説明

コンバインの原動部構造

【課題】本発明の課題は、防塵ファンの回転方向を切り替えずに除塵が容易に行え、除塵効果も十分に発揮し得るラジエ-タ除塵装置を提供する。
【解決手段】同一方向に送風する第1ファン(12)及び第2ファン(13)を設け、第2ファン(13)の外側に防塵網(16)を設けると共に、ラジエータ(11)と第2ファン(13)との間には開閉可能な遮蔽体(20)を設け、該遮蔽体(20)は第1ファン(12)及び第2ファン(13)による送風が通過可能な状態と遮蔽する状態とに切替可能に構成し、前記防塵網(16)には外側に張出した隆起部(12a)を設けると共に、この隆起部(16a)の内側であって防塵網(16)の隆起部以外の部位よりも外側に第2ファン(13)を配置して設け、前記遮蔽体(20)を第2ファン(13)の軸芯方向視で隆起部(16a)に対応する部位に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの原動部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラジエータの前面を覆う防塵カバーの塵埃を除去する正逆転可能な防塵ファンを設け、防塵カバー前面に付着の塵埃を除去する時には、防塵ファンを逆転させて起風を防塵カバー側方向に送り、ラジエータファンによる冷却風がラジエータ及びエンジン側に移動する時には、防塵ファンを正転させてこれによる起風を、それと同方向に送るようにして冷却効率を高めるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−287453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成のものでは、防塵ファンの回転方向を正逆転方向に切り替える必要があって構成が複雑であり、除塵効果も十分に発揮し得ない問題がある。
本発明の課題は、防塵ファンの回転方向を切り替えることなく除塵作用が容易に行え、除塵効果も十分に発揮し得るコンバインの原動部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)の外側にラジエータ11を設け、該エンジン(E)とラジエータ(11)の間にエンジン(E)で駆動されるエンジン(E)冷却用の第1ファン(12)を設け、
前記ラジエータ(11)の外側に防塵網(16)を設け、該ラジエータ(11)と防塵網(16)の間には前記第1ファン(12)と同一方向に送風する第2ファン(13)を設け、前記ラジエータ(11)と第2ファン(13)との間に遮蔽体(20)を設け、該遮蔽体(20)を、前記第2ファン(13)からラジエータ(11)側への送風が通過可能な通風状態と第2ファン(13)からラジエータ(11)側への送風を遮断する遮蔽状態とに切替可能な構成とし、前記防塵網(16)には外側に張出した隆起部(12a)を設けると共に、この隆起部(16a)に第2ファン(13)の一部または全部を入り込ませて配置したことを特徴とするコンバインの原動部構造とした。
【0006】
防塵網(16)に付着した塵埃を除去する場合には、遮蔽体(20)を閉じて遮蔽状態に切り替える。第2ファン(13)の回転によって起風される風が防塵網(16)の隆起部からこの隆起部の周辺の網面に沿って吹出され、網面に付着する塵埃を吹き飛ばして除去することができる。
【0007】
通常のエンジン冷却時には、遮蔽体(20)を開いて通風状態に切り替えることで、第1ファン(12)と第2ファン(13)からの送風によってラジエータ(11)を冷却するので、冷却効率を高めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記第1ファン(12)及び第2ファン(13)を、前記ラジエータ(11)を貫通するファン駆動軸(14)により駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの原動部構造とした。
【0009】
ラジエータ(11)の外側を迂回させて伝動する構成に比べて伝動構成を簡素化できる。
請求項3記載の発明は、前記遮蔽体(20)の遮蔽状態において、第2ファン(13)からの送風を防塵網(16)の隆起部(16a)の外側面に向けて案内する導風体(22)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの原動部構造とした。
【0010】
第2ファン(13)によって送風される風は、導風体(22)により隆起部(16a)に向けて案内されるので、隆起部外面に沿って勢いよく吹き出されることになり、除塵効果を高めることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記遮蔽体(20)が所定時間毎に通風状態と遮蔽状態とに自動的に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの原動部構造とした。
【0012】
上記構成によると、第2ファン(13)による風を所定時間毎に繰り返し防塵網(16)に吹き付けることができ、塵埃の付着を未然に防止することができる。
請求項5記載の発明は、機体の旋回操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造とした。
【0013】
上記構成によると、機体旋回時に、遮蔽体(20)を遮蔽状態に切り替えることができるので、ラジエータ(11)等の障害物に影響されず、外側の防塵網(16)側に集中して送風することができ、機体が旋回する度に除塵するので、塵埃の付着を抑制できる。
【0014】
請求項6記載の発明は、機体の後進操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造とした。
【0015】
上記構成によると、機体の後進時に、遮蔽体(20)を遮蔽状態に切り替えることができ、機体後進毎に防塵網(16)の除塵が行えるので、塵埃の付着を未然に防止することができる。
【0016】
請求項7記載の発明は、刈取部(4)の非作業位置への上昇操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造とした。
【0017】
一行程の刈取作業が終わって刈取部(4)を非作業位置まで上昇操作すると、遮蔽体(20)を自動的に遮蔽状態に切り替えることができ、刈取部(4)が非作業位置まで上昇する度に必ず防塵網(16)の除塵を行うので、塵埃の付着を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、防塵網(16)に付着した塵埃除去時には、遮蔽体(20)を遮蔽状態に切り替えることで、遮蔽体(20)によって第2ファン(13)の軸心に対して垂直な方向に案内されて防塵網(16)の隆起部(16a)から吹出される風によって防塵網(16)に付着する塵埃を除去することができ、第2ファン(13)の回転方向を逆転方向の切替を要しないので、構成を簡単にすることができる。
【0019】
また、遮蔽体(20)を遮蔽状態に切換えた状態においても、防塵網(16)の隆起部(16a)以外の部位から第1ファン(12)によって吸い込んだ外気でラジエータ(11)を冷却することができるので、ラジエータ(11)の冷却効率を高めることができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、第1ファン(12)と第2ファン(13)をラジエータ(11)を貫通させたファン駆動軸(14)によって駆動する構成であるため、ラジエータ(11)の外側を迂回させて伝動する構成に比べて伝動構成を簡潔にすることができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、前記遮蔽第2ファン(13)によって送風される風が導風体(22)により隆起部(16a)に向けて案内されるので、風を隆起部(16a)に沿わせて吹出すことができ、この隆起部(16a)に付着した塵埃を除去することができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、遮蔽体(20)が所定時間毎に通風状態と遮蔽状態とに自動的に切り替わるので、第2ファン(20)によって所定時間毎に防塵網(16)に吹き付けることができ、塵埃の付着を抑制できる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4の何れか一項に記載の発明による効果に加えて、機体旋回時に遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わるので、旋回する毎に除塵を行うので、塵埃の付着を抑制することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4の何れか一項に記載の発明による効果に加えて、機体後進時に遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わるので、機体の後進操作を行なう毎に除塵を行うことができ、塵埃の付着を抑制することができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4の何れか一項に記載の発明による効果に加えて、刈取部(4)の非作業位置への上昇操作を検出した場合に、遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わるので、刈取部(4)の非作業位置への上昇毎に除塵を行うことができ、塵埃の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】ラジエータ除塵装置の要部の展開側断面図
【図4】同上要部の斜視図
【図5】遮蔽体要部の分解斜視図
【図6】ラジエータカバーの斜視図
【図7】図6のS1−S1断面図
【図8】図6のS2−S2断面図
【図9】ファン伝動構成の別実施例を示す伝動経路図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、コンバインを示すもので、下部に走行クローラ2を備えた走行車体1上には、後部に脱穀部(脱穀装置)3を搭載し、その前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には運転席5、ステップフロア6や操作ボックス7等からなる乗用運転部を備え、更に、その乗用運転部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンク8を装備している。
【0028】
操作ボックス7上には、前後方向の操作で刈取部4を昇降制御し、左右方向の操作できたいを旋回制御するパワステレバー9が装備されている。また、運転席横側の操作プレート上には、前後方向の操作で機体の前後進制御を司る変速レバー(HSTレバー)10が装備されている。
【0029】
運転席5下方の機台上にはエンジンEが搭載されている。エンジンEの外側に設置されたラジエータ11の内側にエンジンEにより駆動される第1ファン(冷却ファン)12が設けられ、該ラジエータ11の外側にはエンジンEにより駆動される第2ファン(除塵ファン)13が設けられている。
【0030】
第1ファン12及び第2ファン13は、エンジンEと直結するファン駆動軸14により回転駆動するようラジエータ11を貫通させて連動連結している。第2ファン13の回転方向は第1ファン12の回転方向と同じで、送風方向も同一方向としている。第2ファン13の外側は防塵網16を備えたラジエータカバー15によってカバーされるようになっている。
【0031】
ラジエータ11と第2ファン13との間には、開閉可能な遮蔽体20が設けられている。この遮蔽体20は、第1ファン12及び第2ファン13による送風が通過可能な状態と遮蔽する状態とに切り替えができるようになっており、鎧戸式の開閉シーブ19によって揺動開閉自在に構成されている。なお、開閉シーブ19は駆動モータ21等で開閉駆動するように構成しておくとよい。
【0032】
また、上記の開閉シーブ19は、駆動モータ21の正逆転駆動によって所定時間毎に開閉シーブ「開」の通風状態と開閉シーブ「閉」の遮蔽状態とに繰り返し切り替えができるように構成することができる。
【0033】
前記防塵網16には、前記第2ファン13に対応する部位において外側に向けて膨出する隆起部16aが設けられている。そして、この隆起部16aの内側には防塵網16の隆起部以外の部位よりも外側に位置して前記第2ファン13を配置する構成としている。また、前記遮蔽体20は、第2ファン13の軸芯方向視で隆起部16aに対応する部位にのみ配置した構成としている。
【0034】
遮蔽体20の開閉シーブを閉じてラジエータ側への通風を遮断した状態においては、第2ファン13による送風を防塵網16の隆起部16aに向けて案内する導風体22(図8参照)が設けられている。これにより、第2ファン13によって送風される風が導風体22の作用を受けて隆起部22の外面に沿って導入案内されることになり、隆起部外面に付着する塵埃を確実に取り除くことができる。
【0035】
刈取作業時において、枕地などでの機体旋回時には、この旋回動作に関連して前記遮蔽体20を遮蔽状態に切り替えできるように連動構成することができる。かかる構成によると、機体を旋回する毎に、例えば、パワステレバー9による左右方向の旋回操作に連動して開閉シーブ19を「閉」の状態に切り替え、外側の防塵網側に送風して除塵することができる。
【0036】
また、別の構成例として、機体の後進時に、例えば、変速レバー10を後進側に切替操作すると、開閉シーブを閉じて遮蔽状態に切り替える手段をとることもできるし、刈取部4の非作業位置への上昇動作に関連して遮蔽体20を遮蔽状態に切り替える手段、つまり、刈取作業中に、例えば、パワステレバー9の操作で、刈取部を非作業位置まで上昇操作すると、刈取部の非作業位置への上昇検出結果に基づき、開閉シーブ19を自動的に「閉」にし、ラジエータ側への送風を遮断することによって除塵ファンによる送風を防塵網側に切り替えるように構成することもできる。
【0037】
なお、ファン伝動構成の別実施例として、図9に示すように、エンジンと直結する第1ファン12軸から第1伝動ベルト24、伝動軸25、第2伝動ベルト26を介して第2ファン13を回転駆動する(第1・第2ファン同一回転又は第2ファンの逆転構成をとる場合でも)ようにラジエータ11の側方又は上方或は下方を迂回して動力伝達する構成をとることもできるが、このような動力伝達方式に比べて、上記したようにラジエータを貫通して動力伝達する構成の方が最も合理的で簡素な伝動構成とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
E エンジン
11 ラジエータ
12 第1ファン(冷却ファン)
13 第2ファン(除塵ファン)
14 ファン駆動軸
15 ラジエータカバー
16 防塵網
16a 隆起部
19 開閉シーブ
20 遮蔽体
22 導風体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)の外側にラジエータ11を設け、該エンジン(E)とラジエータ(11)の間にエンジン(E)で駆動されるエンジン(E)冷却用の第1ファン(12)を設け、
前記ラジエータ(11)の外側に防塵網(16)を設け、該ラジエータ(11)と防塵網(16)の間には前記第1ファン(12)と同一方向に送風する第2ファン(13)を設け、
前記ラジエータ(11)と第2ファン(13)との間に遮蔽体(20)を設け、該遮蔽体(20)を、前記第2ファン(13)からラジエータ(11)側への送風が通過可能な通風状態と第2ファン(13)からラジエータ(11)側への送風を遮断する遮蔽状態とに切替可能な構成とし、前記防塵網(16)には外側に張出した隆起部(12a)を設けると共に、この隆起部(16a)に第2ファン(13)の一部または全部を入り込ませて配置したことを特徴とするコンバインの原動部構造。
【請求項2】
前記第1ファン(12)及び第2ファン(13)を、前記ラジエータ(11)を貫通するファン駆動軸(14)により駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの原動部構造。
【請求項3】
前記遮蔽体(20)の遮蔽状態において、第2ファン(13)からの送風を防塵網(16)の隆起部(16a)の外側面に向けて案内する導風体(22)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの原動部構造。
【請求項4】
前記遮蔽体(20)が所定時間毎に通風状態と遮蔽状態とに自動的に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの原動部構造。
【請求項5】
機体の旋回操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造。
【請求項6】
機体の後進操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が自動的に遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造。
【請求項7】
刈取部(4)の非作業位置への上昇操作を検出した場合に、前記遮蔽体(20)が遮蔽状態に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−158235(P2012−158235A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18436(P2011−18436)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】