説明

コンテンツ暗号化/復号装置、プログラム及びメディアデータのデータ構造

【課題】著作権者によってメディアデータの鍵情報の扱いが可能となるコンテンツ暗号化/復号装置、プログラム及びメディアデータのデータ構造を提供する。
【解決手段】メディアデータを配信するサーバに接続されたコンテンツ暗号化装置は、鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル部と、スクランブル・メディアデータに、鍵情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、鍵情報が埋め込まれたメディアデータを、サーバへ送信するメディアデータ送信手段とを有する。一方で、通信端末装置に接続されたコンテンツ復号装置は、メディアデータから、電子透かしで鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、抽出された鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、スクランブルが解除されたメディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ暗号化/復号装置、プログラム及びメディアデータのデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術におけるシステム構成図である。
【0003】
図1のシステムは、サービス提供設備のコンテンツ配信サーバ1と、自宅に設置されるセットトップボックス(通信端末装置)2とが、インターネットのようなネットワーク5を介して接続されている。セットトップボックス2には、テレビ3及びオーディオ装置4等(再生装置)が接続されている。
【0004】
コンテンツ配信サーバ1は、ユーザによって視聴・閲覧できるメディアデータを配信する。メディアデータは、例えば音声(音楽)、静止画像、動画像(映像)のデータである。メディアデータは、コンテンツが所定方式(例えばMPEG(Moving Picture Experts Group))によってデジタル化されたものであり、コンテンツ配信サーバ1に蓄積されている。
【0005】
自宅の利用者は、セットトップボックス2を用いて、所望のメディアデータをコンテンツ配信サーバ1へ要求する。このとき、コンテンツ配信サーバ1は、例えば乱数によって鍵情報を生成し、その鍵情報を用いてメディアデータをスクランブルする。
【0006】
スクランブルとは、メディアデータの少なくとも一部又は全部を、認識不可能な状態にする技術をいう。従って、スクランブルされた状態のメディアデータは、そのままでは視聴・閲覧できないので、商品価値が無い。但し、一部がスクランブルされたメディアデータについては、その他の部分の視聴・閲覧が可能であってもよい。スクランブルは、可逆処理であって、鍵情報を用いて完全に元のメディアデータを復元することができる。
【0007】
コンテンツ配信サーバ1は、スクランブル・メディアデータを、ネットワーク5を介してセットトップボックス2へ送信する。このとき、コンテンツ配信サーバ1は、スクランブルを解除する鍵情報も、セットトップボックス2へ送信する。鍵情報は、そのメディアデータの著作権保護の役割も有するために、秘匿性が確保された通信方式によって転送されなければならない。
【0008】
セットトップボックス2は、スクランブル・メディアデータと、鍵情報とを、コンテンツ配信サーバ1から受信する。そして、セットトップボックス2は、その鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除する。これによって、セットトップボックス2は、復号されたメディアデータを、テレビ3又はオーディオ装置4へ出力することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−195759号公報
【特許文献2】特開2005−142898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術によれば、コンテンツ配信サーバ1とセットトップボックス2とは、鍵情報の扱いやスクランブルの方式が、必ず対応していなければならなかった。即ち、コンテンツ配信サーバ1が送信するメディアデータ及び鍵情報に対応して、セットトップボックス2を備える必要があった。
【0011】
サービス提供の視点から見ると、セットトップボックス2は、コンテンツ配信サーバ1の運用事業者から提供される装置でなければならなかった。即ち、メディアデータの鍵情報の扱いは、コンテンツを配信するネットワーク設備事業者によって管理されるものであった。
【0012】
一方で、現在では、コンテンツは、インターネットを介して様々な著作権者から流通する。そうすると、メディアデータの鍵情報の扱いやスクランブルの方式は、コンテンツを作成するコンテンツ作成者によって管理されるべきものとなってきている。
【0013】
従って、本発明は、著作権者によってメディアデータの鍵情報の扱いが可能となるコンテンツ暗号化/復号装置、プログラム及びメディアデータのデータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、メディアデータを配信するサーバに接続されたコンテンツ暗号化装置であって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされたメディアデータに、鍵情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
鍵情報が埋め込まれたメディアデータを、サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
を有することを特徴とする。これを、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置とする。
【0015】
本発明によれば、メディアデータを配信するサーバに接続されたコンテンツ暗号化装置であって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされたメディアデータに、鍵情報及び再生条件情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
鍵情報が埋め込まれたメディアデータを、サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
を有することを特徴とする。これを、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置とする。
【0016】
本発明のコンテンツ暗号化装置における他の実施形態によれば、
メディアデータは、MPEG(Moving Picture Experts Group)符号化データであり、
電子透かし挿入手段は、
MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択されたブロックを復号し、逆量子化し、テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された埋め込み位置に、鍵情報を埋め込む手段と、
鍵情報が埋め込まれたブロックを、量子化し、符号化する手段と
を有することを特徴とすることも好ましい。
【0017】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされたメディアデータを受信する通信端末装置に接続されたコンテンツ復号装置であって、
通信端末装置から出力されたメディアデータから、電子透かしで鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
抽出された鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除されたメディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
を有することを特徴とする。これを、第1の実施形態に基づくコンテンツ復号装置とする。
【0018】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされたメディアデータを受信する通信端末装置に接続されたコンテンツ復号装置であって、
通信端末装置から出力されたメディアデータから、電子透かしで鍵情報及び再生条件情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
当該コンテンツ復号装置における再生状態情報が、再生条件情報を満たしているか否かを判定する再生条件判定手段と、
再生状態情報が、再生条件情報を満たすと判定された際に、抽出された鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除されたメディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
を有することを特徴とする。これを、第2の実施形態に基づくコンテンツ復号装置とする。
【0019】
本発明のコンテンツ復号装置における他の実施形態によれば、
メディアデータは、MPEG符号化データであり、
電子透かし抽出手段は、
MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択されたブロックを復号し、逆量子化し、テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された埋め込み位置から、鍵情報を抽出する抽出手段と、
を有することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、メディアデータを配信するサーバに接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされたメディアデータに、鍵情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
鍵情報が埋め込まれたメディアデータを、サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、メディアデータを配信するサーバに接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされたメディアデータに、鍵情報及び再生条件情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
鍵情報が埋め込まれたメディアデータを、サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされたメディアデータを受信する通信端末装置に接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
通信端末装置から出力されたメディアデータから、電子透かしで鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
抽出された鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除されたメディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされたメディアデータを受信する通信端末装置に接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
通信端末装置から出力されたメディアデータから、電子透かしで鍵情報及び再生条件情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
当該コンテンツ復号装置における再生状態情報が、再生条件情報を満たしているか否かを判定する再生条件判定手段と、
再生状態情報が、再生条件情報を満たすと判定された際に、抽出された鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除されたメディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、第1の実施形態に基づくコンテンツ復号装置に接続された通信端末装置へ送信されるメディアデータのデータ構造であって、
原メディアデータが、鍵情報を用いてスクランブルされており、
鍵情報が、スクランブルされたメディアデータに電子透かしで埋め込まれていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、第2の実施形態に基づくコンテンツ復号装置に接続された通信端末装置へ送信されるメディアデータのデータ構造であって、
原メディアデータが、鍵情報を用いてスクランブルされており、
鍵情報及び再生条件情報が、スクランブルされたメディアデータに電子透かしで埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、メディアデータ自体に鍵情報が埋め込まれているので、コンテンツ配信サーバの運用事業者が鍵情報を管理することなく、著作権者自身が、メディアデータの鍵情報を扱うことが可能となる。また、更に再生条件情報を埋め込むことにより、その再生条件情報の条件を満たさない再生状態の下では、そのメディアデータの再生を抑制することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明におけるシステム構成図である。
【0029】
図2のシステムは、図1と比較して、コンテンツ配信サーバ1へメディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置6と、セットトップボックス(通信端末装置)2に接続されるコンテンツ復号装置7とを備えている。コンテンツ配信サーバ1及びセットトップボックス2は、通信事業者によって提供されるのに対し、コンテンツ暗号化装置6及びコンテンツ復号装置7は、コンテンツ作成事業者(著作権者)によって管理されることが好ましい。
【0030】
コンテンツ暗号化装置6に対して、原メディアデータと、鍵情報とが入力される。コンテンツ暗号化装置6は、スクランブル処理部61と、電子透かし挿入部62と、メディアデータ送信部63とを有する。これら機能部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムを実行することによって実現できる。
【0031】
スクランブル処理部61は、鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルする。原メディアデータは、例えばMPEG方式に基づく。スクランブルとは、特定の復号装置でのみ原メディアデータに復号できるように、メディアデータを暗号化する技術をいう。そのコンテンツを閲覧することができる正当権利者のみが、復号のための鍵情報を保持する。これにより、正当権利者以外の第三者が、そのコンテンツを閲覧することを防御する。スクランブル処理部61は、スクランブル・メディアデータを、電子透かし挿入部62へ出力する。
【0032】
電子透かし挿入部62は、スクランブル・メディアデータの特定の位置に、鍵情報を電子透かしで埋め込む。電子透かしとは、メディアデータに別の情報を埋め込む技術であって、一般に、人間の認識特性を活用して、人間に認識できないように埋め込まれる。
【0033】
また、電子透かし挿入部62は、再生条件情報を、スクランブル・メディアデータの特定の位置に、鍵情報を電子透かしで埋め込むものであってもよい。再生条件情報は、例えば再生が許可されている日時範囲であってもよい。従って、その日時範囲以外の日時には、そのメディアデータの再生を禁止することができる。
【0034】
メディアデータがMPEG符号化データである場合、電子透かし挿入部62は、テンプレートに応じてブロックを選択し、そのブロックを復号し、逆量子化し、そのテンプレートに応じて埋め込み位置を抽出するものであってもよい。テンプレートで限定的な数のマクロブロック及びその位置に、鍵情報を埋め込むために、透かしデータの埋め込み及び抽出についての演算量を少なくすることができる。鍵情報が埋め込まれたブロックは、更に、量子化し、符号化されて、メディアデータ送信部63へ出力される。
【0035】
電子透かし挿入部62は、鍵情報及び再生条件情報をそのまま、スクランブル・メディアデータに埋め込んでもよい。また、鍵情報及び再生条件情報を暗号化して、スクランブル・メディアデータに埋め込んでもよい。鍵情報及び再生条件情報を暗号化するマスター鍵は、例えば、ICカードのような外部接続されるものであることも好ましい。これにより、メディアデータの再生に関するセキュリティ効果を高めることができる。
【0036】
メディアデータ送信部63は、鍵情報(及び再生条件情報)が埋め込まれたスクランブル・メディアデータをコンテンツ配信サーバ1へ送信する。尚、コンテンツ暗号化装置6は、ネットワーク5に接続され、そのネットワーク5を介してコンテンツ配信サーバ1へ、鍵情報が埋め込まれたスクランブル・メディアデータを送信するように構成されていてもよい。
【0037】
コンテンツ復号装置7は、電子透かし抽出部71と、スクランブル解除部72と、メディアデータ出力部73と、再生条件判定部74と、透かし補正部75とを有する。これら機能部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムを実行することによって実現できる。
【0038】
電子透かし抽出部71は、セットトップボックス2から、鍵情報が埋め込まれたスクランブル・メディアデータを受信する。このスクランブル・メディアデータは、圧縮データである。そして、そのスクランブル・メディアデータから、電子透かしによって鍵情報を抽出する。電子透かし抽出部71は、抽出した鍵情報を、スクランブル解除部72へ出力する。
【0039】
また、スクランブル・メディアデータに再生条件情報も含まれている場合、電子透かし抽出部71は、その再生条件情報も抽出する。この場合、鍵情報及び再生条件情報は、再生条件判定部74へ通知される。尚、スクランブル・メディアデータに再生条件情報が含まれていない場合、電子透かし抽出部71は、鍵情報をスクランブル解除部72へ通知する。
【0040】
スクランブル解除部72は、電子透かし抽出部71(又は後述する透かし補正部75)からスクランブル・メディアデータを受信し、電子透かし抽出部71(又は後述する再生判定部74)から鍵情報が入力される。そして、スクランブル解除部72は、その鍵情報を用いて、スクランブル・メディアデータのスクランブルを解除する。スクランブルが解除された原メディアデータは、メディアデータ出力部73へ出力される。
【0041】
メディアデータ出力部73は、原メディアデータを、テレビ3及びオーディオ装置4のような再生装置へ出力する。
【0042】
ここで、スクランブル解除部72は、鍵情報が埋め込まれたスクランブル・メディアデータに対して、鍵情報を用いてスクランブルを解除する。従って、コンテンツ暗号化装置6のスクランブル処理部61に入力された原メディアデータと、スクランブル解除部72から出力された原メディアデータとは、鍵情報が透かしで挿入された部分について100%完全に復元されない。しかしながら、透かしで挿入されているために、テレビ3及びオーディオ装置4のような再生装置で再生される際に、人間には認識されない。
【0043】
再生条件判定部74は、電子透かし抽出部71から、鍵情報と共に、再生条件情報とを受け取る。再生条件判定部74は、当該コンテンツ復号装置7における再生状態情報が、再生条件情報の条件を満たすか否かを判定する。例えば、再生条件情報が、そのメディアデータの再生が許可された日時範囲であれば、再生状態情報は、現在の日時情報であってもよい。現在の日時が、再生条件情報の日時範囲に含まれない場合、再生条件判定部74は、鍵情報をスクランブル解除部72へ通知しない。一方で、含まれる場合、再生条件判定部74は、鍵情報をスクランブル解除部72へ通知する。
【0044】
透かし補正部75は、電子透かしの復号に伴って改変されたメディアデータの性質を判定し、そのメディアデータを補正することによって、スクランブル解除後の画質を改善することもできる。例えば、埋め込まれた透かしのMPEG符号化データ上の位置を特定する。そして、透かし編集処理の一部である透かし消去処理をすることによって、DCT係数値の平滑化をする。
【0045】
図3は、本発明におけるコンテンツ暗号化装置の電子透かし挿入部の機能構成図である。
【0046】
図3によれば、電子透かし挿入部62は、メモリ部621と、マクロブロック抽出部622と、テンプレート部623と、可変長復号部624と、逆量子化部625と、DCT(Discrete Cosine Transform)係数抽出部626と、透かし埋め込み部627と、量子化部628と、可変長符号化部629とを有する。これら機能部は、コンテンツ暗号化装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。
【0047】
メディアデータから、例えばMPEG符号化されたフレームFn-1,Fn,Fn+1,・・・が順次読み出され、複数のフレームが、メモリ部621に一時的に蓄積される。
【0048】
マクロブロック抽出部622は、テンプレート部623からの指示に基づいて、メモリ部621から、透かしデータを埋め込むべきブロック(マクロブロック)を抽出する。テンプレート部623には、マクロブロックを抽出するパターンが複数用意されており、フレーム毎に異なるマクロブロック抽出パターンが適用される。そのパターンの適用が一巡した場合には、再度同じパターンをサイクリックに適用することができる。
【0049】
可変長復号部624は、抽出されたマクロブロックを可変長復号する。次に、逆量子化部625は、復号されたブロックを逆量子化し、DCT係数を再生する。DCT係数とは、画像のマクロブロックデータに離散コサイン変換(周波数分解)した数値をいう。
【0050】
DCT係数抽出部626は、透かしデータを埋め込む位置のDCT係数を、テンプレート部623の指示に応じて抽出する。DCT係数の中で、冗長な成分(削除しても画質等に影響を与えない高周波成分)の部分を抽出する。
【0051】
透かし埋め込み部627は、抽出されたDCT係数に、鍵情報を透かしデータとして埋め込む。DCT係数の中で、冗長な成分の部分に、鍵情報を埋め込むために、人間に認識されにくい。
【0052】
埋め込み対象のDCT係数値の量子化ステップサイズがΔであるとき、そのΔを埋め込み対象のDCT係数値に絶対値が大きくなる方向に加算する。又は、変更した結果がより低ビットレートで符号化する際に適用される量子化ステップサイズがΔ’である場合には、そのΔ’を埋め込み対象のDCT係数値に絶対値が大きくなる方向に加算する。
【0053】
例えば、埋め込み対象のDCT係数値がAであるとき、その量子化レベル値A’の絶対値に、Δ又はΔ’を加算する。尚、「変更した結果がより低ビットレートの符号化をする際に適用される量子化ステップサイズがΔ’」とは、例えば光ファイバ通信路向けの高ビットレート画像データを電話回線向けの低ビットレート画像データに変換する場合の符号化処理が考えられる。
【0054】
量子化部628は、鍵情報が埋め込まれたメディアデータを再量子化する。次に、可変長符号化部629は、そのメディアデータを可変長符号化し、MPEGのビットストリームに整形して出力する。
【0055】
図4は、本発明におけるコンテンツ復号装置の電子透かし抽出部の機能構成図である。
【0056】
図4によれば、電子透かし抽出部71は、メモリ部711と、マクロブロック抽出部712と、テンプレート部713と、可変長復号部714と、逆量子化部715と、DCT係数抽出部716と、透かし抽出部717とを有する。これら機能部は、コンテンツ復号装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。
【0057】
メモリ部711と、マクロブロック抽出部712と、テンプレート部713と、可変長復号部714と、逆量子化部715と、DCT係数抽出部716とは、前述した図3の説明と同様の処理をする。即ち、コンテンツ復号装置7のテンプレート部713と、コンテンツ暗号化装置6のテンプレート部623とは、同じテンプレートを用いるために、鍵情報が埋め込まれたマクロブロック及びDCT係数を特定することができる。透かし抽出部717は、抽出されたDCT係数から、鍵情報を透かしデータとして抽出する。即ち、透かし抽出部717は、コンテンツ暗号化装置6の透かし埋め込み部627と逆の処理をする。
【0058】
図3及び図4によれば、テンプレートで限定的な数のマクロブロック及びDCT係数に、鍵情報を埋め込むだけであるので、透かしデータの埋め込み及び抽出についての演算量を少なくすることができる。
【0059】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、メディアデータ自体に鍵情報が埋め込まれているので、コンテンツ配信サーバの運用事業者が鍵情報を管理することなく、著作権者自身が、メディアデータの鍵情報を扱うことが可能となる。また、更に再生条件情報を埋め込むことにより、その再生条件情報の条件を満たさない再生状態の下では、そのメディアデータの再生を抑制することもできる。
【0060】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】従来技術におけるシステム構成図である。
【図2】本発明におけるシステム構成図である。
【図3】本発明におけるコンテンツ暗号化装置の電子透かし挿入部の機能構成図である。
【図4】本発明におけるコンテンツ復号装置の電子透かし抽出部の機能構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 コンテンツ配信サーバ
2 セットトップボックス、通信端末装置
3 テレビ
4 オーディオ装置
5 ネットワーク
6 コンテンツ暗号化装置
61 スクランブル処理部
62 電子透かし挿入部
621 メモリ部
622 マクロブロック抽出部
623 テンプレート部
624 可変長復号部
625 逆量子化部
626 DCT係数抽出部
627 透かし埋め込み部
628 量子化部
629 可変長符号化部
63 メディアデータ送信部
7 コンテンツ復号装置
71 電子透かし抽出部
711 メモリ部
712 マクロブロック抽出部
713 テンプレート部
714 可変長復号部
715 逆量子化部
716 DCT係数抽出部
717 透かし抽出部
72 スクランブル解除部
73 メディアデータ出力部
74 再生条件判定部
75 透かし補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアデータを配信するサーバに接続されたコンテンツ暗号化装置であって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされた前記メディアデータに、前記鍵情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
前記鍵情報が埋め込まれた前記メディアデータを、前記サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
を有することを特徴とするコンテンツ暗号化装置。
【請求項2】
メディアデータを配信するサーバに接続されたコンテンツ暗号化装置であって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされた前記メディアデータに、前記鍵情報及び再生条件情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
前記鍵情報が埋め込まれた前記メディアデータを、前記サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
を有することを特徴とするコンテンツ暗号化装置。
【請求項3】
前記メディアデータは、MPEG(Moving Picture Experts Group)符号化データであり、
前記電子透かし挿入手段は、
前記MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択された前記ブロックを復号し、逆量子化し、前記テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された前記埋め込み位置に、前記鍵情報を埋め込む手段と、
前記鍵情報が埋め込まれたブロックを、量子化し、符号化する手段と
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツ暗号化装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされた前記メディアデータを受信する通信端末装置に接続されたコンテンツ復号装置であって、
前記通信端末装置から出力された前記メディアデータから、電子透かしで前記鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
抽出された前記鍵情報を用いて、前記メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除された前記メディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
を有することを特徴とするコンテンツ復号装置。
【請求項5】
請求項2に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされた前記メディアデータを受信する通信端末装置に接続されたコンテンツ復号装置であって、
前記通信端末装置から出力された前記メディアデータから、電子透かしで前記鍵情報及び前記再生条件情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
当該コンテンツ復号装置における再生状態情報が、前記再生条件情報を満たしているか否かを判定する再生条件判定手段と、
前記再生状態情報が、前記再生条件情報を満たすと判定された際に、抽出された前記鍵情報を用いて、前記メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除された前記メディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
を有することを特徴とするコンテンツ復号装置。
【請求項6】
前記メディアデータは、MPEG符号化データであり、
前記電子透かし抽出手段は、
前記MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択された前記ブロックを復号し、逆量子化し、前記テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された前記埋め込み位置から、前記鍵情報を抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のコンテンツ復号装置。
【請求項7】
メディアデータを配信するサーバに接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされた前記メディアデータに、前記鍵情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
前記鍵情報が埋め込まれた前記メディアデータを、前記サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンテンツ暗号化プログラム。
【請求項8】
メディアデータを配信するサーバに接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルするスクランブル手段と、
スクランブルされた前記メディアデータに、前記鍵情報及び再生条件情報を電子透かしで埋め込む電子透かし挿入手段と、
前記鍵情報が埋め込まれた前記メディアデータを、前記サーバへ送信するメディアデータ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンテンツ暗号化プログラム。
【請求項9】
請求項1に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされた前記メディアデータを受信する通信端末装置に接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
前記通信端末装置から出力された前記メディアデータから、電子透かしで前記鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
抽出された前記鍵情報を用いて、前記メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除された前記メディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンテンツ復号プログラム。
【請求項10】
請求項2に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、スクランブルされた前記メディアデータを受信する通信端末装置に接続された装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
前記通信端末装置から出力された前記メディアデータから、電子透かしで前記鍵情報及び前記再生条件情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
当該コンテンツ復号装置における再生状態情報が、前記再生条件情報を満たしているか否かを判定する再生条件判定手段と、
前記再生状態情報が、前記再生条件情報を満たすと判定された際に、抽出された前記鍵情報を用いて、前記メディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
スクランブルが解除された前記メディアデータを、再生機器へ出力するメディアデータ出力手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンテンツ復号プログラム。
【請求項11】
請求項1に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、請求項4に記載のコンテンツ復号装置に接続された通信端末装置へ送信されるメディアデータのデータ構造であって、
原メディアデータが、鍵情報を用いてスクランブルされており、
前記鍵情報が、スクランブルされた前記メディアデータに電子透かしで埋め込まれていることを特徴とするメディアデータのデータ構造。
【請求項12】
請求項2に記載のコンテンツ暗号化装置に接続されたサーバから、請求項5に記載のコンテンツ復号装置に接続された通信端末装置へ送信されるメディアデータのデータ構造であって、
原メディアデータが、鍵情報を用いてスクランブルされており、
前記鍵情報及び再生条件情報が、スクランブルされた前記メディアデータに電子透かしで埋め込まれていることを特徴とするメディアデータのデータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−278392(P2008−278392A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122116(P2007−122116)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】