用できるが、本発明では顔料が耐熱性、無毒、及び水溶液に不溶性であることが好ましい。
【0043】
本明細書で用いる用語「流体」は、材料が液体のように流れることができることを示す。
【0044】
本明細書で用いる用語「表面改質」は、物品が、その形成前又は形成後に、(1)コーティングが物品表面に施され、(2)化学種が物品表面に吸着され、(3)物品表面の化学基の化学的性質(例えば、帯電)が変更されるか、又は(4)物品の表面特性がその他の点で変更される、表面処理プロセス(又は表面改質プロセス)により処理されたことを意味する。表面処理プロセスの例は、エネルギー(例えば、プラズマ、静電荷、照射、又は他のエネルギー源)による表面処理、化学的処理、親水性モノマー又はマクロマーの物品表面へのグラフト、(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第6,719,929号に開示されている型転写コーティングプロセス、(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第6,367,929号及び第6,822,016号で提案されているコンタクトレンズを製造するためのレンズ配合物への湿潤剤の組み込み、(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許出願第60/811,949号に開示されている補強型転写コーティング、及び(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許シリアル番号第6,451,871号、第6,719,929号、第6,793,973号、第6,811,805号、第6,896,926号に記載されている方法によって得る、レイヤー・バイ・レイヤーコーティング(「LbLコーティング」)を含むがそれらに限定されない。
【0045】
本明細書で用いる「抗菌剤」は、その用語が当技術分野において公知であるような、微生物の増殖を削減又は排除又は阻害することができる化学物質を指す。
【0046】
「抗菌金属ナノ粒子」は、本質的に抗菌金属製であり、寸法が1マイクロメーター未満である粒子を指す。抗菌金属ナノ粒子中の抗菌金属は、その1種以上の酸化状態で存在することができる。例えば、銀含有ナノ粒子は、その1種以上の酸化状態での銀、例えばAg0、Ag1+、及びAg2+を含有することができる。
【0047】
本明細書で用いるレンズの「酸素伝達率(oxygen transmissibility)」は、酸素が特定の眼用レンズを通過する速度である。酸素伝達率Dk/tは、従来からbarrer/mmの単位で表され、tは測定する範囲の材料の平均厚さ[単位mm]であり、「barrer/mm」は:
[(cm3酸素)/(cm2)(sec)(mm2Hg)]×10-9
と定義される。
【0048】
レンズ材料の固有の「酸素透過度(oxygen permeability)」Dkは、レンズの厚さに依存しない。固有の酸素透過度は、酸素が材料を通過する速度である。酸素透過度は、従来からbarrerの単位で表され、「barrer」は、
[(cm3酸素)(mm)/(cm2)(sec)(mm2Hg)]×10-10
と定義される。
【0049】
これらは当技術分野において通常用いる単位である。したがって、当技術分野での使用と一致させるために、単位「barrer」は、前記定義の意味を有する。例えば、Dk(「酸素透過度barrer」)が90barrer及び厚さが90ミクロン(0.090mm)のレンズは、100barrer/mmのDk/t
【数1】


(酸素伝達率barrer/mm)を有することになる。本発明によれば、材料又はコンタクトレンズについての高い酸素透過度は、厚さ100ミクロンのサンプル(フィルム又はレンズ)を用いて、実施例に記載した電気分析の方法にしたがって測定した見掛けの酸素透過度が少なくとも40barrer以上であるという特徴がある。
【0050】
レンズを通る「イオン透過度」は、イオノフラックス拡散係数(Ionoflux Diffusion Coefficient)及びイオノトンイオン透過係数(Ionoton Ion Permeability Coefficient)の両方に相関する。
【0051】
イオノフラックス拡散係数Dは、以下のように、フィックの法則(Fick's law)を適用することにより決定される。
D=−n’/(A×dc/dx)
(式中、
n’=イオン輸送の速度[mol/min]
A=露出されたレンズの面積[mm2]
D=イオノフラックス拡散係数[mm2/min]
dc=濃度差[mol/L]
dx=レンズの厚さ[mm])
【0052】
次に、イオノトンイオン透過係数Pは、次の式にしたがって決定される。
ln(1−2C(t)/C(0))=−2APt/Vd
(式中、
C(t)=受容セル中のナトリウムイオンの時間tでの濃度
C(0)=供与セル中のナトリウムイオンの初期濃度
A=膜の面積、すなわち、セルに露出されたレンズ面積
V=セルコンパートメントの容積(3.0ml)
d=露出された範囲でのレンズの平均厚さ
P=透過係数)
【0053】
イオノフラックス拡散係数Dは、約1.5×10-6mm2/min超が好ましく、約2.6×10-6mm2/min超がより好ましく、約6.4×10-6mm2/min超が最も好ましい。
【0054】
涙の良好な交換を確保し、最終的に、角膜の健康を確保するためには、レンズが眼球上で動くことが必要であることは公知である。イオン透過度は、水の透過度に正比例すると考えられているため、イオン透過度は、レンズの眼球上での動きの予測指標の1つである。
【0055】
本明細書で用いる用語「型分離力」は、型内でコンタクトレンズを注型成形した後に、型を分離するのに必要な力を指す。型分離力は、型とその中で注型成形されたレンズとの間の付着力に比例する。
【0056】
「平均型分離力」は、少なくとも10個の型分離力の個別の測定値(すなわち、10個のテストサンプル)を平均することによって得る値を指す。
【0057】
一般に、本発明は、型(又は型半)とその型内で注型成形されたコンタクトレンズとの間の付着力を低減する方法に関する。本発明の方法は、レンズ形成配合物(組成物)中の内部離型剤としてのリン脂質に依存する。本発明の方法は、リン脂質溶液を型表面にコーティングするための外部離型剤としてのリン脂質に依存することもできる。本発明のリン脂質は、リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するために選択される。
【0058】
本発明は、一部には、化学線架橋性のシリコーン含有プレポリマーをレンズ形成材料として含むレンズ形成組成物中で、例えば、ホスファチジルコリン又はPEG化したホスファチジルエタノールアミンのようなリン脂質を、有効な離型剤として使用することができるという発見に基づく。本発明は、また、再利用可能な型をレンズの製造に使用した場合で、再利用可能な型が、ガラス、PMMA、石英、TOPAS(登録商標)又はCaFのような材料からできている場合に、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーをレンズ形成材料として含むレンズ形成組成物中で、例えば、ホスファチジルコリン又はPEG化ホスファチジルエタノールアミンのようなリン脂質を有効な離型剤として使用することができるという知見に基づく。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの再利用可能な型への付着力を低減するというこの利点は、品質を高め、生産収率を増大させる。本発明は、さらに、リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン又はPEG化ホスファチジルエタノールアミンは、型付着力ばかりではなく、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面をさらに親水性にする、すなわち、それらを水濡れ性にするという発見に基づく。水又は水性の液体で十分に湿潤することが、多くの場合、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの利用の前提条件となる。コンタクトレンズを親水性にするためには、通常、追加の処理工程が必要である。ホスファチジルコリン及び/又はPEG化ホスファチジルエタノールアミンを使用することにより、このような追加の処理工程数を減らす、又は追加の処理工程を省くことができる。
【0059】
発明者らは、如何なる特定の理論にも束縛されることを望まないが、離型剤の存在による型分離力の低減は、リン脂質が、親水性セグメントを有する化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーを含むレンズ形成組成物中を移動して、型と型内のレンズ形成組成物との間の境界面に達することができるためであると考えられる。リン脂質は、従来の離型剤とは異なり、型表面で単層又は二重層を形成することができる。その差は、おそらく、リン脂質特有の構造並びに物理的及び化学的な性質による。
【0060】
本発明は、1つの態様において、比較的高い品質及び比較的高い収率を有するコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、(1)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料及びリン脂質を含み、レンズ形成材料は、化学線で架橋及び/又は重合可能である);(2)型内のレンズ形成材料を架橋/重合してポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程;及び(3)型を分離する工程(ここで、リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質が存在する)を含む。
【0061】
本発明は、もう1つの態様において、比較的高い品質及び比較的高い収率を有するコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、(1)コンタクトレンズの型を用意する工程、(2)型の成型面の少なくとも一部にリン脂質溶液の層を適用する工程、(3)前記層を少なくとも部分的に乾燥させる工程、(4)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料を含み、レンズ形成材料は、化学線で架橋及び/又は重合可能である);(5)型内のレンズ形成材料を架橋/重合して、ポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程;及び(6)型を分離する工程(ここで、リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質又はその誘導体が存在する)を含む。
【0062】
本発明によれば、増大した生産収率とは、離型剤をレンズ形成組成物に添加することにより、コンタクトレンズ生産の収率が増大することを表すことを意図する。「改良されたレンズ品質」とは、離型剤の不在でのものと比較して、生産されたコンタクトレンズの品質がレンズ形成組成物中の離型剤の存在下で向上することを表すことを意図する。
【0063】
好ましい実施態様において、型分離力のばらつきを抑制するのに十分な量のリン脂質が存在する。
【0064】
本発明によれば、流体組成物は、溶液又は無溶媒の液体又は約80℃未満の溶融液である。流体組成物は、場合により、光開始剤、可視性ティント剤、充填剤等の種々の成分をさらに含みうる。本発明の流体組成物は、光開始剤、可視性ティント剤、充填剤、抗菌剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、光増感剤、又はそれらの混合物のような他の成分をさらに含みうる。
【0065】
本発明には、任意のレンズ形成材料を用いることができる。コンタクトレンズの製造に適したレンズ形成材料は、数多くの発行済米国特許により説明がなされており、当業者によく知られている。好適なレンズ形成材料は、ヒドロゲルを形成することができる。レンズ形成材料は、プレポリマー、プレポリマーの混合物、モノマーの混合物、又は1つ以上のプレポリマー及び1つ以上のモノマー及び/又はマクロマーの混合物とすることができる。任意のシリコーン含有プレポリマー又は任意のシリコーンを含有しないプレポリマーを本発明に使用できることが理解されよう。
【0066】
レンズ形成材料の溶液は、当業者に公知の任意の適切な溶媒にレンズ形成材料を溶解することにより調製することができる。適切な溶媒の例は、水、アルコール、例えば、低級アルカノール(例えば、エタノール、メタノール又はイソプロパノール)、カルボン酸アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、双極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド又はメチルエチルケトン、ケトン(例えば、アセトン又はシクロヘキサノン)、炭化水素(例えば、トルエン、エーテル、THF、ジメトキシエタン又はジオキサン)、及びハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン)、及び適切な溶媒の混合物(例えば、水とアルコールとの混合物、水/エタノール又は水/メタノールの混合物)。
【0067】
コンタクトレンズを製造するための重合性材料(又はシリコーンヒドロゲルレンズ形成材料)は、当業者に周知である。重合性材料は、少なくとも1種のシリコーン含有プレポリマー、モノマー、マクロマー又はそれらの組合せを含みうる。本発明によれば、重合性材料は、少なくとも1種のシリコーン含有プレポリマーを含む。シリコーンプレポリマーは、化学線架橋性基を含み、好ましくは、アクリル基、チオール基、エン含有基及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも3つの化学線架橋性基を含む。
【0068】
本発明のプレポリマーの架橋が、フリーラジカル連鎖成長重合の機構に基づく場合、プレポリマーは、少なくとも2つのアクリル基、好ましくは少なくとも3つのアクリル基を含む。
【0069】
本発明のプレポリマーの架橋が、チオール−エン逐次ラジカル重合の機構に基づく場合、プレポリマーの化学線架橋性基は、好ましくは、少なくとも3つのチオール基又は少なくとも3つのエン含有基を含む。
【0070】
プレポリマーが、多数のエン含有基を含む場合、これらの基は、2つ以上のチオール基を有する逐次架橋剤によって提供され得るチオール基の存在下で、チオール−エン逐次ラジカル重合を行う。同様に、プレポリマーが多数のチオール基を含む場合、これらの基は、2つ以上のエン含有基を有する逐次架橋剤によって提供され得るエン含有基の存在下で、チオール−エン逐次ラジカル重合を行う。
【0071】
任意の適切な化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーを本発明に使用することができる。好ましくは、シリコーン含有プレポリマーは、親水性のセグメントと疎水性のセグメントとを含む。シリコーン含有プレポリマーの例は、参照によりそれらの全文がここに組み込まれる、共有の米国特許第6,039,913号、第7,091,283号、第7,268,189号及び第7,238,750号、並びに2000年3月14日出願の米国特許出願第09/525,158号(名称:「有機化合物」)、2006年12月13日出願の第11/825,961号、第60/869,812号(「光誘起逐次重合に基づく眼用デバイスの製造」と題する、2006年12月13日出願の第60/869,817号(「化学線硬化性シリコーンヒドロゲルコポリマー及びその使用」)と題する、2007年3月22日出願の第60/896,325号(「懸垂ポリシロキサン含有ポリマー鎖を有するプレポリマー」)、2007年3月22日出願の第60/896,326号(「懸垂親水性ポリマー鎖を有するシリコーン含有プレポリマー」)、米国第2008/0015315号(「新規なポリマー」)及び米国第2008/0152800号(「生物医学的物品のコーティングプロセス」)に記載されているそれらである。
【0072】
本発明のシリコーン含有プレポリマーは、好ましくは、一切の親水性ビニルモノマーの不在下、(見掛けの酸素透過度が、少なくとも40barrer、好ましくは少なくとも約60barrer、さらにより好ましくは少なくとも80barrerであることを特徴とする)高い酸素透過性及び(約90度以下、好ましくは約80度以下、より好ましくは約70度以下、さらにより好ましくは約60度以下の平均的な水接触角を有することを特徴とする)親水性の表面を有するシリコーンヒドロゲル又はコンタクトレンズを形成することができる。本シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズは、好ましくは(イオノフラックス拡散係数、Dは、好ましくは、約1.5×10−6mm2/minより大きく、より好ましくは、約2.6×10−6mm2/minより大きく、最も好ましくは、約6.4×10−6mm2/minより大きいことを特徴とする)高いイオン透過度を有する。本シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズの弾性率は、好ましくは、約0.2MPa〜約2.0MPa、好ましくは約0.3MPa〜約1.5MPa、より好ましくは約0.4MPa〜約1.2MPaである。好ましくは、本シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズの完全に水和した場合の含水率は、好ましくは約15重量%〜約80重量%、より好ましくは約20重量%〜約65重量%である。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの含水率は、米国特許第5,849,811号に開示されているバルク法(Bulk Technique)にしたがって測定することができる。
【0073】
好ましくは、本発明で使用するプレポリマーは、任意の公知の方法、例えば、アセトンのような有機溶媒による沈殿、濾過及び洗浄、適切な溶媒中の抽出、透析又は限外濾過によって事前に精製するが、限外濾過が特に好ましい。この精製方法により、プレポリマーは、極めて純粋な形態、例えば、塩のような反応生成物を含まないか、少なくとも実質的に含まず、また、出発物質を含まない、濃縮溶液の形態で得られる。本発明による方法で使用するプレポリマーにとって好ましい精製方法、限外濾過は、当業者に公知の方法で実施することができる。限外濾過を、例えば、2〜10回繰り返して実施することが可能である。あるいは、限外濾過を、選択した純度が得られるまで連続して実施することができる。選択した純度は、原理上、所望するだけ高くすることができる。純度の適切な測定は、例えば、副産物として得られる溶解した塩の濃度であり、これは、公知の方法で容易に測定可能である。こうして、重合後の眼用デバイスは、例えば、重合されなかったマトリックス形成物質の高コストで複雑な抽出といった、その後の精製を必要としない。さらに、プレポリマーの架橋を、溶媒の非存在下、すなわち水溶液中で行うことができるので、その後の溶媒の入れ替えや水和工程を必要としない。
【0074】
コンタクトレンズを製造するのに適切な任意のモノマーを本発明において使用することができる。好ましくは、ビニルモノマーを本発明において使用する。
【0075】
シリコーン含有ビニルモノマーの例は、メタクリロキシアルキルシロキサン、3−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、モノメタクリル化ポリジメチルシロキサン、メルカプト−末端ポリジメチルシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリス(ペンタメチルジシロキサニル)−3−メタクリラートプロピルシラン(T2)、及びトリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリラート(TRIS)を含むがそれらに限定されない。好適なシロキサン含有モノマーは、TRISであり、これは3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを指し、CAS No.17096−07−0で表示される。用語「TRIS」は、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランのダイマーをも含む。
【0076】
エチレン性不飽和基を有する任意の適切なシロキサン含有マクロマーを使用して、シリコーンヒドロゲル材料を製造することができる。特に好適なシロキサン含有マクロマーは、全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,760,100号に記載される、マクロマーA、マクロマーB、マクロマーC、及びマクロマーDからなる群より選択される。2つ以上の重合性基(ビニル基)を含有するマクロマーもまた、架橋剤として働くことができる。ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレンオキシドからなるジブロック及びトリブロックマクロマーも有用である。このようなマクロマーは、アクリラート、メタクリラート又はビニル基で、モノもしくはジ官能化されている場合がある。例えば、メタクリラートエンドキャップポリエチレンオキシド−ブロック−ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキシドを使って、酸素透過率を向上させることができよう。
【0077】
本発明によれば、重合性材料は、親水性ビニルモノマーも含むことができる。可塑剤として作用することのできるほぼすべての親水性ビニルモノマーを、本発明の流体組成物として使用することができる。好適な親水性モノマーの中には、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリラート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリミジン、グリセロールメタクリラート、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アクリル酸、メタクリル酸、及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)がある。
【0078】
重合性材料は、疎水性モノマーも含むことができる。重合性流体組成物に一定量の疎水性ビニルモノマーを組み込むことにより、得られるポリマーの機械的特性(例えば、弾性係数)が向上するであろう。
【0079】
水溶性化学線架橋性プレポリマーの例は、(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第6,479,587号又は米国特許出願公開第2005/01 13549 A1に記載されている水溶性架橋性ポリウレアプレポリマー;(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第5,583,163号及び第6,303,687号に記載されている水溶性架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマー;(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第2004/0082680 A1に記載されている水溶性架橋性ポリ(オキシアルキレン)含有ポリウレタンプレポリマー;「架橋性ポリ(オキシアルキレン)含有ポリアミドプレポリマー」と題する、(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)2004年11月22日出願の同時係属米国特許出願第60/630,164号に記載されている水溶性架橋性ポリ(オキシアルキレン)含有ポリアミドプレポリマー;米国第5,849,841号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されているポリビニルアルコール誘導体、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミン;架橋性ポリアクリルアミド;欧州特許655,470号及び米国第5,712,356号に記載のビニルラクタム、MMA及びコモノマーの架橋性統計的コポリマー;欧州特許712,867号及び米国第5,665,840号に開示されているビニルラクタム、ビニルアセタート及びビニルアルコールの架橋性コポリマー;欧州特許932,635号及び米国第6,492,478号に開示されている架橋性側鎖を有するポリエーテル−ポリエステルコポリマー;欧州特許958,315号及び米国第6,165,408号に開示されている分岐鎖ポリアルキレングリコール−ウレタンプレポリマー;欧州特許961,941号及び米国第6,221,303号に開示されているポリアルキレングリコール−テトラ(メタ)アクリラートプレポリマー;及びPCT特許出願WO2000/31150号及び米国第6,472,489号開示されている架橋性ポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマーを含むがこれらに限定されない。
【0080】
重合性材料は、1つ以上のモノマー及び/又は1つ以上の架橋剤(即ち、2つ以上のビニル基又は3つ以上のチオール又はエン含有基を有し、700ダルトン未満の分子量を有する化合物)を、場合により含むことはできるが、好ましくは含まない。しかし、最終的な眼用デバイスが、許容できない量の未重合のモノマー及び/又は架橋剤を含有することがないように、これらの成分の量は少量であるべきである。許容できない量の未重合のモノマー及び/又は架橋剤が存在すると、それらを除去するために抽出が必要となり、高コストで非効率的な追加の工程が必要になる。ただし、好ましくは、重合性材料は、モノマー及び架橋剤(即ち、モノマーと架橋剤との組み合わせは、好ましくは約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、さらにより好ましくは約0.5重量%以下である。)を実質的に含まない。
【0081】
流体組成物は、例えば、重合開始剤(例えば、光開始剤又は熱開始剤)、可視性ティント剤(例えば、染料、顔料、又はそれらの混合物)、紫外線遮断(吸収)剤、光増感剤、阻害剤、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子又は安定化銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、充填剤等のような、当業者に公知の種々の成分も含むことができることが理解されよう。
【0082】
流体組成物は、好ましくはさらに、抗菌剤、好ましくは抗菌金属ナノ粒子、より好ましくは銀ナノ粒子を含む。これらの抗菌剤は、得られるコンタクトレンズに抗菌特性を付与するために、得られるコンタクトレンズに組み込まれる。
【0083】
流体組成物は、好ましくはさらに、得られるコンタクトレンズに組み込まれる浸出性湿潤剤を含む。「浸出性湿潤剤」は、得られるコンタクトレンズのポリマーマトリックスに共有結合するのではなくて、得られるレンズのポリマーマトリックスに物理的に封入される湿潤材料を表すことを意図する。
【0084】
本発明において、任意の非架橋性親水性ポリマーを浸出性湿潤剤として使用することができる。非架橋性親水性ポリマーの例は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、上記の式(I)のビニルラクタムのホモポリマー、1つ以上の親水性ビニルコモノマーの存在下又は非存在下における上記の式(I)の少なくとも1つのビニルラクタムのコポリマー、アクリルアミド又はメタアクリルアミドのホモポリマー、1つ以上の親水性ビニルモノマーを有するアクリルアミド又はメタクリルアミドのコポリマー、それらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0085】
非架橋性親水性ポリマーの数平均分子量Mは、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは30,000〜100,000、さらにより好ましくは35,000〜70,000である。
【0086】
例えば重合技術でのこのような用途に関して周知の材料から選択される開始剤を、重合反応を促進、及び/又は重合反応の速度を増大する目的で、レンズ形成材料に含有させることができる。開始剤は、重合反応を開始することができる化学剤である。開始剤は、光開始剤又は熱開始剤でありうる。
【0087】
光開始剤は、フリーラジカル重合及び/又は架橋を、光を使って開始することができる。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びDarocur及びlrgacurタイプ、好ましくはDarocur 1173(登録商標)及びDarocur 2959(登録商標)である。ベンゾイルフォスフィン開始剤の例は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニロフォスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルフォスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルフォスフィンオキシドを含む。例えば、マクロマーに組み込むことができる、又は特定のモノマーとして使用できる反応性光開始剤も適切である。反応性光開始剤の例は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる欧州特許第632329号に開示されている。重合は、その後、化学線、例えば光、特に適切な波長の紫外線によって誘発されうる。スペクトル要件は、適宜、適切な光増感剤の添加によりしかるべく制御することができる。
【0088】
適切な熱開始剤の例は、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化ベンゾイル等の過酸化物を含むが限定されない。好ましくは、熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0089】
好適な顔料の例は、医療デバイスにおいて許容され、FDAにより承認された任意の着色剤、例えば、D&Cブルー6号、D&Cグリーン6号、D&Cバイオレット2号、カルバゾールバイオレット、ある種の銅錯体、ある種の酸化クロム、種々の酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタン等を含む。本発明で使用できる着色剤の一覧に関しては、Marmiom DM Handbook of U.S. Colorantsを参照されたい。顔料のより好適な実施態様(C.I.は、カラーインデックス番号)は、非限定的に、青色には、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー15:3、C.I.74160)、コバルトブルー(ピグメントブルー36、C.I.77343)、トナーシアンBG(Clariant)、パーマジェットブルーB2G(Clariant);緑色には、フタロシアニングリーン(顔料グリーン7、C.I.74260)及び三二酸化クロム;黄色、赤色、褐色及び黒色には、様々な酸化鉄;PR122、PY154、バイオレットには、カルバゾールバイオレット;黒色には、モノリスブラックC-K(CIBA Specialty Chemicals)が含まれる。
【0090】
ポリマーマトリックスに組み込まれる生物活性剤は、目の病気を防ぐか、又は目の病気の症状を緩和させることができる任意の化合物である。生物活性剤は、薬物、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシン等)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、又はそれらの任意の組合せでありうる。本明細書で有用な薬物の例は、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコラート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン、又はその薬学的に許容される塩又はエステルを含むがこれらに限定されない。他の生物活性剤の例は、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸並びにそれらの塩等)、リノール酸及びγ−リノール酸、及びビタミン(例えば、B5、A、B6等)を含む。
【0091】
本発明の流体組成物は、少なくとも1種のシリコーン含有プレポリマー及び他の成分を溶媒又は溶媒混合物に溶解することにより調製することができる。
【0092】
重合性材料を溶解して溶液を形成することができるものであれば、任意の適切な有機溶媒を、本発明に使用することができる。有機溶媒の例は、非限定的に、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルアセタート、ブチルアセタート、アミルアセタート、メチルラクタート、エチルラクタート、i−プロピルラクタート、塩化メチレン、2−ブタノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエキソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、及びそれらの混合物を含む。
【0093】
好適な実施態様において、有機溶媒は、C−Cアルカノール、好ましくはプロパノール又はイソプロパノール)である。好ましくは、溶媒混合物は、C−C18アルカノールである第2の有機溶媒を含む。
【0094】
流体組成物は、任意の公知の方法にしたがって、型により形成されたキャビティに導入(分配)されうる。
【0095】
本発明によれば、平均分離力を低減することができるものであれば任意のリン脂質を本発明に使用することができる。リン脂質は、脂質のクラスであり、糖脂質、コレステロール及びタンパク質と共に、すべての生体膜の主要な成分である。その最も単純な形態において、リン脂質は、1つ又は2つの脂肪酸に結合した1つのグリセロールと1つのフォスファート基とで構成される。リン脂質は、両親媒性の性質を有する。頭部(極性フォスファート基)は、親水性であり;尾部(2つの脂肪酸)は、疎水性である。水の中に入れられると、リン脂質は、複数の脂質相の1つを形成する。生物学的系では、これは、二層に制限され、親油性の尾部は互いに反対の向きに並んで、親水性の頭部が両側で水に面して、膜を形成する。これにより、リン脂質は、自然発生的にリポソームを又は小さな脂質ビヒクルを形成することができる。
【0096】
リン脂質は、任意の天然又は合成のリン脂質、例えば、非限定的に、ホスファチジルコリン(PC)、例えば卵黄ホスファチジルコリン、水素化卵黄ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、水素化大豆ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリン;ホスファチジルエタノールアミン(PE)、例えば、卵黄ホスファチジルエタノールアミン、大豆ホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルグリセロール(PG)、例えば、卵黄ホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジパルニトイルホスファチジルグリセロール、及びジステアロイルホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール(PI)、例えば、水素化卵黄ホスファチジルイノシトール、大豆ホスファチジルイノシトール、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、及びジステアロイルホスファチジルイノシトール;ホスファチジルセリン(PS)、例えば、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、及びジステアロイルホスファチジルセリン;ホスファチジン酸(PA)、例えば、ジラウロイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジン酸、ジオレオイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、及びジステアロイルホスファチジン酸;カルジオリピン、例えば、テトララウロイルカルジオリピン、テトラミリストイルカルジオリピン、テトラオレオイルカルジオリピン、テトラジパルミトイルカルジオリピン、及びテトラステアロイルカルジオリピン;スフィンゴミエリン;及びホスファチジルコリン、セリン、イノシトール、エタノールアミン脂質誘導体、例えば、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイル−ホスファチジルセリン、ジリノオレオイルホスファチジルイノシトール、及びそれらの混合物であってよい。
【0097】
好適なリン脂質は、PEG化ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリン(PC)である。ホスファチジルコリン(PC)は、一般式1:
【0098】
【化3】


[式中、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、各々が脂肪酸鎖である]で示される飽和及び不飽和のホスファチジルコリンに分類することができる。R及びR’が共に飽和脂肪酸鎖である場合は、飽和ホスファチジルコリン(SPC)と称される。ジパルミファチジルコリン(DPPC)は、2つの飽和脂肪酸鎖を有し、SPCである。RとR’の少なくとも1つ又は両方が不飽和脂肪酸鎖である場合、不飽和ホスファチジルコリン(USPC)と称される。
【0099】
USPCの例は、パルミトイル−オレオイル−ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイル−リノオレオイル−ホスファチジルコリン(PLPC)、ジリノオレオイル−ホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)、ステアロイル−リノオレオイルホスファチジルコリン(SLPC)、及びステアロイル−アラヨードノイル−ホスファチジルコリン(SAPC)である。
【0100】
PEG化ホスファチジルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール(PEG)−変性ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、ホスファチジルエタノールアミン(「PE」)とポリエチレングリコール(PEG)とのコンジュゲートを含む、両親媒性の脂質含有のコンジュゲートである。ホスファチジルエタノールアミン(「PE」)の例は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)又はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)である。好ましいホスファチジルエタノールアミンは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)である。PEG又はポリオキシエチレンは、約50〜約5000の分子量を有し、好ましくは、PEGは、約1000〜約5000の分子量を有する。分子量1000を有するPEG又はポリオキシエチレンは、PEG(1000)とも称される。好ましいPEG化ホスファチジルエタノールアミンは、DSPE−PEG(1000)、DSPE−PEG(2000)、DSPE−PEG(3000)、DSPE−PEG(4000)、又はDSPE−PEG(5000)である。PEG化ホスファチジルエタノールアミンの例は、N−(カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール5000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩)及びN−(カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩)及びN−(カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール1000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、アンモニウム塩)であり、AVANTI POLAR LIPIDS, Inc. (USA)から入手できる。
【0101】
リン脂質は、流体組成物中に、リン脂質を含まないものと比較して(即ち、流体組成物を対照の組成物と置き換えた場合に得られる平均型分離力と比較して)、平均型分離力を少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%低減するのに十分な量存在する。対照組成物は、リン脂質以外の流体組成物のすべての成分を含む(即ち、リン脂質を含まない)。
【0102】
本発明によれば、平均型分離力は、好ましくは約35N以下、より好ましくは約30N以下、さらにより好ましくは約25N以下である。
【0103】
本発明によれば、リン脂質は、内部型離型剤として用いることができる。本実施態様において、リン脂質は、それぞれ流体組成物の全重量にもとづき、流体組成物中に最大10重量%、好ましくは最大5重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%、さらにより好ましくは0.5重量%〜4重量%及び特に1重量%〜2重量%存在し得る。
【0104】
本発明によれば、リン脂質は、また、外部型離型剤として用いることもできる。本実施態様において、リン脂質は、当業者に公知の任意の適切な溶媒に溶解してから、型表面に適用することができる。次に、型表面を少なくとも部分的に乾燥することができる。適切な溶媒の例は、水、アルコール、例えば、低級アルカノール(例えば、エタノール、メタノール又はイソプロパノール)、カルボン酸アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、双極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド又はメチルエチルケトン、ケトン(例えば、アセトン又はシクロヘキサノン)、炭化水素(例えば、トルエン、エーテル、THF、ジメトキシエタン又はジオキサン)、及びハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン)、及び適切な溶媒混合物(例えば、水とアルコールとの混合物、水/エタノール又は水/メタノールの混合物)である。溶液は、溶液の全重量に基づき、0.01%〜50%、好ましくは0.1〜1.0%、及びより好ましくは1〜20%及び特に5〜15%のリン脂質を含む。リン脂質の溶液は、型表面に任意の公知の方法、例えば、スプレー、スワブ、浸漬又はスタンピングで、表面が均等にコーティングされるように適用する。スプレーノズルを使用してのスプレーが好ましい。リン脂質溶液を型表面に適用する工程及び少なくとも部分的に乾燥させる工程に要する時間は、それほど重要ではない。しかし、今日のコンタクトレンズ生産において、用いられるサイクル時間が極めて短い、例えば、10秒未満であっても、特に良好な結果が得られるであろうことを指摘する必要がある。
【0105】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ型は、当業者に周知であり、例えば、注型成形又は回転成形(spin casting)に用いられている。例えば、型(注型成形用)は、通常、少なくとも2つの型部分(sections)(もしくは部分(portions))又は型半(mold halves)、即ち、第1及び第2の型半を含む。第1の型半は、第1の成形(または光学)面を画定し、第2の型半は第2の成形(または光学)面を画定する。第1及び第2の型半は、第1の成形面と第2の成形面との間にレンズ形成キャビティが形成されるようにお互いを受け止めるよう構成されている。型半の成形面は型のキャビティ形成面となり、レンズ形成材料と直接接触する。
【0106】
一般に、コンタクトレンズを注型成形するための型部分を製造する方法は当業者に周知である。本発明の方法は、型を形成するための如何なる特定の方法にも限定されない。事実、本発明においては、型を形成するための任意の方法を使用することができる。第1及び第2の型半は、射出成形または旋盤加工などの各種技術を通じて形成できる。型半を形成するための好適な方法の例は、やはり参照により本明細書に組み入れられる、Schadに対する米国特許第4,444,711号;Boehmらに対する米国特許第4,460,534号;Morrillに対する米国特許第5,843,346号;及びBonebergerらに対する米国特許第5,894,002号に開示されている。
【0107】
コンタクトレンズを製造するための型を製造するために、当技術分野で型の製造用として公知であるほぼすべての材料を使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007-S10(ドイツ・フランクフルト及びニュージーランド州SummitのTicona GmbH of Frankfurtによるエチレンとノルボルネンとの透明非晶質コポリマー)などのポリマー材料を使用することができる。好ましい型材料は、紫外線透過を可能にするものであり、再使用可能な型を製造するために使用できるもの、例えば石英、ガラス、CaF2, PMMA及びサファイアである。
【0108】
当業者は、レンズ形成材料をレンズ形成キャビティ内で化学線又は熱により架橋及び/又は重合(即ち、硬化)させて、コンタクトレンズを形成する方法を熟知しているであろう。
【0109】
好適な実施態様において、流体組成物が、溶液、無溶媒液体、または、場合により他の成分の存在下での、1種以上のプレポリマーの溶融液である場合、再利用可能な型を用いて、レンズ形成材料を、化学線の空間的制限下で熱により硬化して、コンタクトレンズを形成する。好適な再利用可能な型の例は、参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる、1994年7月14日出願の米国特許出願の第08/274,942号、2003年12月10日出願の第10/732,566号、2003年11月25日出願の第10/721,913号、及び米国特許第6,627,124号に開示されているそれらである。
【0110】
この場合、流体組成物を、2つの型半からなる型の中に入れる。この2つの型半は、互いに接触するのではなく、その間に設けられた環状の狭い間隙を有している。この間隙は型キャビティにつながっているため、余分なレンズ材料が間隙に流れ去ることができる。1回のみ使用可能なポリプロピレン型に代えて、再利用可能な石英、ガラス、サファイア型を使用することができる。これらの型は、レンズの製造後に、水又は適切な溶媒を用いて、未架橋のプレポリマー及び他の残留物を素早く効果的に洗い取り、そして風乾させることができるためである。再利用可能な型もまた、Topas(登録商標)COCグレード8007-S10(ドイツ・フランクフルト及びニュージーランド州SummitのTiconagmbHによるエチレンとノルボルネンとの透明非晶質コポリマー)製とすることができる。型半が再使用可能であるため、極めて高い精度及び再現性を有する型を得るための製造時において、比較的高い費用を支出することができる。型半は、レンズが製造される領域、すなわちキャビティ又は実際の型面において互いに接触しないので、接触による損傷がない。これが、型の高い耐用性を保証し、それが、特に、製造されるコンタクトレンズの高い再現性及びレンズ設計の高い正確さを保証する。
【0111】
コンタクトレンズの2つの向かい合う表面(前面及び後面)は2つの光学面によって画定され、その縁は型の壁ではなく化学線の空間的制限によって画定される。通常、2つの成形面と、空間的制限の明確な周囲境界の投射とによって囲まれる領域内のレンズ形成材料のみ架橋結合されるが、空間的制限の周囲境界のすぐ周りとその外側のレンズ形成材料は架橋結合されない。その結果、コンタクトレンズの縁が、化学線の空間的制限により与えられる寸法及び形状の平滑で正確な複製になるしくみである。コンタクトレンズを製造するこのような方法は、参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号、2003年12月10日出願の第10/732,566号、2003年11月25日出願の第10/721,913号、及び米国特許第6,627,124号に記載されている。
【0112】
化学線の空間的制限(エネルギーの衝突の空間的制限)は、(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号及び米国特許第6,627,124号に図示されるように、使用される特定の形態のエネルギーを少なくとも部分的に透さない型用のマスキングによって、又は2003年12月10日出願の米国特許出願第10/732,566号及び米国特許第6,627,124号に図示されるように、少なくとも片面は、架橋を起こすエネルギー形態に対する透過性が高く、かつ、そのエネルギーを透さないか透過性の低い型部分を有する型によって、実施することができる。架橋に用いられるエネルギーは、放射エネルギー、特に紫外線放射、ガンマ放射、電子放射又は熱放射であり、放射エネルギーは、好ましくは、一方では良好な制限を達成するため、もう一方では、有効なエネルギー利用のために、実質的に平行な光線の形態である。
【0113】
型は、当業者に公知の任意の適切な方法にしたがって開くことができる。型は、雄型半と雌型半とに分離されるが、成型されたレンズが、その2つの型半の一方に付着した状態にある。型を開いた後、レンズをそれが付着している型半から取り除き(取り外し)、次の公知のプロセスの1つ以上に付すことができる:抽出、表面処理(例えば、プラズマコーティング、LbLコーティング、コロナ処理等)、水和、平衡、パッケージング、及び滅菌(例えば、オートクレーブ)。
【0114】
プレポリマー、リン脂質、モノマー、流体組成物、型の好適な例、及びリン脂質の量は、上記記載のとおりである。
【0115】
前述の開示は、当分野で通常の知識を有する者が本発明を実施することを可能にする。読者が具体的な実施態様とその利点をよりよく理解することができるように、以下の実施例を参照することを推奨する。
【0116】
実験
型離型剤:
DSPE−PEG(5000):N−カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール−5000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩)(1a)(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)。
DSPE−PEG(2000):N−カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩)(1b)(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)。
DSPE−PEG(1000):N−カルボキシ−メトキシポリエチレングリコール−1000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩)(1b)(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)。
DDPC:1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−S−ホスホコリン(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)。
DMPC:ジミリストイルホスファチジルコリン(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)
DLPC:1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(AVANTI POLAR LIPIDS, Inc.(USA)より入手可能)。
大豆レシチンLipoid S 100(2)、LIPOID AG(CH)より入手可能。
【0117】
型:
再利用可能なLightstream型(米国特許第6800225号に従って設計されたもの)は、それぞれ、雌型用は、ガラス又はPMMA製、雄型用は、石英又はCaF製である。
【0118】
レンズ生産:適切な配合物を充填した型を紫外線源で照射して、紫外線架橋を行った。
【0119】
評価:
型分離力(MSF)は、コンタクトレンズ製造後に型ペアを開くのに必要な力である。MSFは、引張試験機(Zwick 2.5)で測定した。試験の設定において、一方の型半は、固く固定し、もう一方の型半は、ダブルカーディアックマウント(double cardanic mounting)で固定し、フォースフリー配置を可能にした。相対的な開型力とは、添加剤を含有する配合物のMSFと添加剤を含まない対照配合物の場合に必要な力との比率である。
【0120】
得られたレンズは、透過性及び水濡れ性について目視で確認し、指先で擦って潤滑性を調べた。
【0121】
水接触角(WCA)の測定は、Kruss GmbH, Germany製のDSA 10 drop shape analysis system(水滴形分析システム)を用いて、純水を使った液滴法(Fluka、表面張力:20℃で72.5mNm)で行った。測定の目的で、コンタクトレンズを保存溶液からピンセットで取り出し、軽く振り余分な保存溶液を取り除いた。コンタクトレンズをレンズ型の雄部分に載せ、乾いた清潔な布で力を加えずに拭き取った。次に水滴(約1μl)をレンズ頂点に添加し、この水滴の経時的な接触角(WCA(t)、サークルフィッティング法(circle fitting mode))の変化を観察した。WCAは、graph WCA(t) をt=0で外挿することによって計算した。
【0122】
実施例1
(1a)PDMS架橋剤Iの調製
4Lビーカー中で、NaCO 24.13g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカー中で、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu、Mw約11500)700gをヘキサン1000gに溶解した。4L反応器に、タービンアジテーター付きオーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付き250ml添加漏斗を装備した。次に2つの溶液を反応器に仕込み、激しく撹拌しながら15分間混合して、エマルションを生成した。塩化アクリロイル14.5gを、ヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を激しく撹拌しながら1時間かけてエマルションに滴下した。滴下終了後、エマルションを30分間撹拌し、次に撹拌を止め、一晩置いて相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaCl 2.0kgの混合物で2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、除外物1.0μmまで濾過して、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油状物をさらに、高真空乾燥で恒量になるまで精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=Cの二重結合0.175mEq/gを有することが分かった。
【0123】
(1b)PDMS架橋剤IIの調製
4Lビーカー中で、NaCO61.73g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカー中で、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu、Mw約4500)700gをヘキサン1000gに溶解した。4L反応器に、タービンアジテーター付きオーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付き250ml添加漏斗を装備した。次に2つの溶液を反応器に仕込み、激しく撹拌しながら15分間混合して、エマルションを生成した。塩化アクリロイル36.6gを、ヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を、激しく撹拌しながら、1時間かけてエマルションに滴下した。滴下終了後、エマルションを30分間撹拌し、次に撹拌を止め、一晩置いて相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaCl 2.0kgの混合物で2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、除外物1.0μmまで濾過して、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油状物をさらに、高真空乾燥で恒量になるまで精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=Cの二重結合0.435mEq/gを有することが分かった。
【0124】
(1c)架橋性コポリマーAの調製
2Lジャケット付き反応器に、加熱/冷却ループ、還流冷却器、N−インレット/真空アダプター、フィードチューブアダプター及びオーバーヘッド機械式撹拌器を装備した。(1a)によるPDMS架橋剤I 90.00g及び(1b)によるPDMS架橋剤II 30.00gを1−プロパノール480g中に溶解して、溶液を生成した。この溶液を反応器に仕込み、8℃に冷却した。溶液を真空排気により15mBar未満に脱気し、真空を15分間保持し、次に乾燥窒素で再加圧した。この脱気手順を全部で3回繰り返した。反応器を乾燥窒素のブランケット下に保持した。
【0125】
別のフラスコ中で、システアミン塩酸塩1.50g、AIBN 0.3g、DMA 55.275g、HEA 18.43g及び1−プロパノール 364.5gを混合することにより、モノマー溶液を調製した。この溶液をWaterman 540フィルターペーパーで濾過し、次に、流速3.0ml/分で脱気装置とHPLCポンプを通して、反応器に加えた。反応温度を次に加熱ランプで約1時間、68℃に上昇させた。
【0126】
第2のフラスコ中で、システアミン塩酸塩4.5g及び1−プロパノール395.5gを混合して、次にWhatman 540フィルターペーパーで濾過することにより供給溶液を調製した。反応器の温度が68℃に達したら、この溶液を脱気装置/HPLCポンプを通して、3時間かけて徐々に反応器に投入した。次いで反応を68℃でさらに3時間継続し、その時点で、加熱を停止し、反応器を室温に冷ました。
【0127】
反応混合物をフラスコに移し、ロータリエバポレーター上で、真空下40℃で、サンプルが1000g残るまで溶媒を除去した。溶液を、次に高速で撹拌しながら、徐々に脱イオン水2000gと混合した。さらに溶媒をサンプルが2000g残るまで除去した。この除去プロセスの間に、溶液は、徐々にエマルションになった。得られた材料を、浸透コンダクタンスが2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量カットオフ膜を用いた限外濾過により精製した。
【0128】
このエマルションを、次にオーバーヘッド撹拌器、冷凍ループ、温度計、及びMetrohm Model 718 STAT TitrinoのpHメーター及び分配チップを装備した2L反応器に仕込んだ。反応混合物を、次に1℃に冷却した。NaHCO7.99gをエマルションに仕込み、撹拌して溶解した。断続的に15%水酸化ナトリウム溶液を加えることにより、pH9.5を維持するようにTitrinoを設定した。塩化アクリロイル11.59mlを次にシリンジポンプを用いて1時間かけて加えた。エマルションをさらに1時間撹拌し、次に塩酸の15%溶液を加えることにより、反応混合物を中和するようにTitrinoを設定した。生成物を再び、浸透コンダクタンスが2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量カットオフ膜を用いた限外濾過により精製した。最終的なマクロモノマーを凍結乾燥により単離した。
【0129】
(1d)実施例1の基本配合物の調製
(1c)に記載された手順により製造された架橋性コポリマーA 12.13g、1−プロパノール中のlrgacure 2959(1.00%w/w)の溶液3.006g及び1−プロパノール4.881gの混合物を約25℃で一晩磁気棒で撹拌した。得られた混合物を実施例1の基本配合物と同定した。
【0130】
実施例2
(2a)PDMS架橋剤IIIの調製
4Lビーカー中で、NaCO 24.13g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカー中で、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu、Mw約11500)700gをヘキサン1000gに溶解した。4L反応器に、タービンアジテーター付きオーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付き250ml添加漏斗を装備した。2つの溶液を次に反応器に仕込み、激しく撹拌しながら15分間混合して、エマルションを生成した。塩化アクリロイル14.5gを、ヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を激しい撹拌下で1時間かけてエマルションに滴下した。添加完了後、エマルションを30分間撹拌し、次に撹拌を停止し、一晩、相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaClの混合物2.0kgで2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、1.0μmの除外で濾過し、ロータリエバポレーターで濃縮した。得られた油状物を、高真空乾燥でさらに恒量になるまで精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=Cの二重結合0.175mEq/gを有することが分かった。
【0131】
(2b)PDMS架橋剤IVの調製
4Lビーカー中で、NaCO 61.73g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカー中で、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu、Mw約4500)700gをヘキサン1000gに溶解した。4L反応器に、タービンアジテーター付きオーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付き250ml添加漏斗を装備した。次に2つの溶液を反応器に仕込み、激しく撹拌しながら15分間混合して、エマルションを生成した。塩化アクリロイル36.6gをヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を激しい撹拌下で1時間かけてエマルションに滴下した。添加完了後、エマルションを30分間撹拌し、次に撹拌を停止し、一晩、相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaClの混合物2.0kgで2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、1.0μmの除外で濾過し、ロータリエバポレーターで濃縮した。得られた油状物を、高真空乾燥でさらに恒量になるまで精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=Cの二重結合0.435mEq/gを有することが分かった。
【0132】
(2c)架橋性コポリマーBの調製
2Lジャケット付き反応器に、加熱/冷却ループ、還流冷却器、N−インレット/真空アダプター、フィードチューブアダプター及びオーバーヘッド機械式撹拌器を装備した。(2a)に記載した手順により製造したPDMS架橋剤III 90.00g及び(2b)に記載した手順により製造したPDMS架橋剤II 30.00gを1−プロパノール480g中に溶解して、溶液を生成した。この溶液を反応器に仕込み、8℃に冷却した。溶液を真空排気により15mBar未満に脱気し、真空を15分間保持し、次に乾燥窒素で再加圧した。この脱気手順を全部で3回繰り返した。反応器を乾燥窒素のブランケット下に保持した。
【0133】
別のフラスコ中で、システアミン塩酸塩1.50g、AIBN 0.3g、DMA 55.275g、HEA 18.43g及び1−プロパノール 364.5gを混合することにより、モノマー溶液を調製した。この溶液をWaterman 540フィルターペーパーで濾過し、次に、流速3.0ml/分で脱気装置とHPLCポンプを通して、反応器に加えた。反応温度を次に加熱ランプで約1時間、68℃に上昇させた。
【0134】
第2のフラスコ中で、システアミン塩酸塩4.5g及び1−プロパノール395.5gを混合して、次にWhatman 540フィルターペーパーで濾過することにより、供給溶液を調製した。反応器の温度が68℃に達したら、この溶液を脱気装置/HPLCポンプを通して、3時間かけて徐々に反応器に投入した。反応を次いで68℃でさらに3時間継続させ、3時間経った時点で、加熱を停止し、反応器を室温に冷ました。
【0135】
反応混合物をフラスコに移し、ロータリエバポレーター上で、真空下40℃で、サンプルが1000g残るまで溶媒を除去した。溶液を、次に、高速で撹拌しながら、徐々に脱イオン水2000gと混合した。さらに溶媒をサンプルが2000g残るまで除去した。この除去プロセスの間に、溶液は、徐々にエマルションになった。得られた材料を、浸透コンダクタンスが2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量カットオフ膜を用いた限外濾過により精製した。
【0136】
精製したコポリマー溶液を、NaHCO 7.99g及び塩化アクリロイル11.59mlを反応に使用した以外は、実施例3に記載したとおりの方法でアクリラート化した。生成物を再び、浸透コンダクタンスが2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量カットオフ膜を用いた限外濾過により精製した。最終的なマクロモノマーを凍結乾燥により単離した。
【0137】
(2d)実施例2の基本配合物の調製
(2c)に記載した手順により製造した架橋性コポリマーB 32.83g、1−プロパノール中のlrgacure 2959(1.00%w/w)の溶液8.224g及び1−プロパノール8.948gの混合物を約25℃で一晩磁気棒で撹拌した。
【0138】
実施例3
実施例3の基本配合物の調製
(2c)に記載した手順により製造した架橋性コポリマーB 13.13g、lrgacure 2959 0.033mg及び2−メチル−1−ペンタノール6.84gの混合物を約25℃で一晩磁気棒で撹拌した。
【0139】
実施例4〜16:DSPE−PEG(1000)、DSPE−PEG(2000)、DSPE−PEG(5000)又は大豆レシチンLipoid S 100を添加物として選択したプレポリマー溶液の調製及び表1に表示のレンズの製造:
実施例1〜3の配合物3.0gにDSPE−PEG(1000)、DSPE−PEG(2000)、DSPE−PEG(5000)又は大豆レシチンLipoid S 100の適量を表1に表示のとおり添加した。混合物を撹拌しながら40℃まで加熱し、この温度で15分間保持して、濾過した。
【0140】
個別の配合物適量を適切な雌型及び雄型の型に分与した。次に配合物を紫外線源(4.0mW/cm2、25秒)で照射した。その後、こうして製造したコンタクトレンズから、MSFを測定した。
【0141】
得られたレンズを型から外し、EtOHで抽出し、ガラスバイアル中にPBSと一緒にパッケージして、オートクレーブした。その後、レンズを、透明度/曇り及び重大な欠陥、即ち、破損レンズ、裂け及びスターバースト割れに関して評価した。レンズを適宜、滑り及び水濡れ性に関しても、目視及び水接触角で評価した。
【0142】
【表1】

【0143】
実施例17
鎖延長ポリジメチルシロキサン(CE-PDMS)の調製
第1の工程において、乾燥メチルエチルケトン150g中で、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=2000、Shin-Etsu、KF-6001 a)49.85gとイソホロンジイソシアナート(IPDI)11.1gとをジブチルスズジラウラート(DBTDL)0.063gの存在下で反応させて、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサンをイソホロンジイソシアナートでキャップした。反応を40℃で4.5時間維持し、IPDI−PDMS−IPDIを形成した。第2の工程において、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=3000、Shin-Etsu、KF-6002)164.8gと乾燥メチルエチルケトン50gとの混合物をDBTDL0.063gをさらに添加しておいたIPDI−PDMS−IPDI溶液に滴下した。反応器を40℃で4.5時間保持し、HO-PDMS-IPDI-PDMS-IPDI-PDMS-OHを形成した。MEKを次に減圧下で除去した。第3の工程において、イソシアナートエチルメタクリラート(IEM)7.77g及び追加のDBTDL0.063gを添加することにより、末端ヒドロキシル基をメタクリロイルオキシエチル基でキャップし、IEM-PDMS-IPDI-PDMS-IPDI-PDMS-IEMを形成した。
【0144】
実施例18
変性オルガノポリシロキサンマクロマーの調製
KF-6001 240.43g(Shin-Etsu Siliconesから入手可能なヒドロキシル−末端ポリ(ジメチルシロキサン))を撹拌器、温度計、低温維持装置(クリオスタット)、滴下漏斗、及び窒素/真空インレットアダプターを装備した1L反応器に仕込んだ。シリコーンを高真空(2×10−2mBar)を適用して乾燥させた。次いで、乾燥窒素の雰囲気を維持しながら、蒸留メチルエチルケトン320gを次に加え、混合物を撹拌して溶解した。ジブチルスズジラウラート0.235gを反応器に加え、反応器を45℃に温めた。イソホロンジイソシアナート45.86gを添加漏斗に仕込み、穏やかに撹拌しながら10分かけて反応器に添加した。60℃に至る発熱が生じた後、反応器を60℃でさらに2時間保持した。蒸留MEK452gに溶解したKF-6002 630gを、1回でフラスコに仕込み、均質な溶液が得られるまで撹拌した。ジブチルスズジラウラート0.235gを加え、反応器を55℃で一晩、乾燥窒素のブランケット下に保持した。次の日、フラッシュ蒸留でメチルエチルケトンを取り除いた。反応器を冷却し、次にイソシアナートエチルメタクリラート22.7gを、その後でジブチル0.235gを反応器に仕込んだ。3時間後、IEM3.3gをさらに加え、一晩反応を進行させた。翌日、反応混合物18℃に冷却し、生成物を詰め替えた。
【0145】
実施例19
125mlの褐色ビンに、まずDSPE-PEG(2000)0.25gを量り入れ、次に1−プロパノール溶媒11.70gを加え、次にDMA 11.50gを加えた。混合物をMini Vortexer (Ciba Vision 31787)中で3分間ボルテックスにかけて清澄な溶液を製造した。溶液にトリス−アクリルアミド10.25gを加え、さらに3分間ボルテックスにかけた。その後、実施例17に記載した手順で製造したCE-PDMS 15.75g、Darocur 1173 0.50g及びVisitint 0.052gを適宜加えた。ビンを10秒振とうした後、ビンをPAULO ABBE(model No LJRM)のローラー(速度:42rpm)上に一晩置いた。次に配合物をCameo 3ON Syringe Filter, Nylnon, 5.0 Micron, 30 mm, 50/Pk (Catalog No. DDR50T3050)に接続した30ml Luer-Lok(商標)Syringeに移した。配合物を5cc使い捨てシリンジ(EFD(登録商標))に濾過して入れ、レンズ注型に供した。レンズを、330nmカットオフフィルター付の輝度4mW/cm2のHamamatsuランプを用いて27秒間、ガラス/石英型上で注型した。型分離力(16N)を試験機Zwick Z2.5で測定した。
【0146】
実施例20
1.25mlの褐色ビンに、まずDDPC(1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−フォスホコリン)0.50gを量り入れ、次に1−プロパノール溶媒11.50gを加え、次にDMA11.50gを加えた。混合物をMini Vortexer (Ciba Vision 31787)中で3分間ボルテックスにかけて清澄な溶液を製造した。溶液にトリス−メタクリルアミド9.40gを加え、さらに3分間ボルテックスにかけた。その後、実施例17に記載した手順で製造したCE-PDMS 16.50g及びDarocur 1173 0.25gを適宜加えた。ビンをPAULO ABBE(model No LJRM)のローラー(速度:42rpm)上に一晩置いた。次に配合物をCameo 3ON Syringe Filter, Nylnon, 5.0 Micron, 30 mm, 50/Pk (Catalog No. DDR50T3050)に接続した30ml Luer-Lok(商標)Syringeに移した。配合物を5cc使い捨てシリンジ(EFD(登録商標))に濾過して入れ、レンズ注型に供した。レンズを、330nmカットオフフィルター付、輝度4mW/cm2のHamamatsuランプを用いて120秒間、ガラス/石英型上で注型した。型分離力(22N)を試験機Zwick Z2.5で測定した。
【0147】
実施例21
まず、DSPE−PEG(2000)0.5gを20mlのバイアル中に量り入れた。次に、1−プロパノール溶媒24.5gを加え、Mini Vortexer Ciba Vision 31787中で3分間ボルテックスした。このバイアルに、今度は、実施例17に記載した手順で製造したCE-PDMS33.0g、トリス−メタクリルアミド17.0g、DMA24.0g及びDarocur 1173 1.0gを加えた。バイアルをPAULO ABBE(model No LJRM)のローラー(速度:42rpm)上に2時間置いた。次に配合物を5ccシリンジに移し、濾過せずに注型するために4500rpmで15分間遠心分離した。レンズを、WG335 +TM297カットオフフィルター付の輝度4mW/cm2のHamamatsuランプを用いて120秒間、球形のCaF2/PMMA型で注型成形した。型分離力(16N)を試験機Zwick Z2.5で測定した。
【0148】
実施例22(対照)
サンプルを、L-PEG-2000を使用しなかった以外は、例えば実施例20と同様の手順を用いてを調製した。
【0149】
実施例23
実施例18に記載した手順で製造した67.5%固体の変性オルガノポリシロキサンマクロマーに、lrgacure 2959 0.25%、水1.0%、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)2.5%含有の1−プロパノール溶液を加え、撹拌して、清澄な溶液を得た。配合物を5ccの使い捨てシリンジに移し、ガラス/石英型にスペーサーリングで分与した。レンズを、5スポット硬化ステーション下で、フィルターコンデンサーを用いず、輝度4.0mW/cm2で10秒間硬化した。試験機Zwick Z2.5で測定したMSFは、40Nであった。これらのレンズは、透明で欠陥がなかった。
【0150】
実施例24
5cc使い捨てシリンジに、DLPC0.08g及びlrgacure 2959 0.005g及び1−プロパノール0.815gを加えた。混合物をMini Vortexer中で30秒間ボルテックスして、清澄な溶液を製造した。溶液に、実施例18に記載した手順で製造した改質オルガノポリシロキサンマクロマー1.1gを加えた。再度3分間ボルテックスした。配合物をガラス/石英型上に分与した。レンズを330nmカットオフフィルター付の輝度4mW/cm2のHamamatsuランプを用いて、14秒硬化した。型分離力(57N)を試験機Zwick Z2.5で測定した。
【0151】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料及びリン脂質を含み、レンズ形成材料は、化学線又は加熱により架橋及び/又は重合することができる);
(2)型内のレンズ形成材料を架橋/重合してポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程(ここで、リン脂質の少なくとも一部は、型と形成されたレンズのポリマーマトリックスとの境界面に移動する);及び
(3)型を分離する工程(ここで、リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量のリン脂質が存在する)
を含むコンタクトレンズを製造する方法。
【請求項2】
リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、及びホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、それらの誘導体及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ホスファチジルエタノールアミン(PE)が、PEG化ホスファチジルエタノールアミンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
PEG化ホスファチジルエタノールアミンが、PEG化ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE−PEG)、PEG化パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE−PEG)、PEG化ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE−PEG)及びPEG化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG)からなる群より選択される、少なくとも1つである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
PEG化ホスファチジルエタノールアミンが、PEG化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG)である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
流体組成物が、リン脂質を0.5%〜10%含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
流体組成物が、リン脂質を1.0%〜6.0%含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
流体組成物が、リン脂質を1.5%〜4.0%含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
レンズ形成材料が、少なくとも1つのプレポリマーを含む、請求項1記載の方法。。
【請求項10】
レンズ形成材料が、2つ以上のチオール基又は2つ以上のエン含有基を有する少なくとも1つのプレポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
プレポリマーが、シリコーン含有プレポリマー又はシリコーンを含有しないプレポリマーである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
プレポリマーが、シリコーンを含有しない水溶性プレポリマーである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
シリコーン含有プレポリマーが、あらゆるモノマー及び/又は架橋剤の非存在下で、見掛けの酸素透過度:少なくとも40barrer、イオノフラックス拡散係数D:約1.5×10−6mm2/min超、弾性率:約0.2MPa〜約2.0MPa、及び完全に水和した場合の含水率:約15重量%〜約80重量%からなる群より選択される少なくとも1つの特性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成することができる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
流体組成物が、重合開始剤、可視性ティント剤、UV遮断(吸収)剤、光増感剤、抗菌剤、生物活性剤、離型剤、及び浸出性潤滑剤からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
架橋及び/又は重合の工程が、化学線の空間的制限下で実施されて、第1の面、対向する第2の面及び縁を有するコンタクトレンズが形成され、型が2つの成型表面を有する再利用可能な型であり、第1及び第2の面が2つの成型表面によって画定され、縁が化学線の空間的制限によって画定される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
リン脂質を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%削減するのに十分な量のリン脂質をレンズ形成材料を含む流体組成物に加える工程であり、レンズ形成材料が、型内で化学線又は熱により架橋及び/又は重合してポリマーマトリックスを有するコンタクトレンズを形成する、コンタクトレンズの品質及び生産収率を改良する方法。
【請求項17】
レンズ形成材料が、型内で化学線により架橋及び/又は重合してポリマーマトリックスを有するコンタクトレンズを形成し、リン脂質が、型と型内の流体組成物との境界面に移動して、所望の時間内に平均型分離力を低減するのに十分な厚さを有する界面膜を形成し、リン脂質が、リン脂質を含まないものと比較して平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量存在する、レンズ形成材料及びリン脂質を含む、コンタクトレンズを製造するための流体組成物。
【請求項18】
(1)コンタクトレンズの型を用意する工程;
(2)型表面の少なくとも一部にリン脂質の層を適用する工程、
(3)前記層を少なくとも部分的に乾燥させる工程;
(4)流体組成物をコンタクトレンズを製造するための型に導入する工程(ここで、流体組成物は、レンズ形成材料を含み、レンズ形成材料は、化学線で架橋及び/又は重合することができる);
(5)型内のレンズ形成材料を架橋/重合してポリマーマトリックスを有するレンズを形成する工程;及び
(6)型を分離する工程(ここで、リン脂質又はそれらの誘導体は、リン脂質又は誘導体を含まないものと比較して、平均型分離力を少なくとも約40%低減するのに十分な量存在する)
を含む、コンタクトレンズを製造する方法。
【請求項19】
リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、及びホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(Pl)、ホスファチジルセリン(PS)、それらの誘導体及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ホスファチジルエタノールアミン(PE)がPEG化ホスファチジルエタノールアミンである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
レンズ形成材料が少なくとも1つのプレポリマーを含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
プレポリマーがシリコーン含有プレポリマー又はシリコーンを含有しないプレポリマーである、請求項18記載の方法。
【請求項23】
プレポリマーがシリコーンを含有しない水溶性プレポリマーである、請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2011−508905(P2011−508905A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539776(P2010−539776)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087345
【国際公開番号】WO2009/085902
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】