説明

コンバインの操作レバー

【課題】油圧によるコンバインの操向及び前処理部の昇降操作を行うマルチステアリングレバーの誤操作を防止して操作性を向上させる。
【解決手段】グリップ30を持ちながら機体の操向と前処理部14の昇降操作を行うマルチステアリングレバー21の上部に、機体の前進方向に対して左右に回転操作可能なグリップ30を設け、このグリップ30の回転操作により機体の操向方向を速やかに微調整できるように構成することによって、コンバイン11の操縦に不慣れなオペレータであっても、操作グリップ30の目視確認や触手による操作確認を不要とし、操作フィーリングを向上させると共に安全な運転走行を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの操向操作と前処理部の昇降操作を行うマルチステアリングレバーにおけるグリップの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインでは、運転席前方に配設したフロント操作パネルに、油圧によるコンバインの操向及び前処理部の昇降操作を行うマルチステアリングレバーを設けると共に、このマルチステアリングレバーの先端部(頂部)にジャストディレクタースイッチ付操作グリップを装着することによって、刈り取り作業中の条合わせ等におけるコンバインの操向方向を微調整できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−211956号公報(第2−3頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したジャストディレクタースイッチ付操作グリップは、その頂部に設けられた左右の方向微調整スイッチのうち一方を選択的に親指等で押込み操作するものであって、その際、操作グリップの握り直し等による左右の方向微調整スイッチの押し間違いを起こし易く操作性に問題を有していた。特に、コンバインの操縦に不慣れなオペレータの場合は、左右の方向微調整スイッチの誤操作を防止するために、当該操作グリップ頂部の目視確認や触手による操作確認が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、グリップを持ちながら機体の左右方向と前後方向への傾倒操作により、機体の操向と前処理部の昇降とを行うコンバインの操作レバーにおいて、前記グリップを左右に回転操作可能に設けると共に、その回転操作方向に機体の操向を微調整できるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、グリップを持ちながら機体の左右方向と前後方向への傾倒操作により、機体の操向と前処理部の昇降とを行うコンバインの操作レバーにおいて、前記グリップを左右に回転操作可能に設けると共に、その回転操作方向に機体の操向を微調整できるように構成したことによって、従来のジャストディレクタースイッチ付操作グリップのように、該操作グリップの握り直し等による左右の方向微調整スイッチの押し間違いを起こすことがないので操作性が向上する。特に、コンバインの操縦に不慣れなオペレータであっても、操作グリップ頂部の目視確認や触手による操作確認が不要となって操作フィーリングが向上すると共に安全な運転走行が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、移動農機であるコンバイン11の側面図、図2は、後述する操縦部16の斜視図であって、コンバイン11は、左右一対のクローラ走行装置12,12で機体フレーム13を支持すると共に、機体フレーム13の前方には穀稈を刈取りながら図示しない脱穀部まで搬送する前処理部14を備えている。
【0007】
また、前処理部14の後方には、オペレータが着座する座席15と各種操作具を備える操縦部16を配設すると共に、座席15後部の一側には穀粒タンク17、他側には図示しない脱穀部を設けている。そして、脱穀部において脱穀/選別処理した穀粒を穀粒タンク17内に一時的に貯留すると共に、穀粒タンク17内に一時的に貯留された穀粒は、縦搬送パイプ18を経て起伏動作可能な穀粒排出オーガ19の排出口19aから機外に排出できるようになっている。
【0008】
そして、座席15前方の床面を形成する搭乗ステップ20の前側には、詳細は後述するように、グリップ30を持ちながら機体の操向と前処理部14の昇降操作とを行うマルチステアリングレバー21を備えた操縦塔22を立設している。このマルチステアリングレバー21は、操縦塔22の上部を覆うメータパネルを兼ねた上面パネル23から突出しており、また操縦塔22の前側は、図示しない前照灯を内装したフロントパネル24で覆われている。
【0009】
ところで、マルチステアリングレバー21は、従来公知のように、当該マルチステアリングレバー21を図3(a)に示す如く中立状態から左右一側に傾倒操作して、その傾倒方向の図示しないサイドクラッチを切りながらの緩旋回と、更なるマルチステアリングレバー21の傾倒操作によって、その傾倒方向の図示しないサイドブレーキを作動させての急旋回操作が可能である。また、マルチステアリングレバー21を図3(b)に示す如く中立状態から前後方向に傾倒操作することによって、前処理部14を昇降作動させることができるようになっている。
【0010】
一方、座席15左側のサイドパネル25には、主変速レバー26、副変速レバー27、
及び作業機クラッチレバー28、刈取クラッチレバー29等のコンバイン11の操縦に必要な複数の操作レバーやスイッチ類を配置している。
【0011】
そして、上述したマルチステアリングレバー21の上部には、図4及び図5に示すように、マルチステアリングレバー21のレバー軸21a、即ち機体の前進方向に対して左右に回転操作可能なグリップ30を設けている。
【0012】
このグリップ30は、マルチステアリングレバー21のレバー軸21aの上部に、止め輪31,31と座金32,32及び軸受33,33を介して回転自在に支承した下部グリップ34と、該下部グリップ34の上に複数のビス35を用いて一体的に固設した上部グリップ36とからなる。
【0013】
更に詳しくは、上部グリップ36の下部グリップ34との合わせ面S側には、凹陥部36aが形成してあり、この凹陥部36aに機体の左右方向への微旋回操作を検出する左右の微旋回操作検出スイッチ37L,37Rを内装している。
【0014】
そして、前記凹陥部36aに臨むマルチステアリングレバー21のレバー軸21aの上端部には、グリップ30による機体の左右方向への微旋回操作を検出する左右の微旋回操作検出スイッチ37L,37Rに当接して、当該グリップ30の所定以上の回転操作を規制するスットパー38を固設している。
【0015】
即ち、図5に示すように、グリップ30を持ちながら二点鎖線で示す中立姿勢から実線で示すA矢印方向(左方向)に回転操作すると、スットパー38に左側の微旋回操作検出スイッチ37Lが当接して、詳細は後述するグリップ30の回転操作に対応して機体の操向方向を左側に微調整できるように構成している。尚、この状態からグリップ30の把持力を緩めると、左右の微旋回操作検出スイッチ37L,37Rに内装されている図示しない圧縮スプリングの付勢力によって、グリップ30は、二点鎖線で示す中立姿勢まで自動復帰するようになっている。
【0016】
そして、上述した左右の微旋回操作検出スイッチ37L,37Rは、マルチステアリングレバー21のレバー軸21aである筒軸に挿通する配線39L,39Rを介して、図6に示すブロック図のように、マイクロコンピュータ40を構成する中央処理装置(CPU)の入力側インターフェース40aに接続すると共に、この入力側インターフェース40aには、主変速レバー26の変速位置を検出する変速検知ポテンショメータ41、分草体42の間に導入される穀稈の通過位置を検出する前処理部14下部の刈取フレーム43に取り付けられた左右の方向センサ44L,44Rを接続している。
【0017】
一方、中央処理装置の出力側インターフェース40bには、左右一対のクローラ走行装置12,12の図示しないサイドクラッチ機構を選択的に継脱、即ち油圧シリンダを介してサイドクラッチのシフタを作動させる左右の電磁ソレノイドバルブ45L,45Rと、これら左右の電磁ソレノイドバルブ45L,45Rと並列に左右のサージキラー46L,46Rを接続している。
【0018】
以上説明したように、本発明では、グリップ30を持ちながら機体の左右方向と前後方向への傾倒操作により、機体の操向と前処理部14の昇降とを行うマルチステアリングレバー21において、このマルチステアリングレバー21の上部に、機体の進行方向に対して左右に回転操作可能なグリップ30を設けることによって、該グリップ30の左右一側への回転操作により左右の微旋回操作検出スイッチ37L,37Rのうち何れかがONになると、その検出信号がマイクロコンピュータ40へ入力され、次いで、前記検出信号に対応する図示しないサイドクラッチのシフタを作動させる一方の電磁ソレノイドバルブ(45L,45R)、即ちグリップ30の回転操作方向に対応する電磁ソレノイドバルブを作用させて、当該サイドクラッチを短時間で継脱する緩旋回制御を実行し、それによって機体の操向をグリップ30の回転操作方向に速やかに微調整できるように構成している。
【0019】
そして、既述したマルチステアリングレバー21に対して回転操作可能なグリップ30は、従来のジャストディレクタースイッチ付操作グリップのように、該操作グリップの握り直し等による左右の方向微調整スイッチの押し間違いを起こすことがないので操作性が向上する。特に、コンバイン11の操縦に不慣れなオペレータであっても、操作グリップ30頂部の目視確認や触手による操作確認が不要となって操作フィーリングが向上すると共に安全な運転走行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】操縦部の斜視図。
【図3】マルチステアリングレバーの操作方法を示す背面図(a)と側面図(b)。
【図4】マルチステアリングレバーのグリップ部の側断面図。
【図5】同上平断面図。
【図6】制御部のブロック図。
【符号の説明】
【0021】
14 前処理部
21 操作具
30 グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ(30)を持ちながら機体の左右方向と前後方向への傾倒操作により、機体の操向と前処理部(14)の昇降とを行うコンバインの操作レバー(21)において、前記グリップ(30)を左右に回転操作可能に設けると共に、その回転操作方向に機体の操向を微調整できるように構成したことを特徴とするコンバインの操作レバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−54536(P2008−54536A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232902(P2006−232902)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】