説明

コンデンサ

【課題】設置スペースを小さくするとともに、冷媒封入量を早い段階で適正封入量とすることができるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1の一端部側に、第3および第4熱交換パスP3,P4の第1熱交換管2Aを接続する第1ヘッダタンク3と、第1および第2熱交換パスP1,P2の第2熱交換管2Bを接続する第2ヘッダタンク4とを設け、前者の上端を後者の下端よりも上方に位置させる。第1ヘッダタンク3は気液を分離して液を溜める機能を有する。第1〜第3熱交換パスP1〜P3が冷媒凝縮パスであり、第4熱交換パスP4が冷媒過冷却パスである。第3および第4熱交換パスP3,P4の全第1熱交換管2Aの数をn、第3および第4熱交換パスP3,P4の全第1熱交換管2Aと、第1および第2熱交換パスP1,P2の全第2熱交換管2Bとの合計数をNとした場合、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に用いられるコンデンサに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、上下、左右は図1および図2の上下、左右をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばカーエアコンのコンデンサとして、幅方向を通風方向に向けるとともに、上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3つ設けられ、各熱交換パスを構成する全ての熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを構成する熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、下端の熱交換パスを除いた熱交換パスを構成する熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが別個に設けられ、第2ヘッダタンクが第1ヘッダタンク上に配置され、第1ヘッダタンクの太さが第2ヘッダタンクの太さよりも極めて大きくなっているとともに、第1ヘッダタンク内に乾燥剤が配置され、これにより第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める受液器としての機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1の熱交換管および第2ヘッダタンクに接続された第2の熱交換管の長さが等しくなっているとともに、第1熱交換管の第1ヘッダタンク側の端部および第2熱交換管の第2ヘッダタンク側の端部が同一垂直線上に位置し、すべての熱交換パスが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスとなっているコンデンサが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のコンデンサにおいて、第1ヘッダタンク内での気液分離を効果的に行うには、第1ヘッダタンクの内容積を第2ヘッダタンクに比べてかなり大きくする必要があるので、第1ヘッダタンクの太さが第2ヘッダタンクの太さに比較してかなり大きくなっており、コンデンサを配置するために大きなスペースが必要になるという問題がある。
【0005】
また、通常、コンデンサの近傍には、他の機器が配置されるが、特許文献1記載のコンデンサによれば、第1ヘッダタンクが他の機器の邪魔になる。たとえば、カーエアコン用のコンデンサの通風方向下流側にはラジエータが配置されることが一般的であるが、特許文献1記載のコンデンサによれば、第1ヘッダタンクがラジエータ設置の邪魔になり、エンジンルーム内で無駄なスペースが生じ、省スペース化を図ることができない。しかも、第1ヘッダタンクのほぼ全長にわたって熱交換管が接続されているので、気液分離性能が十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−31266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載のコンデンサに比較して設置スペースを小さくすることができるとともに、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を早い段階で適正封入量とすることできるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)幅方向を通風方向に向けるとともに、上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられ、各熱交換パスを構成する全ての熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、
左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであり、全第1熱交換管の数をn、全第1熱交換管および全第2熱交換管の合計数をNとした場合、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たすコンデンサ。
【0010】
2)第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている上記1)記載のコンデンサ。
【0011】
3)第1および第2熱交換管の上下方向の厚みが1.0〜2.0mmであるとともに、第1および第2熱交換管の通風方向の幅が12〜20mmであり、第2熱交換管の長さが400〜700mmであり、第1ヘッダタンクが、上下方向の長さが350〜450mm、内径が24〜30mmの円筒状である上記1)または2)記載のコンデンサ。
【発明の効果】
【0012】
上記1)〜3)のコンデンサによれば、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有しているので、第1ヘッダタンクの上端を、たとえば第2ヘッダタンクの上端近傍まで上方に延ばすことによって、特許文献1記載のコンデンサに比べて、第1ヘッダタンクの太さを第2ヘッダタンクの太さよりも大きくすることなく、第1ヘッダタンクの内容積を、気液分離を効果的に行いうる大きさにすることができる。したがって、コンデンサを配置するためのスペースを、特許文献1記載のコンデンサに比べて小さくすることができる。その結果、省スペース化を図ることが可能になる。また、第1ヘッダタンクにおける熱交換管が接続された部分よりも上方に比較的大きな空間が存在するので、重力による気液分離効果が優れたものになる。
【0013】
また、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであるから、下端に位置する冷媒凝縮パスを構成する複数の第1熱交換管から第1ヘッダタンク内に冷媒が流入し、第1ヘッダタンク内で気液を分離するので、圧力降下の発生を抑制して液相冷媒の再気化を防止することができる。しかも、下端に位置する冷媒凝縮パスを構成する複数の第1熱交換管から第1ヘッダタンク内に冷媒が流入し、第1ヘッダタンク内で気液を分離するので、第1ヘッダタンク内で気液分離を効率良く行うことができる。すなわち、冷媒凝縮パスを構成する複数の熱交換管のうちの上側の熱交換管内には気相成分の多い気液混相冷媒が流れ、同じく下側の熱交換管内には液相成分の多い気液混相冷媒が流れるが、これらの気液混相冷媒が混じり合うことなく第1ヘッダタンク内に流入するので、気液分離を効率良く行うことができる。
【0014】
さらに、全第1熱交換管の数をn、全第1熱交換管および全第2熱交換管の合計数をNとした場合、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たしているので、上記1)〜3)のコンデンサを用いた冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0015】
上記3)のコンデンサによれば、第1ヘッダタンクでの重力による気液分離効果が一層優れたものになり、しかも上記3)のコンデンサを用いた冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になるとともに、過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明によるコンデンサの全体構成を示す正面図である。
【図2】図1のコンデンサを模式的に示す正面図である。
【図3】各サンプルの冷媒封入量と過冷度との関係を示すグラフである。
【図4】各サンプルの全第1熱交換管および全第2熱交換管の合計数に対する全第1熱交換管の数の比:n/Nと、安定化域の冷媒封入量の幅および放熱性能との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
以下の説明において、通風方向下流側(図1の紙面裏側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0019】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0020】
図1はこの発明によるコンデンサの全体構成を具体的に示し、図2はこの発明によるコンデンサを模式的に示す。図1のコンデンサにおいては、図示し易くするために、熱交換管の数が現物とは異なったものとなっている。また、図2においては、個々の熱交換管の図示は省略されるとともに、コルゲートフィン、サイドプレート、冷媒入口部材および冷媒出口部材の図示も省略されている。
【0021】
図1において、コンデンサ(1)は、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(2A)(2B)と、熱交換管(2A)(2B)の左右両端部がろう付により接続された上下方向にのびる3つのアルミニウム製ヘッダタンク(3)(4)(5)と、隣り合う熱交換管(2A)(2B)どうしの間および上下両端の外側に配置されて熱交換管(2A)(2B)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(6A)(6B)と、上下両端のコルゲートフィン(6A)(6B)の外側に配置されてコルゲートフィン(6A)(6B)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(7)とを備えており、上下に連続して並んだ複数の熱交換管(2A)(2B)からなる熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)が上下に並んで3以上、ここでは4つ設けられている。4つの熱交換パスを、上から順に第1〜第4熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)というものとする。各熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)を構成する全ての熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が異なっている。
【0022】
図1および図2に示すように、コンデンサ(1)の左端側には、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パス、ここでは第3および第4熱交換パス(P3)(P4)を構成する熱交換管(2A)がろう付により接続された第1ヘッダタンク(3)と、第1および第2熱交換パス(P1)(P2)を構成する熱交換管(2B)がろう付により接続された第2ヘッダタンク(4)とが別個に設けられている。ここで、第1ヘッダタンク(3)に接続された熱交換管(2A)が第1熱交換管であり、第2ヘッダタンク(4)に接続された熱交換管(2B)が第2熱交換管である。また、隣り合う第1熱交換管(2A)どうしの間、および下端の第1熱交換管(2A)と下側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6A)を第1コルゲートフィンといい、隣り合う第2熱交換管(2B)どうしの間、上端の第1熱交換管(2A)と下端の第2熱交換管(2B)との間、および上端の第2熱交換管(2B)と上側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6B)を第2コルゲートフィンというものとする。
【0023】
ここで、第1および第2熱交換管(2A)(2B)の上下方向の厚みは1.0〜2.0mmであることが好ましい。また、第1および第2熱交換管(2A)(2B)の通風方向の幅は12〜20mmであることが好ましい。さらに、第2熱交換管(2B)の左右方向の長さは400〜700mmであることが好ましい。
【0024】
第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)との前後方向の寸法はほぼ等しくなっているが、水平断面積は第1ヘッダタンク(3)の方が第2ヘッダタンク(4)よりも大きくなっている。第1ヘッダタンク(3)は第2ヘッダタンク(4)よりも左方(左右方向外側)に配置されており、第1ヘッダタンク(3)の左右方向の中心が第2ヘッダタンク(4)の左右方向の中心よりも左右方向外側に位置している。したがって、第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)とは、平面から見て重なることなくずれている。また、第1ヘッダタンク(3)の上端は第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方、ここでは第2ヘッダタンク(4)の上端とほぼ同一高さ位置にあり、第1ヘッダタンク(3)が、重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める受液部としての機能を有している。すなわち、第1ヘッダタンク(3)の内容積は、第1ヘッダタンク(3)内に流入した気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒が重力により第1ヘッダタンク(3)内の下部に溜まるとともに、気液混相冷媒のうちの気相成分が重力により第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まり、これにより第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内には液相主体混相冷媒のみが流入するような内容積となっている。
【0025】
ここで、第1ヘッダタンク(3)は、上下方向の長さが350〜450mm、内径が24〜30mmの円筒状であることが好ましい。
【0026】
コンデンサ(1)の右端部側には、第1〜第4熱交換パス(P1)〜(P4)を構成するすべての熱交換管(2A)(2B)が接続される第3ヘッダタンク(5)が配置されている。第3ヘッダタンク(5)の横断面形状は第2ヘッダタンク(4)と同一である。第3ヘッダタンク(5)内は、第1熱交換パス(P1)と第2熱交換パス(P2)との間の高さ位置、および第3熱交換パス(P3)と第4熱交換パス(P4)との間の高さ位置にそれぞれ設けられたアルミニウム製仕切板(8)(9)により上側ヘッダ部(11)と、中間ヘッダ部(12)と、下側ヘッダ部(13)とに区画されている。第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)にそれぞれ接続され、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)にそれぞれ接続されている。
【0027】
そして、第2ヘッダタンク(4)、第1ヘッダタンク(3)における第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)および中間ヘッダ部(12)、ならびに第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)により冷媒を凝縮させる凝縮部(1A)が形成され、第1ヘッダタンク(3)における第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)および第4熱交換パス(P4)により冷媒を過冷却する過冷却部(1B)が形成され、第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)が冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスとなっているとともに、第4熱交換パス(P4)が冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスとなっている。
【0028】
凝縮部(1A)を構成する第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)に冷媒入口(14)が形成され、過冷却部(1B)を構成する第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)に冷媒出口(15)が形成されている。そして、第3ヘッダタンク(5)に、冷媒入口(14)に通じる冷媒入口部材(16)および冷媒出口(15)に通じる冷媒出口部材(17)が接合されている。
【0029】
ここで、全第1熱交換管(2A)の数、すなわち最終の冷媒凝縮パスである第3熱交換パス(P3)および冷媒過冷却パスである第4熱交換パス(P4)を構成する全第1熱交換管(2A)の数をn、全第1熱交換管(2A)および全第2熱交換管(2B)の合計数をNとした場合、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たしている。すなわち、全第1熱交換管(2A)および全第2熱交換管(2B)の合計数:Nに対する全第1熱交換管(2A)の数:nの比:n/Nが、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たしている。これは、次の実験結果から得られたものである。
【0030】
まず、表1に示す6種類のコンデンサのサンプルA〜Fを用意した。なお、すべてのサンプルA〜Fにおいて、第1熱交換管(2A)、第2熱交換管(2B)および第1〜第3ヘッダタンク(3)(4)(5)としては同じ構成のものを用いた。
【表1】

【0031】
ついで、コンデンサの各サンプルA〜F、圧縮機、膨張弁およびエバポレータを用いて冷凍サイクルを組み立て、これらの冷凍サイクル内に最初に所定量の冷媒を入れて冷凍サイクルの運転を開始し、冷媒を継ぎ足しつつ種々の冷媒封入量における過冷度を調べてチャージグラフを作成した。その結果を図3に示す。図3に示すチャージグラフにおける過冷度が一定となる安定化域の冷媒封入量の幅:Wを求めた。その結果を表2に示す。表2において、安定化域の冷媒封入量の幅:Wは、サンプルCを100%とし、これに対する比率として表されている。
【0032】
また、コンデンサに導入される風速が1.0m/秒、2.5m/秒および4.0m/秒の各風速でのサンプルA〜Fの放熱性能Qを調べた。風速:1.0m/秒(V1)の場合に最高の放熱性能を示したのはサンプルCであり、風速:2.5m/秒(V2)の場合および風速:4.0m/秒(V3)の場合に最高の放熱性能を示したのはサンプルBである。その結果も表2に示す。表2において、放熱性能:Qは、風速:V1の場合にはサンプルCを100%とし、これに対する比率として表され、風速:V2および風速:V3の場合にはサンプルBを100%とし、これに対する比率として表されている。
【表2】

【0033】
そして、上述したn/Nと、過冷度が一定となる冷媒封入量の幅Wおよび放熱性能Qとの関係を求めた。その結果を図4に示す。なお、図4においても、◇がサンプルA、□がサンプルB、○がサンプルC、△がサンプルD、×がサンプルE、●がサンプルFである。
【0034】
図3および図4を見ると、過冷度が一定となる冷媒封入量の幅Wは、n/Nが小さいほど広くなっている。一方、放熱性能Qは、n/Nが大きくなるにしたがって向上するが、n/Nが一定の値を超えると急激に低下している。コンデンサの性能としては、過冷度が一定となる冷媒封入量の幅Wが広くなるとともに、放熱性能Qの優れていることが望ましいが、図4に基づいて、両者のバランスがとれた実用範囲を考慮すると、全第1熱交換管(2A)および全第2熱交換管(2B)の合計数:Nに対する全第1熱交換管(2A)の数:nの比:n/Nは、0.15≦n/N≦0.25とすべきである。
【0035】
コンデンサ(1)は、すべての部品を一括してろう付することにより製造される。
【0036】
コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両に搭載される。
【0037】
上述した構成のコンデンサ(1)において、圧縮機により圧縮された高温高圧の気相冷媒が、冷媒入口部材(16)および冷媒入口(14)を通って第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)内に流入し、第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)内を左方に流れる間に凝縮させられて第2ヘッダタンク(4)内に流入する。第2ヘッダタンク(4)内に流入した冷媒は、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)内を右方に流れる間に凝縮させられて第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入する。第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入した冷媒は第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)内を左方に流れる間に凝縮させられて第1ヘッダタンク(3)内に流入する。
【0038】
第1ヘッダタンク(3)内に流入した冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒は重力により第1ヘッダタンク(3)内の下部に溜まり、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入る。
【0039】
第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入った液相主体混相冷媒は第1熱交換管(2A)内を右方に流れる間に過冷却された後、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)内に入り、冷媒出口(15)および冷媒出口部材(17)を通って流出し、膨張弁を経て蒸発器に送られる。
【0040】
一方、第1ヘッダタンク(3)内に流入した気液混相冷媒のうちの気相成分は、第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まる。
【0041】
なお、上述したコンデンサ(1)において、第1ヘッダタンク(3)内に、乾燥剤、気液分離部材およびフィルタのうちの少なくともいずれか1つが配置されることがある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明によるコンデンサは、自動車に搭載されるカーエアコンに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0043】
(1):コンデンサ
(1A):凝縮部
(1B):過冷却部
(2A):第1熱交換管
(2B):第2熱交換管
(3):第1ヘッダタンク
(4):第2ヘッダタンク
(5):第3ヘッダタンク
(P1):第1熱交換パス
(P2):第2熱交換パス
(P3):第3熱交換パス
(P4):第4熱交換パス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向を通風方向に向けるとともに、上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられ、各熱交換パスを構成する全ての熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、
左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであり、全第1熱交換管の数をn、全第1熱交換管および全第2熱交換管の合計数をNとした場合、0.15≦n/N≦0.25という関係を満たすコンデンサ。
【請求項2】
第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
第1および第2熱交換管の上下方向の厚みが1.0〜2.0mmであるとともに、第1および第2熱交換管の通風方向の幅が12〜20mmであり、第2熱交換管の長さが400〜700mmであり、第1ヘッダタンクが、上下方向の長さが350〜450mm、内径が24〜30mmの円筒状である請求項1または2記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226674(P2011−226674A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94805(P2010−94805)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】